以下、本発明に係る各実施形態を図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
先ず、本発明に係る第1実施形態について図1〜図3を参照しつつ説明する。
本実施形態では、少なくとも一部がいわゆる低比誘電率膜からなる層間絶縁膜が複数層に積層されているとともに、これら各層間絶縁膜のうち所定の2層の層間絶縁膜に下層配線層としての第1の配線層と上層配線層としての第2の配線層とが設定された多層配線構造を有する半導体装置において、CMP工程における層間絶縁膜の膜剥れを抑制する技術について説明する。具体的には、第1および第2のそれぞれの配線層内に実際の通電経路を構成する上下各実効配線を設ける際に、それら各実効配線の近辺に実際の通電経路を構成しないダミー配線を併せて配設する。この際、第1および第2の各配線層が設定された各層間絶縁膜を構成する膜の強度や膜厚、上下各実効配線の強度、あるいはダミー配線による被覆率などを考慮してダミー配線の形状やサイズなどを規定する。これにより、多層配線構造を形成する際のCMP工程における層間絶縁膜の膜剥れの発生を効率よく抑制する。以下、より具体的かつ詳細に説明する。
先ず、図1〜図3を参照しつつ、本実施形態に係る半導体装置1およびその製造方法についてまとめて説明する。
先ず、半導体装置1の第n層目(nは1以上の自然数)の配線構造を形成する。具体的には、図1に示すように、図示しない半導体素子などが形成されたシリコン(Si)からなる半導体基板2の上に第n層目の層間絶縁膜3を設ける。ここでは、第n層目の層間絶縁膜3を、下層絶縁膜3aおよび上層絶縁膜3bの積層膜からなる2層構造に形成する。先ず、下層絶縁膜として多孔質シリコン酸化膜(ポーラスSiO2 膜)3aをCVD法により成膜する。このポーラスSiO2 膜3aは、その比誘電率が約2.2である。したがって、このポーラスSiO2 膜3aは、比誘電率が3.4以下であるいわゆる低比誘電率膜(low-k 膜)の一種である。また、ポーラスSiO2 膜3aは、その機械的強度を示すヤング率が約3GPa である。続けて、このポーラスSiO2 膜3aの上に、上層絶縁膜として一般的な絶縁膜であるシリコン酸化膜(SiO2 膜)3bをプラズマCVD法により堆積させて成膜する。このSiO2 膜3bはその比誘電率が約4.0であるとともに、そのヤング率は約55GPa である。
次に、第n層目の層間絶縁膜3内に最下層の配線としての第n層目の配線4を設ける。この第n層目の配線4は、図示しないバリアメタル膜とともに第n層目の層間絶縁膜3内にCMP法などを用いて埋め込み形成される。また、この第n層目の配線4は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)、あるいはそれら各金属元素を含む合金などを用いて形成すればよい。第n層目の配線4は、後述する第n+1層目の配線8および第n+2層目の配線17などとともに半導体装置1内の実際の通電経路を構成する。したがって、第n層目の配線4は実効配線とも称される。また、実効配線4が形成されているポーラスSiO2 膜3aおよびSiO2 膜3bは、まとめて第n層目の配線層とも称される。これまでの工程により、半導体装置1の第n層目の配線構造が形成される。
次に、半導体装置1の第n+1層目の配線構造を形成する。具体的には、先ず、第n層目の配線4が埋め込み形成された第n層目の層間絶縁膜3の上に第n+1層目の層間絶縁膜5を設ける。ここでは、この第n+1層目の層間絶縁膜5を、下側から上側に向かって順番に第1層目の絶縁膜5a、第2層目の絶縁膜5b、第3層目の絶縁膜5c、および第4層目の絶縁膜5dからなる4層構造に形成する。
先ず、SiO2 膜3bの上に、第1層目の絶縁膜として一般的な絶縁膜であるシリコン炭化膜(SiC膜)5aをプラズマCVD法により約35nmの膜厚で成膜する。このSiC膜5aは、後述する第n+1層目のヴィアホール7を第n+1層目の層間絶縁膜5内に形成する際にSiO2 膜3bや第n層目の配線4がエッチングされるのを防ぐ、いわゆるエッチングストッパー膜として機能する。また、SiC膜5aは、そのヤング率が約20GPa であり、低比誘電率膜よりも強度が高い。このため、SiC膜5aは、ヴィアホール7内に設けられる後述する第n+1層目のヴィアプラグ6が、これに接続される後述する第n+1層目の配線8を第n+1層目の層間絶縁膜5内に埋め込む際のCMP工程によって位置ずれを起こしたり、あるいは第n層目の配線4から離れたりしないように保持する補強膜としても機能する。
続けて、SiC膜5aの上に、第2層目の絶縁膜としてポリメチルシロキサン膜5bを約135nmの膜厚で成膜する。具体的には、先ず、図示は省略するが、ポリメチルシロキサン膜5bの材料もしくはその前駆体としてのポリメチルシロキサンを溶媒に溶解させたワニスを、SiC膜5aの表面上にコーターを用いてスピンコート塗布する。続けて、ワニスが塗布された半導体基板2を約80℃に保温されたホットプレート上に載置して約1分間の加熱処理を施す。続けて、約80℃の加熱処理が施された半導体基板2を約200℃に保温されたホットプレート上に載置して、さらに約1分間の加熱処理を施す。この後、約200℃の加熱処理が施された半導体基板2を約450℃に保温されたホットプレート上に載置して、窒素雰囲気下においてさらに約30分間の加熱処理を施す。これにより、SiC膜5aの上にポリメチルシロキサン膜5bが成膜される。このポリメチルシロキサン膜5bはその比誘電率が約2.5であり、低比誘電率膜の一種である。また、ポリメチルシロキサン膜5bは、前述した第n層目のポーラスSiO2 膜3aと同様に、そのヤング率が約3GPa である。
続けて、ポリメチルシロキサン膜5bの上に、第3層目の絶縁膜としてポーラスSiO2 膜5cをCVD法により約110nmの膜厚で成膜する。この第n+1層目のポーラスSiO2 膜5cも、前述した第n層目のポーラスSiO2 膜3aと同様に、その比誘電率が約2.2であり、低比誘電率膜の一種である。それとともに、ポーラスSiO2 膜5cのヤング率も、ポーラスSiO2 膜3aやポリメチルシロキサン膜5bと同様に約3GPa である。続けて、このポーラスSiO2 膜5cの上に、第4層目の絶縁膜としてカーボン含有SiO2 膜(SiOC膜)5dをプラズマCVD法により約50nmの膜厚で形成する。この第n+1層目のSiOC膜5dはその比誘電率が約3.0であり、低比誘電率膜の一種である。それとともに、このSiOC膜5dのヤング率は、約10GPa である。
これまでの工程により、SiC膜5a、ポリメチルシロキサン膜5b、ポーラスSiO2 膜5c、およびSiOC膜5dの互いに膜質や膜種の異なる4層の複合絶縁膜からなる第n+1層目の層間絶縁膜5が第n層目の層間絶縁膜3上に成膜される。すなわち、4層構造の第n+1層目の層間絶縁膜5は、その下側から第2層目〜第4層目までが低比誘電率膜から構成されているとともに、最下層の第1層目だけが一般的な絶縁膜により構成されている。
次に、第n層目の配線4の上部に接続される第n+1層目のヴィアプラグ6を設けるためのヴィアホール7、およびヴィアプラグ6の上部に接続される第n+1層目の配線8を設けるための配線溝9を第n+1層目の層間絶縁膜5内に形成する。具体的には、先ず、第n層目の配線4の上方のヴィアプラグ6を設ける位置においてSiOC膜5d、ポーラスSiO2 膜5c、およびポリメチルシロキサン膜5bをそれらの膜厚方向に沿ってSiC膜5aの上面が露出するまでRIE法により除去して、図示しない孔を形成する。続けて、この孔の上方の配線8を設ける位置においてSiOC膜5dおよびポーラスSiO2 膜5cをそれらの膜厚方向に沿ってRIE法により除去して、ポリメチルシロキサン膜5bの上面を露出させる。これにより、孔の上部に連通する配線溝9がSiOC膜5dおよびポーラスSiO2 膜5c内に形成される。この後、孔の下方のSiC膜5aをRIE法により除去して第n層目の配線4の上面を露出させる。これにより、配線溝9の下部に連通するヴィアホール7がポリメチルシロキサン膜5bおよびSiC膜5a内に形成される。
また、第n+1層目の層間絶縁膜5内には、ヴィアプラグ6および配線8のみならず、これらを層間絶縁膜5内に埋め込み形成する際のCMP工程において層間絶縁膜5およびその付近に界面剥離等の絶縁膜剥離が生じるのを防止するための第n+1層目の補強部材10も設けられる。この補強部材10は、配線8およびヴィアプラグ6から電気的に切断されて、かつ、配線8から少なくとも所定の間隔だけ離間されて層間絶縁膜5内に少なくとも1つ設けられる。また、補強部材10は、その少なくとも一部が層間絶縁膜5を構成する低比誘電率膜5b,5c,5dのいずれかの内部に位置して設けられる。ここでは、図1に示すように、補強部材10を、層間絶縁膜5内の配線8が設けられている層を構成しているポーラスSiO2 膜5cおよびSiOC膜5d内に、配線8およびヴィアプラグ6から電気的に切断して、かつ、配線8から少なくとも間隔X1 だけ離間して複数個設ける。この際、間隔X1 は約2μmに設定する。そして、ここでは、補強部材10を、配線8を設けるのと同様の方法により、配線8を設けるのと並行して、かつ、配線8を囲んでその周囲に複数個設ける。
具体的には、先ず、補強部材10を設けるための補強部材用溝11を、配線溝9を形成するのと同様の工程により、配線溝9を形成するのと並行して層間絶縁膜5内の複数箇所に形成する。これら各補強部材用溝11は、SiOC膜5dおよびポーラスSiO2 膜5c内において配線溝9と略同じ高さで、かつ、配線溝9と略同じ深さで形成される。より具体的には、各補強部材用溝11は、配線溝9から少なくとも約2μm離間されて、かつ、SiOC膜5dおよびポーラスSiO2 膜5c内において配線溝9を囲んでその周囲の複数箇所に形成される。
次に、図示は省略するが、ヴィアホール7、配線溝9、および各補強部材用溝11のそれぞれの内面、ならびにヴィアホール7により露出された第n層目の配線4の表面を覆ってバリアメタル層を設ける。このバリアメタル層は、例えばスパッタリング法により約150℃の雰囲気下で第n+1層目の層間絶縁膜5の表面上に全面的に堆積される。なお、このバリアメタル層は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、およびタングステン(W)のそれぞれの単体からなるTa膜、Ti膜、Nb膜、およびW膜のうちのいずれかを用いて形成すれば良い。あるいは、このバリアメタル層は、それらTa、Ti、Nb、およびWの窒化物からなるTaN膜、TiN膜、NbN膜、およびWN膜のうちのいずれかを用いて形成しても構わない。さらには、このバリアメタル層は、それらTa膜、Ti膜、Nb膜、W膜、TaN膜、TiN膜、NbN膜、およびWN膜、ならびにルテニウム(Ru)膜およびロジウム(Rh)膜のうちの少なくとも2種類の膜を含む積層膜を用いて形成しても構わない。
次に、バリアメタル層が設けられたヴィアホール7、配線溝9、および各補強部材用溝11のそれぞれの内側に、ヴィアプラグ6、配線8、および各補強部材10となる導電材料を設ける。ヴィアプラグ6、配線8、および各補強部材10は、前述した第n層目の配線4と同様に、CuやAl、あるいはそれら各金属元素を含む合金などを用いて形成すればよい。ここでは、ヴィアプラグ6、配線8、および各補強部材10を、全てCuを用いて形成する。具体的には、先ず、ヴィアプラグ6、配線8、および各補強部材10の基礎となるCuめっきシード層を、スパッタリング法によりバリアメタル層の表面上に全面的に堆積させる。続けて、ヴィアプラグ6、配線8、および各補強部材10の主要部分となるCuめっき膜を、ヴィアホール7、配線溝9、および各補強部材用溝11のそれぞれの内部を満たすまで、電解めっき法によりCuめっきシード層の表面上に全面的に堆積させる。このCuめっき膜は、Cuめっきシード層と一体化されつつ成膜される。これにより、ヴィアプラグ6、配線8、および各補強部材10となるCu膜が、バリアメタル層の表面を全面的に覆ってヴィアホール7、配線溝9、および各補強部材用溝11のそれぞれの内部に成膜される。このCu膜のヤング率は、約130GPa である。
次に、ヴィアホール7、配線溝9、および各補強部材用溝11内に設けられたCu膜をアニールする。図示は省略するが、このアニール処理は、電気炉またはホットプレートなどを用いて約150℃〜300℃の温度範囲で、かつ、フォーミングガスまたは窒素ガスの雰囲気下で行われる。また、このアニール処理に要する時間は、電気炉を用いる場合は約1時間であり、ホットプレートを用いる場合は約1分〜5分間である。
次に、ヴィアホール7、配線溝9、および各補強部材用溝11のそれぞれの外部に設けられている不要なバリアメタル層およびCu膜を除去する。具体的には、第n+1層目の層間絶縁膜5の最上層の絶縁膜であるSiOC膜5dの表面上に堆積しているバリアメタル層およびCu膜をCMP法により研磨して除去する。これにより、ヴィアホール7、配線溝9、および各補強部材用溝11のそれぞれの内部にのみ、バリアメタル層およびCu膜が残される。すなわち、側部および底部をバリアメタル層により覆われたヴィアプラグ6、配線8、および各補強部材10が第n+1層目の層間絶縁膜5内に並行して埋め込み形成される。
ヴィアプラグ6は、その上部が低比誘電率膜であるポリメチルシロキサン膜5b内に位置するとともに、その下部が低比誘電率膜よりも強度の高いSiC膜5a内に位置して設けられている。また、配線8は、その下部にヴィアプラグ6が一体に接続されたいわゆるデュアルダマシン配線として形成されている。また、配線8は、低比誘電率膜であるポーラスSiO2 膜5cおよびSiOC膜5d内に位置するとともに、その下面を同じく低比誘電率膜であるポリメチルシロキサン膜5bにバリアメタル層を介して間接的に接して設けられている。
また、各補強部材10は、図1に示すように、配線8およびヴィアプラグ6から電気的に切断されて設けられている。それとともに、各補強部材10は、配線8から少なくとも約2μm離間されて、かつ、配線8を囲んでその周囲に複数個設けられている。これら各補強部材10も、配線8と同様に、ポーラスSiO2 膜5cおよびSiOC膜5d内に位置するとともに、その下面をポリメチルシロキサン膜5bにバリアメタル層を介して間接的に接して設けられている。
これまでの工程により、半導体装置1の第n+1層目の配線構造が形成される。なお、第n+1層目の補強部材10の大きさや形状、あるいは配置などに関するより具体的な設定については、後に詳述する。
第n+1層目の配線8は、これと一体に形成されている第n+1層目のヴィアプラグ6、およびこのヴィアプラグ6を介して間接的に接続されている第n層目の配線4とともに半導体装置1の実際の通電経路を構成する。これに対して、第n+1層目の各補強部材10は、配線8やヴィアプラグ6などと電気的に接続されておらず、半導体装置1の実際の通電経路を構成しない。したがって、以後の説明においては、第n+1層目の配線8と第n+1層目の各補強部材10とを明確に区別するために、配線8を第n+1層目の実効配線と称するとともに各補強部材10を第n+1層目のダミー配線と称することとする。また、第n+1層目の層間絶縁膜5のうちヴィアプラグ6が形成されている下側2層のSiC膜5aおよびポリメチルシロキサン膜5bを、まとめて第n+1層目のヴィア層あるいはプラグ層12とも称することとする。同様に、第n+1層目の層間絶縁膜5のうち実効配線8および各ダミー配線10が形成されている上側2層のポーラスSiO2 膜5cおよびSiOC膜5dを、まとめて第n+1層目の配線層13とも称することとする。
次に、半導体装置1の第n+2層目の配線構造を形成する。具体的には、先ず、第n+1層目のヴィアプラグ6、実効配線8、および各ダミー配線10が埋め込み形成された第n+1層目の層間絶縁膜5の上に第n+2層目の層間絶縁膜14を設ける。ここでは、この第n+2層目の層間絶縁膜14も前述した第n+1層目の層間絶縁膜5と同様に、下側から上側に向かって順番に第1層目の絶縁膜14a、第2層目の絶縁膜14b、第3層目の絶縁膜14c、および第4層目の絶縁膜14dからなる4層構造に形成する。
先ず、第n+1層目の層間絶縁膜5の最上層の絶縁膜であるSiOC膜5d、実効配線8、および各ダミー配線10の表面を覆って、第1層目の絶縁膜として一般的な絶縁膜であるシリコン炭窒化膜(SiCN膜)14aをプラズマCVD法により約50nmの膜厚で成膜する。このSiCN膜14aは、前述した第n+1層目のSiC膜5aと同様に、後述する第n+2層目のヴィアホール16を第n+2層目の層間絶縁膜14内に形成する際にSiOC膜5d、実効配線8、および各ダミー配線10がエッチングされるのを防ぐエッチングストッパー膜として機能する。また、SiCN膜14aは、そのヤング率が約100GPa であり、SiC膜5aにも増して強度が格段に高い。このため、SiCN膜14aは、SiC膜5aと同様に、ヴィアホール16内に設けられる後述する第n+2層目のヴィアプラグ15が、これに接続される後述する第n+2層目の配線17を第n+2層目の層間絶縁膜14内に埋め込む際のCMP工程によって位置ずれを起こしたり、あるいは第n+1層目の実効配線8から離れたりしないように保持する補強膜としても機能する。
続けて、SiCN膜14aの上に、第2層目の絶縁膜としてカーボン含有SiO2 膜(SiOC膜)14bをプラズマCVD法により約230nmの膜厚で形成する。この第n+2層目のSiOC膜14bも、前述した第n+1層目のSiOC膜5dと同様に、その比誘電率が約3.0であり、低比誘電率膜の一種である。それとともに、SiOC膜14bのヤング率も、SiOC膜5dと同様に約10GPa である。続けて、このSiOC膜14bの上に、第3層目の絶縁膜としてポーラスSiO2 膜14cをプラズマCVD法により約175nmの膜厚で形成する。この第n+2層目のポーラスSiO2 膜14cも、前述した第n層目のポーラスSiO2 膜3aおよび第n+1層目のポーラスSiO2 膜5cと同様に、その比誘電率が約2.2であり、低比誘電率膜の一種である。それとともに、ポーラスSiO2 膜14cのヤング率も、各ポーラスSiO2 膜3a,5cと同様に約3GPa である。続けて、このポーラスSiO2 膜14cの上に、第4層目の絶縁膜としてSiO2 膜14dをプラズマCVD法により約50nmの膜厚で形成する。この第n+2層目のSiO2 膜14dも、前述した第n層目のSiO2 膜3bと同様に、その比誘電率が約4.0であり、一般的な絶縁膜である。それとともに、SiO2 膜14dのヤング率も、SiO2 膜3dと同様に約55GPa である。
これまでの工程により、前述した第n+1層目の層間絶縁膜5と同様に、SiCN膜14a、SiOC膜14b、ポーラスSiO2 膜14c、およびSiO2 膜14dの互いに膜質や膜種の異なる4層の複合絶縁膜からなる第n+2層目の層間絶縁膜14が第n+1層目の層間絶縁膜5上に成膜される。すなわち、4層構造の第n+2層目の層間絶縁膜14は、その中間部2層の第2層目および第3層目が低比誘電率膜から構成されているとともに、最下層の第1層目および最上層の第4層目が一般的な絶縁膜により構成されている。
次に、第n+1層目の実効配線8の上部に接続される第n+2層目のヴィアプラグ15、およびヴィアプラグ15の上部に接続される第n+2層目の配線(実効配線)17を第n+2層目の層間絶縁膜14内に設ける。それとともに、第n+2層目の補強部材(ダミー配線)19を第n+2層目の層間絶縁膜14内に設ける。これら第n+2層目のヴィアプラグ15、実効配線17、およびダミー配線19は、前述した第n+1層目のヴィアプラグ6、実効配線8、およびダミー配線10を形成するのと同様の方法により形成すれば良い。以下、簡潔に説明する。
先ず、第n+1層目の実効配線8の上方のヴィアプラグ15を設ける位置においてSiO2 膜14d、ポーラスSiO2 膜14c、およびSiOC膜14bをそれらの膜厚方向に沿ってSiCN膜14aの上面が露出するまでRIE法により除去して、図示しない孔を形成する。続けて、この孔の上方の実効配線17を設ける位置においてSiO2 膜14dおよびポーラスSiO2 膜14cをそれらの膜厚方向に沿ってRIE法により除去して、SiOC膜14bの上面を露出させる。これにより、第n+2層目の実効配線17を設けるための配線溝(実効配線溝)18が、孔の上部に連通してSiO2 膜14dおよびポーラスSiO2 膜14c内に形成される。
また、実効配線溝18を形成するのと並行して、実効配線溝18を囲む複数箇所において、SiO2 膜14dおよびポーラスSiO2 膜14cをそれらの膜厚方向に沿ってRIE法により除去して、SiOC膜14bの上面を露出させる。これにより、第n+2層目のダミー配線19を設けるためのダミー配線溝(補強部材用溝)20が、実効配線溝18と略同じ高さで、かつ、実効配線溝18と略同じ深さでSiO2 膜14dおよびポーラスSiO2 膜14c内の複数箇所に形成される。
第n+2層目の各ダミー配線溝20は、第n+1層目の各ダミー配線溝11と同様に、実効配線溝18から少なくとも所定の間隔X2 だけ離間されて、かつ、実効配線溝18を囲んでその周囲に複数個形成される。ここでは、間隔X2 を第n+1層目の実効配線8とダミー配線10との間隔X1 と同様に約2μmに設定する。なお、図1においては、複数個のダミー配線溝20のうち実効配線溝18の左側に形成された各ダミー配線溝20のみを図示する。この後、孔の下方のSiCN膜14aをRIE法により除去して第n+1層目の実効配線8の上面を露出させる。これにより、第n+2層目のヴィアプラグ15を設けるためのヴィアホール16が、実効配線溝18の下部に連通してSiOC膜14bおよびSiCN膜14a内に形成される。
次に、第n+2層目のヴィアホール16、実効配線溝18、および各ダミー配線溝20のそれぞれの内面、ヴィアホール16により露出された第n+1層目の実効配線8の表面、ならびに第n+2層目の層間絶縁膜14の最上層の膜であるSiO2 膜14dの表面等を覆って、図示しない第n+2層目のバリアメタル層をスパッタリング法により約150℃の雰囲気下で全面的に堆積させる。続けて、スパッタリング法および電解めっき法により、第n+2層目のバリアメタル層が設けられたヴィアホール16、実効配線溝18、および各ダミー配線溝20のそれぞれの内部を満たしつつ、第n+2層目のCu膜を第n+2層目のバリアメタル層の表面上に全面的に成膜する。この第n+2層目のCu膜のヤング率も、前述した第n+1層目のCu膜のヤング率と同様に約130GPa である。続けて、第n+2層目のCu膜に対して、第n+1層目のCu膜と同様の条件下でアニール処理を施す。この後、ヴィアホール16、実効配線溝18、および各ダミー配線溝20のそれぞれの外部に設けられている不要なバリアメタル層およびCu膜をCMP法により研磨して除去する。これにより、側部および底部をバリアメタル層により覆われたヴィアプラグ15、実効配線17、および各ダミー配線19が第n+2層目の層間絶縁膜14内に並行して埋め込み形成される。
ヴィアプラグ15は、その上部が低比誘電率膜であるSiOC膜14b内に位置するとともに、その下部が低比誘電率膜よりも強度の高いSiCN膜14a内に位置して設けられている。また、実効配線17は、前述した第n+1層目の実効配線8と同様に、その下部にヴィアプラグ15が一体に接続されたデュアルダマシン配線として形成されている。また、実効配線17は、その上部が低比誘電率膜よりも強度の高い一般的なSiO2 膜14d内に位置するとともに、その下部が低比誘電率膜であるポーラスSiO2 膜14c内に位置しており、かつ、その下面を同じく低比誘電率膜であるSiOC膜14bにバリアメタル層を介して間接的に接して設けられている。
また、各ダミー配線19は、図1に示すように、実効配線17およびヴィアプラグ15から電気的に切断されて設けられている。実際には、各ダミー配線19は、実効配線17から少なくとも約2μm離間されて、かつ、実効配線17を囲んでその周囲に複数個に設けられているが、図1においては実効配線溝17の左側に設けられた各ダミー配線19のみを図示する。また、これら各ダミー配線19も、実効配線17と同様に、その上部がSiO2 膜14d内に位置するとともにその下部がポーラスSiO2 膜14c内に位置しており、かつ、その下面をSiOC膜14bにバリアメタル層を介して間接的に接して設けられている。
また、第n+2層目の実効配線17は、これと一体に形成されている第n+2層目のヴィアプラグ15、このヴィアプラグ15を介して間接的に接続されている第n+1層目の実効配線8およびヴィアプラグ6、ならびに第n層目の実効配線4とともに半導体装置1の実際の通電経路を構成する。これに対して、第n+2層目の各ダミー配線19は、前述した第n+1層目の各ダミー配線10と同様に半導体装置1の実際の通電経路を構成しない。
これまでの工程により、半導体装置1の第n+2層目の配線構造が形成される。すなわち、図1に示す多層配線構造を有する、本実施形態の半導体装置1を得る。なお、第n+2層目の各ダミー配線19の大きさや形状、あるいは配置などに関するより具体的な設定についても、前述した第n+1層目の各ダミー配線10の大きさや形状、あるいは配置などに関するより具体的な設定と合わせて後に詳述する。また、第n+2層目の層間絶縁膜14のうちヴィアプラグ15が形成されている下側2層のSiCN膜14aおよびSiOC膜14bを、まとめて第n+2層目のヴィア層あるいはプラグ層21とも称することとする。同様に、第n+2層目の層間絶縁膜14のうち実効配線17および各ダミー配線19が形成されている上側2層のポーラスSiO2 膜14cおよびSiO2 膜14dを、まとめて第n+2層目の配線層22とも称することとする。
図2は、第n+2層目の配線構造が形成された半導体装置1をその上方より臨んで示す平面図である。また、図1は、図2中破断線Y−Y’に沿って示す断面図である。図2中、第n+2層目の実効配線17に沿って描かれている二点鎖線D1 から外側の領域がダミー配線19の配設領域である。そして、図2中、二点鎖線D1 および二点鎖線D1 の外側に描かれている二点鎖線D2 により囲まれた領域内に、後述するダミー配線19による被覆率Rを計算するための単位領域DU を有する。なお、図2においては、図面を見易くするために、第n+2層目のダミー配線形成領域に設けられる複数個のダミー配線19のうちの一部だけを図示し、残りのダミー配線19の図示を省略する。
図3には、第n+1層目および第n+2層目の各ダミー配線10,19の個々の形状および配設パターンを示す。図3に示すように、各ダミー配線10,19は、一辺が長さaの正方形状に形成されている。本実施形態においては、各ダミー配線10,19は、一辺の長さaを、約0.1〜数μmに設定される。そして、第n+1層目および第n+2層目の各層間絶縁膜5,14内のダミー配線形成領域には、正方形状の各ダミー配線10,19が平面視においてドット状のパターンを規則的に形成して各実効配線8,17を囲むように配設される。このように、所定の形状のダミー配線10,19を規則的に形成したパターンがダミー配線形成領域内に配設される場合、図3に示すように平面視において繰り返される形状の最小単位を単位領域DU として、ダミー配線10,19による被覆率を求めることができる。
次に、図1〜図3を参照しつつ、前述した第n+1層目の各ダミー配線10および第n+2層目の各ダミー配線19の大きさや形状、あるいは配置などに関する設定について具体的かつ詳細に説明する。
本実施形態においては、前述したように低比誘電率膜であるポリメチルシロキサン膜5b、ポーラスSiO2 膜5c、およびSiOC膜5dを含む第n+1層目の層間絶縁膜5内に第n+1層目の実効配線8を設ける際に、実効配線8の周囲に併せて第n+1層目の各ダミー配線10を配設する。これにより、CMP工程により第n+1層目の層間絶縁膜5内に第n+1層目の実効配線8を埋め込み形成する際に図示しない研磨パッドと層間絶縁膜5(SiOC膜5d)および実効配線8のそれぞれの表面との摩擦によって発生する応力が実効配線8付近に集中するのを緩和する。ひいては、CMP工程時に発生する応力により層間絶縁膜5を構成するSiC膜5a、ポリメチルシロキサン膜5b、ポーラスSiO2 膜5c、およびSiOC膜5dのそれぞれの界面に、いわゆる界面剥離と称される膜剥がれが生じるのを防ぐ。あるいは、層間絶縁膜5と第n層目の層間絶縁膜3(SiO2 膜3b)との界面において界面剥離が生じるのを防ぐ。
同様に、低比誘電率膜であるSiOC膜14bおよびポーラスSiO2 膜14cを含む第n+2層目の層間絶縁膜14内に第n+2層目の実効配線17を設ける際に、併せてその周囲に第n+2層目の各ダミー配線19を配設する。これにより、CMP工程により第n+2層目の層間絶縁膜14内に第n+2層目の実効配線17を埋め込み形成する際に研磨パッドと層間絶縁膜14(SiO2 膜14d)および実効配線17のそれぞれの表面との摩擦によって発生する応力が実効配線17付近に集中するのを緩和する。ひいては、CMP工程時に発生する応力により層間絶縁膜14を構成するSiCN膜14a、SiOC膜14b、ポーラスSiO2 膜14c、およびSiO2 膜14dのそれぞれの界面に界面剥離が生じるのを防ぐ。あるいは、層間絶縁膜14と第n+1層目の層間絶縁膜5(SiOC膜5d)との界面において界面剥離が生じるのを防ぐ。
本実施形態においては、このようなCMP工程時の応力緩和効果をより効率良く得るために、第n+1層目の各ダミー配線10および第n+2層目のダミー配線19をそれぞれの層ごとに以下に述べるルールに則って配設する。
先ず、第n+1層目の配線構造については、前述した第n+1層目の各ダミー配線10のうち第n+1層目の層間絶縁膜5の上面に露出している部分の面積を、その露出部分のうち層間絶縁膜5に接している部分の長さで割った値をS(μm)と規定する。すなわち、Sは、各ダミー配線10の露出面積を、その露出部分と層間絶縁膜5との界面の長さの総和である周囲長で割った値である。また、第n+1層目の層間絶縁膜5のうち、前述した第n+1層目のヴィアプラグ6が設けられている第n+1層目のヴィア層12のヤング率をEP (GPa )と規定する。また、第n+1層目の層間絶縁膜5のうち、前述した第n+1層目の実効配線8が設けられている第n+1層目の配線層13のヤング率をEW (GPa )と規定する。また、第n+1層目の実効配線8のヤング率をEM (GPa )と規定する。また、第n+1層目の層間絶縁膜5のうち、第n+1層目のヴィア層12の膜厚をdP (nm)と規定する。また、第n+1層目の層間絶縁膜5のうち、第n+1層目の配線層13の膜厚をdW (nm)と規定する。さらに、第n+1層目の実効配線8が設けられている領域を除く第n+1層目の層間絶縁膜5の上面における、単位領域DU 当たりの第n+1層目の各ダミー配線10による被覆率をRと規定する。
同様に、第n+2層目の配線構造については、第n+2層目の各ダミー配線19のうち第n+2層目の層間絶縁膜14の上面に露出している部分の面積を、その露出部分のうち層間絶縁膜14に接している部分の長さで割った値をS(μm)と規定する。また、第n+2層目の層間絶縁膜14のうち、前述した第n+2層目のヴィアプラグ15が設けられている第n+2層目のヴィア層21のヤング率をEP (GPa )と規定する。また、第n+2層目の層間絶縁膜14のうち、前述した第n+2層目の実効配線17が設けられている第n+2層目の配線層22のヤング率をEW (GPa )と規定する。また、第n+2層目の実効配線17のヤング率をEM (GPa )と規定する。また、第n+2層目の層間絶縁膜14のうち、第n+2層目のヴィア層21の膜厚をdP (nm)と規定する。また、第n+2層目の層間絶縁膜5のうち、第n+2層目の配線層22の膜厚をdW (nm)と規定する。さらに、第n+2層目の実効配線17が設けられている領域を除く第n+2層目の層間絶縁膜14の上面における、単位領域DU 当たりの第n+2層目の各ダミー配線19による被覆率をRと規定する。
このような規定の下、S、E
P 、E
W 、E
M 、d
P 、d
W 、およびRが各層間絶縁膜5,14ごとに次の式(1)に示す関係を満たすように、各ダミー配線10,19の形状やサイズなどを決定する。
この式(1)のうち次の式(2)は、第n+1層目のヴィア層12と第n+1層目の配線層13とを足し合わせた第n+1層目の層間絶縁膜5全体のヤング率である、第n+1層目の複合ヤング率を表す。あるいは、第n+2層目のヴィア層21と第n+2層目の配線層22とを足し合わせた第n+2層目の層間絶縁膜14全体のヤング率である、第n+2層目の複合ヤング率を表す。
一般的に、CMP法により配線を層間絶縁膜内に埋め込み形成する際には、研磨パッドと配線との摩擦により配線の上部に比較的大きな荷重(負荷)が掛かる。この外部荷重により、配線およびその下部に接続されるヴィアプラグに応力集中が起こる。そして、この応力集中により、層間絶縁膜の内外に界面剥離不良が発生し易くなる。このような現象は、層間絶縁膜の少なくとも一部が、一般的な絶縁膜よりも膜構造が疎で機械的強度が低い低比誘電率膜により構成されている場合により発生し易くなる。特に、配線の少なくとも一部が低比誘電率膜の内部に達して設けられている場合には、なおさら顕著である。
図示を伴う具体的かつ詳細な説明は省略するが、このようなCMP工程における界面剥離不良の発生のメカニズムを解明すべく、本発明者らは様々な剥離試験および応力シミュレーションによる解析を行った。この解析の結果、CMP工程において配線およびヴィアプラグに掛かる応力の大きさは、配線層およびヴィア層を形成する材料の複合ヤング率、ならびに配線の被覆率およびサイズに依存することが明らかとなった。そして、前記式(1)を満たすように各ダミー配線10,19を配設することにより、CMP工程における各実効配線8,17および各ヴィアプラグ6,15への応力集中を効率良く緩和して、界面剥離等の絶縁膜剥離不良を効率良く抑制できることが明らかとなった。すなわち、前述した多層配線構造を有する半導体装置1において、各層間絶縁膜5,14ごとに前記式(1)を満たすように各ダミー配線10,19を配設することにより、各層間絶縁膜5,14の一部を構成する各低比誘電率膜5b,5c,5d,14b,14cに接して各実効配線8,17を各層間絶縁膜5,14内にCMP法により埋め込み形成する際の層間絶縁膜剥がれを効率良く抑制できることが分かった。
また、本実施形態の第n+1層目および第n+2層目の各層間絶縁膜5,14の各ヴィア層12,21および各配線層13,22は、前述したようにそれぞれ2層の絶縁膜の積層膜により構成されている。このような場合、前記式(1)をより正確に計算するために、各ヴィア層12,21のヤング率EP および各配線層13,22のヤング率EW を、それぞれ各ヴィア層12,21および各配線層13,22を構成する各積層膜全体のヤング率である複合ヤング率EC に置き換える。同様に、各ヴィア層12,21の膜厚dP および各配線層13,22の膜厚dW を、それぞれ各ヴィア層12,21および各配線層13,22を構成する各積層膜全体の膜厚である総膜厚dT に置き換える。
これら複合ヤング率E
C および総膜厚d
T は、次の式(3)および式(4)により求めることができる。
式(3)において、Ei は各ヴィア層12,21および各配線層13,22を構成する各積層膜のうち上または下からi番目の絶縁膜のヤング率をEi を表す。また、式(3)および式(4)において、di は各ヴィア層12,21および各配線層13,22を構成する各積層膜のうち上または下からi番目の絶縁膜の膜厚を表す。
次に、以上説明した本実施形態に基づいて本発明者らが作成した複数のサンプルについて、表1〜表6を参照しつつ説明する。これら本実施形態に係る各サンプルは、次に述べる設定に基づいて作成された。
先ず、各ダミー配線10,19を、図3に示すように一辺の長さがaの正方形状に形成した。この際、各ダミー配線10,19のサイズの指標となるaの値を約0.1〜2μmまで約0.1μm刻みまたは約0.5μm刻みで変化させて、合計12種類の大きさの異なるダミー配線10,19を複数個ずつ形成した。そして、そのような様々な大きさからなる各ダミー配線10,19を、図3に示すようなドット状のパターンを形成するように第n+1層目および第n+2層目の各層間絶縁膜5,14内に配設した。この際、各ダミー配線10,19による被覆率Rが、第n+1層目および第n+2層目の各層ごとに約11%、25%、44%の異なる3種類の値になるように設定した。
そして、このような設定に基づいて作成された各サンプルについて、CMP法により第n+1層目の実効配線8を埋め込み形成した後の第n+1層目の層間絶縁膜5の絶縁膜剥離の有無を光学顕微鏡を用いて観察した。これらの第n+1層目の層間絶縁膜5に対する観察結果を表1〜表3に示す。同様に、各サンプルについて、CMP法により第n+2層目の実効配線17を埋め込み形成した後の第n+2層目の層間絶縁膜14の絶縁膜剥離の有無を光学顕微鏡を用いて観察した。これらの第n+2層目の層間絶縁膜14に対する観察結果を表4〜表6に示す。
これら表1〜表6には、本実施形態の各サンプルにおける各ダミー配線10,19の一辺の長さa、各ダミー配線10,19の面積をその周囲長で割ったS、各ダミー配線10,19の被覆率Rを、前述したEP 、EW 、dP 、およびdW とともに示す。なお、一辺の長さaの正方形状からなる各ダミー配線10,19のSは、a2 /4aで表される。また、表1〜表6のCMP剥がれ評価の欄において、○印はウエハー全面で剥離なし、△印はウエハー端部(縁部)でのみ剥離あり、×印はウエハー全面で剥離あり、という結果を表す。
先ず、表1に示すように、第n+1層目の層間絶縁膜5においてダミー配線10の被覆率Rが約11%の場合、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.4μmまたは約0.5μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.3μmまたは約0.6μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.2μm以下または約0.7μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、表2に示すように、第n+1層目の層間絶縁膜5においてダミー配線10の被覆率Rが約25%の場合、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.5μmまたは約0.6μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.4μm、約0.7μm、または約0.8μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.3μm以下または約0.9μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、表3に示すように、第n+1層目の層間絶縁膜5においてダミー配線10の被覆率Rが約44%の場合、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.5〜0.8μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.9μmまたは約1.0μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線10の一辺の長さaを約0.4μm以下または約1.5μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、第n+1層目の層間絶縁膜5におけるダミー配線10の被覆率Rが約11%の場合について、前記式(1)のSの範囲を求める。このために、第n+1層目の配線構造を形成している各材料の物性値や膜厚値を前記式(2)〜(4)に代入する。
前述したように、第n+1層目の層間絶縁膜5のヴィア層12は、ヤング率が約20GPa で膜厚が約35nmのSiC膜5aと、ヤング率が約3GPa で膜厚が約135nmのポリメチルシロキサン膜5bとからなる2層の積層膜により形成されている。これらの値を前記式(3)および(4)に代入する。すると、第n+1層目のヴィア層12の複合ヤング率EC は約6.5GPa となる。また、ヴィア層12の総膜厚dT は約170nmとなる。また、第n+1層目の層間絶縁膜5の配線層13は、ヤング率が約3GPa で膜厚が約110nmのポーラスSiO2 膜5cと、ヤング率が約10GPa で膜厚が約50nmのSiOC膜5dとからなる2層の積層膜により形成されている。これらの値を前記式(3)および(4)に代入する。すると、第n+1層目の配線層13の複合ヤング率EC は約5.19GPa となる。また、配線層13の総膜厚dT は約160nmとなる。
これらの値と、被覆率R≒0.11および第n+1層目の実効配線8を形成しているCu膜のヤング率約130GPa とを、前記式(2)に代入する。これにより、第n+1層目の層間絶縁膜5におけるダミー配線10の被覆率Rが約11%の場合のSの範囲について、次の式(5)の関係が得られる。
この式(5)と表1に示す絶縁膜剥離の観察結果とを比較することにより、前記式(1)の関係を満たすように各ダミー配線10のサイズを決めた場合には、ウエハー1の端部以外での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。また、具体的な計算は省略するが、被覆率Rが約25%および約44%の場合についても同様に、前記式(1)の関係を満たすように各ダミー配線10のサイズを決めた場合には、ウエハー1の端部以外での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。
さらに、先に求めた被覆率Rが約11%の場合の各値を次の式(6)に代入する。
すると、第n+1層目の層間絶縁膜5におけるダミー配線10の被覆率Rが約11%の場合のSの範囲について、次の式(7)の関係が得られる。
この式(7)と表1に示す絶縁膜剥離の観察結果とを比較することにより、前記式(6)の関係を満たすように各ダミー配線10のサイズを決めた場合には、ウエハー1の全面での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。また、具体的な計算は省略するが、被覆率Rが約25%および約44%の場合についても同様に、前記式(6)の関係を満たすように各ダミー配線10のサイズを決めた場合には、ウエハー1の全面での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。
次に、表4〜表6に示す各サンプルについて説明する。これら表4〜表6に示す各サンプルは、前述した表1〜表3に示す各サンプルのうち、第n+1層目の層間絶縁膜5における絶縁膜剥離不良が観察されなかったサンプルについて、第n+2層目の配線構造を形成したものである。
先ず、表4に示すように、第n+2層目の層間絶縁膜14においてダミー配線19の被覆率Rが約11%の場合、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.5〜0.7μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.4μm、約0.8μm、または約0.9μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.3μm以下または約1.0μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、表5に示すように、第n+2層目の層間絶縁膜14においてダミー配線19の被覆率Rが約25%の場合、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.5〜0.8μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.9μmまたは約1.0μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.4μm以下または約1.5μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、表6に示すように、第n+2層目の層間絶縁膜14においてダミー配線19の被覆率Rが約44%の場合、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.6〜0.9μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.5μmまたは約1.0μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線19の一辺の長さaを約0.4μm以下または約1.5μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、第n+2層目の層間絶縁膜14におけるダミー配線19の被覆率Rが約11%の場合について、前記式(1)のSの範囲を求める。このために、第n+2層目の配線構造を形成している各材料の物性値や膜厚値を前記式(2)〜(4)に代入する。
前述したように、第n+2層目の層間絶縁膜14のヴィア層21は、ヤング率が約100GPa で膜厚が約50nmのSiCN膜14aと、ヤング率が約10GPa で膜厚が約230nmのSiOC膜14bとからなる2層の積層膜により形成されている。これらの値を前記式(3)および(4)に代入する。すると、第n+2層目のヴィア層21の複合ヤング率EC は約26.07GPa となる。また、ヴィア層21の総膜厚dT は約280nmとなる。また、第n+2層目の層間絶縁膜14の配線層22は、ヤング率が約3GPa で膜厚が約175nmのポーラスSiO2 膜14cと、ヤング率が約55GPa で膜厚が約50nmのSiO2 膜14dとからなる2層の積層膜により形成されている。これらの値を前記式(3)および(4)に代入する。すると、第n+2層目の配線層22の複合ヤング率EC は約14.56GPa となる。また、配線層22の総膜厚dT は約225nmとなる。
これらの値と、被覆率R≒0.11および第n+2層目の実効配線17を形成しているCu膜のヤング率約130GPa とを、前記式(2)に代入する。これにより、第n+2層目の層間絶縁膜14におけるダミー配線19の被覆率Rが約11%の場合のSの範囲について、次の式(8)の関係が得られる。
この式(8)と表4に示す絶縁膜剥離の観察結果とを比較することにより、前記式(1)の関係を満たすように各ダミー配線19のサイズを決めた場合には、ウエハー1の端部以外での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。また、具体的な計算は省略するが、被覆率Rが約25%および約44%の場合についても同様に、前記式(1)の関係を満たすように各ダミー配線19のサイズを決めた場合には、ウエハー1の端部以外での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。
さらに、先に求めた被覆率Rが約11%の場合の各値を前記式(6)に代入する。すると、第n+2層目の層間絶縁膜14におけるダミー配線19の被覆率Rが約11%の場合のSの範囲について、次の式(9)の関係が得られる。
この式(9)と表4に示す絶縁膜剥離の観察結果とを比較することにより、前記式(6)の関係を満たすように各ダミー配線19のサイズを決めた場合には、ウエハー1の全面での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。また、具体的な計算は省略するが、被覆率Rが約25%および約44%の場合についても同様に、前記式(6)の関係を満たすように各ダミー配線19のサイズを決めた場合には、ウエハー1の全面での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。
一般に、多層配線構造において配線や層間絶縁膜の積層数が上がると、絶縁膜剥離不良が発生し易くなる。また、各層間絶縁膜内に配線を埋め込み形成する場合、CMP工程により各層間絶縁膜が受けるダメージや変位が下層側から上層側に向かうにつれて累積されて大きくなっていく。このため、多層配線構造においては、下層側から上層側に向かうにつれて絶縁膜剥離不良が発生し易くなる。このような現象は、各層間絶縁膜がSiO2 膜のような一般的な絶縁膜により形成されている場合よりも、低比誘電率膜により形成されている場合の方が顕著である。また、本実施形態のように各層間絶縁膜が複数種類の絶縁膜により形成されている場合、各層間絶縁膜を構成する低比誘電率膜の割合が大きくなるにつれて顕著になる。
ところが、本実施形態では、前述したように、第n+1層目および第n+2層目の各層間絶縁膜5,14の各配線層13,22ごとに、前記式(1)の関係を満たすサイズを有する各ダミー配線10,19を各実効配線8,17の周囲に複数本配設する。これにより、本実施形態の半導体装置1では、CMP工程における各層間絶縁膜5,14の絶縁膜剥離不良が効率良く抑制されており、歩留まりが向上されている。すなわち、本実施形態の半導体装置1は、品質、性能、および信頼性が高く、かつ、生産効率も高い。ひいては、本実施形態の半導体装置1は、製造コストも抑制されており、コストパフォーマンスが向上している。特に、前記式(6)の関係を満たすサイズを有する各ダミー配線10,19を配設した場合には、それらの効果が一層高められている。
一般に、配線構造を設計する際には、絶縁膜の比誘電率、リソグラフィ工程をはじめとする各種加工工程における制約、およびCMP時のエロージョンの抑制等の様々な要因を満たすように実効配線およびダミー配線の被覆率が決定される。本実施形態では、これらの要因を満たすように予め決定されたダミー配線被覆率Rに対して、前記式(1)を満たすように各ダミー配線10,19のサイズを選択する。これにより、前述した各種要因を満足するとともに、各層間絶縁膜5,14において絶縁膜5a,5b,5c,5d,14a,14b,14c,14d同士の界面剥離に対する耐性の高い半導体装置1を設計することが可能となる。なお、前記式(1)を満たす範囲であれば、下層配線層13および上層配線層22における各ダミー配線10,19の被覆率Rおよびサイズを、互いに同じ値に設定しても構わない。あるいは、前記式(1)を満たす範囲であれば、下層配線層13および上層配線層22における各ダミー配線10,19の被覆率Rおよびサイズを、互いに異なる値に設定しても構わない。以下、例えば図1に示す多層配線構造において、第n+1層目および第n+2層目の各ダミー配線10,19の被覆率Rおよびサイズを決定する場合について説明する。
先ず、第n+1層目のダミー配線10の被覆率Rおよびサイズを決定する。第n+1層目の配線層13に配設する実効配線8の構造およびサイズ、ならびに実効配線8を埋め込み形成する際のCMP工程でのエロージョンの抑制等の要求に基づいて、第n+1層目のダミー配線10の被覆率Rを導出する。ここでは、第n+1層目のダミー配線10の被覆率Rを約11%以上に設定する必要があったとする。その一方で、前述した絶縁膜の比誘電率等の制約によれば、被覆率Rはできるだけ小さくした方が望ましい。そこで、第n+1層目の配線層13におけるダミー配線10の被覆率Rを約11%と設定する。この設定の下、前記式(1)を用いて、第n+1層目の各ダミー配線10のサイズを約0.5μmと設定する。なお、前記式(1)を満たす範囲であれば、各ダミー配線10のサイズは約0.5μm以外の大きさに設定しても構わないのはもちろんである。
次に、第n+2層目のダミー配線19の被覆率Rおよびサイズを決定する。第n+2層目の配線層22に配設する実効配線17の構造およびサイズ、ならびに実効配線17を埋め込み形成する際のCMP工程でのエロージョンの抑制等の要求に基づいて、第n+2層目のダミー配線19の被覆率Rを導出する。ここでは、第n+2層目のダミー配線19の被覆率Rを約25%以上に設定する必要があったとする。前述したように、絶縁膜の比誘電率等の制約によれば、被覆率Rはできるだけ小さくした方が望ましい。そこで、第n+2層目の配線層22におけるダミー配線19の被覆率Rを約25%と設定する。この設定の下、前記式(1)を用いて、第n+2層目の各ダミー配線19のサイズを約0.5μmと設定する。なお、第n+1層目の各ダミー配線10のサイズと同様に、前記式(1)を満たす範囲であれば、第n+2層目の各ダミー配線19のサイズは約0.5μm以外の大きさに設定しても構わないのはもちろんである。
このように、第n+1層目および第n+2層目の各ダミー配線10,19の被覆率Rおよびサイズを、前記式(1)を満たす範囲内で第n+1層目および第n+2層目の各配線層13,22ごとに個別に決定する。すなわち、第n+1層目のダミー配線10については被覆率Rを約11%に、サイズを約0.5μmに決定する。そして、第n+2層目のダミー配線10については被覆率Rを約25%に、サイズを約0.5μmに決定する。これにより、前述した絶縁膜の比誘電率等に関する性能を低下させることなく、第n+1層目および第n+2層目の各配線層13,22における絶縁膜5c,5d,14c,14d同士の界面剥離耐性を向上させることができる。
なお、このような設定においては、第n+1層目の配線層13および第n+2層目の配線層22ともに、各ダミー配線10,19の被覆率Rを約25%に、サイズを約0.5μmに統一しても構わない。本発明者らが行った実験によれば、前記式(1)を満たす範囲内であれば、そのような設定としても、第n+1層目および第n+2層目の各配線層13,22における界面剥離耐性に殆ど差は生じないことが分かった。ただし、第n+2層目の配線層22のダミー配線19の被覆率Rに合わせて第n+1層目の配線層13のダミー配線10の被覆率Rを約11%から約25%に上げることにより、少なくとも第n+1層目の配線層13については、絶縁膜の比誘電率、リソグラフィ工程をはじめとする各種加工工程における制約、およびCMP時のエロージョンの抑制等に関する性能は低下してしまう。
また、図示を伴う具体的かつ詳細な説明は省略するが、本発明者らが行った実験によれば、第n+1層目の配線層13および第n+2層目の配線層22ともに、各実効配線8,17と各ダミー配線10,19との最近接距離X1 ,X2 は約250μm以内に設定することが好ましいことが分かった。特に、各実効配線8,17と各ダミー配線10,19との最近接距離X1 ,X2を約5μm以内にすることで、第n+1層目および第n+2層目の各配線層13,22における絶縁膜剥離を抑制する効果はより一層高くなることが分かった。
以上説明したように、この第1実施形態によれば、少なくとも一部が低比誘電率膜3a,5b,5c,5d,14b,14cからなる層間絶縁膜3,5,14が第n層〜第n+2層までの3層に積層されて半導体基板2上に設けられているとともに、これら各層間絶縁膜3,5,14のうち第n+1層目および第n+2層目の各層間絶縁膜5,14内において各低比誘電率膜5b,5c,5d,14b,14cに接して各実効配線8,17が設けられており、かつ、これら各実効配線8,17が設けられた各配線層13,22内でそれら各低比誘電率膜5b,5c,5d,14b,14cに接して各実効配線8,17の周囲に各ダミー配線10,19が設けられた多層配線構造を有する半導体装置1を得ることができる。そして、この半導体装置1においては、各実効配線8,17および各ダミー配線10,19が設けられている各配線層13,22ごとに、各ダミー配線10,19の被覆率Rのみならず、各層間絶縁膜5,14の機械的物性値を考慮した各ダミー配線10,19のサイズの適正化が図られている。これにより、各実効配線8,17を埋め込み形成する際のCMP工程における絶縁膜の界面剥れが効率良く抑制されている。なお、第n層目の層間絶縁膜3内においても、第n+1層目および第n+2層目の設けられた各ダミー配線10,19と同様に、ダミー配線をその被覆率に応じて大きさや形状あるいは配置などを適正に設定して形成しても構わないのはもちろんである。
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図4を参照しつつ説明する。なお、前述した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して、それらの詳しい説明を省略する。
本実施形態においては、第1実施形態の半導体装置1の多層配線構造にさらにもう1層配線構造を追加した多層配線構造およびその製造方法について説明する。以下、具体的かつ詳細に説明する。
先ず、図4に示すように、本実施形態の半導体装置31においては、第n層目〜第n+2層目までは第1実施形態の半導体装置1の製造方法と同様の方法により製造する。なお、図1と異なり、図4においては、第n+2層目の各ダミー配線19を実効配線17の左右両側方に複数個ずつ図示している。
次に、半導体装置31の第n+3層目の配線構造を形成する。具体的には、先ず、第n+2層目のヴィアプラグ15、実効配線17、および各ダミー配線19が埋め込み形成された第n+2層目の層間絶縁膜14の上に第n+3層目の層間絶縁膜32を設ける。ここでは、この第n+3層目の層間絶縁膜32を、前述した第n+1層目および第n+2層目の各層間絶縁膜5,14と異なり、下側から上側に向かって順番に第1層目の絶縁膜32a、第2層目の絶縁膜32b、および第3層目の絶縁膜32cからなる3層構造に形成する。
先ず、第n+2層目の層間絶縁膜14の最上層の絶縁膜であるSiO2 膜14d、実効配線17、および各ダミー配線19の表面を覆って、第1層目の絶縁膜として一般的な絶縁膜であるシリコン窒化膜(SiN膜)32aをプラズマCVD法により約50nmの膜厚で成膜する。このSiN膜32aは、前述した第n+1層目のSiC膜5aおよび第n+2層目のSiCN膜14aと同様に、後述する第n+3層目のヴィアホール34を第n+3層目の層間絶縁膜32内に形成する際にSiO2 膜14d、実効配線17、および各ダミー配線19がエッチングされるのを防ぐエッチングストッパー膜として機能する。また、SiN膜32aは、第n+2層目のSiCN膜14aと同様に、そのヤング率が約100GPa と高い。このため、SiN膜32aは、SiC膜5aおよびSiCN膜14aと同様に、ヴィアホール34内に設けられる後述する第n+3層目のヴィアプラグ33が、これに接続される後述する第n+3層目の配線35を第n+3層目の層間絶縁膜32内に埋め込む際のCMP工程によって位置ずれを起こしたり、あるいは第n+2層目の実効配線17から離れたりしないように保持する補強膜としても機能する。
続けて、SiN膜32aの上に、第2層目の絶縁膜としてフッ素(F)を添加したSiO2 膜(FドープSiO2 膜)32bをプラズマCVD法等により約910nmの膜厚で形成する。このFドープSiO2 膜32bは一般的な絶縁膜であり、そのヤング率は約36GPa である。続けて、このFドープSiO2 膜32bの上に、第3層目の絶縁膜として一般的な絶縁膜であるSiO2 膜32cをプラズマCVD法により約100nmの膜厚で形成する。この第n+3層目のSiO2 膜32cも、前述した第n層目のSiO2 膜3bおよび第n+2層目のSiO2 膜14dと同様に、その比誘電率が約4.0であるとともに、そのヤング率が約55GPa である。
これまでの工程により、SiN膜32a、FドープSiO2 膜32b、およびSiO2 膜32cの互いに膜質や膜種の異なる3層の複合絶縁膜からなる第n+3層目の層間絶縁膜32が第n+2層目の層間絶縁膜14上に成膜される。すなわち、この第n+3層目の層間絶縁膜32は、少なくとも一部が低比誘電率膜3a,5b,5c,5d,14b,14cから構成されている第n層目〜第n+2層目までの各層間絶縁膜3,5,14と異なり、全ての層が一般的な絶縁膜により構成されている。
次に、第n+2層目の実効配線17の上部に接続される第n+3層目のヴィアプラグ33、およびヴィアプラグ33の上部に接続される第n+3層目の配線(実効配線)35を第n+3層目の層間絶縁膜32内に設ける。それとともに、第n+3層目の補強部材(ダミー配線)37を第n+3層目の層間絶縁膜32内に設ける。これら第n+3層目のヴィアプラグ33、実効配線35、およびダミー配線37は、前述した第n+1層目および第n+2層目の各ヴィアプラグ6,15、各実効配線8,17、および各ダミー配線10,19を形成するのと同様の方法により形成すれば良い。以下、簡潔に説明する。
先ず、第n+2層目の実効配線17の上方のヴィアプラグ33を設ける位置においてSiO2 膜32cおよびFドープSiO2 膜32bをそれらの膜厚方向に沿ってSiN膜32aの上面が露出するまでRIE法により除去して、図示しない孔を形成する。続けて、この孔の上方の実効配線35を設ける位置においてSiO2 膜32cおよびFドープSiO2 膜32bをそれらの膜厚方向に沿ってFドープSiO2 膜32bの高さ方向中間部に達するまでRIE法により除去する。ここでは、FドープSiO2 膜32bを、その上面から約400nmの深さまで除去する。これにより、深さ約500nmの第n+3層目の実効配線35を設けるための配線溝(実効配線溝)36が、孔の上部に連通してSiO2 膜32cおよびFドープSiO2 膜32b内に形成される。
また、実効配線溝36を形成するのと並行して、実効配線溝36を囲む複数箇所において、実効配線溝36と略同じ深さだけSiO2 膜32cおよびFドープSiO2 膜32bをそれらの膜厚方向に沿ってRIE法により除去する。これにより、第n+3層目のダミー配線37を設けるためのダミー配線溝(補強部材用溝)38が、実効配線溝36と略同じ高さで、かつ、実効配線溝36と略同じ約500nmの深さでSiO2 膜32cおよびFドープSiO2 膜32b内の複数箇所に形成される。
第n+3層目の各ダミー配線溝38は、第n+1層目および第n+2層目の各ダミー配線溝11,20と同様に、実効配線溝36から少なくとも所定の間隔X3 だけ離間されて、かつ、実効配線溝36を囲んでその周囲に複数個形成される。ここでは、間隔X3 を、第n+1層目の実効配線溝9と各ダミー配線溝11との間隔X1 および第n+2層目の実効配線溝18と各ダミー配線溝20との間隔X2 と同様に、約2μmに設定する。なお、図4においては、複数個のダミー配線溝38のうち実効配線溝36の左側に形成された各ダミー配線溝38のみを図示する。この後、孔の下方のSiN膜32aをRIE法により除去して第n+2層目の実効配線17の上面を露出させる。これにより、第n+3層目のヴィアプラグ33を設けるためのヴィアホール34が、実効配線溝36の下部に連通してFドープSiO2 膜32bおよびSiN膜32a内に形成される。
次に、ヴィアホール34、実効配線溝36、および各ダミー配線溝38のそれぞれの内面、ヴィアホール34により露出された第n+2層目の実効配線17の表面、ならびに第n+3層目の層間絶縁膜32の最上層の膜であるSiO2 膜32cの表面等を覆って、図示しない第n+3層目のバリアメタル層をスパッタリング法により約150℃の雰囲気下で全面的に堆積させる。続けて、スパッタリング法および電解めっき法により、第n+3層目のバリアメタル層が設けられたヴィアホール34、実効配線溝36、および各ダミー配線溝38のそれぞれの内部を満たしつつ、第n+3層目のCu膜を第n+3層目のバリアメタル層の表面上に全面的に成膜する。この第n+3層目のCu膜のヤング率も、前述した第n+1層目および第n+2層目のCu膜のヤング率と同様に約130GPa である。続けて、第n+3層目のCu膜に対して、第n+1層目および第n+2層目の各Cu膜と同様の条件下でアニール処理を施す。この後、ヴィアホール34、実効配線溝36、および各ダミー配線溝38のそれぞれの外部に設けられている不要なバリアメタル層およびCu膜をCMP法により研磨して除去する。これにより、側部および底部をバリアメタル層により覆われたヴィアプラグ33、実効配線35、および各ダミー配線37が第n+3層目の層間絶縁膜32内に並行して埋め込み形成される。
このように、第n+3層目のヴィアプラグ33、実効配線35、および各ダミー配線37は、前述した第n+1層目および第n+2層目の各ヴィアプラグ6,15、各実効配線8,17、および各ダミー配線10,19と異なり、全て低比誘電率膜と接することなく、一般的な絶縁膜32a,32b,32c内に位置して設けられている。実効配線35は、その上部がSiO2 膜32c内に位置するとともにその下部がFドープSiO2 膜32b内に位置して設けられている。また、実効配線35は、前述した第n+1層目および第n+2層目の各実効配線8,17と同様に、その下部にヴィアプラグ33が一体に接続されたデュアルダマシン配線として形成されている。ヴィアプラグ33は、その上部がFドープSiO2 膜32b内に位置するとともにその下部がSiN膜32a内に位置して設けられている。
また、第n+3層目の各ダミー配線37は、図4に示すように、実効配線35およびヴィアプラグ33から電気的に切断されて設けられている。実際には、各ダミー配線37は、実効配線35から少なくとも約2μm離間されて、かつ、実効配線35を囲んでその周囲に複数個に設けられているが、図4においては実効配線35の左側に設けられた各ダミー配線37のみを図示する。これら各ダミー配線37も、実効配線35と同様に、その上部がSiO2 膜32c内に位置するとともにその下部がFドープSiO2 膜32b内に位置して設けられている。
また、第n+3層目の実効配線35は、これと一体に形成されている第n+3層目のヴィアプラグ33、このヴィアプラグ33を介して間接的に接続されている第n+2層目の実効配線17およびヴィアプラグ15、このヴィアプラグ15を介して間接的に接続されている第n+1層目の実効配線8およびヴィアプラグ6、ならびに第n層目の実効配線4とともに半導体装置31の実際の通電経路を構成する。これに対して、第n+3層目の各ダミー配線37は、前述した第n+1層目および第n+2層目の各ダミー配線10,19と同様に、半導体装置31の実際の通電経路を構成しない。
これまでの工程により、半導体装置31の第n+3層目の配線構造が形成される。すなわち、図4に示す多層配線構造を有する、本実施形態の半導体装置31を得る。なお、第n+3層目の各ダミー配線37の大きさや形状、あるいは配置などに関する設定は、前述した第n+1層目および第n+2層目の各ダミー配線10,19の大きさや形状、あるいは配置などに関する設定と同様である。また、第n+3層目の層間絶縁膜32のうちヴィアプラグ33が形成されているSiN膜32aおよびFドープSiO2 膜32bのうちそのSiN膜32aとの界面から約510nmの高さまでを、まとめて第n+3層目のヴィア層あるいはプラグ層39とも称することとする。同様に、第n+3層目の層間絶縁膜32のうち実効配線35およびダミー配線37が形成されているSiO2 膜32cおよびFドープSiO2 膜32bのうちそのSiO2 膜32cとの界面から約400nmの深さまでを、まとめて第n+3層目の配線層40とも称することとする。
次に、以上説明した本実施形態に基づいて本発明者らが作成した複数のサンプルについて、表7〜表9を参照しつつ説明する。これら本実施形態に係る各サンプルは、前述した第1実施形態の各サンプルと同様の設定に基づいて作成された。そして、そのような設定に基づいて作成された各サンプルについて、CMP法により第n+3層目の実効配線35を埋め込み形成した後の第n+3層目の層間絶縁膜32の絶縁膜剥離の有無を光学顕微鏡を用いて観察した。これらの第n+3層目の層間絶縁膜32に対する観察結果を表7〜表9に示す。
先ず、表7に示すように、第n+3層目の層間絶縁膜32においてダミー配線37の被覆率Rが約11%の場合、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.6〜0.9μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.5μmまたは約1.0μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.4μm以下または約1.5μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、表8に示すように、第n+3層目の層間絶縁膜32においてダミー配線37の被覆率Rが約25%の場合、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.6〜0.9μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.5μmまたは約1.0μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.4μm以下または約1.5μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、表9に示すように、第n+3層目の層間絶縁膜32においてダミー配線37の被覆率Rが約44%の場合、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.7〜1.0μmとすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離は観察されなかった。また、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.6μmとすると、ウエハー1の端部でのみ絶縁膜剥離が観察された。また、各ダミー配線37の一辺の長さaを約0.5μm以下または約1.5μm以上とすると、ウエハー1の全面で絶縁膜剥離が観察された。
次に、第n+3層目の層間絶縁膜32におけるダミー配線37の被覆率Rが約11%の場合について、前記式(1)のSの範囲を求める。このために、第n+3層目の配線構造を形成している各材料の物性値や膜厚値を前記式(2)〜(4)に代入する。
前述したように、第n+3層目の層間絶縁膜32のヴィア層39は、ヤング率が約100GPa で膜厚が約50nmのSiN膜32aと、ヤング率が約36GPa で総膜厚が約910nmのFドープSiO2 膜32bのうちその下部の膜厚が約510nmの部分とからなる2層の積層膜により形成されている。これらの値を前記式(3)および(4)に代入する。すると、第n+3層目のヴィア層39の複合ヤング率EC は約41.71GPa となる。また、ヴィア層39の総膜厚dT は約560nmとなる。また、第n+3層目の層間絶縁膜32の配線層40は、ヤング率が約36GPa で総膜厚が約910nmのFドープSiO2 膜32bのうちその上部の膜厚が約400nmの部分と、ヤング率が約55GPa で膜厚が約100nmのSiO2 膜32cとからなる2層の積層膜により形成されている。これらの値を前記式(3)および(4)に代入する。すると、第n+3層目の配線層40の複合ヤング率EC は約39.8GPa となる。また、配線層40の総膜厚dT は約500nmとなる。
これらの値と、被覆率R≒0.11および第n+3層目の実効配線35を形成しているCu膜のヤング率約130GPa とを、前記式(2)に代入する。これにより、第n+3層目の層間絶縁膜32におけるダミー配線37の被覆率Rが約11%の場合のSの範囲について、次の式(10)の関係が得られる。
この式(10)と表7に示す絶縁膜剥離の観察結果とを比較することにより、前記式(1)の関係を満たすように各ダミー配線37のサイズを決めた場合には、ウエハー1の端部以外での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。また、具体的な計算は省略するが、被覆率Rが約25%および約44%の場合についても同様に、前記式(1)の関係を満たすように各ダミー配線37のサイズを決めた場合には、ウエハー1の端部以外での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。
さらに、先に求めた被覆率Rが約11%の場合の各値を前記式(6)に代入する。すると、第n+3層目の層間絶縁膜32におけるダミー配線37の被覆率Rが約11%の場合のSの範囲について、次の式(11)の関係が得られる。
この式(11)と表7に示す絶縁膜剥離の観察結果とを比較することにより、前記式(6)の関係を満たすように各ダミー配線37のサイズを決めた場合には、ウエハー1の全面での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。また、具体的な計算は省略するが、被覆率Rが約25%および約44%の場合についても同様に、前記式(6)の関係を満たすように各ダミー配線37のサイズを決めた場合には、ウエハー1の全面での絶縁膜剥離不良を抑制できることが分かる。
以上説明したように、この第2実施形態によれば、低比誘電率膜により層間絶縁膜を形成した配線構造上にさらに配線構造を積層した多層配線構造において、ダメージや変位の累積により絶縁膜剥離不良の生じ易い上層の層間絶縁膜がたとえ一般的な絶縁膜で形成された場合においても、前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第n+1層目、第n+2層目、および第n+3層目のそれぞれの配線層13,22,40を構成する絶縁膜5c,5d,14c,14d,32b,32cが、第n+1層目、第n+2層目、および第n+3層目の各層間絶縁膜5,14,32ごとに異なる3層以上の多層配線構造を有する本実施形態の半導体装置31においても、それら各配線層13,22,40ごとに前記式(1)を満たすサイズを有するダミー配線10,19,37を各実効配線8,17,35の周囲に配設することによって、各配線層13,22,40ごとのCMP工程における絶縁膜剥離不良が効率良く抑制されており、歩留まりが向上されている。
したがって、本実施形態の半導体装置31は、より多層の配線構造を有しているにも拘わらず、その品質、性能、および信頼性が高く、かつ、生産効率も高い。ひいては、本実施形態の半導体装置1は、製造コストも抑制されており、コストパフォーマンスが向上している。特に、前記式(6)の関係を満たすサイズを有するダミー配線10,19,37を配設した場合には、それらの効果が一層高められている。
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について図5を参照しつつ説明する。なお、前述した第1および第2の各実施形態と同一部分には同一符号を付して、それらの詳しい説明を省略する。
本実施形態においては、前述した第n+1層目〜第n+3層目までの各ダミー配線10,19,37の形状のバリエーションについて簡潔に説明する。
第1および第2の各実施形態においては、第n+1層目〜第n+3層目までの各ダミー配線10,19,37を一辺の長さがaの正方形状に形成する設定とした。しかし、それら各ダミー配線10,19,37の形状は、正方形状には限定されない。
例えば、図5(a)に示すように、各ダミー配線10,19,37は、それらの平面視における形状が長方形状に形成されても構わない。また、図5(b)に示すように、各ダミー配線10,19,37は、十字形状に形成されても構わない。また、図5(c)に示すように、各ダミー配線10,19,37は、それらの平面視における形状がL字形状あるいは鍵形状と称される形状に形成されても構わない。また、図5(d)に示すように、各ダミー配線10,19,37は、それらの平面視における形状がT字形状に形成されても構わない。また、図5(e)に示すように、各ダミー配線10,19,37は、それらの平面視における形状が網目形状、櫛形状、柵形状、あるいはフェンス形状と称される形状に形成されても構わない。
なお、前述したように、各ダミー配線10,19,37の周囲長は、それらが設けられている各層間絶縁膜5,14,32(絶縁膜5d,14d,32c)の上面と、この上面への各ダミー配線10,19,37の露出面との界面の長さの総和で定義される。したがって、例えば各ダミー配線10,19,37を図5(e)に示す網目形状に形成した場合、各ダミー配線10,19,37周囲長には、各ダミー配線10,19,37の外周部と各層間絶縁膜5,14,32との界面の長さのみならず、各ダミー配線10,19,37の内周部と各ダミー配線10,19,37の内側に閉じ込められた各層間絶縁膜5,14,32との界面の長さも含まれる。
以上説明したように、この第3実施形態によっても、前述した第1および第2の各実施形態と同様の効果を得ることができる。また、この第3実施形態によれば、各ダミー配線10,19,37の形状を、各実効配線8,17,35の形状や配設パターンなどに応じて自由に設計することが出来るので、半導体装置全体の設計の自由度を高めることが出来る。当然、各ダミー配線10,19,37の形状は、各層ごと、あるいは同一層内で複数の領域に分割されて設定された各ダミーパターン形成領域ごとに異なる形状に形成して構わないのはもちろんである。
さらには、図示を伴う具体的かつ詳細な説明は省略するが、各ダミー配線10,19,37の下部には、柱形状あるいはフェンス形状(溝状)のダミーヴィアプラグが接続されていても構わない。そして、これら各ダミーヴィアプラグの少なくとも一部が、前述した第n+1層目〜第n+3層目までの各ヴィアプラグ6,15,33と同様に、補強層として機能する第n+1層目のSiC膜5a、第n+2層目のSiCN膜14a、あるいは第n+3層目のSiN膜32aに接する構成とするとなお良い。このような構成とすることにより、各配線層13,22,40ごとのCMP工程における絶縁膜剥離不良をさらに効率良く抑制することができる。
なお、本発明に係る半導体装置は、前述した第1〜第3の各実施形態には制約されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、それらの構成、あるいは製造工程などの一部を種々様々な設定に変更したり、あるいは各種設定を適宜、適当に組み合わせて用いたりして実施することができる。
例えば、第n+1層目の層間絶縁膜5を形成する絶縁膜は、前述したSiC膜5a、ポリメチルシロキサン膜5b、ポーラスSiO2 膜5c、およびSiOC膜5dには限定されない。層間絶縁膜5は、例えばフッ素(F)添加SiO2 膜、有機絶縁膜、ハイドロジェンシルセスキオキサン膜、高分子膜、Fドープアモルファスカーボン膜、あるいはそれらのうちの少なくとも2種類の膜を積層した積層膜を用いて形成しても構わない。また、第n+1層目の層間絶縁膜5は、必ずしも前述したように互いに膜種の異なる4種類の絶縁膜5a,5b,5c,5dを用いた4層構造に形成する必要は無い。例えば、第n+1層目の層間絶縁膜5は、その4層の絶縁膜5a,5b,5c,5dのうちの2層以上を1種類の絶縁膜を用いて形成しても構わない。あるいは、第n+1層目の層間絶縁膜5は、その4層の絶縁膜5a,5b,5c,5dのうちの少なくとも1層を、さらに互いに膜種の異なる2種類以上の絶縁膜を含む積層膜により形成しても構わない。
同様に、第n+2層目の層間絶縁膜14も、必ずしも前述したように互いに膜種の異なるSiCN膜14a、SiOC膜14b、ポーラスSiO2 膜14c、およびSiO2 膜14dを用いた4層構造に形成する必要は無い。第n+2層目の層間絶縁膜14も、第n+1層目の層間絶縁膜5と同様に、その4層の絶縁膜14a,14b,14c,14dのうちの2層以上を1種類の絶縁膜を用いて形成しても構わない。あるいは、第n+2層目の層間絶縁膜14は、その4層の絶縁膜14a,14b,14c,14dのうちの少なくとも1層を、さらに互いに膜種の異なる2種類以上の絶縁膜を含む積層膜により形成しても構わない。
また、第n+2層目の層間絶縁膜14を構成する4層の絶縁膜14a,14b,14c,14dのうち、例えば第1層目の絶縁膜は必ずしも前述したSiCN膜14aを用いて形成される必要は無い。第n+2層目の層間絶縁膜14の第1層目の絶縁膜は、例えばプラズマCVD法で形成されるシリコン窒化膜(SiN膜)を用いて形成されても構わない。また、第n+2層目の層間絶縁膜14を構成する4層の絶縁膜14a,14b,14c,14dのうち、例えば第3層目の絶縁膜も必ずしも前述したポーラスSiO2 膜14cを用いて形成される必要は無い。第n+2層目の層間絶縁膜14の第3層目の絶縁膜は、例えばポリメチルシロキサン膜を用いて形成されても構わない。
さらに、エッチングストッパー膜としてのみならず、補強層としても機能する第n+1層目のSiC膜5a、第n+2層目のSiCN膜14a、および第n+3層目のSiN膜32aは、必ずしも各層の第1層目(最下層)である各ヴィア層12,21,39の下層側に形成される必要は無い。これら各膜5a,14a,32aは、例えば各層のヴィア層12,21,39の最上層に形成されても構わない。すなわち、各膜5a,14a,32aは、バリアメタル膜を介して各層のヴィアプラグ6,15,33の上部と接する位置に形成されても構わない。換言すれば、各膜5a,14a,32aは、バリアメタル膜を介して各層の実効配線8,17,35の下面と接する位置に形成されても構わない。このような位置に形成された場合でも、各膜5a,14a,32aは、前述した第1および第2の各実施形態と同様に補強層として機能することができる。