JP2008149365A - ハンダ粉末及びこの粉末を用いたハンダ用ペースト - Google Patents

ハンダ粉末及びこの粉末を用いたハンダ用ペースト Download PDF

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Abstract

【課題】比較的酸化し易い錫の酸化を阻止することにより、ハンダ粉末の溶融時にハンダ合金中へのボイドの発生を抑制してハンダ合金の電気抵抗の増加及び機械的強度の低下を防止し、またハンダ粉末の平均粒径を5μm以下とすることにより、ハンダ用ペーストのファインピッチパターンでの印刷性を向上する。
【解決手段】ハンダ粉末は、中心核及びこの中心核を被包する被覆層で構成される構造を有し、平均粒径は5μm以下である。また中心核は錫からなり、被覆層は銀、銅、ビスマス又はゲルマニウムのいずれか1種からなる。更に錫の含有割合は90〜99.9質量%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ファインピッチ用鉛フリーのハンダ粉末及びこの粉末を用いたハンダ用ペーストに関する。更に詳しくは、平均粒径が5μm以下のハンダ粉末及びこの粉末を用いたハンダ用ペーストに関するものである。
電子部品の接合に用いられるハンダは環境の面から鉛フリー化が進められ、現在では、錫を主成分としたハンダ粉末が採用されている。ハンダ粉末のような微細な金属粉末を得る方法としては、ガスアトマイズ法や回転ディスク法などのアトマイズ法の他に、メルトスピニング法、回転電極法、機械的プロセス、化学的プロセス等が知られている。ガスアトマイズ法は、誘導炉やガス炉で金属を溶融した後、タンディッシュの底のノズルから溶融金属を流下させ、その周囲より高圧ガスを吹き付けて粉化する方法である。また回転ディスク法は、遠心力アトマイズ法とも呼ばれ、溶融した金属を高速で回転するディスク上に落下させて、接線方向に剪断力を加えて破断して微細粉を作る方法である。
一方、電子部品の微細化とともに接合部分のファインピッチ化も進んでおり、より微細な粒径のハンダ粉末が求められ、それぞれの技術の改良が進められている。具体的には、ガスアトマイズ法を改良した技術として、ガスを巻き込ませた状態の金属溶湯をノズルより噴射させ、このノズルの周囲から高圧ガスを吹き付けることを特徴とする金属微粉末の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。上記特許文献1に開示された方法によれば、溶湯がノズルを通過する際にガスを巻き込ませることによって、ノズルから出湯した時点で溶湯が既に分断され、より平均粒径の小さな粉末を製造することができる。
また回転ディスク法を改良した技術として、回転体に金属微粉末サイズ調整手段としてのメッシュを配し、このメッシュを通して溶融金属を飛散させる金属微粉末の製法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。上記特許文献2に開示された方法によれば、従来の回転ディスク法に比べて微細な金属微粉末を効率良く生成できる。
更にガスアトマイズ法と回転ディスク法を組合せた技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。このガスアトマイズ法と回転ディスク法を組合せた技術では、ノズルから流出した溶融金属に不活性ガスのジェット流を吹付けて溶融金属を粉砕し、更にこの粉砕した溶融金属を回転するディスク上に落下させるように構成される。このように構成されたガスアトマイズ法と回転ディスク法を組合せた技術では、それぞれの単体法よりも微細粉を作製できるようになっている。
特開2004−18956号公報(請求項1、段落[0014]) 特開平6−264116号公報(請求項1、段落[0016]、図3) 皆川和己、垣澤英樹、木村隆、馬苣生、唐捷、原田幸明 著、「鉛フリー微細球状粉の新たな製造法」、第12回エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術、社団法人溶接学会、平成18年2月、p.113〜p.118
しかしながら、上記特許文献1、特許文献2及び非特許文献1に示される方法では、現在求められている平均粒径が5μm以下である、微細なハンダ粉末の収率が非常に悪く、製造コストが高くなるという不具合があった。
また、上記特許文献1、特許文献2及び非特許文献1に示される方法で製造されたハンダ粉末を分級して5μm以下の微細なハンダ粉末を得ても、このハンダ粉末では、体積に比べて表面積が大きくなり酸化膜が多くなるため、ハンダ粉末の溶融時に酸化膜の影響によりハンダ合金中に気泡や亀裂等のボイドが増加してしまい、ハンダ合金の電気抵抗の増加及び機械的強度の低下が発生する問題点もあった。
本発明の目的は、比較的酸化し易い錫の酸化を阻止することにより、ハンダ粉末の溶融時にハンダ合金中へのボイドの発生を抑制してハンダ合金の電気抵抗の増加及び機械的強度の低下を防止できる、ハンダ粉末及びこの粉末を用いたハンダ用ペーストを提供することにある。
本発明の別の目的は、平均粒径を5μm以下とすることにより、ハンダ用ペーストのファインピッチパターンでの印刷性を向上できる、ハンダ粉末及びこの粉末を用いたハンダ用ペーストを提供することにある。
なお、本明細書において、『ハンダ合金』とは、ハンダ粉末とハンダ用フラックスとを混合して得られたハンダ用ペーストを加熱してハンダ粉末を溶融させたときに、ハンダ粉末の中心核をなす金属と被覆層をなす金属とが融和混合したものをいい、その後に固化したものも含む。
請求項1に係る発明は、中心核及びこの中心核を被包する被覆層で構成される構造を有する平均粒径5μm以下のハンダ粉末であって、中心核が錫からなり、被覆層が銀、銅、ビスマス又はゲルマニウムのいずれか1種からなり、錫の含有割合が90〜99.9質量%であることを特徴とするハンダ粉末である。
この請求項1に記載されたハンダ粉末では、比較的酸化し易い錫からなる中心核が、比較的酸化し難い銀や銅等からなる被覆層により被包されるので、錫の酸化を阻止できる。またハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷できる。更にハンダ粉末の錫の含有割合を90〜99.9質量%としたので、錫単体によるハンダ粉末とほぼ同一の比較的低い温度で溶融する。
なお、上記請求項1において、被覆層が銀を含むとき銀の含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜5.0質量%であり、被覆層が銅を含むとき銅の含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜1.0質量%であり、被覆層がビスマスを含むときビスマスの含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜10質量%であり、被覆層がゲルマニウムを含むときゲルマニウムの含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜1.0質量%である。
また、上記請求項1において、被覆層を無電解めっきにて作製することができる。
請求項4に係る発明は、中心核及びこの中心核を被包する被覆層で構成される構造を有する平均粒径5μm以下のハンダ粉末であって、中心核が錫からなり、被覆層がビスマスからなり、錫の含有割合が40〜60質量%であることを特徴とするハンダ粉末である。
この請求項4に記載されたハンダ粉末では、比較的酸化し易い錫からなる中心核が、比較的酸化し難いビスマスからなる被覆層により被包されるので、錫の酸化を阻止できる。またハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷できる。
なお、上記請求項4において、被覆層がビスマスを含むときビスマスの含有割合が粉末全体量100質量%に対して40〜60質量%である。
また、上記請求項4において、被覆層を無電解めっきにて作製することができる。
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6いずれか1項に記載のハンダ粉末とハンダ用フラックスを混合してペースト化することにより得られたハンダ用ペーストである。
この請求項7に記載されたハンダ用ペーストでは、このハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末の中心核が比較的酸化し易い錫からなるけれども、この中心核が比較的酸化し難い銀や銅等からなる被覆層により被包されるので、錫の酸化を阻止できる。またハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷できる。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明であって、更に電子部品の実装に用いられることを特徴とする。
この請求項8に記載されたハンダ用ペーストでは、このハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末の中心核が比較的酸化し易い錫からなるけれども、この中心核が、比較的酸化し難い銀や銅等からなる被覆層により被包されるので、錫の酸化を阻止できる。またハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷でき、より微細な電子部品をハンダ用ペーストにより実装できる。
本発明によれば、ハンダ粉末が中心核及びこの中心核を被包する被覆層で構成される構造を有するとともに、その平均粒径が5μm以下であり、中心核が錫からなり、被覆層が銀、銅、ビスマス又はゲルマニウムのいずれか1種からなり、更に錫の含有割合が95〜99.9質量%であるので、比較的酸化し易い錫からなる中心核が、比較的酸化し難い銀や銅等からなる被覆層により被包されており、錫の酸化を阻止できる。この結果、ハンダ粉末の溶融時に酸化膜を起因とするハンダ合金中へのボイドの発生を抑制することができるので、電子部品と基板の間のハンダ合金接合部における電気抵抗の増加を防止できるとともに、ハンダ合金の機械的強度の低下を防止できる。またハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷できる。またハンダ粉末の錫の含有割合を95〜99.9質量%としたので、ハンダに必要な低融点を示す。
またハンダ粉末が中心核及びこの中心核を被包する被覆層で構成される構造を有するとともに、その平均粒径が5μm以下であり、中心核が錫からなり、被覆層がビスマスからなり、更に錫の含有割合が40〜60質量%であれば、比較的酸化し易い錫からなる中心核が、比較的酸化し難いビスマスからなる被覆層により被包されており、錫の酸化を阻止できる。この結果、上記と同様に、ハンダ粉末の溶融時に酸化膜を起因とするハンダ合金中へのボイドの発生を抑制することができるので、電子部品と基板の間のハンダ合金接合部における電気抵抗の増加を防止できるとともに、ハンダ合金の機械的強度の低下を防止できる。またハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷できる。
また上記ハンダ粉末とハンダ用フラックスを混合してペースト化することによりハンダ用ペーストを調製すれば、このハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末の中心核が比較的酸化し易い錫からなるけれども、この中心核が比較的酸化し難い銀や銅等からなる被覆層により被包されるので、錫の酸化が阻止されて、ハンダ合金の電気抵抗の増加及び機械的強度の低下を防止できるとともに、ハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷できる。
更に上記ハンダ用ペーストを電子部品の実装に用いれば、このハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末の中心核が比較的酸化し易い錫からなるけれども、この中心核が比較的酸化し難い銀や銅等からなる被覆層により被包されるので、錫の酸化が阻止されて、ハンダ合金のボイド起因による電気抵抗の増加及び機械的強度の低下を防止できるとともに、ハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷でき、より微細な電子部品をハンダ用ペーストにより実装できる。
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
<第1の実施の形態>
この実施の形態のハンダ粉末は、中心核と、この中心核を被包する被覆層とにより構成される構造を有し、平均粒径が5μm以下、好ましくは0.1〜5μmの粉末である。中心核は錫からなる。また被覆層は、錫よりも貴な金属又は半金属からなる。具体的には、被覆層は、銀、銅、ビスマス及びゲルマニウムのいずれか1種の金属又は半金属からなる。更に上記ハンダ粉末中の錫の含有割合は90〜99.9質量%、好ましくは95〜99.9質量%である。ここで、ハンダ粉末の平均粒径を5μm以下に限定したのは、5μmを越えるとハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷できず、微細な電子部品をハンダ用ペーストにより実装できないからである。またハンダ粉末中の錫の含有割合を90〜99.9質量%の範囲に限定したのは、90質量%未満ではハンダ合金に必要な低融点を示さず、99.9質量%を越えると被覆層が不足して中心核を被覆層で完全に被包できなくなったり或いはハンダ合金の機械的強度が低下してしまうからである。
被覆層が銀を含むときは、銀の含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜5.0質量%、好ましくは3〜4質量%であり、被覆層が銅を含むときは、銅の含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜1.0質量%、好ましくは0.5〜0.7質量%である。また被覆層がビスマスを含むときは、ビスマスの含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜6質量%であり、被覆層がゲルマニウムを含むときは、ゲルマニウムの含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。ここで、被覆層が銀を含むときその含有割合を0.1〜5.0質量%の範囲に限定し、被覆層が銅を含むときその含有割合を0.1〜1.0質量%の範囲に限定し、被覆層がゲルマニウムを含むときその含有割合を0.1〜1.0質量%の範囲に限定したのは、ハンダ合金の融点を低く抑えるとともに、ハンダ合金の機械的強度を向上するためである。また被覆層がビスマスを含むときその含有割合を0.1〜10質量%の範囲に限定したのは、ハンダ合金の機械的強度を向上するためである。
このように構成されたハンダ粉末の製造方法を説明する。
先ず、溶媒に、中心核を構成する金属元素、即ち錫を含む化合物と分散剤とをそれぞれ添加して混合することにより、第1溶解液を調製した後、この第1溶解液のpHを調整する。溶媒としては、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル等が挙げられ、中心核を構成する錫を含む化合物としては、塩化錫(II)、酢酸錫(II)、シュウ酸錫(II)等が挙げられる。また分散剤としては、セルロース系、ビニル系、多価アルコールなどが挙げられ、その他にゼラチン、カゼイン等を用いることができる。次いで、還元剤を溶解した水溶液を調製し、この水溶液のpHを先に作製した溶解液と同程度に調整する。還元剤としては、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン等のホウ素水素化物、ヒドラジン等の窒素化合物、三価のチタンイオンや2価のクロムイオン等の金属イオン等が挙げられる。次に、上記第1溶解液に還元剤水溶液を添加して混合することにより、第1溶解液中の錫イオンが還元され、液中に中心核となる錫粉末が分散した第1分散液が得られる。
一方、溶媒に、被覆層を構成する金属元素と分散剤とをそれぞれ添加して混合することにより、第2溶解液を調製した後、この第2溶解液のpHを調整する。溶媒としては、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル等が挙げられる。また被覆層が銀を含むときこの銀を含む化合物としては、塩化銀、硝酸銀等が挙げられ、被覆層が銅を含むときこの銅を含む化合物としては、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅等が挙げられ、被覆層がビスマスを含むときこのビスマスを含む化合物としては、塩化ビスマス(III)、硫酸ビスマス(III)、硝酸ビスマス(III)等が挙げられる。また被覆層がゲルマニウムを含むときこのゲルマニウムを含む化合物としては、塩化ゲルマニウム(II)、β−カルボキシエチルゲルマニウム等が挙げられ、被覆層がニッケルを含むときこのニッケルを含む化合物としては、塩化ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)六水和物、硝酸ニッケル(II)六水和物等が挙げられ、被覆層がインジウムを含むときこのインジウムを含む化合物としては、塩化インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウム等が挙げられる。更に分散剤としては、セルロース系、ビニル系、多価アルコールなどが挙げられ、その他にゼラチン、カゼイン等を用いることができる。なお、溶媒に被覆層を構成する金属元素を含む化合物を添加して溶解させた後、錯化剤を加えて、金属元素を錯体化した後に、分散剤を添加してもよい。錯化剤を加えることで、より結晶粒径の小さな緻密な被覆層が得られる。錯化剤としては、コハク酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、フタル酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、エチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、又はその塩等が挙げられる。また第2溶解液中の被覆層を構成する金属元素を含む化合物は、得られるハンダ粉末に含まれる被覆層の含有割合となるように配合される。
次に、上記第1分散液に第2溶解液を添加して混合することにより、第1分散液に分散した錫粉末の表面に被覆層となる金属を析出させて、この金属で被包された錫からなる金属粉末の分散した第2分散液を得る。この第2分散液に分散している金属粉末は、中心核に被覆層が被包した構造をとり、その平均粒径は5μm以下、好ましくは0.1〜5μmである。その後、洗浄濾過を行い、乾燥させることにより、中心核及び被覆層で構成されたハンダ粉末が得られる。
<第2の実施の形態>
この実施の形態では、ハンダ粉末中の錫の含有割合が40〜60質量%、好ましくは42〜52質量%であり、被覆層であるビスマスの含有割合が粉末全体量100質量%に対して40〜60質量%、好ましくは55〜58質量%である。ここで、ハンダ粉末中の錫の含有割合を40〜60質量%の範囲に限定したのは、錫単体によるハンダ粉末より融点の低いビスマスやインジウムを比較的多く含有させることを考慮したためである。また被覆層がビスマスを含むときその含有割合を40〜60質量%の範囲に限定したのは、ハンダ合金の融点を錫単体による粉末の融点よりも低くするためである。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
このように構成されたハンダ粉末の製造方法は、第1の実施の形態のハンダ粉末を構成する中心核及び被覆層の割合を所望の割合に代えることで、製造することができる。
なお、第1又は第2の実施の形態のハンダ粉末100質量%に対して、ハンダ用フラックスを10〜30質量%、好ましくは10〜25質量%混合しペースト化することによりハンダ用ペーストを調製すれば、このハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末の中心核が比較的酸化し易い錫からなるけれども、この中心核が比較的酸化し難い銀や銅等からなる被覆層により被包されるので、錫の酸化が阻止されて、ハンダ合金の電気抵抗の増加及び機械的強度の低下を防止できるとともに、ハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷できる。ここで、ハンダ用フラックスの混合量を10〜30質量%の範囲に限定したのは、10質量%未満ではフラックス不足でペースト化できず、30質量%を越えるとペースト中のフラックスの含有割合が多すぎて金属の含有割合が少なくなってしまい、ハンダ溶融時に所望のサイズのハンダバンプを得ることができないからである。
更に、上記ハンダ用ペーストを電子部品の実装に用いれば、このハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末の中心核が比較的酸化し易い錫からなるけれども、この中心核が比較的酸化し難いビスマスからなる被覆層により被包されるので、錫の酸化が阻止されて、ハンダ合金の電気抵抗の増加及び機械的強度の低下を防止できるとともに、ハンダ用ペーストに含まれるハンダ粉末が平均粒径5μm以下と微細な粉末であるので、ハンダ用ペーストを基板等にファインピッチパターンで印刷でき、より微細な電子部品をハンダ用ペーストにより実装できる。なお、この実施の形態では、ハンダ粉末の製造に化学的手法を用いたが、中心核はアトマイズ法のような物理的手法を用いても製造が可能である。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず水1リットルに塩化錫(II)2.64×10-1mol及び分散剤としてメチルセルロース14gをそれぞれ添加して混合することにより、溶解液を調製した後、この溶解液のpHを1.0に調整した。また還元剤として2価クロムイオンを用い、8.07×10-1mol/リットルの2価クロムイオン水溶液1リットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。次いで上記溶解液に上記2価クロムイオン水溶液を添加して混合することにより、錫イオンを還元させて、液中に錫粉末が分散した第1分散液を得た。次に5.27×10-2mol/リットルの硝酸銀水溶液200ミリリットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。上記第1分散液にこの硝酸銀水溶液を添加して混合することにより、第1分散液に分散した錫粉末の表面に銀を析出させて、銀で被包された錫からなる金属粉末の分散した第2分散液を得た。更に第2分散液を洗浄濾過し、上記金属粉末を乾燥させることでハンダ粉末を得た。得られたハンダ粉末を元素分析したところ、錫及び銀の含有量はそれぞれ96.5質量%及び3.5質量%であった。
<実施例2>
先ず水1リットルに塩化錫(II)2.64×10-1mol及び分散剤としてメチルセルロース14gをそれぞれ添加して混合することにより、溶解液を調製した後、この溶解液のpHを1.0に調整した。また還元剤として2価クロムイオンを用い、8.07×10-1mol/リットルの2価クロムイオン水溶液1リットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。次いで上記溶解液に上記2価クロムイオン水溶液を添加して混合することにより、錫イオンを還元させて、液中に錫粉末が分散した第1分散液を得た。次に2.10×10-2mol/リットルの硝酸銀水溶液500ミリリットルにクエン酸三ナトリウム二水和物を1.58mol加えて銀イオンを錯体化した。上記第1分散液に、この銀イオンを錯体化した硝酸銀水溶液を添加して混合することにより、上記第1分散液に分散した錫粉末の表面に銀を析出させて、銀で被包された錫からなる金属粉末の分散した第2分散液を得た。更に第2分散液を洗浄濾過し、上記金属粉末を乾燥させることでハンダ粉末を得た。得られたハンダ粉末を元素分析したところ、錫及び銀の含有量はそれぞれ96.6質量%及び3.4質量%であった。
<実施例3>
先ず水1リットルに塩化錫(II)2.64×10-1mol及び分散剤としてメチルセルロース14gをそれぞれ添加して混合することにより、溶解液を調製した後、この溶解液のpHを1.0に調整した。また還元剤として2価クロムイオンを用い、8.01×10-1mol/リットルの2価クロムイオン水溶液1リットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。次いで上記溶解液に上記2価クロムイオン水溶液を添加して混合することにより、錫イオンを還元させて、液中に錫粉末が分散した第1分散液を得た。次に1.74×10-2mol/リットルの塩化銅(II)水溶液200ミリリットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。上記第1分散液にこの塩化銅(II)水溶液を添加して混合することにより、上記第1分散液に分散した錫粉末の表面に銅を析出させて、銅で被包された錫からなる金属粉末の分散した第2分散液を得た。更に第2分散液を洗浄濾過し、上記金属粉末を乾燥させることでハンダ粉末を得た。得られたハンダ粉末を元素分析したところ、錫及び銅の含有量はそれぞれ99.3質量%及び0.7質量%であった。
<実施例4>
先ず水1リットルに塩化錫(II)1.32×10-1mol及び分散剤としてメチルセルロース14gをそれぞれ添加して混合することにより、溶解液を調製した後、この溶解液のpHを1.0に調整した。また還元剤として2価クロムイオンを用い、8.61×10-1mol/リットルの2価クロムイオン水溶液1リットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。次いで上記溶解液に上記2価クロムイオン水溶液を添加して混合することにより、錫イオンを還元させて、液中に錫粉末が分散した第1分散液を得た。次に2.59×10-2mol/リットルの硫酸ビスマス(III)水溶液2リットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。上記第1分散液にこの硫酸ビスマス(III)水溶液を添加して混合することにより、第1分散液に分散した錫粉末の表面にビスマスを析出させて、ビスマスで被包された錫からなる金属粉末の分散した第2分散液を得た。更に第2分散液を洗浄濾過し、上記金属粉末を乾燥させることでハンダ粉末を得た。得られたハンダ粉末を元素分析したところ、錫及びビスマスの含有量はそれぞれ42質量%及び58質量%であった。
<実施例5>
先ず水1リットルに塩化錫(II)2.64×10-1mol及び分散剤としてメチルセルロース14gをそれぞれ添加して混合することにより、溶解液を調製した後、この溶解液のpHを1.0に調整した。また還元剤として2価クロムイオンを用い、7.91×10-1mol/リットルの2価クロムイオン水溶液1リットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。次いで上記溶解液に上記2価クロムイオン水溶液を添加して混合することにより、錫イオンを還元させて、液中に錫粉末が分散した第1分散液を得た。次に1.08×10-3mol/リットルのβ−カルボキシエチルゲルマニウム水溶液200ミリリットルを調製した後、この水溶液のpHを1.0に調整した。上記第1分散液にこのβ−カルボキシエチルゲルマニウム水溶液を添加して混合することにより、第1分散液に分散した錫粉末の表面にゲルマニウムを析出させて、ゲルマニウムで被包された錫からなる金属粉末の分散した第2分散液を得た。更に第2分散液を洗浄濾過し、上記金属粉末を乾燥させることでハンダ粉末を得た。得られたハンダ粉末を元素分析したところ、錫及びゲルマニウムの含有量はそれぞれ99.1質量%及び0.1質量%であった。
<比較例1>
吹込みガスとしてアルゴンガスを用いたガスアトマイズ法と回転ディスク法の双方を組合せた方法により、錫及び銀の合金からなるハンダ粉末を作製した。具体的には、ノズルから流出した溶融金属に不活性ガスのジェット流を吹付けて溶融金属を粉砕し、更にこの粉砕した溶融金属を回転するディスク上に落下させることにより、上記ハンダ粉末を作製した。得られたハンダ粉末を元素分析したところ、錫及び銀の含有量はそれぞれ96.5質量%及び3.5質量%であった。
<比較例2>
吹込みガスとしてアルゴンガスを用いたガスアトマイズ法と回転ディスク法の双方を組合せた方法により、錫及び銅の合金からなるハンダ粉末を作製した。具体的には、ノズルから流出した溶融金属に不活性ガスのジェット流を吹付けて溶融金属を粉砕し、更にこの粉砕した溶融金属を回転するディスク上に落下させることにより、上記ハンダ粉末を作製した。得られたハンダ粉末を元素分析したところ、錫及び銅の含有量はそれぞれ99.3質量%及び0.7質量%であった。
<比較試験1及び評価>
実施例1〜5、比較例1及び2のハンダ粉末について、以下の物性試験を行った。先ず得られたハンダ粉末をレーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置(LEED & NORTHRUP社製:MICROTRAC FRA)にて粒径分布を測定し、その平均粒径を求めた。また集束イオンビーム加工(Focused Ion Beam milling)観察装置にてハンダ粉末の中心部分を通るように薄く加工し、粉末の断面構造を走査電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡にて観察した。更に上記ハンダ粉末を粒径5μm以下のものに分級し、実施例1〜5、比較例1及び2で得られたハンダ粉末に対する粒径5μm以下のハンダ粉末の歩留り率を求めた。
引続いて上記粒径5μm以下に分級したハンダ粉末に、ハンダ用フラックスを15質量%の割合で混合してペースト化することにより、ハンダ用ペーストを得た。このハンダ用ペーストをフリップチップ用基板に印刷し、窒素雰囲気中、最高温度240℃の条件でリフローハンダ付けを行い、基板上にハンダバンプを形成した。基板上に形成されたハンダバンプを透過X線顕微鏡にて観察し、ハンダバンプ内部のボイド面積を測定した。
実施例1〜5、比較例1及び2のハンダ粉末の断面構造、平均粒径、歩留まり率及びボイド観察結果を表1に示す。なお、表1のボイド欄の「優」は、ハンダバンプ内部のボイド面積がそのハンダバンプ面積に対して占める割合が10%以下であるようなボイドが存在することを表す。また、表1のボイド欄の「不良」は、ハンダバンプ内部のボイド面積がそのハンダバンプ面積に対して占める割合が30%以上であるようなボイドが存在することを表す。
Figure 2008149365
表1から明らかなように、従来のガスアトマイズ法と回転ディスク法を組合せた方法で作製した比較例1及び2では、ハンダ粉末の平均粒径が11.2μm及び12.3μmと大きくなり、粒径5μm以下の歩留まり率が12.1%及び10.9%と低かったのに対し、実施例1〜5では、ハンダ粉末の平均粒径が1.5〜2.0μmと極めて細かくなり、粒径5μm以下の歩留まり率が89.9〜93.1%と極めて高くなった。
また比較例1及び2では、ボイドの評価がともに「不良」であったのに対し、実施例1〜7では、ボイドの評価が全て『優』であった。これにより、比較例1及び2では、ハンダバンプへのボイドの発生が多かったのに対し、実施例1〜5では、ハンダバンプへのボイドの発生が抑制されたことが判った。

Claims (8)

  1. 中心核及び前記中心核を被包する被覆層で構成される構造を有する平均粒径5μm以下のハンダ粉末であって、
    前記中心核が錫からなり、
    前記被覆層が銀、銅、ビスマス又はゲルマニウムのいずれか1種からなり、
    前記錫の含有割合が90〜99.9質量%である
    ことを特徴とするハンダ粉末。
  2. 被覆層が銀を含むとき銀の含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜5.0質量%であり、
    被覆層が銅を含むとき銅の含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜1.0質量%であり、
    被覆層がビスマスを含むときビスマスの含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜10質量%であり、
    被覆層がゲルマニウムを含むときゲルマニウムの含有割合が粉末全体量100質量%に対して0.1〜1.0質量%である請求項1記載のハンダ粉末。
  3. 被覆層が無電解めっきにて作製される請求項1記載のハンダ粉末。
  4. 中心核及び前記中心核を被包する被覆層で構成される構造を有する平均粒径5μm以下のハンダ粉末であって、
    前記中心核が錫からなり、
    前記被覆層がビスマスからなり、
    前記錫の含有割合が40〜60質量%である
    ことを特徴とするハンダ粉末。
  5. 被覆層であるビスマスの含有割合が粉末全体量100質量%に対して40〜60質量%である請求項4記載のハンダ粉末。
  6. 被覆層が無電解めっきにて作製される請求項4記載のハンダ粉末。
  7. 請求項1ないし6いずれか1項に記載のハンダ粉末とハンダ用フラックスを混合してペースト化することにより得られたハンダ用ペースト。
  8. 電子部品の実装に用いられる請求項7記載のハンダ用ペースト。
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