JP2008087563A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポンチによるモータシャフトへのボールナットの結合時に、ボールナットが変形しても、デフレクタを循環する転動ボールの転動作用に影響を及ぼさないようにした電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ボールナット21の外周一部にキー溝50を形成し、モータシャフト41の外周位置P1よりボールナットのキー溝に向けてポンチを打ち込んでモータシャフトの内周を変形させてボールナットのキー溝に係合させるとともに、デフレクタ25を、ボールナットの円周方向に等角度間隔に、かつボールナットの軸線方向に間隔を有して装着し、ボールナットに形成したキー溝に対して、ボールナットの一端部に装着されたデフレクタを直径方向に対向しない角度位置に配置した。
【選択図】図6

Description

本発明は、ボールねじ装置を備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
一般に、電動パワーステアリング装置は、ステアリングシャフトの回転によって軸方向移動されるラック軸と、ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいてモータシャフトを回転駆動する電動モータと、モータシャフトの回転運動をラック軸の軸方向運動に変換するボールねじ装置とを備えている。
ところで、ラック軸と同軸的に電動モータを配設したラック同軸型電動パワーステアリング装置においては、例えば、特許文献1に記載されているように、ラック軸にボールねじ軸を一体に設け、このボールねじ軸に転動ボールを介して螺合するボールナットを、締付けナットによってモータシャフトの一端に一体的に固定するようになっている。
この種の電動パワーステアリング装置においては、締付けナットによってボールナットは、通常の操舵負荷に十分に耐え得る締付け力でモータシャフトに固定されているが、不測の事態によってボールナットに過度の負荷が作用した場合に締付けナットが緩んでも、ボールナットがモータシャフトに対して回転して操舵ができなくなることが生じないように、かしめ等によってボールナットをモータシャフトに固定するフェールセーフ対応が必要となる。
かかるフェールセーフ対応の1つの手段として、例えば、図7に示すように、ボールナット1の一端側外周の円周上1か所には、ボールナット1を加工するための加工基準としてキー溝2が設けられるため、このキー溝2を利用して、ボールナット1をモータシャフト3に装着した後に、ボールナット1のキー溝2に対応するモータシャフト3の外周位置P1よりポンチを打ち込んで、モータシャフト3の内周の一部を内方に変形させ、この変形部をボールナット1のキー溝2に食い込ませることにより、ボールナット1がモータシャフト3に対して相対回転できないようにすることが考えられる。
特開2001−97232号公報
ところで、この種の電動パワーステアリング装置においては、通常、ボールねじ軸5とボールナット1との間に介在される転動ボール6を循環するためのデフレクタ7が、ボールナット1の円周方向に等角度間隔に、かつボールナット1の軸線方向に間隔を有して通常4か所に装着される。そして、ボールナット1の軸線方向の両端に配置されたデフレクタ7とボールナット1の軸端までの距離は僅かしかなく、これら両端に配置されたデフレクタ7と同位相にキー溝を形成することはスペース上困難であるため、キー溝2は、両端に配置されたデフレクタ7と180度位相の異なる角度位置に形成するのが最も合理的である。
しかしながら、キー溝2が、端部に配置されたデフレクタ7と180度位相の異なる角度位置に配置されていると、モータシャフト3の外周よりポンチを打ち込んで、ボールナット1をモータシャフト3に相対回転できないように結合すると、キー溝2と直径方向に対向するデフレクタ7、すなわち、上記した端部に配置されたデフレクタ7を通過する転動ボール7の循環に少なからず影響し、これにより作動音が発生する原因の1つであることが本件出願の発明者等によって知見された。
この理由は、モータシャフト3の外周位置P1よりポンチを打ち込むと、図7に示すように、モータシャフト3、延いてはボールナット1が僅かではあるが楕円状に変形し、キー溝2と直径方向に対向するデフレクタ7とボールねじ軸5との間の隙間が僅かに縮小することが、1つの要因ではないかと推測される。なお、図7においては、理解を容易にするために、ボールナット1の変形を誇張して示しているが、実際上は数ミクロンのオーダの僅かな変形である。
本発明は、上記した従来の問題点に着目してなされたもので、ポンチによるモータシャフトへのボールナットの結合時に、ボールナットが変形しても、デフレクタを循環する転動ボールの転動作用に影響を及ぼさないようにした電動パワーステアリング装置を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の特徴は、ギヤハウジングと、該ギヤハウジングに軸方向に移動可能に貫挿されラックピニオン機構を介して入力軸に連結されるラック軸と、該ラック軸と同軸的に前記ギヤハウジング内に配置された電動モータと、該電動モータの回転出力を前記ラック軸の軸方向運動に変換するボールねじ装置とを備えた電動パワーステアリング装置において、前記ボールねじ装置は、前記ラック軸に一体に設けられたボールねじ軸と、前記電動モータによって回転されるモータシャフトに装着され前記ボールねじ軸に転動ボールを介して螺合するボールナットと、前記モータシャフトに螺合され前記ボールナットを前記モータシャフトの端面に締付ける締付けナットとを備え、前記ボールナットの外周一部にキー溝を形成し、前記モータシャフトの外周より前記ボールナットの前記キー溝に向けてポンチを打ち込んで前記モータシャフトの内周を変形させて前記ボールナットの前記キー溝に係合させるとともに、前記デフレクタを、前記ボールナットの円周方向に等角度間隔に、かつ前記ボールナットの軸線方向に間隔を有して装着し、前記ボールナットに形成したキー溝に対して、前記ボールナットの一端部に装着された前記デフレクタを直径方向に対向しない角度位置に配置したことである。
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1において、前記ボールナットに形成したキー溝に対して、前記ボールナットの一端部に装着された前記デフレクタを90度異なる角度位置に配置したことである。
請求項1に係る発明によれば、デフレクタを、ボールナットの円周方向に等角度間隔に、かつボールナットの軸線方向に間隔を有して装着された複数のデフレクタのうちのボールナットのキー溝側に対応するデフレクタを、キー溝と直径方向に対向しない角度位置に配置したので、モータシャフトの外周よりボールナットのキー溝に向けてポンチを打ち込むことにより、仮にボールナットが変形しても、デフレクタを循環する転動ボールの転動作用への影響を少なくすることができる。
請求項2に係る発明によれば、ボールナットに形成したキー溝を、ボールナットの一端部に装着されたデフレクタと90度異なる角度位置に配置したので、モータシャフトの外周よりボールナットのキー溝に向けてポンチを打ち込むことによる影響を最少に抑えることができる。
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態のデフレクタ式ボールねじ装置を備えた電動式パワーステアリング装置10の全体を示すもので、当該電動式パワーステアリング装置10は、車両の左右方向に延在して配設されたハウジング11を備え、ハウジング11には、図略のステアリングホイールによって回転されるピニオン軸12と、ピニオン軸12に噛合うラック歯13aを形成したラック軸13と、ラック軸13と同軸的に配設した電動モータ14と、電動モータ14の回転運動をラック軸13の軸方向運動に変換するボールねじ装置15等が備えられている。
ハウジング11は、円筒状のモータハウジング16と、モータハウジング16の両端に同軸上に嵌合された中空状のラックハウジング17、18からなり、ラックハウジング17、18に形成された取付部17a、18aを介して図略の車体ボディに支持されるようになっている。
ハウジング11には、ラック軸13が軸方向に摺動可能に貫挿され、ラック軸13の両端は、タイロッドを介して左右の操向車輪に連結され、ラック軸13の軸動によって操向車輪が左右方向に操向されるようになっている。
ラック軸13の一端にはボールねじ装置15を構成するボールねじ軸20が形成されている。ボールねじ装置15は、図2に示すように、外周面に螺旋状のねじ溝20aを有するボールねじ軸20と、内周面に螺旋状のねじ溝21aを有するボールナット21と、ボールねじ軸20のねじ溝20aとボールナット21のねじ溝21aとの間で形成されるボール軌道23内を転動する複数の転動ボール24と、隣接する2つのねじ溝20a、21a間で転動ボール24をリターンするデフレクタ25とによって構成されている。ボールナット21は後述する電動モータ14のロータを構成するモータシャフト41内に装着され、図3に示すように、締付けナット26によるねじ締めによってモータシャフト41に一体的に固定されている。これにより、モータシャフト41によるボールナット21の正逆回転によって、ボールねじ軸20とともにラック軸13が軸方向に往復動されるようになる。
ボールナット21には、ねじ山を挟む2つのねじ溝21aに跨って斜めに略長円形状の嵌合穴31が半径方向に貫通して形成され、嵌合穴31は軸方向位置および周方向位置を互いに違えて円周上複数(4か所)設けられている。嵌合穴31には段部31aが形成され、嵌合穴31に後述する構成のデフレクタ25が段部31aに係合する位置に装着されるようになっている。デフレクタ25には、2つのねじ溝21a間をなめらかに接続する断面が半円弧状で、長手方向に略S字状に形成されたリターン溝35が凹設されている。
ボールナット21へのデフレクタ25の組込みは、デフレクタ25をその脚部33側よりボールナット21の嵌合穴31に挿入し、嵌合穴31の段部31aに係合させる。その状態で、かしめ等の手段によってデフレクタ25をボールナット21に固着することにより、デフレクタ25の放射方向への移動が規制されるようになっている。この状態においては、デフレクタ25は、図2に示すように、隣接するねじ溝21a間に跨ってねじ溝21aと交差するように配置される。
これにより、デフレクタ25を装着したボールナット21にボールねじ軸20が組み込まれると、リターン溝35の両端部がボールねじ軸20とボールナット21とのねじ溝20a、21a間になめらかに接続される。これによって、転動ボール24をボールねじ軸20とボールナット21間の無限状のボール軌道23を循環するボール循環通路40が構成される。そして、このボール循環通路40は軸方向に複数組(4組)並設され、ボールねじ装置15が構成される。
ところで、上記したボールナット21には、図4および図5に示すように、ボールナット21にねじ溝21aや嵌合穴31等を加工するための加工基準となるキー溝50が、一端外周に形成されている。本実施の形態においては、かかるキー溝50を利用して、イレギュラが生じても、ボールナット21がモータシャフト41に対して相対回転しないようなフェイルセーフが採られている。すなわち、締付けナット26によってボールナット21をモータシャフト41にねじ締め固定した後に、キー溝50に対応するモータシャフト41の外周位置P1(図3参照)よりポンチを打ち込むことにより、モータシャフト41の内周を変形させてキー溝50内に食い込ませることにより、たとえ、締付けナット26によってボールナット21の回り止めができなくなっても、ボールナット21をモータシャフト41に対して相対回転できないようにしている。
この場合、キー溝50は、図4および図5に示すように、ボールナット21の最も端部寄りに配設されるデフレクタ25が嵌合される嵌合穴31の角度位置に対して90度異なる角度位置に形成されている。このために、締付けナット26によってボールナット21をモータシャフト41にねじ締め固定した後に、モータシャフト41の外周のポンチ打ち込み位置(P1)は、図6に示すように、ポンチ打ちによる影響を及ぼすデフレクタ25の角度位置に対して90度異なる位置となる。換言すれば、ポンチの打ち込み方向は、デフレクタ25を循環する転動ボール24の転動方向に沿った方向となり、デフレクタ25に侵入する転動ボール24およびデフレクタ25より排出する転動ボール24の通路面積への影響を少なくすることができる。
従って、このような構成のボールねじ装置15を用いた電動パワーステアリング装置10を搭載した車両においては、ハンドル操舵に伴ってデフレクタ25を通過する際の転動ボール24の転動負荷を小さくすることができ、転動ボール24がなめらかに転動できるので、摺動音(作動音)を低減でき、操舵フィーリングも向上することができる。
電動モータ14は、ボールねじ装置15を介してボールねじ軸20(ラック軸13)に軸方向のアシスト力を付与するもので、中空状のロータからなるモータシャフト41とステータ42とから構成されている。モータシャフト41はモータハウジング16に軸受43,44を介して回転可能に軸承され、このモータシャフト41の中空穴内にボールねじ軸20が同軸的に貫挿されている。モータシャフト41の外周には平板状の永久磁石45が複数接着され、この永久磁石45に対向するようにステータ42がモータハウジング16の内周に装着されている。ステータ42は複数のコイル46を備え、コイル46への通電によって発生する磁束を永久磁石45に作用させることにより、モータシャフト41が回転されるようになっている。
次に、上記のように構成された電動パワーステアリング装置10の動作について説明する。図略のステアリングホイールを操舵すると、操舵トルクが図略の入力軸に伝達され、ピニオン軸12とラック歯13aとによるラックピニオン機構を介してラック軸13が軸方向に移動される。
入力軸に与えられた操舵トルクは図略のトルクセンサにより検出され、また、図略の回転角検出センサによって電動モータ14のモータシャフト41の回転位置等が検出される。これら操舵トルクおよびモータシャフト41の回転位置等に基づいて電動モータ14が制御され、アシスト力が発生される。電動モータ14によるアシスト力は、ボールねじ装置15によってラック軸13の軸方向移動に変換され、運転者によるステアリングホイールの操舵力が軽減される。
ところで、本実施の形態においては、図6に示すように、ボールナット21に形成したキー溝50を、ボールナット21の最も端部寄りに配設されたデフレクタ25の角度位置に対して90度異なる角度位置が配置したため、締付けナット26によってボールナット21をモータシャフト41にねじ締め固定した後に、モータシャフト41の外周位置P1よりポンチを打ち込むことにより、仮にボールナット21が楕円状に僅かに変形しても、デフレクタ25がボールナット21の変形によってボールねじ軸20との隙間が変化しない関係に配置されているため、デフレクタ25を循環する転動ボール24の転動作用にはほとんど影響を及ぼさないようにすることができる。換言すれば、ポンチの打ち込み方向は、デフレクタ25を出入りする転動ボール24の出入り方向に沿った方向となり、デフレクタ25に侵入する転動ボール24およびデフレクタ25より排出する転動ボール24の通路面積への影響を最少にすることができる。
従って、このような構成のボールねじ装置15を用いた電動パワーステアリング装置10を搭載した車両においては、ハンドル操舵に伴ってデフレクタ25を通過する際の転動ボール24の転動負荷を小さくすることができ、転動ボール24の摺動音を低減でき、操舵フィーリングを向上することができる。
上記した実施の形態においては、ボールナット21の最も端部寄りに配設されたデフレクタ25と、キー溝50との角度関係を、90度ずらした例について説明したが、当該デフレクタ25とキー溝50との対応関係は、必ずしも90度に限定されるものではなく、少なくとも直径線上に対応する位置関係より、所定角度、好ましくは45度以上ずらすことによっても、上記した効果を享受できるものである。
本発明の実施の形態を示す電動パワーステアリング装置の全体図である。 図1の2−2線に沿って切断したボールねじ装置を示す断面図である。 図1のモータシャフトに対するボールナットの組付け状態を示す図である。 ボールナットを示す外観図である。 図4の矢印5方向から見た図である。 本発明の実施の形態に係るボールナットのキー溝とデフレクタとの関係を示す概略図である。 本発明の実施の形態との比較例を示すボールナットのキー溝とデフレクタとの関係図である。
符号の説明
10・・・電動式パワーステアリング装置、13・・・ラック軸、14・・・電動モータ、15・・・ボールねじ装置、20・・・ボールねじ軸、21a・・・ボールねじ溝、21・・・ボールナット、21a・・・ねじ溝、24・・・転動ボール、25・・・デフレクタ、26・・・締付けナット、31・・・嵌合穴、41・・・モータシャフト、50・・・キー溝、P1・・・ポンチ打ち込み位置。

Claims (2)

  1. ギヤハウジングと、該ギヤハウジングに軸方向に移動可能に貫挿されラックピニオン機構を介して入力軸に連結されるラック軸と、該ラック軸と同軸的に前記ギヤハウジング内に配置された電動モータと、該電動モータの回転出力を前記ラック軸の軸方向運動に変換するボールねじ装置とを備えた電動パワーステアリング装置において、前記ボールねじ装置は、前記ラック軸に一体に設けられたボールねじ軸と、前記電動モータによって回転されるモータシャフトに装着され前記ボールねじ軸に転動ボールを介して螺合するボールナットと、前記モータシャフトに螺合され前記ボールナットを前記モータシャフトの端面に締付ける締付けナットとを備え、
    前記ボールナットの外周一部にキー溝を形成し、前記モータシャフトの外周より前記ボールナットの前記キー溝に向けてポンチを打ち込んで前記モータシャフトの内周を変形させて前記ボールナットの前記キー溝に係合させるとともに、
    前記デフレクタを、前記ボールナットの円周方向に等角度間隔に、かつ前記ボールナットの軸線方向に間隔を有して装着し、前記ボールナットに形成したキー溝に対して、前記ボールナットの一端部に装着された前記デフレクタを直径方向に対向しない角度位置に配置したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 請求項1において、前記ボールナットに形成したキー溝に対して、前記ボールナットの一端部に装着された前記デフレクタを90度異なる角度位置に配置したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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