JP2008105956A - α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents

α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法 Download PDF

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洋己 田中
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Abstract

【課題】
エステル部に嵩高いアルキル基を有するα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルを高収率で、簡便な操作により工業的に有利である製造方法を提供する。
【解決手段】
2−ハロ−3,3,3−トリフルオロプロペン又は1,1,1−トリフルオロ−2,3−ジプロパンを原料とし、パラジウム系触媒及び塩基性物質の存在下、一酸化炭素を導入することにより、エステル部に嵩高いアルキル基を有するα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルを高収率で製造する方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、フォトレジスト樹脂原料であるα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法に関するものである。
本発明のα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルは半導体製造に使用される樹脂の原料として高機能を有するモノマーである。その構造として不飽和結合の炭素にトリフルオロメチル基を有するアクリル系モノマーであり、そのエステル部には嵩高い構造のアルキル基を有し、このモノマーを収率良く、更には簡素な方法で製造する方法は提案されていない。α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルはα−トリフルオロメチルアクリル酸と対応するアルコールを酸触媒で脱水縮合してエステル化する方法が考えられるが、長時間加熱する必要があるために、α−トリフルオロメチルアクリル酸の分解が起こる。通常はα−トリフルオロメチルアクリル酸クロライドとアルコールを塩基性物質の存在下で脱塩酸することにより製造される。特許文献1にはエステル部にアダマンタン骨格を有するエステルの製法が報告されている。また、特許文献2には2−ブロモ−3,3,5−トリフルオロプロペンをパラジウム触媒により一酸化炭素を導入する方法で合成が試みられているが、エステル基はエチル基だけの合成例しかない。
特開2002−338522号公報 特開昭58−154529号公報
エステル部に嵩高いアルキル基を有するα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルを高収率で、簡便な操作により工業的に有利である製造方法を提供する。
本発明は、2−ハロ−3,3,3−トリフルオロプロペン又は1,1,1−トリフルオロ−2,3−ジハロプロパンを原料とし、パラジウム系触媒及び塩基性物質の存在下、一酸化炭素を導入することにより、エステル部に嵩高いアルキル基を有するα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルを高収率であることを発見し本発明を完成した。
すなわち本発明は、下記式(1)又は(2)
Figure 2008105956

(式中、Xは同一又は異なってフッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を示す。)
と下記式(3)
Figure 2008105956

(式中、R及びRは同一又は異なって、置換基で置換されても良い炭素数2から6のアルキル基を示す。)
を塩基性物質、パラジウム系触媒及び溶媒の存在下、一酸化炭素と反応させることを特徴とした下記式(4)
Figure 2008105956

(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表されるα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法を提供する。
また本発明は、前記式(3)が下記式(3a)
Figure 2008105956

で表され、前記式(4)が下記式(4a)
Figure 2008105956

で表されることを特徴とした前記記載のα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法を提供する。
更に本発明は、前記式(1)又は(2)においてXが臭素原子であることを特徴とした前記記載のα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法を提供する。
本発明は、更にまた、前記式(4)で表されるα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルを高真空で蒸留精製することを特徴とした前記記載のα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法を提供する。
2−ハロ−3,3,3−トリフルオロプロペン又は1,1,1−トリフルオロ−2,3−ジハロプロパンを原料とし、パラジウム系触媒及び塩基性物質の存在下、一酸化炭素を導入することにより、エステル部に嵩高いアルキル基を本発明の新規なモノマーを高収率で簡便な方法で工業的な生産が可能となった。
本発明においてα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルとしては以下のものが挙げられる。
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,4−ジメチル−3−ペンチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2−メチル−3−ペンチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3−ペンチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,4−ジメチル−3−ヘキシルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2−メチル−3−ヘキシルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3−ヘキシルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,4−ジメチル−3−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2−メチル−3−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,5−ジメチル−3−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2−メチル−3−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3,5−ジメチル−4−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3−メチル−4−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸4−ヘプチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,5−ジメチル−3−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2−メチル−3−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,6−ジメチル−3−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,7−ジメチル−3−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,6−ジメチル−4−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2−メチル−4−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸4−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3,6−ジメチル−4−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3−メチル−4−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,6−ジエチル−3−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,7−ジエチル−3−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2,6−ジエチル−4−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸2−エチル−4−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3,6−ジエチル−4−オクチルエステル
α−トリフルオロメチルアクリル酸3−エチル−4−オクチルエステル
更に、2種以上の混合アルコールを原料とする事で、混合エステルを製造することも可能である。
本発明で使用されるパラジウム系触媒としては、例えば、金属パラジウム、パラジウム塩、パラジウム錯体等が挙げられる。金属パラジウムとしてはパラジウム黒、パラジウムスポンジ等であり、パラジウム塩としては塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム、シアン化パラジウム、アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナート等であり、パラジウム錯体としてはナトリウムヘキサクロロパラデート、カリウムヘキサクロロパラデート、ナトリウムテトラクロロパラデート、カリウムテトラクロロパラデート、カリウムテトラブロモパラデート、硼フッ化テトラ(アセトニトリル)パラジウム、アンモニウムテトラクロロパラデート、アンモニウムヘキサクロロパラデート、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロジアンミンパラジウム、硝酸テトラアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラデート、ジクロロジピリジンパラジウム、ジクロロ(2,2’−ビピリジル)パラジウム、ジクロロ(2,2’−ビピリジル)パラジウム、ジクロロ(フェナントロリン)パラジウム、硝酸(テトラメチルフェナントロリン)パラジウム、硝酸ジフェナントロリンパラジウム、硝酸ビス(テトラメチルフェナントロリン)パラジウム等のパラジウム錯塩または錯化合物、また三級ホスフィンを配位子とするジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等が挙げられる。中でも、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化パラジウム等のパラジウム錯体が好ましい。また、これらのパラジウム系触媒は、適当な担体に担持して用いることもできる。
パラジウム系触媒の使用量は、原料である2−ハロ−3,3,3−トリフルオロプロペン又は1,1,1−トリフルオロ−2,3−ジハロプロパンに対し、0.01〜10モル%、より好ましくは0.2〜1モル%である。パラジウム系触媒は反応使用した後に回収して再使用することも可能である。パラジウム系触媒が原料に対して0.01モル%未満では反応速度が低下して、反応時間がかかると同時に、副反応が増加して好ましくない。また、10モル%を超えても反応性成績は変わらなくなり、高価な触媒が無駄になる。
前述したパラジウム系触媒に加えて、さらにトリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物を加えると収率が向上することもある。
本発明は塩基性物質の存在下で実施される。塩基性物質としては、例えば、無機塩基、有機塩基、有機金属化合物等を挙げることができる。無機塩基としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物、水素化ベリリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等が挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N、N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,8−ナフタレンジアミン等の三級アミン、ピリジン、ピロール、ウラシル、コリジン、ルチジン等の複素芳香族アミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状アミジン等が挙げられる。これらの塩基は単独または混合して使用することも出来る。これらの塩基性物質の中で、有機塩基が好ましい。
本発明の方法において、反応は一酸化炭素を原料化合物に導入することで進行するが、一酸化炭素は常圧で反応系に導入することも可能であるが、効率的な反応を進行させるためには加圧にすることが好ましい。圧力は通常は0.1〜5MPaである。
本発明を実施するにあたっては、もう一方の原料であるアルコールが溶媒を兼ねることもできるが、反応に関与しない溶媒を用いることが好ましい。使用する溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等の二トリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、リン酸ヘキサメチルトリアミド等の極性溶媒等が例示できる。
本発明で製造されるα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルは高真空蒸留で蒸留される。通常圧力は13300Pa以下であり、好ましくは9310Pa以下、特に好ましくは6650Pa以下である。133Pa以下で行う分子蒸留も好ましい蒸留精製方法と言える。13300Paより高い圧力での蒸留はモノマーの重合等によるロスを招き好ましくない。
以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
実施例1
ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.044g(0.063ミリモル)、1,2−ジブロモ−3,3,3−トリフルオロプロパン8.2g(32ミリモル)、2,4−ジメチル−3−ペンタノール4.1g(35ミリモル)、トリエチルアミン7.2g(71ミリモル)、炭酸リチウム0.24g(3.2ミリモル)、酢酸エチル100gを攪拌機付きオートクレーブに入れ、1MPaの一酸化炭素下100℃で5時間攪拌をしながら反応を行った。反応後室温まで冷却し、水100gを加え有機相を洗浄し、有機相を濃縮後、濃縮残渣中に2−トリフルオロメチルアクリル酸2,4−ジメチル−3−ペンチル5.7g(24ミリモル)(収率75%)を得た。収率は原料の1,2−ジブロモ−3,3,3−トリフルオロプロパンを基準とした。なを、スケールを100倍にして実施して、濃縮残渣は665Paで減圧蒸留することで、精製された2−トリフルオロメチルアクリル酸2,4−ジメチル−3−ペンチルが収率70%で得られた。
1H-NMR(CDCl--3:TMS) δ 0.86-0.89(d,d 、J=6.71,6.71Hz、12H)、1.92-1.99(m、2H)、4.73(t、J=6.10Hz、1H)、6.39(s、1H)、6.71(s、1H)
実施例2
ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.22g(0.31ミリモル)、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン5.6g(32ミリモル)、2,4−ジメチル−3−ペンタノール75g(646ミリモル)、トリエチルアミン3.6g(36ミリモル)、トルエン100gを攪拌機付きオートクレーブに入れ、1MPaの一酸化炭素下100℃で5時間攪拌をしながら反応を行った。反応後室温まで冷却し、水100gを加え有機相を洗浄し、有機相を濃縮後、濃縮残渣中に2−トリフルオロメチルアクリル酸2,4−ジメチル−3−ペンチル5.7g(24ミリモル)(収率75%)を得た。
比較例1
攪拌装置、温度計、コンデンサ、滴下ロートを備えた1リットルのガラス製フラスコに2,4−ジメチル−3−ペンタノール3.5g(30ミリモル)、トリエチルアミン3.0g(30ミリモル)、及び溶媒として塩化メチレン100mlを仕込み、内温が10℃以下となるように制御しながらトリフルオロメチルアクリル酸クロライド5.3g(25ミリモル)を塩化メチレン50mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、10℃で30分、更に室温で1時間攪拌を続けた。反応液をろ過した後、有機層に順次飽和重曹水、蒸留水、飽和食塩水各100mlにて洗浄して静置分離した。有機層は無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧で溶媒を除去後、濃縮残渣中に2−トリフルオロメチルアクリル酸2,4−ジメチル−3−ペンチル3.5g(15ミリモル)(収率50%)を得た。


Claims (4)

  1. 下記式(1)又は(2)
    Figure 2008105956


    (式中、Xは同一又は異なってフッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を示す。)
    と下記式(3)
    Figure 2008105956

    (式中、R及びRは同一又は異なって、置換基で置換されても良い炭素数2から6のアルキル基を示す。)
    を塩基性物質、パラジウム系触媒及び溶媒の存在下、一酸化炭素と反応させることを特徴とした下記式(4)
    Figure 2008105956


    (式中、R及びRは前記に同じ。)
    で表されるα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法。
  2. 前記式(3)が下記式(3a)
    Figure 2008105956




    で表され、前記式(4)が下記式(4a)
    Figure 2008105956

    で表されることを特徴とした請求項1記載のα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法。
  3. 前記式(1)又は(2)においてXが臭素原子であることを特徴とした請求項1記載のα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法。
  4. 前記式(4)で表されるα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルを高真空で蒸留精製することを特徴とした請求項1記載のα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルの製造方法。

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