JP7310855B2 - 触媒層 - Google Patents
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Description
さらに、ガス拡散層の外側には、ガス流路を備えたセパレータが配置される。固体高分子形燃料電池は、一般に、このようなMEA、ガス拡散層、及びセパレータからなる単セルが複数個積層された構造(スタック構造)を備えている。
しかし、これらの性能は、トレードオフの関係にある。例えば、アイオノマの体積分率を高くすれば、プロトン抵抗は低減できるが、その分、空隙率は低下する。
例えば、特許文献1には、ナフィオン(登録商標)ペレットを凍結粉砕させることにより得られる塊状の高分子電解質(固体状態のまま触媒層に添加された高分子電解質)と、触媒又は触媒を担持した担体とを含む触媒層を備えた燃料電池用電極が開示されている。
同文献には、塊状の高分子電解質は触媒層内において大きなプロトン伝導パスとして機能するので、これを含む触媒層は高温低加湿条件下においても高いプロトン伝導性を示す点が記載されている。
(a)パーフルオロカーボンスルホン酸微粉末の表面に白金が担持された白金触媒担持パーフルオロカーボンスルホン酸微粉末を作製し、
(b)白金触媒担持パーフルオロカーボンスルホン酸微粉末と導電性カーボン粒子とを混合して触媒電極ペーストとし、
(c)触媒電極ペーストを集電体上に印刷し、乾燥させる
ことにより得られる触媒層が開示されている。
同文献には、このような方法により、高分子電解質微粉末により形成された多孔質構造の表層部分に白金が担持され、かつ、白金とカーボン粒子とが電気的に接触しているネットワーク構造を備えた触媒層が得られる点が記載されている。
同文献には、
(A)基板表面へのアイオノマを含む繊維の堆積と、繊維表面への電極触媒を含む触媒インクの散布とを交互に繰り返すと、不織布を構成する繊維の表面に電極触媒が均一に付着している触媒層が得られる点、及び、
(B)このようにして得られた触媒層は、低湿度環境下においても高い酸素還元反応活性を示す点
が記載されている。
(a)白金担持カーボンの表面を高酸素透過アイオノマでコートし、
(b)高酸素透過アイオノマでコートされた白金担持カーボン、及び、第2アイオノマを含む触媒インクを調製し、
(c)触媒インクを基材上に塗布し、乾燥させる
ことにより得られる触媒層が開示されている。
同文献には、このような方法により、触媒の表面が酸素移動抵抗が低い第1層で被覆され、その表面がさらにプロトン伝導度の高い第2層で被覆された電極触媒が得られる点が記載されている。
(a)白金担持カーボンと、側鎖の炭素数が4以上のパーフルオロスルホン酸からなる第1のアイオノマとを含む第1インクを作製し、
(b)カーボンブラックと、側鎖の炭素数が3以下の第2アイオノマとを含む第2インクを作製し、
(c)第1インクと第2インクを混合してカソードインクとし、
(d)カソードインクを基材上に塗布し、乾燥させる
ことにより得られるカソード触媒層が開示されている。
同文献には、このような方法により、白金担持カーボンの表面が第1のアイオノマで被覆された触媒部材と、カーボンブラックの表面が第2のアイオノマで被覆されたプロトン伝導部材とが混在している触媒層が得られる点が記載されている。
特許文献4に記載の方法を用いると、高酸素透過性と高プロトン伝導性とを両立させることができる。しかし、触媒の表面を2種類のアイオノマーでコートするだけでは、幅広い温湿度環境で高い発電性能を発現させるのは難しい。
さらに、低温高湿条件から高温低湿条件までの幅広い温湿度環境で高い発電性能を示す触媒層が提案された例は、従来にはない。
(1)前記触媒層は、アイオノマコート触媒と、アイオノマ/基材複合体とを備え、
前記アイオノマコート触媒は、導電性粒子の表面に触媒粒子が担持された電極触媒と、少なくとも前記導電性粒子の表面をコートする第1アイオノマと備え、
前記アイオノマ/基材複合体は、基材粒子と、前記基材粒子の表面をコートする第2アイオノマとを備えている。
(2)前記触媒層は、次の式(1)を満たす。
[I2/C2]/[I1/C1]>1 …(1)
但し、
I1は、前記第1アイオノマの質量、
C1は、前記導電性粒子の質量、
I2は、前記第2アイオノマの質量、
C2は、前記基材粒子の質量。
得られた触媒層は、主として、高I2/C2のアイオノマ/基材複合体がプロトン伝導を担うので、高温低湿条件下においても高い性能を示す。一方、電極触媒の表面は必要最小限の第1アイオノマで被覆され、かつ、アイオノマコート触媒の周囲にはアイオノマ/基材複合体が適度に分散しているために、電極触媒の周囲には適度な空隙が確保される。その結果、ガス拡散抵抗が低下し、低温高湿条件下においても高い性能を示す。
[1. 触媒層]
図1(A)に、アイオノマコート触媒及びアイオノマ/基材複合体の模式図を示す。図1(B)に、本発明に係る触媒層の模式図を示す。図1において、触媒層10は、アイオノマコート触媒20と、アイオノマ/基材複合体30とを備えている。触媒層10は、電解質膜40の表面に形成されている。このような触媒層10は、ドライ塗工法を用いて、電解質膜40の表面に、アイオノマコート触媒20とアイオノマ/基材複合体30との混合物を塗工することにより得られる。
なお、図1及び以下の説明において、主に触媒層10をカソード側触媒層として用いる例について説明するが、これは単なる例示である。本発明に係る触媒層10は、カソード側触媒層として特に好適であるが、アノード側触媒層としても用いることができる。
アイオノマコート触媒20は、
導電性粒子22の表面に触媒粒子24が担持された電極触媒26と、
少なくとも導電性粒子22の表面をコートする第1アイオノマ28と
を備えている。
[A. 材料]
導電性粒子22は、触媒粒子24を担持するための担体である。本発明において、導電性粒子22の材料は、導電性を有し、かつ、燃料電池環境下において使用可能な材料である限りにおいて、特に限定されない。
(a)カーボンブラック、
(b)SnO2、不定比酸化チタン(TiOx)などの導電性を有する金属酸化物又は複合金属酸化物からなる導電性酸化物粒子
などがある。
導電性粒子22には、これらのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
「導電性粒子22の平均粒径」とは、レーザー回折散乱法により測定されたメディアン径(D50)をいう。
導電性粒子22の平均粒径は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な粒径を選択することができる。一般に、導電性粒子22の平均粒径が小さくなりすぎると、粒子同士の繋がりが悪くなり、電子抵抗が大きくなる場合がある。従って、平均粒径は、0.1μm以上が好ましい。平均粒径は、さらに好ましくは、0.3μm以上、さらに好ましくは、0.5μm以上である。
一方、導電性粒子22の平均粒径が大きくなりすぎると、触媒層の均一性が失われ、場合によってはプレスした際に電解質膜を傷つけてしまう場合がある。従って、平均粒径は、20μm以下が好ましい。平均粒径は、さらに好ましくは、10μm以下、さらに好ましくは、5μm以下である。
[A. 材料]
本発明において、触媒粒子24の材料は、水素酸化反応又は酸素還元反応に対する活性を有するものである限りにおいて、特に限定されない。
触媒粒子24の材料としては、例えば、
(a)貴金属(Pt、Au、Ag、Pd、Rh、Ir、Ru、Os)、
(b)2種以上の貴金属元素を含む合金、
(c)1種又は2種以上の貴金属元素と、1種又は2種以上の卑金属元素(例えば、Fe、Co、Ni、Cr、V、Tiなど)とを含む合金、
などがある。
Pt合金としては、例えば、Pt-Fe合金、Pt-Co合金、Pt-Ni合金、Pt-Pd合金、Pt-Cr合金、Pt-V合金、Pt-Ti合金、Pt-Ru合金、Pt-Ir合金などがある。
「触媒粒子24の平均粒径」とは、顕微鏡観察下において無作為に選択された20個以上の触媒粒子24について測定された、触媒粒子24の最大寸法の平均値をいう。
触媒粒子24の平均粒径は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な平均粒径を選択することができる。一般に、触媒粒子24の平均粒径が小さすぎると、触媒粒子24が溶解しやすくなる。従って、平均粒径は、1nm以上が好ましい。
一方、触媒粒子24の平均粒径が大きくなりすぎると、質量活性が低下する。従って、触媒粒子24の平均粒径は、20nm以下が好ましい。平均粒径は、好ましくは、10nm以下、さらに好ましくは、5nm以下である。
「触媒粒子24の担持量」とは、電極触媒26の総質量に対する触媒粒子24の質量の割合をいう。
触媒粒子24の担持量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な担持量を選択することができる。一般に、触媒粒子24の担持量が少なくなりすぎると、所定の目付量を得るために必要な触媒層10の厚さが厚くなり、触媒層10の電子抵抗、プロトン抵抗、及び/又は、ガス拡散抵抗が増大する。従って、触媒粒子24の担持量は、5mass%以上が好ましい。担持量は、さらに好ましくは、10mass%以上、さらに好ましくは、15mass%以上である。
一方、触媒粒子24の担持量が過剰になると、担体(導電性粒子22)表面において触媒粒子24が凝集し、かえって電極触媒26の活性が低下する。従って、触媒粒子24の担持量は、60mass%以下が好ましい。担持量は、さらに好ましくは、50mass%以下、さらに好ましくは、40mass%以下である。
[A. 材料]
電極触媒26の表面は、第1アイオノマ28でコートされている。第1アイオノマ28は、導電性粒子22の表面のみをコートするものでも良く、あるいは、導電性粒子22の表面に加えて、触媒粒子24の表面をさらにコートするものでも良い。第1アイオノマ28による触媒粒子24の被毒を低減するためには、第1アイオノマ28は、導電性粒子22の表面のみをコートするものが好ましい。
第1アイオノマ28の材料としては、例えば、
(a)ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標)、アクイヴィオン(登録商標)などのパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ、
(b)高酸素透過アイオノマ
などがある。
例えば、第1アイオノマ28は、電極触媒26の表面に形成された高酸素透過アイオノマからなる第1層と、第1層の表面に形成されたパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマからなる第2層の積層膜であっても良い。
換言すれば、「高酸素透過アイオノマ」とは、酸素透過係数がナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマよりも高いアイオノマをいう。
高酸素透過アイオノマの分子構造は、相対的に小さい酸素移動抵抗を示す限りにおいて、特に限定されない。特に、その分子構造内に環状構造(脂肪族環構造)を含むアイオノマは、環状構造を含まないアイオノマに比べて酸素移動抵抗が小さいので、電極触媒26を被覆するポリマとして好適である。
(a)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンユニットと、パーフルオロスルホン酸を側鎖に持つ酸基ユニットとを含む電解質ポリマー、
(b)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンユニットと、パーフルオロイミドを側鎖に持つ酸基ユニットとを含む電解質ポリマー、
(c)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンに直接、パーフルオロスルホン酸が結合したユニットを含む電解質ポリマー、
などがある(参考文献1~4参照)。
[参考文献1]特開2003-036856号公報
[参考文献2]国際公開第2012/088166号
[参考文献3]特開2013-216811号公報
[参考文献4]特開2006-152249号公報
「I1/C1」とは、導電性粒子22の質量(C1)に対する第1アイオノマ28の質量(I1)の比をいう。
第1アイオノマ28は、主として、触媒粒子24との間でプロトンの授受を行うためのものである。低温高湿条件から高温低湿条件までの幅広い温湿度環境で高い発電性能を得るためには、I1/C1は、所定の条件を満たしている必要がある。この点については、後述する。
アイオノマ/基材複合体30は、
基材粒子32と、
基材粒子32の表面をコートする第2アイオノマ34と
を備えている。
[A. 材料]
本発明において、アイオノマ/基材複合体30は、触媒層10内においてプロトン伝導材として機能する。そのため、基材粒子32の材料は、プロトン伝導を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。基材粒子32の材料は、導電性材料であっても良く、あるいは、絶縁性材料であっても良い。
プロトン伝導材としてアイオノマ/基材複合体30を用いると、基材粒子32の形状に応じて、触媒層10内に導入される空隙の量を比較的広範に制御することが可能となる。また、基材粒子32として形状に異方性がある粒子を用いると、特定方向(例えば、触媒層10の厚さ方向)のプロトン伝導度を向上させることが可能となる。
(a)カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラフェンシート、グラファイトシート、カーボンブラック、導電性金属酸化物ナノシート、導電性金属酸化物粒子などの導電性材料からなる粒子、
(b)絶縁性金属酸化物、シリカなどの絶縁性材料からなる粒子、
などがある。
基材粒子32は、これらのいずれか1種からなるものでも良く、あるいは、2種以上からなるものでも良い。
特に、基材粒子32としてグラファイトシートを用いると、低温高湿条件及び高温低湿条件の双方において、高い性能を示す。これは、基材32としてグラファイトシートを用いることによって、触媒層10内に相対的に多量の空隙が導入されるためと考えられる。
「基材粒子32の平均粒径」とは、レーザー回折散乱法により測定されたメディアン径(D50)をいう。
基材粒子32の平均粒径は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な粒径を選択することができる。一般に、基材粒子32の平均粒径が小さくなりすぎると、粒子同士の繋がりが悪くなり、プロトン抵抗が大きくなる場合がある。従って、平均粒径は、0.1μm以上が好ましい。平均粒径は、さらに好ましくは、0.5μm以上、さらに好ましくは、1.0μm以上である。
一方、基材粒子32の平均粒径が大きくなりすぎると、触媒層の均一性が失われ、場合によってはプレスした際に電解質膜を傷つけてしまう場合がある。従って、平均粒径は、50μm以下が好ましい。平均粒径は、さらに好ましくは、10μm以下、さらに好ましくは、5μm以下である。
[A. 材料]
基材粒子32の表面は、第2アイオノマ34でコートされている。本発明において、第2アイオノマ34の材料は、特に限定されない。
第2アイオノマの材料34としては、例えば、
(a)ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標)、アクイヴィオン(登録商標)などのパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ、
(b)高酸素透過アイオノマ
などがある。
第2アイオノマ34は、第1アイオノマ28と同一の材料であっても良く、あるいは、異なる材料であっても良い。第2アイオノマ34に関するその他の点については、第1アイオノマ28と同様であるので、説明を省略する。
「I2/C2」とは、基材粒子32の質量(C2)に対する第2アイオノマ34の質量(I2)の比をいう。
第2アイオノマ34は、主として、触媒層10の厚さ方向にプロトンを輸送するためのものである。低温高湿条件から高温低湿条件までの幅広い温湿度環境で高い発電性能を得るためには、I2/C2は、所定の条件を満たしている必要がある。この点については、後述する。
[1.3.1. [I2/C2]/[I1/C1]]
本発明に係る触媒層10は、次の式(1)を満たしている必要がある。
[I2/C2]/[I1/C1]>1 …(1)
但し、
I1は、第1アイオノマ28の質量、
C1は、導電性粒子22の質量、
I2は、第2アイオノマ34の質量、
C2は、基材粒子32の質量。
一方、触媒層10の厚さ方向のプロトン伝導は、主として第2アイオノマ34が担う。そのため、第2アイオノマ34が少なくなりすぎると、プロトン抵抗が増加する。
一方、[I2/C2]/[I1/C1]を必要以上に大きくしても、効果に差がなく、実益がない。従って、[I2/C2]/[I1/C1]は、100以下が好ましい。[I2/C2]/[I1/C1]は、さらに好ましくは、50以下、さらに好ましくは、20以下、さらに好ましくは、10以下である。
1<[I2/C2]/[I1/C1]≦100 …(1')
本発明に係る触媒層10は、上述した式(1)に加えて、次の式(2)をさらに満たしているものが好ましい。
0.1≦I1/C1≦1.2 …(2)
一方、I1/C1が大きくなりすぎると、電極触媒26周辺の空隙率が過度に小さくなり、ガス拡散抵抗が増大する。従って、I1/C1は、1.2以下が好ましい。I1/C1は、さらに好ましくは、1.0以下、さらに好ましくは、0.8以下である。
本発明に係る触媒層10は、上述した式(1)に加えて、次の式(3)をさらに満たしているものが好ましい。
0.5≦I2/C2≦10.0 …(3)
一方、I2/C2を必要以上に大きくしても、効果に差がなく、実益がない。従って、I2/C2は、10.0以下が好ましい。I2/C2は、さらに好ましくは、7.5以下、さらに好ましくは、5.0以下である。
「アイオノマ質量比」とは、第1アイオノマ28、第2アイオノマ34、導電性粒子22、及び基材粒子34の総質量に対する、第1アイオノマ28及び第2アイオノマ34の総質量の比をいう。
一方、アイオノマ質量比が大きくなりすぎると、導電性粒子同士の繋がりが悪くなり、電子抵抗が大きくなる場合がある。従って、アイオノマ質量比は、0.8以下が好ましい。アイオノマ質量比は、さらに好ましくは、0.75以下、さらに好ましくは、0.7以下である。
「空隙率」とは、次の式(4)により算出される値をいう。
空隙率=(V-V0)×100/V …(4)
但し、
Vは、触媒層10の見かけの体積、
V0は、触媒層10の真密度(触媒層10内の空隙がゼロと仮定した時の密度)。
一方、空隙率が過剰になると、導電性粒子同士、及び/又は、アイオノマ同士の繋がりが悪くなり、電子抵抗及び/又はプロトン抵抗が大きくなる場合がある。従って、空隙率は、0.8以下が好ましい。空隙率は、さらに好ましくは、0.75以下、さらに好ましくは、0.7以下である。
本発明に係る触媒層10は、
(a)アイオノマコート触媒20を作製し、
(b)アイオノマ/基材複合体30を作製し、
(c)ドライ塗工法を用いて、基材表面に、アイオノマコート触媒20及びアイオノマ/基材複合体30を塗工する
ことにより得られる。
まず、アイオノマコート触媒30を作製する(第1工程)。
アイオノマコート触媒30は、具体的には、
(a)電極触媒20及び第1アイオノマ28を溶媒に溶解又は分散させ、
(b)分散液を乾燥させる
ことにより得られる。
また、分散液の乾燥方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。分散液の乾燥方法としては、例えば、スプレードライ法、凍結乾燥法などがある。
次に、アイオノマ/基材複合体30を作製する(第2工程)。
アイオノマ/基材複合体30は、具体的には、
(a)基材粒子32及び第2アイオノマ34を溶媒に溶解又は分散させ、
(b)分散液を乾燥させる
ことにより得られる。
また、分散液の乾燥方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。分散液の乾燥方法としては、例えば、スプレードライ法、凍結乾燥法などがある。
凍結乾燥法を用いて分散液を乾燥させる場合において、基材粒子32が形状異方性を有する粒子である時には、分散液を泡立てた後に分散液を凍結乾燥するのが好ましい。分散液を泡立てると、泡の膜面に形状異方性を有する基材粒子32が配向するので、形状異方性を有する基材粒子32の表面に第2アイオノマ34を均一に被覆することができる。
次に、ドライ塗工法を用いて、基材(例えば、電解質膜40)の表面に、アイオノマコート触媒20及びアイオノマ/基材複合体30を塗工する(第3工程)。これにより、本発明に係る触媒層10が得られる。
ドライ塗工法を用いて、I1/C1が相対的に低いアイオノマコート触媒と、I2/C2が相対的に高いアイオノマ/基材複合体との混合物を基材表面に塗工すると、低I1/C1のアイオノマコート触媒と、高I2/C2のアイオノマ/基材複合体との混合物からなる触媒層が得られる。
得られた触媒層は、主として、高I2/C2のアイオノマ/基材複合体がプロトン伝導を担うので、高温低湿条件下においても高い性能を示す。一方、電極触媒の表面は必要最小限の第1アイオノマで被覆され、かつ、アイオノマコート触媒の周囲にはアイオノマ/基材複合体が適度に分散しているために、電極触媒の周囲には適度な空隙が確保される。その結果、ガス拡散抵抗が低下し、低温高湿条件下においても高い性能を示す。
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1~2]
[1.1.1. アイオノマコート触媒の調製]
29mass%白金担持カーボン(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E):6.0gと、水:73.4gと、25.7mass%アイオノマ溶液(ソルベイ社製、D79):7.9gを秤量し、これらを遊星攪拌機で混合した。この混合液を高圧ホモジナイザー((株)スギノマシン製、スターバストミニ、ノズル径:100μm、圧力:150MPa)で分散させ、分散液を得た。
この分散液をスプレードライヤー(ビュッヒ社製、ミニスプレードライヤーB290、空気供給、入口温度:220℃、送液速度:5mL/min)で処理し、アイオノマコート触媒を得た。I1/C1は、0.5であった。
球状グラファイト(伊藤黒鉛工業(株)製、SG-BH8):1.0gと、水:44.5gと、25.7mass%アイオノマ溶液(ソルベイ社製、D79):11.7gを秤量し、これらを遊星攪拌機で混合した。この混合液を上記の高圧ホモジナイザー(但し、ノズル径:100μm、圧力:245MPa)で分散させ、球状グラファイトが劈開することにより形成されたグラファイトシートが分散している分散液を得た。
この分散液をフォーマーでクリーム状に泡立て、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングされたステンレス鋼製バットに移した。これを予め冷却した真空凍結乾燥器に入れて、泡状の分散液を凍結させた。分散液が-40℃以下になったことを確認した後、24時間以上真空乾燥を行った。真空乾燥後、乾燥物をミルで粉砕し、アイオノマ/グラファイトシート複合体を得た(実施例1)。I2/C2は、3.0であった。
カーボンブラック(Vulcan(登録商標)):2.0gと、水:134.7gと、25.7mass%アイオノマ溶液(ソルベイ社製、D79):23.3gを秤量し、これらを遊星攪拌機で混合した。この混合液を上記の高圧ホモジナイザー(但し、ノズル径:100μm、圧力:150MPa)で分散させ、分散液を得た。
この分散液を上記のスプレードライヤー(但し、空気供給、入口温度:220℃、送液速度:5mL/min)で処理し、アイオノマ/カーボンブラック複合体を得た(実施例2)。I2/C2は、3.0であった。
アイオノマコート触媒とプロトン伝導材とを質量比2:1で混合した。この粉体を静電スクリーン法により、ナフィオン(登録商標)膜(ケマーズ社製、NR211)の一方の面上に塗工し、カソード触媒層を得た。カソード触媒層の大きさは、10mm×10mmとした。Ptの目付量は、0.15mgPt/cm2とした。
さらに、白金担持カーボンとナフィオン(登録商標)からなる一般的な触媒シートを電解質膜の他方の面上に熱転写することでアノード触媒層を形成し、MEAを得た。
29mass%白金担持カーボン(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E):3.0gと、水:13.8gと、25.7mass%アイオノマ溶液(ソルベイ社製、D79):5.95gを秤量し、これらを遊星攪拌機で混合した。この混合液を上記の高圧ホモジナイザー(但し、ノズル径:100μm、圧力:75MPa)で分散させ、触媒インクを得た。I/Cは、0.75であった。
この触媒インクをアプリケータでPTFEシート上に塗布し、室温で乾燥させることで、カソード触媒層シートを得た(比較例1)。このカソード触媒層シートと一般的なアノード触媒層シートとをナフィオン(登録商標)膜(NR211)の両面に熱転写し、MEAを得た。
29mass%白金担持カーボン(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E):2.5gと、水:12.2gと、25.7mass%アイオノマ溶液(ソルベイ社製、D79):7.3gを秤量し、これらを遊星攪拌機で混合した。この混合液を上記の高圧ホモジナイザー(但し、ノズル径:100μm、圧力:75MPa)で分散させ、触媒インクを得た。I/Cは、1.1であった。
この触媒インクをアプリケータでPTFEシート上に塗布し、室温で乾燥させることで、カソード触媒層シートを得た(比較例2)。このカソード触媒層シートと一般的なアノード触媒層シートとをナフィオン(登録商標)膜(NR211)の両面に熱転写し、MEAを得た。
[2.1. 発電評価]
得られたMEAを小型セルに組み込み、発電評価を行った。評価条件は、セル温度45℃/バブラー温度55℃(過加湿)、又は、セル温度82℃/バブラー温度55℃(低湿)とした。背圧は、50kPaとした。水素流量は0.5L/minとし、空気流量は2L/minとした。
発電評価後の触媒層を切断し、断面をSEM観察することで、触媒層の厚さを測定した。触媒層の厚さの平均値、並びに、触媒層に含まれる白金、カーボン、及び、アイオノマの構成比及び密度から、触媒層の空隙率を求めた。なお、空隙率の算出に際しては、白金の密度ρPt=21.45g/cm3、カーボンの密度ρC=2.0g/cm3、アイオノマの密度ρi=2.0g/cm3と仮定した。
また、仕込み組成に基づいて、アイオノマ質量比(=アイオノマ及びカーボンの総質量に対するアイオノマの質量の比)を算出した。
表1に、各触媒層の工法、プロトン伝導材の種類、I1/C1、I2/C2、アイオノマ質量比、0.6Vにおける電流密度(過加湿条件及び低湿条件)、及び、触媒層の空隙率を示す。図2に、空隙率と電流密度(過加湿)との関係を示す。表1及び図2より、以下のことが分かる。
(2)比較例2の触媒層は、プロトン抵抗を下げ、低湿性能を向上させるために、比較例1よりもアイオノマ質量比を高くした触媒層である。しかしながら、アイオノマ質量比を高くすると、過加湿性能が低下するだけでなく、低湿性能も低下した。これは、アイオノマ質量比を高くすることで、触媒層の空隙率が減少したためと考えられる。
Claims (9)
- 以下の構成を備えた触媒層。
(1)前記触媒層は、アイオノマコート触媒と、アイオノマ/基材複合体とを備え、
前記アイオノマコート触媒は、導電性粒子の表面に触媒粒子が担持された電極触媒と、少なくとも前記導電性粒子の表面をコートする第1アイオノマとを備え、
前記アイオノマ/基材複合体は、基材粒子と、前記基材粒子の表面をコートする第2アイオノマとを備えている。
(2)前記触媒層は、次の式(1)を満たす。
[I2/C2]/[I1/C1]>1 …(1)
但し、
I1は、前記第1アイオノマの質量、
C1は、前記導電性粒子の質量、
I2は、前記第2アイオノマの質量、
C2は、前記基材粒子の質量。 - 前記導電性粒子は、カーボンブラック、又は、導電性酸化物粒子からなる請求項1に記載の触媒層。
- 前記基材粒子は、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラフェンシート、グラファイトシート、及び、カーボンブラックからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む請求項1又は2に記載の触媒層。
- 前記第1アイオノマは、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ、又は、高酸素透過アイオノマからなる請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒層。
- 前記第2アイオノマは、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ、又は、高酸素透過アイオノマからなるからなる請求項1から4までのいずれか1項に記載の触媒層。
- 次の式(2)を満たす請求項1から5までのいずれか1項に記載の触媒層。
0.1≦I1/C1≦1.2 …(2) - 次の式(3)を満たす請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒層。
0.5≦I2/C2≦10.0 …(3) - 次の式(1')を満たす請求項1から7までのいずれか1項に記載の触媒層。
1<[I2/C2]/[I1/C1]≦100 …(1') - 空隙率が0.57以上0.80以下である請求項1から8までのいずれか1項に記載の触媒層。
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