JP2009173799A - ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】低融点にもかかわらず結晶性に優れ、操業性よく生産することができ、バインダー繊維をはじめ、各種の接着用途に好適に使用することができるポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】テレフタル酸を70モル%以上と脂肪族ジカルボン酸を5〜30モル%含有するジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを80モル%以上含有するジオール成分とからなるポリエステルであって、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステル樹脂。b/a≧0.05(mW/mg・℃)・・・(1)
【選択図】図1
【解決手段】テレフタル酸を70モル%以上と脂肪族ジカルボン酸を5〜30モル%含有するジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを80モル%以上含有するジオール成分とからなるポリエステルであって、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステル樹脂。b/a≧0.05(mW/mg・℃)・・・(1)
【選択図】図1
Description
本発明は、1,6−ヘキサンジオールを多く含有するポリエステル樹脂であって、低融点にもかかわらず結晶性に優れ、操業性や生産性に優れるポリエステル樹脂に関するものである。
近年、ポリエステル系樹脂において低融点化したものの要求が高く、繊維化してバインダー繊維として用いたり、接着剤等に用いられている。このような用途には、一般に共重合ポリエステルが用いられており、例えば、特許文献1にはバインダー繊維に好適なポリマーとして、ポリマー組成がいくつか提案されている。
しかしながら、これらの共重合ポリエステルは、明確な結晶融点を示さないものが多く、通常90〜200℃で軟化する。明確な結晶融点を示さないポリマーを用いて繊維を製造する場合、紡糸、延伸、熱処理工程において繊維の融解、繊維同士の膠着が生じやすく、また、それぞれの製造工程において装置への繊維の溶着も生じやすく、操業性に劣るものであった。
そこで、上記の問題を解決するには、共重合ポリエステルは明確な結晶融点を示すことが望ましい。特許文献2には、酸成分が芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ラクトンからなり、ジオール成分が脂肪族ジオール成分からなり、結晶性が良好なポリエステルも提案されている。
しかしながら、この共重合ポリエステルは融点が150〜200℃の範囲のものであり、まだ低融点領域であるとはいえず、接着成分として溶融させて用いる際には加工温度を高くする必要があり、コスト的にも不利であった。
また、特許文献3には、1,6−ヘキサンジオールをジオール成分に用いた共重合ポリエステルからなる繊維が記載されている。この共重合ポリエステルは結晶融点が130〜210℃のものであるが、結晶性が十分ではなく、特に繊維化する際の紡糸、延伸、熱処理工程において繊維の融解、繊維同士の膠着が生じやすく、また各工程において繊維の装置への溶着等が生じやすく、操業性に劣るものであった。
特開平7-34327号公報
特開平9-12693号公報
特開昭63-112723号公報
本発明は、上記のような問題点を解決するものであって、低融点にもかかわらず結晶性に優れ、操業性よく生産することができ、バインダー繊維をはじめ、各種の接着用途に好適に使用することができるポリエステル樹脂を提供しようとするものである。
本発明者は、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、テレフタル酸を70モル%以上と脂肪族ジカルボン酸を5〜30モル%含有するジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを80モル%以上含有するジオール成分とからなるポリエステルであって、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足することを特徴とするポリエステル樹脂を要旨とするものである。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
本発明のポリエステル樹脂は、低融点にもかかわらず結晶性に優れているため、操業性よくチップ化して生産することができ、バインダー繊維をはじめ、各種の接着用途に好適に使用することができる。特に繊維を製造する際には、紡糸、延伸、熱処理工程において繊維の融解、繊維同士の膠着が生じることなく、また各工程において繊維の装置への溶着等が生じにくく、優れた性能を有する繊維を操業性よく生産することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸を70モル%以上と脂肪族ジカルボン酸を5〜30モル%含有するジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを80モル%以上含有するジオール成分とからなるものである。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸(以下、TPAとする)を70モル%以上含有するものであり、中でも80モル%以上含有することが好ましい。TPAが70モル%未満であると、ポリマーの融点が本発明の範囲外のものとなったり、結晶性が低下しやすくなるため好ましくない。
脂肪族ジカルボン酸の含有量は5〜30モル%であり、中でも10〜20モル%であることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
ジカルボン酸成分として、脂肪族ジカルボン酸を含有することによって、良好な結晶性を有しながら、低融点のポリエステル樹脂とすることができる。したがって、脂肪族ジカルボン酸の含有量が5モル%未満であると、この効果を奏することができない。
本発明においては、ポリエステルの特性を損なわない範囲であれば、他のカルボン酸も含有していてもよい。ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、他のカルボン酸としては、ヒドロキシカルボン酸であってもよく、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
なお、多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが挙げられる。
また、本発明のポリエステル樹脂は、ジオール成分として、1,6−ヘキサンジオール(以下、HDとする)を80モル%以上含有するものであり、中でも90〜100モル%含有することが好ましい。HDが80モル%未満の場合、融点が150℃を超えるものとなる。
さらに、ジオール成分には、HD、EGやBD以外の他の成分として、その特性を損なわない範囲で、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコールなどに例示される芳香族グリコールを用いることができる。
また、グリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどを用いることができる。
さらに、環状エステルとして、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどを用いることができる。
そして、本発明のポリエステル樹脂の融点は、100〜150℃であり、中でも105〜140℃、さらには110〜130℃であることが好ましい。ポリエステルの融点が100℃未満であると、熱安定性が悪くなるため、チップ化したり繊維化する際の操業性や生産性も低下する。一方、融点が150℃を超えると、接着用途に用いる際に、高温での熱処理が必要となりコスト的に不利となる。
本発明のポリエステル樹脂は、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有するものであり、中でも0.5〜3.0質量%含有することが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、前記したような共重合組成であることにより、結晶性を有しているものであるが、結晶核剤を含有することによって降温時の結晶化速度を向上させることができ、後述する(1)式を満足することができるものとなり、チップ化したり繊維化する際の加工性に優れるものとなる。
結晶核剤の含有量が0.01質量%未満であると、降温時の結晶化速度を向上させることができず、本発明のポリエステル樹脂は後述する(1)式を満足することができない。一方、5.0質量%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、本発明のポリエステル樹脂の加工性が悪化し、例えば繊維にする際には、紡糸、延伸時の操業性を悪化させることとなる。
結晶核剤としては無機系微粒子が好ましく、中でもタルクなどの珪素酸化物を主成分とするものが好ましい。さらに、無機系微粒子として平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m2/g以上のものが好ましい。上記平均粒径もしくは比表面積を満足していない場合、結晶核としての機能に乏しく、ポリエステルの降温結晶性が不十分となり(1)式を満足することが困難となる。
結晶核剤を添加する方法としては、粉体のまま、あるいはジオールスラリーの形態でポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。中でも、結晶核剤としての効果を良好なものとするには、エチレングリコール等のグリコールにスラリー状態あるいは溶解させた状態で添加することが好ましい。
そして、本発明のポリエステル樹脂は、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線において、b/aが0.05(mW/mg・℃)以上であることが必要であり、0.06以上であることが好ましい。一方、b/aが大きいほど降温時の結晶性に優れるものとなるが、本発明で目的とする効果を奏するには、b/aを0.5以下とすることが好ましい。
上記b/aは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線より求められる。図1に示すように、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
b/aは、降温時の結晶性を表す指標であり、b/aの値が高いと結晶化速度が速く、逆に0に近いほど、結晶化速度が遅いことを示している。b/aが0.05(mW/mg・℃)未満の場合、降温時の結晶化速度が遅いため、チップ化する際にローラやカッターへの巻き付きが生じたり、2つ以上のチップが溶着した連チップの発生が生じる。また、チップの貯蔵、運搬及び乾燥工程においてチップ同士の溶着や壁面への溶着が生じる。さらに、繊維化する際には紡糸、延伸、熱処理工程において繊維の融解、繊維同士の膠着が生じやすく、各工程において装置への繊維の溶着等も生じるものとなる。
なお、上記したように、b/aはポリエステルの共重合組成を特定のものとし、結晶核剤の含有量を上記範囲の量とすることにより、本発明で規定する範囲のものにすることができる。
本発明における融点とDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(Diamond DSC)を用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/分で測定するものである。
また、本発明のポリエステル樹脂は、極限粘度が0.5以上であることが好ましい。極限粘度が0.5未満のものでは、各種の物理的、機械的、化学的特性が劣るとともに、繊維とする際には紡糸性が損なわれるため好ましくない。一方、極限粘度が高すぎても溶融粘度が高くなることにより押出が困難になったり、また繊維とする際には、溶融粘度を下げるべく紡糸温度を上げると、ポリエステルの熱分解が顕著になり紡糸が困難になることから、実用上1.5以下であることが好ましい。
さらに、本発明のポリエステル樹脂中には、目的を損なわない範囲内で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
次に、本発明のポリエステル樹脂の製造方法について、一例を用いて説明する。
ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、重縮合反応を行うことにより本発明のポリエステル樹脂組成物を製造することができる。
具体的には、重縮合反応は通常 0.01〜10hPa程度の減圧下、220〜280℃の温度で所定の極限粘度のものが得られるまで行う。また、重縮合反応は、触媒存在下で行われるが、触媒としては従来一般に用いられているアンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マンガンおよびコバルト等の金属化合物のほか、スルホサリチル酸、o-スルホ安息香酸無水物等の有機スルホン酸化合物を用いることができる。
結晶核剤や各種添加剤(本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる)は、粉体またはジオールスラリー等の形態で、ポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。
そして、重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
〔ポリエステル樹脂〕
(a)極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(b)融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(c)ポリマー組成
ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(d)操業性
(チップ化)
ポリエステル樹脂をAUTOMATIK社製USG-600型カッターでチップ化する際、フィードローラまたはカッターブレードへのポリエステルの巻き付きやストランド間の溶着により2つ以上のチップが溶着したものの発生等により、カッターの運転を中断した場合を×、溶着等の問題が生じ、時折中断するもののチップ化できた場合を△、溶着等の問題は生じながらも、カッターの運転を中断することなくチップ化できた場合を○、溶着による問題が生じることなくチップ化できた場合を◎とした。
(チップのブロッキング)
得られたチップの貯蔵・運搬および乾燥工程で、崩れないブロック状の塊や壁面への溶着物が生じた場合を×、ブロック状の塊や壁面への溶着物があり、ハンマー等で直接衝撃を加えるなどある程度の力により解消される場合を△、ブロック状の塊や壁面への溶着物があるものの、手で触れたり、ハンマー等により壁面へ衝撃を加えることによりそれらが解消される程度である場合を○、ブロック状の塊や壁面への溶着が全く発生しなかった場合を◎とした。
〔無機系微粒子〕
(e)平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、エチレングリコール中の試料の平均粒径の値を測定した。
(f)比表面積
BET法により測定した。
〔ポリエステル樹脂〕
(a)極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(b)融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(c)ポリマー組成
ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(d)操業性
(チップ化)
ポリエステル樹脂をAUTOMATIK社製USG-600型カッターでチップ化する際、フィードローラまたはカッターブレードへのポリエステルの巻き付きやストランド間の溶着により2つ以上のチップが溶着したものの発生等により、カッターの運転を中断した場合を×、溶着等の問題が生じ、時折中断するもののチップ化できた場合を△、溶着等の問題は生じながらも、カッターの運転を中断することなくチップ化できた場合を○、溶着による問題が生じることなくチップ化できた場合を◎とした。
(チップのブロッキング)
得られたチップの貯蔵・運搬および乾燥工程で、崩れないブロック状の塊や壁面への溶着物が生じた場合を×、ブロック状の塊や壁面への溶着物があり、ハンマー等で直接衝撃を加えるなどある程度の力により解消される場合を△、ブロック状の塊や壁面への溶着物があるものの、手で触れたり、ハンマー等により壁面へ衝撃を加えることによりそれらが解消される程度である場合を○、ブロック状の塊や壁面への溶着が全く発生しなかった場合を◎とした。
〔無機系微粒子〕
(e)平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、エチレングリコール中の試料の平均粒径の値を測定した。
(f)比表面積
BET法により測定した。
実施例1
エステル化反応缶に、TPA37.4kg、アジピン酸(AD)3.6kg、HD47.2kg(モル比 1/1.6)、エステル化反応触媒としてヒドロキシモノブチルスズオキサイド0.01kgを投入し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で3時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。
次に、艶消し剤として酸化チタンを0.2kg、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m2/gのタルクを0.6kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートをポリエステルの酸成分1モルに対して8×10−4モルを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、70分後に1.2hPa以下にした。この条件下で撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、AUTOMATIK社製USG-600型カッターでチップ化し、ポリエステル樹脂を得た。
エステル化反応缶に、TPA37.4kg、アジピン酸(AD)3.6kg、HD47.2kg(モル比 1/1.6)、エステル化反応触媒としてヒドロキシモノブチルスズオキサイド0.01kgを投入し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で3時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。
次に、艶消し剤として酸化チタンを0.2kg、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m2/gのタルクを0.6kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートをポリエステルの酸成分1モルに対して8×10−4モルを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、70分後に1.2hPa以下にした。この条件下で撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、AUTOMATIK社製USG-600型カッターでチップ化し、ポリエステル樹脂を得た。
実施例2、比較例1〜3
結晶核剤の含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
結晶核剤の含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
実施例3
結晶核剤として平均粒径2.5μm、比表面積25m2/gのタルクを用いた以外は実施例1と同様にして実施した。
結晶核剤として平均粒径2.5μm、比表面積25m2/gのタルクを用いた以外は実施例1と同様にして実施した。
実施例4、比較例4
アジピン酸の含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
アジピン酸の含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
実施例5
アジピン酸に代えてセバシン酸(SE)を用い、含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
アジピン酸に代えてセバシン酸(SE)を用い、含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
比較例5
エステル化反応缶に、TPA41.5kg、EG19.8kg、HD9.4kg(モル比 1/1.6)を投入し、それぞれの含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
エステル化反応缶に、TPA41.5kg、EG19.8kg、HD9.4kg(モル比 1/1.6)を投入し、それぞれの含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
比較例6
アジピン酸に代えてイソフタル酸(IPA)を用い、含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
アジピン酸に代えてイソフタル酸(IPA)を用い、含有量が表1に示す値のものとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
実施例1〜5、比較例1〜6で得られたポリエステル樹脂の特性値及び操業性の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜5のポリエステル樹脂は、重合性が良好であり、結晶性に優れており、(1)式を満足するものであったので、チップ化工程での操業性に優れ、チップのブロッキングも生じなかった。
一方、比較例1のポリエステル樹脂は結晶核剤を含有しておらず、比較例2のポリエステル樹脂は結晶核剤の含有量が少なかったため、ともに結晶性が低く、(1)式を満足せず、チップ化工程での操業性が悪く、チップのブロッキングも生じた。比較例3のポリエステル樹脂は、結晶核剤の含有量が多すぎたため、この樹脂を用いて溶融紡糸すると、紡糸時に糸切れが多発した。比較例4のポリエステル樹脂は、TPAの含有量が少なすぎたため、融点が低く、また、結晶性が低く(1)式を満足せず、チップ化工程での操業性が悪く、チップのブロッキングも生じた。比較例5のポリエステル樹脂は、HDが20モル%であったため、融点が150℃を超えるものであった。比較例6のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸としてIPA(芳香族ジカルボン酸)を含有するものであったため、結晶性を有しておらず、融点がDSCでは確認できず、熱安定性が悪く、チップ化できなかった。
Claims (2)
- テレフタル酸を70モル%以上と脂肪族ジカルボン酸を5〜30モル%含有するジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを80モル%以上含有するジオール成分とからなるポリエステルであって、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足することを特徴とするポリエステル樹脂。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。 - 結晶核剤が、平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m2/g以上の無機系微粒子である請求項1記載のポリエステル樹脂。
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