JP7293901B2 - 造粒体、並びに、撥水層及びその製造方法 - Google Patents
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Description
同文献には、
(a)撥水ペーストに繊維状フィラーを添加すると、撥水ペーストを基材に塗布し、乾燥させる際に、クラックの発生を抑制することができる点、及び、
(b)撥水ペーストに造孔剤粒子を添加すると、触媒層に均一にガスを供給することが可能なガス拡散層が得られる点
が記載されている。
同文献には、
(a)粒子状導電性フィラーとフッ素系樹脂ディスパージョンのみを含む撥水ペーストを基材に塗布した場合、ガス拡散層内の空間が目詰まりを起こし、ガス拡散性及び排水性が低下する点、及び、
(b)撥水ペーストにさらに繊維状フィラーを加えると、繊維状フィラーが互いに絡まって空間を形成するために、撥水層の気孔率が大きくなる点
が記載されている。
(A)一次粒子径が20nm~100nmであり、二次粒子径が2μm~10μmである多孔質導電性粒子を含むペーストを基材に塗布し、
(B)塗膜を乾燥及び焼成する
ガス拡散層の製造方法が開示されている。
同文献には、
(a)このような方法により、一次粒子に由来する0.05μm~0.5μmの第二貫通細孔と、二次粒子に由来する1μm~10μmの第一貫通細孔とを備えた導電性撥水層を形成することができる点、及び、
(b)このような撥水層において、第1貫通孔は生成水の排出パスとして機能し、第2貫通孔は酸化剤ガスの流通パスとして機能する点、
が記載されている。
同文献には、
(a)平均粒径が小さく、かつ、均一なカーボン粒子を用いてマイクロポーラス層を形成すると、ミクロ構造が極めて緻密となり、マイクロポーラス層の気孔率や透気度の最適化が困難となる点、及び、
(b)平均粒子径の異なる3種類のカーボン粒子を略均等となる量で配合すると、気孔率と透気度を最適化することができる点
が記載されている。
(A)電極基材の表面に、消失材、導電性フィラー、及び撥水材を含むカーボン塗液を塗布し、
(B)120℃で10分、及び、380℃で20分加熱する
ことにより得られるマイクロポーラス層が開示されている。
同文献には、このような方法により、その厚み方向に貫通する空孔を有するマイクロポーラス層が得られる点が記載されている。
(A)メカノフュージョン法による複合化及び粉砕を繰り返すことにより、導電体微粒子に撥水剤を付着させた3~15μmの複次粒子を得る工程と、
(B)前記複次粒子を層状に静電塗工して電極の撥水層を形成する工程と
を備えた高分子電解質型燃料電池用電極の製造方法が開示されている。
同文献には、
(a)インクを用いて撥水層を形成する方法の場合、インクの乾燥工程と、インクに含まれる界面活性剤を除去する焼成工程とが必要となる点、及び、
(b)複次粒子を静電塗工する方法の場合、これらの工程が不要となる点
が記載されている。
(A)スプレードライ法を用いて平均粒径が2μmの触媒層用粉体を作製し、
(B)スプレードライ法を用いて平均粒径が6μmのMPL層用粉体を作製し、
(C)触媒層用粉体とMPL層用粉体を混合して中間層用粉体を作製し、
(D)静電スクリーン印刷法を用いて、電解質膜の表面に、触媒層、中間層、及びMPL層をこの順で堆積させる
燃料電池の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、排水性に優れた発電効率の高い燃料電池が得られる点が記載されている。
しかしながら、造孔剤を用いる方法は、造孔剤の焼成負荷が大きく、撥水層内にしばしば造孔剤が残留するという問題がある。
(a)ペーストの分散性や分散安定性の調整、あるいは、塗工に適した粘度調整に多大な時間と労力を要する、
(b)塗工後の乾燥・焼成に多大な時間とエネルギーが必要である、
(c)ペーストの粘度によっては、塗工時にペーストが基材に染み込み、ガス拡散層のガスの透気度が低下し、燃料電池として所望の発電特性を得ることができない、
などの問題がある。
同様に、特許文献7では、触媒層用粉体の平均粒子径は2μmであり、MPL層用粉体の平均粒子径は6μmである。そのため、これらは、いずれもドライ塗工法用の粉体としては流動性が不十分と考えられる。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような造粒体を用いた撥水層、及びその製造方法を提供することにある。
(1)前記造粒体は、
球形化黒鉛からなる第1粒子と、
前記第1粒子よりも粒径が小さい微粒状のカーボンを含む第2粒子と、
撥水性高分子と
を備えている。
(2)前記造粒体は、前記第1粒子の表面に、前記撥水性高分子を介して前記第2粒子が結合しているものからなる。
さらに、本発明に係る撥水層の製造方法は、
本発明に係る造粒体を調製する工程と、
粉体塗装装置を用いて基材表面に前記造粒体を塗工する工程と、
得られた塗膜を熱処理する工程と
を備えている。
[1. 造粒体]
図1に、本発明に係る造粒体の断面模式図を示す。図1において、造粒体10は、
球形化黒鉛からなる第1粒子12と、
第1粒子12よりも粒径が小さい微粒状のカーボンを含む第2粒子14と、
撥水性高分子16と
を備えている。
第1粒子12の表面には、撥水性高分子16を介して第2粒子14が結合している。
[1.1.1. 材料]
第1粒子12は、球形化黒鉛からなる。「球形化黒鉛」とは、鱗片状の黒鉛を球形に造粒したものからなる。鱗片状黒鉛をそのまま用いると、粉としての流動性が不十分となる。これに対し、鱗片状黒鉛を球形化すると、高い流動性が得られる。
「平均粒子径」とは、レーザー回折散乱法により測定される、累積分布が50%となるときの粒子径(メディアン径(d50))をいう。
[1.2.1. 材料]
第1粒子12の表面には、撥水性高分子16を介して第2粒子14が結合している。第2粒子14は、主として、造粒体10の導電性を向上させるためのものであり、第1粒子12よりも粒径が小さい微粒状のカーボン(1次粒子)、又はその凝集体からなる。
第2粒子14の材料は、撥水性高分子16で被覆された第1粒子12に導電性を付与することが可能なものであれば良い。第2粒子14の材料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラックなどがある。特に、アセチレンブラックは、アセチレンを熱分解することにより得られる微粒子状のカーボンの凝集体であり、導電性が高く、不純物が少ない。そのため、アセチレンブラックは、第2粒子14の材料として好適である。
「平均1次粒子径」とは、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した100個以上の1次粒子について測定された1次粒子径(1次粒子の最大寸法)の平均値をいう。
一方、第2粒子14の平均1次粒子径が大きくなりすぎると、第1粒子12に対する撥水性高分子16を介しての第2粒子14の結合が不十分となる。従って、第2粒子14の平均1次粒子径は、80nm以下が好ましい。平均1次粒子径は、好ましくは、60nm以下、さらに好ましくは、50nm以下である。
「第2粒子の添加量」とは、次の式(1)で表される値をいう。
第2粒子の添加量(%)=W2×100/Wc …(1)
但し、
Wcは、造粒体10に含まれる第1粒子12及び第2粒子14の総重量、
W2は、造粒体10に含まれる第2粒子14の重量。
[1.3.1. 材料]
撥水性高分子16は、第1粒子12に撥水性を付与するためのものである。後述する方法を用いると、第1粒子12の表面を撥水性高分子16で被覆することができる。
撥水性高分子16の材料は、第1粒子12に撥水性を付与することができるものである限りにおいて、特に限定されない。撥水性高分子16としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系樹脂が挙げられる。
「撥水性高分子の添加量」とは、次の式(2)で表される値をいう。
撥水性高分子の添加量(%)=Wp×100/Wt …(2)
但し、
Wtは、造粒体10の全重量、
Wpは、造粒体10に含まれる撥水性高分子16の重量。
「圧縮度」とは、次の式(3)で表される値をいう。
圧縮度(%)=(V0-Vf)×100/V0 …(3)
但し、
V0は、造粒体10の疎充填時のかさ体積、
Vfは、造粒体10のタップ後の最終かさ体積。
一般的には、ある所定の目開きの篩いを使って、ある容器内に粉体をふるい入れた際の体積を「疎充填時のかさ体積」として用いる。また、ある所定のタップ方式、回数でタップさせた後の体積を「最終かさ体積」として用いる。
この方法は、厳密には一般的な定義から外れるが、再現性を有する測定法であり、また粉体の別の特性パラメータである内部摩擦角も同じ測定から求めることができることから、本発明において採用した。
本発明に係る造粒体10は、第1粒子12、第2粒子14の原料、及び撥水性高分子16の原料を所定の比率で配合し、混合物を強攪拌することにより得られる。
第2粒子14の原料には、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの微粒状のカーボンの凝集体が用いられる。また、撥水性高分子16の原料には、微粒状の撥水性高分子が用いられる。
また、強攪拌の条件は、目的とする構造を備えた造粒体が得られるように、製造装置の種類に応じて、最適な条件を選択するのが好ましい。
すなわち、原料混合物に対して強いせん断力を加えると、凝集体がほぐれて微粒子状のカーボンを含む第2粒子14が生成する。また、これと同時に、第1粒子12の表面に、撥水性高分子16からなる被膜が形成される。さらに、撥水性高分子16からなる被膜の上に、第2粒子14が付着すると考えられる。
本発明に係る撥水層は、本発明に係る造粒体を含む。造粒体の詳細については、上述した通りであるので説明を省略する。
撥水層の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。固体高分子形燃料電池の場合、撥水層の厚さは、通常、5μm~100μm程度である。
本発明に係る撥水層の製造方法は、
本発明に係る造粒体を調製する工程と、
粉体塗装装置を用いて基材表面に前記造粒体を塗工し、塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を熱処理する工程と
を備えている。
まず、本発明に係る造粒体を調製する(造粒体調製工程)。造粒体の調製方法の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
次に、粉体塗装装置を用いて基材表面に前記造粒体を塗工する(塗工工程)。
基材の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を用いることができる。基材としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスなどがある。
(a)日本パウダーコーティング協同組合(JAPCA)のホームページに記載されている「静電塗装法」、「流動浸漬法」のいずれかに分類される粉体塗装装置、
(b)静電スクリーン印刷装置、
などがある。
次に、得られた塗膜を熱処理する(熱処理工程)。 これにより、本発明に係る撥水層が得られる。
熱処理は、造粒体10に含まれる撥水性高分子16を部分的に溶融させ、基材表面に造粒体10を強固に付着させるために行われる。熱処理条件は、撥水性高分子16の種類に応じて,最適な条件を選択するのが好ましい。最適な熱処理条件は、撥水性高分子16の種類等により異なるが、通常、250℃~450℃で、0.1時間~2時間熱処理するのが好ましい。
球形化黒鉛は、鱗片状の黒鉛を造粒したものである。このような球形化黒鉛と、微粒状のカーボンの凝集体と、撥水性高分子とを強攪拌すると、球形化黒鉛からなる第1粒子の表面に、撥水性高分子を介して微粒状のカーボンを含む第2粒子が結合している造粒体が得られる。さらに、得られた造粒体を基材上に塗工すると、隣接する造粒体の表面に付着した第2粒子の間隙に由来する小細孔と、隣接する造粒体同士の間隙に由来する大細孔とを備えた撥水層が得られる。
また、造粒体の流動性を向上させるためには、造粒体の粒径がある程度大きいことが必要である。平均粒子径が5~30μmである球形化黒鉛がコアとなる複合粒子を用いることにより、流動性を確保することができる。
[1. 試料の作製]
第1粒子には、大阪ガスケミカル(株)製の球形化天然黒鉛(OMAC-R1.2、平均粒径:12.4μm)を用いた。撥水性高分子の原料には、(株)喜多村製のPTFE微粉末(KLT-500F、平均粒子径:0.5μm)を用いた。第2粒子の原料には、デンカ(株)製のアセチレンブラック(HS-100、平均1次粒子径:40nm)を用いた。これらを原料に用いて、撥水性発現に必要なPTFEの添加量、及び、流動性を損なわないアセチレンブラック(以下、「AB」ともいう)の添加量の検討を行った。
[2.1. 撥水性発現に必要なPTFE添加量の検討]
まず、第1粒子にPTFEをコートして高い撥水性を得るのに必要なPTFE量の検討を行った。そのために、PTFE添加量(=PTFE×100/(PTFE+第1粒子))を変えて、第1粒子とPTFEだけを用いた造粒体を作製した。PTFE添加量は、0、1、3、5、又は、20wt%とした。造粒は、日本コークス工業(株)製のマルチパーパス(MP)ミキサーを用いて、10000rpm、5分の条件にて行った。
撥水性の評価は、約10ccの水に0.5g程度の造粒体を加えて振とうし、静置した際の様子を目視で観察することにより行った。
以下、同様にして、3分静置後の水中の浮遊物の有無により撥水性の評価を行った。その結果、例示しないが、10wt%以上のPTFE添加量にて、十分な撥水性が発現すると判断された。
導電性の付与という観点からはABをなるべく多く添加した方が有利である。しかし、第1粒子に付着していないABの量が増えると、流動性が損なわれると考えられる。そこで、PTFE添加量が10wt%~40wt%である場合において、AB添加量(=AB×100/(第1粒子+AB))と、流動性の指標である圧縮度との関係を調べた。
[1. 試料の作製]
[1.1. 造粒体の作製(実施例2.1~2.9、比較例1~3)]
第1粒子には、大阪ガスケミカル(株)製の球形化天然黒鉛(OMAC-R1.2、平均粒径:12.4μm)、伊藤黒鉛工業(株)製の球状黒鉛(SG-GH8、平均粒子径:8.7μm)、又は、球形化していない人造黒鉛(平均粒径:13.4μm)を用いた。
撥水性高分子の原料には、(株)喜多村製のPTFE微粉末(KLT-500F、平均粒子径:0.5μm)を用いた。さらに、第2粒子の原料には、デンカ(株)製のアセチレンブラック(AB)(HS-100、平均1次粒子径:40nm)を用いた。
原料配合物を手で軽く攪拌する予備攪拌を行った後、日本コークス工業(株)製のMPミキサーを用いて、10000rpm、5分の条件にて攪拌・造粒を行った。
[1.2.1. 実施例2.1~2.9、比較例1~3]
基材には、カーボンペーパー(東レ(株)製、TGP-H-060、厚さ:約190μm)を用いた。静電スクリーン印刷法にて、基材表面に造粒体を塗工した。目付量は、3.5mg/cm2とした。塗工後、1.0MPa、1分、室温の条件下でプレスを行った。引き続き、350℃×30分の条件下で熱処理を施した。
撥水性高分子の原料には、PTFE水分散液を用いた。導電性粒子の原料には、デンカ(株)製のアセチレンブラック(AB)(HS-100、平均1次粒子径:40nm)を用いた。分散剤には、非イオン系界面活性剤を用いた。AB100重量部に対して、水が400重量部、PTFEが40重量部、分散剤が10重量部となるように、AB、水、PTFE水分散液、及び分散剤を秤量した。これらを攪拌し、スラリを調製した。
次に、得られたスラリーを基材(TGP-H-060)上に塗布し、乾燥及び焼成を行った。目付量は、2.0mg/cm2とした。
[2.1. 造粒体の評価]
[2.1.1. 圧縮度]
圧縮度の測定には、(株)ナノシーズ製の粉体層せん断力測定装置NS-S500を用いた。内径が15mmφの円筒状のセルに造粒体を充填し、設定垂直荷重10N及び50Nにおいて最大せん断力を測定した。さらに、最大せん断応力検出時の体積(疎充填時のかさ体積V0、及び、最終かさ体積Vf)を用いて圧縮度を算出した。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて造粒体の観察を行った。また、一部の造粒体については、集束イオンビーム(FIB)にて加工し、断面観察を行った。
[2.1.3. 撥水性評価]
約10ccの水に0.5g程度の造粒体を加えて振とうし、静置した際の様子を目視で観察した。3分静置後に、水中に浮遊している造粒体が確認できるか否かで、撥水性の良否を評価した。
[2.2.1. 撥水性]
撥水層の表面に水滴を滴下し、水滴の接触角を測定した。
[2.2.2. 電気抵抗]
作製した撥水層(基材込み)の電気抵抗を測定した。電極面積は1cm2とし、測定は0.8MPaで加圧した状態で行った。
[2.2.3. 細孔径分布]
水銀ポロシメーターを用いて、撥水層の細孔径分布を測定した。
[1.2.]で作製した撥水層付きガス拡散層を空気極側のガス拡散層に用いて、燃料電池を作製した。燃料極側のガス拡散層、触媒層、電解質膜は、共通のものを用いた。得られた燃料電池を用いて、I-V特性を評価した。試験条件は、以下の通りである。
セル温度(相対湿度):45℃(165%RH)、60℃(80%RH)、又は、82℃(30%RH)
加湿器温度(両極とも):55℃
水素流量:500mL/min
空気流量:2000mL/min
[3.1. 造粒体の評価]
[3.1.1. 圧縮度]
表1に、造粒体の圧縮度を示す。なお、表1には、造粒体の組成も併せて示した。実施例2.1~2.7及び比較例1~2は、いずれも圧縮度が10%以下であり、高い流動性を示した。これは、黒鉛種として球形化黒鉛を用いているため、及び、ABの大半が球形化黒鉛の表面に付着しているためと考えられる。
一方、実施例2.8~2.9は、圧縮度が10%を超えた。これは、AB添加量が相対的に多いために、フリーのABが増加したためと考えられる。また、比較例3は、圧縮度が10%を超えた。これは、黒鉛種が球形でないためと考えられる。
図4に、球形化黒鉛のSEM像(図4(A):低倍率像、図4(B):高倍率像)を示す。図5に、実施例2.1で得られた造粒体のSEM像(図5(A):低倍率像、図5(B):高倍率像)を示す。
図4及び図5より、造粒前後において粒子の形状や大きさにあまり差が無いこと、及び、造粒後においてはPTFE微粒子やABが単独の粒子としてほとんど観察されないことが分かる。この結果から、PTFE微粒子やABは、球形化黒鉛の表面に付着していると考えられる。
PTFE添加量が10wt%以上である場合、いずれも、3分静置後に水中に浮遊している粉体は確認されず、十分な撥水性を示した。一方、PTFE添加量が5wt%である実施例2.7は、3分静置後においても水中に浮遊している粉体が若干観察された。
[3.2.1. 撥水性]
実施例2.1で得られた撥水層(PTFE添加量20wt%)の場合、水の接触角は150°であった。また、基材を揺らすと、水滴は容易に転がる状態であり、高い撥水性を有していることが確認された。
実施例2.1で得られた撥水層(AB添加量6.3wt%)の場合、電気抵抗は20mΩcm2であり、ガス拡散層(GDL)として十分に低い値であることが確認された。
一方、比較例2で得られた撥水層(AB添加量0wt%)の場合、電気抵抗は、44mΩcm2であった。
図7に、実施例2.1の造粒体から作製した撥水層と、比較例4のペーストから作製した撥水層の細孔径分布を示す。実施例2.1の場合、0.1μmオーダーの小細孔と、数μmオーダーの大細孔が形成されていることが確認された。一方、ペースト塗工により作製された撥水層(比較例4)の場合、0.1μmオーダーの小細孔のみが形成されていることが確認された。
図8に、実施例2.1で得られたセルと、比較例4で得られたセルの82℃、30%RHでのI-V曲線を示す。図9に、実施例2.1で得られたセルと、比較例4で得られたセルの60℃、80%RHでのI-V曲線を示す。さらに、図10に、実施例2.1で得られたセルと、比較例4で得られたセルの45℃、165%RHでのI-V曲線を示す。
図8~図10より、実施例2.1で得られたセルは、乾湿(30%RH)、湿潤(80%RH)、及び過加湿(165%RH)のいずれの湿度条件下においても、0.6Vにおける電流値が比較例4より大きいことが分かる。
Claims (9)
- 以下の構成を備えた造粒体。
(1)前記造粒体は、
球形化黒鉛からなる第1粒子と、
前記第1粒子よりも粒径が小さい微粒状のカーボンを含む第2粒子と、
撥水性高分子と
を備えている。
(2)前記造粒体は、前記第1粒子の表面に、前記撥水性高分子を介して前記第2粒子が結合しているものからなる。 - 前記第1粒子の平均粒子径は、5μm以上30μm以下である請求項1に記載の造粒体。
- 前記第2粒子の平均1次粒子径は、10nm以上80nm以下である請求項1又は2に記載の造粒体。
- 次の式(1)で表される第2粒子の添加量は、5%以上13%以下である請求項1から3までのいずれか1項に記載の造粒体。
第2粒子の添加量(%)=W2×100/Wc …(1)
但し、
Wcは、前記造粒体に含まれる前記第1粒子及び前記第2粒子の総重量、
W2は、前記造粒体に含まれる前記第2粒子の重量。 - 次の式(2)で表される撥水性高分子の添加量は、5%以上40%以下である請求項1から4までのいずれか1項に記載の造粒体。
撥水性高分子の添加量(%)=Wp×100/Wt …(2)
但し、
Wtは、前記造粒体の全重量、
Wpは、前記造粒体に含まれる前記撥水性高分子の重量。 - 次の式(3)で表される圧縮度が10%以下である請求項1から5までのいずれか1項に記載の造粒体。
圧縮度(%)=(V0-Vf)×100/V0 …(3)
但し、
V0は、前記造粒体の疎充填時のかさ体積、
Vfは、前記造粒体のタップ後の最終かさ体積。 - 前記撥水性高分子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である請求項1から6までのいずれか1項に記載の造粒体。
- 請求項1から7までのいずれか1項に記載の造粒体を含む撥水層。
- 請求項1から7までのいずれか1項に記載の造粒体を調製する工程と、
粉体塗装装置を用いて基材表面に前記造粒体を塗工する工程と、
得られた塗膜を熱処理する工程と
を備えた撥水層の製造方法。
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