JP2008243683A - 多孔質導電性基材、ガス拡散電極、膜・電極接合体および燃料電池 - Google Patents

多孔質導電性基材、ガス拡散電極、膜・電極接合体および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高分子電解質膜へのダメージを低減し、基材中に水が滞留することによるフラッディングを抑制しつつ、かつ、基材の焼成工程を経ることなく簡便な方法で、剥がれが抑制され、かつ優れた機械的強度と電気特性を有する多孔質導電性基材、該基材を用いたガス拡散電極、該電極を用いた膜・電極接合体および燃料電池を提供すること。
【解決手段】合成樹脂からなる多孔質基材に導電性カーボン粒子および熱硬化性樹脂の硬化物が付着している多孔質導電性基材、前記多孔質導電性基材からなるガス拡散電極、前記ガス拡散電極からなる膜・電極接合体、ならびに前記膜・電極接合体を備える燃料電池。
【選択図】図4

Description

本発明は、固体高分子型の燃料電池用のガス拡散層、ガス拡散電極、膜・電極接合体並びにそれらの製造方法およびそれらを用いた燃料電池に関する。
水素と酸素の電気化学反応により生じるエネルギーを電力として取り出す固体高分子型燃料電池は、自動車などの種々の用途に適用されつつある。
図1は、従来の固体高分子型燃料電池を示す概略断面図である。
この固体高分子型燃料電池は、高分子電解質膜11を燃料極(ガス拡散電極)12と酸化剤極(ガス拡散電極)13で挟持して構成される膜・電極接合体(membrane electrode assembly、MEA)14の両面に、さらにセパレータ15を接合した構造をなしている。また、膜・電極接合体14の燃料極12と酸化剤極13は、高分子電解質膜11に接合された触媒層17と、この触媒層の高分子電解質膜11と接する面とは反対の面に接合されたガス拡散層18とから構成されている。触媒層17とガス拡散層18で構成された燃料極12と酸化剤極13がガス拡散電極である。ガス拡散層18は、図2に示す通り導電性の多孔質基材23または該基材上に導電性粒子を有する被覆層23と、いわゆる撥水カーボン層24から構成される。
このようなMEAとセパレータ板が交互に積層されて電池積層体が構成され、所定の締結圧で積層方向に締結され、MEAとセパレータ板は所定の圧力のもとで面接触している。この種の高分子電解質型燃料電池の電極におけるガス拡散層の役割は、(1)ガス流路から反応ガスを電極(触媒層)に供給する、(2)膜や触媒層を湿潤状態に保つ、(3)触媒層で反応により生成した水(反応生成水)を速やかにガス流路に排出する、(4)MEAとセパレータ板間の電子導電性を確保する、の4点が挙げられる。従ってガス拡散層は、高いガス透過性能、水分透過性能、および電子導電性を有していることが要求される。
そこで、ガス拡散層として、カーボンペーパーやカーボンクロスなどのガス拡散能および導電性を兼ね備えた導電性炭素繊維基材または金属多孔体の上に、導電性を有しながら、反応ガスが拡散可能な気孔を十分有するように、カーボンブラック粒子や撥水性樹脂粒子からなる撥水カーボン層を塗布、焼成して形成していたものが用いられた(特許文献1および特許文献2)。しかしながら、前記特許文献1や特許文献2の構成では、導電性炭素繊維基材を構成する炭素繊維の一部が、触媒層を通り高分子電解質膜を突き刺して、微小ショートを起こすことがあった。撥水カーボン層は、その防止に有効ではあるものの、完全に防ぐことは不可能であり、微小ショートにより発電効率の低下や発電停止を招く傾向にあった。また、導電性炭素繊維基材に過剰な水が滞留することによってフラッディングを起こし、さらなる発電効率の低下や発電停止も招いていた。また、基材に金属多孔体やカーボンペーパー表面に金属で被覆した導電性多孔質基体または金属多孔体をカーボンで被覆した導電性多孔質基体を使用した場合、導電性の点では有利であるものの、電池内部は高温かつ酸化性雰囲気であることから金属が腐食しやすくなるため、腐食により発生した金属イオンにより電極内部で化学反応を起こし、高分子電解質膜や触媒層の劣化を促進していた。また、腐食により電気抵抗、電気的接触抵抗も増大していた。
そこで、導電性炭素繊維基材を使用しないガス拡散層が提案された。たとえば、撥水カーボン層中に炭素繊維を入れたものを用いることで、十分な強度を確保しつつ、高いガス透過性、および水分透過性を確保するガス拡散層が提案された(特許文献3)。
さらに、炭素短繊維からなる基材に炭素粒子と撥水性樹脂を塗布して撥水カーボン層を形成した後、撥水カーボン層を触媒層と接するようにホットプレスで接合した後、基材だけを剥がして炭素短繊維を付着させた拡散層も提案された(特許文献4)。
しかしながら、前記特許文献3の構成では、撥水カーボン層中に炭素繊維を混入しているので、高分子電解質膜への微小ショートがますます発生しやすくなり、また、微小ショートを懸念して炭素繊維量を減らすと、十分な機械的強度を得ることができなかった。特許文献4の構成では、拡散層を構成する炭素繊維の一部が撥水カーボン層中、及び表面に存在した状態となる。従って、やはり高分子電解質膜への微小ショートが発生しやすくなり、高分子電解質膜へダメージを与える傾向にあった。また、表面上の炭素繊維が流されてガス流路をふさぎ、流路の目詰まりによる電圧低下を引き起こすこともあった。
そこで、炭素繊維を使用しないガス拡散層が提案された。たとえば、導電性粒子とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の混合物に液状潤滑剤を加えてペースト状にし、これを押し出しや圧延工程でシート状の撥水カーボン層を作製し、その後、抽出、加熱等の方法で液状潤滑剤を除去するガス拡散層も提案された(特許文献5)。また、ガス拡散層として、ガス透過能と水分透過能の両方を確保するために、疎水性カーボンブラックとPTFEからなるシートを製造し、これに例えば径1mmの穴を5mm毎に形成し、その穴の部分に親水性カーボンブラックとPTFEからなる混合物を充填して作製する方法も提案された(特許文献6)。
しかしながら、前記特許文献5の方法では、製造工程において、石油エーテル等の液状潤滑剤を加え、後工程においてこれを除去する必要があり、作業工程が複雑であった。また、シート中に液状潤滑剤が残留していると、MEAに悪影響を及ぼすおそれもあった。さらに、この技術で作製した自己支持性シートは、十分な強度が得られず、取り扱いも困難であった。さらに前記特許文献6の構成では、十分な強度が得られず、取り扱いも困難であるばかりでなく、親水部に水が滞留してしまい十分な水の排出効果を得るには至っていなかった。
そこで、機械的強度を確保し、高分子電解質膜へのダメージを低減し、基材中に水が滞留することにより発生するフラッディングを抑制することができるガス拡散層として、合成樹脂からなる多孔質のシート状支持体に導電性カーボン粒子および熱可塑性樹脂からなる前記シート状支持体を被覆する被覆層からなる燃料電池用ガス拡散層が提案された(特許文献7)。
特開平2−216767号公報 特許第2890513号公報 特開2000−169253号公報 特許第2503193号公報 特許第3549241号公報 特許第2778767号公報 特開2004−152744号公報
しかしながら、前記特許文献7において、未焼成のガス拡散層(実施例1、4)は、バインダーとして用いたフッ素樹脂(PTFE)が軟化ないし溶融しておらず、また界面活性剤が添加できないため、導電性カーボン粒子とフッ素樹脂とが互いに不均一に凝集し、その結果、ボソボソしたもろい状態になっていた。このため、導電性カーボン粒子とフッ素樹脂が基材から剥がれるだけでなく、機械的強度不足からガス拡散層としての性状が保てず、実際には実用に耐えうるものではなかった。
一方、前記特許文献7において、焼成工程を経て得られたガス拡散層(実施例2、3、5、6)は、確かに剥がれが抑制され、優れた機械的強度と電池特性を確保することができるものの、焼成工程自身が非常に高温度で温度制御、温度管理が難しいため、温度ムラを抑制するための高精度な焼成設備が必要となり、かつ、冷却工程も温度勾配も高い分、温度制御、温度管理が難しくなることから、設備コストが極めて高くなり、製造工程全般も非常に煩雑になる。さらには、製造にかかるランニングコスト(エネルギーコスト)も高くなり、また、これらの製造工程を厳密に制御・管理しても、ワレ、ヒビ、ハガレなどの発生で歩留まりが非常に悪くなるため、低コスト化への解決には至っていなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高分子電解質膜へのダメージを低減し、基材中に水が滞留することによるフラッディングを抑制しつつ、かつ、基材の焼成工程を経ることなく簡便な方法で、剥がれが抑制され、かつ優れた機械的強度と電気特性を有する多孔質導電性基材、該基材を用いたガス拡散電極、該電極を用いた膜・電極接合体および燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を用いて導電性カーボン粒子を多孔質基材に強固に固着させることによって、剥がれが抑制され、かつ、優れた機械的強度と電気特性を有する多孔質導電性基材を製造できることを見いだし、本発明を解決するに至った。
すなわち、本発明は、合成樹脂からなる多孔質基材に、導電性カーボン粒子および熱硬化性樹脂の硬化物が付着している多孔質導電性基材を提供する。また、本発明は、触媒層とガス拡散層とからなる燃料電池用ガス拡散電極であって、前記ガス拡散層が前記多孔質導電性基材からなるガス拡散電極を提供する。さらに本発明は、高分子電解質膜および該高分子電解質膜を挟む一対のガス拡散電極からなる膜・電極接合体であって、前記ガス拡散電極が上述したガス拡散電極からなる膜・電極接合体を提供する。さらにまた、本発明は前記膜・電極接合体、および前記膜・電極接合体のガス拡散層に反応ガスを供給するガス流路を有する一対の導電性セパレータからなる単電池の積層体を備える燃料電池を提供する。
本発明により、高分子電解質膜へのダメージを低減し、基材中に水が滞留することによるフラッディングを抑制しつつ、かつ、基材の焼成工程を経ることなく簡便な方法で、剥がれが抑制され、かつ優れた機械的強度と電気特性を有する多孔質導電性基材、該基材を用いたガス拡散電極、該電極を用いた膜・電極接合体および燃料電池を提供することができる。
<多孔質導電性基材>
・多孔質基材
本発明に用いる多孔質基材は、合成樹脂からなる。好ましい材質としては、耐熱性、耐薬品性の観点から、フッ素樹脂やポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSU)、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などがある。さらに好ましい材質としては、耐熱性、耐薬品性以外に、成形性、耐候性、撥水性を考慮すると、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレンーエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)である。融点が100℃以下であるポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂は好ましくない。
本発明に用いる多孔質基材の好ましい形態としては、製造過程で、後述する導電性インクを含浸または塗布できること、および作製後のガス拡散層が水蒸気や反応ガスを十分透過できることなどが要求されることから多孔質体が好ましい。例えば、連続気泡を有するシート、パンチングシート、メッシュないし格子状体、織布、不織布などがあげられる。多孔質基材は平面構造を有していることが好ましい。具体的には、多孔質基材の最も厚い部分と薄い部分の差が、平均厚さの30%以下であることが好ましい。表面が粗いと、多孔質基材上に後述する導電性インクをむらなく、均一にコーティングすることが困難であり、多孔質基材の一部が突出してしまう。そうすると、多孔質基材と触媒層が直接接するので、電気抵抗や接触抵抗が高くなる。また、高分子電解質膜や触媒層にダメージを与える可能性もある。
また、多孔質基材の厚さは2μm以上、100μm以下であることが好ましい。厚さが薄すぎると、製造プロセスが困難であり、補強材としての効果も得られない。厚さが100μmより大きくなると、多孔質導電性基材全体も厚くなってしまい、ガス拡散性が低下し、抵抗値も増加する。
・導電性カーボン粒子
本発明に用いる導電性カーボン粒子としては、多孔質であり、電気抵抗が低く、コストも低いことから、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、例えば、電気化学工業(株)製のデンカブラック、ケッチェンブラック、例えば、ライオン(株)製のケッチェンブラック EC(ketjen black EC)、ファーネスブラック、例えば、キャボット(CABOT)社製のバルカンXC72などから適宜選択して使用することができる。
・熱硬化性樹脂
本発明に用いる熱硬化性樹脂としては、カーボンブラックを結着させるバインダーとして、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド、ジアリルフタレート樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。また、これらの単独または2種以上の混合物も使用できる。
・多孔質導電性基材の製造
・・導電性インク
本発明の多孔質導電性基材は、前記多孔質基材に導電性カーボン粒子と熱硬化性樹脂を主成分とする導電性インクを、必要に応じて含浸等しながら、塗工した後、熱処理を行い分散媒ないし溶媒の除去、熱硬化性樹脂の硬化することにより製造することができる。
この導電性インクを得るためには、まず前記熱硬化性樹脂と硬化剤を分散媒と混合して混練物を得て、ついで、前記導電性カーボン粒子と混合すればよい。
ここで硬化剤としては、イミダゾール誘系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン誘導体、アミンイミド、ポリアミン系、第三級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアジドなど、およびこれらの変性物が挙げられ、また、これらの単独または2種以上の混合物も使用できる。硬化剤の混合割合は用いる熱硬化性樹脂にもよるが、概ね熱硬化性樹脂に対して0.8〜50重量%の範囲である。
分散媒としては、使用する熱硬化性樹脂と反応性を有する溶剤も、反応性を有しない溶剤も使用可能である。反応性溶剤としては、例えば、エポキシ基を有する反応性希釈剤として、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、などが挙げられる。また、他の活性基を有する反応性希釈剤としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、などが挙げられる。
また、反応性のない溶剤としては、ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン、グリコールエーテル類、例えばセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ターピネオール、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレン、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、脂肪族炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油系溶剤、例えば石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ、ハロゲン化炭素、例えば四塩化炭素、ハロゲン化炭化水素、等の有機溶剤が挙げられる。その際、導電性カーボン粒子の濡れ性をよくして分散性を向上させるために界面活性剤を添加することもある。そのような界面活性剤としては、たとえば、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、例えば、アクロスオルガニクス(ACROS ORGANICS)社製のトライトン(Triton) X−100、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテルなどがあげられる。
本発明において導電性カーボン粒子(C)と熱硬化性樹脂(R)の割合は、重量比でC:R=1:1〜20:1、好ましくは2:1〜10:1の範囲である。導電性カーボン粒子の割合が該範囲を超えて少ないと導電性が低下し、一方、熱硬化性樹脂の割合が該範囲を超えて少ないと機械的強度が低下する。
本発明に用いる導電性インクにおいて分散媒の割合は流動性があれば割合は特に制限されるものではないが、概ね、樹脂分に対して20〜80重量%の範囲となるよう調整すれば、ハンドリング性に優れかつ乾燥しやすいため好ましい。
さらに、本発明の導電性インクにフッ素系樹脂を添加して撥水性を付与しても構わない。
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレンーエチレン共重合体(ETFE)などや、フッ素化アルキル基を含有する共重合体、例えばフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体と、アルキル基を含有するエチレン性不飽和単量体を含む組成物を重合せしめた共重合体を主構成成分する樹脂も含まれる。
・・付着方法
この導電性インクを多孔質基材に含浸するには、導電性インク中に単に多孔質基材を浸漬してもよい。また、さらに超音波を作用させたり、減圧下もしくは加圧下での浸漬、機械的にもみ込むような力を作用させたりしてもよい。あるいは、多孔質基材上に導電性インクを塗布して多孔質導電性基材を形成することもできる。この場合、従来公知の方法を用いることができ、例えば、スクリーン印刷法、スプレー法、コーター法、カーテンコーティング法、およびロールコート法などが挙げられる。これらの方法で多孔質基材の片面ずつに塗布するか、両面を一度に塗布してもよい。
多孔質基材に導電性インクを塗工した後、乾燥、熱処理して、樹脂を硬化させると共に被覆層塗工用インク中に含まれる分散媒や溶媒、界面活性剤などを除去する。熱処理条件は、用いた熱硬化樹脂により異なるため、一概には言えないが、概ね200℃以下、好ましくは100〜180℃の範囲で、0.1〜3時間、好ましくは0.5〜1時間程度である。また、熱処理前に、導電性インクが付着した多孔質基材をプレスすることにより、機械的に基材と導電性インクとの接着性を向上させ、厚さを均一にすることができる。また、ロールに通すことで、せん断力をかけて接着性をあげ、表面のひび割れを減らし、または小さくすることができる。また、延伸により多孔度をあげることができる。
本発明の多孔質導電性基材中における導電性カーボン粒子と熱硬化性樹脂の硬化物の付着密度は、0.1g/cm以上、0.8g/cm以下であることが好ましい。該密度が0.1mg/cmよりも低いと、ガス透過性が高すぎてセパレータのリブ部と相対する位置にある触媒層へのガス拡散性が確保されないため、発電効率が低下する。一方、該密度が0.1g/cm以上であれば、ガス拡散の確保が可能となり、発電効率は良好に保たれる。また、0.8mg/cmよりも高いとガス拡散性が低すぎ、発電効率が低下する。特に、最適な領域は0.2mg/cmから0.4mg/cmの範囲である。
なお、該多孔質導電性基材中における導電性カーボン粒子と熱硬化性樹脂の硬化物は、基材表面を被覆し、被覆層を形成するように付着していることが、導電性を高めることができるため好ましい。
さらに上記方法により製造された多孔質導電性基材に、さらにフッ素樹脂を付着させてもよい。その場合、多孔質導電性基材に対して、前記フッ素樹脂を塗布あるいは含浸させることにより撥水性を付与する。なお、フッ素樹脂を塗布あるいは含浸させる方法は、従来公知の方法であれば特に限定されることなく用いることができる。たとえば、フッ素樹脂を含む溶液をスプレー法等で多孔質導電性基材に塗布する。または、フッ素樹脂を含む溶液に多孔質基材を含浸させればよい。ここで、フッ素樹脂としては、上述した導電性インクに添加することができるフッ素樹脂と同様のものを用いることができる。
また、溶媒は、用いるフッ素樹脂の種類や、その形態に応じて異なるが、水系ディスバージョンの形態では水系溶媒を、有機溶剤可溶な樹脂では、芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン、グリコールエーテル類、例えばセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ターピネオール、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレン、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、ハロゲン化炭素、アミド類、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤を挙げることができる。
<ガス拡散電極、膜・電極接合体、燃料電池>
本発明のガス拡散電極は、触媒層と、前記多孔質導電性基材からなるガス拡散層とからなり、前記多孔質導電性基材からなるガス拡散層の片面と触媒層の一方の面とを接合することにより作製することができる。
本発明のガス拡散層は、上記の多孔質導電性基材を複数積層して構成することもできる。このとき、撥水性の異なる多孔質導電性基材を積層して、触媒層側からセパレータ側に向けて、撥水性が低くなるように、撥水性に傾斜を持たせることが好ましい。燃料電池が、供給される反応ガスの加湿度合いが高い、高加湿で運転される場合、または出力電流密度が高い領域で運転される場合には、電極内に水分や水蒸気が比較的多量に存在している。このとき、触媒層側からセパレータ板側に向けて、撥水性が低くなるように、ガス拡散層が撥水性に傾斜を持っていると、電極(カソード)で生じた反応生成水は、より撥水性の低い方向、すなわちより親水性のセパレータ板側に移動し、触媒層の生成水が排水されやすくなる。一方、電極外部に存在する水分や水蒸気は、撥水性の高いガス拡散層内部までは到達しにくくなる。このため、触媒層での過剰な水によるガス拡散経路の閉塞状態(フラッディング)による電圧の低下を抑制することができる。
低加湿運転および無加湿運転の場合には、上記とは反対に、触媒層側からセパレータ板側に向けて、撥水性が高くなるように、ガス拡散層の撥水性に傾斜を持たせるのがよい。これによってガス拡散層内に水や水蒸気を閉じ込める効果を得ることができ、触媒層や高分子電解質膜の乾きによる電圧の低下を防ぐことができる。また、このガス拡散層は、反応生成水がなく、カソード側に比べ比較的乾燥雰囲気にあるアノード側にのみ使用しても効果がある。
本発明の多孔質導電性基材を複数積層して1つの複合ガス拡散層を構成する場合、付着する導電性カーボン粒子の粒子径が異なる多孔質導電性基材を積層することが好ましい。すなわち、触媒層側からセパレータ板側に向けて、カーボン粒子の径が大きくなるように、粒子径に傾斜を持たせて複数の多孔質導電性基材を積層してガス拡散層とする。カーボン粒子の径が大きくなるほど、ガス拡散層の気孔径が大きくなる。従って、セパレータ板側のガス拡散層のガス拡散性が高くなり、粒子径が大きな水蒸気も通過しやすくなる。従って、電極近傍で反応により生じた水蒸気は、外部に向かって徐々に凝集し粒子径が大きくなるが、ガス拡散層の気孔径も大きくなっているので、過剰な水が滞留することなく、スムーズに系外に排出される。一方、電極外部に存在する水分や水蒸気は、気孔径が小さなガス拡散層内部までは到達しにくくなる。このため、触媒層での過剰な水によるガス拡散経路の閉塞状態による電圧の低下を抑制することができる。
低加湿運転および無加湿運転の場合には、上記とは反対に、触媒層側からセパレータ板側に向けて、気孔径が小さくなるように、粒子径に傾斜を持たせて複数の多孔質導電性基材を積層してガス拡散層とする。これによって、ガス拡散層内に水や水蒸気を閉じ込める効果を得ることができ、触媒層や高分子電解質膜の乾きによる電圧の低下を防ぐことができる。また、このガス拡散層は、反応生成水がなく、カソード側に比べ比較的乾燥雰囲気にあるアノード側にのみ使用しても効果がある。
なお、上で述べたガス拡散層の撥水性あるいは粒子径の傾斜は、一方の電極にのみ設けた場合でも有効であるが、電池のアノードとカソード両極に、個々に最適なガス拡散層を設けることによって電池性能の向上を図ることができる。
本発明のガス拡散層の厚さは10μm以上、500μm以下であることが好ましい。厚さが薄すぎると、ガス拡散層としての強度が低下し、取り扱い性が悪くなる。厚さが500μmより大きくなると、ガス拡散性が低下し、抵抗値も増加する。
本発明に用いる触媒層は、触媒と、触媒にプロトンを授受するための高分子電解質(以下、「触媒層内電解質」という。)とから構成されている。
触媒としては、例えば、白金黒、白金若しくは白金合金、またはこれらを担持したカーボンなどが用いられる。触媒層に含まれる触媒の量は、特に限定されるものではなく、触媒の種類、膜電極接合体の用途、要求特性、電極の種類(燃料極または酸化剤極)などに応じて適宜調整される。
また、触媒層内電解質は、高分子電解質膜と触媒との間におけるプロトンの授受を促進させる作用を有するものであり、触媒の周囲を包むように配置されている。触媒層内電解質としは、通常、上記の高分子電解質膜と同一の材質が用いられるが、異なる材質であってもよい。触媒層に含まれる触媒層内電解質の量は、特に限定されるものではなく、触媒層内電解質の種類、膜電極接合体の用途、要求特性、電極の種類(燃料極または酸化剤極)などに応じて適宜調整される。
また、ガス拡散層の一方の面上には、別途、撥水カーボン層が配されていてもよい。
撥水カーボン層の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、カーボンブラック、またはフッ素樹脂とカーボンブラック、または上記共重合体とカーボンブラックを含む撥水カーボン層などが用いられる。また、撥水カーボン層の厚みは、特に限定されるものではなく、後述する膜・電極接合体の用途、要求特性などに応じて適宜調整される。
本発明の膜・電極接合体は、高分子電解質膜および該高分子電解質膜を挟む一対の前記ガス拡散電極からなる。該膜・電極接合体は、上記ガス拡散電極を、高分子電解質膜に接合することにより作製することができる。
高分子電解質膜の材質は、特に限定されるものではなく、種々の組成、種々の分子構造(例えば、直鎖状、分枝状等)を備えた高分子電解質から適宜選択される。このような高分子電解質としては、例えば、(1)パーフルオロカーボン含有ポリマー系電解質、(2)芳香族エーテルまたはチオエーテルポリマー系電解質、または、(3)芳香族炭化水素ポリマー系電解質などが挙げられる。
また、高分子電解質に含まれる電解質基の種類についても、特に限定されるものではなく、例えば、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボキシ基などが挙げられる。高分子電解質には、これらの電解質基のうち、いずれか1種または2種以上が含まれているが、スルホン酸基が最も好ましい。
(1)パーフルオロカーボン含有ポリマー系電解質としては、具体的には、デユポン社の「ナフィオン」に代表されるスルホン化パーフルオロビニルエーテルポリマー、スルホン化パーフルオロビニルエーテルと含フッ素または非フッ素化オレフィンとの共重合体や多元共重合体などが挙げられる。
(2)芳香族エーテルまたはチオエーテルポリマー系電解質としては、具体的には、芳香環がスルホン化されたポリアリールエーテル、ポリアリールチオエーテル(=ポリアリールサルファイド)、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアリールサルファイドスルホン、ポリアリールスルホンアミドなどが挙げられる。
(3)芳香族炭化水素ポリマー系電解質としては、具体的には、芳香環がスルホン化されたポリフェニレン、ポリアルキルフェニレン、ポリビフェニレン、ポリアルキルビフェニレン、ポリナフチレンなどが挙げられる。
また、上記の(1)〜(3)の高分子電解質の誘導体も好適に用いられる。
また、高分子電解質膜は、上記の高分子電解質のいずれか1種から構成されていてもよく、あるいは、2種以上から構成されていてもよい。また、高分子電解質膜は、上記の高分子電解質と他の材料との複合体であってもよい。
本発明の燃料電池は、前記膜・電極接合体を有する。すなわち、本発明の燃料電池は、前記膜・電極接合体、および前記膜・電極接合体のガス拡散層に反応ガスを供給するガス流路を有する一対の導電性セパレータからなる単電池の積層体を備える。この際、ガス拡散層に、特に撥水性の濃淡部を設け、撥水性の高い部位をセパレータの流路が設けられていない部分に対向するように、膜電極接合体とセパレータを接合することで、生成水は流路に導くことができるので望ましい。
セパレータは、機械加工で表面に流路を形成した黒鉛板や、金属板や、導電性材料と樹脂とからなる組成物を所定の形状に成形してなるものである。
金属板としては、材質に特に限定されないが、耐食性を考慮して、ステンレスやチタン材あるいは表面に樹脂をコーティングしたり、金やチタンなどの耐食性の鍍金処理を施したステンレスなどが例示できる。導電性材料と樹脂からなる組成物を成形して製造されるセパレータは、一般にモールドセパレータと呼ばれるものであり、例えば、導電性粉粒体と熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂あるいはこれらの樹脂を併用した組成物を、金型を用いて成形したものが用いられる。ただし、金属板は腐食しやすいためモールドセパレータを用いることが好ましい。
導電性粉粒体としては、例えば、炭素材料、金属、金属化合物などの粉粒体などが挙げられ、これらの導電性粉粒体の1種または2種以上が用いられる。ただし、金属、金属化合物などの粉粒体は腐食しやすいため、炭素材料を用いることが好ましい。
導電性粉粒体として使用可能な炭素材料としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、ガラス状カーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。これらの炭素材料を単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの炭素材料の粉粒体の形状は、特に制限されず、板状、球状、無定形などの何れであってもよい。また、黒鉛を化学処理して得られる膨張黒鉛も用いられる。これらの中でも、導電性を考慮すれば、より少量で高度の導電性を有するセパレータが得られるという点で、人造黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛などが好適である。
また、金属、金属化合物としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、鉄、銅、金、ステンレス、パラジウム、チタンなど、さらには、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどのホウ化物などが挙げられる。これらの金属、金属化合物を単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの金属、金属化合物の粉粒体の形状は、特に限定されず、板状、球状、無定形などの何れであってもよい。さらに、これらの金属、金属化合物が非導電性あるいは半導電性材料の粉粒体により表面処理されたものも用いられる。
モールドセパレータにおいて熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素樹脂、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエステル・ポリエステルエラストマー、ポリエステル・ポリエーテルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、各燃料電池の動作温度に対する耐熱性や耐久性により、適宜選択して単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。一方、モールドセパレータにおいて熱硬化性樹脂としては上述した熱硬化性樹脂と同様のものを用いることができる。
本発明の多孔質導電性基材は炭素繊維や金属素材を含んでいないため、ガス拡散電極に用いた場合に、高分子電解質膜を貫通して微小ショートを生じさせるなどの高分子電解質膜へのダメージをなくすることができる。また、導電性炭素繊維基材を用いていないため、基材がフラッディングを起こすこともなく、基材表面の形状(うねり)の凸部による高分子電解質膜へのダメージも考慮する必要がない。また、金属材料を使用していないため、金属の腐食に伴う種々の不都合を抑制することができる。
また、熱硬化性樹脂が架橋反応により強固に導電性カーボン粒子を基材へ付着させるため剥がれが抑制され、優れた機械的強度を呈し、しかも、前記の多孔質基材自身も補強材として働くので、十分な強度を確保しつつ、ガス拡散性や電子導電性に優れたガス拡散層を構成することができる。更に炭素繊維を使用しないので低コストである。
また、焼成工程が不要なため簡便な設備で安価に製造できるだけでなく、歩留まりも低く抑えることができる。
従って、このガス拡散電極を用いることにより、初期特性、および長時間の連続運転において、高分子膜へのダメージを低減し、フラッディングを起こさず、高い出力特性、安定性、信頼性を発揮すると共に低コストの高分子電解質型燃料電池を作製することができる。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製「エピコート1010」)50重量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「エピクロン850」)50重量部、潜在性硬化剤マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤(旭化成ケミカルズ株式会社製「ノバキュアHX3941」)40重量部を合わせ、酢酸ブチルに溶解後、三本ロールによる混練を行い樹脂濃度が35重量%の混練物を作製した。
上記混練物43重量部、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製「デンカブラック」)100重量部を混合し、導電性インク1を作製した。多孔質基材として、PTFE製シート(淀川ヒューテック(株)製)を用いた。この多孔質基材は厚さ50μm、大きさ11cm×11cmであり、図3に示すように、直径0.5cmの円形の穴を縦14列×横714列、合計196個、パンチで打ち抜いて、パンチングシートとした。このパンチングシートの最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの差は5μmであった。作製した導電性インク1をパンチングシートの片面にアプリケータを用いて塗工し、約40℃で30分間乾燥した後、反対側の面にも同様に塗工後、160℃で30分加熱、硬化させ、多孔質導電性基材1を得た。こうして作製された多孔質導電性基材の厚さは100μmで、塗着重量が4.5mg/cmであり、被覆層の密度は0.45g/cmであった。
(実施例2)水素−空気型燃料電池の単電池の作製
触媒は約50重量%白金担時カーボン(田中貴金属株式会社製「TEC10E50E」)100重量部に対して、水280重量部、高分子電解質の分散液(米国デュポン社製「20%Nafion溶液」)230重量部を混合し、触媒組成物を調製した。
この触媒組成物をポリプロピレンフィルム上にワイヤーバー用いたバーコーティングにより塗布し乾燥することで触媒層とした。触媒層の塗布量は白金の含有量が1cm当たり0.35mgになるよう調整した。
触媒層付きポリプロピレンフィルムを6cm角に切り取り、高分子電解質膜(米国デュポン社製「Nafion112膜」)の両面に触媒層が内側になるように挟み、約145℃で2分間ホットプレスした後、ポリプロピレンフィルムを除去し、触媒層電解質膜接合体を作製した。
この触媒層電解質膜接合体に、上記の実施例で得られた多孔質導電性基材1をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(A)を作製した。
(実施例3)
PTFE製シートの代わりに膜厚10μm、空隙率90%のポリフェニレンサルファイド(PPS)不織布を用いたこと以外は実施例1と同様に行い多孔質導電性基材2を得た。得られた多孔質導電性基材の厚さは80μmで、塗着重量が0.5mg/cmであり、密度は0.17g/cmであった。使用したPPSシートの最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの差は1μmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材2をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(B)を作製した。
(実施例4)
フェノール樹脂(明和化成株式会社製「MEP-7200」)55重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製「エピコート1009」)45重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成株式会社製「キュアゾール2E4MZ-CN」)1重量部を合わせ、酢酸ブチルに溶解後、三本ロールによる混練を行い樹脂濃度が35重量%の混練物を作製した。
上記混練物43重量部、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製「デンカブラック」)100重量部を混合し、導電性インク2を作製した。多孔質基材として、PTFE製シート(淀川ヒューテック(株)製)を用いた。この多孔質基材は厚さ50μm、大きさ11cm×11cmであり、図3に示すように、直径0.5cmの円形の穴を縦14列×横14列、合計196個、パンチで打ち抜いて、パンチングシートとした。このパンチングシートの最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの差は5μmであった。作製した導電性インクをパンチングシートの片面にアプリケータを用いて塗工し、約40℃で30分間乾燥した後、反対側の面にも同様に塗工後、160℃で30分加熱、硬化させ、多孔質導電性基材3を得た。こうして作製された多孔質導電性基材の厚さは105μmで、塗着重量が4.8mg/cmであり、被覆層の密度は0.41g/cmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材3をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(C)を作製した。
(実施例5)
PTFE製シートの代わりに膜厚10μm、空隙率90%のポリフェニレンサルファイド(PPS)を用いたこと以外は実施例4と同様に行い多孔質導電性基材4を得た。得られた多孔質導電性基材の厚さは83μmで、塗着重量が0.4mg/cmであり、密度は0.16g/cmであった。使用したPPSシートの最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの差は1μmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材4をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(D)を作製した。
(実施例6)
撥水撥油剤(大日本インキ化学工業株式会社製「NH−15」)をトルエンとの重量比が1:5となるようにトルエンで希釈して、NH−15分散希釈液を調整した。実施例1で得られた多孔質導電性基材1をNH−15分散希釈液に室温、10秒間含浸させた後、引き上げた。約100℃、2分間乾燥させ、次いで160℃、5分間熱処理して多孔質導電性基材5を得た。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材5をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(E)を作製した。
(実施例7)
アセチレンブラックの代わりにファーネスブラック(CABOT社製「バルカンXC72」)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い多孔質導電性基材6を得た。厚さは100μm、塗着量が4.3mg/cmであり被覆層密度は0.41g/cmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材6をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(F)を作製した。
(実施例8)
PTFE製シートの代わりに膜厚1μm、空隙率90%のポリフェニレンサルファイド(PPS)不織布を用いたこと以外は実施例1と同様に行い多孔質導電性基材7を得た。厚さは20μm、塗着量が0.05mg/cmであり被覆層密度は0.025mg/cmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材7をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(G)を作製した。
(実施例9)
PTFE製シートの代わりに膜厚100μm、空隙率90%のポリフェニレンサルファイド(PPS)不織布を用いたこと以外は実施例1と同様に行い多孔質導電性基材8を得た。厚さは400μm、塗着量が80mg/cmであり被覆層密度は2.1mg/cmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材8をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(H)を作製した。
(実施例10)
PTFE製シートの代わりに膜厚1μm、空隙率90%のポリフェニレンサルファイド(PPS)不織布を、多孔質導電性基材の厚さが8μmになるように塗工した以外は実施例1と同様に行い多孔質導電性基材9を得た。厚さは8μm、塗着量が0.05mg/cmであり被覆層密度は0.06mg/cmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材9をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(I)を作製した。
(実施例11)
PTFE製シートの代わりに膜厚10μm、空隙率90%のポリフェニレンサルファイド(PPS)不織布を、多孔質導電性基材の厚さが600μmになるように塗工した以外は実施例1と同様に行い多孔質導電性基材10を得た。厚さは600μm、塗着量が100mg/cmであり被覆層密度は1.7mg/cmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材10をガス拡散層として配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(J)を作製した。
(比較例1)
特開2004−152744号公報(特許文献7)に従い、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック)100重量部とPTFE粉末(ダイキン工業(株)製N10X)15重量部を、エタノール200重量部と水300重量部を混合した分散媒に分散し、撥水層塗料(インク)1を作製した。シート状支持体には、PTFE製シート(淀川ヒューテック(株)製)を用いた。このシート状支持体は、厚さ40μm、大きさ11cm×11cmであり、直径0.5cmの円形の穴を縦14列×横14列、合計194個、パンチで打ち抜いて、パンチングシートとした。このパンチングシートの最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの差は5μmであった。作製した塗料をパンチングシートの片面にアプリケータを用いて塗工し、約40℃で30分間乾燥した後、反対側の面にも同様に塗工、乾燥して、多孔質導電性基材(ガス拡散層)11を得た。しかしながら作製した多孔質導電性基材(ガス拡散層)11は、PTFE製シートと被覆層が剥がれ易く、更に被覆層はPTFEとアセチレンブラックを混合し約40℃で乾燥したのみであり、PTFEが軟化ないし溶融する温度まで加熱していないので被覆層自体がもろく、ガス拡散層としての性状が保てず、評価することが出来なかった。
(比較例2)
特開2004−152744号公報(特許文献7)に従い、アセチレンブラック100重量部とPTFE粉末15重量部と界面活性剤のオクチルフェノキシポリエトキシエタノール(ACROS ORGANICS社製のTritonX−100)10重量部を、水300重量部に分散し、撥水層塗料(インク)3を作製した。次いで、この塗料中に、膜厚10μm、空隙率90%のポリフェニレンサルファイド(PPS)シートを10分間、浸漬させた。10分後、取り出して、約40℃で乾燥後、焼成炉で300℃、4時間焼成して、多孔質導電性基材(ガス拡散層)12を得た。得られた多孔質導電性基材(ガス拡散層)の厚さは30μmで、塗着重量が0.5mg/cmであり、密度は0.17g/cmであった。使用したPPSシートの最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの差は1μmであった。
次に、実施例2と同様に行い多孔質導電性基材(ガス拡散層)12を配し、膜・電極接合体(MEA)とし、さらにその外側にセパレータを配した後、これらを締結して水素−空気型燃料電池の単電池(K)を作製した。
(測定例1)導電性の評価
導電性は、抵抗を測定することにより評価した。実際には、多孔質導電性基材を5cm角に切り取り、続いて、同寸法の金メッキ電極2枚を用意し、該金メッキ電極2枚で、前記多孔質導電性基材をはさみ、更に、油圧プレスにて0.5MPaの圧力下、定電流電源で10mAの交流(I)を印加した。この時の電極間の電圧降下(ΔV)を電圧計で測定し求められた抵抗値(ΔV/I)を導電性の指標とした。
Figure 2008243683
*多孔質導電性基材11:ガス拡散層としての性状を保てず、測定できなかった。
実施例より得られた多孔質導電性基材1〜10は比較例の多孔質導電性基材12とほぼ同等の導電性を示し、導電性の点では遜色が無い事が明らかとなった。また、厚さの薄い多孔質導電性基材7と9が最も抵抗値が低い値を示した。これは、多孔質導電性基材自体が薄い為、内部抵抗が低いからと判断される。
(測定例2)電池特性を評価
試験方法は、各燃料電池のアノードに純水素ガスを、カソードに空気をそれぞれ75℃のバブラーを通して供給し、電池温度を75℃、燃料ガス利用率を75%、空気利用率を40%、電流密度を0.2A/cmとして作動させた。こうして、水素−空気燃料電池としての電池電圧でガス拡散性やガス拡散層の強度を判断した。試験開始から10時間後(初
期特性)と1000時間後(耐久試験)の電池電圧の結果を表2に示す。
Figure 2008243683
この結果から、本発明の燃料電池A〜Fは、比較例と比べ、同等もしくはそれ以上の優れた電池特性を示した。また、厚さの薄い基材を使用した燃料電池G、および厚い基材を使用した燃料電池Hは、低い電圧を示した。この原因は、基材が薄すぎるとガス拡散層の強度不足によるガスの供給及び拡散性の安定性の欠如や過剰な水の排出による電解質膜への影響、あるいは取り扱い性の悪化による触媒層との位置ずれといったことが考えられる。逆に基材が厚いと、ガス拡散性の低下や内部抵抗値が増大するため、電圧が低下したと判断される。
厚さの薄いガス拡散層を使用した燃料電池I、および厚いガス拡散層を使用した燃料電池Jは、低い電圧を示した。この原因は、ガス拡散層の厚さが薄すぎると強度不足によりガス拡散層が破壊され、ガスの供給及び拡散性の安定性の欠如や過剰な水の排出による電解質膜への影響、導電性の低下といったガス拡散層本来の仕事が果たせない為と考えられる。逆にガス拡散層が厚いと、ガス拡散性の低下や内部抵抗値が増大するため、電圧が低下したと考えられる。
(生産性評価)製造歩留りの比較
実施例および比較例について多孔質導電性基材100枚作製し、製造時における歩留りを評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2008243683
実施例2から11で得られた多孔質導電性基材(1〜10)の歩留りは比較例2で得られた多孔質導電性基材(12)より良好であった。比較例2で得られた多孔質導電性基材(12)は300℃の焼成工程が必要なため、温度制御や温度ムラ等により、ワレ、ヒビ、ハガレなどが発生し歩留りが低下した。それに比べ本実施例は熱処理温度が約160℃と低温であり温度制御や温度ムラの抑制がしやすい為、熱処理時におけるワレ、ヒビ、ハガレなどの発生を抑えることができた。
本発明の多孔質導電性基材は、高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層として有用である。また、本発明の多孔質導電性基材は、液体燃料電池、燐酸型燃料電池など各種燃料電池用ガス拡散層等としても有用である。本発明の膜・電極接合体は、酸素、オゾン、水素などのガス発生機やガス精製機、酸素センサ、アルコールセンサなどの各種ガスセンサにも適用が可能である。
一般的な高分子電解質型燃料電池の構成を示す縦断面図である。 同燃料電池の電極部の断面図である。 本発明の実施例で使用した多孔質基材の一例を示す平面図である。 本発明の実施例で使用した多孔質導電性基材の一例を示す断面図である。
符号の説明
11 高分子電解質膜
12 燃料極
13 酸化剤極
14 膜・電極接合体
15 セパレータ
16 ガス流路
17 触媒層
18 ガス拡散層
23 導電性の多孔質基材または多孔質基材上に導電性粒子を有する被覆層
24 撥水カーボン層
31 基材
32 穴
33 導電性粒子と熱硬化性樹脂の硬化物からなる被覆層

Claims (7)

  1. 合成樹脂からなる多孔質基材に、導電性カーボン粒子および熱硬化性樹脂の硬化物が付着していることを特徴とする多孔質導電性基材。
  2. 前記多孔質基材の表面が、前記導電性カーボン粒子および熱硬化性樹脂の硬化物からなる被覆層により被覆されている請求項1記載の多孔質導電性基材。
  3. 被覆層の密度が、0.1〜0.8〔g/cm〕の範囲である請求項2記載の多孔質導電性基材。
  4. さらに撥水剤が付着している請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質導電性基材。
  5. 触媒層とガス拡散層とからなる燃料電池用ガス拡散電極であって、前記ガス拡散層が請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質導電性基材からなることを特徴とするガス拡散電極。
  6. 高分子電解質膜および該高分子電解質膜を挟む一対のガス拡散電極からなる膜・電極接合体であって、前記ガス拡散電極が請求項5記載のガス拡散電極からなることを特徴とする膜・電極接合体。
  7. 請求項6記載の膜・電極接合体、および前記膜・電極接合体のガス拡散層に反応ガスを供給するガス流路を有する一対の導電性セパレータからなる単電池の積層体を備える燃料電池。
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