JP6142963B2 - ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる膜電極接合体および燃料電池 - Google Patents
ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる膜電極接合体および燃料電池 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6142963B2 JP6142963B2 JP2016510098A JP2016510098A JP6142963B2 JP 6142963 B2 JP6142963 B2 JP 6142963B2 JP 2016510098 A JP2016510098 A JP 2016510098A JP 2016510098 A JP2016510098 A JP 2016510098A JP 6142963 B2 JP6142963 B2 JP 6142963B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gas diffusion
- layer
- catalyst
- diffusion layer
- water
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08J—WORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
- C08J9/00—Working-up of macromolecular substances to porous or cellular articles or materials; After-treatment thereof
- C08J9/26—Working-up of macromolecular substances to porous or cellular articles or materials; After-treatment thereof by elimination of a solid phase from a macromolecular composition or article, e.g. leaching out
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08J—WORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
- C08J9/00—Working-up of macromolecular substances to porous or cellular articles or materials; After-treatment thereof
- C08J9/0066—Use of inorganic compounding ingredients
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01M—PROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
- H01M8/00—Fuel cells; Manufacture thereof
- H01M8/02—Details
- H01M8/0202—Collectors; Separators, e.g. bipolar separators; Interconnectors
- H01M8/023—Porous and characterised by the material
- H01M8/0234—Carbonaceous material
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01M—PROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
- H01M8/00—Fuel cells; Manufacture thereof
- H01M8/02—Details
- H01M8/0202—Collectors; Separators, e.g. bipolar separators; Interconnectors
- H01M8/023—Porous and characterised by the material
- H01M8/0239—Organic resins; Organic polymers
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01M—PROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
- H01M8/00—Fuel cells; Manufacture thereof
- H01M8/02—Details
- H01M8/0202—Collectors; Separators, e.g. bipolar separators; Interconnectors
- H01M8/023—Porous and characterised by the material
- H01M8/0241—Composites
- H01M8/0243—Composites in the form of mixtures
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01M—PROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
- H01M8/00—Fuel cells; Manufacture thereof
- H01M8/10—Fuel cells with solid electrolytes
- H01M8/1004—Fuel cells with solid electrolytes characterised by membrane-electrode assemblies [MEA]
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08J—WORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
- C08J2201/00—Foams characterised by the foaming process
- C08J2201/04—Foams characterised by the foaming process characterised by the elimination of a liquid or solid component, e.g. precipitation, leaching out, evaporation
- C08J2201/044—Elimination of an inorganic solid phase
- C08J2201/0444—Salts
- C08J2201/0446—Elimination of NaCl only
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08J—WORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
- C08J2300/00—Characterised by the use of unspecified polymers
- C08J2300/26—Elastomers
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08J—WORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
- C08J2353/00—Characterised by the use of block copolymers containing at least one sequence of a polymer obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds; Derivatives of such polymers
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01M—PROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
- H01M8/00—Fuel cells; Manufacture thereof
- H01M8/10—Fuel cells with solid electrolytes
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/30—Hydrogen technology
- Y02E60/50—Fuel cells
Description
本発明は、ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる膜電極接合体および燃料電池に関する。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子形燃料電池(PEFC)は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。固体高分子形燃料電池は、発電機能を発揮する複数の単セルが積層された構造を有する。この単セルは、高分子電解質膜、当該膜の両面に順次形成される一対の触媒層および一対のガス拡散層(GDL)を有する膜−電極接合体(MEA)を備える。そして、個々の単セルが有するMEAは、セパレータを介して隣接する単セルのMEAと電気的に接続される。このようにして単セルが積層されることにより、燃料電池スタックが構成される。そして、この燃料電池スタックは、種々の用途に使用可能な発電手段として機能する。
上記構成のうち、ガス拡散層としては、ガス拡散層基材及び微多孔質層からなるものが知られている。ここで、微多孔質層は、ガス拡散層と触媒層との間の電気抵抗を下げると共にガスの流れを良くするための中間層として機能し、ガス拡散層の触媒層側に配置される。上記微多孔質層は、ガス拡散層基材と共に、ガス拡散層全体と同様に、ガス透過性、排水性に優れていることが要求される。
上記要求を満たすために、例えば、特許文献1では、異なるバインダ含有量を有する2層以上の微細多孔質層(微多孔質層)をガス拡散層に使用することが報告される。上記特許文献1に記載のガス拡散層は、バインダの偏在を軽減することにより、ガス透過性及び排水性が向上できる。
しかしながら、上記特許文献1に記載の微細多孔質層(ガス拡散層)の製造には、バインダ(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を溶融させるために通常300℃を超える高温での焼成工程を必要とする(例えば、特許文献1の段落「0038」)。このため、ガス拡散層を製造するにあたって、エネルギーコストがかかる。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、より安価に製造できる微多孔質層およびガス拡散層を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、より安価に製造できかつ高いガス透過性および/または排水性を有する微多孔質層およびガス拡散層を提供することである。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、エラストマー樹脂をバインダとして使用することによって、焼成工程を必要とせずに微多孔質層を製造できることを知得し、本発明を完成した。
本発明の非焼成ガス拡散多孔層(以下、単に「本発明のガス拡散多孔層」または「ガス拡散多孔層」とも称する)は、エラストマー樹脂およびカーボン粒子を含むことを特徴とする。該ガス拡散多孔層は、燃料電池の部材として用いられ、好適には触媒層とガス拡散層との間に配置されて、高いガス透過性および/または排水性を有する。また、上記構成によれば、エラストマー樹脂溶液を用いて微多孔質層を形成できるため、製造工程で高温焼成を必要としない。このため、微多孔質層およびガス拡散層を安価に製造できる。なお、本明細書において、「非焼成」とは、製造時時に焼成工程(高温焼成工程)を経ないこと意図する。また、この際の「高温焼成工程」または「焼成工程」とは、250℃以上の熱処理工程を意味する。
従来、ガス透過性や排水性を向上するために、ガス拡散層基材と触媒層との間に、特許文献1のようにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの撥水性のフッ素系樹脂をバインダとして含む微細多孔質層(微多孔質層)が配置されていた。しかしながら、PTFEなどのフッ素系樹脂は高価であり、燃料電池のコスト上昇の要因となっていた。また、フッ素系樹脂はスラリー塗布後、高温で焼成する必要がある(例えば、上記特許文献1 段落「0038」参照)。このため、上記方法は、時間、エネルギーコストの観点から、量産するには問題があった。また、焼成温度に耐えうる基材(例えば、ポリイミドフィルム)を使用する必要があるなどの点でもデメリットがあった。
そこで、本発明者らは、PTFEなどのフッ素系樹脂を用いない系で、焼成工程を必要とせずに微多孔質層(およびガス拡散層)を製造できる方法について鋭意検討を行った。その結果、エラストマー樹脂をバインダとして使用してガス拡散多孔層(微多孔質層)を製造すると、高温での焼成工程を経ずに製造できることを知得した。また、このようにして得られるガス拡散多孔層は、ガス透過性および排水性に優れる。本発明のガス拡散多孔層がかようなガス透過性および排水性を有している詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。なお、本発明は下記メカニズムに何ら拘束されるものではない。PTFEなどのフッ素系樹脂をガス拡散多孔層に用いた場合、撥水性能は高いため、撥水速度は速い。一方、ガス拡散層製造時にガス拡散層基材に塗布されたPTFE及びカーボン粒子を含む塗膜を焼成するが、この際、PTFEの一部が溶けて、カーボン粒子表面を被覆してバインダとして機能する。しかしながら、焼成工程で溶融しなかった未溶融PTFEは、物質輸送に何ら関与しないばかりか、体積当たりのカーボン量を低下させて、ガス透過性を低下させる。これに対して、本発明によるように、エラストマー樹脂及びカーボン粒子でガス拡散多孔層(微多孔質層)を形成する場合には、エラストマー樹脂は撥水性を示すため、本発明のガス拡散多孔層は、優れた排水性を示す。また、エラストマー樹脂の溶液をカーボン粒子と混合することによって、カーボン粒子表面にエラストマー樹脂被膜を形成する。このため、エラストマー樹脂が粒子形態でガス拡散多孔層内に存在することがほとんどまたは全くない。このため、本発明のガス拡散多孔層は、カーボン粒子間の空隙を最大限に利用できるため、優れたガス透過性を示す。加えて、当該ガス拡散多孔層では、エラストマー樹脂によるゴム弾性によって、近隣のカーボン粒子は僅かに引き寄せられ、電気抵抗を一層低減できる。ただし、この場合であっても、エラストマー樹脂被膜は薄いため、全体を大きく縮めるほどの応力は発生しない。このため、本発明のガス拡散多孔層を用いるガス拡散層は十分な導電性を確保できる。ゆえに、ガス拡散層を用いる燃料電池は、発電性能に優れる。
また、エラストマー樹脂を用いるため、フッ素系樹脂を用いて微多孔質層を形成する際に必要な高温焼成が不要であり、また、高温焼成に耐えうる耐熱性の基材を用いる必要もない。このため、微多孔質層を生産する際のコストを低減することができ、さらに生産時のエネルギーコストを低減することもでき、量産に適する。さらに、PTFEの分散液を微多孔質層の形成に用いる場合には、沈降して濃度ばらつきが生じるため、使用前に攪拌しないとならないが、強く攪拌すると固化してしまうため、時間をかけて緩やかに攪拌する必要があった。このため、生産効率の点で難があった。これに対して、エラストマー樹脂を用いてガス拡散多孔層を形成する場合には、材料の投入が1工程で可能であるため、生産性が向上するといった利点もある。
したがって、本発明のガス拡散多孔層は、高いガス透過性、排水性及び導電性は維持したまま、焼成工程を経ずに製造できる。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の燃料電池の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明のガス拡散多孔層は、膜電極接合体(MEA)や燃料電池に好ましく適用できる。したがって、本発明は、本発明の非焼成ガス拡散多孔層を有するガス拡散層、当該ガス拡散層を有する膜電極接合体(MEA)、特に燃料電池用膜電極接合体、および当該膜電極接合体を含む燃料電池をも提供する。
[燃料電池]
燃料電池は、膜電極接合体(MEA)と、燃料ガスが流れる燃料ガス流路を有するアノード側セパレータと酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータとからなる一対のセパレータとを有する。
燃料電池は、膜電極接合体(MEA)と、燃料ガスが流れる燃料ガス流路を有するアノード側セパレータと酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータとからなる一対のセパレータとを有する。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を示す概略図である。PEFC1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で膜電極接合体(MEA)10を構成する。ここで、アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cは、触媒層(3a、3c)側にガス拡散多孔層を有する。
PEFC1において、MEA10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5c)により挟持されている。図1において、セパレータ(5a、5c)は、図示したMEA10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(5a、5c)と固体高分子電解質膜2との間や、PEFC1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部(ガスケット)が配置されるが、図1ではこれらの記載を省略する。
セパレータ(5a、5c)は、例えば、厚さ0.5mm以下の薄板にプレス処理を施すことで図1に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凸部はMEA10と接触している。これにより、MEA10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC1の運転時にガスを流通させるためのガス流路として機能する。具体的には、アノードセパレータ5aのアノードガス流路6aには燃料ガス(例えば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ5cのカソードガス流路6cには酸化剤ガス(例えば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(5a、5c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC1の運転時にPEFCを冷却するための冷媒(例えば、水)を流通させるための冷媒流路7とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
なお、図1に示す実施形態においては、セパレータ(5a、5c)は凹凸状の形状に成形されている。ただし、セパレータは、かような凹凸状の形態のみに限定されるわけではなく、ガス流路および冷媒流路の機能を発揮できる限り、平板状、一部凹凸状などの任意の形態であってもよい。
[ガス拡散層]
ガス拡散層は、ガス拡散多孔層に加えてガス拡散層基材を含むことが好ましい。
ガス拡散層は、ガス拡散多孔層に加えてガス拡散層基材を含むことが好ましい。
図2は、ガス拡散層(4a、4c)の一実施形態を示す拡大断面模式図である。図2において、ガス拡散層は、ガス拡散層基材20と、基材上に隣接して配置されるガス拡散多孔層21からなる。ガス拡散多孔層21は、図1の触媒層(3a、3c)側に配置される。
本発明のガス拡散層は、上記図2の形態に限定されず、ガス拡散層基材と、ガス拡散多孔層との間に中間層を設けてもよいが、図2のガス拡散層基材上に直接ガス拡散多孔層が配置されてなる形態が好ましい。すなわち、ガス拡散層基材および前記基材上に隣接して配置されるガス拡散多孔層を有する、ガス拡散層であることが好ましい。かような形態であると、ガス拡散層全体の抵抗が上昇することなく、排水を効率的に行うことができ、電池特性が向上するためである。
また、ガス拡散多孔層は、アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層のいずれか一方に設けられてもよく、また、双方に設けられてもよいが、カソード側で水が生成するため、少なくともカソード側に設けることが好ましく、より好ましくは双方のガス拡散層にガス拡散多孔層を設ける形態である。
ガス拡散層(アノードガス拡散層4a、カソードガス拡散層4c)は、セパレータのガス流路(6a、6c)を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層(3a、3c)への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
ガス拡散層(4a、4c)の基材(ガス拡散層基材)を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス等の炭素繊維で形成された炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料;ならびに金網、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチングプレート、精密プレス加工プレート、金属メッシュ、金属細線焼結体、金属不織布などが挙げられる。
ガス拡散層基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層基材は、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの従来公知の撥水剤を用いてもよい。撥水処理方法は特に制限されず、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。例えば、ガス拡散層に用いられる基材を撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔体にカーボン粒子を含浸させて焼結させたシート体を用いてもよい。シート体とすることによって、製造工程が簡易になり、また、燃料電池10の各部材を積層する際の取り扱い及び組み立てが容易になる。
または、ガス拡散層基材は、SLG社製のカーボンペーパ等の市販品を使用してもよい。
ガス拡散層基材は、その他の添加剤を有していてもよい。添加剤としては、導電性カーボン、分散剤、分散助剤などが挙げられる。
[ガス拡散多孔層]
ガス拡散多孔層(MPL層、マイクロポーラス層、微多孔層または微多孔質層とも呼ばれる)は、エラストマー樹脂およびカーボン粒子を含有する。ここで、エラストマー樹脂は撥水性を示すため、ガス拡散多孔層に優れた排水性を付与できる。また、エラストマー樹脂の溶液をカーボン粒子と混合することによって、カーボン粒子表面にエラストマー樹脂被膜を形成できる。エラストマー樹脂が粒子形態でガス拡散多孔層内に存在することがほとんどまたは全くないため、物質(燃料ガスや酸化剤ガス)拡散に寄与しない体積を低減できる。ゆえに、ガス拡散多孔層に優れたガス透過性を付与できる。加えて、当該ガス拡散多孔層では、エラストマー樹脂によるゴム弾性によって、近隣のカーボン粒子は僅かに引き寄せられ、電気抵抗を一層低減できる。ただし、この場合であっても、エラストマー樹脂被膜は薄いため、全体を大きく縮めるほどの応力は発生しない。このため、ガス拡散多孔層に高い導電率をも付与できる。
ガス拡散多孔層(MPL層、マイクロポーラス層、微多孔層または微多孔質層とも呼ばれる)は、エラストマー樹脂およびカーボン粒子を含有する。ここで、エラストマー樹脂は撥水性を示すため、ガス拡散多孔層に優れた排水性を付与できる。また、エラストマー樹脂の溶液をカーボン粒子と混合することによって、カーボン粒子表面にエラストマー樹脂被膜を形成できる。エラストマー樹脂が粒子形態でガス拡散多孔層内に存在することがほとんどまたは全くないため、物質(燃料ガスや酸化剤ガス)拡散に寄与しない体積を低減できる。ゆえに、ガス拡散多孔層に優れたガス透過性を付与できる。加えて、当該ガス拡散多孔層では、エラストマー樹脂によるゴム弾性によって、近隣のカーボン粒子は僅かに引き寄せられ、電気抵抗を一層低減できる。ただし、この場合であっても、エラストマー樹脂被膜は薄いため、全体を大きく縮めるほどの応力は発生しない。このため、ガス拡散多孔層に高い導電率をも付与できる。
また、エラストマー樹脂を用いるため、ガス拡散多孔層形成時に250℃以上の高温焼成が不要であり、また、高温焼成に耐えうる耐熱性の基材を用いる必要もない。このため、微多孔質層を生産する際のコストを低減することができ、さらに生産時のエネルギーコストを低減することもできる。材料の投入が1工程で可能であるため、生産性が向上し、量産に適するといった利点もある。
ガス拡散多孔層の厚さは、特に制限されず、ガス拡散性および抵抗を考慮して適宜決定すればよい。ガス拡散多孔層の厚さ(乾燥膜厚)は、好ましくは3〜500μmであり、より好ましくは5〜300μmであり、さらにより好ましく5〜250μmであり、特に好ましく25〜100μmである。かような範囲にあれば、機械的強度、ガス透過性、排水性のバランスが適切に制御できる。
(エラストマー樹脂)
本発明に係るエラストマー樹脂は、特に制限されないが、撥水性および/または油溶性を有することが好ましく、撥水性及び油溶性双方を有することが好ましい。エラストマー樹脂が撥水性を有することによって、ガス拡散多孔層はさらに優れた排水性を発揮できる。また、エラストマー樹脂が油溶性を有することによって、エラストマー樹脂溶液を用いてカーボン粒子表面にエラストマー樹脂被膜を形成できる。このため、ガス拡散多孔層におけるエラストマー樹脂粒子の存在を有意に低減できるため、ガス拡散多孔層はさらに優れたガス透過性を発揮できる。
本発明に係るエラストマー樹脂は、特に制限されないが、撥水性および/または油溶性を有することが好ましく、撥水性及び油溶性双方を有することが好ましい。エラストマー樹脂が撥水性を有することによって、ガス拡散多孔層はさらに優れた排水性を発揮できる。また、エラストマー樹脂が油溶性を有することによって、エラストマー樹脂溶液を用いてカーボン粒子表面にエラストマー樹脂被膜を形成できる。このため、ガス拡散多孔層におけるエラストマー樹脂粒子の存在を有意に低減できるため、ガス拡散多孔層はさらに優れたガス透過性を発揮できる。
ここで、本明細書において、「撥水性」は、樹脂を平滑な被膜として形成したものに対し、水滴を滴下した際に形成される表面接触角(本明細書では、単に「表面接触角」とも称する)が90°以上であることを意味する。好ましくは、エラストマー樹脂の表面接触角は、好ましくは95°以上、より好ましくは100°以上である。なお、エラストマー樹脂の表面接触角の上限は、特に制限されないが、好ましくは150°以下であり、より好ましくは140°以下である。本明細書において、「表面接触角」または「水に対する表面接触角」は、エラストマー樹脂を平滑な皮膜として形成したものに対し、水滴を滴下した際に形成される表面接触角であり、以下の方法によって測定される値である。
(水に対する表面接触角(表面接触角)の測定方法)
ガス拡散多孔層を両面テープでガラス板に固定する(サンプル)。このサンプルに純水を3μl滴下し、楕円フィッティング法を用い純水の滴下から20秒後における接触角を、接触角測定装置(Auto Dispenser AD-31、DropMaster700、協和界面化学社製)を用いて測定する。
ガス拡散多孔層を両面テープでガラス板に固定する(サンプル)。このサンプルに純水を3μl滴下し、楕円フィッティング法を用い純水の滴下から20秒後における接触角を、接触角測定装置(Auto Dispenser AD-31、DropMaster700、協和界面化学社製)を用いて測定する。
また、明細書において、「エラストマー樹脂が油溶性を有する」とは、エラストマー樹脂が有機溶剤に対して5重量%以上の溶解性を示すことを意味する。ここで、有機溶剤は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン及び石油ベンジン等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ならびにメチルセロソルブ、ジメチルセロソルブ、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル系溶剤が挙げられる。本発明ではエラストマー樹脂は、25℃または30℃で、上記有機溶剤、特にトルエン、THFおよびヘキサンの少なくとも一(好ましくは2種の溶剤、より好ましくは3種全ての溶剤)に対して、5重量%以上の溶解性を示すことが好ましく、10重量%以上の溶解性を示すことがより好ましい。なお、エラストマー樹脂の有機溶剤に対する溶解性の上限は、エラストマー樹脂を含むインク組成物が作製できる範囲であれば特に制限されず、適宜選択できる。
すなわち、エラストマー樹脂は、水に対する表面接触角が100°以上であるおよび/または有機溶剤に対する溶解性が5重量%以上であることが好ましく、水に対する表面接触角が100°以上でありかつ有機溶剤に対する溶解性が5重量%以上であることがより好ましい。
本発明に使用されるエラストマー樹脂は、ゴム弾性を有するものであれば特に制限されないが、上記したような撥水性および/または油溶性を示すことが好ましい。このようなエラストマー樹脂としては、水素添加石油樹脂、ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR樹脂)およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などが挙げられる。上記エラストマー樹脂は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
ここで、水素添加石油樹脂としては、特に制限されないが、化学劣化の抑制・防止性、耐候性、耐スチーム性などの観点から、スチレン系構造単位(例えば、スチレン、メチルスチレン)を有することが好ましい。また、スチレン系構造単位を有する水素添加石油樹脂は、有機溶剤溶解性(油溶性)及び適度な弾性率(ゴム弾性)を有する点からも好ましい。特に、スチレン系構造単位の一部を還元処理(水素添加)して、ポリオレフィン化することによって、高い撥水性とゴム弾性を付与できる。このような水素添加石油樹脂としては、特開平6−322020号公報、特開2004−189764号公報等の公知の樹脂が使用できる。水素添加石油樹脂は、市販品を使用してもよい。具体的には、アイマーブ(登録商標)Sグレード(S−100、S−110)(部分水素添加タイプ)、アイマーブ(登録商標)Pグレード(P−100、P−125、P−140)(完全水素添加タイプ)(C5留分を主原料とする、DCPD(ジシクロペンタジエン)/芳香族共重合系の水添石油樹脂)(いずれも出光興産(株)製);液状ゴム クラプレン(登録商標)LIR(水素添加型)(200(水添率=約100%)、230(水添率=約100%)、290(水添率=約90%)(いずれも(株)クラレ製)などが挙げられる。
ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体は、ポリオレフィンを有することによって、適度なゴム弾性を付与できる。ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体は、特に制限されないが、ポリスチレンと、エチレン、プロピレン、ブチレン、メチルペンテン等の少なくとも一種のオレフィンポリマーとのブロック共重合体などが挙げられる。ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体は、結晶性及び有機溶剤溶解性(油溶性)を有するスチレン構造単位と非結晶性及び有機溶剤不溶性を有する非結晶性ポリオレフィン構造単位とを併せもち、100℃以下でゴム弾性を発揮できる。ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体は、市販品を使用してもよい。具体的には、熱可塑性エラストマー セプトン(SEPTON)(登録商標)SEPシリーズ(SEP1001、SEP1020)(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック:PS(−CH2−CH(CH3)−CH2−CH2−)m(PSは、ポリスチレンを示し、mは、(エチレン/プロピレン)ブロックの数を示す)、セプトン(登録商標)SEPSシリーズ(SEPS2002、SEPS2004、SEPS2005、SEPS2006、SEPS2007、SEPS2104、SEPS2063)(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン:PS(−CH2−CH(CH3)−CH2−CH2−)mPS(PSは、ポリスチレンを示し、mは、(エチレン/プロピレン)ブロックの数を示す)、セプトン(登録商標)SEBSシリーズ(SEBS8004、SEBS8006、SEBS8007、SEBS8076、SEBS8104)(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン:PS[(−CH2−CH2−CH2−CH2−)m−(CH2−CH(CH2CH3)−)n]PS(PSは、ポリスチレンを示し、mは、(エチレン)ブロックの数を示し、nは、(ブチレン)ブロックの数を示す)、セプトン(登録商標)SEEPSシリーズ(SEEPS4033、SEEPS4044、SEEPS4055、SEEPS4077、SEEPS4099)(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン:PS(−CH2−CH(CH3)−CH2−CH2−)m−(CH2−CH2−)nPS(PSは、ポリスチレンを示し、mは、(エチレン/プロピレン)ブロックの数を示し、nは、(エチレン)ブロックの数を示す)(いずれも(株)クラレ製)などが挙げられる。
同様にして、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体もまた、市販品を使用してもよい。スチレン−ブタジエン共重合体の市販品としては、以下に制限されないが、スチレン・ブタジエンゴム(SBR樹脂)(Performix社製、Plasti Dip:成分は、石油ナフサ 35重量%、ヘキサン18重量%、トルエン15重量%、MEK 5重量%、SBR(樹脂)26重量%)、タフデン(登録商標)シリーズ(旭化成(株)製)、アサプレン(登録商標)シリーズ(例えば、アサプレン(登録商標)610A、625A、670A)(旭化成(株)製)などが挙げられる。アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の市販品としては、以下に制限されないが、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR樹脂)(コニシ社製、ボンドG103)、セメダイン521(ニトリルゴム系、セメダイン(株)製)などが挙げられる。アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体としては、サンプラテック製ABS、電気化学工業(株)製デンカABSなどが挙げられる。
これらのエラストマー樹脂のうち、撥水性、油溶性、カーボン粒子の被覆性などを考慮すると、エラストマー樹脂が、水素添加石油樹脂、ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体およびアクリロニトリル・ブタジエン共重合体からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、水素添加石油樹脂、ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体であることがより好ましい。
(カーボン粒子)
カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、繊維状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、水溶性および油溶性の不純物が少ないなどの理由から、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、鱗片状黒鉛、オイルファーネスブラックを用いることが好ましく、アセチレンブラック、黒鉛、オイルファーネスブラックを用いることがより好ましく、アセチレンブラック、オイルファーネスブラックを用いることが特に好ましい。
カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、繊維状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、水溶性および油溶性の不純物が少ないなどの理由から、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、鱗片状黒鉛、オイルファーネスブラックを用いることが好ましく、アセチレンブラック、黒鉛、オイルファーネスブラックを用いることがより好ましく、アセチレンブラック、オイルファーネスブラックを用いることが特に好ましい。
かようなカーボン粒子は、市販品を用いることができ、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などのオイルファーネスブラック;電気化学工業社製デンカブラックHS100、AB6などのアセチレンブラック等が挙げられる。また、カーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などであってもよい。さらに、日本黒鉛製、黒鉛粉末ACPシリーズ、ACBシリーズ、SPシリーズ、HOPシリーズ;薄片化黒鉛粉末、球状化黒鉛粉末などの黒鉛粉末を使用してもよい。また、耐食性などを向上させるために、前記カーボン粒子に黒鉛化処理などの加工を行ってもよい。
カーボン粒子は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
カーボン粒子の平均粒径(直径)は、特に制限されないが、ガス透過性、導電性などを考慮すると、少なくとも1種類のカーボン粒子の平均粒径(平均一次粒子径)が、2〜250nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。このような範囲であれば、ガス拡散係数が向上し、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。ここで、カーボン粒子の大きさは、公知の方法によって測定できるが、本明細書では、特に言及のない限り、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、統計学的に有意な数の視野(例えば、数〜数十視野)中に観察される粒子の粒子径(直径)の平均値として算出される値を採用するものとする。また、「粒径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。
また、カーボン粒子の平均粒径(平均二次粒子径)は、0.5〜25μm程度とするのがよい。これにより、ガス拡散係数が向上し、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。ここで、カーボン粒子の平均二次粒子径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
また、カーボン粒子のBET比表面積は、高い場合は凝集性が強くポリマー溶液に対する分散性が悪化することから、1〜300m2/gであることが好ましく、5〜100m2/gであることがより好ましい。
エラストマー樹脂およびカーボン粒子の混合非(重量比)は、特に限定されるものではないが、ガス拡散多孔層のガス透過性、排水性、機械的強度および電気抵抗などを考慮すると、エラストマー樹脂:カーボン粒子の混合比(重量比)が、1:1〜10であることが好ましく、1:1を超えて4以下であることがより好ましく、1:2前後であることが特に好ましい。このような範囲であれば、電気抵抗を低減でき、ガス拡散多孔層の機械的強度を十分確保できる。特にエラストマー樹脂:カーボン粒子の混合比(重量比)が1:2程度であると、電気抵抗をエラストマー樹脂:カーボン粒子の混合比(重量比)が1:1の場合に比べ、1/10程度にまで低下させることができる。なお、エラストマー樹脂に対してカーボンの混合量が少なすぎると、電気抵抗が増大する可能性がある。逆に、エラストマー樹脂に対してカーボンの混合量が多すぎると、ガス拡散多孔層の機械的強度の強度が低下する可能性がある。
[ガス拡散多孔層の製造方法]
本発明のガス拡散多孔層の製造方法の好適な一実施形態は、(1)エラストマー樹脂、カーボン粒子、水溶性物質および油溶性溶剤を含む混合物を調製し(混合物調製工程)、(2)前記混合物を基材上に塗布、乾燥して、塗膜を基材上に形成した(塗膜形成工程)後、(3)前記塗膜を水性溶媒で洗浄して前記水溶性物質を除去する(水溶性物質除去工程)ことを有する。以下、本発明のガス拡散多孔層の製造方法の好適な実施形態を説明する。しかし、本発明は、下記好適な実施形態に限定されない。
本発明のガス拡散多孔層の製造方法の好適な一実施形態は、(1)エラストマー樹脂、カーボン粒子、水溶性物質および油溶性溶剤を含む混合物を調製し(混合物調製工程)、(2)前記混合物を基材上に塗布、乾燥して、塗膜を基材上に形成した(塗膜形成工程)後、(3)前記塗膜を水性溶媒で洗浄して前記水溶性物質を除去する(水溶性物質除去工程)ことを有する。以下、本発明のガス拡散多孔層の製造方法の好適な実施形態を説明する。しかし、本発明は、下記好適な実施形態に限定されない。
(工程(1):混合物調製工程)
工程(1)では、エラストマー樹脂、カーボン粒子、水溶性物質および油溶性溶剤(有機溶剤)を含む混合物(分散液、インク組成物)を調製する。本工程において使用できるエラストマー樹脂及びカーボン粒子の種類、混合比などは上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
工程(1)では、エラストマー樹脂、カーボン粒子、水溶性物質および油溶性溶剤(有機溶剤)を含む混合物(分散液、インク組成物)を調製する。本工程において使用できるエラストマー樹脂及びカーボン粒子の種類、混合比などは上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本工程において使用できる水溶性物質は、特に制限されないが、下記(a)〜(e)の少なくとも一を満たすことが好ましい:
(a)充分な水溶性を有する、具体的には、常温(20℃)で水溶性であり、常温(20℃)で100mlの水に3g以上、好ましくは5g以上溶解する;
(b)粉砕処理が可能である(常温で固形であり、粉砕時に微粉末となりうる);
(c)エラストマー樹脂を溶解する油溶性溶剤には溶けない;
(d)触媒被毒能が低いまたはない(触媒被毒の抑制・防止効果の観点から、アミノ基、硫黄原子及びリン原子の少なくとも一を含まない);および
(e)電解質膜劣化の抑制・防止効果の観点から、重金属元素、特に鉄および銅の含有量の低いまたは0である。
(a)充分な水溶性を有する、具体的には、常温(20℃)で水溶性であり、常温(20℃)で100mlの水に3g以上、好ましくは5g以上溶解する;
(b)粉砕処理が可能である(常温で固形であり、粉砕時に微粉末となりうる);
(c)エラストマー樹脂を溶解する油溶性溶剤には溶けない;
(d)触媒被毒能が低いまたはない(触媒被毒の抑制・防止効果の観点から、アミノ基、硫黄原子及びリン原子の少なくとも一を含まない);および
(e)電解質膜劣化の抑制・防止効果の観点から、重金属元素、特に鉄および銅の含有量の低いまたは0である。
上記観点から、蔗糖(砂糖)やグルコース等の糖類、クエン酸、アスコルビン酸、尿素などの有機化合物;塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カルシウム等のアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩類、ホウ酸などの無機化合物などが挙げられる。これらのうち、生産コスト、取り扱いの容易さ、安全性などの観点から、蔗糖、グルコース、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、特に蔗糖、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムがより好ましい。ここで、水溶性物質の形状は特に限定されず、球状(粒子状)、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状など任意の構造をとりうるが、溶解性の観点から、球状(粒子状)が好ましい。また、水溶性物質を、エラストマー樹脂、カーボン粒子や油溶性溶剤と混合する前に、予め粉砕し、所定の大きさになるように分級することが好ましい。水溶性物質は後の(3)水溶性物質除去工程で除去されて、所望の空孔分布を有するガス拡散多孔層が形成できる。このため、上記粉砕・分級工程を行うことによって、得られるガス拡散多孔層に所望の空孔分布(空孔径、空隙率など)を形成できる。このため、水溶性物質の粉砕・分級条件は、ガス拡散多孔層の所望の空孔分布(空孔径、空隙率など)を考慮して適切に設定される。
水溶性物質の添加量は、特に制限されず、所望の空孔分布(特に空隙率)に応じて適宜選択される。具体的には、水溶性物質の添加量は、エラストマー樹脂に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。このような量であれば、ガス拡散多孔層に所望の空孔分布(特に空隙率)を形成できる。
本工程において使用できる油溶性溶剤は、エラストマー樹脂を溶解するものである限り特に制限されないが、沸点が40〜150℃程度の溶剤が好ましく使用される。沸点が150℃以下の溶剤であれば、比較的低い温度での乾燥により塗膜を形成できるため、コストの点で好ましい。また、沸点が40℃以上の溶剤であれば、エラストマー樹脂、カーボン粒子、水溶性物質及び油溶性溶剤を混合する際の溶剤の蒸発を抑制できるため、塗布しやすい混合物を容易に調製できる。このような溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン及び石油ベンジン等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ならびにメチルセロソルブ、ジメチルセロソルブ、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサン等のエーテル系溶剤などが挙げられる。なお、油溶性溶剤は水溶性物質を溶解しないものである必要がある。ここで、「油溶性溶剤が水溶性物質を溶解しない」とは、室温(25℃)での100mLの油溶性溶剤における水溶性物質の溶解量が1g以下(下限:0g)であることを意味する。このため、油溶性溶剤と水溶性物質との組み合わせは、上記関係を満たすように選択される。例えば、メチルセロソルブを油溶性溶剤として使用する場合には、糖類はメチルセロソルブに溶解するので、塩化ナトリウムなどを水溶性物質として選択することが好ましい。油溶性溶剤の添加量は、特に制限されないが、エラストマー樹脂の濃度が1〜50重量%になるような量であることが好ましく、2.5〜25重量%になるような量であることがより好ましい。このような濃度であれば、塗布しやすい混合物を容易に調製できる。
本工程において、エラストマー樹脂、カーボン粒子、水溶性物質及び油溶性溶剤の添加順序は、特に制限されず、上記全成分を一括して混合する;上記いずれかの成分を混合した後、残りの成分を添加する;上記いずれかの成分を順次混合する、のいずれでもよい。好ましくは、エラストマー樹脂を油溶性溶剤に溶解した後、カーボン粒子及び水溶性物質を得られた溶液に添加することが好ましい。これにより、エラストマー樹脂が容易にかつ均一に油溶性溶剤に溶解できる。
上記したようにしてエラストマー樹脂、カーボン粒子、水溶性物質、油溶性溶剤を混合した後、必要により、均質化、塗布に適した粘度への調整を目的として、脱泡処理、攪拌(攪拌)処理や粉砕処理を行ってもよい。脱泡処理、攪拌(攪拌)処理及び粉砕処理は、いずれか一を行ってもあるいは2種以上を適宜組み合わせて行ってもよい。このうち、攪拌(混錬)処理に用いられる機械としては、以下に制限されないが、自公転式攪拌脱泡ミキサー、真空攪拌脱泡ミキサー、可変速攪拌脱泡ミキサー、攪拌子(スターラー)、超音波分散器などを用いることができる。攪拌(混錬)条件は、上記混合物を均一にできる条件であれば特に制限されない。攪拌(混錬)速度は、好ましくは100〜2000rpm、より好ましくは300〜1500rpmである。また、攪拌(混錬)時間の合計は、好ましくは2〜30分、より好ましくは5〜15分である。このような条件であれば、混合物は十分均質化されうる。また、粉砕処理に用いられる機械としては、以下に制限されないが、ボールミルやビーズミルなどの球状メディアで衝撃を与えるミリング装置、二本ロールや三本ロールなどのローラー間隙で剪断応力を加える装置、ホモジナイザーやミキサーなどの撹拌羽根を回す装置、被粉砕体同士を衝突させるジェットミル装置などを用いることができる。粉砕条件は適宜設定すればよい。例えば、粉砕処理は、好ましくは3000〜30000回転/分で1〜30分間、より好ましくは5000〜15000回転/分で1〜10分間の条件で行われる。なお、上記粉砕処理は、使用する装置によって異なり、上記条件(特に回転数)は特にホモジナイザーを使用する場合に好適に適用できる。このような条件であれば、水溶性物質およびカーボン粒子を所望の大きさに粉砕でき、また、混合物を十分均質化できる。
また、上記脱泡処理、攪拌(攪拌)処理または粉砕処理を行った後、粗大粒子を除去する目的で濾過を行ってもよい。濾過方法としては、常圧で行う自然濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過のいずれであってもよい。
(工程(2):塗膜形成工程)
工程(2)では、上記工程(1)で調製された混合物を基材(塗布基材)上に塗布、乾燥して、塗膜を基材上に形成する。
工程(2)では、上記工程(1)で調製された混合物を基材(塗布基材)上に塗布、乾燥して、塗膜を基材上に形成する。
混合物を基材に塗布した後、乾燥することで、カーボン粒子にエラストマー樹脂が吸着し、混合物中の油溶性溶剤が揮発(蒸発)することで、エラストマー樹脂がカーボン粒子を被覆すると考えられる。また、水溶性物質は、析出して塗膜内に均一に固体の状態でカーボン粒子間に存在する。
用いられる基材は特に限定されるものではない。従来のPTFEを用いた系では、後工程の高温焼成に耐えうる基材(例えば、ポリイミドフィルム)を用いる必要があったため、コスト高の一因となっていた。本発明に用いられるエラストマー樹脂では高温焼成は必要ないため、乾燥および熱プレスに耐えうる樹脂であれば広く用いることができる。基材としては具体的には、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム;PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の、ポリエステルフィルム;ポリイミドフィルム、ポリスルホンシートなどが挙げられる。中でも、安価であることから、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどを基材として用いることが好ましい。基材の厚みとして特に限定されるものではないが、通常10〜500μm程度である。
混合物の塗布厚みは、特に限定されるものではない。具体的には、乾燥後の厚みで好ましくは3〜500μmであり、より好ましくは5〜300μmであり、さらにより好ましく5〜250μmであり、特に好ましく25〜100μmであることがより好ましい。
混合物の塗布方法としては、特に限定されず、スプレーコート、スピンコート、バーコート、ブレードコーティング等の従来公知の方法を用いることができる。
混合物を塗布した後、好適には乾燥する。乾燥条件としては、適宜設定すればよいが、乾燥温度は、10〜150℃未満であることが好ましく、25〜40℃であることが好ましい。また、乾燥時間は、2〜30分間であることが好ましい。本発明の方法によると、PTFE溶液を用いる場合に必要な基材塗布・乾燥後の焼成が不要となる。焼成が必要であるとエネルギーコストの面で不利となる。したがって、本発明においては、工程(2)において、焼成工程を含まない。ここで、焼成工程とは、250℃以上、例えば、250〜400℃の温度で15分〜3時間処理する工程を指す。
(工程(3):塗膜形成工程)
工程(3)では、上記工程(2)で形成された塗膜を水性溶媒で洗浄して前記水溶性物質を除去する。当該工程により、塗膜中で析出した水溶性物質を洗い流して、カーボン粒子間に存在する水溶性物質が除去され、代わりに空孔が新たに形成される。このように、本発明の方法によると、焼成工程を必要としない。このため、ガス拡散多孔層を簡便な方法で安価に製造することができる。
工程(3)では、上記工程(2)で形成された塗膜を水性溶媒で洗浄して前記水溶性物質を除去する。当該工程により、塗膜中で析出した水溶性物質を洗い流して、カーボン粒子間に存在する水溶性物質が除去され、代わりに空孔が新たに形成される。このように、本発明の方法によると、焼成工程を必要としない。このため、ガス拡散多孔層を簡便な方法で安価に製造することができる。
また、工程(2)で形成された塗膜では、カーボン粒子間に水溶性物質が析出した形態で存在する。特に工程(2)で粉砕処理を行う場合には、水溶性物質は粒径の小さい状態で塗膜内に存在する。次に、本工程(3)で、この形態の塗膜を水性溶媒で洗浄すると、塗膜中の水溶性物質のみが溶解(溶出)するため、水溶性物質を選択的に塗膜から除去することができる。このようにして、ガス拡散多孔層に所望の空孔分布(孔径、空隙率)を形成できる。なお、本発明は、上記推定に限定されるものではない。
また、本工程(3)で塗膜を水性溶媒で洗浄すると、上記したようにガス拡散多孔層に所望の空孔を形成すると共に、ガス拡散多孔層が基材から剥離して、ガス拡散多孔層を取り除くことができる。
本工程で使用できる水性溶媒は、水溶性物質を洗い流せる水性溶媒であれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール系溶媒などが使用できる。これらのうち、コストおよび安全性の点から、水が好ましく使用される。なお、上記水性溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、水性溶媒で塗膜中に析出した水溶性物質を洗い流す条件は、水溶性物質を十分除去して所望の空孔分布が得られる条件であればよい。具体的には、過剰量の水性溶媒で塗膜を洗い流す(洗浄する);過剰量の水性溶媒に塗膜を、好ましくは攪拌しながら、浸漬する;過剰量の水性溶媒に塗膜を浸漬して、超音波処理を行なうなどが使用できる。また、水溶性物質の溶出(除去)を促進する目的で、水性溶媒を加温することが好ましい。水性溶媒の温度は、特に制限されないが、好ましくは25〜80℃、より好ましくは30〜60℃である。このような温度であれば、水性溶媒で水溶性物質を容易に除去する共に、ガス拡散多孔層を基材から容易に剥離(除去)できる。なお、水性溶媒での洗浄によっても基材からガス拡散多孔層を剥離できない場合には、別途、剥離工程を行ってもよい。ここで、剥離方法は特に限定されるものではないが、水中に浸漬する、手であるいは機械を用いて物理的に剥がす、水中に浸漬後減圧処理または超音波振動を加えることにより、ガス拡散多孔層と基材の間に気泡を生じさせ、物理的に剥離するなどの方法が挙げられる。
上記工程(3)により、ガス拡散多孔層を基材から剥離した後には、通常、乾燥を行う。この際の乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、乾燥温度としては20〜80℃であることが好ましい。乾燥時間としては、2〜60分間であることが好ましい。
かようにして得られたガス拡散多孔層は、水溶性物質の除去により、十分な空孔を有する。このため、本発明のガス拡散多孔層は、ガス透過性に優れる。具体的には、本発明のガス拡散多孔層のガーレー透気度は、好ましくは0.1〜200(cc/cm2/sec)、より好ましくは4〜150(cc/cm2/sec)、さらにより好ましくは5〜100(cc/cm2/sec)である。なお、本明細書において、「ガーレー透気度(cc/cm2/sec)」は、下記実施例に記載される方法によって測定される値である。
また、かようにして得られたガス拡散多孔層は、撥水性に優れるエラストマー樹脂を含むため、撥水性(排水性)にも優れる。具体的には、本発明のガス拡散多孔層の表面接触角は、好ましくは100〜150°、より好ましくは120〜150°である。
また、かようにして得られたガス拡散多孔層は、ガス拡散層基材と接合することにより、ガス拡散層とすることができる。ガス拡散層基材およびガス拡散多孔層の接合方法としては、特に限定されず、プレス接合、スポット溶着、熱圧着などが挙げられる。ここで、ガス拡散多孔層の厚み(乾燥膜厚)は特に制限されないが、例えば、50〜500μm程度であり、好ましくは100〜250μmである。
[触媒層]
触媒層(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層3aでは水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層3cでは酸素の還元反応が進行する。
触媒層(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層3aでは水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層3cでは酸素の還元反応が進行する。
触媒層は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性の触媒担体(導電性担体)、および電解質を含む。以下、触媒担体に触媒成分が担持されてなる複合体を「電極触媒」とも称する。
アノード触媒層に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード触媒層に用いられる触媒成分もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属およびこれらの合金などから選択されうる。
これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、いずれであってもよい。この際、アノード触媒層に用いられる触媒成分およびカソード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択されうる。本明細書では、特記しない限り、アノード触媒層用およびカソード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義である。よって、一括して「触媒成分」と称する。しかしながら、アノード触媒層およびカソード触媒層の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択されうる。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが採用されうる。例えば、触媒成分の形状は、粒状、鱗片状、層状などのものが使用できるが、粒状であることが好ましい。この際、触媒粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30nm、より好ましくは1〜10nm、さらに好ましくは1〜5nm、特に好ましくは2〜4nmである。触媒粒子の平均粒子径がかような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切に制御されうる。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡(TEM)より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定されうる。
上述した触媒成分は好適には導電性担体に担持された電極触媒として触媒層に含まれる。
導電性担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、および触媒成分と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3重量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m2/g、より好ましくは80〜1200m2/gとするのがよい。比表面積が上記したような範囲であれば、導電性担体への触媒成分および高分子電解質が十分分散して十分な発電性能が得られ、また、触媒成分および高分子電解質を十分有効利用できる。
また、導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%とするのがよい。触媒成分の担持量がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
触媒層には、電極触媒に加えて、イオン伝導性の高分子電解質が含まれる。当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、下記電解質層を構成するイオン交換樹脂が、高分子電解質として触媒層に添加されうる。
当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。高分子電解質は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。なお、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質の具体的な説明は下記固体高分子電解質膜における説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましい。特に、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
触媒層中の高分子電解質重量の含有量は特に限定されるものではないが、電極触媒中のカーボンに対する高分子電解質重量の比が0.3〜1.2であることが好ましい。
また、導電性担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
触媒層の形成方法は特に限定されないが、好適には、上記したような電極触媒、高分子電解質および溶剤からなる触媒インクを、高分子電解質膜表面に塗布することによって、触媒層を形成する方法が挙げられる。この際、溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。また、溶剤の使用量もまた、特に制限されず公知と同様の量が使用できる。触媒インクにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、5〜30重量%、より好ましくは9〜20重量%となるような量で存在することが好ましい。
触媒インクは、電極触媒、電解質および溶剤、ならびに必要であれば撥水性高分子および/または増粘剤、が適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されない。例えば、電解質を極性溶媒に添加し、この混合液を加熱・攪拌して、電解質を極性溶媒に溶解した後、これに電極触媒を添加することによって、触媒インクが調製できる。または、電解質を、溶剤中に一旦分散/懸濁された後、上記分散/懸濁液を電極触媒と混合して、触媒インクを調製してもよい。また、電解質が予め上記他の溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(例えば、デュポン製のNafion溶液:1−プロパノールまたは1−プロパノール水溶液中に5wt%の濃度でNafionが分散/懸濁したもの)をそのまま上記方法に使用してもよい。
上記したような触媒インクを、高分子電解質膜上にまたはガス拡散層上に、塗布して、各触媒層が形成される。この際、高分子電解質膜上へのカソード/アノード触媒層の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。例えば、触媒インクを高分子電解質膜上に、乾燥後の厚みが所望の厚みになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
また、単位触媒塗布面積当たりの触媒含有量(mg/cm2)は、特に制限されないが、十分な触媒の担体上での分散度、発電性能などを考慮すると、0.01〜1.0mg/cm2である。ただし、触媒が白金または白金含有合金を含む場合、単位触媒塗布面積当たりの白金含有量が0.5mg/cm2以下であることが好ましい。白金(Pt)や白金合金に代表される高価な貴金属触媒の使用は燃料電池の高価格要因となっている。したがって、高価な白金の使用量(白金含有量)を上記範囲まで低減し、コストを削減することが好ましい。下限値は発電性能が得られる限り特に制限されず、例えば、0.01mg/cm2以上である。なお、本明細書において、「単位触媒塗布面積当たりの触媒(白金)含有量(mg/cm2)」の測定(確認)には、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)を用いる。所望の「単位触媒塗布面積当たりの触媒(白金)含有量(mg/cm2)」にせしめる方法も当業者であれば容易に行うことができ、インクの組成(触媒濃度)と塗布量を制御することで量を調整することができる。
触媒層の厚みは触媒層(乾燥後)の厚みは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜15μmである。なお、上記厚みは、カソード触媒層およびアノード触媒層双方に適用される。カソード触媒層およびアノード触媒層の厚みは、同じであってもあるいは異なってもよい。
[固体高分子電解質膜]
固体高分子電解質膜2は、PEFC1の運転時にアノード触媒層3aで生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3cへと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜2は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
固体高分子電解質膜2は、PEFC1の運転時にアノード触媒層3aで生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3cへと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜2は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
固体高分子電解質膜2は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とに大別される。フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能を向上させるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質膜が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。これらの炭化水素系高分子電解質膜は、原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の利点がある。
なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
固体高分子電解質膜の厚さは、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。電解質膜の厚さは、通常は5〜100μm程度である。電解質膜の厚さがかような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性および使用時の出力特性のバランスが適切に制御されうる。
[膜電極接合体の製造方法]
膜電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、固体高分子電解質膜に触媒層をホットプレスで転写または塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法や、ガス拡散層のガス拡散多孔層面に触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極(GDE)を2枚作製し、固体高分子電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法を使用することができる。ホットプレス等の塗布、接合条件は、固体高分子電解質膜や触媒層内の高分子電解質の種類(パ−フルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
膜電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、固体高分子電解質膜に触媒層をホットプレスで転写または塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法や、ガス拡散層のガス拡散多孔層面に触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極(GDE)を2枚作製し、固体高分子電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法を使用することができる。ホットプレス等の塗布、接合条件は、固体高分子電解質膜や触媒層内の高分子電解質の種類(パ−フルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
[セパレータ]
セパレータは、固体高分子形燃料電池などの燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータのそれぞれにはガス流路および冷却流路が設けられていることが好ましい。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜制限なく採用できる。セパレータの厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
セパレータは、固体高分子形燃料電池などの燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータのそれぞれにはガス流路および冷却流路が設けられていることが好ましい。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜制限なく採用できる。セパレータの厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池(PEFC)を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
燃料電池の製造方法は、特に制限されることなく、燃料電池の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。例えば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
さらに、燃料電池が所望する電圧を発揮できるように、セパレータを介して膜電極接合体を複数積層して直列に繋いだ構造の燃料電池スタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
上述したPEFCや膜電極接合体は、ドライアウト耐性とフラッディング耐性とを両立できる部材を用いている。したがって、当該PEFCや膜電極接合体は湿度の変動による影響を受けにくい優れた発電性能を発揮する。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「重量%」および「重量部」を意味する。
実施例1
スチレンブロックポリマー(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン SEPTON(登録商標)SEEPS4055、(株)クラレ製)2gをトルエン40gに加えた。この混合物を、80℃に加熱しながら攪拌して、ポリマー溶液(1)(樹脂固形分濃度:5重量%)を得た。なお、本実施例で使用されたスチレンブロックポリマーは、水に対する表面接触角(撥水性)が101.2°であり、トルエンにおける溶解性(30℃)が10重量%以上である。
スチレンブロックポリマー(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン SEPTON(登録商標)SEEPS4055、(株)クラレ製)2gをトルエン40gに加えた。この混合物を、80℃に加熱しながら攪拌して、ポリマー溶液(1)(樹脂固形分濃度:5重量%)を得た。なお、本実施例で使用されたスチレンブロックポリマーは、水に対する表面接触角(撥水性)が101.2°であり、トルエンにおける溶解性(30℃)が10重量%以上である。
このようにして得られたポリマー溶液(1)に、スチレンブロックポリマーに対して2倍量(重量)(4g)のアセチレンブラック(電気化学工業製、デンカブラックHS100、一次平均粒径:48nm、BET比表面積:39m2/g)およびスチレンブロックポリマーに対して0.25倍量(重量)(0.5g)の砂糖を加えた。なお、砂糖は、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。次に、上記混合物を、自公転式攪拌脱泡ミキサー(EME製,型式:UFO−3)にて、公転・自転速度を共に450rpmに設定して4分間攪拌した後、公転・自転速度をそれぞれ900rpm,450rpmに設定して8分間攪拌して、インクを得た。得られたインクを、ホモジナイザー(IKA製、ULTRA−TURREX T25)で13500回転/分にて3分間粉砕処理を行い、インク組成物(1)を得た。得られたインク組成物(1)を200μmのメッシュで濾過して、粗大粒子の除去を行い、インク組成物(1’)を調製した。この際、インク組成物(1’)におけるスチレンブロックポリマーとアセチレンブラックとの混合比(重量比)は、1:2であった。
次に、このインク組成物(1’)を、wet厚み300μmでポリエチレンシート(厚み:50μm)上にアプリケーターによって塗布(ブレードコーティング)し、室温(25℃)で15分間自然乾燥して、被膜をポリエチレンシート上に形成した。この被膜を40℃の水道水で洗浄およびポリエチレンシートからの剥離を行った。この洗浄操作により被膜中の砂糖が溶出する。この塗膜を表面の水滴を拭き取り除去を行った後25℃で20分間乾燥し、膜厚(乾燥膜厚)が59μmの多孔シート状物(1)を得た。得られた多孔シート状物(1)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、140.3°であった。
実施例2
実施例1において、アセチレンブラック(電気化学工業製、デンカブラックHS100)の代わりに、黒鉛(日本黒鉛製、SP20、鱗片状、BET比表面積:6m2/g、平均二次粒子径:15μm)とアセチレンブラック(電気化学工業製デンカブラックHS100)との3:1(重量比)の混合物を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、膜厚(乾燥膜厚)が60μmの多孔シート状物(2)を得た。なお、配合する黒鉛及びアセチレンブラックの合計量は、スチレンブロックポリマーに対して2倍量(重量)となるように調整した。
実施例1において、アセチレンブラック(電気化学工業製、デンカブラックHS100)の代わりに、黒鉛(日本黒鉛製、SP20、鱗片状、BET比表面積:6m2/g、平均二次粒子径:15μm)とアセチレンブラック(電気化学工業製デンカブラックHS100)との3:1(重量比)の混合物を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、膜厚(乾燥膜厚)が60μmの多孔シート状物(2)を得た。なお、配合する黒鉛及びアセチレンブラックの合計量は、スチレンブロックポリマーに対して2倍量(重量)となるように調整した。
得られた多孔シート状物(2)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、137.5°であった。
参考例3
実施例1において、インク組成物(1’)の代わりに、以下により調製されたSBR樹脂インク組成物(2’)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔シート状物(3)を得た。
実施例1において、インク組成物(1’)の代わりに、以下により調製されたSBR樹脂インク組成物(2’)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔シート状物(3)を得た。
詳細には、スチレン・ブタジエンゴム(SBR樹脂)(Performix社製、Plasti Dip(Clear)、樹脂濃度=30重量%)7gをトルエン35gに加え、室温(25℃)で撹拌をし、均一なポリマー溶液(2)(樹脂固形分濃度:5重量%)を得た。なお、本実施例で使用されたスチレン・ブタジエンゴムは、水に対する表面接触角(撥水性)が106.9°であり、トルエンにおける溶解性(25℃)が30重量%以上である。
このポリマー溶液(2)に、SBR樹脂に対して2倍量(重量)(4.2g)のアセチレンブラック(電気化学工業製、デンカブラックHS100)およびSBR樹脂に対して0.25倍量(重量)(0.53g)の砂糖を加えた。なお、砂糖は、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。次に、上記混合物を、自公転式攪拌脱泡ミキサー(EME製,型式:UFO−3)にて、公転・自転速度を共に450rpmに設定して4分間攪拌した後、公転・自転速度をそれぞれ900rpm,450rpmに設定して8分間攪拌して、インクを得た。得られたインクを、ホモジナイザー(IKA製、ULTRA−TURREX)で13500回転/分にて3分間粉砕処理を行い、インク組成物(2)を得た。得られたインク組成物(2)を200μmのメッシュで濾過して、粗大粒子の除去を行い、インク組成物(2’)を調製した。この際、インク組成物(2’)におけるスチレン・ブタジエンゴムとアセチレンブラックとの混合比(重量比)は、1:2であった。
次に、このインク組成物(2’)を、wet厚み300μmでポリエチレンシート(厚み:50μm)上にアプリケーターによって塗布(ブレードコーティング)し、室温(25℃)で20分間自然乾燥して、被膜をポリエチレンシート上に形成した。この被膜を40℃の水道水で洗浄およびポリエチレンシートからの剥離を行った。この洗浄操作により被膜中の砂糖が溶出する。この塗膜を表面の水滴を拭き取り除去を行った後25℃で20分間乾燥し、膜厚(乾燥膜厚)が61μmの多孔シート状物(3)を得た。得られた多孔シート状物(3)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、143.8°であった。
参考例4
実施例1において、インク組成物(1’)の代わりに、以下により調製されたNBR樹脂インク組成物(3’)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔シート状物(4)を得た。
実施例1において、インク組成物(1’)の代わりに、以下により調製されたNBR樹脂インク組成物(3’)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔シート状物(4)を得た。
詳細には、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR樹脂)(コニシ社製、ボンドG103、樹脂濃度=30重量%)7gをテトラヒドロフラン(THF)35gに加え、室温(25℃)で撹拌をし、均一なポリマー溶液(3)(樹脂固形分濃度:5重量%)を得た。なお、本実施例で使用されたアクリロニトリル・ブタジエンゴムは、水に対する表面接触角(撥水性)が104.9°であり、THFにおける溶解性(25℃)が30重量%以上である。
このポリマー溶液(3)に、NBR樹脂に対して2倍量(重量)(4.2g)のアセチレンブラック(電気化学工業製、デンカブラックHS100)およびNBR樹脂に対して0.25倍量(重量)(0.53g)の砂糖を加えた。なお、砂糖は、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。次に、上記混合物を、自公転式攪拌脱泡ミキサー(EME製,型式:UFO−3)にて、公転・自転速度を共に450rpmに設定して4分間攪拌した後、公転・自転速度をそれぞれ900rpm,450rpmに設定して8分間攪拌して、インクを得た。得られたインクを、ホモジナイザー(IKA製、ULTRA−TURREX)で13500回転/分にて3分間粉砕処理を行い、インク組成物(3)を得た。得られたインク組成物(3)を200μmのメッシュで濾過して、粗大粒子の除去を行い、インク組成物(3’)を調製した。この際、インク組成物(3’)におけるアクリロニトリル・ブタジエンゴムとアセチレンブラックとの混合比(重量比)は、1:2であった。
次に、このインク組成物(3’)を、wet厚み300μmでポリエチレンシート(厚み:50μm)上にアプリケーターによって塗布(ブレードコーティング)し、室温(25℃)で10分間自然乾燥して、被膜をポリエチレンシート上に形成した。この被膜を40℃の水道水で洗浄およびポリエチレンシートからの剥離を行った。この洗浄操作により被膜中の砂糖が溶出する。この塗膜を表面の水滴を拭き取り除去を行った後25℃で20分間乾燥し、膜厚(乾燥膜厚)が57μmの多孔シート状物(4)を得た。得られた多孔シート状物(4)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、133.8°であった。
実施例5
スチレンブロックポリマー(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン SEPTON(登録商標)SEEPS4055、(株)クラレ製)0.25gおよび水素添加石油樹脂(アイマーブ(登録商標)P140、出光興産(株)製)1.75gをトルエン40gに加えた。この混合物を、80℃に加熱しながら攪拌して、ポリマー溶液(4)(樹脂固形分濃度:5重量%)を得た。なお、本実施例で使用されたスチレンブロックポリマー及び水素添加石油樹脂の混合物は、水に対する表面接触角(撥水性)が104.1°であり、トルエンにおける溶解性(30℃)が30重量%以上である。
スチレンブロックポリマー(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン SEPTON(登録商標)SEEPS4055、(株)クラレ製)0.25gおよび水素添加石油樹脂(アイマーブ(登録商標)P140、出光興産(株)製)1.75gをトルエン40gに加えた。この混合物を、80℃に加熱しながら攪拌して、ポリマー溶液(4)(樹脂固形分濃度:5重量%)を得た。なお、本実施例で使用されたスチレンブロックポリマー及び水素添加石油樹脂の混合物は、水に対する表面接触角(撥水性)が104.1°であり、トルエンにおける溶解性(30℃)が30重量%以上である。
このようにして得られたポリマー溶液(4)に、スチレンブロックポリマー及び水素添加石油樹脂の混合物の合計量に対して、2倍量(重量)(4g)のアセチレンブラック(電気化学工業製、デンカブラックHS100、平均粒径:48nm、BET比表面積:39m2/g)ならびにスチレンブロックポリマー及び水素添加石油樹脂の混合物の合計量に対して0.25倍量(重量)(0.5g)の砂糖を加えた。なお、砂糖は、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。次に、上記混合物を、自公転式攪拌脱泡ミキサー(EME製,型式:UFO−3)にて、公転・自転速度を共に450rpmに設定して4分間攪拌した後、公転・自転速度をそれぞれ900rpm,450rpmに設定して8分間攪拌して、インクを得た。得られたインクを、ホモジナイザー(IKA製、ULTRA−TURREX T25)で13500回転/分にて3分間粉砕処理を行い、インク組成物(4)を得た。得られたインク組成物(4)を200μmのメッシュで濾過して、粗大粒子の除去を行い、インク組成物(4’)を調製した。この際、インク組成物(4’)におけるポリマー成分とアセチレンブラックとの混合比(重量比)は、1:2であった。
次に、このインク組成物(4’)を、wet厚み300μmでポリエチレンシート(厚み:50μm)上にアプリケーターによって塗布(ブレードコーティング)し、室温(25℃)で15分間自然乾燥して、被膜をポリエチレンシート上に形成した。この被膜を40℃の水道水で洗浄およびポリエチレンシートからの剥離を行った。この洗浄操作により被膜中の砂糖が溶出する。この塗膜を表面の水滴を拭き取り除去を行った後25℃で20分間乾燥し、膜厚(乾燥膜厚)が59μmの多孔シート状物(5)を得た。得られた多孔シート状物(5)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、141.6°であった。
実施例6
スチレンブロックポリマー(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン SEPTON(登録商標)SEBS8004、(株)クラレ製)2gをトルエン40gに加えた。この混合物を、80℃に加熱しながら攪拌して、ポリマー溶液(5)(樹脂固形分濃度:5重量%)を得た。なお、本実施例で使用されたスチレンブロックポリマーは、水に対する表面接触角(撥水性)が102.2°であり、トルエンにおける溶解性(30℃)が10重量%以上である。
スチレンブロックポリマー(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン SEPTON(登録商標)SEBS8004、(株)クラレ製)2gをトルエン40gに加えた。この混合物を、80℃に加熱しながら攪拌して、ポリマー溶液(5)(樹脂固形分濃度:5重量%)を得た。なお、本実施例で使用されたスチレンブロックポリマーは、水に対する表面接触角(撥水性)が102.2°であり、トルエンにおける溶解性(30℃)が10重量%以上である。
このようにして得られたポリマー溶液(5)に、スチレンブロックポリマーに対して2倍量(重量)(4g)のアセチレンブラック(電気化学工業製、デンカブラックAB6、平均粒径:39nm、BET比表面積:37m2/g)およびスチレンブロックポリマーに対して0.25倍量(重量)(0.5g)の塩化ナトリウムを加えた。なお、塩化ナトリウムは、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。次に、上記混合物を、自公転式攪拌脱泡ミキサー(EME製,型式:UFO−3)にて、公転・自転速度を共に450rpmに設定して4分間攪拌した後、公転・自転速度をそれぞれ900rpm,450rpmに設定して8分間攪拌して、インク組成物(5)を得た。得られたインク組成物(5)を200μmのメッシュで濾過して、粗大粒子の除去を行い、インク組成物(5’)を調製した。この際、インク組成物(5’)におけるスチレンブロックポリマーとアセチレンブラックとの混合比(重量比)は、1:2であった。
次に、このインク組成物(5’)を、wet厚み300μmでポリエチレンシート(厚み:50μm)上にアプリケーターによって塗布(ブレードコーティング)し、室温(25℃)で15分間自然乾燥して、被膜をポリエチレンシート上に形成した。この被膜を40℃の水道水で洗浄およびポリエチレンシートからの剥離を行った。この洗浄操作により被膜中の塩化ナトリウムが溶出する。この塗膜を表面の水滴を拭き取り除去を行った後25℃で20分間乾燥し、膜厚(乾燥膜厚)が61μmの多孔シート状物(6)を得た。得られた多孔シート状物(6)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、123.6°であった。
実施例7
実施例6において、塩化ナトリウムの代わりに、炭酸ナトリウムを使用した以外は、実施例6と同様の操作を行って、膜厚(乾燥膜厚)が57μmの多孔シート状物(7)を得た。なお、炭酸ナトリウムは、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。得られた多孔シート状物(7)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、139.1°であった。
実施例6において、塩化ナトリウムの代わりに、炭酸ナトリウムを使用した以外は、実施例6と同様の操作を行って、膜厚(乾燥膜厚)が57μmの多孔シート状物(7)を得た。なお、炭酸ナトリウムは、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。得られた多孔シート状物(7)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、139.1°であった。
実施例8
実施例6において、塩化ナトリウムの代わりに、砂糖を使用した以外は、実施例6と同様の操作を行って、膜厚(乾燥膜厚)が55μmの多孔シート状物(8)を得た。なお、砂糖は、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。得られた多孔シート状物(8)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、128.6°であった。
実施例6において、塩化ナトリウムの代わりに、砂糖を使用した以外は、実施例6と同様の操作を行って、膜厚(乾燥膜厚)が55μmの多孔シート状物(8)を得た。なお、砂糖は、予め粉砕し、目開き150μmのメッシュにて分級されたものを使用した。得られた多孔シート状物(8)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、128.6°であった。
実施例9
実施例6において、塩化ナトリウムを使用しなかった以外は、実施例6と同様の操作を行って、膜厚(乾燥膜厚)が51μmの多孔シート状物(9)を得た。得られた多孔シート状物(9)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、133.3°であった。
実施例6において、塩化ナトリウムを使用しなかった以外は、実施例6と同様の操作を行って、膜厚(乾燥膜厚)が51μmの多孔シート状物(9)を得た。得られた多孔シート状物(9)の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、133.3°であった。
上記実施例1、2、5〜9および参考例3、4における多孔シート状物の製造条件を以下の表1に要約する。
(ガス拡散層の作製)
ガス拡散層基材として、市販のカーボンペーパー(厚さ:200μm)(型番:25BA,SGL社製、5重量%PTFEで疎水化)を用い、該基材上に実施例1、2、5〜9および参考例3、4で得られた上記で得られた多孔シート状物(ガス拡散多孔層)(1)〜(9)をプレス接合し(プレス圧:2Mpa)、ガス拡散層の試験片を作製した。以下、実施例1、2、5〜9および参考例3、4で得られた多孔シート状物層を有するガス拡散層を、それぞれ、試料1〜9とする。また、試料1〜9の厚みを測定し、下記表2に示す。
ガス拡散層基材として、市販のカーボンペーパー(厚さ:200μm)(型番:25BA,SGL社製、5重量%PTFEで疎水化)を用い、該基材上に実施例1、2、5〜9および参考例3、4で得られた上記で得られた多孔シート状物(ガス拡散多孔層)(1)〜(9)をプレス接合し(プレス圧:2Mpa)、ガス拡散層の試験片を作製した。以下、実施例1、2、5〜9および参考例3、4で得られた多孔シート状物層を有するガス拡散層を、それぞれ、試料1〜9とする。また、試料1〜9の厚みを測定し、下記表2に示す。
参照比較例として、同じカーボンペーパーにMPLインクが塗布された、市販のガス拡散層用部材(厚さ:225μm)(25BCH,SGL社製、MPL層:5重量%PTFE含有)を用いた。なお、上記ガス拡散層用部材の水に対する表面接触角(撥水性)を測定したところ、145.8°であった。
(評価方法)
1.厚さ方向ガス透過性の測定
試料1〜9および参照比較例を以下に示す方法で測定した。
1.厚さ方向ガス透過性の測定
試料1〜9および参照比較例を以下に示す方法で測定した。
ガーレー透気度JIS P8117:2009に規定のガーレー透気度測定を使用し、外径28.6mmの円孔を有する締め付け板に、ガス拡散多孔層面が上面に来るように試料を固定し100cc(0.1dm3)の空気が透過する時間[透過時間(秒)]を測定し、ガーレー透気度[Permeability(単位:cc/cm2/秒)]を測定した。この値を用い、厚さで標準化されたガス透過性[Permeability(単位:m2)]を算出した。
結果を表2に示す。
表2の結果より、実施例1、2、5〜8および参考例3、4のガス拡散多孔層は、比較例のガス拡散層と同程度のガス拡散性であることが示される。また、本発明のガス拡散多孔層を作製するにあたって、水溶性物質を使用しない実施例9では、ガス透過性に劣ることが分かる。
2.厚さ方向の電気抵抗測定
試料1〜9および参照比較例品(比較例)の厚さ方向の電気抵抗値を以下に示す方法で測定した。
試料1〜9および参照比較例品(比較例)の厚さ方向の電気抵抗値を以下に示す方法で測定した。
測定に当たっては、面積0.95cm2の試験片の両面を金箔で挟み、貫通電気抵抗測定装置(TER−2000SS:アルバック理工社製)にセットし、荷重をかけた状態で通電して測定した。電流値は1Aで、0.5MPa〜5MPaまでを1サイクルとし、2サイクル目の1MPaにおける値を比較した。
結果を表3に示す。
表3の結果より、実施例1、2、5〜9および参考例3、4のガス拡散多孔層は、比較例のガス拡散層と同程度の電気抵抗値であることが示される。
3.発電試験
(小型発電セルの作製)
電極触媒としての白金担持カーボンと電解質樹脂バインダとしての20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont社製、DE2020)とを、白金/電解質樹脂バインダの固形分重量比が1.1であり、電極触媒/電解質樹脂バインダの固形分重量比が0.55となるように混合して、触媒インクを調製した。ここで、白金担持カーボンとしては、田中貴金属工業株式会社製、TEC10E50E(白金担持量=50重量%)を使用した。
(小型発電セルの作製)
電極触媒としての白金担持カーボンと電解質樹脂バインダとしての20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont社製、DE2020)とを、白金/電解質樹脂バインダの固形分重量比が1.1であり、電極触媒/電解質樹脂バインダの固形分重量比が0.55となるように混合して、触媒インクを調製した。ここで、白金担持カーボンとしては、田中貴金属工業株式会社製、TEC10E50E(白金担持量=50重量%)を使用した。
この触媒インクを電解質膜の両面に塗布、乾燥してカソード触媒層(乾燥膜厚=10μm)及びアノード触媒層(乾燥膜厚=5μm)を形成し、アクティブエリア5cm×2cmとなるCCMを作製した。なお、電解質膜としては、電解質膜(Nafion(登録商標)NR211、DuPont社製、膜厚=25μm)を使用した。また、カソード触媒層での白金量が0.35mg/cm2となるように、アノード触媒層での白金量が0.05mg/cm2となるように、調整した。
実施例8で得られたガス拡散多孔層を市販のカーボンペーパー基材(型番:25BA,SGL社製)にプレス接合をし(プレス圧*2Mpa)、サイズを5.2cm×6.3cmに切り抜いて、ガス拡散層を作製した。
このようにして作製されたCCM(電解質膜にアノード・カソード電極を塗布したもの)のアノード側およびカソード側の電極面に対し、ガス拡散層多孔面が接し、その外側にカーボンペーパー(25BA、SGL社製)が配置されるように、部材を配置し、セルを組み立てて試験用セルを得た(図3)。該サンプルを試験用セル1とする。
また、比較例として、実施例で得られたガス拡散多孔層を有するガス拡散層の代わりに、MPL層塗布済みのカーボンペーパー(25BCH、SGL社製)をカソード側に配置したこと以外は試験用セル1と同様にして、比較試験用セル1を組み立てた。
(試験条件)
上記手順により得られた発電セルを、用いて、H2/Air、80℃、セルガス圧をゲージ圧200KPaとし、アノードおよびカソードの相対湿度を100%としたときの発電評価結果(電流−電圧曲線)を図4に示す。
上記手順により得られた発電セルを、用いて、H2/Air、80℃、セルガス圧をゲージ圧200KPaとし、アノードおよびカソードの相対湿度を100%としたときの発電評価結果(電流−電圧曲線)を図4に示す。
図4の結果から、本発明のガス多孔層を用いたセルは、高湿条件下であっても発電性能に優れることが示される。
さらに、本出願は、2014年3月24日に出願された日本特許出願番号2014−060813号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
1…固体高分子形燃料電池(PEFC)、
2…固体高分子電解質膜、
3…触媒層、
3a…アノード触媒層、
3c…カソード触媒層、
4a…アノードガス拡散層、
4c…カソードガス拡散層、
5a…アノードセパレータ、
5c…カソードセパレータ、
6a…アノードガス流路、
6c…カソードガス流路、
7…冷媒流路、
10…電解質膜−電極接合体(MEA)、
20…ガス拡散層基材、
21…ガス拡散多孔層。
2…固体高分子電解質膜、
3…触媒層、
3a…アノード触媒層、
3c…カソード触媒層、
4a…アノードガス拡散層、
4c…カソードガス拡散層、
5a…アノードセパレータ、
5c…カソードセパレータ、
6a…アノードガス流路、
6c…カソードガス流路、
7…冷媒流路、
10…電解質膜−電極接合体(MEA)、
20…ガス拡散層基材、
21…ガス拡散多孔層。
Claims (3)
- 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方の側に順次配置されたアノード触媒層およびアノードガス拡散層と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に順次配置されたカソード触媒層およびカソードガス拡散層とを、有する膜電極接合体の製造方法であって、
前記アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層の少なくとも一方が、ガス拡散層基材および前記基材と前記触媒層との間に配置される非焼成ガス拡散多孔層を有し、
前記非焼成ガス拡散多孔層が、水素添加石油樹脂およびポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のエラストマー樹脂、カーボン粒子、水溶性物質ならびに油溶性溶剤を含む混合物を調製し、前記混合物を基材上に塗布、乾燥して、塗膜を基材上に形成した後、前記塗膜を水性溶媒で洗浄して前記水溶性物質を除去することによって製造される、膜電極接合体の製造方法。 - 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方の側に順次配置されたアノード触媒層およびアノードガス拡散層と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に順次配置されたカソード触媒層およびカソードガス拡散層とを、有する膜電極接合体であって、
前記アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層の少なくとも一方が、ガス拡散層基材および前記基材と前記触媒層との間に配置される非焼成ガス拡散多孔層を有し、
前記非焼成ガス拡散多孔層は、水素添加石油樹脂およびポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のエラストマー樹脂ならびにカーボン粒子を含む、膜電極接合体。 - 請求項2に記載の膜電極接合体を含む燃料電池。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014060813 | 2014-03-24 | ||
JP2014060813 | 2014-03-24 | ||
PCT/JP2015/053150 WO2015146300A1 (ja) | 2014-03-24 | 2015-02-04 | ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる膜電極接合体および燃料電池 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2015146300A1 JPWO2015146300A1 (ja) | 2017-04-13 |
JP6142963B2 true JP6142963B2 (ja) | 2017-06-14 |
Family
ID=54194839
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016510098A Active JP6142963B2 (ja) | 2014-03-24 | 2015-02-04 | ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる膜電極接合体および燃料電池 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6142963B2 (ja) |
WO (1) | WO2015146300A1 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6915535B2 (ja) * | 2016-01-27 | 2021-08-04 | 東レ株式会社 | ガス拡散電極、微多孔層塗料およびその製造方法 |
JP6888328B2 (ja) * | 2017-02-28 | 2021-06-16 | 三菱ケミカル株式会社 | 固体高分子形燃料電池用ガス拡散層およびガス拡散電極とその製造方法 |
CN110311142A (zh) * | 2019-06-20 | 2019-10-08 | 一汽解放汽车有限公司 | 一种燃料电池气体扩散层及其制备方法 |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4641612B2 (ja) * | 2000-09-14 | 2011-03-02 | 株式会社トクヤマ | ガス拡散電極用プロトン伝導性付与剤 |
JP4749604B2 (ja) * | 2001-06-12 | 2011-08-17 | 株式会社トクヤマ | ガス拡散電極用イオン伝導性付与剤 |
JP2006185899A (ja) * | 2004-12-02 | 2006-07-13 | Dainippon Printing Co Ltd | 固体高分子形燃料電池用のガス拡散用撥水性電極 |
JP2009059524A (ja) * | 2007-08-30 | 2009-03-19 | Panasonic Corp | 燃料電池用ガス拡散層、その製造方法および燃料電池 |
JP4993024B1 (ja) * | 2011-03-22 | 2012-08-08 | 大日本印刷株式会社 | 燃料電池用膜−電極接合体及びその製造方法、並びに該膜−電極接合体を用いた固体高分子形燃料電池 |
EP2768054A4 (en) * | 2011-10-14 | 2014-11-05 | Toppan Printing Co Ltd | CATALYST PARTICLES, CATALYST INK, ELECTRODE CATALYST LAYER FOR FUEL CELLS, MEMBRANE-ELECTRODE ASSEMBLY, SOLID POLYMER FUEL CELL, PROCESS FOR PRODUCTION OF CATALYST PARTICLES AND PROCESS FOR PRODUCTION OF CATALYST INK |
-
2015
- 2015-02-04 WO PCT/JP2015/053150 patent/WO2015146300A1/ja active Application Filing
- 2015-02-04 JP JP2016510098A patent/JP6142963B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPWO2015146300A1 (ja) | 2017-04-13 |
WO2015146300A1 (ja) | 2015-10-01 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5436065B2 (ja) | 固体高分子型燃料電池用ガス拡散層 | |
JP5998277B2 (ja) | 燃料電池用触媒、およびこれを含む燃料電池用電極触媒層 | |
JP4819981B2 (ja) | 燃料電池用ガス拡散層 | |
CA2839646C (en) | Gas diffusion layer for fuel cell and method for manufacturing the same | |
JP6895517B2 (ja) | 電極の製造方法、これによって製造された電極、前記電極を含む膜−電極アセンブリー、そして前記膜−電極アセンブリーを含む燃料電池 | |
WO2010150870A1 (ja) | 燃料電池用親水性多孔質層、ガス拡散電極およびその製造方法、ならびに膜電極接合体 | |
JP2008103164A (ja) | カーボンと撥水材の複合材 | |
KR102189064B1 (ko) | 전극의 제조 방법, 이에 의하여 제조된 전극, 상기 전극을 포함하는 막-전극 어셈블리, 그리고 상기 막-전극 어셈블리를 포함하는 연료 전지 | |
US9034134B2 (en) | Manufacturability of ePTFE laminated membranes | |
KR101960643B1 (ko) | 연료 전지용 전극 촉매층 및 그 제조 방법, 그리고 당해 촉매층을 사용하는 막전극 접합체, 연료 전지 및 차량 | |
JP2007141588A (ja) | 燃料電池用膜電極接合体およびこれを用いた固体高分子形燃料電池 | |
JP2008077974A (ja) | 電極 | |
JP6142963B2 (ja) | ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる膜電極接合体および燃料電池 | |
JP2007165025A (ja) | 膜電極接合体 | |
JP5410787B2 (ja) | 固体高分子型燃料電池用ガス拡散層 | |
WO2016152506A1 (ja) | 燃料電池用炭素粉末ならびに当該燃料電池用炭素粉末を用いる触媒、電極触媒層、膜電極接合体および燃料電池 | |
JP6554954B2 (ja) | 触媒混合物およびその製造方法ならびに当該触媒混合物を用いてなる電極触媒層、膜電極接合体および燃料電池 | |
KR20190004324A (ko) | 전극 촉매, 그의 제조 방법 및 당해 전극 촉매를 사용한 전극 촉매층 | |
JP6531507B2 (ja) | 膜電極接合体の製造方法 | |
JP2016054066A (ja) | 非焼成ガス拡散層の製造方法 | |
JP2006294267A (ja) | 燃料電池電極形成用触媒インク | |
JP6245350B2 (ja) | ガス拡散多孔層、これを含むガス拡散層、および該ガス拡散多孔層の製造方法ならびに膜電極接合体 | |
JP2006079840A (ja) | 燃料電池用電極触媒、および、これを用いた燃料電池用mea | |
JP5458774B2 (ja) | 電解質膜−電極接合体 | |
JP6988143B2 (ja) | 燃料電池用触媒層の製造方法および電極触媒混合物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20170411 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20170424 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6142963 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |