JP2019186210A - 電極触媒層、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
上記電極触媒層は、繊維状物質をさらに含んでもよい。
上記課題を解決するための膜電極接合体は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜において対向する2つの面の少なくとも一方に接合された上記電極触媒層と、を備える。
上記課題を解決するための固体高分子形燃料電池は、上記膜電極接合体を備える。
図1を参照して、膜電極接合体の構成を説明する。図1は、膜電極接合体の厚さ方向に沿う断面構造を示している。
図1が示すように、膜電極接合体10は、高分子電解質膜11と、カソード側電極触媒層12Cと、アノード側電極触媒層12Aとを備えている。高分子電解質膜11は、固体状の高分子電解質膜である。高分子電解質膜11において対向する一対の面において、一方の面にカソード側電極触媒層12Cが接合し、他方の面にアノード側電極触媒層12Aが接合している。カソード側電極触媒層12Cは酸素極(カソード)を構成する電極触媒層であり、アノード側電極触媒層12Aは燃料極(アノード)を構成する電極触媒層である。電極触媒層12の外周部は、不図示のガスケットなどによって封止されてもよい。
図2を参照して、膜電極接合体10が備える電極触媒層の構成をより詳しく説明する。
なお、水銀圧入法を用いて実際に測定を行うときには、圧入された水銀の容積を相互に異なる圧力Pの印加によって別々に記録する。そして、上記式(1)に基づいて、各圧力Pを細孔直径Dに換算する。また、圧入された水銀の容積と細孔容積Vpとは等しいとして、細孔直径がDからD+dDまでに増加したときの細孔容積Vpの増加分である細孔容積増加分dVを細孔直径Dに対してプロットする。このプロットのピークが、細孔容積Vpの分布のピークである。
[条件1]
条件1では、細孔直径Dに対する細孔容積Vpの分布を示す分布曲線のピークは、細孔直径Dが0.06μm以上0.1μm以下(0.06μm≦D≦0.1μm)である範囲に含まれている。分布曲線のピークは、細孔直径Dが0.07μm以上0.1μm以下(0.07μm≦D≦0.1μm)である範囲に含まれることが好ましい。分布曲線のピークが、細孔直径Dが0.06μm以上0.1μm以下である範囲に含まれることによって、電極触媒層12は、電極触媒層12が十分なガス拡散性、および、排水性を備えるだけの空隙を含むことができる。
電極触媒層12では、全ての細孔の細孔容積Vpを積算した値が、第1積算容積である。細孔直径Dが50nm以下である細孔の細孔容積Vpを積算した値が、第2積算容積である。条件2では、第1積算容積に対する第2積算容積の割合が、30%以上40%以下である。
電極触媒層12では、細孔直径Dが90nm以上である細孔の細孔容積Vpを積算した値が、第3積算容積である。条件3では、第1積算容積に対する第3積算容積の割合が、15%以上35%以下である。
50nm以上80nm以下の各細孔直径は、第1の細孔直径である。3nmから第1の細孔直径までの細孔の細孔容積Vpを積算した値は、累積細孔容積である。そして、第1積算容積に対する累積細孔容積の百分率が、累積細孔容積率である。条件4では、電極触媒層12において、各第1の細孔直径(μm)に対する累積細孔容積の分布を示す分布曲線の傾きが7以上14以下である。条件4を満たす電極触媒層12では、細孔直径が3nm以上80nm以下の相対的に小さい各直径の細孔が、発電性能の向上に要する各機能に適した割合で分布する。すなわち、電極触媒層12内において三相界面を維持しつつ、電極触媒層12におけるガスの拡散性と、生成水の排出性とを高めることができる。
[条件5]
条件5において、電極触媒層12の体積V0に対して、電極触媒層12に含まれる全ての細孔の細孔容積を積算した積算容積Vの百分率(V/V0×100(%))が、65%以上90%以下である。これによって、電極触媒層12は、より十分なガス拡散性、および、排水性を有することができる。なお、電極触媒層12の体積V0は、水銀圧入法による測定に用いた電極触媒層12の面積と厚さとの積として得ることができる。
図3を参照して、膜電極接合体10を備える固体高分子形燃料電池の構成を説明する。以下に説明する構成は、固体高分子形燃料電池の一例における構成である。また、図3は、固体高分子形燃料電池が備える単セルの構成を示している。固体高分子形燃料電池は、複数の単セルを備え、かつ、複数の単セルが積層された構成でもよい。
H2 → 2H+ + 2e− … 反応式(1)
1/2O2 + 2H+ + 2e− → H2O … 反応式(2)
以下、上述した膜電極接合体の製造方法を説明する。
膜電極接合体10を製造するときには、まず、触媒物質21、導電性担体22、高分子電解質23、および、繊維状物質24を分散媒に混合し、その後、混合物に分散処理を施すことによって触媒インクを作成する。なお、繊維状物質24は、触媒インクを構成する物質から省略されてもよい。分散処理は、例えば、遊星型ボールミル、ビーズミル、および、超音波ホモジナイザーなどを用いて行うことができる。
図4および図5を参照して、膜電極接合体の実施例を説明する。
[実施例1]
白金担持カーボン触媒(TEC10E50E、田中貴金属工業(株)製)、水、1‐プロパノール、高分子電解質(ナフィオン(登録商標)分散液、和光純薬工業(株)製)、および、カーボンナノファイバー(VGCF(登録商標)−H、直径150nm、昭和電工(株)製)を混合した。なお、白金担持カーボン触媒において、白金触媒がカーボン粒子に担持されている。カーボン粒子の質量と高分子電解質の質量との比を1:1に設定した。そして、混合物に対して遊星型ボールミルを用いて60分間にわたって300rpmで分散処理を行った。その際に、直径が5mmであるジルコニアボールをジルコニア容器の3分の1程度加えた。これにより、触媒インクを調製した。なお、高分子電解質の質量はカーボン粒子の質量に対して100質量%であり、繊維状物質の質量はカーボン粒子の質量に対して100質量%であり、分散媒中の水の割合は50質量%であり、触媒インクにおける固形分含有量が10質量%であるように触媒インクを調整した。
触媒インクを調製するときに、カーボンナノファイバー(VGCF(登録商標)−H、直径150nm、昭和電工(株)製)のかわりに多層カーボンナノチューブ(直径60−100nm、東京化成工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の膜電極接合体を得た。
実施例1と同様の方法によって、触媒インクを調製した。触媒インクを、PTFEフィルムの表面にスリットダイコーターを用いて塗布することによって塗膜を形成した。次いで、80度の温風オーブンに配置し、塗膜のタックがなくなるまで塗膜を乾燥させた。これにより、触媒層付き基材を得た。カソード側電極触媒層を含む基材と、アノード側電極触媒層を含む基材とを準備した。なお、高分子電解質膜のカソード面には触媒インクの厚さが150μmとなるように、また、アノード面には触媒インクの厚さが60μmとなるように、高分子電解質膜に触媒インクを塗布した。そして、高分子電解質膜(ナフィオン(登録商標)211、Dupont社製)における一対の面に対し、触媒層付き基材が1つずつ各面に対向するように配置し、積層体を形成した。120℃、5MPaの条件で積層体をホットプレスすることによって、高分子電解質膜に2つの電極触媒層を接合した。次いで、各電極触媒層からPTFEフィルムを剥離することによって、実施例3の膜電極接合体を得た。
カソード側電極触媒層を形成するときに、触媒インクの塗布量を実施例1の3倍とした以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例1の膜電極接合体を得た。
触媒インクを調製するときに、固形分比率を実施例1の2分の1とした以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例2の膜電極接合体を得た。
触媒インクを調製するときに、カーボンナノファイバーを添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例3の膜電極接合体を得た。
触媒インクを調製するときに、カーボンナノファイバーの量を実施例1の2倍とした以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例4の膜電極接合体を得た。
触媒インクを調製するときに、カーボンナノファイバーの量を実施例1の3倍とした以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例5の膜電極接合体を得た。
細孔容積Vpの分布は、水銀圧入法により測定した。具体的には、高分子電解質膜にカソード側電極触媒層のみが形成された膜電極接合体を用いて、自動ポロシメーター(マイクロメリティックス社製、オートポアIV9510)を用いて、細孔容積Vpを測定した。測定セルの容積は約5cm3であり、水銀圧入の圧力を3kPaから400MPaまで昇圧した。これにより、各圧力における水銀の圧入量、つまり細孔容積Vpを得た。水銀圧入の圧力をWashburnの式を用いて細孔直径Dに換算し、細孔直径Dに対する細孔容積Vpの分布関数dVp/dlogDのプロットを作成した。なお、表面張力γを0.48N/mとし、かつ、接触角θを130°とした。そして、このプロットのピークに対応する細孔直径Dを細孔直径Dpとして読み取った。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電極触媒層の断面を観察することによって、電極触媒層の厚さを計測した。具体的には、電極触媒層の断面を、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、FE-SEM S-4800)を用いて、1000倍の倍率で観察した。電極触媒層の断面における30カ所の観察点において電極触媒層の厚さを計測した。30カ所の観察点における厚さの平均値を電極触媒層の厚さとした。
発電性能の測定には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が刊行した小冊子である「セル評価解析プロトコル」に準拠する方法を用いた。膜電極接合体の各面に、ガス拡散層、ガスケット、および、セパレーターを配置し、所定の面圧となるように締め付けたJARI標準セルを評価用単セルとして用いた。そして、「セル評価解析プロトコル」に記載された方法に準拠してI‐V測定を実施した。このときの条件を標準条件に設定した。また、アノードの相対湿度とカソードの相対湿度とをRH100%としてI‐V測定を実施した。このときの条件を高湿条件に設定した。
耐久性の測定には、発電性能の測定に用いた評価用単セルと同一の単セルを評価用単セルとして用いた。そして、上述した「セル評価解析プロトコル」に記載の湿度サイクル試験によって耐久性を測定した。
実施例1から実施例3の膜電極接合体が備える電極触媒層、および、比較例1から比較例5の膜電極接合体が備える電極触媒層の各々について、以下の項目における結果は、表1に示す通りであった。すなわち、各電極触媒層において、細孔容積Vpの分布曲線におけるピークでの細孔直径Dp、第1積算容積に対する第3積算容積の百分率R(L)(%)、および、第1積算容積に対する第2積算容積の百分率R(S)(%)は、表1に示す通りであった。また、各電極触媒層において、電極触媒層の体積V0に対する第1積算容積Vの百分率V/V0(%)、および、電極触媒層の厚さT(μm)は、表1に示す通りであった。また、実施例1から実施例3の膜電極接合体を備える固体高分子形燃料電池、および、比較例1から比較例5の膜電極接合体を備える固体高分子形燃料電池の各々について、発電性能、および、耐久性を測定した結果は、表1に示す通りであった。
(1)細孔直径Dに対する細孔容積Vpの分布を示す分布曲線のピークにおいて細孔直径Dが0.06μm以上0.1μm以下である場合には、電極触媒層12が十分なガス拡散性、および、排水性を備えるだけの空隙が含まれて、発電性能が向上可能である。
(5)電極触媒層12がカソード側電極触媒層12Cに適用されることによって、固体高分子形燃料電池30の発電性能を高める効果をより顕著に得ることができる。
Claims (11)
- 固体高分子形燃料電池において固体高分子電解質膜に接合する電極触媒層であって、
触媒物質と、
前記触媒物質を担持する導電性担体と、
高分子電解質と、を含み、
前記電極触媒層に含まれる空隙のなかで、3nm以上5.5μm以下の直径を有する空隙を細孔とするとき、
水銀圧入法によって測定された細孔容積から算出された細孔の直径が細孔直径であり、
前記細孔直径に対する前記細孔容積の分布を示す分布曲線のピークが、前記細孔直径が0.06μm以上0.1μm以下である範囲に含まれる
電極触媒層。 - 固体高分子形燃料電池において固体高分子電解質膜に接合する電極触媒層であって、
触媒物質と、
前記触媒物質を担持する導電性担体と、
高分子電解質と、を含み、
前記電極触媒層に含まれる空隙のなかで、3nm以上5.5μm以下の直径を有する空隙を細孔とするとき、
水銀圧入法によって測定された細孔容積から算出された前記細孔の直径が、細孔直径であり、
全ての前記細孔の前記細孔容積を積算した値が、第1積算容積であり、
前記細孔直径が50nm以下である前記細孔の前記細孔容積を積算した値が、第2積算容積であり、
前記第1積算容積に対する前記第2積算容積の百分率が、30%以上40%以下である
電極触媒層。 - 固体高分子形燃料電池において固体高分子電解質膜に接合する電極触媒層であって、
触媒物質と、
前記触媒物質を担持する導電性担体と、
高分子電解質と、を含み、
前記電極触媒層に含まれる空隙のなかで、3nm以上5.5μm以下の直径を有する空隙を細孔とするとき、
水銀圧入法によって測定された細孔容積から算出された前記細孔の直径が、細孔直径であり、
全ての前記細孔の前記細孔容積を積算した値が、第1積算容積であり、
前記細孔直径が90nm以上である前記細孔の前記細孔容積を積算した値が、第3積算容積であり、
前記第1積算容積に対する前記第3積算容積の百分率が、15%以上35%以下である
電極触媒層。 - 固体高分子形燃料電池において固体高分子電解質膜に接合する電極触媒層であって、
触媒物質と、
前記触媒物質を担持する導電性担体と、
高分子電解質と、を含み、
前記電極触媒層に含まれる空隙のなかで、3nm以上5.5μm以下の直径を有する空隙を細孔とするとき、
水銀圧入法によって測定された細孔容積から算出された前記細孔の直径が、細孔直径であり、
全ての前記細孔の前記細孔容積を積算した値が、第1積算容積であり、
50nm以上80nm以下の各細孔直径が第1の細孔直径であり、
3nmから前記第1の細孔直径までの前記細孔の前記細孔容積を積算した値が累積細孔容積であって、前記第1積算容積に対する前記累積細孔容積の百分率が累積細孔容積率であり、
前記第1の細孔直径(μm)に対する前記累積細孔容積の分布を示す分布曲線の傾きが、7以上14以下である
電極触媒層。 - 前記電極触媒層の体積に対して、全ての前記細孔の前記細孔容積を積算した積算容積の百分率が、65%以上90%以下である
請求項1から4のいずれか一項に記載の電極触媒層。 - 繊維状物質をさらに含む
請求項1から5のいずれか一項に記載の電極触媒層。 - 前記繊維状物質は、電子伝導性繊維、および、プロトン伝導性繊維から選択される一種または二種以上の繊維状物質を含み、
前記電子伝導性繊維は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、および、遷移金属含有繊維から構成される群から選択される少なくとも一種を含む
請求項6に記載の電極触媒層。 - 前記電極触媒層の厚さが、5μm以上30μm以下である
請求項1から7のいずれか一項に記載の電極触媒層。 - 固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜において対向する2つの面の少なくとも一方に接合された電極触媒層と、を備え、
前記電極触媒層が、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極触媒層である
膜電極接合体。 - 前記電極触媒層は、前記固体高分子形燃料電池においてカソードを構成する電極触媒層である
請求項9に記載の膜電極接合体。 - 請求項9または10に記載の膜電極接合体を備える固体高分子形燃料電池。
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