本発明は、ビデオカメラ、デジタル及び銀塩スチルカメラといった撮影装置や、双眼鏡、望遠鏡、フィールドスコープといった観察装置を含む光学機器に搭載される光学防振装置に関する。
上記のような光学機器には、いわゆる手振れによる像振れを抑えるために光学防振装置が搭載されることが多い。光学防振装置は、光学機器の振れを加速度センサや角速度センサ等の振れセンサにより検出し、その検出結果に応じて補正レンズを光軸に直交する面内で移動させることで像面での像の変位を抑える。補正レンズの駆動には、マグネットとコイルにより構成される電磁アクチュエータが使用されるのが一般的である。
光学防振装置では、補正レンズを、光軸に直交する面内で自由に平行移動できるように保持することが必要である一方、アクチュエータによる駆動及び位置制御を正確に行うために、補正レンズの光軸回りでの回転(ロール)を防止する必要がある。
特許文献1にて開示された光学防振装置では、補正レンズの光軸回りの回転を防止するためにガイド機構を設けている。さらに、該ガイド機構のがたつきをばね付勢によって抑えることで、防振動作時の振動の発生を抑えたり、駆動音を低減したりしている。
また、特許文献2では、L字形状のガイド軸で補正レンズの光軸回りの回転を防止した光学防振装置が開示されている。該ガイド軸による補正レンズのガイド方向は、アクチュエータによる駆動方向に対して45度の向きに設定されている。
ただし、上記特許文献1,2の光学防振装置では、補正レンズの光軸回りの回転を抑制するためのガイド機構として、滑りによって補正レンズを平行移動ガイドする構成を有する。したがって、ガイド機構において発生する滑り摩擦が、特に補正レンズの微小駆動時に駆動応答性を劣化させるという問題がある。
このため、特許文献3には、転動可能なボールを用いて補正レンズの光軸回りの回転を抑える光学防振装置が開示されている。この装置は、互いに直交する方向に延びたV溝部が両面に形成されたガイド部材を有する。さらに、該ガイド部材の一方の面のV溝部内に配置されて装置のベース部材との間に挟み込まれるボール(鋼球)と、他方の面のV溝部内に配置されて補正レンズを保持するレンズ保持部材との間に挟み込まれるボールとを有する。
特開平11−258651号公報(段落0051〜0051、図2,4等)
特開平10−197911号公報(段落0022〜0026、図7等)
特開2004−101721号公報(段落0051〜0051、図2,4等)
上記特許文献3にて開示された光学防振装置では、ガイド部材の両面にV溝部が形成されている一方、ベース部材及びレンズ保持部材におけるボールとの当接面は平面として形成されている。ボールの転がり摩擦は滑り摩擦よりも小さいので、微小な振動や低周波の振動が装置に加わっている状態では平面としての当接面に対して滑らずに転がる。これにより補正レンズの光軸回りでの回転を良好に抑制できるとともに、滑り摩擦による駆動応答性の劣化も防止できる。
しかしながら、大きな振幅の振動や高周波の振動が加わった場合や回転方向の強い外力(トルク)が加わった場合に、ボールが当接面に対して滑り、光軸回りの回転を抑えられない。
本発明は、大きな振動や高周波の振動、さらには大きな外力が加わった場合でも、補正レンズの光軸回りでの回転を良好に抑制でき、かつ摩擦抵抗少なく補正レンズをガイドできるようにした光学防振装置及びこれを備えた光学機器を提供する。
本発明の一側面としての光学防振装置は、ベース部材と、レンズを保持し、ベース部材に対するレンズの光軸に直交する面内での移動が可能なレンズ保持部材と、レンズ保持部材に、光軸に直交する第1の方向及び第2の方向への駆動力をそれぞれ与える第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータと、ベース部材に対して光軸に直交する方向において固定された第1のガイド部材と、第1のガイド部材とレンズ保持部材との間に配置され、ベース部材に対して光軸に直交する方向において移動可能な第2のガイド部材と、ベース部材とレンズ保持部材との間に配置され、レンズ保持部材のベース部材に対する光軸に直交する面内での移動に伴い転動可能な第1のボールと、第1のガイド部材と第2のガイド部材との間に配置された第2のボールと、第2のガイド部材とレンズ保持部材との間に配置された第3のボールとを有する。そして、第1のガイド部材及び第2のガイド部材は、第2のボールの転動を伴う光軸に直交する第3の方向への相対移動が許容され、かつ第2のボールによる第3の方向とは異なる方向への相対移動が制限されるように該第2のボールに当接する第1の制限部をそれぞれ有する。さらに、第2のガイド部材及びレンズ保持部材は、第3のボールの転動を伴う光軸に直交する第4の方向への相対移動が許容され、かつ第3のボールによって該第4の方向とは異なる方向への相対移動が制限されるように該第3のボールに当接する第2の制限部をそれぞれ有することを特徴とする。
なお、上記光学防振装置を備えた光学機器も本発明の他の側面を構成する。
本発明によれば、レンズ保持部材の光軸回りでの回転を制限しながら光軸直交面内にて任意の方向にレンズ保持部材を少ない摩擦抵抗で移動させることができる。このため、駆動応答性及び防振性能を向上させることができ、振動や騒音の発生の少ない光学防振装置及び光学機器を実現することができる。
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
図2及び図3には、本発明の実施例1である光学防振装置を備えたレンズ装置を示している。図2はレンズ装置の分解斜視図、図3は断面図である。
本実施例のレンズ装置は、物体側から凸凹凸凸の4つのレンズユニットにより構成された変倍光学系を有する。これらの図において、一点鎖線は、変倍光学系の光軸を示す。
L1は固定の第1レンズユニット、L2は光軸方向に移動することで変倍を行う第2レンズユニットである。第3レンズユニットL3は、固定の前側レンズサブユニットL3aと、可動の振れ補正用後側レンズサブユニットレンズ(以下、補正レンズという)L3bとにより構成されている。補正レンズL3bは、その光軸(又は変倍光学系の光軸)に直交する平面(以下、光軸直交面という)内で移動(シフト)することで防振動作(像振れ補正動作)を行う。
L4は光軸方向に移動することで、変倍に伴う像面変動の補正と焦点調節を行う第4レンズユニットである。
1は第1レンズユニットL1を保持する第1鏡筒、2は前部固定筒である。第1鏡筒1は、ビスを用いて前部固定筒2と一体化される。
3は第2レンズユニット2を保持する第2鏡筒である。4は変倍光学系を通過する光量を調節する光量調節ユニット(絞り)であり、複数枚の絞り羽根を移動させて絞り開口径の大きさを変化させることで光量を調節する。また、光量調節ユニット4は、静止画撮像時にシャッタとしても機能する。
5は上記光学防振装置としての防振ユニットであり、詳しくは後述する。6は光量調節ユニット4と防振ユニット5がビスにより固定される後部固定筒である。前部固定筒2と後部固定筒6は、ビスにより一体化される。
7は第4レンズユニットL4を保持する第4鏡筒である。8は後部枠であり、後部固定筒6にビスにより固定される。なお、ビスによって固定される各部材は、ピンと穴の組み合わせによって、各レンズユニットの光軸が互いに一致するように位置決めされる。
第2鏡筒3は、前部固定筒2と後部固定筒6に両端を支持された2本のバー9,10を用いて、いわゆるバー・スリーブ方式によって光軸方向に移動可能に支持されている。11は第2鏡筒3を光軸方向に移動させるステッピングモータユニットであり、モータ部11aと、前部固定筒2に取り付けられる取り付け板金11bと、モータ部11aの出力軸として形成された送りネジ部11cとにより構成されている。
第2鏡筒3には、送りネジ部11cに噛み合う不図示のラック部材が取り付けられている。これにより、モータユニット11(送りネジ部11c)が回転すると、第2鏡筒3は光軸方向に駆動される。
12は第2鏡筒3の基準位置を検出するためのフォトインタラプタである。第2鏡筒3に設けられた不図示の遮光部がフォトインタラプタ12の投光素子の光束を遮る位置が基準位置となる。第2鏡筒3を基準位置に移動させるズームリセット動作は、レンズ装置(後述するビデオカメラ)の電源投入時に行われる。そして、該基準位置からステッピングモータユニット11の駆動パルス数をカウントすることで、第2レンズユニットL2の位置を検出できる。
第4鏡筒7は、後部固定筒6と後部枠8とによって両端を支持される2本のバー13,14を用いたバー・スリーブ方式により光軸方向に移動可能に支持されている。15は第4鏡筒7を光軸方向に移動させるリニアモータである。該リニアモータは、図2に示すように、光軸に直交する向きにS極とN極を有する駆動磁石15aと、第4鏡筒7に接着により一体化された駆動コイル15bと、駆動磁石15aからの磁路を形成するためのヨーク15c,15dとにより構成されている。
駆動コイル15bに電流が流れると、駆動磁石15aの発生する磁束との磁気的な干渉により、いわゆるローレンツ力が発生し、これにより、第4鏡筒7は光軸方向に駆動される。本実施例では、図2に示すように、リニアモータ15をバー13と光軸を挟んで2組配置することで、第4鏡筒7をバランス良く駆動可能としている。
図2において、16は後部固定筒6に固定され、投受光素子により構成される位置検出ヘッドである。17は第4鏡筒7に接着により一体化される光学スケールである。位置検出ヘッド16の投光素子から投光された光束は、光学スケール17に設けられた繰り返しパターンで反射され、位置検出ヘッド16の受光素子上に繰り返しパターンの像を結ぶ。第4鏡筒7が光軸方向に移動すると、位置検出ヘッド16の受光素子上に形成さける繰り返しパターン像も移動するので、第4鏡筒7の動き情報を電気信号として取り出せる。
ただし、得られる動き情報は相対移動量であるので、基準位置の設定及びその検出が必要となる。この基準位置は、例えば、フォトインタラプタと遮光部(遮光部材)とを用いる方法や、後部固定筒6又は後部枠8に設けた突起部に第4鏡筒7に設けられた基準面を当接させる方法を採ることができる。第4鏡筒7を基準位置に移動させるフォーカスリセット動作は、レンズ装置(後述するビデオカメラ)の電源投入時に行われる。そして、該基準位置からの相対移動量を検出することで、第4レンズユニットL4の位置を求めることができる。
次に、防振ユニット5の構成について図1、図3及び図4を用いて詳細に説明する。図1は防振ユニット5を前側(物体側)から見たときの分解斜視図、図4は防振ユニット5を裏面側(像面側)から見たときの分解斜視図である。
101は補正レンズ(後側レンズサブユニット)L3bを保持するレンズ保持部材としてのシフト鏡筒である。102は該防振ユニットのベース部材の一部を構成するベース鏡筒であり、前側レンズサブユニットL3aを保持している。
103pは磁石であり、図3に示すように、光軸に直交する方向の半分ずつの部分においてS極とN極とが光軸方向で反対位置となるように着磁されている。104pは磁石103pの背面に配置された下ヨークであり、磁気回路の一部を構成する。105pは駆動コイルであり、磁石103pの上下に配置された2つの磁極に対向するように配置されている。
106は磁気回路の一部を構成する上ヨークである。下ヨーク104p、磁石103p及び上ヨーク106は、ベース鏡筒102に固定されて磁気回路を形成している。駆動コイル105pは、シフト鏡筒101に接着により固定される。
駆動コイル105pに通電されると、磁気回路内のギャップ磁束と駆動コイル105pが発生する磁束とが磁気的に干渉して、いわゆるローレンツ力が発生し、これによりシフト鏡筒101に駆動力が与えられ、シフト鏡筒101がピッチ方向に駆動される。すなわち、下ヨーク104p、磁石103p、駆動コイル105p及び上ヨーク106によって、シフト鏡筒101(つまりは補正レンズL3b)を光軸に直交するピッチ方向(垂直方向)に移動させる第1のアクチュエータが構成される。ピッチ方向は、第1の方向に相当する。
なお、各符号の添え字pは、ピッチ方向の回転振れによる像振れを補正するための構成要素であることを示す。一方、ヨー方向(光軸に直交する方向であって水平方向)の回転振れによる像振れを補正するための構成要素には、添え字yを付している。このことは、後述する位置検出のための構成及び後述する他の実施例でも同じである。
また、シフト鏡筒101や他の部材の移動方向である光軸に直交する方向(又は光軸に直交する面内)について、「直交」とは、完全に光軸に直交する場合はもちろん、許容誤差の範囲内で完全な直交からずれている場合(直交とみなせる場合)も含む。このことも、後述する他の実施例において同じである。
下ヨーク104y、磁石103y、駆動コイル105y及び上ヨーク106によって、シフト鏡筒101をヨー方向に移動させる第2のアクチュエータが構成される。ヨー方向は、第2の方向に相当する。
109a,109b,109cは第1のボール(球状部材)であり、本実施例では3つ設けられている。第1のボール109a,109b,109cは、SUS440Cやセラミックといった硬くて形状精度及び表面仕上げの良いものを用いるとよい。特に、セラミックは非磁性体であり、磁石に吸着されないので、周囲の磁気により悪影響を受けず、好ましい。このことは、後述する他の実施例でも同じである。
3つのボール109a〜109cは、ベース鏡筒102に形成された、底面が平面である矩形の凹部102a,102b,102c内に配置されている。該凹部102a,102b,102cの内側面は、第1のボール109a,109b,109cの移動範囲を制限する。また、第1のボール109a,109b,109cは、シフト鏡筒101に形成された平面部101a,101b,101cに当接する。シフト鏡筒101は、後述する第1の付勢部材からの付勢力によって、凹部102a〜102cの底面と平面部101a〜101cとにより光軸方向において挟持される。
各凹部は、その中心位置に第1のボールが位置した状態から、シフト鏡筒101がその可動中心位置(変倍光学系の光軸位置)から機械的な最大可動位置まで移動する間に該第1のボールの転動を許容する大きさを有する。
これにより、シフト鏡筒101は、ベース鏡筒102に対して、光軸直交面内で第1のボール109a〜109cを転動させながら移動することができる。シフト鏡筒101の機械的な最大可動量は、シフト鏡筒101の円筒部101dとベース鏡筒102の内周にピッチ方向及びヨー方向に形成された平坦部102dとの間にある程度の隙間が残るように決められている。
次に、シフト鏡筒101の光軸回りの回転(以下、単にロールという)の抑制(制限)について説明する。
110は第1のガイド部材であるガイド部材である。111はガイド部材110とシフト鏡筒101との間に配置された第2のガイド部材であるロール防止部材である。
112a,112bは第2のボールであり、本実施例では2つ設けられている。第2のボール112a,112bは、ガイド部材110とロール防止部材111のそれぞれに形成された第1の制限部内に配置されている。
110a,110bはガイド部材110における2箇所に形成され、上記第1の制限部として機能する第1のガイド溝部である。また、111a,111bはロール防止部材111の2箇所に形成され、上記第1の制限部として機能する第1のガイド溝部である。第1のガイド溝部110a,111aが光軸方向にて向かい合ってできる空間内に第2のボール112aが配置されている。また、第1のガイド溝部110b,111bが光軸方向にて向かい合ってできる空間内に第2のボール112bが配置されている。
ガイド部材110は、後述する第2の付勢部材からの付勢力によってロール防止部材111(及びシフト鏡筒101)に向かって付勢されており、該付勢力によって各第1のガイド溝部は第2のボールを挟持している。第1のガイド溝部は、第2のボールに係合していると言い換えることもできる。
各第1のガイド溝部は、図中の矢印A方向に延びるように形成されており、ガイド部材110とロール防止部材111が第2のボールを転動させながら該矢印A方向に相対移動可能な長さを有する。各第1のガイド溝部の矢印A方向での端面と第2のボールとの当接により、ガイド部材110とロール防止部材111との相対移動範囲が制限される。矢印A方向は、光軸に直交する第3の方向に相当する。
さらに、各第1のガイド溝部は、第2のボールとの当接(係合)によって矢印A方向とは異なる方向へのガイド部材110とロール防止部材111の相対移動を制限する。
つまり、ガイド部材110とロール防止部材111は、第2のボールの転動を伴う第3の方向への相対移動が許容され、かつ第2のボールによる第3の方向と異なる方向への相対移動が制限されるように第2のボールに当接する第1の制限部をそれぞれ有する。
なお、第1のガイド溝部の詳細な形状については後述する。
113a,113bは第3のボールであり、本実施例では2つ設けられている。第3のボール113a,113bは、ロール防止部材111とシフト鏡筒101のそれぞれに形成された第2の制限部内に配置されている。
111A,111Bはロール防止部材111の2箇所に形成され、上記第2の制限部として機能する第2のガイド溝部である。また、101A,101Bはシフト鏡筒101の2箇所に形成され、上記第2の制限部として機能する第2のガイド溝部である。第2のガイド溝部111A,101Aが光軸方向にて向かい合ってできる空間内に第3のボール113aが配置されている。また、第2のガイド溝部111B,101Bが光軸方向にて向かい合ってできる空間内に第3のボール113bが配置されている。
ロール防止部材111は、ガイド部材110を介して作用する、後述する第2の付勢部材からの付勢力によってシフト鏡筒101に向かって付勢されており、該付勢力によって各第2のガイド溝部は第3のボールを挟持している。第2のガイド溝部は、第3のボールに係合していると言い換えることもできる。
各第2のガイド溝部は、図中の矢印B方向に延びるように形成されており、ロール防止部材111とシフト鏡筒101が第3のボールを転動させながら該矢印B方向に相対移動可能な長さを有する。各第2のガイド溝部の矢印B方向での端面と第3のボールとの当接により、ロール防止部材111とシフト鏡筒101の同方向への相対移動範囲が制限される。矢印B方向は、光軸に直交する第4の方向に相当する。
さらに、各第2のガイド溝部は、第3のボールとの当接(係合)によって矢印B方向とは異なる方向へのロール防止部材111とシフト鏡筒101の相対移動を制限する。
つまり、ロール防止部材111及びシフト鏡筒101は、第3のボールの転動を伴う第4の方向への相対移動が許容され、かつ第3のボールによって第4の方向と異なる方向への相対移動が制限されるように第3のボールに当接する第2の制限部をそれぞれ有する。なお、第2のガイド溝部の詳細な形状については後述する。
なお、本実施例では、矢印A方向と矢印B方向は、ピッチ方向及びヨー方向に対してそれぞれ45度の角度をなしている。
114a,114bはガイド部材110をロール防止部材111及びシフト鏡筒101に向かって光軸方向に付勢する第2の付勢部材としてのガイドスプリングである。
115はベース鏡筒102に対して位置決めされた上でビスにより固定されるセンサベースである。ベース鏡筒102とセンサベース115により固定部材としてのベース部材が構成される。
ガイド部材110は、このガイド部材110に設けられた位置決めピン110d,110eがセンサベース115に設けられた位置決め穴115dと回り止め長穴115eとにそれぞれ挿入されることで、光軸直交面内で位置決めされる。
ガイドスプリング114a,114bは圧縮コイルバネであり、その一端が位置決めピン110d,110eの根元部に当接し、他端がセンサベース115に当接することで、ガイド部材110をシフト鏡筒101に向かって付勢する。
112cはボール112a,112bと共にガイド部材110とロール防止部材111との間に配置されたボールである。該ボール112cは、ロール防止部材111に形成された底面が平面である凹部111c内に配置されている。凹部111cは、第1のガイド溝部111aと同様に、矢印A方向に該ボール112cの転動を許容する大きさを有する。また、ボール112cは、ガイド部材110に形成された平面部110cに当接している。
なお、凹部111cは、矢印A方向に直交する方向(矢印B方向)については、ボール112cの大きさに対して余裕を持った幅を有する。これにより、各第1のガイド溝部の製造誤差によるガイド部材110とロール防止部材111の矢印B方向における若干のずれを許容し、ガイド部材110とロール防止部材111が矢印A方向にスムーズに相対移動できるようにしている。
ガイドスプリング114a,114bによる付勢力の合力は、3つのボール112a〜112cを頂点とする三角形の内側を通るように作用する。これにより、ガイド部材110を安定的にシフト鏡筒101に向かって付勢することができる。
113cは第3のボール113a,113bと共にロール防止部材111とシフト鏡筒101との間に挟まれたボールである。該ボール113cは、シフト鏡筒101に形成された底面が平面である凹部101C内に配置されている。凹部101Cは、ガイド溝101bと同様に、矢印B方向に該ボール113cの転動を許容する大きさを有する。また、ボール113cは、ロール防止部材111に形成された凹部111C内に配置され、その底面に当接している。
なお、凹部101Cおよび凹部111Cは、矢印B方向に直交する方向(矢印A方向)については、ボール113cの大きさに対して余裕を持った幅を有する。これにより、各第2のガイド溝部の製造誤差によるロール防止部材111とシフト鏡筒101の矢印A方向における若干のずれを許容でき、ロール防止部材111とシフト鏡筒101が矢印B方向にスムーズに相対移動できるようにしている。
ガイドスプリング114a,114bによる付勢力の合力は、3つのボール113a〜113cを頂点とする三角形の内側を通るように作用する。これにより、ロール防止部材111を安定的にシフト鏡筒101に向かって付勢することができる。
本実施例では、第2の付勢部材として説明したガイドスプリング114a,114bの付勢力で、シフト鏡筒101もベース鏡筒102に向かって付勢している。つまり、ガイドスプリング114a,114bは第1の付勢部材を兼ねている。
次に、図5A、図6A及び図6Bを用いて、ボールを挟持するガイド溝部の形状について説明する。ここでは、代表として、第3のボール113aを挟持する第2のガイド溝部111A,101Aの形状について説明する。
図5Aは、第2のガイド溝部111A,101Aを、矢印B方向に直交する面で切断したときの断面図である。また、図6A及び図6Bは、第2のガイド溝部111A,101Aを、矢印A方向に直交する面で切断したときの断面図である。
図5Aの断面において、第2のガイド溝部111A,101Aはそれぞれ、その開口側から底面側に向かって間隔が狭まるように傾斜した2つの斜面を有する。第2のガイド溝部111Aの2つの斜面に第3のボール113aが2箇所で当接し、第2のガイド溝部101Aの2つの斜面に第3のボール113aが2箇所で当接することで、該第3のボール113aが挟み込まれる。なお、各第2のガイド溝部における第3のボールとの当接箇所は、2箇所より多くてもよい。
これにより、図6A及び図6Bに示すように、シフト鏡筒101がロール防止部材111に対して光軸直交面内で移動するのに伴い、第3のボール113aは、各斜面が延びる矢印B方向に転動する。一方、上記2つの斜面が配置された溝幅方向(矢印Bに直交する矢印A方向)への移動は、該2つの斜面との当接によって阻止される。
なお、第2のガイド溝部111B,101Bもこれと同様に構成されている。また、第1のガイド溝部(110a,111a),(110b,111b)は各斜面が延びる方向は矢印A方向であるが、形状としては同じである。第2のボール112a,112bは、各斜面が延びる矢印A方向には転動が許容され、溝幅方向には移動が阻止される。
以上の構成により、ロール防止部材111は、矢印A方向にのみ移動が可能で、シフト鏡筒101は、ロール防止部材111に対して矢印Bの方向のみ移動可能である。これにより、シフト鏡筒101は光軸回りの回転が制限(阻止)された状態で光軸直交面内で平行移動可能となる。
ここで、図6Aは、第3のボール113aが第2のガイド溝部111A,101A内の初期位置(矢印B方向における中央位置)に位置する状態を示している。この初期状態からシフト鏡筒101がロール防止部材111に対して移動する場合には、シフト鏡筒101がその最大可動量移動するまで、第3のボール113aは第2のガイド溝部111A,101A内で転動する。言い換えれば、第2のガイド溝部111A,101Aは、初期状態からシフト鏡筒101が移動する場合には、第3のボール113aの転動のみを許容する矢印B方向長さを有する。
一方、例えばボール113aが初期位置から図6Aにて左側に大きくずれている状態からシフト鏡筒101が左方向に変位すると、第3のボール113aは、シフト鏡筒101がその最大可動量移動する前に第2のガイド溝部111Aの左端面に当接する。このため、これ以後、シフト鏡筒101が最大可動量移動するまで、ボール113aは転動せずに第2のガイド溝101Aに対して滑ることになる。つまり、第2のガイド溝部111A,101Aに滑り摩擦が発生し、防振ユニット5の駆動応答性を劣化させる。
このため、本実施例では、該レンズ装置の起動時に、一旦シフト鏡筒101をその最大可動量だけ移動させ、そこからシフト鏡筒101を可動中心位置まで戻す。これにより、はじめに第2のガイド溝部111A,101A内で初期位置から大きくずれていた第3のボール113aは、初期位置又はその近くまで戻る。
つまり、すべてのガイド溝部(凹部も同様である)の長手方向範囲を適切な長さに設定し、シフト鏡筒101を機械的な最大可動量又は実使用時の最大移動量だけ駆動した後、可動中心位置に戻すことで、ボールを初期位置に移動させることができる。この動作を、以下の説明において、ボールのリセット動作と称する。
ボールのリセット動作により、実使用時にはシフト鏡筒101はすべての駆動方向に対してボールの転動のみでガタなくガイドされ、滑り摩擦を伴わないので、駆動応答性が良好となる。
以上説明した第1及び第2のガイド溝部の矢印A方向及び矢印B方向の長さとボールのリセット動作については、後述する他の実施例でも同じである。
次に、図5Bを用いて、第3のボール113a,113bとともに配置されるボール113cを収容する、ロール防止部材111とシフト鏡筒101に形成された凹部111C,101Cについて説明する。図5Bは、凹部111C,101Cを、矢印B方向に直交する面で切断したときの断面図である。
凹部111C,101Cはそれぞれ、平面形状の底面を有し、これらの底面がボール113cの光軸方向両端に当接することで挟み込まれる。一方、前述したように、矢印B方向に直交する矢印A方向には、ボール113cの大きさに対して余裕を持った幅を有する。これにより、先にも説明したように、各ガイド溝部の製造誤差によるロール防止部材111とシフト鏡筒101の矢印A方向における若干のずれを許容でき、ロール防止部材111とシフト鏡筒101が矢印B方向にスムーズに相対移動できる。第2のボール112a,112bとともに設けられたボール112cを収容する、ガイド部材110とロール防止部材111に設けられた凹部110c,111cについても同様である。
次に、図1、図3及び図4を用いて、シフト鏡筒101の位置を検出する構成について説明する。
116pは発光素子であるiREDであり、赤外光束を光軸方向に発光する。iRED116pは取り付け板金118pを介してシフト鏡筒101に固定される。117pは受光素子であるPSDであり、固定板金119pを介してセンサベース115にビスにより固定される。101pはシフト鏡筒101に設けられたiRED116pの投光窓である。
115pはセンサベース115に設けられたスリットである。iRED116pから投光された赤外光束は、スリット115pで通過光束が制限されてPSD117pで受光される。
スリット115pは横方向(ヨー方向)に長い開口部であり、PSD117pはピッチ方向に検出感度を持っている。iRED116p及び投光窓101pは移動するシフト鏡筒101に設けられており、スリット115p及びPSD117pは固定されたセンサベース115に設けられている。
ピッチ方向において、例えばシフト鏡筒101が上方向に移動すると、スリット115pを通過する光束はPSD117p上で下方向に変位する。これにより、シフト鏡筒101のピッチ方向の移動量が検出される。一方、シフト鏡筒101が横方向(ヨー方向)に移動するときは、スリット115pは横方向に長い開口部であるので、iRED116pからの赤外光束はスリット115pを通過してPSD117pに到達する。しかし、PSD117pは、横方向には検出感度を有していないので、その移動は検出されない。
このように、iRED116p、投光窓101p、スリット115p及びPSD117pによって構成される位置検出器により、シフト鏡筒101のピッチ方向での位置検出が行われる。
一方、iRED116y、投光窓101y、スリット115y及びPSD117yによって構成される位置検出器により、ピッチ方向と同様の検出原理で、シフト鏡筒101のヨー方向での位置検出が行われる。
120pはピッチ方向におけるシフト鏡筒101の駆動及び位置検出に関わる電気素子と外部回路との電気的接続に用いられるフレキシブル基板である。また、120yはヨー方向におけるシフト鏡筒101の駆動及び位置検出に関わる電気素子と外部回路との電気的接続に用いられるフレキシブル基板である。
次に、本実施例の防振ユニット5を有するレンズ装置をレンズ鏡筒部として備えた光学機器としてのビデオカメラの構成を、図7を用いて説明する。なお、本実施例では、レンズ装置を一体的に備えたビデオカメラについて説明するが、上記構成を有する防振ユニット5は、ビデオカメラや一眼レフカメラに取り外し可能に装着される光学機器としての交換レンズ装置にも搭載することができる。このことは、後述する他の実施例でも同じである。
レンズ装置150は、図2及び図3で説明したレンズ装置であり、本実施例の防振ユニット5を含む。
レンズ装置150内の変倍光学系を通過した光束は、赤外カット及び光学ローパス機能を有する光学フィルタ148を通って像面上に光学像を結ぶ。像面にはCCDセンサやCMOSセンサにより構成される撮像素子149が配置されており、光学像は該撮像素子149によって電気信号に変換される。撮像素子149から読み出された電気信号aは、カメラ信号処理回路151により画像信号bに変換される。
152はレンズ駆動を制御するマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータ152は、上述したフォトインタラプタ12を含むズームリセット回路154の出力をモニタしながらズームモータ駆動回路156を通じて第2レンズユニットL2を移動させる。また、マイクロコンピュータ152は、上述した位置検出ヘッド16と光学スケール17とにより構成されるフォーカス位置検出回路153の出力をモニタしながらフォーカス駆動回路155を通じて第4レンズユニットL4を移動させる。これにより、マイクロコンピュータ152は、正確な焦点距離情報とフォーカス位置情報とを得ながらズーム制御及びフォーカス制御を行うことができる。
157は光量調節ユニット4を駆動する露出制御駆動回路であり、カメラ信号処理回路151からマイクロコンピュータ152に取り込まれた画像信号bの明るさ情報に基づいて、光量調節ユニット4の絞り開口径や不図示のNDフィルタの出し入れが制御される。
158,159はビデオカメラのピッチ方向及びヨー方向の振れ角度を検出する角度検出回路である。振れ角度の検出は、振動ジャイロ等の角速度センサの出力を積分して行われる。両角度検出回路158,159の出力、すなわち傾き角度情報は、マイクロコンピュータ152に取り込まれる。なお、本実施例では、第1及び第2のアクチュエータの駆動力発生方向であるピッチ方向及びヨー方向と位置検出回路158,159による位置検出方向とを一致させているが、これらは異なっていてもよい。
160,161は防振ユニット5のシフト鏡筒101をピッチ方向及びヨー方向に移動させるために上述した駆動コイル105p,105yへの通電を行うコイル駆動回路である。
162,163はシフト鏡筒101のピッチ方向及びヨー方向の位置(シフト位置)を検出するためにiRED116p,116y及びPSD117p,117yを駆動する位置検出回路である。PSD117p,117yからの出力は、マイクロコンピュータ152に取り込まれる。なお、位置検出回路(位置検出器)については、iRED及びPSDを用いた光学式ではなく、磁石とホール素子を用いた磁気式のものを用いてもよい。
シフト鏡筒101(補正レンズL3b)を光軸直交面内で移動させると、補正レンズL3bを通過する光束が曲げられて撮像素子149上に形成されている光学像が移動する。シフト鏡筒101の移動による光学像の移動方向をビデオカメラが傾いたことによる本来の光学像の移動方向と逆とし、シフト鏡筒101の移動による光学像の移動量を本来の光学像の移動量と同じとするように駆動コイル105p,105yへの通電を制御する。これにより、ビデオカメラが傾いても(手振れしても)撮像素子149上に形成される光学像はほとんど動かない。つまり、光学防振が行われる。
マイクロコンピュータ152は、角度検出回路158,159により得られた傾き角度情報から位置検出回路162,163により得られたシフト位置情報を差し引き、それぞれの差分信号に対して増幅及び位相補償を行う。そして、この結果得られた駆動情報に応じて、上記差分が小さくなるように、コイル駆動回路160,161を通じて駆動コイル105p,105yへの通電をフィードバック制御する。
なお、前述したボールのリセット動作は、ビデオカメラの電源投入時にズーム及びフォーカスリセット動作に引き続いて、又は時分割で同時に行なわれる。これにより、ビデオカメラの電源投入前に各ボールが初期位置からずれていたとしても、撮像開始時からはボールの転がりによってシフト鏡筒101がガイドされるとともにロールが阻止され、優れた防振性能を発揮する。
また、ボールのリセット動作を、ビデオカメラにより撮像を行っていない状態をマイクロコンピュータ152で判断して適宜行うことで、撮像時に常に優れた防振性能を得ることができる。例えば、ビデオカメラの傾き角度をモニタし、使用者がビデオカメラを単に持ち歩いている状態と判断したときにボールのリセット動作を行う。また、一般に手振れ角度は0.5度から1度程度である場合が多く、撮像前にビデオカメラの機能を操作したりファインダ上で被写体を探したりする際には、手振れ角度を超える傾きが生じる。このため、その大きな傾きを検出してボールのリセット動作を行わせてもよい。
以上説明したように、本実施例では、シフト鏡筒101の光軸方向変位を阻止しつつ光軸直交面内での移動を許容するために転動可能なボールを使用し、さらにシフト鏡筒101のロールを防止しつつその平行移動をガイドするためにも転動可能なボールを使用する。これにより、シフト鏡筒101の駆動抵抗を小さく抑えることができ、シフト鏡筒を微小駆動する場合でも正確なシフト鏡筒101の位置制御を行うことができる。すなわち、良好な防振性能を有する防振ユニットを実現することができる。
しかも、シフト鏡筒101をがたつきが少ない状態で移動させることができるので、防振動作の静音化を図ったり、精度の高い位置フィードバック制御を行ったりすることができる。
また、本実施例では、シフト鏡筒101の光軸直交面内でのガイドを、該シフト鏡筒101とレンズ装置内の固定部材となるベース鏡筒102との間で挟持した第1のボール109a〜109cによって行う。これにより、ベース鏡筒102とシフト鏡筒101との間にロール防止のためのボールやガイド部材110又はロール防止部材111が介在している場合のようにこれらの部材の製造誤差が累積してシフト鏡筒101の位置精度に及ぶことを回避できる。したがって、シフト鏡筒101の位置制御精度を向上させることができる。
また、本実施例では、第1の付勢部材と第2の付勢部材とを兼ねるガイドスプリング114a,114bを用いることで、構成部品の削減による防振ユニットの小型化を実現している。また、このガイドスプリング114a,114bは、シフト鏡筒101が光軸直交面内で移動するのに伴って光軸直交方向に変形しないので、該変形によるシフト鏡筒101の駆動負荷の増加を回避できる。
さらに、本実施例では、第1及び第2のアクチュエータの駆動力発生方向であるピッチ方向(第1の方向)及びヨー方向(第2の方向)に対して、ロールを阻止するために第2のガイド溝部101A,101Bの延びる第3の方向を異ならせている。これにより、シフト鏡筒101において、第2のガイド溝部101Bを、第1及び第2のアクチュエータの内側に形成される角部に配置することができる。したがって、本来デッドスペースとなる該角部を有効利用して、シフト鏡筒101ひいては防振ユニット5を小型化することができる。このことは、後述する実施例3,4でも同じである。ただし、第1及び第2の方向と第3及び第4の方向とをそれぞれ一致させてもよい。
図8、図9及び図10には、本発明の実施例2である防振ユニットの構成を示す。図8は防振ユニットを前側から見たときの分解斜視図、図9は防振ユニット5を裏面側から見たときの分解斜視図である。また、図10は防振ユニットの断面図である。本実施例の防振ユニットも、図2及び図3に示したレンズ装置に搭載され、該レンズ装置は図7に示したビデオカメラのレンズ鏡筒部を構成する。
201は補正レンズL3bを保持するレンズ保持部材としてのシフト鏡筒である。202はベース部材としてのベース鏡筒であり、前側レンズサブユニットL3aを保持している。
203pは磁石であり、図10に示すように、光軸に直交する方向の半分ずつの部分においてS極とN極とが光軸方向で反対位置となるように着磁されている。204pは磁石203pの背面に配置された下ヨークであり、磁気回路の一部を構成する。205pは駆動コイルであり、磁石203pの上下に配置された2つの磁極に対向するように配置されている。206は磁気回路の一部を構成する上ヨークである。下ヨーク204p、磁石203p及び上ヨーク206はベース鏡筒202に固定されて磁気回路を形成している。駆動コイル205pは、シフト鏡筒201に接着により固定される。
駆動コイル205pに通電されると、磁気回路内のギャップ磁束と駆動コイル205pが発生させる磁束とが磁気的に干渉してローレンツ力が発生し、これによりシフト鏡筒201に駆動力が与えられ、シフト鏡筒201がピッチ方向に駆動される。すなわち、下ヨーク204p、磁石203p、駆動コイル205p及び上ヨーク206によって、シフト鏡筒201(つまりは補正レンズL3b)をピッチ方向に移動させる第1のアクチュエータが構成される。ピッチ方向は、第1の方向に相当する。
また、下ヨーク204y、磁石203y、駆動コイル205y及び上ヨーク206によって、シフト鏡筒201をヨー方向に移動させる第2のアクチュエータが構成される。ヨー方向は、第2の方向に相当する。
207はシフト鏡筒201をベース鏡筒202に向かって付勢する第1の付勢部材としてのシフトスプリングである。シフトスプリング207は、その一端がシフト鏡筒201におけるレンズ周囲の円筒部に嵌まる大きさの内径を有する圧縮コイルバネである。208はシフトスプリング207の他端を保持するスプリングホルダであり、ビスによりベース鏡筒202に固定される。
次に、シフト鏡筒201のベース鏡筒202に対する支持構成と光軸回りの回転制限について説明する。
209a,209b,209cは3つの第1のボールである。これら3つの第1のボール209a〜209cは、ベース鏡筒202の3箇所に形成された、底面として平面を有する矩形の凹部202a,202b,202c内に配置される。一方、シフト鏡筒201の3箇所には、3つの第1のボール209a〜209cが当接する平面部201a,201b,201cが形成されている。これら第1のボール209a〜209cは、シフトスプリング207からの付勢力によって、凹部202a,202b,202cの底面と平面部201a,201b,201cとの間に挟持される。
各凹部は、その中心位置に第1のボールが位置した状態から、シフト鏡筒201がその可動中心位置から機械的な最大可動位置まで移動する間に該第1のボールの転動を許容する大きさを有する。
これにより、シフト鏡筒201は、ベース鏡筒202に対して、光軸直交面内で第1のボール209a〜209cを転動させながら移動することができる。シフト鏡筒201の機械的な最大可動量は、シフト鏡筒201の円筒部201dとベース鏡筒202の内周にピッチ方向及びヨー方向に形成された平坦部202dとの間にある程度の隙間が残るように決められている。
210は第1のガイド部材としてのガイド部材である。211はガイド部材210とシフト鏡筒201との間に配置される第2のガイド部材としてのロール防止部材である。
212a,212bは2つの第2のボールである。第2のボール212a,212bは、ガイド部材210とロール防止部材211のそれぞれに形成された第1の制限部内に配置されている。
210a,210bはガイド部材210の2箇所に設けられた第1の制限部としての第1のガイド溝部である。また、211a,211bはロール防止部材211の2箇所に設けられた第1の制限部としての第1のガイド溝部である。各第1のガイド溝部は、ガイド部材210及びロール防止部材211を貫通するように設けられ、矢印A方向に延びる長溝形状を有する。第1のガイド溝部210a,211aは光軸方向にて向かい合い、その間に第2のボール212aが配置される。また、第1のガイド溝部210b,211bは光軸方向にて向かい合い、その間に第2のボール212bが配置される。
ガイド部材210は、後述する第2の付勢部材からの付勢力によってロール防止部材211(及びシフト鏡筒201)に向かって付勢されており、該付勢力によって各第1のガイド溝部は第2のボールを挟持する。
各第1のガイド溝部は、図中の矢印A方向に延びるように形成されており、ガイド部材210とロール防止部材211が第2のボールを転動させながら該矢印A方向に相対移動可能な長さを有する。各第1のガイド溝部の矢印A方向での端面と第2のボールとの当接により、ガイド部材210とロール防止部材211との相対移動範囲が制限される。矢印A方向は、光軸に直交する第3の方向に相当する。
さらに、各第1のガイド溝部は、第2のボールとの当接(係合)によって矢印A方向とは異なる方向へのガイド部材210とロール防止部材211の相対移動を制限する。
つまり、ガイド部材210とロール防止部材211は、第2のボールの転動を伴う第3の方向への相対移動が許容され、かつ第2のボールによる第3の方向と異なる方向への相対移動が制限されるように第2のボールに当接する第1の制限部をそれぞれ有する。
213a,213bは2つの第3のボールである。第3のボール213a,213bは、ロール防止部材211とシフト鏡筒201のそれぞれに形成された第2の制限部内に配置されている。
211A,211Bはロール防止部材211の2箇所に形成された第2の制限部としての第2のガイド溝部である。また、201A,201Bはシフト鏡筒201の2箇所に形成された第2の制限部としての第2のガイド溝部である。
ロール防止部材211に形成された第2のガイド溝部211A,211Bは、ロール防止部材211を貫通し、矢印B方向に延びる長溝形状を有する。一方、シフト鏡筒201に形成された第2のガイド溝部201A,201Bは、矢印B方向に延び、実施例1において説明した第2のガイド溝部と同じ形状を有する。第2のガイド溝部211A,201Aは光軸方向にて向かい合い、その間に第3のボール213aが配置される。また、第2のガイド溝部211B,201Bは、光軸方向にて向かい合い、その間に第3のボール213bが配置される。
ロール防止部材211は、後述する第2の付勢部材からの付勢力によってシフト鏡筒201に向かって付勢されており、該付勢力によって各第2のガイド溝部は第3のボールを挟持する。
各第2のガイド溝部は、ロール防止部材211とシフト鏡筒201が第3のボールを転動させながら該矢印B方向に相対移動可能な長さを有する。各第2のガイド溝部の矢印B方向での端面と第3のボールとの当接により、ロール防止部材211とシフト鏡筒201の同方向への相対移動範囲が制限される。矢印B方向は、光軸に直交する第4の方向に相当する。
さらに、各第2のガイド溝部は、第3のボールとの当接(係合)によって矢印B方向とは異なる方向へのロール防止部材211とシフト鏡筒201の相対移動を制限する。
つまり、ロール防止部材211及びシフト鏡筒201は、第3のボールの転動を伴う第4の方向への相対移動が許容され、かつ第3のボールによって第4の方向と異なる方向への相対移動が制限されるように第3のボールに当接する第2の制限部をそれぞれ有する。
ここで、本実施例では、第3の方向は第1の方向(ピッチ方向)に一致し、また、第4の方向は第2の方向(ヨー方向)に一致する。
214a,214b,214c,214dはガイド部材210をシフト鏡筒201に向かって光軸方向に付勢する第2の付勢部材としてのガイドスプリングである。
ガイド部材210は、このガイド部材210に設けられた位置決め穴210dと回り止め長穴210eとに、ベース鏡筒202に設けられた位置決めピン202D,202Eが挿入されることで、ベース鏡筒202に対して光軸直交面内で位置決め固定される。
ガイドスプリング214a〜201dは圧縮コイルバネであり、その一端がベース鏡筒202に形成された穴部内の底面に当接し、他端がガイド部材210に当接することで、ガイド部材210をシフト鏡筒201に向かって光軸方向に付勢する。ガイドスプリング214a〜201dを第2のボール212a,212b及び第3のボール213a,213bに対してバランス良く配置することで、ガイド部材210及びロール防止部材211をシフト鏡筒201に向かって安定的に付勢することができる。
以上の構成により、ロール防止部材211は矢印A方向にのみ移動可能で、シフト鏡筒201はロール防止部材211に対して矢印B方向にのみ移動可能である。これにより、シフト鏡筒201は光軸回りの回転が制限(阻止)された状態で光軸直交面内で平行移動可能となる。
そして、実施例1でも説明したボールのリセット動作により、実使用時にはシフト鏡筒201はすべての駆動方向に対してボールの転動のみでガタなくガイドされ、滑り摩擦を伴わないので、駆動応答性が良好となる。
本実施例では、シフト鏡筒201をシフトスプリング207とガイドスプリング214a〜201dで光軸方向における互いに反対側から付勢するので、シフトスプリング207の付勢力をガイドスプリング214a〜214dの付勢力の合力より大きく設定している。
続いて、本実施例におけるシフト鏡筒201の位置を検出する構成について説明する。
215はセンサホルダであり、ビスによりベース鏡筒202に固定される。216は発光素子であるiREDであり、赤外光束を光軸方向に発光する。iRED216は接着によりシフト鏡筒201に固定される。
217は受光素子である2次元PSDであり、センサホルダ215に接着により固定される。201sはシフト鏡筒201に設けられたiRED216の投光窓である。
215sはセンサホルダ215に設けられた絞り窓である。iRED216から投光された赤外光束は、絞り窓215sで通過光束が制限されて2次元PSD217で受光される。
iRED216及び投光窓201sは移動するシフト鏡筒201に設けられており、絞り窓215s及び2次元PSD217は固定されたセンサホルダ215に設けられている。シフト鏡筒201が可動中心位置から光軸直交面内で任意の方向に変位すると、iRED216から投光された赤外光束は、絞り窓215sを通過して2次元PSD217上でシフト鏡筒201の移動方向とは反対方向に移動する。これにより、2次元PSD217からシフト鏡筒201の移動量に対応した電気信号が得られる。
このことをさらに図11を用いて詳しく説明する。図11には、iRED216の発光部216sと絞り窓215sと2次元PSD217の受光部217sとの関係を示している。矢印Dはピッチ方向、矢印Cはヨー方向に相当する。
図11には、シフト鏡筒201とともに発光部216sが2次元PSD217の直交する2つの検出軸D′,C′の交点に対向する位置から216s′の位置に移動した状態を示している。この状態において、発光部216sから発せられ、絞り窓215sを通過して受光部217sに投影されている赤外光束は、検出軸D′,C′の交点からシフト鏡筒201の移動量に比例した距離の位置に移動する。したがって、D′及びC′の方向での受光位置を検出することで、シフト鏡筒201の可動中心位置からのピッチ方向及びヨー方向への移動量の情報を得ることができる。
このように、iRED216、投光窓201s、絞り窓215s及び2次元PSD217により位置検出器が構成される。
本実施例にて、2次元PSDを使用できるのは、シフト鏡筒201の光軸回りの回転がほとんどがたなく制限(阻止)されているからである。仮にがたが存在していると、シフト鏡筒201とこれに固定されたiRED216がそのがた分だけ回転する。この場合、例えば、iRED216が矢印D方向に移動したにもかかわらず、2次元PSD217からは検出軸D′の方向での出力変化がほとんどなく、検出軸C′の方向での出力に変化が生ずるという現象が生じ、正確なシフト鏡筒201の位置検出が行えない。
以上説明したように、本実施例では、シフト鏡筒201の光軸方向変位を阻止しつつ光軸直交面内での移動を許容するために転動可能なボールを使用し、さらにシフト鏡筒201のロールを防止しつつその平行移動をガイドするためにも転動可能なボールを使用する。これにより、シフト鏡筒201の駆動抵抗を小さく抑えることができ、シフト鏡筒を微小駆動する場合でも正確なシフト鏡筒201の位置制御を行うことができる。すなわち、良好な防振性能を有する防振ユニットを実現することができる。
しかも、シフト鏡筒201をがたつきが少ない状態で移動させることができるので、防振動作の静音化を図れる。また、本実施例で説明した2次元PSDの使用や実施例1のような2組の位置検出器を任意の位置に配置して使用した場合にも精度の高い位置フィードバック制御を行ったりすることができる。
また、本実施例では、シフト鏡筒201の光軸直交面内でのガイドを、該シフト鏡筒201とレンズ装置内の固定部材となるベース鏡筒202との間で挟持した第1のボール209a〜209cによって行う。これにより、ベース鏡筒202とシフト鏡筒201との間にロール防止のためのボールやガイド部材110又はロール防止部材111が配置されていても、シフト鏡筒201の位置制御精度が低下することを回避できる。
図12及び図13は、本発明の実施例3である防振ユニットの構成を示している。図12は防振ユニットを前側から見たときの分解斜視図、図13は防振ユニット5を裏面側から見たときの分解斜視図である。
本実施例の防振ユニットは、実施例1で説明した防振ユニットの変形例であり、シフト鏡筒301のベース部材302に対する支持構成、光軸回りの回転制限のための構成及びアクチュエータの構成は共通である。このため、共通する構成要素及び構成部分には、実施例1の100番台の符号に対して下2桁を共通とした300番台の符号を付し、これらについての説明は省略する。
ただし、本実施例は、ボールを利用してロール防止部材311やシフト鏡筒301の可動中心位置への復帰力(以下、中心復帰力という)を発生させる復帰機構を有する点で実施例1と異なる。また、本実施例は、シフト鏡筒301の位置を検出する構成を持たない点で、実施例1と大きく異なり、実施例1でのセンサベース115に代えて、アッパーベース315が用いられている。
まず、復帰機構について説明する。本実施例では、ロール防止部材311及びガイド部材310に設けられてボール312cを挟持する凹部311cの底面と面310cの形状を工夫することで、ロール防止部材311の中心復帰力を発生させる。また、ロール防止部材311及びシフト鏡筒301に設けられ、第3のボール313a,313bを挟持する第2のガイド溝部(311A,301A),(311B,301B)の形状を工夫することで、シフト鏡筒301の中心復帰力を発生させる。
これについて図14A及び図14Bを用いて詳しく説明する。図14A及び図14Bは、ボール312cを挟持する凹部311cと面310cとを矢印A方向に沿って切断したときの断面図である。
図14Aは、ロール防止部材311とガイド部材310とが相対移動していない状態を示す。ボール312cは、凹部311c及び面310cの中心に位置している。凹部311cの底面は、面310cに向かって凹となる曲面として形成されている。一方、面310cは、凹部311cに向かって凹となる曲面として形成されている。
図14Aの状態では、面310c(ガイド部材310)は、ガイドスプリング314a,314bからの付勢力を受けて、ボール312cを介して凹部311cの底面(ロール防止部材311)を図中の真下に押している。
図14Bは、図14Aの状態からロール防止部材311が矢印A方向(図の左方向)に変位した状態を示している。図14Aの状態から図14Bの状態に至る間は、凹部311cの底面と面310cとが曲面により形成されているため、ボール312cは該曲面上を転動する。そして、図14Bの状態では、ボール312cは底面311cの曲率に応じた右方向の力、すなわち中心復帰力をロール防止部材311に加える。面311cの曲率が大きくなると、中心復帰力も大きくなる。
このように、凹部311cの底面と面310cの形状を曲面、言い換えれば、ロール防止部材311の変位量に応じて傾斜角度が連続的に変化する面とする。これにより、ロール防止部材311の変位量に比例した大きさの中心復帰力をロール防止部材311に与えることができる。
また、ロール防止部材311及びシフト鏡筒301に設けられた第2のガイド溝部311B,301Bは、矢印B方向に直交する断面については実施例1において図5Aを用いて説明した形状と同じ形状を有する。ただし、矢印B方向に沿った断面形状は、図14A及び図14Bに示した形状である。このため、シフト鏡筒301がロール防止部材311に対し矢印B方向に移動すると、第3のボール313bが第2のガイド溝部311B,301Bの曲率に応じた中心復帰力をシフト鏡筒301に加える。該曲率が大きくなると、中心復帰力も大きくなる。
このように、第2のガイド溝部311B,301Bの形状を曲面、言い換えれば、シフト鏡筒301の変位量に応じて傾斜角度が連続的に変化する面とする。これにより、シフト鏡筒301の変位量に比例した大きさの中心復帰力をシフト鏡筒311に与えることができる。
以上説明した復帰機構を備えることで、シフト鏡筒301の位置は、第1及び第2のアクチュエータにより発生される駆動力に応じて決まる。このため、シフト鏡筒301の位置を、位置検出回路によって検出することなく、第1及び第2のアクチュエータへの入力電流値の制御のみによって制御する、いわゆるオープン制御が可能となる。
さらに、本実施例では、ボールが当接する面の傾斜角度を、シフト鏡筒301の移動量に応じて変化するアクチュエータの駆動力を考慮して変化させている。これにより、アクチュエータの駆動力(入力電流値)と中心復帰力とのバランスを常に良好なものとし、シフト鏡筒301の位置制御精度を向上させることができる。
次に、本実施例の防振ユニットを備えたレンズ装置(レンズ鏡筒部)を搭載したビデオカメラの構成を図15に示す。
防振ユニットが上述した復帰機構を有するため、ビデオカメラとしても、実施例1で説明した位置検出回路は不要となる。マイクロコンピュータ352は、防振ユニットのオープン制御を行う。
これ以外の構成は実施例1で説明したビデオカメラの構成と同じである。このため、共通する構成要素には、実施例1と同じ又は実施例1の100番台の符号に対して下2桁を共通とした300番台の符号を付し、これらについての説明は省略する。
なお、防振ユニットのオープン制御を行う場合、ビデオカメラに作用する重力を含む慣性力の大きさや方向によってはシフト鏡筒301の位置に誤差を生じる可能性がある。より正確なシフト鏡筒301の位置制御を行うためには、ビデオカメラに加速度センサを搭載し、慣性力に起因して生じる制御誤差をキャンセルすることが好ましい。
また、シフト鏡筒301の復帰機構としては、本実施例で説明した構成以外の構成を有する機構を用いてもよい。
図16及び図17には、本発明の実施例4である防振ユニットの構成を示している。図16は上記防振ユニットを前側から見たときの分解斜視図であり、図17は該防振ユニットを裏面側から見たときの分解斜視図である。本実施例の防振ユニットも、図2及び図3に示したレンズ装置に搭載され、該レンズ装置は図7に示したビデオカメラのレンズ鏡筒部を構成する。
401は補正レンズL3bを保持するレンズ保持部材としてのシフト鏡筒である。402はベース部材の一部を構成するベース鏡筒であり、前側レンズサブユニットL3aを保持している。本実施例では、ベース鏡筒402は、第1のガイド部材を兼ねている。
403pは磁石であり、実施例1と同様に、光軸に直交する方向の半分ずつの部分においてS極とN極とが光軸方向で反対位置となるように着磁されている。404pは磁石403pの背面に配置された下ヨークであり、磁気回路の一部を構成する。405pは駆動コイルであり、磁石403pの上下に配置された2つの磁極に対向するように配置されている。
406は磁気回路の一部を構成する上ヨークである。下ヨーク404p、磁石403p及び上ヨーク406は、ベース鏡筒402に固定されて磁気回路を形成している。駆動コイル405pは、シフト鏡筒401に接着により固定される。
駆動コイル405pに通電されると、磁気回路内のギャップ磁束と駆動コイル405pが発生する磁束とが磁気的に干渉してローレンツ力が発生し、これによりシフト鏡筒401に駆動力が与えられ、シフト鏡筒401がピッチ方向に駆動される。すなわち、下ヨーク404p、磁石403p、駆動コイル405p及び上ヨーク406によって、シフト鏡筒401(つまりは補正レンズL3b)をピッチ方向に移動させる第1のアクチュエータが構成される。ピッチ方向は、第1の方向に相当する。
また、下ヨーク404y、磁石403y、駆動コイル405y及び上ヨーク406によって、シフト鏡筒401をヨー方向に移動させる第2のアクチュエータが構成される。ヨー方向は、第2の方向に相当する。
407はシフト鏡筒401をベース鏡筒402に向かって光軸方向に付勢する第1の付勢部材としてのシフトスプリングである。シフトスプリング407は、その一端がシフト鏡筒401におけるレンズ周囲の円筒部に嵌まる大きさの内径を有する圧縮コイルバネである。408はシフトスプリング407の他端を保持するスプリングホルダであり、ビスによりベース鏡筒402に固定される。
次に、シフト鏡筒401のベース鏡筒402に対する支持構成と光軸回りの回転制限について、図16〜図19を用いて説明する。図18は防振ユニットを後側から見た図であり、図19は図18に示した防振ユニットのC−C線で切断した断面図である。
402a,402b,402cは第1のガイド部材でもあるベース鏡筒402の3箇所に設けられた第1の制限部としての第1のガイド溝部である。412a,412bは第1のガイド溝部402a,402b内に配置される第2のボールである。
411は第2のガイド部材としてのロール防止部材である。411a,411bはロール防止部材411の2箇所に形成された第1の制限部としての第1のガイド溝部である。411cはロール防止部材411に形成された底面としての平面を有する凹部である。
第1のガイド溝部402a,402b,402c,411a,411bは、実施例1にて説明した第1のガイド溝部と同じ形状を有する。また、凹部411cも、実施例1にて説明した凹部111cと同じ形状を有する。
第1のガイド溝部402a,411aが光軸方向にて向かい合ってできる空間内に第2のボール412aが配置されている。また、ガイド溝部402b,411bが光軸方向にて向かい合ってできる空間内に第2のボール412bが配置されている。さらに、シフト鏡筒401の第1のガイド溝部402cとロール防止部材411の凹部411cとが光軸方向にて向かい合ってできる空間内にボール412cが配置されている。
ロール防止部材411は、第2の付勢部材も兼ねるシフトスプリング407からの付勢力をシフト鏡筒401を介して受けてベース鏡筒402に向かって付勢される。そして、該付勢力によって、各第1のガイド溝部と凹部411cは第2のボール412a,412b又はボール412cを挟持する。
各第1のガイド溝部は、図中の矢印A方向に延びるように形成されており、第1のガイド部材でもあるベース鏡筒402とロール防止部材411が第2のボールを転動させながら該矢印A方向に相対移動可能な長さを有する。各第1のガイド溝部の矢印A方向での端面と第2のボールとの当接により、ベース鏡筒402とロール防止部材411との相対移動範囲が制限される。矢印A方向は、光軸に直交する第3の方向に相当する。
さらに、各第1のガイド溝部は、第2のボールとの当接(係合)によって矢印A方向とは異なる方向へのベース鏡筒402とロール防止部材411の相対移動を制限する。
つまり、ベース鏡筒402とロール防止部材411は、第2のボールの転動を伴う第3の方向への相対移動が許容され、かつ第2のボールによる第3の方向と異なる方向への相対移動が制限されるように第2のボールに当接する第1の制限部をそれぞれ有する。
401a,401b,401cはシフト鏡筒401の3箇所に設けられた第2の制限部としての第2のガイド溝部である。413a,413bは第2のガイド溝部401a,401b内に配置される第3のボールである。413cは第2のガイド溝部401c内に配置されるボールである。
411A,411Bはロール防止部材411の2箇所に形成された第2の制限部としての第2のガイド溝部であり、411Cはロール防止部材411に形成された底面としての平面を有する凹部である。
第2のガイド溝部401a,401b,401c,411A,411Bの形状は、実施例1で説明した第2のガイド溝部の形状と同じである。また、凹部411Cも、実施例1で説明した凹部111Cと同じ形状である。
第2のガイド溝部411A,401aが向かい合ってできる空間内に第3のボール413aが配置されている。また、第2のガイド溝部411B,401bが光軸方向にて向かい合ってできる空間内に第3のボール413bが配置されている。さらに、シフト鏡筒401の第2のガイド溝部401cとロール防止部材411の凹部411Cとが光軸方向にて向かい合ってできる空間内にボール413cが配置されている。
シフト鏡筒401は、第1の付勢部材としてのシフトスプリング407からの付勢力を受け、該付勢力によって各第2のガイド溝部と凹部411Cは第3のボール413a,413b又はボール413cを挟持する。
各第2のガイド溝部は、図中の矢印B方向に延びるように形成されており、ロール防止部材411とシフト鏡筒401が第3のボールを転動させながら該矢印B方向に相対移動可能な長さを有する。各第2のガイド溝部の矢印B方向での端面と第3のボールとの当接により、ロール防止部材411とシフト鏡筒401の同方向への相対移動範囲が制限される。矢印B方向は、光軸に直交する第4の方向に相当する。
さらに、各第2のガイド溝部は、第3のボールとの当接(係合)によって矢印B方向とは異なる方向へのロール防止部材411とシフト鏡筒401の相対移動を制限する。
つまり、ロール防止部材411及びシフト鏡筒401は、第3のボールの転動を伴う第4の方向への相対移動が許容され、かつ第3のボールによって第4の方向と異なる方向への相対移動が制限されるように第3のボールに当接する第2の制限部をそれぞれ有する。
シフトスプリング407の付勢力は、ボール412a〜412c及びボール413a〜413cのそれぞれを頂点とする三角形の内部を通って作用するので、ロール防止部材411及びシフト鏡筒401をベース鏡筒402に向けて安定的に付勢することができる。
本実施例では、ロール防止部材411はベース鏡筒402に対して矢印A方向にのみ移動可能であり、シフト鏡筒401はロール防止部材411に対して矢印B方向にのみ移動可能である。
これにより、シフト鏡筒401は、光軸回りの回転が制限(阻止)された状態で光軸直交面内で平行移動可能となる。
シフト鏡筒401の機械的な最大可動量は、シフト鏡筒401にピッチ方向及びヨー方向に設けられた平坦部401dと、スプリングホルダ408に設けられた円筒部408dとの間にある程度の隙間が残るように設定される。
本実施例では、第2のボール412a,412b、第3のボール413a,413b及びボール412c,413cが、シフト鏡筒401をベース部材402に対する光軸方向の変位を制限しつつ光軸直交面内でピッチ及びヨー方向にガイドする機能を有する。すなわち、第2のボール412a,412b、第3のボール413a,413b及びボール412c,413cは第1のボールを兼ねている。
次に、シフト鏡筒401の位置を検出する構成について説明する。415はセンサホルダであり、ビスによってベース鏡筒402に固定される。
416pは発光素子であるiREDであり、赤外光束を光軸方向に発光する。iRED416pは接着によりシフト鏡筒401に固定される。417pは受光素子であるPSDであり、接着によりセンサホルダ415に固定される。
401pはシフト鏡筒401に設けられたiRED416pの投光窓である。415pはセンサホルダ415に設けられたスリットである。iRED416pから投光された赤外光束は、スリット415pで通過光束が制限されてPSD417pで受光される。
iRED416p、投光窓401p、スリット415p及びPSD417pによって構成される位置検出器により、実施例1で説明した検出原理と同じ原理でシフト鏡筒401のピッチ方向での位置検出が行われる。
また、iRED416y、投光窓401y、スリット415y及びPSD417yによって構成される位置検出器により、ピッチ方向と同様の検出原理で、シフト鏡筒401のヨー方向での位置検出が行われる。
本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られるほか、第1のガイド部材としてベース部材を用い、第1及び第2の付勢部材を同一部材で構成することで、実施例1〜3に比べて構成部品を削減し、さらなる防振ユニットの小型化を図ることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、請求項の範囲内で種々の変形や変更が可能である。例えば、第1〜第3のボールの数は、上記実施例にて説明した数以外の数であってもよい。
本発明の実施例1である防振ユニットの分解斜視図。
実施例1の防振ユニットを搭載したレンズ装置の分解斜視図。
図2のレンズ装置の断面図。
実施例1の防振ユニットの分解斜視図。
実施例1の防振ユニットにおけるガイド溝部の断面図。
実施例1の防振ユニットにおける凹部の断面図。
実施例1の防振ユニットにおけるガイド溝部の長手方向断面図。
実施例1の防振ユニットにおけるガイド溝部の長手方向断面図。
実施例1のレンズ装置を備えたビデオカメラのシステム構成を示すブロック図。
本発明の実施例2である防振ユニットの分解斜視図。
実施例2の防振ユニットの分解斜視図。
実施例2の防振ユニットの断面図。
実施例2の防振ユニットに搭載された位置検出器の検出原理を示す模式図。
本発明の実施例3である防振ユニットの分解斜視図。
実施例3の防振ユニットの分解斜視図。
実施例3の防振ユニットに設けられた復帰機構の構成を示す断面図。
実施例3の防振ユニットに設けられた復帰機構の構成を示す断面図。
実施例3の防振ユニットを搭載したレンズ装置を備えたビデオカメラのシステム構成を示すブロック図。
本発明の実施例4である防振ユニットの分解斜視図。
実施例4の防振ユニットの分解斜視図。
実施例4の防振ユニットの背面図。
実施例4の防振ユニットの断面図。
符号の説明
101,201,301,401 シフト鏡筒
102,202,302,402 ベース鏡筒
109a〜109c,112a〜112c,113a〜113c,209a〜209c,212a,212b,213a,213b,309a〜309c,312a〜312c,313a〜313c,412a〜412c,413a〜413c ボール
110,210,310 ガイド部材
111,211,311,411 ロール防止部材