JP2008071463A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラス基板の主表面上で複数計測した算術平均粗さRaにおいて最大値Ra(max)−最小値Ra(min)の値を低減し、磁気ヘッドの低浮上量化を向上させることが可能な磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】円盤状のガラス基板1の主表面を研磨して磁気ディスク用ガラス基板を製造する製造方法において、ガラス基板1の両主表面に、アスカーC硬度が88以上の研磨テープ12を押圧し、研磨材を含む研磨液を供給しながら、ガラス基板1と研磨テープ12とを相対的に移動させて研磨を行うことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、コンピュータ等の記録媒体として用いられる磁気ディスク用のガラス基板、および磁気ディスクの製造方法に関する。
近年、情報化技術の高度化に伴い、情報記録技術、特に磁気記録技術は著しく進歩している。磁気記録媒体のひとつであるHDD(ハードディスクドライブ)等の磁気記録媒体用基板としては、アルミニウム基板が広く用いられてきた。しかし磁気ディスクの小型化、薄板化、および高記録密度化に伴い、アルミニウム基板に比べ基板表面の平坦性および基板強度に優れたガラス基板に徐々に置き換わりつつある。特に携帯電話やデジタルカメラ、携帯型音楽再生機などにも搭載される要請があり、磁気ディスクには一層の小型化、高記録密度化が求められている。
また磁気ディスクの主表面を有効利用するために、従来のCSS(Contact Start Stop)方式に代えて、LUL(Load UnLoad)方式が用いられるようになってきた。CSS方式は、磁気ディスクの主表面上に設けたCSSゾーンに磁気ヘッドを接触させて退避させる方式であり、LUL方式は磁気ディスクの外部に設けたランプ(傾斜部)に磁気ヘッドを退避させる方式である。CSSゾーンは記録領域として使用できないばかりか、磁気ヘッドの吸着を防止するためにある程度の表面粗さとする必要があった。しかしLUL方式を採用したことにより磁気ディスク全面を記録領域として利用可能となると共に、その表面にあえて凹凸形状を設ける必要がなく、磁気ディスク表面を極めて平滑化することが可能となった。
また、磁気記録技術の高密度化に伴い、磁気ヘッドの方も薄膜ヘッドから、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)、大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)へと推移してきている。しかしGMRヘッドは感度が高く、また高記録密度化もあいまって、ヘッドと基板が離れていては隣接する記録ビットの情報を拾ってしまうために、磁気ヘッドの浮上量を低く抑える必要がある。
これらの事情から、磁気ヘッドの低浮上量化が求められており、磁気ヘッドの基板からの浮上量が8nm程度にまで狭くなってきている。
磁気ヘッドを低浮上量化した場合、ヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害を引き起こす場合がある。ヘッドクラッシュ障害は、磁気ヘッドが磁気ディスクの凸部に衝突して損傷する障害である。サーマルアスペリティ障害とは、磁気ディスク面上の微小な凸形状あるいは凹形状上を磁気ヘッドが浮上飛行しながら通過するときに、空気の断熱圧縮または接触により磁気抵抗効果型素子が加熱されることにより、読み出しエラーを生じる障害である。したがって磁気抵抗型素子を搭載した磁気ヘッドに対しては、磁気ディスク表面は極めて高度な平滑度および平坦度、すなわち低粗さが求められる。
特に、最近では記録密度をより一層向上させるために、垂直磁気記録方式が採用されつつある。この垂直磁気記録媒体の場合には、面内磁気記録方式の場合と比べて、記録密度が高いためにガラス基板の粗さの影響がより顕著に表れやすい。このため、ガラス基板には、より一層の低粗さが求められる。
上記のような状況において、従来からも、テープ研磨によるテクスチャ加工の際に低粗さを実現し、低浮上量化を向上させる発明が提案されている。特許文献1(特開2005−141824号公報)には、ダイヤモンド砥粒とシリカ砥粒の2種類の研磨砥粒を含む研磨液を供給しながらテープ研磨を行う方法が記載されている。そして特許文献1では、テクスチャ形状の乱れのない均一で良好なテクスチャを安定して形成することができ、低浮上量でもヘッドクラッシュ障害などを防止できる磁気ディスクが得られるとしている。
特開2005−141824号公報
ところで、たとえ磁気ディスク表面の平均粗さRa(avg)が低くても、実際にハードディスクとして稼働させた場合に、ヘッドクラッシュ障害を生じてしまう場合がある。これは、安定して磁気ヘッドをディスク上を浮上走行させようとすると、磁気ディスク表面の全ての位置において低粗さが必要であるためである。ここで平均粗さRa(avg)とは、算術平均粗さRa(日本工業規格(JIS)B0601)自体がある程度の範囲における平均値なのであるが、さらに離れた複数箇所で測定した複数の算術平均粗さRaの平均の粗さを意味している。そして本出願において、複数計測した算術平均粗さRaのうち最大のものをRa(max)、最小のものをRa(min)と称する。
すなわち、磁気ディスク全体の複数の点で算術平均粗さRaを測定し、平均粗さRa(avg)が低かったとしても、最大値であるRa(max)と最小値であるRa(min)とが大きく乖離している場合には、Ra(max)が大きい箇所があるということになる。このような大きいRa(max)の箇所では安定した浮上走行ができず、ヘッドクラッシュ障害を生じてしまうと考えられる。
従って、一層の磁気ヘッドの低浮上量化を追求するに際し、低粗さを考える場合、単に磁気ディスク全体での平均粗さRa(avg)のみでなく、大きなRa(max)がないこと、すなわちRa(max)−Ra(min)の値を評価する必要がある。
そこで本発明は、ガラス基板の主表面上で複数計測した算術平均粗さRaにおいて最大値Ra(max)−最小値Ra(min)の値を低減し、磁気ヘッドの低浮上量化を向上させることが可能な磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法を提供することを目的としている。
本願発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、研磨テープの硬度とガラス基板のRa(max)−Ra(min)との間に相関関係があり、Ra(max)−Ra(min)を所定の範囲内とするためには研磨テープの硬度を特定の範囲とする必要があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち上記課題を解決するために、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の代表的な構成は、円盤状のガラス基板の主表面を研磨して磁気ディスク用ガラス基板を製造する製造方法において、ガラス基板の両主表面に、アスカーC硬度が88以上の研磨テープを押圧し、研磨材を含む研磨液を供給しながら、ガラス基板と研磨テープとを相対的に移動させて研磨を行うことを特徴とする。これにより、ガラス基板の主表面上で複数計測した算術平均粗さRaにおいて最大値Ra(max)−最小値Ra(min)の値を低減することができ、磁気ディスクとした場合に磁気ヘッドの低浮上量化を向上させることができる。
研磨テープは少なくとも表層が発泡樹脂からなることが好ましく、さらに具体的には発泡ポリウレタンであることが好ましい。また、押圧力が5g/cm、厚みが0.4mm以下である場合に、圧縮率が15%以下であることが好ましい。これらのような条件を満たす研磨テープを用いることにより、本発明をさらに好適に実施することができる。
研磨材は、粒径0.20μm以下のダイヤモンド砥粒であることが好ましい。これにより所望の表面粗さを得ることができる。
さらに、研磨テープを用いて研磨を行う前に、研磨材および研磨布を用いてガラス基板の主表面を研磨する主表面研磨工程を有し、研磨テープは、主表面研磨工程で用いた研磨布と同じ材質であることが好ましい。主表面研磨工程で用いた研磨布と同じ材質であれば、研磨の特性も同様の傾向にあるため扱いやすく、また材料の入手性も良いため、好適である。
研磨テープを用いた研磨は、押圧力5〜10g/cm、ディスク回転速度150〜1500rpm、テープの送り速度0.5〜3mm/s、テープ研磨時間20〜40sであることが好ましい。これらの範囲であるときに、本発明をさらに好適に実施することができる。
また本発明に係る磁気ディスクの製造方法の代表的な構成は、上記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により得られた磁気ディスク用ガラス基板の表面に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする。これにより、ガラス基板の主表面上で複数計測した算術平均粗さRaにおいて最大値Ra(max)−最小値Ra(min)の値を低減し、磁気ヘッドの低浮上量化を向上させることが可能な磁気ディスクを製造することができる。
また磁気ディスクが垂直磁気記録方式であって、磁性層は複数の層からなり、少なくとも1層は軟磁性層であってもよい。垂直磁気記録方式は基板の表面粗さの影響が大きいため、さらに本発明の効果が有益である。
本発明によれば、テープ研磨において研磨テープの硬度を適切に設定することにより、ガラス基板の主表面上で複数計測した算術平均粗さRaにおいて最大値Ra(max)−最小値Ra(min)の値を低減し、磁気ヘッドの低浮上量化を向上させることができる。これにより浮上量が8nm以下の磁気ヘッドを用いた場合であっても、磁気ヘッドの浮上安定性を好適に維持することが可能となり、磁気ディスクのさらなる高密度化に資することができる。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法の実施形態について、図を用いて説明する。図1はテープ研磨装置を説明する図、図2は実施例および比較例の実験結果を説明する図である。なお、以下の実施例に示す数値は発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
図1に示すのは、テープ研磨装置の要部説明図である。図においてガラス基板1はスピンドル10に支持されており、所定の速度で回転駆動される。スラリーノズル11からは研磨材を含む研磨液が吐出され、研磨テープ12に供給される。研磨テープ12はローラ13に巻き付けられており、ローラ13は研磨テープ12をガラス基板1の両主表面に押圧する。研磨テープ12はガラス基板1との接触部位においてガラス基板1の回転方向と逆方向に巻き取られ、常に新しい面がガラス基板1に接触する。これによりガラス基板1の主表面は摺擦研磨され、円周状のテクスチャが形成される。
また、スピンドル10と研磨テープ12とをローラ13の軸方向に相対的に揺動可能とすることにより、円周方向に対して所定の角度を有するクロステクスチャや螺旋状テクスチャを形成することもできる。このときガラス基板1の回転速度(スピンドル10の回転速度)と、スピンドル10と研磨テープ12との相対的な揺動の周期を調節することで、テクスチャの形状を調節することができる。
本実施例において研磨テープ12の硬度は、後述するように、アスカーC硬度で88以上である。これにより、ガラス基板の主表面上で複数計測した算術平均粗さRaにおいて最大値Ra(max)−最小値Ra(min)の値を低減することができ、磁気ディスクとした場合に磁気ヘッドの低浮上量化を向上させることができる。
研磨テープ12の材質および形状については特に限定されるものではなく、例えば植毛テープ、織布テープ、不織布テープなどが挙げられる。テープ繊維の材料としては、たとえばポリエステル、ナイロン等のプラスチック繊維が挙げられる。中でも、少なくとも研磨テープ12の表層(ガラスディスク主表面に接する面)は、発泡樹脂、特に発泡ポリウレタンでできていることが好ましい。また研磨テープ12の弾性については、押圧力が5g/cm、厚みが0.4mm以下である場合に、圧縮率が15%以下であることが好ましい。これらのような条件を満たす研磨テープを用いることにより、本発明をさらに好適に実施することができる。
さらには後述する主表面研磨工程で用いられる研磨布と同じ材質の発泡ポリウレタンで形成されていることが好ましい。主表面研磨工程で用いた研磨布と同じ材質であれば、研磨の特性も同様の傾向にあるため扱いやすく、また材料の入手性も良いため、好適である。
研磨液に含まれる研磨材は、例えば、ダイヤモンド砥粒、アルミナ、酸化セリウム、コロイダルシリカ等のガラス基板の研磨に使用される砥粒であれば特に限定されず、またこれらの混合であってもよい。中でも、粒径0.20μm以下のダイヤモンド砥粒であることがさらに好ましい。これにより所望の表面粗さを得ることができる。
またテープ研磨における研磨条件は、押圧力5〜10g/cm、ディスク回転速度150〜1500rpm、テープの送り速度0.5〜3mm/s、テープ研磨時間20〜40sの範囲で設定することができる。これらの範囲であるときに、本発明の効果をさらに好適に得ることができる。
[実施例]
以下に、本発明を適用した磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法について実施例を説明する。この磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクは、0.8インチ型ディスク(内径6mm、外径21.6mm、板厚0.381mm)、1.0インチ型ディスク(内径7mm、外径27.4mm、板厚0.381mm)、1.8インチ型磁気ディスク(内径12mm、外径48mm、板厚0.508mm)などの所定の形状を有する磁気ディスクとして製造される。また、2.5インチ型ディスクや3.5インチ型ディスクとして製造してもよい。
(1)形状加工工程および第1ラッピング工程
まず、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラスを得た。なお、アルミノシリケートガラスはSiOからなる網目状のガラス骨格と、修飾イオンとしてアルミニウムを含む構造を有し、アルカリ金属元素を含むガラスである。ダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で形成したシートガラスから研削砥石で切り出して円盤状の磁気ディスク用ガラス基板を得てもよい。なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiO:58〜75重量%、Al:5〜23重量%、LiO:3〜10重量%、NaO:4〜13重量%を主成分として含有する化学強化ガラスを使用した。
次に、この板状ガラスの両主表面をラッピング加工し、ディスク状のガラス母材とした。ラッピング加工は、板状ガラスの主表面にラップ定盤を押圧し、荒削りする研削加工である。
(2)切り出し工程(コアリング、フォーミング)
次に、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて中心部に内孔を形成した(コアリング)。そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施した(フォーミング)。
(3)端面研磨工程
次に、ガラス基板の端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、パーティクル等の発塵を防止できる鏡面状態に加工された。
(4)第2ラッピング工程
次に、得られたガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行った。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
第2ラッピング工程では、砥粒の粒度として#1000を選択し、主表面の平坦度を3μm、表面粗さRmaxが2μm程度、算術平均粗さRaを0.2μm程度とした(RmaxおよびRaは日本工業規格(JIS)B0601に従う)。なお、Rmax、Raは原子間力顕微鏡(AFM)(デジタルインスツルメンツ社製ナノスコープ)にて測定した。平坦度は平坦度測定装置で測定したもので、基板表面の最も高い部分と、最も低い部分との上下方向(表面に垂直な方向)の距離(高低差)である。
(5)主表面の第1研磨工程
主表面の研磨工程として、まず第1研磨工程を施した。この第1研磨工程は次工程である第2研磨工程(鏡面研磨工程)に先立って予め主表面を研磨し、前述のラッピング工程において主表面に残留したキズや歪みを除去することを主たる目的とするものである。
この第1研磨工程においては、一度に100枚から200枚のガラス基板を研磨可能な両面研磨装置によって研磨した。この両面研磨装置は、上記多数枚のガラス基板を研磨布を介して上方定盤および下方定盤によって挟持し、遊星歯車機構によって相対的に移動させることにより研磨を行う。第1研磨工程における研磨布としては、硬質樹脂ポリッシャを用いた。研磨材としては酸化セリウム砥粒を用い、粒径の最大値が3.5μm、平均値が1.1μm、D50値が1.1μmのものを水に混入させて用いた。
この第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
(6)主表面の第2研磨工程
次に主表面の研磨工程として、第2研磨工程を施した。この第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、第1研磨工程と同様の両面研磨装置により、研磨布として軟質発泡樹脂ポリッシャ、具体的には発泡ポリウレタンを用いて、主表面の鏡面研磨を行った。
研磨材としてはグレイン径が40nmのコロイド状シリカ砥粒を準備し、水と、全解離性の無機酸として硫酸、緩衝作用のある薬液として、有機酸である酒石酸加えて研磨液を作製した。研磨液中のシリカの含有量は5〜40重量%とすることが好ましい。本実施例では10重量%とした。研磨液中の残部は超純水である。
(7)鏡面研磨処理後の洗浄工程
第2研磨工程を終えたガラス基板を、濃度3〜5wt%のNaOH水溶液に浸漬してアルカリ洗浄を行った。尚、洗浄は超音波を印加して行った。さらに、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。なお、各洗浄槽には、超音波を印加した。
(8)化学強化工程
次に、前述のラッピング工程および研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施した。化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を375℃に加熱しておくとともに、洗浄済みのガラス基板を300℃に予熱し、化学強化溶液中に約3時間浸漬することによって行った。この浸漬の際には、ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるように、ホルダに収納した状態で行った。
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオンおよびナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオンおよびカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100μmから200μmであった。
化学強化処理を終えたガラス基板を、20℃の水槽に浸漬して急冷し、約10分間維持した。そして、急冷を終えたガラス基板を、約40℃に加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行った。さらに、硫酸洗浄を終えたガラス基板を純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。
(9)テープ研磨工程
次に、上記(8)によって洗浄されたガラス基板に対して、上記説明したテープ研磨装置(図1参照)を用いて、テープ研磨を行った。このとき、研磨テープのアスカーC硬度を次のように変えて実験を行った。すなわち実施例1、2、比較例1、2の順にアスカーC硬度が低くなっている。なお実施例1、2はアスカーC硬度が88以上であって本発明の実施例であり、比較例1、2はアスカーC硬度が88以下であるため比較例である。
実施例1:91.1
実施例2:89.9
比較例1:86.5
比較例2:83.5
他の研磨条件については、次の条件とした。
研磨砥粒 ダイヤモンド砥粒
研磨砥粒の粒径 0.20μm以下
押圧力 5g/cm2
ディスク回転速度 150rpm
テープの送り速度 3mm/s
テープ研磨時間 20s
実施例1の硬度において、押圧力が5g/cm、厚みが0.4mmである場合に、圧縮率は15%以下であった。
(10)磁気ディスク用ガラス基板の検査工程
以上のように製造された磁気ディスク用ガラス基板の検査を行った。ガラス基板表面の粗さをAFM(原子間力顕微鏡)で測定したところ、図2に示す結果が得られた。図からわかるように、Ra(ave)は同程度の値で推移しており、傾向性はない。しかしRa(max)−Ra(min)は研磨テープの硬度が高くなるほどに小さくなる傾向がある。
なお、各実施例および比較例においてガラス基板の表面は清浄な鏡面状態であった。表面には、磁気ヘッドの浮上を妨げる異物や、サーマルアスペリティ障害の原因となる異物は存在しなかった。すなわち、平坦、かつ、平滑な、高剛性の磁気ディスク用ガラス基板を得た。
以上のように製造された磁気ディスク用のガラス基板を用いて垂直磁気記録方式の磁気ディスクを製造した。
(11)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られたガラス基板の両面に、ガラス基板の表面にCr合金からなる付着層、CoTaZr基合金からなる軟磁性層、Ruからなる下地層、CoCrPt基合金からなる垂直磁気記録層、水素化炭素からなる保護層、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を順次成膜することにより、垂直磁気記録ディスクを製造した。なお、本構成は垂直磁気ディスクの構成の一例であるが、面内磁気ディスクとして磁性層等を構成してもよい。
(12)磁気ディスクの検査工程
以上のように製造された磁気ディスクの検査を行った。浮上量が10nmである検査用ヘッドを用いて磁気ディスク上を浮上走行させるヘッドクラッシュ試験を行ったところ、上記実施例1、2および比較例1、2のいずれのガラス基板からなる磁気ディスクにおいても、磁気ヘッドが異物等に接触することがなく、クラッシュ障害は生じなかった。
次に浮上量が8nmである検査用ヘッドを用いたヘッドクラッシュ試験を行ったところ、実施例1、2の場合には、クラッシュ障害は生じなかった。一方、比較例1、2の場合には、クラッシュ障害が発生した。これは、比較例1、2のRa(ave)は実施例1、2の場合と同程度であるにもかかわらず、Ra(max)−Ra(min)が大きいために、Ra(max)が大きい(粗い)箇所があり、かかる場所でクラッシュ障害を起こしているものと考えられる。従って、Ra(max)−Ra(min)は0.02以下であることが必要であることがわかり、研磨テープのアスカーC硬度は88以上であることが必要であることがわかる。
次に、実施例1、2のガラス基板からなる磁気ディスクに対し、浮上量が8nmであって、再生素子部が磁気抵抗効果型素子、記録素子部が単磁極型素子を用いて、垂直記録方式による記録再生試験を行ったところ、正常に情報が記録、再生されることを確認した。再生信号にサーマルアスペリティ信号が検出されることも無かった。1平方インチ当り100ギガビットで記録再生を行うことができた。
次に、実施例1、2のガラス基板からなる磁気ディスクに対し、グライドハイト試験を行った。この試験は、検査用ヘッドの浮上量を次第に低下させた場合に、どの浮上量で検査用ヘッドと磁気ディスクとの接触が生じるのかを確認する試験である。結果、本実施例の磁気ディスクでは、磁気ディスクの内縁部分から外縁部分に渡って、浮上量が4nmであっても接触が生じなかった。磁気ディスクの外縁部分においては、グライドハイトは3.7nmであった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、磁気ディスク用のガラス基板および磁気ディスクの製造方法として利用することができる。
テープ研磨装置を説明する図である。 実施例および比較例の実験結果を説明する図である。
符号の説明
1 …ガラス基板
10 …スピンドル
11 …スラリーノズル
12 …研磨テープ
13 …ローラ

Claims (9)

  1. 円盤状のガラス基板の主表面を研磨して磁気ディスク用ガラス基板を製造する製造方法において、
    ガラス基板の両主表面に、アスカーC硬度が88以上の研磨テープを押圧し、研磨材を含む研磨液を供給しながら、前記ガラス基板と研磨テープとを相対的に移動させて研磨を行うことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記研磨テープは少なくとも表層が発泡樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記研磨テープは発泡ポリウレタンであることを特徴とする請求項2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記研磨テープは、押圧力が5g/cm、厚みが0.4mm以下である場合に、圧縮率が15%以下であることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記研磨材は、粒径0.20μm以下のダイヤモンド砥粒であることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  6. さらに、前記研磨テープを用いて研磨を行う前に、研磨材および研磨布を用いて前記ガラス基板の主表面を研磨する主表面研磨工程を有し、
    前記研磨テープは、前記主表面研磨工程で用いた研磨布と同じ材質であることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  7. 前記研磨テープを用いた研磨は、
    押圧力5〜10g/cm
    ディスク回転速度150〜1500rpm、
    テープの送り速度0.5〜3mm/s、
    テープ研磨時間20〜40s
    であることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により得られたガラス基板の表面に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  9. 前記磁気ディスクは垂直磁気記録方式であって、
    前記磁性層は複数の層からなり、少なくとも1層は軟磁性層であることを特徴とする請求項8記載の磁気ディスクの製造方法。
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