JP2014216232A - ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる燃料電池用膜電極接合体および燃料電池 - Google Patents

ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる燃料電池用膜電極接合体および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】柔軟性を有するガス拡散電極層を提供する。【解決手段】導電性カーボンを非導電性不織布または織物に保持してなる、ガス拡散層4a,4c。該非導電性不織布または該織物の空孔径は、該導電性カーボンの平均粒径の1.5〜100倍であり、100μm以下である。導電性カーボンおよび溶剤を含むスラリーに、該非導電性不織布または該織物を浸漬し、撥水処理を行った後に、250℃以下の温度で熱処理することにより、該ガス拡散層を製造する。【選択図】図1

Description

本発明は、ガス拡散層、その製造方法ならびにこれを用いる燃料電池用膜電極接合体および燃料電池に関する。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子形燃料電池(PEFC)は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。固体高分子形燃料電池は、発電機能を発揮する複数の単セルが積層された構造を有する。この単セルは、高分子電解質膜、当該膜の両面に順次形成される一対の触媒層および一対のガス拡散層(GDL)を有する膜−電極接合体(MEA)を備える。そして、個々の単セルが有するMEAは、セパレータを介して隣接する単セルのMEAと電気的に接続される。このようにして単セルが積層されることにより、燃料電池スタックが構成される。そして、この燃料電池スタックは、種々の用途に使用可能な発電手段として機能する。
従来、カーボンペーパーに導電性粉末、撥水剤及び絶縁性の熱硬化樹脂を含むペーストを塗布して、微細孔層を形成することが開示される(例えば、特許文献1)。上記構成によると、微細孔層のクラックを抑制できることが記載される。
特開2009−238388号公報
しかしながら、基材として使用されるカーボンペーパーは、剛直で曲げに対して弱いため、加工時に基材自体に割れ等が生じるという問題があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、柔軟性を有するガス拡散電極層を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、導電性カーボンを非導電性不織布または織物に含ませることによって、上記課題を解決できることを見出した。
本発明によれば、空孔径が確保できる非導電性不織布または織物を用いることによって、空孔が連続的に存在する連続多孔構造体となる。よって、空孔の割合が従来に比べて高くなり、柔軟性を有するガス拡散層を提供できる。このため、ガス拡散層を用いてなる燃料電池は発電性能に優れる。
本発明の第一の実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)の基本構成を示す概略図である。 実施例のガス拡散層の厚さ方向の電気抵抗を測定した結果を示す図である。 実施例の発電セルの電流密度とセル電圧との関係(I−V性能の実験結果)を示す図である。
本発明のガス拡散層は、導電性カーボンを非導電性不織布または織物に保持してなることを特徴とする。非導電性不織布または織物は、空孔が連続的に存在する連続多孔構造体であるため、空孔の割合が従来に比べて高い。このため、非導電性不織布または織物は、柔軟性に富む。また、非導電性不織布または織物を用いてなるガス拡散層は、優れたガス拡散性を発揮する。また、非導電性不織布または織物の空孔は導電性カーボンを通過できる大きさを有する。このため、不織布または織物が非導電性であっても、導電性カーボンが空孔内に連続的に配置されて導電パスを形成するので、ガス拡散層は十分な導電性を確保できる。ゆえに、ガス拡散層を用いる燃料電池は、発電性能に優れる。また、不織布または織物が非導電性であることによって、使用できる材料の選択の幅が広がる。
また、通常、MEAは、微細多孔質層(MPL)付のガス拡散層を有する。この微細多孔質層(MPL)付のガス拡散層は、ガス拡散層基材上にMPL形成用インクを塗布後、300℃以上の温度で30分以上焼付(熱処理)される(例えば、上記特許文献1 段落「0045」参照)。このため、上記方法は、時間、エネルギーコストの観点から、量産するには問題があった。これに対して、本発明では、低粘度の導電性カーボンを含む溶液に非導電性不織布または織物を浸漬、乾燥するだけで、ガス拡散層を製造できる。このため、従来のように高温での焼付(熱処理)を必要とせずに、ガス拡散層を容易に作製できる。また、溶液の粘度管理や粘度を高めるための増粘剤が不必要であり、高粘度にするための特別な攪拌機も不必要であるため、乾燥条件や溶媒の選定の幅が広がる。
以下、添付した図面を参照して本発明を適用した実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
まず、本形態のガス拡散層が適用され得る固体高分子形燃料電池の基本的な構成を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を示す概略図である。PEFC 1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で膜電極接合体(MEA)10を構成する。
PEFC 1において、MEA 10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ8aおよびカソードセパレータ8c)により挟持されている。図1において、セパレータ(8a、8c)は、図示したMEA10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(8a、8c)と高分子電解質膜2との間や、PEFC1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部が配置されるが、図1ではこれらの記載を省略する。
セパレータ(8a、8c)は、例えば、厚さ0.5mm以下の薄板にプレス処理を施すことで図1に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(8a、8c)のMEA側から見た凸部はMEA10と接触している。これにより、MEA10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(8a、8c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC1の運転時にガスを流通させるためのガス流路として機能する。具体的には、アノードセパレータ8aのガス流路9aには燃料ガス(例えば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ8cのガス流路9cには酸化剤ガス(例えば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(8a、8c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC1の運転時にPEFCを冷却するための冷媒(例えば、水)を流通させるための冷媒流路11とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
なお、図1に示す実施形態においては、セパレータ(8a、8c)は凹凸状の形状に成形されている。ただし、セパレータは、かような凹凸状の形態のみに限定されるわけではなく、ガス流路および冷媒流路の機能を発揮できる限り、平板状、一部凹凸状などの任意の形態であってもよい。
また、ガス拡散層(4a、4c)は、ガス拡散層として機能する。このため、ガス拡散層(GDL)(ガス拡散層、微細多孔質層(MPL))を別途必ずしも必要としない。しかし、PEFC 1は、必要であれば、ガス拡散層(4a、4c)と、触媒層(3a、3c)と、の間に、微細多孔質層(MPL)を別途有してもよい。
[ガス拡散層]
ガス拡散層は、導電性カーボンを非導電性不織布または織物に保持されてなる構造を有する。好ましくは、ガス拡散層は、導電性カーボンを非導電性不織布に保持されてなる構造を有する。本明細書において、「不織布」とは、繊維を積層したものを意味する。このため、上記特許文献1に記載されるようなカーボンペーパーは、本発明の不織布には包含されない。また、本発明のガス拡散層は、ガス拡散層基材、微細多孔質層(MPL)または微細多孔質層(MPL)付ガス拡散層基材のいずれであってもよい。
非導電性不織布または織物を構成する材料は、非導電性であれば特に制限されない。例えば、ガラス、高分子樹脂繊維、セルロースなどが挙げられる。これらのうち、ガラス、高分子樹脂繊維が好ましい。高分子樹脂繊維としては、特に制限されないが、耐熱性、耐加水分解性の観点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイドなどが好適に挙げられる。より好ましくは、コストの観点から、高分子樹脂繊維は、ポリアミド、ポリプロピレンである。上記材料は、1種単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。すなわち、非導電性不織布または織物は、ガラス、高分子樹脂繊維およびセルロースからなる群より選択される少なくとも一種から形成されることが好ましい。
また、非導電性不織布または織物を構成する繊維の大きさは、特に制限されない。具体的には、繊維の太さ(直径)は、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.1〜25μmである。このような大きさであれば、非導電性不織布または織物は適度な空孔の大きさ(空孔径)を有する。
非導電性不織布または織物の製造方法は、特に制限されない。例えば、非導電性不織布は、乾式法、湿式抄紙法、スパンボンド法等によって製造できる。また、非導電性織物は、公知の製織方法で作製されうる。ここで、非導電性不織布または織物の製造条件は、特に制限されないが、例えば、坪量は、1〜50g/mであることが好ましく、5〜25g/mであることがより好ましい。また、非導電性不織布または織物の密度は、0.05〜1.0g/cmであることが好ましく、0.1〜0.4g/cmであることがより好ましい。このような条件であれば、非導電性不織布または織物は、適度な空隙率(例えば、60〜97.5%)を得ることができる。ここで、非導電性不織布または織物の空隙率が上記範囲であれば、強度を確保(形状を維持)しつつ、ガス拡散性及び導電性を向上できる。
上述したように、ガス拡散層は、導電性カーボンを通過できる大きさの空孔を有することが好ましい。これにより、不織布または織物が非導電性であっても、導電性カーボンが非導電性不織布または織物の空孔内に連続的に(相互に接触した状態で)配置する。この導電性カーボンの連続的な配置が導電パスを形成するので、ガス拡散層は十分な導電性を確保できる。ここで、非導電性不織布または織物の空孔の大きさは、導電性カーボンを通過できる大きさであれば特に制限されない。非導電性不織布または織物の空孔径が、導電性カーボンの平均粒径の、好ましくは1.5〜100倍であり、より好ましくは2〜20倍であり、特に好ましくは3〜5倍である。このような大きさの空孔であれば、十分量の導電性カーボンが空孔内に連続的に(相互に接触した状態で)配置できるため、ガス拡散層は十分な導電性を発揮できる。本明細書中、「導電性カーボンの粒子径」は、導電性カーボンの平均二次粒子径を意味する。ここで、導電性カーボンの平均二次粒子径の測定は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置で観察される粒子の粒子径のメジアン値として算出される値を採用するものとする。
または、非導電性不織布または織物の空孔径は、100μm以下であることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、5〜25μmであることがより好ましく、5〜10μmであることが特に好ましい。このような範囲であれば、ガス拡散層の強度を十分確保でき、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックであっても、局部的な逆電池反応や劣化により穴開きが起こらない。本明細書において、非導電性不織布または織物の「空孔径」は、バブルポイントから算出した平均空孔径(μm)である。具体的には、非導電性不織布または織物(試料)を予め10分以上イソプロピルアルコールに浸した後、水平にして、試験用タンクに取り付け、タンク内にイソプロピルアルコールを上記試料の上端15mmの高さまで注ぐ。次に、試料内部の空気圧を零から徐々に増加し、メディアより最初に気泡(バブル)が発生し、その気泡が連続して発生する時の空気圧をマノメータにより読み取る。さらに空気流量を増し、空気流量と空気圧を測定し、空気流量の変化率がほぼ一定になるまで継続する。空気流量と空気圧の関係をグラフに表わし、初期の傾きの接線と終期傾きの接線から、交点のバブルポイント圧を読み取る。得られた交点バブルポイント圧より、平均空孔径を次式より算出する。
Figure 2014216232
ここで、Dは、平均空孔径(μm)を表わし;Pは、交点バブルポイント圧(mmHO)を表す。
非導電性不織布または織物は、市販品であってもよい。例えば、ガラス多孔体(日本板硝子株式会社製、商品名:TGP−015A)、ポリマー不織布(三晶製、商品名:デルポアP1001−20B)などが使用できる。
また、導電性カーボンとしては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛(粒状黒鉛を含む)、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、導電性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。かようなカーボン粒子は、市販品を用いることができ、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などのオイルファーネスブラック;電気化学工業社製デンカブラック、電気化学工業社製のアセチレンブラックAB−6などのアセチレンブラック等が挙げられる。また、カーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などであってもよい。また、耐食性などを向上させるために、前記カーボン粒子に黒鉛化処理などの加工を行ってもよい。この際、上記導電性カーボンは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
導電性カーボンの粒径は、特に制限されない。上記非導電性不織布または織物の空孔径との関係を考慮すると、導電性カーボンの粒径(平均一次粒子径)は、2〜250nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。このような範囲であれば、導電性カーボンは非導電性不織布または織物の空孔内に効率よく連続的に配置して、十分な導電性を確保できる。なお、導電性カーボンの形状は特に限定されず、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状など任意の構造をとりうるが、粒状が好ましい。ここで、導電性カーボンの大きさは、公知の方法によって測定できるが、本明細書では、特に言及のない限り、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、統計学的に有意な数の視野(例えば、数〜数十視野)中に観察される粒子の粒子径(直径)の平均値として算出される値を採用するものとする。また、「粒径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。
ガス拡散層における導電性カーボンの含有量は、特に制限されない。導電性の向上などを考慮すると、導電性カーボンの含有量は、ガス拡散層に対して、好ましくは5〜40体積%、より好ましくは10〜25体積%である。
ガス拡散層は、導電性カーボンを非導電性不織布または織物に保持されてなるが、さらに他の添加剤を含んでもよい。ここで、添加剤としては、特に制限されず、分散剤、分散助剤、撥水剤、結着用バインダなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種であってもあるいは2種以上を併用してもよい。これらのうち、ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂;ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー等のフッ素系高分子電解質;溶剤可溶性フッ素系ポリマー、例えば、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体(ルミフロン:商品名、旭硝子製)、リューフロン(商品名、大日本インキ製)、セラフルコート(商品名、セントラル硝子製)等のフルオロオレフィン共重合体;溶剤可溶型エラストマー共重合体(熱可塑性樹脂)、例えば、セプトン(SEPTON,クラレ製);低分子量ポリオレフィンワックス(熱可塑性樹脂)、例えば、ハイワックス(商標、三井化学)等が挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料やフッ素系高分子電解質が好ましく用いられる。下記に詳述するように、250℃以下での熱処理工程を考慮すると、工業的な取り扱い性の観点から、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体(ルミフロン:商品名、旭硝子製)及びセプトン(SEPTON,クラレ製)がより好ましく使用される。ガス拡散層が撥水剤を含む場合の、撥水剤の含有量(添加量)は、特に制限されない。例えば、撥水剤を、導電性カーボン100重量部に対して、0.01〜0.1重量部程度混合することが好ましい。このような量であれば、ガス拡散層は、導電性及び撥水性双方に満足する。
ガス拡散層の厚みは、特に制限されないが、5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。このような厚みであれば、導電性カーボンを十分量保持できるため、十分な導電性を発揮できる。また、ガス拡散層としてのガス拡散機能および適切な排水性を持つことが可能でありうる。
ガス拡散層は、MEAのカソード側およびアノード側の少なくとも一方に設けられていればよいが、好ましくはカソード及びアノード双方に設置されることが好ましい。
(ガス拡散層の製造方法)
ガス拡散層の製造方法は、導電性カーボンを非導電性不織布または織物に保持できる限り、特に制限されない。例えば、導電性カーボンおよび溶剤を含むスラリーを非導電性不織布または織物に塗布した後、乾燥する方法などが挙げられる。ここで、塗布方法としては、特に制限されず、スプレーコート(噴霧法)、ディップコート(浸漬法)、スピンコート、バーコート、ロールコート、スクリーン印刷などの公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。好ましくは、浸漬法が適用される。また、乾燥条件は、導電性カーボンを非導電性不織布または織物に保持できる条件であれば特に制限されないが、時間、エネルギーコスト、量産の観点から、250℃以下の温度であることが好ましい。すなわち、本発明はまた、導電性カーボンおよび溶剤を含むスラリーに非導電性不織布または織物を浸漬し;前記浸漬後の非導電性不織布または織物を250℃以下の温度で熱処理することを有する本発明のガス拡散層の製造方法をも提供する。以下、本発明のガス拡散層の製造方法の好ましい形態を説明する。しかしながら、本発明は、下記形態に限定されるものではない。
まず、導電性カーボンおよび溶剤を含むスラリーを調製する。ここで、溶剤は、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール、トルエン等の石油系溶剤などが挙げられる。ここで、導電性カーボンの濃度は、特に制限されない。具体的には、スラリーにおける導電性カーボンの濃度は、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%である。このような濃度であれば、次の浸漬工程で非導電性不織布または織物に十分量の導電性カーボンを保持できる。
また、上記スラリーは、導電性カーボンおよび溶剤に加えて、他の添加剤を含んでもよい。ここで、添加剤としては、特に制限されず、分散助剤、分散剤、撥水剤、結着バインダ剤などが挙げられる。添加剤の添加量は、特に制限されず、所望の効果(例えば、導電性カーボンの分散性や撥水性)などを考慮して適宜選択される。具体的には、添加剤は、導電性カーボンに対して、1〜10重量%程度添加されることが好ましい。なお、スラリーは、必要であれば、超音波処理しながら分散させてもよい(超音波分散処理)。このような処理によって、スラリーの粘度を下げるため、次工程で非導電性不織布または織物を浸漬した際に、導電性カーボンが非導電性不織布または織物の空孔内により効率的に侵入できる。
次に、上記のようにして調製されたスラリーに非導電性不織布または織物を浸漬する。ここで、浸漬条件は、使用溶剤の揮発および凝固および粘度上昇を避ける範囲内で、十分量の導電性カーボンが非導電性不織布または織物に保持できる条件であれば、特に制限されない。例えば、溶剤として水を選定した場合には、浸漬温度は、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜40℃である。また、浸漬時間は、好ましくは5秒〜15分、より好ましくは10秒〜5分である(漬ける作業は、あっさりしたものです。むしろ漬けた後に、ブラシで叩く作業(それでも約3分)のほうが時間が掛かるという程度です)。なお、上記浸漬工程は、必要により(例えば、より多くの導電性カーボンを保持するため)、繰り返し行ってもよい。また、浸漬工程後に、気泡を除去して均一な浸透を促進するために、減圧脱泡処理、表面に対するジグの物理的な接触(例えば、刷毛で擦ったり叩いたりして気泡を取り除く処理)、超音波処理などを行ってもよい。
さらに、スラリーに浸漬した後、非導電性不織布または織物を乾燥(熱処理)する。ここで、乾燥条件は、非導電性不織布または織物から溶剤が除去されて導電性カーボンが表面及び空孔内に保持されればよいので、従来のように焼付(焼成)のための高温を必要としない。このため、時間、エネルギーコストの観点から、量産する上で非常に好ましい。このため、乾燥温度は、溶剤が除去できる温度であればよく、使用する溶剤の種類によって異なる。例えば、時間、エネルギーコストの観点から、乾燥温度は、250℃以下である。例えば、乾燥温度は、好ましくは60〜200℃であり、より好ましくは80〜150℃である。また、乾燥時間は、好ましくは5〜20分であり、より好ましくは2〜10分である。上記条件は、溶剤として水を選定した場合に特に好適に適用できる。なお、量産を考慮した場合には、溶剤として水を選定することが好ましい。また、乾燥工程では、乾燥炉中に気流を導入してもよい。このような操作を行うことにより、乾燥時間をより短縮することが可能である。このように、本形態の方法によると、低温でかつ短時間でガス拡散層を製造できるため、工業上の観点から非常に好ましい。なお、上記乾燥(熱処理)工程は、必要により(例えば、導電性カーボンを強固に保持するため)、繰り返し行ってもよい。
なお、上記にてガス拡散層を製造できるが、ガス拡散層の撥水性を向上するために、前記浸漬後の非導電性不織布または織物を撥水処理してもよい。ここで、撥水処理方法は、特に制限されないが、上記したような撥水剤を含む溶液中に浸漬することが操作の簡便さの点から好ましい。撥水剤溶液を調製するために使用できる溶媒としては、撥水剤を溶解できるものであれば特に制限されず、撥水剤の種類によって適宜選択できる。例えば、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール、トルエン等の石油系溶剤などが挙げられる。ここで、撥水剤の濃度は、特に制限されない。具体的には、撥水剤溶液における撥水剤の濃度(固形分濃度)は、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは1〜5重量%である。このような濃度であれば、ガス拡散層に十分な撥水性を付与できる。
また、撥水剤溶液における浸漬条件は、十分量の撥水性をガス拡散層に付与できる条件であれば特に制限されないが、浸漬に用いる溶剤の揮発を防止するために、溶剤の沸点よりも20℃以上低く、溶液の増粘または凝固が起こらない範囲の温度で行うことが好ましい。例えば、パーフロロスルホン酸系ポリマーのアルコール溶液を使用した場合の浸漬温度は、好ましくは10〜60℃、より好ましくは20〜40℃である。また、浸漬時間は、好ましくは2秒〜15分、より好ましくは5秒〜10分である。なお、上記浸漬工程中、超音波処理または減圧脱泡処理等によるガス拡散層内部の気泡の除去を行うことが好ましい。なお、上記浸漬工程は、必要により(例えば、より撥水性を付与するため)、繰り返し行ってもよい。
さらに、撥水剤溶液に浸漬した後、ガス拡散層を乾燥(熱処理)する。すなわち、好ましくは、浸漬後でかつ熱処理前に、前記浸漬後の非導電性不織布または織物を撥水処理する。これにより、撥水処理されたガス拡散層が得られる。ここで、乾燥条件は、溶媒が除去されればよい。具体的には、乾燥温度は、溶剤が除去できる温度であればよく、使用する溶剤の種類によって異なる。例えば、時間、エネルギーコストの観点から、乾燥温度は、250℃以下であり、好ましくは80〜200℃であり、より好ましくは80〜150℃である。また、量産を考慮すると、乾燥時間は、好ましくは30秒〜20分であり、より好ましくは3分〜15分である。なお、上記乾燥(熱処理)工程は、必要により(例えば、導電性カーボンを強固に保持するまたは撥水性をより効率的に付与するため)、繰り返し行ってもよい。このように、本形態の方法によると、低温でかつ短時間でガス拡散層を製造できるため、工業上の観点から非常に好ましい。
[固体高分子電解質膜]
固体高分子電解質膜2は、PEFC 1の運転時にアノード側(アノードガス拡散層またはアノード触媒層)で生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード側(カソードガス拡散層またはカソード触媒層)へと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜2は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
高分子電解質膜2は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とに大別される。フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能を向上させるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質膜が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。これらの炭化水素系高分子電解質膜は、原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の利点がある。
なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
高分子電解質膜の厚さは、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。電解質層の厚さは、通常は5〜300μm程度である。電解質層の厚さがかような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性及び使用時の出力特性のバランスが適切に制御されうる。
[触媒層]
触媒層(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層3aでは水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層3cでは酸素の還元反応が進行する。
触媒層は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性の触媒担体(導電性担体)、および電解質を含む。以下、触媒担体に触媒成分が担持されてなる複合体を「電極触媒」とも称する。
アノード触媒層に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード触媒層に用いられる触媒成分もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属およびこれらの合金などから選択されうる。
これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、アノード触媒層に用いられる触媒成分およびカソード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択されうる。本明細書では、特記しない限り、アノード触媒層用およびカソード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義である。よって、一括して「触媒成分」と称する。しかしながら、アノード触媒層およびカソード触媒層の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択されうる。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが採用されうる。例えば、触媒成分の形状は、粒状、鱗片状、層状などのものが使用できるが、粒状であることが好ましい。この際、触媒粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30nm、より好ましくは1〜10nm、さらに好ましくは1〜5nm、特に好ましくは2〜4nmである。触媒粒子の平均粒子径がかような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切に制御されうる。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡(TEM)より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定されうる。
上述した触媒成分は導電性担体に担持された電極触媒として触媒インクに含まれる。
導電性担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、および触媒成分と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。前記導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3重量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が上記したような範囲であれば、導電性担体への触媒成分および高分子電解質が十分分散して十分な発電性能が得られ、また、触媒成分および高分子電解質を十分有効利用できる。
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%とするのがよい。触媒成分の担持量がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
触媒層には、電極触媒に加えて、イオン伝導性の高分子電解質が含まれる。当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、上述した電解質層を構成するイオン交換樹脂が、高分子電解質として触媒層に添加されうる。
当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。高分子電解質は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。なお、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質の具体的な説明は上記固体高分子電解質膜における説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましい。特に、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
また、導電性担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
本発明の方法では、上記したような電極触媒、高分子電解質及び溶剤からなる触媒インクを、高分子電解質膜表面に塗布することによって、触媒層が形成される。この際、溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。また、溶剤の使用量もまた、特に制限されず公知と同様の量が使用できる。触媒インクにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、5〜30重量%、より好ましくは9〜20重量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の触媒インクは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒インクが転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などが挙げられる。これらのうち、プロピレングリコール(PG)が好ましく使用される。これは、プロピレングリコール(PG)を使用することにより、触媒インクの沸点が高まり溶媒蒸発速度が小さくなる。このため、例えば、転写法で電解質膜に触媒層を形成する際に、触媒インク中にPGを添加することにより、塗布された触媒インク中の溶媒蒸発速度が抑制され、前記乾燥過程後の触媒層にひび割れ(クラック)が生じることを抑制・防止できる。このようにひび割れの少ない触媒層を膜に転写することで、膜への機械的応力集中が緩和され、その結果、MEAの耐久性が向上することができる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒インクの全重量に対して、好ましくは5〜20重量%である。
本発明の触媒インクは、電極触媒、電解質及び溶剤、ならびに必要であれば撥水性高分子および/または増粘剤、が適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されない。例えば、電解質を極性溶媒に添加し、この混合液を加熱・攪拌して、電解質を極性溶媒に溶解した後、これに電極触媒を添加することによって、触媒インクが調製できる。または、電解質を、溶剤中に一旦分散/懸濁された後、上記分散/懸濁液を電極触媒と混合して、触媒インクを調製してもよい。また、電解質が予め上記他の溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(例えば、デュポン製のNafion溶液:1−プロパノール中に5wt%の濃度でNafionが分散/懸濁したもの)をそのまま上記方法に使用してもよい。
上記したような触媒インクを、高分子電解質膜上にまたはガス拡散層上に、塗布して、各触媒層が形成される。この際、高分子電解質膜上へのカソード/アノード触媒層の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。例えば、触媒インクを高分子電解質膜上に、乾燥後の厚みが所望の厚みになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
また、単位触媒塗布面積当たりの触媒含有量(mg/cm)は、特に制限されないが、十分な触媒の担体上での分散度、発電性能などを考慮すると、0.01〜1.0g/cmである。ただし、触媒が白金または白金含有合金を含む場合、単位触媒塗布面積当たりの白金含有量が0.5g/cm以下であることが好ましい。白金(Pt)や白金合金に代表される高価な貴金属触媒の使用は燃料電池の高価格要因となっている。したがって、高価な白金の使用量(白金含有量)を上記範囲まで低減し、コストを削減することが好ましい。下限値は発電性能が得られる限り特に制限されず、例えば、0.01g/cm以上である。より好ましくは、当該白金含有量は0.05〜0.20g/cmである。なお、本明細書において、「単位触媒塗布面積当たりの触媒(白金)含有量(g/cm)」の測定(確認)には、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)を用いる。所望の「単位触媒塗布面積当たりの触媒(白金)含有量(g/cm)」にせしめる方法も当業者であれば容易に行うことができ、インクの組成(触媒濃度)と塗布量を制御することで量を調整することができる。
触媒層の厚みは触媒層(乾燥後)の厚みは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmである。なお、上記厚みは、カソード触媒層およびアノード触媒層双方に適用される。しかし、カソード触媒層及びアノード触媒層の厚みは、同じであってもあるいは異なってもよい。
[微細多孔質層(MPL)]
膜電極接合体(MEA)は、触媒層とガス拡散層との間に、必要であれば、微細多孔質層(MPL)を有していてもよい。ここで、微細多孔質層(MPL)は、特に制限されないが、ガス拡散係数が大きいことが好ましい。このような微細多孔質層(MPL)を用いることにより、ガス透過性をさらに向上して、ドライ条件と湿潤条件における発電性能をより効果的に両立することができる。このような微細多孔質層(MPL)としては、特に制限されないが、必要であれば撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなりうる。ここで、カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛(粒状黒鉛を含む)、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。かようなカーボン粒子は、市販品を用いることができ、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などのオイルファーネスブラック;電気化学工業社製デンカブラックなどのアセチレンブラック等が挙げられる。また、カーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などであってもよい。また、耐食性などを向上させるために、前記カーボン粒子に黒鉛化処理などの加工を行ってもよい。この際、上記材料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
前記カーボン粒子の粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、ガス拡散係数が向上し、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。なお、カーボン粒子の形状は特に限定されず、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状など任意の構造をとりうる。本明細書中、「カーボン粒子の粒子径」は、導電性担体粒子の平均二次粒子径である。ここで、導電性担体粒子の平均二次粒子径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
微細多孔質層(MPL)は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂等が挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。微細多孔質層(MPL)における、カーボン粒子と撥水剤との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られない恐れがあり、撥水剤が多過ぎると十分な電子伝導性が得られない恐れがある。これらを考慮して、微細多孔質層(MPL)におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、重量比で、90:10〜40:60程度とするのがよい。
また、微細多孔質層(MPL)では、カーボン粒子がバインダにより結着されていてもよい。ここで用いられうるバインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。なお、上述した撥水剤とバインダとは一部重複する。したがって、好ましくは、撥水性を有するバインダを使用する。中でも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられ、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。撥水性を有するバインダを用いることにより、微細多孔質層(MPL)内の細孔(カーボン粒子間)に撥水性が付与され、水の排出性を向上させることができる。なお、これらのバインダは1種類単独で用いてもよいし、または2種類以上併用してもよい。また、これら以外の高分子が用いられてもよい。
微細多孔質層(MPL)におけるバインダの含有量は、微細多孔質層(MPL)内の空隙構造が所望の特性となるように適宜調整すればよい。具体的には、バインダの含有量は、微細多孔質層(MPL)の全重量に対して好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは12〜40重量%の範囲であるのが好ましい。バインダの配合割合が5重量%以上であれば粒子同士を良好に結合でき、60重量%以下であれば微細多孔質層(MPL)の電気抵抗の上昇を防止しうる。
微細多孔質層(MPL)の厚さは、特に制限されず、ガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよい。微細多孔質層(MPL)の厚さは、好ましく3〜500μmであり、より好ましくは5〜300μmであり、さらに好ましくは10〜150μmであり、特に好ましくは20〜100μmである。かような範囲にあれば、機械的強度とガスおよび水などの透過性とのバランスが適切に制御できる。
[ガス拡散層基材]
膜電極接合体(MEA)は、ガス拡散層とセパレーターとの間に、必要であれば、ガス拡散層基材を有していてもよい。ここで、ガス拡散層基材としては、特に限定されず公知のものが同様にして使用できる。例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス等の炭素繊維で形成された炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料;ならびに金属製メッシュ、エキスパンドメタル、エッチングプレートを基材とするものなどが挙げられる。前記基材の厚さは、特に制限されず所望の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。このような厚さであれば、十分な機械的強度ならびにガスや水などの透過性が確保できる。また、ガス拡散層基材は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、撥水剤を含んでもよい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。ここで、撥水処理方法は特に制限されず、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。例えば、ガス拡散層基材を撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔体にカーボン粒子を含浸させて焼結させたシート体を用いることができる。シート体とすることによって、製造工程が簡易になり、また、燃料電池の各部材を積層する際の取り扱い及び組み立てが容易になる。また、MEAの排水特性、セパレータの表面性状によっては、ガス拡散層基材の撥水処理を行わない、または、親水処理を行ってもよい。
また、ガス拡散層基材と微細多孔質層とを組み合わせたものを使用してもよい。この際、ガス拡散層基材上に微細多孔質層を形成する方法は特に制限されない。例えば、カーボン粒子、撥水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調製する。次に、このスラリーをガス拡散層基材上に塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これを前記ガス拡散層上に塗布する方法などを用いればよい。その後、マッフル炉や焼成炉を用いて250〜400℃程度で熱処理を施すのが好ましい。または、ガス拡散層基材上に微細多孔質層が予め形成された市販品を使用してもよい。
[膜電極接合体の製造方法]
膜電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、電解質膜に触媒層をホットプレスで転写または塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法が使用できる。また、アノードガス拡散層のアノード微細多孔質層側におよびカソードガス拡散層(カソード微細多孔質層を有する場合にはカソード微細多孔質層)にそれぞれアノード触媒層及びカソード触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極を2枚作製し、電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法なども使用することができる。ホットプレス等の塗布、接合条件は、電解質膜や触媒層内の電解質の種類(パーフルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
[セパレータ]
セパレータは、固体高分子型燃料電池などの燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータのそれぞれにはガス流路および冷却流路が設けられていることが好ましい。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜制限なく採用できる。セパレータの厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池(PEFC)を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
燃料電池の製造方法は、特に制限されることなく、燃料電池の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。例えば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
さらに、燃料電池が所望する電圧を発揮できるように、セパレータを介して膜電極接合体を複数積層して直列に繋いだ構造の燃料電池スタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
上述したPEFCや膜電極接合体は、ガス拡散性及び導電性に優れるガス拡散層を用いている。したがって、当該PEFCや膜電極接合体は優れた発電性能を発揮する。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「重量部」または「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
実施例1
(ガス拡散層の作製)
導電性カーボン(アセチレンブラックAB−6、平均一次粒子径=50nm、電気化学工業株式会社製)25.6g、分散助剤としてエマルゲン(サンノプコ株式会社、商品名:シックナー)1.4g、および水120gを加えた。この混合物を、プロペラ攪拌機で、10分間、攪拌を行い、ペースト状インクを得た。このペースト状インクを、60分間、超音波分散機で分散処理を行い、カーボンインクを調製した。上記超音波分散処理により、カーボンインクは低粘度となり、次工程での多孔体含浸に適した性状となった。このカーボンインクをレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラップMT3000)で測定したところ、メジアン値(導電性カーボンの平均二次粒子径)が2.2μmとなる分散液を得た。
80cm×80cmのガラス多孔体(非導電性不織布、57.7mg)を、上記で調整したカーボンインクに1分間、浸漬した後、引き上げた。なお、使用したガラス多孔体としては、日本板硝子株式会社製、商品名:TGP−015A(厚さ=160μm(19.6kPa荷重時)、空孔径=7.8μm、坪量=22g/m、密度=0.136g/m)を使用した。
このガラス多孔体を刷毛で表面を叩き、表面に付着した気泡を除いた後、120℃で8分間乾燥して、カーボン粒子・多孔体複合体を得た。
電解質溶液DE2020(DuPont社製,固形分濃度=21重量%)を10gを100gのエタノールで希釈して、撥水剤溶液(固形分濃度=2重量%)を調製した。この撥水剤溶液中に、前工程で作製したカーボン粒子・多孔体複合体を浸漬し、継続してカーボン粒子・多孔体複合体を浸漬した状態で超音波を2分照射して、内部の気泡を除去した。このようにして撥水処理されたカーボン粒子・多孔体複合体を120℃で10分乾燥(熱処理)して、ガス拡散層(165mg、0.46cc)を得た。このようにして得られたガス拡散層における導電性カーボンの含有量は、約13体積%であった。
このようにして得られたガス拡散層につい上記条件にてガーレー透気度を測定したところ、約1.23×10−4であった。なお、ガーレー透気度は、JIS P8117:2009に規定されるガーレー透気度測定器を使用し、外径28.6mmの円孔を有する締め付け板に押さえられた試料を100cc(0.1dm)の空気が通過する時間(秒)を測定し、その値を用い、厚さで標準化されたPermeability(透気度、単位:m)として算出した。
また、このようにして得られたガス拡散層について、下記方法によって、電気抵抗を測定し、その結果を図2に示す。すなわち、面積0.95cmのガス拡散層の両面を金箔で挟み、荷重をかけた状態で通電して測定した。電流値は1Aで、5MPaまでを1サイクルとし、2サイクル目の1MPaにおける値を測定した。その結果、2サイクル目の1MPaにおける電気抵抗は、約11mΩ/cmであり、十分低い電気抵抗を示した。
(小型発電セルの作製)
電極触媒としての白金担持カーボンと電解質樹脂バインダとしての20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont社製、DE2020)とを、白金/電解質樹脂バインダの固形分重量比が1.1であり、電極触媒/電解質樹脂バインダの固形分重量比が0.55となるように混合して、触媒インクを調製した。ここで、白金担持カーボンとしては、田中貴金属工業株式会社製、TEC10E50E(白金担持量=50%)を使用した。
この触媒インクを電解質膜の両面に塗布してカソード触媒層(乾燥膜厚=8μm)及びアノード触媒層(乾燥膜厚=8μm)を形成し、アクティブエリア2cm×5cmとなるMEAを作製した。なお、電解質膜としては、電解質膜(Nafion(登録商標)NR211、DuPont社製、膜厚=25μm)を使用した。また、カソード触媒層での白金量が0.363g/cmとなるように、アノード触媒層での白金量が0.063g/cmとなるように、調整した。
このようにして作製されたMEAに、アクティブエリア(2cm×5cm)と同サイズに切り抜いた上記ガス拡散層を各触媒層に重なるように配置して、発電セルを組み立てた。
このようにして得られた発電セルについて、以下の条件で発電試験評価を行った。下記条件において、負荷電流密度を0〜1.9A/cmの範囲で掃引し、IV曲線を得、その結果を図3に示す。
Figure 2014216232
図3から、本発明のガス拡散層を使用したMEAは、十分な発電性能を発揮できることが分かる。
1 固体高分子形燃料電池(PEFC)、
2 固体高分子電解質膜、
3a アノード触媒層、
3c カソード触媒層、
4a アノードガス拡散層、
4c カソードガス拡散層、
8a アノードセパレータ、
8c カソードセパレータ、
9a アノードガス流路、
9c カソードガス流路、
10 MEA、
11 冷媒流路。

Claims (8)

  1. 導電性カーボンを非導電性不織布または織物に保持してなる、ガス拡散層。
  2. 前記非導電性不織布または織物は、ガラス、高分子樹脂繊維およびセルロースからなる群より選択される少なくとも一種から形成される、請求項1に記載のガス拡散層。
  3. 前記非導電性不織布または織物の空孔径が、前記導電性カーボンの平均粒径の1.5〜100倍である、請求項1または2に記載のガス拡散層。
  4. 前記非導電性不織布または織物の空孔径が、100μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス拡散層。
  5. 導電性カーボンおよび溶剤を含むスラリーに非導電性不織布または織物を浸漬し;前記浸漬後の非導電性不織布または織物を250℃以下の温度で熱処理することを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス拡散層の製造方法。
  6. 前記浸漬後でかつ熱処理前に、前記浸漬後の非導電性不織布または織物を撥水処理することをさらに有する、請求項5に記載の方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス拡散層を有する燃料電池用膜電極接合体。
  8. 請求項7に記載の燃料電池用膜電極接合体を含む燃料電池。
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