JP2006219509A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】
成形性と透明性に非常に優れた、特に成形加工用途として優れた特性を有するポリエステルフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも2種類のポリエステルからなるポリエステルフィルムであって、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分を1〜80モル%含有するポリエステルAと、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルBを含み、かつ昇温結晶化温度が70℃〜140℃で、ヘイズが1〜20%であることを特徴とするポリエステルフィルムである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリエステルフィルムに関するものである。詳しくは、本発明は、成形性および透明性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
ポリエステルフィルムは、良好な機械強度、熱的特性、湿度特性およびその他多くの優れた特性から、工業材料、磁気記録材料、光学材料、情報材料および包装材料などの広い分野において使用されている。
ポリエステルフィルムを材料として使用する場合、成形加工して使用することが多く、易成形性が非常に重要である。特に、包装材料においては、内容物の形状や消費者へのPRなどのために、様々な形に成形加工されるため、最も必要な要求特性であると言える。ポリエステルフィルムの用途として、例えば、金属、樹脂および木材などの基材の外面被覆用や、レトルトパウチの最外装や食品用容器などとして用いられることが増加してきている。
ポリエステルフィルムの中で、ポリエチレンテレフタレート無延伸シートは成形性に優れているため、上記用途への展開が検討されているが、耐熱性に劣り、高温加熱による白化が発生するという問題がある。
また、二軸延伸ポリエステルフィルムについては、脂肪族ジカルボン酸成分を共重合することにより成形性を付与する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案では、成形性が必ずしも十分であるとは言えず、また透明性に劣っている。
特開平3−67629号公報

そこで本発明の目的は、上記課題を解決し、成形性および透明性に非常に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも2種類のポリエステルからなるポリエステルフィルムであって、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分を1〜80モル%含有するポリエステルAと、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルBを含み、かつ昇温結晶化温度が70℃〜140℃で、ヘイズが1〜20%であることを特徴とする成形性と透明性に優れたポリエステルフィルムである。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記のポリエステルAの含有量は1〜40質量%であり、ポリエステルBの含有量を20〜99質量%である。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記のポリエステルフィルムには、さらに、ブチレンテレフタレートおよび/またはプロピレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルCがふくまれており、その含有量は1〜70質量%である。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記の炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分を1〜80モル%含有するポリエステルAと、ブチレンテレフタレートおよび/またはプロピレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルCとの添加率を、それぞれW質量%およびW質量%としたとき、下記の式が成り立つ。
/W=0.6〜1.5
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記のポリエステルフィルムの長手方向10mにおける厚みむらは1〜20%である。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記のポリエステルAは、炭素数10以上のアルキレン基を有する長鎖脂肪族ジカルボン酸成分を1〜30モル%含有しており、そのポリエステルAの長鎖脂肪族成分はダイマー酸成分である。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記のポリエステルフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムである。
本発明のポリエステルフィルムは、成形加工用途に好適である。
本発明によれば、易成形性を有し、またヘイズも低いので透明性にも優れたポリエステルフィルムが得られる。このため、本発明のポリエステルフィルムは、特に成形加工用途として使用した場合、優れた特性を示すことができる。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも2種類のポリエステルからなるポリエステルフィルムである。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称であって、通常、ジカルボン酸成分とジオール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。
ここでジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコ酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、およびp−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げることができる。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールA、およびビスフェノールSなどの芳香族ジオールなどを挙げることができる。これらの、ジカルボン酸成分とジオール成分は、2種以上併用してもよい。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂を製造するに際しては、反応触媒および着色防止剤を使用することができる。反応触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、およびチタン化合物ゲルマニウム化合物などを使用することができ、また、着色防止剤としては、リン化合物などを使用することができるが、本発明では特にこれらに限定されるものではない。
通常、ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒として、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物および/またはチタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、ポリエステルの出発原料であるグリコール成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法を使用することができる。
かかるゲルマニウム化合物としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム水和物あるいは、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシドなどのゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフォノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウムなどのリン酸含有ゲルマニウム化合物、および酢酸ゲルマニウムなどを使用することができる。中でも、二酸化ゲルマニウムが好ましく用いられる。
また、アンチモン化合物としては特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモンなどの酸化物や酢酸アンチモンなどが使用できる。また、さらにチタン化合物としては、特に限定されないが、チタンテトラエトキシドやチタンテトラブトキシドなどのチタンテトラアルコキシドが好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムは、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分を1〜80モル%含有するポリエステルAを含んでいることが必要である。炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分の量が多くなると、ポリエステルBとの溶融粘度の差が大きくなり、安定した膜にするのが難しくなる。このような製膜性の点で、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分の好ましい上限は50モル%であり、より好ましい上限は30モル%である。
また、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分の量が少なくなると、ポリエステルAの柔軟性が低くなり、優れた成形性を示しにくくなるため、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分の好ましい下限は2モル%であり、より好ましい下限は3モル%である。
また、アルキレン基の炭素数は4以上であれば、特に制限はないが炭素数が80より多くなると、耐熱性が低下してしまう場合があるので好ましくない。より好ましい、炭素数の上限は70であり、上限が60であれば最も好ましい。
また、ポリエステルAは、製膜性と成形性の観点から1〜40質量%含まれていることが好ましい。ポリエステルAが1質量%未満であれば、柔軟性が低くなり、成形性に劣る場合がある。また、ポリエステルAの量を増加していくと、均一な膜になりにくくなる傾向にあり、40質量%よりも多く含まれているとその傾向が顕著となる。ポリエステルAの量は、さらに好ましくは1.5〜30質量%であり、最も好ましくは2〜25質量%である。
アルキレン基を有する脂肪族成分は、脂肪族ジカルボン酸成分であっても、脂肪族ジオール成分であっても、その両方であってもよい。
ここで炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコ酸、およびダイマー酸などが挙げられる。中でも、ドデカンジオン酸、エイコ酸、ダイマー酸 およびそれらの誘導体などの炭素数10以上のアルキレン基を有する長鎖脂肪族ジカルボン酸が、成形性と耐衝撃性の点で好ましい。特に本発明では、耐熱性と透明性を良好にする上で、ダイマー酸を用いることが好ましい。
ここでダイマー酸とは、オレイン酸メチル等の不飽和脂肪族ジカルボン酸を2量化・水素添加反応によって得られる鎖状分岐構造体と環状分岐構造体との混合物の総称であり、メチレン鎖の炭素数が好ましくは20〜80のものであり、より好ましくは30〜60のものである。また、ダイマー酸には、通常不飽和結合が残留しているが、ASTM−D−1159で測定した臭素価を好ましくは0.05〜10(g/100g)とし、より好ましくは0.1〜5(g/100g)とすることによって、耐熱性と柔軟性を一層向上させることができる。
ここで炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族ジオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、および1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。
ジカルボン酸成分とジオール成分の組み合わせにおいては、製膜性の点でジオール成分よりジカルボン酸成分の方の長鎖化を図ることが好ましい。
ポリエステルAは、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分を1〜80モル%含有していれば、残りの成分については特に限定されないが、ポリエステルBとの相溶性の点で、ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、ジオール成分としてはエチレングリコールが好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルBは、エチレンテレフタレート を主たる構成成分とすることが必要である。ここで、主たる構成成分とは、エチレンテレフタレート単位の構成比率が80モル%以上であることを言う。
ここでエチレンテレフタレートとは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いた縮合物のことである。また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を共重合してもよい。共重合成分としては、上記したジカルボン酸成分およびグリコール成分などが挙げられる。
また、本発明で用いられるポリエステルBの融点は、耐熱性と生産性の観点から、240〜270℃の温度範囲であることが好ましい。ポリエステルBの融点は、耐熱性の観点から、245〜265℃であることがさらに好ましい。
また、ポリエステルBの固有粘度は、耐衝撃性の観点から0.6〜1.0であることが好ましく、特に耐熱性および耐経時性が要求される用途では、固有粘度が0.63〜0.9であることが好ましく、さらに好ましくは0.67〜0.8である。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルBの好ましい含有量は、20〜98質量%である。ポリエステルBの含有量をこの範囲とすることは、耐熱性および機械的強度の点で好ましいことである。ポリエステルBの好ましい含有量は、より好ましくは25〜95質量%であり、最も好ましくは30〜90質量%である。
本発明のポリエステルフィルムは、ブチレンテレフタレートおよび/またはプロピレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルCを含んでいることが好ましい。ここで、主たる構成成分とは、ブチレンテレフタレートおよび/またはプロピレンテレフタレート単位の構成比率が80モル%以上であることを言う。
ここで、ブチレンテレフタレートとは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いた縮合物である。また、プロピレンテレフタレートとは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分として、1,3−プロパンジオールを用いた縮合物である。ポリエステルCを、本発明のポリエステルフィルムの組成とすることによって、一層成形性を向上させることができる。また、ポリエステルCにおいては、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を本発明の効果を阻害しない限りにおいて共重合してもよい。共重合成分としては、上記したジカルボン酸成分およびジオール成分などが挙げられる。
ポリエステルCの好ましい含有量は、1〜70質量%である。ポリエステルCの含有量をこの範囲とすることは、成形性の点で好ましいことである。ポリエステルCの好ましい含有量は、より好ましくは、5〜50質量%であり、最も好ましくは10〜30質量%である。
ポリエステルCを含有することによって、ポリエステルBの可塑剤的な効果を示すため、分子運動性が活発になり、成形性が向上する。
本発明のポリエステルフィルムは、昇温結晶化温度が70℃〜140℃の範囲であることが必要である。ここで、昇温結晶化温度とは、一度300℃まで昇温してポリエステルフィルムを溶融し、冷却後、再び昇温したときの結晶化発熱ピーク温度のことを言う。本発明で使用されるポリエステルAは、結晶化速度が速いため、ポリエステルBにポリエステルAを添加していくことで、昇温結晶化温度が低下する傾向にある。本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルAを添加していき、昇温結晶化速度を上記の範囲とすることによって、非常に優れた成形性を示す。ポリエステルAとポリエステルBを混合(ポリエステルC添加する場合はポリエステルCも含む)し、昇温結晶化温度を上記範囲とするように混合比を調整することで優れた成形性を示した。昇温結晶化温度は、より好ましくは80〜137℃であり、最も好ましくは100〜135℃である。
本発明のポリエステルフィルムは、ヘイズが1〜20%であることが必要である。ここで言う、ヘイズとは、フィルム厚み20μmに換算したときの値である。ヘイズが上記の範囲であることは、ポリエステルAとポリエステルBが相溶であることを示し、ポリエステルAとポリエステルBが非相溶である場合に比較して、成形性が格段に優れる。
ポリエステルAとポリエステルBが相溶であると、ポリエステルAがポリエステルBに微分散することができ、ポリエステルAの柔軟効果がより発現するために、成形性が高くなる。
ヘイズを1〜20%にする方法としては、例えば、ポリエステルAとポリエステルBの相溶性を付与するためにポリエステルCを1〜70質量%添加する方法が挙げられる。ポリエステルCを上記の量添加することは、ポリエステルAとポリエステルBの相溶性が向上するばかりではなく、成形性と耐衝撃性も向上するために、非常に好ましい態様である。また、ポリエステルCの添加量をW質量%とし、ポリエステルAの添加量をW質量%としたとき、次式W/W=0.6〜1.5の範囲とすることにより、よりその特性が向上させることができる。
また、ヘイズが20%以下であることは、意匠性にも非常に優れるポリエステルフィルムとなる。ヘイズが1%より小さくすることは実質的に非常に難しく、実用上必須条件ではない。ヘイズの範囲は、より好ましくは1.2〜15%であり、最も好ましくは1.5〜10%である。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向10mにおける厚みむらが1〜20%であることが好ましい。ポリエステルフィルムの厚みむらが20%を超えると、ポリエステルフィルムの均質性が不十分なため、加工時または使用時の外部応力によって変形が大きくなって実用に供し得ることが難しくなる。また、耐衝撃性の点でも厚みむらは20%未満であることが好ましい。一方、ポリエステルフィルムの厚みむらを1%未満に抑えることは実質的に非常に難しく、実用上の必須要件でない。厚みむらのより好ましい範囲は1.5%〜15%であり、最も好ましくは2%〜10%である。
本発明において、ポリエステルフィルムは、取扱い性と加工性を向上させるために、平均粒子径0.01〜10μmの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子を0.01〜3重量%含有することが好ましい。内部粒子の析出方法としては、例えば、特開昭53−41355号公報のエステル化およびエステル交換反応が終了した時点から重縮合反応の初期の段階にリチウム化合物、カルシウム化合物、リン化合物を添加する方法、および特開昭54−90397号公報のエステル化反応末期にリン化合物を加え、エステル化反応生成物と一定時間反応させ、その後にリチウム化合物又は、リチウム化合物とカルシウム化合物を特定量添加する方法といった技術を採用することができる。
さらに、特開昭59−204617号の重縮合反応開始前の任意の時点で系に不溶な比表面積が5m/g以上の粒子状物質を添加する技術を併用することことができる。
10μmを超える平均粒子径を有する粒子を使用すると、ポリエステルフィルムに欠陥が生じることがあるので注意を要する。かかる無機粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ、マイカ、カオリン、およびレーなどを使用することができる。中でも、湿式および乾式シリカ、アルミナなどの無機粒子スチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、およびビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。さらに、これらの内部粒子、無機粒子および有機粒子は、2種類以上併用してもよい。
本発明のポリエステルフィルムは、無配向でも、一軸配向でも、二軸配向でもよいが、機械的強度と耐熱性の点で、二軸に配向し延伸されていることが好ましい。
二軸に配向させる方法としては、ロールの速度差により長手方向に一軸に延伸し、その一軸に延伸したものをテンターで幅方向に引っ張り延伸する逐次二軸延伸法、またはテンターで同時に二軸に延伸する方法などが挙げられる。延伸倍率としては、それぞれの方向に好ましくは1.6〜4.2倍、更に好ましくは2.4〜4.0倍である。また、延伸速度は、1000〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度からガラス転移温度+100℃の温度範囲であれば任意の温度とすることができるが、好ましくは80〜130℃であり、特に好ましくは長手方向の延伸温度を90〜130℃とし、幅方向の延伸温度を90〜150℃とするのがよい。また、延伸は、各方向に対して複数回行ってもよい。
また、二軸延伸したポリエステルフィルムは、平面性と寸法安定性を付与するために熱処理をすることが好ましい。熱処理は、オーブン中や、加熱されたロール上など任意の方法により行うことができる。熱処理温度は、延伸温度以上融点以下の任意の温度とすることができるが、成形加工性の点から160〜240℃の温度が好ましい。また、熱処理時間は、他の特性を悪化させない範囲において任意とすることができるが、通常1〜30秒間行うことが好ましい。さらに、熱処理は、ポリエステルフィルムを長手方向および幅方向に弛緩させて行ってもよい
また、本発明のポリエステルフィルムは非常に成形性に優れているため、成形加工用途に使用することが好ましい。成形加工用途とは、例えば、基材に貼り合せて加工したり、フィルムそのものを加工したりして、容器などの形態に加工する用途である。ここで言う、基材とは特に限定されないが、樹脂シートや金属、紙、また木材などが挙げられる。
(物性・評価)
(1)昇温結晶化温度(Tcc
ポリエステルフィルムを5mgとり、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製RDC220型)により、20℃/分の昇温速度で300℃の温度まで昇温・溶融し、次いで急冷後、再度300℃の温度まで昇温し、結晶化発熱ピーク温度を測定し、昇温結晶化温度 とした。
(2)ヘイズ
全自動直読ヘイズ コンピューターHGM−DP(スガ試験機(株)製)を用いて、ポリエステルフィルムの厚み方向のヘイズを5回測定しその平均値を用いた。
(3)厚みむら
アンリツ株式会社製フィルム シックネステスター「KG601A」および電子マイクロメータ「K306C」を用い、ポリエステルフィルムの縦方向に30mm幅、10m長にサンプリングしたポリエステルフィルムを搬送速度3m/minで連続的に厚みを測定した。10m長での厚み最大値Tmax(μm)と、最小値Tmin(μm)から、次式で
R=Tmax−Tmin
Rを求め、Rと10m長の平均厚みTave(μm)から、次式により厚みむらを求めた。
厚みむら (%)=(R/Tave)×100。
(4)機械特性(ヤング率、破断点応力、破断点伸度)
引張試験機(オリエンテック社製テンシロンAMF/RTA−100)を用いて、幅10mmのサンプルフィルムをチャック間長さ50mm(初期試料長)となるようにセットし、温度25℃、湿度65%RHの条件下で、引張速度300mm/分で引張試験を行った。なお、破断点伸度は、以下の式より求めた。
破断点伸度(%)={(フィルム破断時の試料長−初期試料長)/初期試料長}×100
また、ヤング率は、引張試験で記録した応力−歪み曲線をMP−200Sデータ処理プログラムを用いて、立ち上がり部分の接線より求めた。
(実施例1)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸83モル%と、炭素数36の水添ダイマー酸17モル%を用い、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いてポリエステルA(Tm189℃)を得た(以下、PBT−DA17とする)。ポリエステルBして、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)を使用し、ポリエステルCとして、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとする)を使用した。ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルCの重量比を、質量比10:80:10で混合し、真空乾燥機にて180℃の温度で4時間乾燥し、水分を十分に除去した。その後、単軸押出機に供給し、280℃の温度で溶融して、Tダイから25℃の温度に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸ポリエステルフィルムとした。
次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにて未延伸ポリエステルフィルム温度を上昇させ、最終的に未延伸ポリエステルフィルム温度85℃で長手方向3.1倍延伸し、すぐに40℃の温度に温度制御した金属ロールで冷却した。次いで、テンター式横延伸機にて予熱温度90℃、延伸温度105℃で幅方向に3.1倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度210℃で5秒間の熱処理を行い、フィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムについて、機械特性を評価した。結果は表1に示すとおり、低応力で高伸度であり、成形性に優れたポリエステルフィルムであった。
(実施例2)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸85モル%と、炭素数36の水添ダイマー酸15モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを38モル%、1,4−ブタンジオールを62モル%を用いてポリエステルA(Tm163℃)を得た(以下、P(E/B62)T−DA15とする)。ポリエステルBしてPETを使用し、ポリエステルCとしてPBTを使用した。ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルCの重量比を、質量比20:60:20で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、実施例1と同様に低応力で高伸度であり、成形性に優れたポリエステルフィルムであった。結果を表1に示す。
(実施例3)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90モル%と、炭素数36の水添ダイマー酸10モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを59モル%、1,4−ブタンジオールを41モル%を用いてポリエステルA(Tm163℃)を得た(以下、P(E/B41)T−DA10とする)。ポリエステルBしてPETを使用し、ポリエステルCとしてPBTを使用した。ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルCの重量比を、質量比20:65:15で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、実施例1、2と同様に低応力で高伸度であり、成形性に優れたポリエステルフィルムであった。結果を表1に示す。
(実施例4)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90モル%と、炭素数36の水添ダイマー酸10モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを59モル%、1,4−ブタンジオールを41モル%を用いてポリエステルA(Tm163℃)を得た(以下、P(E/B41)T−DA10とする)。ポリエステルBしてPETを使用し、ポリエステルCとしてPPTを使用した。ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルCの重量比を、質量比10:80:10で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、実施例1、2、3と同様に低応力で高伸度であり、成形性に優れたポリエステルフィルムであった。結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリエステルAとしてPBT−DA17を用い、ポリエステルBとしてPETを用い、質量比20:80で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、ヘイズが高く、透明性が低いポリエステルフィルムであった。また、機械的特性を評価した結果を表2に示すが、実施例1〜3に比べて破断点応力が高く、伸度も低いため成形性に劣るポリエステルフィルムであった。結果を表2に示す。
(比較例2)
ポリエステルAとしてP(E/B41)T−DA10を用い、ポリエステルBとしてPETを用い、質量比10:90で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向フィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは昇温結晶化温度が高く、規定の範囲外であった。また、機械特性を評価した結果を表2に示すが、比較例1と同様に、実施例1〜3に比べて破断点応力が高く、伸度も低いため成形性に劣るポリエステルフィルムであった。結果を表2に示す。
(比較例3)
ポリエステルAとしてPBT−DA17を用い、ポリエステルBとしてPETを用い、ポリエステルCとしてPBTを用い、質量比10:25:65で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向フィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、昇温結晶化温度が低く、規定の範囲外であった。また、機械特性を評価した結果を表2に示すが、比較例1、2と同様に、実施例1〜3に比べて破断点応力が高く、伸度も低いため成形性に劣るポリエステルフィルムであった。結果を表2に示す。
(実施例5)
ポリエステルAとしてPBT−DA17を用い、ポリエステルBとしてPETを用い、ポリエステルCとしてPBTを用い、質量比10:80:10で混合し、真空乾燥機にて180℃の温度で4時間乾燥し、水分を十分に除去した。その後、単軸押出機に供給し、280℃の温度で溶融して、Tダイから25℃の温度に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸ポリエステルフィルムとした。得られた、未延伸ポリエステルフィルムを100mm×100mmの大きさにカットして、パンタグラフ方式のフィルムストレッチャーを用いて長手方向、幅方向それぞれ3.1倍に逐次二軸延伸を行い、フィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは厚みむらが大きく、同組成の実施例1と比較して伸度が低く、やや成形性が悪くなった。結果を表3に示す。
(実施例6)
ポリエステルAとしてPBT−DA17を用い、ポリエステルBとしてPETを用い、ポリエステルCとしてPBTを用い、質量比10:30:60で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、実施例1〜3に比べてやや成形性に劣るポリエステルフィルムとなった。結果を表3に示す。
(実施例7)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90モル%と、セバシン酸10モル%を用い、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いてポリエステルA(Tm241℃)を得た(以下、PBT−S10とする)。ポリエステルBとしてPETを使用し、ポリエステルCとしてPBTを使用した。ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルCを、質量比20:50:30で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、実施例1〜3に比べてやや成形性に劣るポリエステルフィルムとなった。結果を表3に示す。
(実施例8)
ポリエステルAとして、P(E/B62)T−DA15、ポリエステルBしてPETを使用した。ポリエステルAとポリエステルB重量比を、重量比40:60で混合し、実施例1と同様にしてフィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、実施例1〜3に比べてやや成形性に劣るポリエステルポリエステルフィルムとなった。結果を表3に示す。
本発明のポリエステルフィルムは、成形性に非常に優れており、様々な形に容易に成形でき、また透明性にも優れているために、特に成形加工用途として優れた特性を有するフィルムを提供することができる。例えば、金属板や樹脂などに貼り合わせた後に成型加工することによって得られる包装容器や、フィルム自体を成型加工して得られる包装容器などに好ましく用いられることができる。

Claims (10)

  1. 少なくとも2種類のポリエステルからなるポリエステルフィルムであって、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分を1〜80モル%含有するポリエステルAと、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルBを含み、かつ昇温結晶化温度が70℃〜140℃で、ヘイズが1〜20%であることを特徴とするポリエステルフィルム。
  2. ポリエステルAの含有量が1〜40質量%であり、ポリエステルBの含有量を20〜99質量%であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルフィルム。
  3. ブチレンテレフタレートおよび/またはプロピレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルCを含んでなることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステルフィルム。
  4. ポリエステルCの含有量が1〜70質量%であることを特徴とする請求項3記載のポリエステルフィルム。
  5. 炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分を1〜80モル%含有するポリエステルAと、ブチレンテレフタレートおよび/またはプロピレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルCとの添加率を、それぞれW質量%およびW質量%としたとき、下記の式が成り立つことを特徴とする請求項3または4記載のポリエステルフィルム。
    /W=0.6〜1.5
  6. フィルムの長手方向10mにおける厚みむらが1〜20%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. ポリエステルAが、炭素数10以上のアルキレン基を有する長鎖脂肪族ジカルボン酸成分を1〜30モル%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  8. ポリエステルAの長鎖脂肪族ジカルボン酸成分がダイマー酸成分であることを特徴とする請求項7に記載のポリエステルフィルム。
  9. 二軸配向していることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  10. 成形加工用途に使用することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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