JP2008103164A - カーボンと撥水材の複合材 - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボン繊維のようなGDLの構成部材による電極間の突き抜けの問題が生じにくく、ガス拡散性の良い固体高分子型燃料電池に使用できるGDL成形用材料(GDLが基材とカーボン粒子層(MIL)の2層構造の場合には、これらの少なくとも一方(基材/MILともいう)の成形用材料)や触媒層成形材料に有用な多孔質複合材を提供する。
【解決手段】カーボン粒子11と撥水材12とを含む多孔質複合材であって、細孔径13の分布幅が1000nm以上であることを特徴とする多孔質複合材。
【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質複合材とその製造方法、該多孔質複合材を用いた燃料電池用のガス拡散層(以下、単にGDLとも称する。)、触媒層及び電極、並びに該電極を用いた燃料電池用の膜電極接合体(以下、単にMEAとも称する。)に関する。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が移動体用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、電解質に固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池は、比較的低温で作動することから、燃料電池自動車から携帯機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末、携帯音楽プレイヤ、ノート型パソコンなど)まで幅広い分野での移動体用電源として期待されている。
こうした固体高分子型燃料電池のGDLは、反応層(電極触媒層)へのガスの供給、排出、電子及び熱の受け渡しの役割を持つ。そのため、固体高分子型燃料電池のGDLでは、こうした役割を達成するのに適している厚さ150μm程度のカーボンペーパー又はカーボンクロスが、通常用いられている(例えば、特許文献1参照)。
特開昭60−140668号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されているようなGDL用の従来のカーボンペーパー又はカーボンクロスの材料は、カーボン繊維を紙又は布状に加工した物である。当該カーボン繊維の径は10μm程度で該繊維は硬く強靱であるため、固体電解質を突き抜けアノード極(燃料極)とカソード極(酸化剤極)とが短絡する欠点があった。また、GDLとバイポーラプレート等のセパレータとの接触抵抗を下げるため、燃料電池スタックのエンドプレートの締結による締め付け圧力(=セル締結圧力)を上げると脆いために繊維が崩れてしまう欠点もある。
この突き抜けの心配のないGDLとして、食塩電解の酸素陰極に用いられているように、カーボンブラック粒子とポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEともいう)微粒子で構成することができる。しかしながら、この食塩電解の酸素陰極をGDLとして適用しようとした場合には、0.1μm程度の平均細孔(空孔)しか持たず、尚且つ細孔径の分布幅(0.1μm程度)が非常に狭いので固体高分子型燃料電池用には細孔径(空孔径)が小さすぎ、ガス拡散性が低すぎるものであった。その結果、かかるGDLを燃料電池に適用した場合には、電池性能が低くなるという問題があった。
そこで、本発明の目的は、カーボン繊維のようなGDLの構成部材による電極間の突き抜けの問題が生じにくく、ガス拡散性の良い固体高分子型燃料電池に使用できるGDL成形用材料(GDLが基材とカーボン粒子層(MIL)の2層構造の場合には、これらの少なくとも一方(基材/MILともいう)の成形用材料)や触媒層成形材料としての多孔質複合材とその製造方法、該多孔質複合材を用いたGDL、触媒層及び電極、並びに該電極を用いたMEAを提供するものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、カーボンブラック等のカーボン粒子とフッ素樹脂等の撥水材から成る分散液を気相空間で液滴状とし、そのまま気相中で脱溶媒して固体化し、その固体を該撥水材の融点以上で焼結することでカーボン粒子と撥水材が結着した多孔質の複合材が得られ、この多孔質複合材をGDL成形用材料(2層構造の場合、基材/MIL成形用材料)に用いることにより上記問題点を解消できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の目的は、カーボン粒子と撥水材とを含む多孔質複合材であって、細孔径の分布幅が1000nm以上であることを特徴とする多孔質複合材により達成される。
また、本発明の他の目的は、カーボン粒子と撥水材を溶媒に分散させた分散液を、気相空間で液滴状とし、そのまま脱溶媒し、さらに、撥水材の融点以上で焼成して形成することを特徴とする多孔質複合材の製造方法により達成される。
本発明の多孔質複合材は、細孔径の分布幅が1000nm以上である複数の細孔を持つにもかかわらず、球形で固く変形しにくく、撥水性の細孔を、好ましくは空孔率で50%以上持たせることができる。また、本発明の多孔質複合材の製造方法では、球形形状であって、粒度分布が狭く均一な粉末(粒子)形態の、細孔径の分布幅が1000nm以上である多孔質複合材を簡便に得ることができる。また、本発明の製造方法では、分散液の液滴サイズを変えることにより、任意の平均粒径に調整可能であり、使用目的に応じた大きさの多孔質複合材を提供することができる。
そのため、本発明の多孔質複合材をホットプレスして該多孔質複合材の粒子同士を結着させて形成したGDL(2層構造の場合、基材/MIL)では、多孔質複合材の内部に存在する細孔と該多孔質複合材同士の間に形成された細孔を持たせることができる。その結果、かかるGDL(2層構造の場合、基材/MIL)では、細孔径が数十nm(40nm程度)から数μmまでの細孔を無数に持つのでガスの拡散が飛躍的に増大する。よって、GDL(2層構造の場合、基材/MIL)に使うことで性能を大幅に向上することができる。更に、この多孔質複合材を触媒層塗布液(触媒インク)に添加することで、得られる触媒層のガス拡散が容易になり性能が向上する。
また、本発明のGDL(2層構造の場合、基材/MIL)では、本発明の多孔質複合材の粒子径を例えば10μm以上に揃えることで1μm以上の大口径の細孔も存在させることができ、液水が容易に通過できるので水の排出も容易となる。触媒層を該GDL(2層構造の場合、MIL)上に触媒インク塗布等で構成することで容易に電極、更にはMEAを作製することもできる。このMEAを燃料電池に組み込んだ場合、高加圧状態で長期にわたり変形しないので燃料電池の耐久性が向上する。
以下、本発明の多孔質複合材とその製造方法、該多孔質複合材を用いた燃料電池(GDL、触媒層及び電極、並びに該電極を用いたMEA)につき、それぞれ説明する。
(I)多孔質複合材
本発明に係る多孔質複合材は、カーボン粒子と撥水材からなる多孔質複合材であって、細孔径の分布幅が1000nm以上であることを特徴とするものである。
以下、本発明の多孔質複合材につき、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の多孔質複合材を構成するカーボン粒子と撥水材、並びに多孔質複合材中に存在する細孔の様子が分かるように、球形形状であって、粉末(粒子)形態の多孔質複合材の1粒子を拡大して模式的に表した概略図である。
図1に示すように、多孔質複合材10は、カーボン粒子11と撥水材12とを用いて形成されている。そして、多孔質複合材10中の主にカーボン粒子11及び撥水材12の間に細孔径の分布幅が1000nm以上である多数の細孔(貫通孔)13を有することを特徴とするものである。
ここで、多孔質複合材10は、焼結体であり、後述するように製造過程で撥水材12の融点以上で焼成することで、撥水材12が溶融しバインダとして作用し、カーボン粒子11と撥水材12が相互に接合(結着)した構造となっている。そして、カーボン粒子11及び撥水材12の間に生じる細孔の細孔径の分布幅が1000nm以上である無数の細孔13を形成している。即ち、多孔質複合材10は、細孔径の分布幅が1000nm以上である無数の細孔13を有する多孔質構造となっている。
上記細孔13の細孔径は小さく、水分不透過でかつガス透過し得るサイズの細孔領域を形成することができるのが望ましいものである。こうした細孔径の分布幅が1000nm以上である細孔13は、焼成時に撥水材12がフィブリル化しないように、せんだん応力がかからないようにすることで形成することができる(詳しくは、後述する製造方法及び実施例等参照のこと。)。
(i)多孔質複合材10の平均粒子径
多孔質複合材10の平均粒子径は、0.7μm〜50μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは5〜10μmの微粒子であることが望ましい。多孔質複合材の平均粒子径が0.7μm以上であれば、GDL(2層構造の場合、基材/MIL)に用いる場合に、多孔質複合材の粒子同士の隙間を通じてガスが拡散でき、更に液水も容易に通過できる比較的大きな細孔(詳しくは水分及びガス透過し得る0.5μm以上の細孔径;図3Bの符号30参照のこと)を形成するのに適している。また、触媒層に添加する場合に、触媒層内に分散された多孔質複合材内部の比較的小さな細孔13を通じて、触媒層内のガス拡散が容易になり性能を向上させることができる。多孔質複合材の平均粒子径が50μm以下であれば、GDLなどの成膜が容易となる。多孔質複合材の平均粒子径は、粉体用粒度分布装置により測定することができる。
このように多孔質複合材の平均粒子径の違いで、多孔質複合材の粒子間の細孔(貫通孔;図3Bの符号30)の平均細孔径や細孔分布を、本発明の作用効果が有効に発現するように調整することができるものである。こうした多孔質複合材の粒子間の細孔(貫通孔)の平均細孔径や細孔分布の変更により、例えば、液水の透過性を有効且つ効果的に制御することができる点で優れている。
(ii)多孔質複合材10の引っ張り強度、および破断変形率
多孔質複合材10は、引っ張り強度が20kgf/cm以上、好ましくは20〜40kgf/cmであり、破断変形率が20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5〜10%の範囲であるのが望ましい。
ここで、多孔質複合材10の引っ張り強度が20kgf/cm以上であれば、該多孔質複合材10を用いてGDL(2層構造の場合、基材/MIL)をホットプレス成形にて製造する場合にも、該多孔質複合材10同士の隙間(細孔)及び多孔質複合材10内部の細孔が潰れにくく、所望の大きさの細孔を持つGDL(2層構造の場合、基材/MIL)を提供することができる。かかる多孔質複合材10同士を適度な隙間を持って連ねることで形成される、小さな細孔13と大きな細孔(図3Bの符号30)が、製造過程や燃料電池内で加温、加圧状態におかれても潰れにくい多孔質複合材の内部構造及び粒子間構造を提供することができる。
また、多孔質複合材10の破断変形率が20%以下であれば、成型後のシート(GDLやMILなど)の形状安定性に優れ、取り扱い性に優れる。多孔質複合材の引っ張り強度は、島津製作所製の引っ張り試験器により測定することができる。多孔質複合材の破断変形率は、島津製作所製の引っ張り試験器により測定することができる。これらは、粉末(粒子)形態ではなく、以下の条件で粉末(粒子)形態の多孔質複合材を板状にホットプレス成形した試料を用いて測定したものである。
ホットプレス成形条件
・ホットプレス成形用材料:本発明の粉末(粒子)形態の多孔質複合材のみ使用
・ホットプレス温度:360℃
・ホットプレス圧力:5MPa
・ホットプレス時間:1分間
・成形体の形状:縦5cm×横5cm×厚さ0.1mm
(iii)多孔質複合材10の空孔率
また、多孔質複合材10の空孔率は50〜80%、好ましくは60〜70%が好ましい。空孔率が80%以下であれば、緻密で固く変形しにくい粒子構造とすることができる。また、空孔率が50%以上であれば、液水不透過でかつ水蒸気が透過し得るサイズの細孔領域を多数形成し、撥水性の細孔によるガスの拡散能を増大させることができる。そのため、こうした空孔率の細孔13を持つ多孔質複合材10を用いたGDL(2層構造の場合、基材/MIL)では、該多孔質複合材10同士の隙間に形成される比較的大きな細孔を通じて速やかに給水・排水することができる。また、ガスについては、水が排水または給水中で比較的大きな細孔(貫通孔)内部を通過中であっても、多孔質複合材10の内部に存在する無数の比較的小さな細孔(貫通孔)13を通じてガス拡散(透過)させることができる。そのため、給・排水によりガス拡散経路(貫通孔)が塞がれにくい構造とすることができる。その結果、ガスの拡散が飛躍的に増大するので、当該GDL(2層構造の場合、基材/MIL)を用いた燃料電池の性能を格段に向上させることができる。多孔質複合材10の空孔率は、水銀ポロシメーターまたは水ポロシメーターにより測定することができる。
(v)多孔質複合材10の各構成部材について
次に、本発明の多孔質複合材につき、その構成部材であるカーボン粒子11及び撥水材12、更には多孔質複合材中に存在する細孔径の分布幅が1000nm以上である細孔13などの各構成要件を説明する。
(v−1)カーボン粒子11
(a)カーボン粒子の材質
上記多孔質複合材10を構成するカーボン粒子11の材質(種類)としては、GDL(2層構造の場合、基材/MIL)に導電性(電気伝導性)及び多孔質性を付与することができるように、更には触媒層に多孔質性を付与することができるように、従来公知のGDL材料であるカーボンペーパーやカーボンクロスなどに用いられていたのと同様の導電性カーボン材料を用いることができる。具体的には、例えば、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
(b)カーボン粒子の形状
上記カーボン粒子の形状は、従来のカーボン繊維のように電極間を突き抜けアノード極(燃料極)とカソード極(酸化剤極ないし空気極)とが短絡することがないように、粒子状であることが望ましい。具体的には、カーボン粒子の縦横比(アスペクト比)が1〜3、好ましくは1〜2の範囲である。ここで、アスペクト比は、試料(カーボン粒子や後述する撥水材粒子)の長軸長さ/短軸長さ(断面直径)で表されるものとし、無作為に選んだ、粒子100個以上の平均値を用いるものとする。形状およびアスペクト比は、SEM(走査型電子顕微鏡)観察、TEM(透過電子顕微鏡)観察などにより測定することができる。
(c)カーボン粒子の平均2次粒径、及び平均1次粒径
上記カーボン粒子11の平均2次粒径としては、多孔質複合材10中に水分不透過でかつガス透過し得るサイズの細孔13を形成できるものが望ましく、200〜1000nm、好ましくは300〜600nmの範囲である。ここで、カーボン粒子11の平均2次粒子とは、個々のカーボン粒子(=1次粒子)が凝集した凝集体ないし塊状物(=2次粒子)の平均粒径をいうものとする。カーボン粒子11の平均2次粒径が200nm以上であれば、ほぼ撥水材(例えば、PTFE微粒子)の粒径に等しくなり、カーボン粒子間の隙間が撥水材で塞がれることなく、比較的小さな細孔領域で所定の細孔径分布幅を有する細孔形成が可能となる。一方、カーボン粒子11の平均2次粒径が1000nm以下であれば、インク(カーボン粒子と撥水材を溶媒に分散させた分散液)の分散性の問題が少なく好ましい。
カーボン粒子の粒径は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)観察、TEM(透過電子顕微鏡)観察などにより測定することができる(図9A参照)。なお、カーボン粒子の中には、上記したように縦横比が違う粒子が含まれている場合もある。したがって、上記でいう粒径などは、粒子の形状が一様でないことから、絶対最大長で表すものとする。この点は、後述する撥水剤粒子の粒径等においても同様である。ここで、絶対最大長とは、粒子(例えば、カーボン粒子や撥水剤粒子等)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の長さをとるものとする。
(d)カーボン粒子の配合比率
上記カーボン粒子11の配合比率は、上記した導電性(電気伝導性)を有効に発揮する観点から、多孔質複合材全量に対して40〜80質量%、好ましくは50〜70質量%の範囲である。カーボン粒子の配合比率が40質量%以上であれば良好な導電性、ガス拡散性及び潰れにくい構造(耐久性)を確保できる。一方、カーボン粒子の配合比率が80質量%以下であれば、電極性能を損なうことなく、所望の導電性、ガス拡散性を発揮することができる。また、撥水材による結着作用により必要な強度が得られ、高加圧状態で長期にわたり変形しない潰れにくい構造(耐久性)とすることができる。
(v−2)撥水材12
(a)撥水材の材質
上記多孔質複合材10を構成する撥水材12の材質(種類)としては、GDL(2層構造の場合、基材/MIL)でも触媒層と同様に撥水性を高めてフラッディング現象を防ぐことができるように、従来GDLに用いられていた撥水剤(例えば、撥水材料や表面だけを撥水処理した材料等)と同様のものを用いることができる。かかる撥水材の材質(種類)としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。より好ましくは、図1に示すように、カーボン粒子11同士を結着させ、かつ撥水性表面を形成させることができることから、PTFE、PFA、FEPのフッ素系の高分子材料が特に望ましいものである。特に好ましくは、耐久性の観点から、PTFEである。さらに、こうした好適な撥水性材料を用いることで、電気抵抗の低減と、多孔質複合材10内部に撥水性細孔による液水の透過防止(ガス通路優先)機能を付与することができるものである。
(b)撥水材の形状
上記撥水材12の形状は、従来のカーボン繊維のように電極間を突き抜けアノード極(燃料極)とカソード極(空気極)とが短絡することがないように、図1に示すように、粒子状であることが望ましい。言い換えれば、製造過程で加えた粒状の撥水材12がフィブリル化(繊維化)していないものが望ましい。具体的には、撥水材12の形状の縦横比(アスペクト比)が1〜4、好ましくは1〜2の範囲である。粒子状の撥水材12は、球状である必要はなく、むしろフィブリル化していない範囲(上記縦横比の範囲)内で、図1に示すように、カーボン粒子11同士を強固に結着するのに適した形状をとるのが望ましいと言える。即ち、球状の撥水材12がカーボン粒子11間に挟まれて押し潰され、当該カーボン粒子10の表面に密着するように変形された形状が望ましいと言える。
(c)撥水材の非フィブリル化の割合
言い換えれば、前記撥水材12は、撥水材の60%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは100%(全撥水材)がフィブリル化していないことが望ましいものである。よって、撥水材(例えば、PTFE)がフィブリル化していないとは、撥水材が縦横比の小さい形状、例えば、粒状形状または層状形状で存在しているものと言える。このように撥水材(例えば、PTFE)がフィブリル化していないため、多孔質複合材10やGDL(2層構造の場合、基材/MIL)の構造を強固にでき、電極間の短絡などの問題も防止できる点で優れている。また、触媒層のガス拡散性を確保でき、性能向上に寄与できる点で優れている。
撥水材のフィブリル化は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM画像)により観察することができる(図15を参照のこと。図15では、フィブリル化して繊維状になっている撥水材(PTFE)が観察される。)。
(d)撥水材の引っ張り強度
上記撥水材の引っ張り強度は、粒子状の撥水材粒子100%で焼結体とし測定されるものとする。撥水材粒子の引っ張り強度が10MPa以上、好ましくは10〜30MPaの範囲であるのが望ましい。撥水材粒子の引っ張り強度が10MPa以上であれば、強固な多孔質複合材を得ることが出来るので好ましい。また、撥水材粒子の引っ張り強度の上限値としては特に制限されるものではないが、30MPa以下であれば、多孔質複合材10やGDL(2層構造の場合、基材/MIL)の構造を十分強固にでき、電極間の短絡などの問題も防止できる点で優れている。なお、30MPaを超える場合でも、使用できる材料や焼結条件が制限されるおそれがあるものの、十分に利用可能である。
(e)撥水材の平均粒径
粒子状の撥水材12を用いる場合、当該撥水材粒子の平均粒径としては、細孔径の分布幅が1000nm以上である細孔13を持つ多孔質複合材10を形成することができるものであればよく、100〜500nm、好ましくは200〜300nmの範囲である。撥水材粒子の粒径は、例えば、SEM観察、AFM(原子間力顕微鏡:Atomic Force Microscope)観察などにより測定することができる。なお、撥水材粒子の中には、上記したように縦横比が違う粒子が含まれている場合もあり、粒子の形状が一様でないことから、粒径は絶対最大長で表すものとする。絶対最大長については、上記カーボン粒子の粒径において説明した通りである。
(f)カーボン粒子と撥水材との混合比
また、上記カーボン粒子と撥水材との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られない恐れがあり、撥水材が多過ぎると十分な電子伝導性が得られない恐れがある。これらを考慮して、当該多孔質複合材10におけるカーボン粒子11と撥水材12との混合比は、質量比で、8:2〜4:6、好ましくは7:3〜5:5の範囲とするのがよい。
(g)カーボン粒子と撥水材粒子の平均粒径比
次に、上記カーボン粒子の平均2次粒径(d1)と撥水材粒子の平均粒径(d2)とは、上記した導電性(電気伝導性)と撥水性が発揮でき、これら粒子同士の間に生じる細孔13の細孔径およびその分布幅などを制御する上で、d1/d2は0.5〜5、好ましくは1〜2の範囲である。d1/d2が5を超える場合には十分な電子伝導性が得られないおそれがあり、d1/d2が0.5未満であれば十分な引っ張り強度が得られないおそれがあるためである。
(v−3)多孔質複合材10の任意構成部材
(a)任意構成部材の種類
上記多孔質複合材10は、上記カーボン粒子11と撥水材12から構成されるものであるが、更に本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、他の構成部材を含んでいてもよい。具体的には、例えば、導電性(電気伝導性)を備えてなるカーボンナノチューブ、粒状活性炭、粒状黒鉛などを用いてもよい。
(b)任意構成部材:カーボンナノチューブの混合比率
ここで、カーボン粒子11と任意の構成部材のカーボンナノチューブとの混合比率は、カーボン粒子100質量部に対し、カーボンナノチューブが2〜25質量部、好ましくは5〜15質量部の範囲が望ましい。カーボン粒子100質量部に対しカーボンナノチューブの配合量が2質量部以上であれば導電性の向上が見られる。一方、カーボン粒子100質量部に対しカーボンナノチューブの配合量が25質量部以下であれば膜への突き刺さりなどの問題もなく、成膜性を損なわないものである。
(c)任意構成部材:カーボンナノチューブの長さ、断面直径
上記カーボンナノチューブの長さは、1〜20μm、好ましくは5〜15μmの範囲である。長さが1μm以上であれば導電性が増し、長さが20μm以下であれば分散性も良好である。多孔質複合材10を製造する際に、該カーボンナノチューブが多孔質複合材10同士を数珠状ないし網目状につないだ状態となることなく、粒子状の多孔質複合材として得ることができる。またカーボンナノチューブのチューブ直径(断面直径)は、150〜10nm、好ましくは100〜20nmの範囲である。
(v−4)細孔13
(a)細孔13の細孔径の分布幅は、1000nm以上、好ましくは1100〜1200nmである。細孔13の細孔径の分布幅は、1000nm以上であれば、本発明の目的である、カーボン繊維のようなGDLの構成部材による電極間の突き抜けの問題が生じにくく、ガス拡散性の良い固体高分子型燃料電池に使用できるGDL(2層構造では基材/MIL)成形用材料や触媒層成形材料として優れた多孔質複合材を提供することができる。
上記細孔13の細孔径の分布幅は、水銀ポロシメーター(水銀圧入法による細孔分布測定)または水ポロシメーターにより測定するものとする(例えば、図6、7参照のこと)。
(b)細孔の細孔径
細孔13は、40nm以上、2000nm以下、好ましくは60nm以上、1300nm以下、より好ましくは100nm以上、1200nm以下である前記細孔径からなることが望ましい。細孔13の細孔径が40nm以上であれば、こうした小さな細孔を形成するのは、使用するカーボン粒子、撥水材粒子の大きさや、以下に説明する製造方法での分散液の濃度や液滴径を調整することにより比較的容易に作製することができるためである。ただし、40nm未満の細孔径を有するものであっても、ガス透過可能であるため、本発明に利用可能である。一方、細孔13の細孔径が2000nm以下であれば、多孔質複合材10がガス透過性に優れる。また、細孔径が2000nm以下であれば、撥水材12が細孔の内面に存在する構造となっているため、多孔質複合材10の細孔13に液水が浸入しにくく、液水により細孔が塞がれるのを防止することもできる。
上記細孔13の細孔径は、水銀ポロシメーターまたは水ポロシメーターにより測定するものとする(例えば、図6、7参照のこと)。
(c)細孔の平均孔径
細孔13の平均孔径は、0.2μm以下、好ましくは50nm〜0.2μm、より好ましくは70nm〜0.1μmであるのが望ましい。
上記細孔13の平均孔径の下限に関しては特に制限が無いが、50nm以上であれば、ガス透過が可能であるほか、液水不透過でかつ水蒸気が透過し得るサイズの細孔領域とすることができる。なお、水分透過性は、細孔13の平均孔径の大きさに加え、撥水材による撥水作用により、細孔13の入口表面で水が弾かれて、細孔13内部に浸入しにくい構造となっている。そのため、当該細孔13の孔径に関しては、撥水作用も考慮して、最適なガス透過性となる細孔13の孔径を決定するのが望ましい。上記細孔13の平均孔径が0.2μm以下であれば、液水は容易に進入できないほか、緻密で強固な粒子構造を保持した上で、液水不透過でかつガス透過し得るサイズの細孔領域を形成することができる。
上記細孔13の細孔径の分布幅、細孔径、細孔13の平均孔径は、水銀ポロシメーターまたは水ポロシメーターにより測定するものとする(例えば、図6、7参照のこと)。
(d)細孔13の細孔径の分布頻度
細孔13の細孔径の分布頻度は、15%以下、好ましくは10%以下であることが望ましい。細孔13の細孔径の分布頻度が15%以下であれば、細孔径の分布幅が1000nm以上の幅広い細孔領域に細孔径の分布頻度のピークを多数有することになる。そのため、液水不透過でかつガス(水蒸気)透過性能を高めることができる点で優れている(図6、7を対比参照のこと)。
なお、細孔13の細孔径の分布幅が1000nm以上である細孔分布は、上記したように、ガス透過が可能であるほか、液水不透過でかつ水蒸気が透過し得るサイズの細孔領域にあるのが望ましい。細孔分布は、細孔の大きさとその体積の関係を示すものであり、測定方式としては、マイクロポア〜メソポアの領域ではガス吸着法が、メソポア〜マクロポアの領域では水銀圧入法を使用すればよい。また、いずれの方式であっても、細孔分布の表現方法は同じであり、市販の測定装置を用いて測定することができる。そうした場合には、細孔は全て円筒形、細孔径は直径Dで表現するものと仮定して計測される。なお、多孔質複合材10の細孔分布は単独で行っても良いが、これを用いて形成した板状(GDLや基材/MIL等)の形態で行っても良い。
後者の場合には、上記(a)〜(d)の測定を含めて、上記「多孔質複合材10の引っ張り強度、および破断変形率」の項で規定したホットプレス成形条件で、粉末(粒子)形態の多孔質複合材を板状の形態に成形した試料(GDLや基材/MIL等)を用いて測定するのが望ましい。即ち、水銀ポロシメーターまたは水ポロシメーターによる測定法では、1500μm以上の大きな細孔は計測対象該外となる為、上記ホットプレス成形条件で得られた試料にあっては、多孔質複合材間に形成される大きな細孔は、殆ど計測対象とならないため、得られた結果を、多孔質複合材内部の細孔13のものとして取り扱うことができるものである。
また、板状の形態での多孔質複合材10の水ポロシメーターによる細孔分布では、例えば、後述する実施例の図6に示すように、細孔径30nm〜千数百nmの広い範囲にわたって複数の細孔径の分布頻度のピークを持つように形成されている。図6では細孔径の分布頻度は11%以下であり、こうした細孔径の分布頻度の小さいピークが、30nm〜千数百nmの広い範囲に幅広く分布して形成されていることがわかる。これに対し、従来の乾燥、焼結法で得られたGDLの水ポロシメーターによる細孔分布では、例えば、後述する比較例の図7に示すように、40nm〜百数十nmの狭い範囲に細孔径の分布頻度が集中して形成されている。図7では最大の細孔径の分布頻度が35%あり、当該細孔径を中心に狭い範囲に細孔が分布したものが形成されていることがわかる。こうした場合には、本発明に比して十分なガス拡散を確保することができない(図13参照のこと)。
(II)多孔質複合材の製造方法
次に、本発明の多孔質複合材の製造方法は、カーボン粒子と撥水材を溶媒に分散させた分散液を、気相空間で液滴状とし、そのまま脱溶媒し、さらに、撥水材の融点以上で焼成して形成することを特徴とするものである。なかでも、ドライスプレーにて前記分散液の気相空間での液滴生成と脱溶媒を行うことが望ましい。以下、これらの製造方法にて詳しく説明する。
即ち、本発明に係る多孔質複合材の製造方法の代表的な実施形態(製法1と称する)としては、
(i)カーボン粒子と撥水材を溶媒に分散させた分散液を調製する工程(分散液調製工程ともいう)と、
(ii)得られた分散液を、気相空間で液滴状とし、そのまま脱溶媒する工程(液滴生成・脱溶媒工程ともいう)と、
(iii)さらに、撥水材の融点以上で焼成する工程(焼成工程)と、を備えてなることを特徴とするものである。
本発明の製造方法では、カーボン粒子と撥水材を分散させた分散液を、剪断応力が加わらないようにするために(即ち、撥水材粒子のフィブリル化を起こさないようにするために)気相空間で液滴状とし、そのまま気相中で脱溶媒して固体化し、その固体を撥水材の融点以上で焼結(焼成)することで、カーボン粒子と撥水材が結着し、ヤング率が高く、圧縮変形がし難い多孔質複合材の微粒子が得られることを見出したものである。また、この多孔質複合材の微粒子は、細孔径の分布幅が1000nm以上である多孔質の複合材であり、撥水性の細孔を空孔率で50%以上持たせることができるにもかかわらず、球形で固く変形しにくく、撥水性、導電性であり、これらの多孔質複合材微粒子は融点以上で加圧すれば粒子同士が結着することを見出したものである。更に、この多孔質複合材の微粒子をインク化してGDL(2層構造の場合、基材/MIL)を形成すれば、所望のGDL(2層構造の場合、基材/MIL)が得られることを知得するに至ったものである。また、この多孔質複合材の微粒子を触媒インクに加えて触媒層を形成すれば、所望の触媒層が得られることを知得するに至ったものである。
(i)分散液調製工程
本工程では、カーボン粒子と撥水材(好ましくは撥水材粒子)とを溶媒に分散させて分散液を調製する。本工程では、必要に応じて非イオン性界面活性剤の存在下で行っても良い。
ここで、カーボン粒子と撥水材に関しては、多孔質複合材の構成部材として既に説明したとおりであるので、ここでの説明は省略する。同様に、多孔質複合材の構成部材等として既に説明した他の内容に関しても、製法上の特徴がない場合には、重複記載を避けるため、特段の断りなくここでの説明は省略する。
(a)分散液に用いられる溶媒の種類
上記分散液に用いられる溶媒に関しては、カーボン粒子と撥水材を分散させることができるものであればよく、例えば、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などを用いることができる。また、PTFEディスパージョンを用いるため水(特に純水)が好ましい。この場合は界面活性剤を数パーセント添加する。
(b)分散液に用いられるカーボン粒子の配合量
上記カーボン粒子の配合量としては、分散液に対して1〜10質量%、好ましくは5〜9質量%の範囲である。カーボン粒子の配合量が1質量%以上であれば、その後の液滴生成・脱溶媒工程での脱溶媒化が容易かつ短時間で行うことができる点で優れている。一方、カーボン粒子の配合量が10質量%以下であれば、凝集化しにくく高分散状態を安定して保持することができる。また、分散液がスラリー化しにくく、その後の所望のサイズの液滴生成がドライスプレーなどにより容易に行うことができる点でも優れている。
(c)分散液に用いられる撥水材の配合量
上記撥水材の配合量としては、分散液に対して1〜10質量%、好ましくは3〜6質量%の範囲である。撥水材の配合量が1質量%以上であれば、その後の液滴生成・脱溶媒工程での脱溶媒化が容易かつ短時間で行うことができる点で優れている。一方、撥水材の配合量が10質量%以下であれば、凝集化しにくく高分散状態を安定して保持することができる。また、分散液がスラリー化しにくく、その後の所望のサイズの液滴生成がドライスプレーなどにより容易に行うことができる点でも優れている。但し、カーボン粒子と撥水材粒子を含んだこの分散液を、固形分40%以上に濃縮して使用することもできる。例えば、相分離、水分蒸発、膜による透析、電気泳動濃縮、カーボンブラック等のカーボン粒子のみを遠心濃縮後PTFE等の撥水材を添加する方法がある。この場合は水分除去率が小さいので大きい粒径の多孔質複合材を得るのに都合がよい。
(d)カーボン粒子と撥水材との配合比率
カーボン粒子と撥水材との配合比率に関しては、多孔質複合材の構成部材として既に説明したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
(e)分散液に用いられる非イオン性界面活性剤の種類
上記非イオン性界面活性剤としては、上記カーボン粒子及び撥水材粒子を凝集させることなく、微粒化した状態で、溶媒中に分散、好ましくは均一に高分散させることができるものであればよい。上記非イオン性界面活性剤としては、具体的には、Triton X−100等のポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるN−100などを挙げることができるが、これらに何ら制限されるものではない。好ましくは相分離の観点から、適度な曇点を有するTriton X−100、N−100が好適である。また、これら非イオン性界面活性剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。なお、上記カーボン粒子及び撥水材粒子を凝集させることなく、微粒化した状態で、溶媒中に分散、好ましくは均一に高分散させることができるものであれば、非イオン性界面活性剤に限られるものではなく、従来公知の他の界面活性剤を用いてもよい。
(f)非イオン性界面活性剤の配合量
上記非イオン性界面活性剤の配合量としては、カーボンブラック等のカーボン粒子の比表面積に比例して界面活性剤の添加量は増減するが、ここではアセチレンブラックAB−6(デカン製)を例に説明する。この場合、非イオン性界面活性剤の配合量としては、分散液に対して0.5〜20質量%、好ましくは0.5〜8質量%の範囲である。非イオン性界面活性剤の配合量が0.5質量%以上であれば、良好に分散されるのである。一方、非イオン性界面活性剤の配合量が0.5質量%未満であれば、カーボンブラック等のカーボン粒子が分散できないおそれがある。また、非イオン性界面活性剤の配合量が20質量%以下であれば、本発明の作用効果を損なうことなく良好に分散されるものである。
(g)本工程の代表的な実施形態
本工程の代表的な実施形態としては、まず、必要に応じて添加される非イオン性界面活性剤を含む溶媒(例えば、純水)に、カーボンブラック等のカーボン粒子を添加し、適当な分散装置、例えば、超音波分散機、ジェットミル、ビーズミル等で、平均粒径250〜600μmまで分散してカーボン粒子の分散液を調製する。これは、カーボン粒子は、2次凝集して塊状化しているため、分散装置を用いて、適当な大きさになるまで微粒化する。界面活性剤を用いた場合には、該界面活性剤を表面に吸着させてより安定な分散液を得ることができる点で優れている。
次に、上記により得られたカーボン粒子の分散液に、市販の撥水材粒子ディスパージョン(例えば、PTFEディスパージョン)を必要量添加、混合し、適当な撹拌装置、例えば、攪拌機等で過度の応力が掛からないように緩やかに撹拌することで、カーボン粒子及び撥水材(粒子)を分散させた分散液を調製する。最適な界面活性剤を用いた分散液は過度の剪断応力をかけない限り安定である。例えば、通常の攪拌、震とう、超音波照射等では撥水材粒子が凝集フィブリル化することはない。
ここで、撥水材粒子ディスパージョンを用いたのは、撥水材粒子の撥水作用により、撥水材粒子を単独で添加したのでは、溶媒中、特に水中に分散させるのが不可能なためである。かかる撥水材粒子ディスパージョンとしては、ダイキン工業株式会社、旭硝子株式会社、三井フロロケミカル株式会社等で市販されているものを容易に入手できる。
(ii)液滴生成・脱溶媒工程
本工程では、前記(i)の工程で得られた分散液を、気相空間で液滴状とし、そのまま脱溶媒するものである。これは、前記分散液を固形化して焼結するまでに剪断応力をかけると撥水材粒子が凝集フィブリル化してしまうので液体状態から応力が加わらない固形化方法で固形化するのが望ましいためである。
(a)液滴化装置
ここで、上記分散液を液滴状とするには、適当なスプレー(噴霧装置)、例えば、噴霧をインクジェット、バブルジェット方式で行うことにより均一な粒径の液滴が得られる。また、回転ディスク方式でも良い。これらに何ら制限されるものではない。
(b)液滴の平均粒径
上記液滴状としたもの(単に液滴ともいう)の粒径としては、該液滴を脱溶媒(乾燥)後の微粒子(固形物=多孔質複合材)を、更に焼成して得られる多孔質複合材が、既に説明した多孔質複合材の平均粒径の範囲となるように調整すればよい。具体的には、当該液滴の平均粒径は、液滴内の固形分量などによっても異なるが、1〜50μm、好ましくは5〜10μmとなるように、スプレー圧力を調整すればよい。
(c)脱溶媒装置
次に、上記液滴を、そのまま脱溶媒するには、適当な乾燥装置、例えば、真空(減圧)乾燥機、真空(減圧)・加熱乾燥機、加熱乾燥機、遠心分離+加熱乾燥装置などを用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
(d)脱溶媒条件
かかる脱溶媒条件としては、用いる溶媒の種類や、液滴サイズや液滴中の溶媒含有比率によっても異なるため、一義的に規定するのは困難である。通常、所定温度に加熱された気相空間の上部入口からスプレーされて生成した液滴が、気相空間内部を通過(落下)して下部出口から排出されるまでに脱溶媒(乾燥)されるように、当該気相空間の上部入口〜下部出口までの液滴の移動距離に応じて、気相空間内部の温度(溶媒の気化熱などにより入口と出口とでは気相空間温度が変るため、気相空間加熱用の設けられた加熱ヒーターの温度を制御するようにしてもよいし、後述する実施例のように入口温度と出口温度を制御してもよい)及びスプレー圧力(液滴サイズ及び落下速度=気相空間内部の通過時間)を決定すればよい。ただし、上記脱溶媒段階でも、剪断応力を加えずに、脱溶媒される液滴中の撥水材粒子がフィブリル化を起こさない脱溶媒条件とすることが重要である。かかる観点から、脱溶媒条件としては、気相空間内部の温度150〜250℃で、気相空間出口の液滴の温度が90〜110℃程度となるようにスプレー圧を決定するのが望ましいといえる。
(e)液滴化+脱溶媒装置
本工程では、例えば、上記噴霧乾燥(液滴化+脱溶媒)をスプレードライヤー、ヤマト科学製、ADL310の1つの装置を用いて行うことができる。
上記スプレードライヤー内面には、乾燥(脱溶媒)段階で熱的、化学的に安定な材質であって、脱溶媒過程の液滴が付着しにくく、付着しても脱溶媒(固形化)されることですぐに剥離し得る材質を用いるのが望ましく、例えば、硝子製などを好適に利用することができる。
(f)本工程の好適な実施形態
本工程では、(スプレードライヤーを用いた)ドライスプレー(噴霧乾燥)にて前記分散液の気相空間での液滴生成と脱溶媒を行うことが望ましい。スプレードライヤーを用いたドライスプレーにて分散液の気相空間での液滴生成と脱溶媒を行うことで、所望のサイズの丸い粒の粉(球形粒子)の形成を容易におこなうことができる点で優れている。即ち、スプレードライヤーは、原液(ここでは分散液)をスプレー=霧状に微粒化して、ドライ=乾燥させる装置であり、一塊だった原液を霧状に微粒化してバラバラにすると、その表面積が著しく増大し、ここに乾燥用の熱風を吹付けると全体に素早くいきわたり、非常に短時間に乾燥=脱溶媒することができる。この際、霧状になった瞬間に一粒一粒(=液滴)は、それ自身の表面張力(=丸くなろうとする力)で丸い粒=球形になり、そのまま溶媒だけがなくなるので、得られる粉も丸いものができることになるものである。また、他の方法では作ることが難しい、数μm〜数百μmの範囲のサイズの球形粒子も作製可能であり、粒子サイズのバラツキが小さく(粒度分布が狭い)、多孔質の球形粒子を作製することができる。
(f)本工程の代表的な実施形態
本工程の代表的な実施形態としては、まず、前記工程で得られた分散液を、スプレードライヤー内(入口温度150〜200℃、出口温度90〜110℃に調整された気相空間)でスプレー圧力1〜3kg/cmにて噴霧して液滴状とし、そのまま脱溶媒(乾燥)する。言い換えれば、上記温度に調整されたスプレードライヤー内に上記スプレー圧力にてドライスプレー(噴霧乾燥)することで、当該気相空間内で液滴生成と脱溶媒(乾燥=固形化)を行うことができる。これにより、粒径1〜50μm、好ましくは5〜10μmの球形の多孔質微粒子を得ることができる。この段階での球形の多孔質微粒子は、まだ適度につぶれやすい粒子構造となっている。本発明では、上記製造方法に何ら制限されるものではなく、他の液滴生成・脱溶媒用の装置(一の装置でなくともよく、例えば、液滴生成用の装置と、脱溶媒用の装置とを組み合わせて用いてもよい。)を用いて、液体状態から撥水材に応力が加わらない固形化方法で固形化することもできる。
(iii)焼成(焼結)工程
本工程では、前記(ii)の工程で得られた多孔質微粒子を、該多孔質微粒子中の撥水材の融点以上で焼成(焼結)するものである。これにより、多孔質微粒子中のカーボン粒子と撥水材が強固に結着した多孔質複合材を得ることができる。
(a)焼成条件
上記焼成条件としては、撥水材の融点以上、好ましくは撥水材の融点より5〜50℃高い温度域で0.5〜3時間焼成することで、多孔質複合材10が得られる。なお、焼成温度までの昇温速度は、10〜200℃/分、好ましくは50〜150℃/分の範囲で行うのが望ましい。また、焼成時の雰囲気条件としては、大気(空気)雰囲気、窒素雰囲気などの不活性ガス雰囲気などで行うことができる。経済的観点からは、大気(空気)雰囲気下で行うのが望ましい。焼成時の圧力条件としては、特に制限されるものではなく、大気圧下(常圧下)、減圧下、加圧下のいずれで行ってもよい。経済的観点からは、大気圧下(常圧下)で行うのが望ましい。
(b)焼成装置
本工程では、電気炉などの焼成(焼結)装置を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
(c)本工程の代表的な実施形態
本工程の代表的な実施形態としては、前記(ii)の工程で得られた多孔質微粒子を電気炉などの焼成(焼結)装置を用いて、10〜200℃/分で撥水材の融点より5〜50℃高い所定の温度まで昇温した後、当該所定温度にて0.5〜3時間焼成することで、多孔質複合材10の微粒子を得る。得られた多孔質複合材10の微粒子は焼成前とほぼ同じ形状、サイズであった。この多孔質複合材10は固く容易に変形せず、撥水性、導電性で焼成により界面活性剤が除去され、カーボン粒子(カーボンブラック)と撥水材(PTFE)が強固に結着した球形の多孔質複合材10の微粒子が得られる。すなわち、工程(i)で得られた分散液を気相空間で固形化して焼結するまでに剪断応力がほとんどかからないのでカーボン粒子(カーボンブラック)と撥水材(PTFE)はかなり均一分散しており、焼成(焼結)時もその状態が保たれたと言える。多孔質複合材10の粒径は工程(ii)の噴霧乾燥条件で変えることが出来る。噴霧(スプレー)をインクジェット方式、バブルジェット方式で行うとより均一な粒径が得られる。また、回転ディスク方式で行っても良い。
(III)燃料電池
次に、本発明に係る燃料電池は、上述してなる本発明の多孔質複合材を、該多孔質複合材中の撥水材の融点以上でホットプレスして形成されたGDL(2層構造の場合、基材/MIL)を備えたものであれば良く、更に、本発明の多孔質複合材、電極触媒(例えば、金属担持カーボン)および電解質(例えば、イオン交換樹脂)を用いて構成された燃料電池電極触媒層(単に触媒層ともいう)を備えていることがより望ましいものである。また、本発明のGDL(2層構造の場合、基材/MIL)および本発明の触媒層の少なくとも1つを構成部材としていることを特徴とする燃料電池用電極を備えていることが望ましい。燃料電池用電極は、電極触媒層とGDL(2層構造の場合、基材/MIL)で構成される。また、本発明の燃料電池用電極と電解質膜とを接合してなるMEAを備えていることが望ましい。
以下、図面を用いて本発明で用いられうる燃料電池について説明する。図2は、本発明の構成を有するGDL、更には触媒層を使用した燃料電池の基本構成(単セル構成)を模式的に表した断面概略図である。本発明はこれに限定されない。図3Aは、本発明のGDLを使用したMEAの基本構成を模式的に表した断面概略図である。図3Bは、図3AのGDLを構成する多孔質複合材及び多孔質複合材同士の間に形成される比較的大きな細孔(大径貫通孔)の様子が分かるように、GDLの一部を拡大して模式的に表した概略図である。図3Cは、本発明の多孔質複合材を用いて板状の形態に成形されたMIL(詳しくは多孔質複合材中の撥水材の融点以上で多孔質複合材をホットプレスして形成されたMIL)と、GDL基材(カーボン繊維焼結多孔シート)とを積層してなる2層構造のGDLを使用したMEAの基本構成を模式的に表した断面概略図である。
図2において燃料電池(単セル)20は、電解質膜21の両側に、アノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bとがそれぞれ対向して配置されている。さらにアノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bの両側(外側)に、アノード側GDL23aおよびカソード側GDL23bとがそれぞれ対向して配置され、MEA24を構成している。この各GDL23a、23bの両側(外側)にアノード及びカソードパレータ25a、25bが配置されている。該セパレータ25a、25bの内部にはガス流路(溝)26a、26bが設けられている。このガス流路(溝)26a、26bを通じて、水素含有ガス(例えば、Hガスなど)及び酸素含有ガス(例えば、Airなど)がアノード側及びカソード側のGDL23a、23bを通して触媒層22a、22bにそれぞれ供給される。さらに、ガスが外部へ漏洩することを防止するために、電解質膜21の外周領域とセパレータ25a、25bとの間にガスケット27がそれぞれ配置されている。
以下、本発明の特徴部分である多孔質複合材を用いてなるGDL、触媒層、更にこれらを用いてなる固体高分子形用燃料電池(MEA)につき、構成要件ごとに説明する。
(1)GDL23
図2、3Aに示すように、GDL23を触媒層22に隣接するように配置することにより、触媒層22と均一に電子の授受を行うとともに、均一に反応ガスを供給できる。詳しくは、カソード側GDL23bでは、酸化剤ガスを連続的に供給することができ、カソード側の化学反応をスムーズに行うことができ、さらに、化学反応により発生した水を分散させて触媒活性の低下を防止させることができる。アノード側GDL23aでは、水素含有ガスを連続的に供給することができ、アノード側の化学反応をスムーズに行うことができる。GDL23は、アノード側及びカソード側の両方に配置してもよいし、アノード側またはカソード側のどちらか片面にのみ配置してもよい。好ましくは、図2、3Aにあるように、アノード側及びカソード側の両方に配置するのが望ましい。
本発明のGDL23においては、図1及び図3Bに示すように、多孔質複合材10を用いて構成されたものであって、本発明の多孔質複合材10を、該多孔質複合材10中の撥水材12の融点以上でホットプレスして製造されたものである。そして、多孔質複合材10同士の間に細孔(大径貫通孔)30が形成されている。この細孔30の平均孔径は、図1で示す多孔質複合材10中の細孔(小径貫通孔)13の孔径よりも大きな構造を持つ。そのため、このような大小2つの細孔(貫通孔)30、13を持つことにより、液水を比較的大きな細孔(貫通孔)30を通じて速やかに給液水・排液水することができる。また、ガスについては、液水が排液水または給液水中で比較的大きな細孔(貫通孔)30内部を通過中であっても、多孔質複合材10内部に存在する細孔径の分布幅が1000nm以上である無数の比較的小さな細孔(貫通孔)13を通じてガス拡散(透過)させることができる。そのため、給・排液水によりガス拡散経路(貫通孔)が塞がれにくい構造とすることができる。その結果、ガスの拡散が飛躍的に増大するので、当該GDL23を用いた燃料電池20の性能を格段に向上させることができる。また、本発明のGDL23は、多孔質複合材10を撥水材12の融点以上でホットプレスを行って得られているため緻密かつ非常に強固で安定なため、大小いずれの細孔(貫通孔)30、13も潰れにくい構造となっている。そのため、本発明のGDL23では、該GDL23を燃料電池(の単位セル)20に組み込んだ場合の高加圧状態で長期にわたり変形しないので燃料電池の耐久性を大幅に向上することができる点も優れている。
GDL23は、ホットプレスによる成形体であり、多孔質複合材10を加温、加圧下でホットプレス成形時に、個々の多孔質複合材10表面にある撥水材12が溶融しバインダとして作用し、多孔質複合材10同士が、相互に接合(結着)した構造となっている(図3Bの撥水材12による結着部31参照のこと)。なお、ホットプレス成形時にせん断応力が加えられても、撥水材(粒子)12の集合体が形成されていないので多孔質複合材10は非常に強固で変形しにくい。そして、個々の多孔質複合材10同士の間に生じる隙間が無数(多数)の細孔(大径貫通孔)30を形成している。即ち、GDL23は大小2つの細孔30、13を持つ多孔質の成形体となっている。かかる多孔質複合材10間の細孔30の孔径は、細孔13よりも大きく、水分及びガス透過し得るサイズの細孔領域を形成することができるのが望ましいものである。
上記したように、本発明のGDL23は、硬い緻密な多孔質複合材10同士が適度な隙間(大径貫通孔)30を持って連なった構造を有している。図9は、本発明のGDLを構成する多孔質複合材同士の連なりの様子を表したGDLの表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図10は、本発明のGDLを構成する多孔質複合材同士の連なりの様子を表したGDLの切断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
本発明のGDL23では、1つの多孔質複合材がこの多孔質複合材に最近接している隣の多孔質複合材と相互に接合(結着)した構造を有していることが望ましい(図3B、図10参照のこと)。これら多孔質複合材間の相互接合(結着)の様子は、図9、10に示すように、個々の(球形の)多孔質複合材がほとんどつぶれることなく結着されており、該(球形の)多孔質複合材間に適度な隙間を持ちつつ連なって接合した構造を有している。
本発明のGDLは、撥水材12がフィブリル化しないように、せんだん応力がかからないようにして形成された多孔質複合材10をホットプレスして製造したのは、第1に、撥水材12をフィブリル化させることなく、カーボン粒子同士、更には多孔質複合材同士を結着させるバインダ機能及び撥水機能を有効に発現させることができるためである。これにより、カーボン繊維によるようなGDL材料による電極間の突き抜けの問題が生じにくく、ガス拡散に適した構成とすることができる。第2に、多孔質複合材10は、焼結体であるため緻密かつ非常に強固で安定なため、大小いずれの細孔30、13も潰れにくい構造を実現することができるためである。これにより、かかる構造のGDLを燃料電池に組み込んだ場合に、当該GDLは高加圧状態で長期にわたり変形しないので燃料電池の耐久性を大幅に向上するのに貢献することができる。
また、本発明のGDL23では、大小2つの細孔30、13を持つことで、水を主に細孔30を通じて速やかに給水・排水することができ、ガスについては、水が排水または給水中で比較的大きな細孔(貫通孔)30内部を通過中であっても、多孔質複合材内部に存在する無数の比較的小さな細孔(貫通孔)13を通じてガス拡散(透過)させることができるように、それぞれ違った働きを持つように設計されていることが望ましい。
かかる観点から、本発明のGDL23では、細孔径が100nm以下と、200nm以上の細孔を多数有することが好ましい。より好ましくは、細孔径が100nm以下の細孔と、細孔径が0.5μm以上、特に0.5〜1μmの細孔とを多数有するものである。
GDL23中の細孔径が100nm以下の多数の細孔は、200nm以上、好ましくは0.5μm以上の細孔内部を液水が通過中で塞がっていても、主として多孔質複合材内部に存在する細孔径が100nm以下の多数の細孔を通じて容易にガス拡散(透過)させることができる。細孔径100nm以下の細孔の下限に関しては特に制限が無い。なお、水分透過性は、当該細孔の孔径の大きさに加え、撥水材による撥水作用により、細孔径100nm以下の小細孔の入口表面で水が弾かれて、小細孔内部に浸入しにくい構造となっている。そのため、当該小細孔の孔径に関しては、撥水作用も考慮して、最適なガス透過性となる小細孔の孔径を決定するのが望ましい。上記細孔の平均孔径が100nm以下であれば、液水は容易に進入できないほか、緻密で強固な粒子構造を保持した上で、液水不透過でかつガス透過し得るサイズの細孔領域を形成することができる。
GDL23中の細孔径が200nm以上の多数の細孔は、ガス拡散(透過)に用いられるほか、液水を速やかに給水・排水することのできる液水流路として利用させることができる。細孔径200nmμm以上の細孔の上限に関しては特に制限が無いが、細孔径10μm以下であれば、シートの取り扱い性が容易であり、水分及びガス透過し得るサイズの細孔領域を形成し、高いガス拡散性を発現することができる。
なお、本発明のGDLでは、上記多孔質複合材以外に、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、他の構成部材を適量含有していても良い。具体的には、多孔質複合材に、更に他の導電性材料を混入した混合物を、該混合物中の撥水材の融点以上でホットプレスして製造されるものであってもよい。
上記他の導電性材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、球状活性炭、球状黒鉛などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
ここで、多孔質複合材10と任意の構成部材であるカーボンナノチューブ等の導電性材料との混合比率は、多孔質複合材100質量部に対し、カーボンナノチューブ等の導電性材料が2〜25質量部、好ましくは5〜15質量部の範囲が望ましい。多孔質複合材100質量部に対しカーボンナノチューブ等の導電性材料の配合量が2質量部以上であれば、カーボンナノチューブ等の添加によって導電性の向上が見られる。一方、多孔質複合材100質量部に対しカーボンナノチューブ等の導電性材料の配合量が25質量部以下であれば、カーボンナノチューブ等による電解質膜への突き刺さりなどの問題もなく、成膜性を損なわないものである。
(d)導電性材料であるカーボンナノチューブの長さ、断面直径
上記カーボンナノチューブの長さは、1〜20μm、好ましくは5〜15μmの範囲である。長さが1μm以上であれば導電性が増し、長さが20μm以下であれば分散性も良好である。GDL23を製造する際に、該カーボンナノチューブ等が多孔質複合材10同士を数珠状ないし網目状につないだ状態となることなく、カーボンナノチューブ等がGDL表面から突き出すことなく、成膜することができる。またカーボンナノチューブのチューブ直径(断面直径)は150〜10nm、好ましくは100〜20nmの範囲である。
本発明におけるGDL23a、23bの厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましい。従って、所望の特性を有するMEA(燃料電池)が得られるように適宜決定すればよい。具体的には、GDL23a、23bの厚さは、それぞれ30〜500μmが好ましく、より好ましくは100〜200μmである。GDLの厚さが30μm以上であると取り扱い性に優れ、所望する電極出力を十分に確保することができる点で好ましく、500μm以下であれば必要な燃料ガスの供給が可能である。
本発明のGDL23の物性は、上記他の導電性材料の有無によっても異なるが、引っ張り強度が20kgf/cm以上、好ましくは20〜40kgf/cmであり、破断変形率が20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5〜10%の範囲であるのが望ましい。GDL23の引っ張り強度が20kgf/cm以上であれば、GDL23が燃料電池内で加温、加圧状態におかれても細孔13、30が潰れにくい。GDL23の破断変形率が20%以下であれば、GDLの形状安定性に優れ、取り扱い性に優れる。GDLの引っ張り強度は、島津製作所製の引っ張り試験器により測定することができる。GDLの破断変形率は、島津製作所製の引っ張り試験器により測定することができる。
次に、本発明のGDLの製造方法につき、説明する。
本発明のGDLの製造方法としては、多孔質複合材または多孔質複合材に他の導電性材料を混入した混合物を、該多孔質複合材または混合物中の撥水材の融点以上でホットプレスして製造されたものであればよい。
(1)GDLの製造方法の代表的な実施形態(製法1)について
本発明のGDLの製造方法の代表的な実施形態(製法1と称する)としては、上記多孔質複合材または上記混合物を溶剤に分散させて分散液(再インク)を形成し(分散液調整工程ともいう)、該分散液を適当な基材に塗布し、乾燥後ホットプレスして成膜し、前記基材と分離してGDLを得るものである(GDL成膜工程ともいう)。
(i)分散液調整工程(再インク化工程ともいう)
本工程では、上記多孔質複合材または上記混合物を、溶剤に分散させて分散液を形成する(再インク化する)。
ここで、上記溶剤としては、多孔質複合材または上記混合物を分散、好ましくは均一に高分散させることができるものであればよく、特に制限されるものではない。該溶剤としては、例えば、ソルベントナフサ;デカン、ドデカンなどのアルカン炭化水素(C2n+2:ここでn=10〜16である。);などを用いることができる。また、これら溶剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。好ましくは、撥水性の高い多孔質複合材を容易に分散できることから、アルカン炭化水素(C2n+2;ここで、n=10〜16)およびこれらを含む溶剤よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種の溶剤が望ましいものである。具体的には、デカンおよび/またはドデカンなどが挙げられる。
また、上記分散液(再インク)には、本発明の作用効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、造孔剤などの各種添加剤を適宜、適量用いても良い。
上記造孔剤は、次工程のホットプレスによりガス化し、GDL成膜内部の多孔質複合材同士、更には他の導電性材料間に形成される細孔(大径貫通孔)の径と数(空孔率)を制御する目的で用いられるものである。特に、造孔剤の添加量や粒径を揃えることなどにより、比較的簡単に孔径サイズのそろった比較的大きな細孔(大径貫通孔)を作ることができる。これにより、設計どおりの孔径と分布を得ることができる点で優れている。
上記造孔剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、NaClなどの塩の粒子、銅、亜鉛などの金属粒子を用いることができる。ただし、本発明では、これらに何ら制限されるものではない。また、これら造孔剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。なお、造孔剤に金属粒子を用いる場合には、例えば、次工程のホットプレスの際に、外部からの磁力作用などを利用して該金属粒子をGDLから外部に取り出すことで、GDL成膜内部の多孔質複合材同士、更には他の導電性材料間に形成される細孔(大径貫通孔)の径(空孔率)と数を制御するようにしてもよい。
上記造孔剤の大きさは、目的とする大径貫通孔の孔径が得られるように適宜調整すればよく、1〜50μm、好ましくは5〜30μmの範囲である。
上記造孔剤の配合量としては、分散液(インク)全量に対して5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%の範囲である。造孔剤の配合量が25質量%を超えると、強度が低下し、比抵抗が増加するものである。一方、造孔剤の配合量が5質量%未満の場合には、効果が少ないものである。
本工程では、まず、溶剤に、多孔質複合材または上記混合物を添加し、さらに必要に応じて造孔剤などの添加剤を加え、適当な撹拌装置で混合して分散液(再インク)を調製する。
なお、造孔剤などの添加剤は、予め溶剤に添加し、混合分散させた後に(撹拌しながら)、多孔質複合材または上記混合物を添加し、分散させてもよいなど、特に制限されるものではない。
(ii)GDL成膜工程
本工程では、前記分散液(再インク)を基材に塗布し、乾燥後ホットプレスして成膜し、前記基材と分離してGDLを得るものである。
本工程では、前記分散液(再インク)を適当な基材に、適当な方法にて塗布し、乾燥し、ホットプレスしてGDL23を成膜する。これを、基材から適当な方法で分離(基材剥離)することで、シート状のGDL23を得ることができる。
ここで、基材には、乾燥、ホットプレス段階で熱的、機械的、化学的に安定なものであればよく、例えば、Al箔、カラス板、ステンレス板などを用いることができる。好ましくは、GDLを基材から剥離するのが容易なように剥離性に優れたものが望ましく、例えば、Al箔などを好適に利用することができる。
ここで、前記分散液(再インク)を基材に塗布する方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の各種塗布方法を利用することができるものである。具体的には、例えば、ダイコーターなどを用いて塗布することができる。本塗布段階では、既に焼成後であるため撥水材のフィブリル化は起こらないので、特にせん断応力などに留意することなく、最適な塗布方法を適用すればよい。したがって、スプレーなどの塗布方法なども利用可能である。
上記乾燥条件としては、50〜150℃で1〜6時間程度であればよい。乾燥温度までの昇温速度は、10〜100℃/分、好ましくは20〜50℃/分の範囲で行うのが望ましい。本乾燥段階では、既に焼成後であるため撥水材のフィブリル化は起こらないので、特にせん断応力などに留意することなく、最適な乾燥方法を適用すればよい。したがって、減圧乾燥や真空乾燥なども利用可能である。
ホットプレス条件としては、撥水材の融点以上、好ましくは撥水材の融点より5〜70℃高い加熱温度で、圧力10kg/cm以上、好ましくは10〜50kg/cmで、5秒間〜5分間、好ましくは30秒間〜2分間ホットプレスすることで、GDLを成膜することができる。GDLの厚さは、既に説明したとおりである。
該GDLを基材から剥離することでシート状のGDL23を得ることができる。上記再インク化した製法により得られたGDL23でも、再インク化することなくホットプレスして製造したものと同様に、細孔径0.1μmから5μm以上の貫通孔(細孔)が無数に形成されている。即ち、上記再インク化した製法により得られたGDL23にも、多孔質複合材10中に存在する比較的小径の貫通孔(平均細孔径0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下)と、多孔質複合材間に存在する比較的大径の貫通孔(平均細孔径0.5μm以上、好ましくは5μm以上)とが無数に形成されている。これは、ホットプレスをしても大きな径の貫通孔が残っており、この多孔質複合材10は変形しづらいことが分かる。これらのことから、本製法1により得られたGDL23のガス透過能は、細孔径が5μm以上の大きな細孔があるので、従来のガス拡散層(後述する比較例の製法で得られたもの)に比べ、10倍以上、好ましくは20〜50倍を有する。また、本製法1により得られたGDL23では、引っ張り強度が20kgf/cm以上、好ましくは20〜40kgf/cm、比抵抗が0.25Ωcm以下、好ましくは0.2Ωcm以下を有するものを得ることができる。なお、一般のスプレードライでは作製された多孔質複合材の粒径は1〜50μmと広く分布している。そのため、分級により多孔質複合材の粒径を揃えて使用するのが望ましい。これにより、大きな径の貫通孔(細孔30)の粒径分布を所望の範囲に調整することができる点で優れている。即ち、多孔質複合材の粒径が広く分布している場合には、大きな多孔質複合材同士の隙間に小さな多孔質複合材が入り込んで隙間(細孔)を狭めることになる。そのため、得られる貫通孔(細孔30)の孔径が小さくなる傾向にある。一方、粒径を揃っている場合には、多孔質複合材同士の隙間に更に同程度の粒径を持つ多孔質複合材が入り込むことはなく、液水の透過に適した比較的大きな貫通孔(細孔30)を保持させることができる点で優れている。但し、前者の場合であっても、異なる粒径の多孔質複合材を適当に組み合わせることで、ガス拡散と水分透過の双方に適した複数の細孔をうまく形成させることも可能である。そのため、本発明では、こうした粒径が広く分布している多孔質複合材の使用を何ら排除するものではない。
(2)GDLの製造方法の代表的な他の実施形態(製法2)について
本発明のGDLの製造方法の代表的な他の実施形態(製法2と称する)としては、多孔質複合材または多孔質複合材に他の導電性材料を混入した混合物を、金型(ジグ)に充填してホットプレスすることでGDLを得る(GDL作製工程)ものである。
(i)GDL作製工程
本製法1では、必要に応じて一定粒径以下、例えば、150μm以下(平均粒径120μm程度)に分級した多孔質複合材に、更に必要に応じて、他の導電性材料や造孔剤などの各種添加剤を適宜、適量加えて均一に混合したものを、適当な金型(治具)に入れ、ホットプレスしてGDLを作製するものである。
より詳しくは、多孔質複合材または多孔質複合材に他の導電性材料を混入した混合物を、所定の形状の金型(ジグ)に充填し、ホットプレスすることで、多孔質複合材、更には他の導電性材料(カーボンナノチューブ等)を相互に結着してシート状に成膜することでGDLを得るものである。かかる製造方法により、製造工数が少なく、所望の形状(大きさ及び厚さ)、例えば、10〜200μm程度の、厚みムラの少ないGDLを作製することが出来る点で優れている。また、製法1のように再インク化する必要もないので、溶剤を用いない為、溶剤回収設備など環境対策が容易である点でも優れている。
上記造孔剤などの添加剤については、製法1と同様である。
また、適当な金型(治具)としては、特に制限されるものではなく、従来公知のホットプレス用金型を利用することができる。
ホットプレス条件としては、該多孔質複合材または混合物中の撥水材の融点以上、好ましくは撥水材の融点より5〜20℃高い加熱温度で、圧力10kg/cm以上、好ましくは20〜150kg/cmで、0.5〜3分間、好ましくは1〜2分間ホットプレスすることで、GDLを作製することができる。
即ち、上記多孔質複合材または上記混合物を、上記条件にてホットプレスする製法を用いることにより、多孔質複合材同士、更には他の導電性材料を含め、これらを相互に結着して所望のシート状に成形(成膜)することができる(図5、9、10、12参照のこと)。このシートはガス透過性、導電性に優れGDL23として使用できることができる。このことから撥水材12の融点以上では多孔質複合材10の表面に顔を出している撥水材(粒子)12同士が結着できることが分かる(図5、9、10、12などで確認することもできる。)。
また、本製法2により得られたGDL23には、細孔径0.1μmから5μm以上の貫通孔(細孔)が無数に形成されている(図5、6、9参照のこと)。これは、ホットプレスをしても大きな径の貫通孔が残っており、この多孔質複合材10は変形しづらいことが分かる。これらのことから、本製法2により得られたGDL23のガス透過能は、細孔径が5μm以上の大きな細孔があるので、従来のガス拡散層(後述する比較例の製法で得られたもの)に比べ、10倍以上、好ましくは20〜50倍を有する。また、本製法2により得られたGDL23では、引っ張り強度が20kgf/cm以上、好ましくは20〜40kgf/cm、比抵抗が0.25Ωcm以下、好ましくは0.2Ωcm以下を有するものを得ることができる。なお、一般のスプレードライでは作製された多孔質複合材の粒径は1〜50μmと広く分布している。そのため、分級により多孔質複合材の粒径を揃えて使用するのが望ましい。これにより、大きな径の貫通孔(細孔30)の粒径分布を所望の範囲に調整することができる点で優れている。即ち、多孔質複合材の粒径が広く分布している場合には、大きな多孔質複合材同士の隙間に小さな多孔質複合材が入り込んで隙間(細孔)を狭めることになる。そのため、得られる貫通孔(細孔30)の孔径が小さくなる傾向にある。一方、粒径を揃っている場合には、多孔質複合材同士の隙間に更に同程度の粒径を持つ多孔質複合材が入り込むことはなく、液水の透過に適した比較的大きな貫通孔(細孔30)を保持させることができる点で優れている。但し、前者の場合であっても、異なる粒径の多孔質複合材を適当に組み合わせることで、ガス拡散と水分透過の双方に適した複数の細孔をうまく形成させることも可能である。そのため、本発明では、こうした粒径が広く分布している多孔質複合材の使用を何ら排除するものではない。
また、GDLの構成および厚さは、既に説明したとおりである。
さらに、GDLの物性に関しても、製法1で説明したと同様である。
なお、本発明のGDLの上記製法1、2においては、ホットプレスにおいて、インプリント技術、特に、本発明に適したナノインプリント技術を用いて、多孔質複合材同士間に形成される細孔の径と数(空孔率)を制御するようにしてもよい。すなわち、ホットメルトに用いる金型やモールドにインプリント技術により、所望大径貫通孔(大径貫通孔の孔径及び数及び配列)に対応する凹凸パターンを形成しておくことで、ホットメルト時に型押し、所望のパターンをGDL膜に転写することで、多孔質複合材同士間に形成される細孔の径と数を制御することができるものである。
以上が、本発明のGDLに関する説明である。但し、本発明では、図3Cに示すように、GDL23a、23bをそれぞれ基材232a、232bとカーボン粒子層(以下、単にMILともいう)231a、231bとからなる2層構造としてもよい。この場合、通常は、導電性及び多孔質性を有するシート状材料の基材232a、232b上に、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるMIL231a、231bを有する構成とするものである。
本発明では、上記した本発明に係るGDL23a、23bの構成を、基材232a、232bとMIL231a、231bのいずれに適用してもよいが、好ましくは下記(a)のようにMIL231a、231bに本発明に係るGDLの構成(図1、図3B参照)を適用するのが望ましい。即ち、本発明に係るMIL231a、231bと、カーボン繊維焼結多孔シート等の基材232a、232bとを積層してなる構成とするのが望ましい。
GDLを基材とMILの2層に分けて用いる場合でも、本発明の作用効果を十分に奏することができるものである。特に下記(a)では、従来、薄く高精度のMILを作成するのは困難であり、また従来のMILの構成としては、従来技術で説明したようにカーボンブラック粒子とPTFE粒子で構成されており、従来技術で説明したと同様の課題を有するものであった。本発明では、当該MIL231a、231bの構成に、上述した本発明に係るGDLの構成(図1、図3B参照)を適用することで、薄く高精度のMILを作製することができ、なおかつ、従来技術で説明したと同様の課題を解決することができるものである。
即ち、GDLを基材とMILの2層に分けて用いる場合には、(a)既存の基材+本発明のGDLの構成を有するMIL、または(b)本発明のGDLの構成を有する基材+既存のMIL、の組み合わせのいずれでもよい。なお、基材とMILの双方に本発明のGDLの構成する場合には、2つに分けることなく、1つのGDLとして適用すればよいことになり、既に本発明に係るGDLとして上述した通りである。
上記(a)での既存の基材としては、特に制限されるものではなく、公知のものが同様にして使用でき、例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とするものなどが挙げられる。前記基材232a、232bの厚さは、それぞれMIL231a、231bを加えたGDL23a、23bの全体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、50〜500μm、好ましくは100〜200μmとするのが望ましい。厚さが、50μm未満であると十分な機械的強度などが得られない恐れがあり、500μmを超えるとガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
前記基材232a、232bは、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、前記基材に撥水剤を含ませることが好ましい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
上記(a)でのMIL231a、231bに関しては、上記した本発明のGDL23a、23bの構成が適用できるため、ここでの説明は省略する。
ただし、上記(a)でのMIL231a、231bの厚さも、それぞれ上記既存の基材232a、232bを加えたGDL23a、23bの全体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、10〜100μm、好ましくは20〜50μmとすればよい。厚さが、10μm未満であると、取り扱い性が困難であるほか、十分な機械的強度などが得られない恐れがあり、100μmを超えると、ガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
次に、上記(b)でのMIL231a、231bに関しては、上記した本発明のGDL23a、23bの構成が適用できるため、ここでの説明は省略する。
上記(b)での既存のMIL1231a、231bとしては、撥水性をより向上させるために、本発明のGDLの構成を適用した基材上に、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなる既存のMILを用いてもよい。
上記(b)のMIL231a、231bに用いられるカーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。前記カーボン粒子の平均粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
上記(b)のMIL231a、231bに用いられる撥水剤としては、上記(a)の既存の基材232a、232bに用いられる上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
上記(b)のMIL231a、231bにおける、カーボン粒子と撥水剤との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られない恐れがあり、撥水剤が多過ぎると十分な電子伝導性が得られない恐れがある。これらを考慮して、当該MILにおけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、質量比で、90:10〜40:60程度とするのがよい。
上記(b)のMIL231a、231bの厚さは、それぞれ本発明のGDL23a、23bの構成を適用した基材を加えたGDL全体の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
上記(a)や(b)において、GDLの基材やMILに撥水剤を含有させる場合には、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。例えば、GDLに用いられる基材を撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。
上記(a)や(b)のGDLにおいて、転写用台紙上にMILを形成する場合には、カーボン粒子、撥水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調製し、前記スラリーを転写用台紙上に塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これを前記基材上に塗布する方法などを用いればよい。その後、マッフル炉や焼成炉を用いて250〜400℃程度で熱処理を施すのが好ましい。
(2)電解質膜21
本発明のMEA及びこれを用いた燃料電池に用いることのできる電解質膜21は、高いプロトン伝導性を有していればよい。高いプロトン伝導性を有する膜としては、−SOH基などのイオン交換基を有するモノマーの重合体または共重合体;またはイオン交換基を有するモノマーと他のモノマーとの重合体などの公知の材料からなる膜を用いることができる。かかる電解質膜21の材質としては、具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、または、ポリマー骨格にフッ素を含まない芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、などが挙げられる。
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、−SOH、−COOH、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH 等(R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基などが挙げられる。
前記フッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ポリサルホンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸系ポリマー、架橋ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルサルホンスルホン酸系ポリマー等が好適な一例として挙げられる。
電解質膜21の材質は、高いイオン交換能を有し、化学的耐久性・力学的耐久性、などに優れることから、前記フッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた電解質を用いるのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)などがより好ましく利用できる。
電解質膜21の膜厚は、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定することができるが、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。電解質膜の膜厚が5μm以上であると製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の点から好ましく、300μm以下であると燃料電池作動時の出力特性の点から好ましい。
なお、本発明では、燃料電池のアノード及びカソードの両電極間に介在される電解質成分を含有してなる構成部材を、電解質膜と称したが、決してその名称に拘泥されるものではなく、燃料電池に用いられる使用目的からみて、例えば、電解質層や電解質などと称される場合であっても、本発明でいう電解質膜に含まれる場合があることはいうまでもない。他の構成要件についても同様であり、その名称に拘泥されるものではなく、使用目的に照らしてその同一性を判断すればよい。
(3)触媒層22
本発明のMEA及びこれを用いた燃料電池に用いることのできるアノードおよびカソード触媒層22a、22bは、主として、導電性担体に触媒粒子が担持されてなる電極触媒(触媒物質)と、プロトン導電性を有する電解質(バインダないしアイオノマとも称する)とで構成されている。本発明の触媒層では、主として、本発明の多孔質複合材と電極触媒と電解質とで構成されているのが望ましい。触媒層の塗布液(触媒インク)に、この多孔質複合材を適量添加し、触媒層を作製すると触媒層内部に多孔質複合材が分散して存在する。この多孔質複合材内部には疎水性の細孔が空孔率で50%以上存在するので触媒層中のガス拡散が容易になり性能を向上させることができる。以下、これらの構成部材ごとに説明する。
(i)電極触媒
電極触媒は、触媒粒子が導電性担体に担持されてなるものである。
ここで、カソード触媒層に用いられる触媒粒子は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる触媒粒子もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる触媒粒子及びアノード触媒層に用いられる触媒粒子は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒粒子についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒粒子」と称する。しかしながら、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒粒子は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
触媒粒子の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒粒子と同様の形状及び大きさが使用できるが、触媒粒子は、粒状であることが好ましい。この際、触媒インクに用いられる触媒粒子の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、触媒インクに含まれる触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒径」は、X線回折における触媒粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒粒子の粒子径の平均値により測定することができる。
前記導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記導電性担体のBET比表面積は、触媒粒子を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が、20m/g以上であると前記導電性担体への触媒粒子および高分子電解質の分散性が向上し、十分な発電性能が得られる点で優れている。一方、1600m/g以下であると触媒粒子および高分子電解質の高い有効利用率を有効に保持することができる点で優れている。
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性担体に触媒粒子が担持された電極触媒において、触媒粒子の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%以下であると、触媒粒子の導電性担体上での優れた分散度を有効に保持することができ、担持量の増加に見合った発電性能の向上効果を有効に発現させることができる利点がある。また、前記担持量が、10質量%以上であると、単位質量あたりの触媒活性に優れ、担持量に応じた所望の発電性能を得ることができる。そのため、所望の電池性能を確保するための担持量設計が比較的容易になし得る点で優れている。なお、触媒粒子の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
また、導電性担体への触媒粒子の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
(ii)電解質
本発明のカソード触媒層/アノード触媒層(単に「触媒層」とも称する)には、電極触媒の他に、電解質が含まれる。前記電解質としては、特に限定されず、上記膜に用いたものと同様の高分子電解質が使用できる。前記膜に用いられる電解質と、各触媒層に用いられる電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各触媒層と膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。すなわち、前記電解質としては、特に限定されず公知のものを用いることができるが、少なくとも高いプロトン伝導性を有する部材であればよい。この際使用できる電解質は、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な一例として挙げられる。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
上記電解質と触媒担持体との質量比は、順に、0.6:1〜1:1が好ましく、より好ましくは0.7:1〜0.9:1である。触媒担持体質量に対して高分子電解質の質量比が0.6倍以上であると触媒層内の良好なイオン伝導性の点で好ましく、1倍以下であると触媒層内のガス拡散及び水の排出の点で好ましい。
(iii)多孔質複合材
多孔質複合材に関しては、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
該多孔質複合材の添加量は、触媒層の性能(主に電極触媒による発電性能)作用効果を損なうことなく、上記の如く触媒層中のガス拡散が容易になり性能を向上させることができる範囲内であればよく、特に制限されるものではない。具体的には、多孔質複合材の添加量は、触媒層全量に対して5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%の範囲である。多孔質複合材の添加量が5質量%以上であれば、触媒層中のガス拡散性能を向上させることができ、電池性能を向上させることができる。多孔質複合材の添加量が30質量%以下であれば、触媒層の性能を損なうことなく、多孔質複合材の添加による作用効果を発揮することができる。
(iv)他の添加剤
各触媒層、特に触媒担持体表面や高分子電解質には、さらに、撥水性高分子や、その他の各種添加剤が被覆ないし含まれていてもよい。撥水性高分子が含まれていることにより、得られる触媒層の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。撥水性高分子の混合量は、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適宜決定することができる。上述の撥水性高分子として例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、PTFE、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンもしくはこれらのモノマーの共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体など)などのフッ素系の高分子材料などを用いることができる。
本発明における触媒層の厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。触媒層の厚さが0.1μm以上であると所望する発電量が得られる点で好ましく、100μm以下であると高出力を維持できる点で好ましい。
(4)セパレータ25
アノード及びカソードセパレータ25a、25bとしては、カーボンペーパー、カーボンクロス、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。また、前記セパレータ25a、25bは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するために所望の形状に加工されたガス流路(溝)26a、26bが形成されているのが望ましく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータ25a、25bの厚さや大きさ、ガス流路溝26a、26bの形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
(5)ガスケット27
上記ガスケット27は、気体、特に酸素や水素ガスに対して不透過であればよいが、一般的には、ガス不透過材料からなるOリングなどの単一の不透過部により構成されていればよい。さらに、必要に応じて、電解質膜21や酸素極及び燃料極触媒層22a、22bのエッジとの接着を目的とする接着部を設けてなる、接着剤付きのガスシールテープ等のような複合的な構成としてもよい。Oリングやガスシールテープの不透過部を構成する材料は、設置後に所定の圧力がかかった状態で、酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限されない。
こうした不透過部を構成する材料のうち、Oリングを構成する材料としては、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
一方、ガスシールテープ等の不透過部を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが挙げられる。また、ガスシールテープ等の接着部を構成する材料としては、電解質膜21や酸素極及び燃料極触媒層22a、22bと、ガスケット27を密接に接着できるものであれば特に制限されないが、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤などが使用できる。
上記ガスケット27の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、電解質膜21上に、あるいは触媒層22のエッジを被覆しながら電解質膜21上に、上記接着剤を、5〜30μmの厚みになるように塗布した後、上記したようなガス不透過材料を10〜200μmの厚みになるように塗布し、これを25〜150℃で、10秒〜10分間加熱することによって硬化させる方法が使用できる。または、予め、ガス不透過材料をシート状に成形した後に、この不透過膜に接着剤を塗布して、ガスケット27を形成した後、これを電解質膜21上に、あるいはガスケット27の一部を被覆しながら電解質膜21上に、貼り合わせてもよい。この際、不透過部の厚みは、特に制限されないが、15〜40μmが好ましい。また、接着部の厚みは、特に制限されないが、10〜25μmが好ましい。
上記ガスケット27については、市販のものを購入して用いてもよい。ここでいう市販のものには、購入者側の仕様(寸法、形状、材料、特性など)に応じてメーカーが製造したような発注品ないし特注品等も含まれるものとする。
本発明のMEA24の構成を有する燃料電池において、触媒層22、GDL23、および電解質膜21の厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましいが、薄すぎると十分な電極出力が得られない。従って、所望の特性を有するMEA(燃料電池)が得られるように適宜決定すればよい。
また、本発明のMEA24および燃料電池(単位セル)20は、上記の電極触媒層22を内側、GDL23を外側とし、固体高分子電解質膜21を用い、該電解質膜21を両側から電極触媒層22で挟んで、適当にホットプレスすることによりMEA24を作製することができる。
かかるホットプレス条件としては、適当な温度、圧力を設定するのが望ましい。具体的には、130〜200℃、好ましくは140〜160℃に加温し、1MPa〜5MPa、好ましくは2MPa〜4MPaで1〜10分間、好ましくは3〜7分間、ホットプレスするのが望ましい。ホットプレス温度が130℃以上であれば(膜の軟化が見られ、接合が容易である。またホットプレス温度が200℃以下であれば、膜の分解が防げる。また、ホットプレス圧が1MPa以上であれば、接合が容易である。またホットプレス圧が5MPa以下であれば、膜の穴あきなどの不具合が防止できる。更にホットプレス時間が1分間以上であれば、接合が容易である。またホットプレス時間が10分間以下であれば、膜の穴あきなどの不具合が防止できる。また、ホットプレスの際の雰囲気は、MEAに影響を及ぼさない雰囲気で行うのが望ましく、窒素中などの雰囲気で行うのが望ましい。
また、本発明の燃料電池の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の製造技術を用いて組み立てることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例1
100gのカーボンブラック(1次粒子の平均粒径46nm)、960gの純水及び40gの非イオン界面活性剤Triton X−100を混合させ、ジェットミルでカーボンブラック粒子の2次粒子(1次粒子が凝集した粒状物)を平均粒径0.5μmまで分散した。このカーボンブラック分散液に40%相当のPTFEディスパージョン(PTFE粒子の平均粒径250nm、PTFE粒子60wt%相当)を添加混合し、13wt%固形分のカーボンブラックPTFE分散液を得た。このカーボンブラックPTFE分散液をスプレードライヤーでスプレー圧力1kg/cm、入り口温度200℃、出口温度90℃で噴霧乾燥し、液滴生成と脱溶媒を行うことで、粒径1〜40μmの球形の多孔質微粒子が得られた(図4参照のこと)。この微粒子を電熱焼結炉により360℃で2時間焼成して多孔質複合材を得た。
図4は、本実施例で得られた多孔質複合材のSEM画像を表した図面である。得られた多孔質複合材は、図4に示すように、焼成(焼結)前とほぼ同じ形状(=粒径1〜40μmの球形の多孔質微粒子形状)であった。
得られた多孔質複合材をホットプレス用の金型(ジグ)に充填し、360℃、100kg/cmで60秒間ホットプレスしてGDLを得た。得られたGDLは厚さ0.6mmであった。
図5は、本実施例で得られたGDLの表面SEM画像を表した図面である。
図5で分かるように、100kg/cmでの高圧ホットプレスを行っても多孔質複合材は流動せず形状を保っていることが分かった。
また、本実施例で得られたGDLのガス透過能は、比較例1のロール法で作製したGDLより16倍優れていた。引っ張り強度は20kgf/cm、比抵抗は0.25Ωcmであった。
図6は、図5に示す本実施例で得られたGDLの細孔分布を示した。分散液を噴霧乾燥し焼成して得られた多孔質複合材を、高圧ホットプレスして得られた本実施例のGDLの細孔分布は、図6に示すように、細孔の細孔径の分布幅が1000nm以上(詳しくは細孔径40nm〜1100nmの分布幅)であり、更に100nm以上の大きな径の細孔が50%以上あることが分かる。
比較例1
実施例1と同様にしてカーボンブラックPTFE分散液を作製した。このカーボンブラックPTFE分散液を、ロールでシート状に塗布し、乾燥機により150℃で6時間乾燥した後、電熱焼結炉により360℃で2時間焼成して、厚さ0.6mmのGDLを得た。
得られたGDLは、引っ張り強度1kg/cm、比抵抗0.25Ωcmであった。
本比較例で得られたGDLの細孔分布を図7に示した。分散液をシート状に乾燥、焼成することで得られた本比較例のGDLは、図7に示すように、細孔の細孔径の分布幅が1000nm未満(詳しくは細孔径40nm〜100nmの分布幅)であり、100nm以下の細孔のみで構成されていることがわかる。
実施例2
100gのカーボンブラック(1次粒子の平均粒径46nm)、960gの純水及び40gの非イオン界面活性剤Triton X−100を混合させ、ジェットミルでカーボンブラック粒子の2次粒子(1次粒子が凝集した粒状物)を平均粒径0.5μmまで分散した。このカーボンブラック分散液に40%相当のPTFEディスパージョン(PTFE粒子の平均粒径250nm、PTFE粒子60wt%相当)を添加混合し、13wt%固形分のカーボンブラックPTFE分散液を得た。このカーボンブラックPTFE分散液をスプレードライヤーでスプレー圧力1kg/cm、入り口温度180℃、出口温度90℃で噴霧乾燥、液滴生成と脱溶媒を行うことで、粒径1〜30μmの球形の多孔質微粒子が得られた(図8参照のこと)。この微粒子を電熱焼結炉により360℃で2時間焼成して多孔質複合材を得た。
図8は、本実施例で得られた多孔質複合材のSEM画像を表した図面である。得られた多孔質複合材は、図8に示すように、焼成(焼結)前とほぼ同じ形状(=粒径1〜30μmの球形の多孔質微粒子形状)であった。
得られた多孔質複合材をホットプレス用の金型(ジグ)に充填し、360℃、25kg/cmで60秒間ホットプレスしてGDLを得た。得られたGDLは厚さ0.9mmであった。
図9は、本実施例で得られたGDLの表面SEM画像を表した図面である。
図9で分かるように、25kg/cmでホットプレスを行っても多孔質複合材は流動せず形状を保っていることが分かった。また、図9に示すようにプレス圧が低いと多孔質複合材の周りの空間が大きくなっていることが分かる(プレス圧の高いGDLでの表面SEM画像である図5と対比参照のこと。)。
また、本実施例で得られたGDLのガス透過能は、比較例1のロール法で作製したGDLより25倍優れていた。引っ張り強度は13kgf/cm、比抵抗は0.55Ωcmであった。
図10は、本実施例で得られたGDLの断面SEM画像を表した図面である。
図10で分かるように、多孔質複合材の形状はそのままで粒子間で結合していること、間隙があることが分かる。
なお、分散液を噴霧乾燥し焼成して得られた多孔質複合材を、低いプレス圧でホットプレスして得られた本実施例のGDLの細孔分布でも、実施例1と同様に、細孔の細孔径の分布幅が1000nm以上(詳しくは細孔径40nm〜1100nmの分布幅)であり、更に100nm以上の大きな径の細孔が50%以上あることが確認された。
実施例3
実施例1の多孔質複合材を用い、実施例1のGDLの作製と同様にしてMILを形成した。得られたMILの厚さは50μmであった。
上記により得られたMILを用いて、以下に示す仕様のMEAを作製し、その発電性能を以下に示す仕様にて評価した。
A.MEAの仕様
1.電極面積:3cm×3cm
2.電解質膜:ナフィオン膜(30μm厚):Dupont社製のナフィオン211
3.GDL アノード:従来の基材;カーボンペーパー:東レ株式会社製(厚さ180μm)+従来のMIL;実施例1のカーボンブラックPTFE分散液(以下、GDL原料スラリーともいう)をカーボンペーパーに塗布乾燥、焼成したもの(焼成条件は360℃×3時間)(厚さ50μm)
カソード:従来の基材;カーボンペーパー:東レ株式会社製+実施例3で得られたMIL
4.触媒層 アノード:実施例1の多孔質複合材の添加なし(厚さ約10μm)
カソード:実施例1の多孔質複合材の添加なし(厚さ約10μm)
アノード、カソード共に、電極触媒に0.4mg/cmのPt担持カーボン(田中貴金属株式会社製(白金担持カーボン(白金:カーボン=4.5:5.5(質量比))を用い、電解質にDupont社製のナフィオンアイオノマーを用いた。電極触媒/電解質(質量比)=1/0.4とした。
これらの構成部材を用い、ホットプレス条件(140℃、20kg/cmで60秒間)にてMEAを作製した。
B.MEAの発電性能の仕様
1.運転ガス:アノード/カソード=水素/空気
2.測定温度:70℃
3.ガス圧:アノード、カソードとも大気圧
4.ガス湿度:アノード/カソード=90/60%RH
5.ガス利用率:アノード/カソード=66%/50%
上記仕様に基づき、本実施例のMEAの発電性能を測定した。得られた結果を図11に示す。
比較例2
以下に示す仕様のMEAを作製し、その発電性能を以下に示す仕様にて評価した。
A.MEAの仕様
1.電極面積:実施例3と同様にした。
2.電解質膜:実施例3と同様のものを用いた。
3.GDL アノード:実施例3と同様のものを用いた。
カソード:従来の基材;実施例3と同様のものを用いた。+従来型のMIL;上記「GDL原料スラリー」をカーボンペーパーに塗布乾燥、焼成したもの(焼成条件は360℃×3h)
4.触媒層 アノード:実施例3と同様のものを用いた。
カソード:実施例3と同様のものを用いた。
これらの構成部材を用い、実施例3と同様にしてMEAを作製した。
B.MEAの発電性能の仕様は、全て実施例3と同様にした。
上記仕様に基づき、本実施例のMEAの発電性能を測定した。得られた結果を図11に示す。
図11より、実施例3のMEAの性能は、従来型MILを用いた比較例2のMEAに比べ、生成水の排水能力が高いため、高電流密度領域でも電圧が低下しないことが確認できた。
実施例4
実施例1のカーボンブラックPTFE分散液に、更にカーボンナノチューブ(昭和電工株式会社製の多層ナノチューブ、平均長さ10μm、チューブの平均断面径150nm)を、多孔質複合材:ナノチューブ=8.5:1.5(重量比)として加えて、混合分散液を作製し、この混合分散液をスプレードライヤーで噴霧乾燥した以外は、実施例1と同様にして多孔質複合材、更にはGDL(MIL)を作製した。
図12は、本実施例で得られたGDLのSEM画像を表した図面である。
得られたGDL(MIL)の比抵抗は約0.1Ω・cmであった。(実施例1の多孔質複合材のみの場合のGDL(MIL)の比抵抗は約0.2Ω・cmであった。)
実施例5
実施例3および比較例2で用いたMILのガス拡散係数を測定した(各サンプル数5)。得られた結果を図13に示す。
図13より、実施例3で用いたMILのガス拡散係数は、比較例2で用いた従来型のMILのガス拡散係数に比べ、10倍程度大きいことがわかった。
ガス拡散係数の測定条件は、次の通りである。
1.サンプル厚:100μm
2.測定ガス;酸素
実施例6
実施例1の多孔質複合材を用い、下記の仕様にて実施例1の多孔質複合材を混入した触媒層を形成した。
上記により得られた触媒層を用いて、以下に示す仕様のMEAを作製し、その発電性能を以下に示す仕様にて評価した。
A.MEAの仕様
1.電極面積:3cm×3cm
2.電解質膜:ナフィオン膜;Dupont社製のナフィオン211(30μm厚)
3.GDL アノード:従来の基材;カーボンペーパー:東レ株式会社製(厚さ180μm)+従来のMIL;本発明のGDL原料スラリーをカーボンペーパーに塗布乾燥、焼成したもの(焼成条件は360℃×3時間)(厚さ50μm)
カソード:アノードと同様のものを用いた。
4.触媒層 アノード:実施例1の多孔質複合材の添加なし(厚さ約10μm)
カソード:実施例1の多孔質複合材の添加あり(厚さ約10μm)
アノードは、電極触媒に0.4mg/cmのPt担持カーボン(田中貴金属株式会社製(白金担持カーボン(白金:カーボン=4.5:5.5(質量比))を用い、電解質にDupont社製のナフィオンアイオノマーを用いた。電極触媒/電解質(質量比)=1/0.4とした。
カソードは、アノードと同様であるが、実施例1の多孔質複合材を0.1mg/cmとなるように配合した。
これらの構成部材を用い、ホットプレス条件(140℃、20kg/cmで60秒間)にてMEAを作製した。
B.MEAの発電性能の仕様
1.運転ガス:アノード/カソード=水素/空気
2.測定温度:70℃
3.ガス圧:アノード、カソードとも大気圧
4.ガス湿度:アノード/カソード=90/60%RH
5.ガス利用率:アノード/カソード=66%/50%
上記仕様に基づき、本実施例のMEAの発電性能を測定した。得られた結果を図14に示す。
比較例3
以下に示す仕様のMEAを作製し、その発電性能を以下に示す仕様にて評価した。
A.MEAの仕様
1.電極面積:実施例6と同様にした。
2.電解質膜:実施例6と同様のものを用いた。
3.GDL アノード:実施例6と同様のものを用いた。
カソード:実施例6と同様のものを用いた。
4.触媒層 アノード:実施例6のアノードと同様のものを用いた。
カソード:実施例6のアノードと同様のものを用いた。(多孔質複合材は混入していない)
これらの構成部材を用い、実施例6と同様にしてMEAを作製した。
B.MEAの発電性能の仕様は、全て実施例6と同様にした。
上記仕様に基づき、本実施例のMEAの発電性能を測定した。得られた結果を図14に示す。
図14より、実施例6のように本発明の複合材料を触媒層に混入すると、ウェット時でも触媒層のガス供給路が確保されるため、MEAの性能(カソードでの湿度変化に対するセル電圧)は、複合材料を触媒層に混入しない触媒層を用いた比較例3のMEAに比べ、高加湿領域でも電圧が低下しないことが確認できた。
本発明の多孔質複合材を構成するカーボン粒子と撥水材、並びにカーボン粒子および/または撥水材同士の間に形成される比較的小さな細孔(小径貫通孔)の様子が分かるように、1つの多孔質複合材を拡大して模式的に表した概略図である。 本発明のGDLを使用した燃料電池の基本構成(単セル構成)を模式的に表した断面概略図である。 図3Aは、本発明のGDLを使用したMEAの基本構成を模式的に表した断面概略図である。図3Bは、図3AのGDLを構成する多孔質複合材及び多孔質複合材同士の間に形成される比較的大きな細孔(大径貫通孔)の様子が分かるように、GDLの一部を拡大して模式的に表した概略図である。図3Cは、基材と本発明の構成を有するカーボン粒子層(MIL)からなるGDLを使用したMEAの基本構成を模式的に表した断面概略図である。 実施例1において、13wt%固形分の分散液をスプレードライ(噴霧乾燥)し、液滴生成と脱溶媒を行って得られた微粒子を360℃で2時間焼成して得られた多孔質複合材のSEM画像を表した図面である。 実施例1で得られた図1の多孔質複合材を360℃、100kg/cmで60秒間ホットプレスして得られたGDLの表面SEM画像を表した図面である。 実施例1で得られたGDLの細孔径データ(水ポロシメータによる細孔分布)を表す図面である。 比較例1で得られたGDLの細孔径データ(水ポロシメータによる細孔分布)を表す図面である。 実施例2において、13wt%固形分の分散液をスプレードライ(噴霧乾燥)し、液滴生成と脱溶媒を行って得られた微粒子を360℃で2時間焼成して得られた多孔質複合材のSEM画像を表した図面である。 実施例2で得られた図8の多孔質複合材を360℃、25kg/cmで60秒間ホットプレスして得られたGDLの表面SEM画像を表した図面である。 実施例2で得られた図8の多孔質複合材を360℃、25kg/cmで60秒間ホットプレスして得られたGDLの断面SEM画像を表した図面である。 実施例3と比較例2のMEAの発電性能を測定した結果を表す図面である。 実施例5のGDL(MIL)の断面SEM画像を表した図面である。 実施例3および比較例2で用いたMILのガス拡散係数を測定した結果を表す図面である。 実施例6と比較例4のMEAの発電性能(カソードでの湿度変化に対するセル電圧)を測定した結果を表す図面である。 従来のGDL基材であるカーボンペーパー(東レ株式会社製(厚さ180μm))上に、実施例1のカーボンブラックPTFE分散液(GDL原料スラリー)をカーボンペーパーに直接塗布乾燥、焼成したもの(焼成条件は360℃×3時間)(厚さ50μm)で得られたMILのSEM画像を表した図面である。
符号の説明
10 多孔質複合材、
11 カーボン粒子、
12 撥水材(粒子)、
13 細孔(多孔質複合材中の小径の貫通孔)、
20 燃料電池セル、
21 電解質膜、
22 燃料電池電極触媒層、
22a アノード触媒層、
22b カソード触媒層、
23 ガス拡散層(GDL)、
23a アノードガス拡散層、
23b カソードガス拡散層、
231a アノードガス拡散層のMIL、
231b カソードガス拡散層のMIL、
232a アノードガス拡散層の基材、
232b カソードガス拡散層の基材、
24 MEA、
25a アノードパレータ、
25b カソードパレータ、
26a アノード側ガス流路(溝)、
26b カソード側ガス流路(溝)、
27 ガスケット、
30 細孔(多孔質複合材間の大径の貫通孔)、
31 結着部。

Claims (13)

  1. カーボン粒子と撥水材とを含む多孔質複合材であって、細孔径の分布幅が1000nm以上であることを特徴とする多孔質複合材。
  2. 40nm以上、2000nm以下である前記細孔径からなることを特徴とする請求項1に記載の多孔質複合材。
  3. 前記細孔径の分布頻度は15%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質複合材。
  4. 平均粒子径が、0.7〜50μmの微粒子からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質複合材。
  5. 前記撥水材が、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質複合材。
  6. 導電性材料を更に含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔質複合材。
  7. 前記導電性材料が、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項6に記載の多孔質複合材。
  8. 請求項1〜7いずれか1項に記載の多孔質複合材と、カーボン繊維焼結多孔シートとを積層してなる燃料電池用ガス拡散層。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の多孔質複合材、電極触媒および電解質からなる燃料電池用電極触媒層。
  10. 請求項8に記載のガス拡散層および請求項9記載の電極触媒層の少なくとも1つを構成部材としていることを特徴とする燃料電池用電極。
  11. 請求項10の電極と電解質膜とを接合してなる燃料電池用膜電極接合体。
  12. カーボン粒子と撥水材を溶媒に分散させた分散液を、気相空間で液滴状とし、そのまま脱溶媒し、さらに、撥水材の融点以上で焼成して形成することを特徴とする多孔質複合材の製造方法。
  13. ドライスプレーにて前記分散液の気相空間で液滴生成と脱溶媒を行うことを特徴とする請求項12に記載の多孔質複合材の製造方法。
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