JP2008137586A - 車両の運動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の運動制御装置において、大きな液圧振動を発生させないように液圧ユニットを制御することにより、車両挙動センサの検出精度の向上を図る。
【解決手段】車両の挙動を検出する車両挙動センサと、車両の各ホイールシリンダに付与される液圧を個別に制御するための複数の液圧機器を搭載した液圧ユニットと、車両挙動センサの検出結果に基づいて液圧機器を制御して車両の運動を制御するための電子制御装置と、が一体化されてなる車両の運動制御装置であって、電子制御装置は、各ホイールシリンダのうち任意の複数のものへの液圧の付与状態を時間的に連関させて切り替える場合に、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態を互いにタイミングをずらして切り替えるように各液圧機器を制御する(ステップ402〜420)。
【選択図】 図7
Description
本発明は、車両の挙動を検出する車両挙動センサを搭載し、車両挙動センサの検出結果に基づいて液圧ユニットを制御して車両の運動を制御する車両の運動制御装置に関するものである。
従来から、車両の運動制御装置としては、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図6に示されているように、車両の運動制御装置は、車両の挙動を検出する車両挙動センサS(例えばドライビングダイナミクスセンサ)と、複数の電磁弁(増圧用液圧制御弁5及び減圧用液圧制御弁6)が搭載され、各電磁弁の何れかが作動されて、各車輪の回転をそれぞれ規制する各ホイールシリンダへの液圧を個別に調整可能な液圧ユニット(ハイドロユニット1)と、車両挙動センサの検出結果に基づいて液圧ユニットを制御して車両の運動を制御する制御装置(制御基板21)と、を備えている。すなわち、車両挙動センサSは電子制御ユニット2内に組み込まれ、車両の運動制御装置に搭載されている。
特開2006−168408号公報
上記特許文献1に記載された車両の運動制御装置においては、液圧ユニットを制御して各ホイールシリンダへの液圧を個別に調整しているが、複数のホイールシリンダへの液圧の供給状態を同時に切り替える場合、液圧ユニットに大きな液圧振動が発生し、この液圧振動が車両挙動センサに伝播して、ひいてはこれが同センサの検出精度向上の阻害要因になり得るという問題があった。
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、車両の運動制御装置において、大きな液圧振動を発生させないように液圧ユニットを制御することにより、車両挙動センサの検出精度の向上を図ることを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両の挙動を検出する車両挙動センサと、車両の各ホイールシリンダに付与される液圧を個別に制御するための複数の液圧機器を搭載した液圧ユニットと、車両挙動センサの検出結果に基づいて液圧機器を制御して車両の運動を制御するための電子制御装置と、が一体化されてなる車両の運動制御装置であって、電子制御装置は、各ホイールシリンダのうち任意の複数のものへの液圧の付与状態を時間的に連関させて切り替える場合に、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態を互いにタイミングをずらして切り替えるように各液圧機器を制御する切替制御手段を備えたことである。
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態の切り替えタイミングのずれは車両の運動に影響を及ぼさないような短い時間に設定されていることである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、液圧機器は電磁弁であることである。
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項3において、切替制御手段は、電磁弁のうち複数を時間的に連関させて切替制御をする際に、電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始することである。
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項3または請求項4において、電磁弁には、連通状態と遮断状態との2位置で切替制御される開閉電磁弁が含まれることである。
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項3乃至請求項5の何れか一項において、電磁弁は非通電時には付勢手段によって付勢されて非通電位置に位置し、通電時には付勢手段の付勢力に抗して通電位置に位置するように構成され、切替制御手段は、各電磁弁を通電時から非通電時に時間的に連関させて切替制御をする際に、電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始することである。
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、液圧機器は少なくとも1つの電磁弁およびポンプを駆動する電動モータであることである。
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項7において、切替制御手段は、電動モータおよび少なくとも1つの電磁弁を時間的に連関させて切替制御をする際に、電動モータおよび電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始することである。
請求項9に係る発明の構成上の特徴は、車両の挙動を検出する車両挙動センサと、車両の各ホイールシリンダに付与される液圧を個別に制御するための複数の液圧機器を搭載した液圧ユニットと、車両挙動センサの検出結果に基づいて液圧機器を制御して車両の運動を制御するための電子制御装置と、が一体化されてなる車両の運動制御装置であって、電子制御装置は、液圧機器のうち任意の複数のものを時間的に連関させて切替制御をする場合に、液圧機器の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始する切替制御手段を備えたことである。
請求項10に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項9の何れか一項において、車両挙動センサは振動型ヨーレートセンサであることである。
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、切替制御手段が、各ホイールシリンダのうち任意の複数のものへの液圧の付与状態を時間的に連関させて切り替える場合に、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態を互いにタイミングをずらして切り替えるように各液圧機器を制御する。これにより、付与状態を切り替える際に液圧ユニットで発生する液圧振動を同一時期に集中させることなく分散させることができるので、液圧ユニットに大きな液圧振動が発生するのを抑制することができ、ひいては、車両挙動センサの検出精度を向上させることができる。
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1に係る発明において、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態の切り替えタイミングのずれは車両の運動に影響を及ぼさないような短い時間に設定されているので、車両の運動を十分に安定させたまま車両挙動センサの検出精度を向上させることができる。
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項1または請求項2に係る発明において、液圧機器は電磁弁である場合に、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態を適切に切り替えることができる。
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項3に係る発明において、切替制御手段は、電磁弁のうち複数を時間的に連関させて切替制御をする際に、電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始するので、電磁弁のメカ的振動を抑制しつつ液圧振動を抑制することができる。
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項3または請求項4に係る発明において、電磁弁が開閉電磁弁である。これにより、作動時(オン・オフ切り替え時)の振動が比較的大きい開閉電磁弁を使用する場合に、開閉電磁弁のメカ的な振動が同一時期に発生するのを防止するので、効果的に車両挙動センサの検出精度を向上させることができる。
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、請求項3乃至請求項5の何れか一項に係る発明において、電磁弁は非通電時には付勢手段によって付勢されて非通電位置に位置し、通電時には付勢手段の付勢力に抗して通電位置に位置するように構成され、切替制御手段は、各電磁弁を通電時から非通電時に時間的に連関させて切替制御をする際に、電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始する。これにより、非通電から通電に切り替える場合に比べて通電から非通電に切り替える場合のほうがメカ的な振動が大きい電磁弁を使用する場合に、この電磁弁のメカ的な振動が同一時期に発生するのを防止するので、効果的に車両挙動センサの検出精度を向上させることができる。
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項1または請求項2に係る発明において、液圧機器は少なくとも1つの電磁弁およびポンプを駆動する電動モータである場合に、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態を適切に切り替えることができる。
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、請求項7に係る発明において、切替制御手段は、電動モータおよび少なくとも1つの電磁弁を時間的に連関させて切替制御をする際に、電動モータおよび電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始する。これにより、電磁弁および電動モータのメカ的振動が同一時期に発生するのを抑制しつつ液圧振動を抑制することができる。
上記のように構成した請求項9に係る発明においては、切替制御手段が、液圧機器のうち任意の複数のものを時間的に連関させて切替制御をする場合に、液圧機器の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始する。これにより、液圧機器を複数切替制御をする際に液圧ユニットで発生する振動を同一時期に集中させることなく分散させることができるので、液圧ユニットに大きな液圧振動が発生するのを抑制することができ、ひいては、車両挙動センサの検出精度を向上させることができる。
上記のように構成した請求項10に係る発明においては、請求項1乃至請求項9の何れか一項に係る発明において、車両挙動センサが振動型ヨーレートセンサである場合に、液圧ユニットからの液圧振動またはメカ的振動が、振動型ヨーレートセンサを構成する振動体(または振動子)に加える励振振動に重畳するのを抑制することができるので、振動型ヨーレートセンサの検出精度を効果的に向上させることができる。
以下、本発明に係る車両の運動制御装置を適用した車両の一実施形態を図面を参照して説明する。図1はその車両の構成を示す概要図である。この車両Mは、前輪駆動車であり、車体前部に搭載した駆動源であるエンジン11の駆動力が前輪に伝達される形式のものである。なお車両Mは前輪駆動車でなく、他の駆動方式の車両例えば後輪駆動車、四輪駆動車でもよいし、電動モータを駆動源とする車両でもよい。
車両Mは、車両Mを駆動させる駆動系10と車両Mを制動させる制動系20を備えている。
駆動系10は、エンジン11、変速機12、ディファレンシャル13、左右駆動軸14a,14b、アクセルペダル15およびエンジン制御ECU16を備えている。エンジン11の駆動力は、変速機12で変速されディファレンシャル13および左右駆動軸14a,14bを経て駆動輪である左右前輪Wfl,Wfrにそれぞれ伝達されるようになっている。エンジン11は、エンジン11の燃焼室内に空気を流入する吸気管11aを備えており、吸気管11a内には、吸気管11aの開閉量を調整して同吸気管11aを通過する空気量を調整するスロットルバルブ11bが設けられている。
駆動系10は、エンジン11、変速機12、ディファレンシャル13、左右駆動軸14a,14b、アクセルペダル15およびエンジン制御ECU16を備えている。エンジン11の駆動力は、変速機12で変速されディファレンシャル13および左右駆動軸14a,14bを経て駆動輪である左右前輪Wfl,Wfrにそれぞれ伝達されるようになっている。エンジン11は、エンジン11の燃焼室内に空気を流入する吸気管11aを備えており、吸気管11a内には、吸気管11aの開閉量を調整して同吸気管11aを通過する空気量を調整するスロットルバルブ11bが設けられている。
スロットルバルブ11bは、アクセルペダル15とスロットルバルブ11bがワイヤによって繋がれたワイヤ式でなく、電子制御式である。すなわち、スロットルバルブ11bは、エンジン制御ECU16からの指令によるスロットル駆動モータ11cの駆動によって開閉され、スロットルバルブ11bの開閉量はスロットル開度センサ11dによって検出されその検出信号がエンジン制御ECU16に送信されており、エンジン制御ECU16からの指令値となるようにフィードバック制御されている。エンジン制御ECU16は、基本的にはアクセル開度センサ15aが検出するアクセルペダル15の踏込み量を受信してその踏込み量に応じたスロットルバルブ11bの開閉量に相当する指令値をスロットル駆動モータ11cに送信する。なお、スロットルバルブ11bの開閉量すなわち吸入空気量に合わせてエンジン11への燃料も自動的に供給されるようになっている。これによれば、アクセルペダル15の踏込み量が増大すると、スロットルバルブ11bの開度が増大してエンジン11の出力が増大しこれにより車両Mの駆動力が増大して加速し、また踏込み量が減少すると、スロットルバルブ11bの開度が減少してエンジン11の出力が減少しこれにより車両Mの駆動力が減少して加速度は減少する。
制動系20は、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を付与して車両を制動させる液圧ブレーキ装置から構成されている。この液圧ブレーキ装置20は、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転をそれぞれ規制する各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrと、エンジン11の吸気負圧をダイヤフラムに作用させてブレーキペダル21の踏み込み操作により生じるブレーキ操作力を助勢して倍力(増大)する倍力装置である負圧式ブースタ22と、負圧式ブースタ22により倍力されたブレーキ操作力(すなわちブレーキペダル21の操作状態)に応じた基礎液圧である液圧(油圧)のブレーキ液(油)を生成して各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給するマスタシリンダ23と、ブレーキ液を貯蔵してマスタシリンダ23にそのブレーキ液を補給するリザーバタンク24と、車両の運動制御装置25と、を備えている。
各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrは、各キャリパCLfl,CLfr,CLrl,CLrrに設けられており、液密に摺動するピストン(図示省略)を収容している。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに基礎液圧または制御液圧が供給されると、各ピストンが摩擦部材である一対のブレーキパッド(図示省略)を押圧して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転する回転部材であるディスクロータDRfl,DRfr,DRrl,DRrrを両側から挟んでその回転を規制するようになっている。
なお、本実施形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。この場合、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに基礎液圧または制御液圧が供給されると、各ピストンが一対のブレーキシューを押圧(拡張)して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転するブレーキドラムの内周面に当接してその回転を規制するようになっている。
車両の運動制御装置25は、図2に示すように、車両Mの各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに付与される液圧を個別に制御するための複数の液圧機器である電磁弁やポンプ(後述する)を搭載した液圧ユニット26と、車両挙動センサ28の検出結果に基づいて液圧機器を制御して車両の運動を制御するための電子制御装置70を収容したコントロールユニット27とが一体化された一つの構成体である。
液圧ユニット26は、ソレノイドブロック31、ポンプブロック32、各電磁弁41〜43,45,46,51〜53,55,56、ポンプ47,57およびモータ33を主として備えている(図3参照)。
図2に示すように、ソレノイドブロック31の組付面(電磁弁組付面)31aには、各電磁弁41〜43,45,46,51〜53,55,56が組み付けられている。図2にはこれらの電磁弁のうち電磁弁42,45のみを示し、残りの電磁弁を図示省略している。
図2に示されている電磁弁42を例に挙げて、電磁弁を詳述する。電磁弁42は、ソレノイドブロック31に取り付けられる本体部42aと、本体部42aの上部に着脱可能なソレノイド部42bと、を備えている。なお、本体部42aは、主として、ソレノイドブロック31に固定されたスリーブ、スリーブの上端に固定された固定子、スリーブ内に摺動自在に収納された可動子、スリーブの下端に設けられた弁部などから構成されている。ソレノイド部42bは、主として、環状のヨーク42b1、ヨーク42b1に収納されたソレノイド42b2、ヨーク42b1の上部から立設されソレノイド42b2に接続された一対の端子42b3(リード)などから構成されている。ソレノイド部42bの端子42b3の先端は制御基板70に直接接続されるか、またはバスバーなどを介して間接的に接続されている。本体部42aの上部(固定子を含む部分)がヨーク42b1の貫通穴42b4に挿入されている。
ポンプブロック32は、ソレノイドブロック31の組付面31aの反対側の面に密着して組み付けられている。ポンプブロック32内には、ポンプ47,57が内蔵されている。また、ポンプブロック32には、ポンプ47,57を駆動させるモータ33がソレノイドブロック31と反対の面に組み付けられている。
コントロールユニット27は、ケーシング60と電子制御装置である制御基板70から構成されている。ケーシング60は、ケース61およびカバー62から構成されている。
ケース61は開口61aを有するトレイ状に形成されている。ケース61は、基板部61bと基板部61bの周縁から立設された側部61cが一体的に合成樹脂で形成されたものである。開口61aの開口端(側部61cの先端)は、ソレノイドブロック31の組付面31aに液密に当接している。ケース61はソレノイドブロック31にねじ止めなどにより着脱可能に組み付けられている。ソレノイドブロック31とケース61との間には、上記各電磁弁を収納する第1室R1が形成されている。
ケース61は開口61aを有するトレイ状に形成されている。ケース61は、基板部61bと基板部61bの周縁から立設された側部61cが一体的に合成樹脂で形成されたものである。開口61aの開口端(側部61cの先端)は、ソレノイドブロック31の組付面31aに液密に当接している。ケース61はソレノイドブロック31にねじ止めなどにより着脱可能に組み付けられている。ソレノイドブロック31とケース61との間には、上記各電磁弁を収納する第1室R1が形成されている。
カバー62は、開口62aを有するトレイ状に形成されている。カバー62は、基板部62bと基板部62bの周縁から立設された側部62cが一体的に合成樹脂で形成されたものである。開口62aの開口端(側部62cの先端)は、ケース61の基板部61bの外側壁面に振動溶着などにより接着されている。ケース61とカバー62との間には、制御基板70を収納する第2室R2が形成されている。また、制御基板70は、基板部61bに立設された複数の支柱61dにスナップフィットなどにより支持固定されている。
このように、ケーシング60は、開口61aを有し、その開口端をソレノイドブロック31の組付面31aに液密に当接させ上記各電磁弁を覆うようにソレノイドブロック31に取り付けられるものである。
次に、図3を参照して液圧ユニット26の構成を詳述する。この液圧ユニット26は、一般的によく知られているものであり、電磁弁である液圧制御弁41,51、ABS制御弁を構成する電磁弁である増圧制御弁42,43,52,53および減圧制御弁45,46,55,56、調圧リザーバ44,54、ポンプ47,57、モータ33などから構成されている。
本実施形態の液圧ブレーキ装置20のブレーキ配管系は前後配管方式にて構成されており、液圧ユニット26は図3に示すようにマスタシリンダ23の第1および第2液圧室23a、23bに接続されている油経路LrおよびLfを備えている。油経路Lrは、第1液圧室23aと左右後輪Wrl,WrrのホイールシリンダWCrl,WCrrとをそれぞれ連通するものであり、油経路Lfは、第2液圧室23bと左右前輪Wfl,WfrのホイールシリンダWCfl,WCfrとをそれぞれ連通するものである。
まず、液圧ユニット26の前輪系統の構成について説明する。油経路Lfには、差圧制御弁から構成される液圧制御弁41が備えられている。この液圧制御弁41は、電子制御装置70により連通状態と差圧状態を切り替え制御されるものである。液圧制御弁41は非通電して通常連通状態とされているが、通電して差圧状態にすることによりホイールシリンダWCfl,WCfr側の油経路Lf2をマスタシリンダ23側の油経路Lf1よりも所定の制御差圧分高い圧力に保持することができる。この制御差圧は電子制御装置70により制御電流に応じて調圧されるようになっている。
油経路Lf2は2つに分岐しており、一方にはABS制御の増圧モード時においてホイールシリンダWCflへのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁42が備えられ、他方にはABS制御の増圧モード時においてホイールシリンダWCfrへのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁43が備えられている。これら増圧制御弁42,43は、電子制御装置70により連通・遮断状態を制御できる2位置弁として構成されている。増圧制御弁42,43は、非通電にて連通状態にあり、通電して遮断状態となる開閉電磁弁である。そして、これら増圧制御弁42,43が連通状態に制御されているときには、マスタシリンダ23の基礎液圧、または/およびポンプ47の駆動と液圧制御弁41の制御によって形成される制御液圧を各ホイールシリンダWCfl,WCfrに加えることができる。また、増圧制御弁42,43は減圧制御弁45,46およびポンプ47とともにABS制御を実行することができる。
なお、ABS制御が実行されていないノーマルブレーキの際には、これら増圧制御弁42,43は常時連通状態に制御されている。また、増圧制御弁42,43には、それぞれ安全弁42a,43aが並列に設けられており、ABS制御時において運転者がブレーキペダル21から足を離したとき、それに伴ってホイールシリンダWCfl,WCfr側からのブレーキ液をリザーバタンク24に戻すようになっている。
また、増圧制御弁42,43と各ホイールシリンダWCfl,WCfrとの間における油経路Lf2は、油経路Lf3を介して調圧リザーバ44のリザーバ孔44aに連通されている。油経路Lf3には、電子制御装置70により連通・遮断状態を制御できる減圧制御弁45,46がそれぞれ配設されている。減圧制御弁45,46は、非通電にて遮断状態にあり、通電して連通状態となる開閉電磁弁である。これらの減圧制御弁45,46はノーマルブレーキ状態(ABS非作動時)では常時遮断状態とされ、また、適宜連通状態として油経路Lf3を通じて調圧リザーバ44へブレーキ液を逃がすことにより、ホイールシリンダWCfl,WCfrにおけるブレーキ液圧を制御し、車輪がロック傾向にいたるのを防止できるように構成されている。
さらに、液圧制御弁41と増圧制御弁42,43との間における油経路Lf2と調圧リザーバ44のリザーバ孔44aとを結ぶ油経路Lf4にはポンプ47が安全弁47aと共に配設されている。そして、調圧リザーバ44のリザーバ孔44bを油経路Lf1を介してマスタシリンダ23と接続するように油経路Lf5が設けられている。ポンプ47は、電子制御装置70の指令によりモータ33によって駆動されるものである。ポンプ47は、ABS制御の減圧モード時においては、ホイールシリンダWCfl,WCfr内のブレーキ液または調圧リザーバ44に貯められているブレーキ液を吸い込んで連通状態である液圧制御弁41を介してマスタシリンダ23に戻している。また、ポンプ47は、ESC制御、トラクションコントロール、ブレーキアシストなどの車両の姿勢を安定に制御するための制御液圧を形成する際においては、差圧状態に切り替えられている液圧制御弁41に制御差圧を発生させるべく、マスタシリンダ23内のブレーキ液を油経路Lf1,Lf5および調圧リザーバ44を介して吸い込んで油経路Lf4,Lf2および連通状態である増圧制御弁42,43を介して各ホイールシリンダWCfl,WCfrに吐出して制御液圧を付与している。なお、ポンプ47が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために、油経路Lf4のポンプ47の上流側にはダンパ48が配設されている。
また、油経路Lf1には、マスタシリンダ23内のブレーキ液圧であるマスタシリンダ圧を検出する圧力センサPが設けられており、この検出信号は電子制御装置70に送信されるようになっている。なお、圧力センサPは油経路Lr1に設けるようにしてもよい。
さらに、液圧ユニット26の後輪系統も前述した前輪系統と同様な構成であり、後輪系統を構成する油経路Lrは油経路Lfと同様に油経路Lr1〜Lr5から構成されている。油経路Lrには液圧制御弁41と同様な液圧制御弁51、および調圧リザーバ44と同様な調圧リザーバ54が備えられている。ホイールシリンダWCrl,WCrrに連通する分岐した油経路Lr2,Lr2には増圧制御弁42,43と同様な増圧制御弁(開閉電磁弁)52,53が備えられ、油経路Lr3には減圧制御弁45,46と同様な減圧制御弁(開閉電磁弁)55,56が備えられている。油経路Lr4には、ポンプ47、安全弁47aおよびダンパ48と同様なポンプ57、安全弁57aおよびダンパ58が備えられている。なお、増圧制御弁52,53には、それぞれ安全弁42a,43aと同様な安全弁52a,53aが並列に設けられている。
このように、液圧ユニット26は、マスタシリンダ23からの基礎液圧をホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに直接付与することができる。また、液圧ユニット26は、ポンプ47,57の駆動と液圧制御弁41,51の制御によって形成された制御液圧を各車輪Wfl,Wfr,Wrl,WrrのホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに付与することができる。すなわち、液圧ユニット26は、運転者のブレーキペダル21の操作状態(踏込状態)に応じた液圧をホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに付与することもできるし、運転者のブレーキペダル21の操作状態(踏込状態)に関係なくホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧を制御することが可能でもある。
なお、上述した電磁弁は、非通電時には付勢手段(例えばコイルスプリング)によって付勢されて非通電位置に位置し、通電時には付勢手段の付勢力に抗して通電位置に位置するように構成されている。電磁弁41〜43,51〜53は、常開型電磁弁であり、非通電時に開状態(開位置;非通電位置)となり、通電時に閉状態(閉位置;通電位置)となる。電磁弁45,46,55,56は、常閉型電磁弁であり、非通電時に閉状態(閉位置;非通電位置)となり、通電時に開状態(開位置;通電位置)となる。
また、車両の運動制御装置25は、図1に示すように、車両Mの挙動を検出する車両挙動センサ28を備えている。車両挙動センサ28は、上記液圧ユニット26と電子制御装置70と一体化され車両の運動制御装置25を構成する。車両挙動センサ28は、制御基板70に搭載されている。本実施形態では、車両挙動センサ28は、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ28aや、車両の前後方向や左右方向の加速度を検出する加速度センサ28bである。
ヨーレートセンサ28aは、振動型ヨーレートセンサであり、音叉型の振動体を備えている。車両Mの回転軸(車両Mの重心付近に位置し水平面に対してほぼ垂直な軸)に対して垂直な励振方向に沿って励振振動が加えられている振動体に、前記回転軸回りにヨーレートが発生すると、前記回転軸と励振方向にそれぞれ垂直な方向である検出方向にヨーレートに比例したコリオリ力が発生し、すなわち検出振動が発生する。ヨーレートセンサ28aは、この検出振動の変位信号を電子制御装置70に出力している。また、振動用の櫛歯状電極を有する方形状の重り(マス)で構成する形式の振動体を備えたヨーレートでもよい。
加速度センサ28bは、例えばビームで支持されたマスを備えたものである。加速度センサ28bは、車両に加速度が生じると、ビームがたわみ、このひずみを計測して検出信号として電子制御装置70に出力している。
また、電子制御装置70は、図1に示すように、車両の運動制御装置25と別体の車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srr、およびステアリングセンサ29aと接続されている。車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの付近にそれぞれ設けられており、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転速度(車輪速度)に応じた周波数のパルス信号を制御装置60に出力している。ステアリングセンサ29aは、ステアリング29の中立位置からの回転角度を検出し、実ステアリング角度θ(実舵角対応値)を示す信号を出力するようになっている。
また、電子制御装置70は、図1に示すように、ブレーキペダル21のオン・オフ状態を検出するストップスイッチ21aに接続されている。
また、電子制御装置70は、エンジン制御ECU16と互いに通信可能に接続されている。電子制御装置70は、エンジン制御ECU16に対して駆動力指令信号を出力するようになっている。エンジン制御ECU16は駆動力指令信号を受け取り、駆動力指令信号に応じた駆動源の駆動力となるようにスロットル駆動モータ11cを制御する。
電子制御装置70は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、図2〜図4のフローチャートに対応したプログラムを実行して、車両の安定化制御、例えば、横滑り防止制御(ESC)、アンチロックブレーキ制御(ABS)などを実施する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
次に、上記のように構成した車両の運動制御装置による車両安定化制御のうちESCについて図4のフローチャートを参照して説明する。電子制御装置70は、図示しない車両Mのイグニションスイッチがオン状態にあるとき、所定の短時間毎に、上記フローチャートに対応したプログラムを繰り返し実行する。電子制御装置70は、図4のステップ100にてプログラムの実行を開始する毎に、車体速度Vおよびステアリング角度θを算出し、実ヨーレートRωを検出する(ステップ102〜106)。
電子制御装置70は、ステップ102において、まず車両Mの車体速度Vを算出する(車体速度検出手段)。具体的には、車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからそれぞれ入力された各パルス列信号に基づいて同各パルス列信号の周期に反比例した値をそれぞれ左右前後輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの各車輪速として計算する。そして、これら各車輪速を平均した値を車体速度Vとして算出する。なお、左右前輪Wfl,Wfrまたは左右後輪Wrl,Wrrの各車輪速を平均した値を車体速度Vとして算出するようにしてもよい。また、変速機(図示しない)の出力軸の回転をピックアップして同回転速度に反比例する周期を有するパルス列信号を出力する車速センサを電子制御装置70に接続して、電子制御装置70は車速センサから入力されたパルス列信号に基づいて同パルス列信号の周期に反比例した値を車体速度Vとして算出するようにしてもよい。
電子制御装置70は、ステップ104において、ステアリングセンサ29aから入力された実ステアリング角度θを示す信号から車両Mのステアリング角度θを算出する。
電子制御装置70は、ステップ106において、ヨーレートセンサ32からのヨーレートの方向及び大きさを表す信号を車両に発生する実際のヨーレートである実ヨーレートRωとして検出する(実ヨーレート検出手段)。なお、実ヨーレートRωを左右前輪Wfl,Wfr(または左右後輪Wrl,Wrr)の車輪速度に基づいて算出するようにしてもよい。
電子制御装置70は、ステップ108において、上述したステップ104にて算出されたステアリング角度θから操舵輪の切れ角ξ(車両の操舵角)を下記数1により導出する(操舵角導出手段)。
(数1)
操舵輪の切れ角ξ=C×ステアリング角度θ
(数1)
操舵輪の切れ角ξ=C×ステアリング角度θ
なお、Cはステアリング角度θに対する操舵輪の切れ角ξの比例定数(例えばステアリングギヤ比)である。また、操舵輪の切れ角ξとは、車両Mが直進する方向に対する操舵輪の操舵方向の角度のことをいう。
電子制御装置70は、ステップ110において、車両のステア特性を示すスタビリティファクタAに基づいて車両の目標ヨーレートTωを算出する。具体的には、下記数2によって車体速度V、車両の操舵角ξおよびスタビリティファクタAに基づいて目標ヨーレートTωを算出する(目標ヨーレート算出手段)。
なお、上記数2にて、Lは車両Mのホイールベースである。
そして、電子制御装置70は、ステップ112において、先に検出された実ヨーレートRωとステップ110にて算出された目標ヨーレートTωとを減算してヨーレート偏差Δω(Δω=Tω−Rω)を算出する(ヨーレート偏差算出手段)。
そして、電子制御装置70は、ステップ114〜122において、予め設定された閾値Tus,Tosとステップ112にて算出されたヨーレート偏差Δωを比較して、その比較結果に基づいて必要に応じて車両の姿勢制御を実施する。
すなわち、電子制御装置70は、ヨーレート偏差Δωが、閾値Tos以上であり閾値Tus以下である場合には、車両Mは安定した状態にあるので、ステップ114,116にてそれぞれ「NO」と判定してプログラムをステップ118に進めて、車両Mの姿勢制御を実施しない。その後、プログラムをステップ124に進めて一旦終了する。
また、電子制御装置70は、ヨーレート偏差Δωが、閾値Tusより大きい場合には、車両Mはアンダステア傾向(状態)にあり車両Mは安定した状態にないので、ステップ114にて「YES」と判定してプログラムをステップ120に進めて、車両Mの姿勢制御すなわちUS(アンダステア)抑制制御を実施する。電子制御装置70は、ステップ120において、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに付与する制動力を個別に制御して、車両Mの姿勢を安定な状態となるように制御する。すなわち、内側の車輪に制動力を付与して車両Mに内向きモーメントを発生させる。また、電子制御装置70は、エンジン制御ECU16に指令を送り、スロットルバルブ11bの開度を制御し出力トルクを制御して、車両Mの姿勢を安定な状態となるように制御する。すなわち、スロットルを閉じ出力トルクを抑える。その後、プログラムをステップ124に進めて一旦終了する。
また、電子制御装置70は、ヨーレート偏差Δωが、閾値Tosより小さい場合には、車両Mはオーバステア傾向(状態)にあり車両Mは安定した状態にないので、ステップ114,116にて「NO」、「YES」と判定してプログラムをステップ122に進めて、車両Mの姿勢制御すなわちOS(オーバステア)抑制制御を実施する。電子制御装置70は、ステップ122において、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに付与する制動力を個別に制御して、車両Mの姿勢を安定な状態となるように制御する。すなわち、外側の車輪に制動力を付与して車両Mに外向きモーメントを発生させる。また、電子制御装置70は、エンジン制御ECU16に指令を送り、スロットルバルブ11bの開度を制御し出力トルクを制御して、車両Mの姿勢を安定な状態となるように制御する。すなわち、スロットルを開いて出力トルクを増大させる。その後、プログラムをステップ124に進めて一旦終了する。
次に、上記のように構成した車両の運動制御装置によるABS制御について図5〜図7のフローチャートを参照して説明する。電子制御装置70は、車両のイグニションスイッチ(図示省略)がオン状態になると、上記フローチャートに対応したプログラムを実行する。電子制御装置70が起動されると、電子制御装置70は、メモリクリア、フラグリセット等の初期化処理を行い(ステップ202)、以降の処理を所定時間Ta(例えば5msec)毎に実行するために、所定時間Taが経過するのを待つ(ステップ204)。
そして、所定時間Taが経過したと判断すると(ステップ204にてYES)、上記各車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrからの車輪速度信号に基づき、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度VW**(**は、各輪に対応する添え字であって、fl,fr,rl,rrのいずれかである。以下の説明及び図面において同じである。)を演算し(ステップ206)、この車輪速度の微分値である各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪加速度dVW**を演算する(ステップ208)。
電子制御装置70は、ステップ206で求めた各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度VW**の内の例えば最大速度VWmaxに基づき、車体速度VBを演算する(ステップ210)。この処理は、例えば、各車輪Wfl〜Wrrの車輪速度VWfl〜VWrrの内の最大速度VWmaxが、前回求めた車体速度VB(n−1)に所定値を加えた加速限界値Vαから、車体速度VB(n−1)から所定値を減じた減速限界値Vβまでの範囲内にあるか否かを判断する。最大速度VWmaxが加速限界値Vαから減速限界値Vβまでの範囲内にあれば、最大速度VWmaxをそのまま車体速度VBとして設定する。最大速度VWmaxが加速限界値Vαを越えていれば、この加速限界値Vαを車体速度VBとして設定する。最大速度VWmaxが減速限界値Vβを下回っていれば、その減速限界値Vβを車体速度VBとして設定する。
電子制御装置70は、ステップ210で演算した車体速度VBと、各車輪Wfl〜Wrrの車輪速度VWfl〜VWrrとに基づき、各車輪Wfl〜Wrrのスリップ量ΔVW**を演算する(ステップ212)。
次に、電子制御装置70は、ステップ214において、車両の制動時に車輪速度センサSfl〜Srrで検出された車輪速度VW**に基づいて液圧ユニット26を制御してホイールシリンダ圧の減圧および増圧をこの順番で繰り返し実行する(ABS制御手段)。すなわち、電子制御装置70は、先にステップ212で演算した車輪スリップ量ΔVW**と、先にステップ208で演算した車輪加速度dVW**とに基づいて、液圧ユニット26を増圧モード、減圧モード、パルス減モード、保持モード、およびパルス増モードの何れに制御するかを設定し、その制御モードにて液圧ユニット26の制御を実行する。具体的には、電子制御装置70は、図6に示すフローチャートに沿ってABS制御ルーチンを実施する。
このルーチンは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに対して計4回実行されるようになっている。まず、電子制御装置70は、ストップスイッチ21aがオンになったか否かを判定する(ステップ302)。そして、ストップスイッチ21aがオンになるまでは、当該車輪の制御中フラグFをリセットしすなわち0に設定し(ステップ304)、当該車輪の制御モードを増圧モードにセットする(ステップ306)。その後、プログラムをステップ308に進めてABS制御ルーチンを一旦終了する。なお、制御中フラグFはABS制御が行われているか否かを示すフラグであり、0のときABS制御中でないことを示し、1のときABS制御中であることを示す。
一方、電子制御装置70は、ストップスイッチ21aがオンになったときは、車輪のスリップ量ΔVW**を所定スリップ量KSと大小比較する(ステップ310)。この比較の結果、ΔVW**>KSとなるまでは、プログラムをステップ312に進める。ステップ312においては、制御中フラグFが1であるか否かを判定する。ΔVW**>KSとなるまでは、ABS制御は開始されないため制御中フラグFは0のままであるので、ステップ312にて「NO」と判定し続けて、当該車輪の制御モードを増圧モードにセットする(ステップ306)。
そして、電子制御装置70は、ΔVW**>KSとなると、ステップ310にて「YES」と判定し、ABS制御が開始されるので制御中フラグFを1に設定する(ステップ314)。その後、車輪加速度dVW**を所定車輪加速度KdVWと大小比較する(ステップ316)。この比較の結果、dVW**<KdVWである間は、当該車輪の制御モードを減圧モードにセットする(ステップ318)。その後、プログラムをステップ308に進める。一方、ステップ316の判定において、dVW**≧KdVWと判定されると、当該車輪の車輪加速度dVW**と加速度零(0G)とを比較し、当該車輪が減速方向に制御されている状態にあるか、それとも減速方向から加速方向に反転した状態にあるかを判定する(ステップ320)。そして、dVW**<0Gと判定された場合は、当該車輪の制御モードをパルス減モードにセットし(ステップ322)、dVW**≧0Gと判定された場合は保持モードにセットする(ステップ324)。
また、電子制御装置70は、ABS制御を開始した以降にΔVW**≦KSとなると、当該車輪の制御モードをパルス増モードにセットする(ステップ326)。
上述した各制御モードにおける作動について油経路Lfを例に説明する。ABS制御が実質的に実施されない増圧モード(通常ブレーキ時)には、電子制御装置70から増圧出力が指示され(ステップ306)、その指示に応じて、増圧制御弁42,43は非通電されて連通状態となり、減圧制御弁45,46は非通電されて遮断状態となり、ポンプ47は非駆動状態となる。これにより、マスタシリンダ23からの液圧(基礎液圧)に応じたホイールシリンダ圧がホイールシリンダWCfl,WCfrにそれぞれ形成される。
減圧モード時には、電子制御装置70から減圧出力が指示され(ステップ318)、その指示に応じて、増圧制御弁42,43は通電されて遮断状態となり、減圧制御弁45,46は通電されて連通状態となり、ポンプ47は駆動状態となる。これにより、ホイールシリンダWCfl,WCfrの液圧(ブレーキ液)が油経路Lf3を通って内蔵リザーバタンク44へ流入して、ホイールシリンダ圧がリニアに減圧される。一方、ホイールシリンダWCfl,WCfrの液圧(ブレーキ液)および内蔵リザーバタンク44に貯留されている液圧(ブレーキ液)が、ポンプ47の作動によってマスタシリンダ23へ戻されている。
パルス減モード時には、電子制御装置70からパルス減出力が指示され(ステップ322)、その指示に応じて、増圧制御弁42,43は通電されて遮断状態となり、減圧制御弁45,46は所定のデューティ比で通電・非通電を繰り返されて遮断状態・連通状態を交互に繰り返し、ポンプ47は駆動状態となる。これにより、ホイールシリンダ圧がほぼ階段状に所定の減圧速度で減圧される。この所定の減圧速度は減圧モード時の減速度より小さい値に設定されている。
保持モード時には、電子制御装置70から保持出力が指示され(ステップ324)、その指示に応じて、増圧制御弁42,43は通電されて遮断状態となり、減圧制御弁45,46は非通電されて遮断状態となり、ポンプ47は駆動状態となる。これにより、ホイールシリンダ圧が保持モード開始時点の圧力を維持したまま保持される。
パルス増モード時には、電子制御装置70から通常パルス増出力が指示され(ステップ326)、その指示に応じて、増圧制御弁42,43は所定時間の非通電、その後所定時間だけの通電を交互に繰り返されて連通状態(増圧状態)および遮断状態(保持状態)を交互に繰り返し、減圧制御弁45,46は非通電されて遮断状態となり、ポンプ47は駆動状態となる。これにより、ホイールシリンダ圧が、増圧状態と保持状態を所定時間ずつ交互に繰り返すことにより増圧制御されてほぼ階段状に増圧される。
次に、ABS制御が作動する場合について具体例を挙げて説明する。なお、左前輪Wflについて説明する。他の車輪においても同様である。例えば、時刻t1にて、操作者によってブレーキペダル21が踏込操作されると、ストップスイッチ21aがオンとなり、制動が開始される。ブレーキペダルの踏込操作によってマスタシリンダ圧が上昇しこれに伴ってホイールシリンダ圧が上昇する。
このホイールシリンダ圧の上昇により、車輪速度VWflが減少する。時刻t2にて車輪のスリップ量ΔVWfl>所定スリップ量KSとなると、車輪のロック傾向が発生したと判定して、ABS制御が開始される(ステップ310,314,316,318)。すなわち減圧出力が指示されてホイールシリンダ圧がリニアに減圧される(ステップ318)。
この減圧制御によりホイールシリンダ圧が減少して、時刻t3にて車輪加速度dVWfl<所定車輪加速度KdVWとなると、パルス減出力が指示されてホイールシリンダ圧がほぼ階段状に所定の減圧速度で減圧される(ステップ322)。さらに、ホイールシリンダ圧が減少して、時刻t4にて車輪加速度dVWfl≧加速度零(0G)となると、保持出力が指示されてホイールシリンダ圧がその時点の圧力を維持したまま保持される(ステップ324)。
この保持制御によりホイールシリンダ圧が一定に維持されるなか、車輪速度VWflが増加する。時刻t5にて車輪のスリップ量ΔVWfl≦所定スリップ量KSとなると、通常パルス増出力が指示されてホイールシリンダ圧が増圧状態と保持状態を所定時間ずつ交互に繰り返すことにより増圧制御されてほぼ階段状に増圧される(ステップ326)。そして、車輪のロック傾向がなくなるか、或いはブレーキペダル21の踏み込みを解除するまでは、上述したABS制御は継続される。
さらに、上述した液圧ユニット26の液圧切替制御、特に液圧機器である電磁弁の切替制御について説明する。電子制御装置70は、ABS制御中において、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrのうち任意の複数のものへの液圧の付与状態を時間的に連関させて切り替える。例えば、ABS制御中において、ブレーキ操作を開始して最初の減圧モードとなる場合、全てのホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧の付与状態は、液圧が増大する増圧状態から液圧が減少する減少状態に時間的に連関されて切り替えられる。
このとき、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧の付与状態を互いにタイミングをずらして切り替えるように、液圧機器である電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56が制御されている。すなわち、複数の電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56が時間的に連関させて切替制御を実施される。この際、これら電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56の各切替制御が互いにタイミングをずらして開始されている。
ここで、上述したステップ306,318,322,324,326で実施される電磁弁に対する出力データであるsol出力データの導出・出力について図7を参照して詳述する。電子制御装置70は、ステップ402において、制御演算によるsol出力データをレジスタAに書き込み、ステップ404において、カウンタDをクリアする(カウンタD=0)。前述の場合、電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56を全て通電するので、レジスタAのBIT0〜BIT7は全て「1」である。
レジスタAは8BITであり、BIT0〜BIT7がそれぞれ各電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56に対するsol出力データに対応している。sol出力データは、上述した電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56をオン(通電)するか(BIT値=1)、オフ(非通電)するか(BIT値=0)を示すデータである。制御演算は、上述したステップ306,318,322,324,326で実施される演算である。
電子制御装置70は、ステップ406において、電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56の数に対応したN個のチャンネル(8チャンネル)に割り当てられたsol出力データに対応するカウンタDの値を読み込む。ここで、カウンタD値00HEX〜07HEXが、それぞれレジスタAのBIT0〜BIT7すなわち各電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56に対するsol出力データに対応している。
電子制御装置70は、ステップ408において、カウンタD値に割り当てられた該当BITXに対応するレジスタAのBIT値Yを読み込む。レジスタAのBIT0〜BIT7は全て「1」である場合では、カウンタD=0の時、レジスタAのBIT0のBIT値「1」を読み込むことになる。電子制御装置70は、ステップ410において、現在のレジスタCの値からBITXをステップ408で読み込んだBIT値Yに変更し新しいレジスタCとする。
電子制御装置70は、ステップ412において、カウンタD値をインクリメントし、次のsol出力データを算出する準備をする。そして、電子制御装置70は、ステップ414において、ステップ410で導出したレジスタCをsol出力レジスタBに転送し、ステップ416において、sol出力レジスタBのデータを電磁弁を駆動するドライバに出力する。
そして、電子制御装置70は、所定のタイマ時間だけ待って(ステップ418)、次のsol出力データを導出するため、上述したステップ406にプログラムを戻し(ステップ420で「NO」)、全ての電磁弁に対してsol出力データの算出が終了するまで、ステップ406〜420の処理を繰り返し実行する。そして、電子制御装置70は、全ての電磁弁に対してsol出力データの算出が終了すると(ステップ420で「YES」)、図7に示すフローチャートを終了する。
所定のタイマ時間を待つことにより、電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56の各切替制御が互いにタイミングをずらして開始される。所定のタイマ時間すなわちタイミングのずれは、1ms〜6msに設定されるのが望ましい。したがって、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態の切り替えタイミングのずれは、電磁弁の切替制御のタイミングのずれの2倍である2ms〜12msとなる。各ホイールシリンダへの液圧の付与状態の切り替えタイミングのずれは、車両の運動に影響を及ぼさないような短い時間に設定されるのが望ましい。
車両の運動に影響を及ぼさないような短い時間は、例えば、図8に示すように、ハンドルを切ってからその反応(影響)が車両に現れる時間で示されるものである。すなわち、車両に対して何らかの入力、例えばハンドル操作、車輪一輪にのみ制動力を付与する制御などが実施された場合、その入力が実施された時点からその入力に対する車両の運動、例えば旋回運動が現れるまでの時間である。例えば、図8に示すように、ハンドル入力時点からヨー角速度/定常ヨー角速度が判定値以上となる時点までの時間(約50ms)である。この時間が、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態の切り替えが開始されてから終了するまでのトータル時間の最大値である。したがって、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態の切り替えが開始されてから終了するまでのトータル時間が、上記最大値以下であれば車両の運動を十分に安定させることができる。なお、図8において横軸はハンドル入力からの経過時間を示し、縦軸はヨー角速度/定常ヨー角速度を示している。
また、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態の切り替えタイミングのずれの最小値は、実験によって設定される。タイミングのずれを変更して液圧ユニット26に発生する振動加速度を測定する。この測定結果を図9に示す。図9に示す切り替えは電磁弁を通電状態から非通電状態に切り替える場合である。
これによると、タイミングをずらさない場合、すなわちオフタイミングが0msである場合には、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態は、減少状態から増大状態に同時に切り替えられる。このとき、振動加速度は最大となり、20Gである。タイミングをずらすと、その値が大きくなるほど振動加速度は小さくなる。例えば、10msずらすと、振動加速度は最大値の半分である10Gとなり、さらに40ms付近までずらすと、振動加速度は最大値の4分の1である5Gとなる。図9から明らかなように、タイミングのずれが小さすぎると振動加速度を小さく抑制することができないので、各ホイールシリンダへの液圧の付与状態の切り替えタイミングのずれの最小値は、振動加速度が最大値の半分になる値(すなわち10ms)に設定するのが望ましい。なお、図9において横軸はタイミングのずれ時間を示し、縦軸は液圧ユニットの振動加速度を示している。
なお、液圧の付与状態とは、液圧が減少される減少状態(減圧モードまたはパルス減モードに相当)、液圧が保持される保持状態(保持モードに相当)、液圧が増大される増大状態(増圧モードまたはパルス増モードに相当)である。したがって、減圧モードの場合の付与状態の切り替えは、液圧の付与状態が増大状態から減少状態に切り替えられることであり、増圧モードの場合の付与状態の切り替えは、液圧の付与状態が減少状態から増大状態に切り替えられることである。
また、減圧モード以外のモードにおいて、複数のホイールシリンダへの液圧の付与状態を時間的に連関させて切り替える場合には、上述した減圧モードと同様に各ホイールシリンダへの液圧の付与状態を互いにタイミングをずらして切り替えるように制御する。
また、本発明は、全てのホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧の付与状態を切り替える場合だけでなく、各ホイールシリンダのうち任意の複数のものへの液圧の付与状態を切り替える場合に適用することができる。
上述した説明から明らかなように、本実施形態においては、電子制御装置70は、切替制御手段であるステップ402〜420により、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrのうち任意の複数のものへの液圧の付与状態を時間的に連関させて切り替える場合に、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrのうち任意のものへの液圧の付与状態を互いにタイミングをずらして切り替えるように各液圧機器である各電磁弁を制御する。
これにより、付与状態を切り替える際に液圧ユニットで発生する液圧振動を同一時期に集中させることなく分散させることができるので、液圧ユニットに大きな液圧振動が発生するのを抑制することができ、ひいては、車両挙動センサ28の検出精度を向上させることができる。
例えば、車両が直進走行をしているときに、制動をかけた場合、ABS制御が開始されたとする。このとき、ABS制御中において、ブレーキ操作を開始して最初の減圧モードとなる場合、全てのホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧の付与状態は、増圧状態から減少状態に互いにタイミングをずらして切り替えられる。したがって、付与状態を同時に切り替えて液圧ユニットで液圧振動が同一時期に発生した場合と比べて、液圧振動を小さく抑制することができるので、車両挙動センサ28の検出精度を向上させることができ、より高精度にABS制御を実施することができる。
また、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧の付与状態の切り替えタイミングのずれは車両の運動に影響を及ぼさないような短い時間に設定されているので、車両の運動を十分に安定させたまま車両挙動センサ28の検出精度を向上させることができる。
また、液圧機器は電磁弁である場合に、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧の付与状態を適切に切り替えることができる。
また、電子制御装置70は、切替制御手段であるステップ402〜420により、電磁弁のうち複数を時間的に連関させて切替制御をする際に、電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始するので、電磁弁のメカ的振動を抑制しつつ液圧振動を抑制することができる。
また、上記電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56が連通状態と遮断状態との2位置で切替制御される開閉電磁弁であるので、作動時(オン・オフ切り替え時)の振動が比較的大きい開閉電磁弁を使用する場合に、開閉電磁弁のメカ的な振動が同一時期に発生するのを防止するので、効果的に車両挙動センサ28の検出精度を向上させることができる。
また、上記電磁弁は非通電時には付勢手段によって付勢されて非通電位置に位置し、通電時には付勢手段の付勢力に抗して通電位置に位置するように構成され、電子制御装置70は、切替制御手段であるステップ402〜420により、各電磁弁を通電時から非通電時に時間的に連関させて切替制御をする際に、電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始する。これにより、非通電から通電に切り替える場合に比べて通電から非通電に切り替える場合のほうがメカ的な振動が大きい電磁弁を使用する場合に、この電磁弁のメカ的な振動が同一時期に発生するのを防止するので、効果的に車両挙動センサ28の検出精度を向上させることができる。
また、上述した実施形態においては、液圧機器として電磁弁を挙げたが、液圧機器は少なくとも1つの電磁弁およびポンプ47,57を駆動する電動モータ33である場合もある。この場合においても、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧の付与状態を適切に切り替えることができ、ひいては振動を小さく抑制することができる。
この場合、切換制御手段である電子制御装置70は、電動モータ33および少なくとも1つの電磁弁を時間的に連関させて切替制御をする際に、電動モータ33および電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始する。これにより、電磁弁および電動モータ33のメカ的振動が同一時期に発生するのを抑制しつつ液圧振動を抑制することができる。
また、車両挙動センサが振動型ヨーレートセンサ28aである場合に、液圧ユニット26からの液圧振動またはメカ的振動が、振動型ヨーレートセンサ28aを構成する振動体(または振動子)に加える励振振動に重畳するのを抑制することができるので、振動型ヨーレートセンサ28aの検出精度を効果的に向上させることができる。
また、車両挙動センサが加速度センサ28bである場合にも、液圧ユニット26からの液圧振動またはメカ的振動が、加速度センサ28bに伝わるのを抑制することができるので、加速度センサ28bの検出精度を向上させることができ、例えば同センサ28bからの出力信号に対するノイズフィルタ処理を軽減することなどができる。
また、上述した実施形態においては、各電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56を互いにタイミングをずらして切り替えるようにしたが、例えば、増圧制御弁42と減圧制御弁45、増圧制御弁43と減圧制御弁46、増圧制御弁52と減圧制御弁55、および増圧制御弁53と減圧制御弁56をそれぞれ1つの組とし、それら各組を互いにタイミングをずらして切り替えるように電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56を制御するようにしてもよい。すなわち、電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56を組単位で同時に通電されて非通電状態から通電状態、または非通電されて通電状態から非通電状態に切り替えるようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、電子制御装置70は、切替制御手段であるステップ402〜420により、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrのうち任意の複数のものへの液圧の付与状態を時間的に連関させて切り替える場合に、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrのうち任意のものへの液圧の付与状態を互いにタイミングをずらして切り替えるように各電磁弁42,43,45,46,52,53,55,56を制御した。このようにホイールシリンダへの液圧の付与状態を単位とするのでなく、液圧機器41〜43,45,46,51〜53,55,56,33を単位として切り替えるようにしてもよい。すなわち、液圧機器41〜43,45,46,51〜53,55,56,33のうち任意の複数のものを時間的に連関させて切替制御をする場合に、任意の液圧機器の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始するようにしてもよい。
これにより、任意の液圧機器を複数切替制御をする際に液圧ユニット26で発生する振動を同一時期に集中させることなく分散させることができるので、液圧ユニット26に大きな振動が発生するのを抑制することができ、ひいては、車両挙動センサ28の検出精度を向上させることができる。
例えば、車両が旋回走行をしているときに、上述のESC制御が開始されたとする。このとき、左前輪にのみ制動力を付与する制御が実施される場合、電磁弁41,51は通電されて差圧状態に制御され、電磁弁43,52,53は通電されて閉じられ、電磁弁42は非通電されて開状態であり、電磁弁45,46,55,56は非通電されて閉状態である。この場合、電磁弁41,51,43,52,53は時間的に連関されて切り替えられるが、各電磁弁41,51,43,52,53は互いにタイミングをずらして切り替えられる。したがって、各電磁弁41,51,43,52,53を同時に切り替えて液圧ユニットでメカ的振動が同一時期に発生した場合と比べて、メカ的振動を小さく抑制することができるので、車両挙動センサ28の検出精度を向上させることができ、より高精度にESC制御を実施することができる。
上記各実施形態では、FF車に前後配管しているが、FR車に前後配管してもよい。上記実施形態では、倍力装置としてバキュームブースタを用いているが、ポンプにより発生した液圧をアキュムレータに蓄圧し、この液圧を利用して倍力する倍力装置を用いてもよい。また、本発明を、ブレーキ・バイ・ワイヤ式の液圧ブレーキ装置に適用してもよい。
本発明は、上記液圧機器を通電状態から非通電状態へと切り替える際のタイミングを互いにずらすものに限らず、上記液圧機器を非通電状態から通電状態へと切り替える際のタイミングを互いにずらすものを含む。
10…駆動系、11…エンジン、12…自動変速機、13…ディファレンシャル、15…アクセルペダル、15a…アクセル開度センサ、16…エンジン制御ECU、20…制動系;液圧ブレーキ装置、21…ブレーキペダル、21a…ストップスイッチ、22…負圧式ブースタ、23…マスタシリンダ、24…リザーバタンク、25…車両の運動制御装置、26…液圧ユニット、27…コントロールユニット、28…車両挙動センサ、28a…ヨーレートセンサ(振動型ヨーレートセンサ)、28b…加速度センサ、29…ステアリング、29a…ステアリングセンサ、31…ソレノイドブロック、32…ポンプブロック、33…電動モータ、41,51……液圧制御弁(電磁弁;液圧機器)、42,43,52,53…増圧制御弁(電磁弁;液圧機器)、45,46,55,56…減圧制御弁(電磁弁;液圧機器)、44,54…調圧リザーバ、47,57…ポンプ、60…ケーシング、70…電子制御装置;制御基板、WCfl,WCfr,WCrl,WCrr…ホイールシリンダ。
Claims (10)
- 車両(M)の挙動を検出する車両挙動センサ(28,28a,28b)と、
前記車両の各ホイールシリンダ(WCfl,WCfr,WCrl,WCrr)に付与される液圧を個別に制御するための複数の液圧機器(41〜43,45,46,51〜53,55,56,33)を搭載した液圧ユニット(26)と、
前記車両挙動センサの検出結果に基づいて前記液圧機器を制御して前記車両の運動を制御するための電子制御装置(70)と、が一体化されてなる車両の運動制御装置(25)であって、
前記電子制御装置は、前記各ホイールシリンダのうち任意の複数のものへの前記液圧の付与状態を時間的に連関させて切り替える場合に、前記各ホイールシリンダへの前記液圧の付与状態を互いにタイミングをずらして切り替えるように前記各液圧機器を制御する切替制御手段(ステップ402〜420)を備えたことを特徴とする車両の運動制御装置。 - 請求項1において、前記各ホイールシリンダへの前記液圧の付与状態の切り替えタイミングのずれは前記車両の運動に影響を及ぼさないような短い時間に設定されていることを特徴とする車両の運動制御装置。
- 請求項1または請求項2において、前記液圧機器は電磁弁(41〜43,45,46,51〜53,55,56)であることを特徴とする車両の運動制御装置。
- 請求項3において、前記切替制御手段は、前記電磁弁のうち複数を時間的に連関させて切替制御をする際に、前記電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始することを特徴とする車両の運動制御装置。
- 請求項3または請求項4において、前記電磁弁には、連通状態と遮断状態との2位置で切替制御される開閉電磁弁(42,43,45,46,52,53,55,56)が含まれることを特徴とする車両の運動制御装置。
- 請求項3乃至請求項5の何れか一項において、前記電磁弁は非通電時には付勢手段によって付勢されて非通電位置に位置し、通電時には前記付勢手段の付勢力に抗して通電位置に位置するように構成され、
前記切替制御手段は、前記各電磁弁を前記通電時から前記非通電時に時間的に連関させて切替制御をする際に、前記電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始することを特徴とする車両の運動制御装置。 - 請求項1または請求項2において、前記液圧機器は少なくとも1つの電磁弁およびポンプ(47,57)を駆動する電動モータ(33)であることを特徴とする車両の運動制御装置。
- 請求項7において、前記切替制御手段は、前記電動モータおよび少なくとも1つの前記電磁弁を時間的に連関させて切替制御をする際に、前記電動モータおよび前記電磁弁の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始することを特徴とする車両の運動制御装置。
- 車両(M)の挙動を検出する車両挙動センサ(28,28a,28b)と、
前記車両の各ホイールシリンダ(WCfl,WCfr,WCrl,WCrr)に付与される液圧を個別に制御するための複数の液圧機器(41〜43,45,46,51〜53,55,56,33)を搭載した液圧ユニット(26)と、
前記車両挙動センサの検出結果に基づいて前記液圧機器を制御して前記車両の運動を制御するための電子制御装置(70)と、が一体化されてなる車両の運動制御装置(25)であって、
前記電子制御装置は、前記液圧機器のうち任意の複数のものを時間的に連関させて切替制御をする場合に、前記液圧機器の各切替制御を互いにタイミングをずらして開始する切替制御手段(ステップ402〜420)を備えたことを特徴とする車両の運動制御装置。 - 請求項1乃至請求項9の何れか一項において、前記車両挙動センサは振動型ヨーレートセンサ(28a)であることを特徴とする車両の運動制御装置。
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