JP2008066274A - エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス - Google Patents

エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス Download PDF

Info

Publication number
JP2008066274A
JP2008066274A JP2007045586A JP2007045586A JP2008066274A JP 2008066274 A JP2008066274 A JP 2008066274A JP 2007045586 A JP2007045586 A JP 2007045586A JP 2007045586 A JP2007045586 A JP 2007045586A JP 2008066274 A JP2008066274 A JP 2008066274A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
energy device
binder resin
electrode
resin emulsion
mixture layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007045586A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Suzuki
健司 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Showa Denko Materials Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Chemical Co Ltd filed Critical Hitachi Chemical Co Ltd
Priority to JP2007045586A priority Critical patent/JP2008066274A/ja
Publication of JP2008066274A publication Critical patent/JP2008066274A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Electric Double-Layer Capacitors Or The Like (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

【課題】エネルギーデバイス電極に使用され、より詳しくは、該電極の集電体上に活物質を配置するためのバインダとして用いられる、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこのエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを使用したエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイスを提供する。
【解決手段】中和剤で中和した、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が90/10〜70/30でMIが50〜2000g/10minのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び水を含有してなるエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこのエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを使用したエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス。
【選択図】なし

Description

本発明は、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイスに関する。
従来から、電気を貯蔵する手段として、リチウムイオン二次電池(以下、単に「リチウム電池」という)、電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」という)等のエネルギーデバイスがあった。
リチウム電池は、過充放電に弱く、寿命が短いという短所があるものの、メモリー効果がない、高いエネルギー密度を有するという長所があり、ノート型パソコンや携帯電話、PDAといった携帯情報端末の電源などとして広く使用されている。
一方、キャパシタは、電極の活物質と電解質との界面にできる電気二重層の静電容量を利用したエネルギーデバイスであり、リチウム電池に比べてエネルギー密度が小さい反面、長寿命(高信頼性)で、急速充放電性に優れる(高入出力)という長所があり、AV機器や電話機、ファクシミリ用メモリーの小型バックアップ電源等として使用されている。
このようなエネルギーデバイスの電極は、通常、集電体と、この集電体上に配置された合剤層を含むものが使用される。この合剤層は、活物質とバインダ樹脂組成物とを含む層であり、集電体表面に活物質を配置する目的で配置される。集電体上の活物質は、イオンを授受する働きがある。
例えば、リチウム電池の場合、負極の活物質として炭素材料が用いられる。この炭素材料は多層構造を有し、この層間にリチウムイオンが挿入(リチウム層間化合物の形成)し、及び層間からリチウムイオンが放出されることによって、リチウムイオンの授受が行われる。
また、このリチウム電池の活物質を集電体上に付着するためのバインダ樹脂組成物としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)粒子の水分散エマルション又はSBRと、カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩又はアンモニウム塩(水溶性高分子増粘剤として)からなる二液型の材料が用いられてきた(特許文献1参照)。
しかし、SBRは、負極活物質である炭素材料に吸着しやすく、炭素材料表面を被覆する傾向がある。
従って、上記活物質とバインダ樹脂組成物を含む合剤層にリチウムイオンを含む電解液が浸透し難く、結果として、炭素材料でのリチウムイオンの授受が困難になることがあった。
特に、ロールプレス機などで上記合剤層を集電体に高圧縮成形した場合、合剤層中に存在する隙間が少なくなり、より一層電解液が浸透しにくくなるので、充放電特性がさらに低下する場合があった。
また、合剤層を製造する前の、活性炭を含むバインダ樹脂組成物の水分散エマルション中では、SBRが活物質である炭素材料に強く吸着して、炭素材料が沈降することがあり、このエマルションから得られる合剤層の均質化が図れなかった。
さらに、ロールプレス機等で上記合剤層を集電体に高圧縮成形した場合、密着性不足により、集電体からの合剤層の剥がれが生じる場合があった。
一方、キャパシタの場合、活物質として比表面積の大きい活性炭が用いられる。この活性炭に電解質中のイオンを物理的に吸脱着させることによって電気を充放電することができる。
このキャパシタの活物質を集電体に付着するためのバインダ樹脂組成物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子の水分散エマルションとカルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩又はアンモニウム塩(水溶性高分子増粘剤として)からなる二液型の材料が用いられてきた(特許文献2参照)。
しかし、リチウム電池と同様に、活性炭にバインダ樹脂組成物が被覆する問題があり、イオンの吸脱着が困難になって電気二重層の形成が困難になり、その結果、得られるキャパシタの電極の抵抗が大きくなり、長期信頼性に問題があった。
特開平05−074461号公報 国際公開第98/58397号パンフレット
本発明の第一の目的は、エネルギーデバイス電極に使用され、より詳しくは、該電極の集電体上に活物質を配置するためのバインダーとして用いられる、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを提供することにある。
本発明の第二の目的は、上記エマルション中において、活物質が良好な分散安定性(耐沈降性)を示す、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを提供することにある。
本発明の第三の目的は、上記活物質と上記バインダ樹脂エマルションとから得られた合剤層において、集電体との密着性が良好なエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを提供することにある。
本発明の第四の目的は、上記活物質と上記バインダ樹脂エマルションとから得られた合剤層において、エネルギーデバイス、特に、リチウム電池の負極活物質の表面を被覆せず、かつ、電解液が良好に浸透し得る、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極を提供することにある。
本発明の第五の目的は、高密度で良好な充放電特性を有するリチウム電池及び抵抗が低減し長期信頼性が向上したエネルギーデバイスを提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を中和して得られるバインダ樹脂の水分散エマルションが、上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
本発明は、中和剤で中和した、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が90/10〜70/30で、MIが50〜2000g/10minのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び水性溶媒を含有してなるエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
また、本発明は、中和剤が、アミン化合物である、前記のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
また、本発明は、中和剤が、アルカノールアミンである、前記のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
また、本発明は、共重合体の10〜100モル%のカルボキシル基が中和されたものである、前記のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
また、本発明は、集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有するエネルギーデバイス電極であって、合剤層が、
(a)活物質及び前記のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程;及び
(b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程;
から得られるエネルギーデバイス電極に関する。
また、本発明は、前記のエネルギーデバイス電極を含む、エネルギーデバイスに関する。
さらに、本発明は、エネルギーデバイスが、リチウム電池又はキャパシタである前記のエネルギーデバイスに関する。
本発明になるエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション(以下、単に「バインダ樹脂エマルション」という)は、このバインダ樹脂エマルションと活物質を含む水系スラリー中で、炭素材料などの活物質に吸着し難く、活物質の表面を被覆し難く、このバインダ樹脂エマルションを用いて作製されたエネルギーデバイスの電極、特にリチウム電池の負極は、上記水系スラリーを塗布、乾燥して得た合剤層への電解液浸透性に優れ、エネルギーデバイスの高密度化及び充放電特性の向上を図ることができる。
また、本発明になるバインダ樹脂エマルションは、このバインダ樹脂エマルションと活物質とから得られた合剤層において、集電体との密着性が良好なものであり、このバインダ樹脂エマルションを用いて作製されたエネルギーデバイスの電極、特にリチウム電池の負極は、エネルギーデバイスの高密度化を図ることができる。
さらに、本発明になるバインダ樹脂エマルションを用いて作製されたキャパシタ電極を用いたキャパシタは、抵抗が小さく、長期信頼性に優れる。従って、これらのエネルギーデバイス電極を使用することにより、高性能なエネルギーデバイスが得られる。
本発明のバインダ樹脂エマルションは、エネルギーデバイス、特にエネルギーデバイス電極に使用される。上述のように、エネルギーデバイス電極は集電体とその上に設けられた合剤層を含む。合剤層はバインダ樹脂エマルションから得られたバインダ樹脂組成物と活物質とを含む。
バインダ樹脂エマルションは、合剤層の製造にあたり使用されるものであり、活物質をバインダ樹脂エマルションに分散してスラリーを得、このスラリーを集電体上に塗布し、乾燥することによって合剤層が得られる。
以下、バインダ樹脂エマルション、エネルギーデバイス電極及びこれらの製造方法等について、詳述する。
(1)電極用バインダ樹脂エマルション
本発明になるバインダ樹脂エマルションは、中和剤で中和した、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が90/10〜70/30で、MIが50〜2000g/10minのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、水性溶媒及び任意のその他の材料を含む。
(1−1)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体
本発明に用いられるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、エチレンと(メタ)アクリル酸とを、適宜触媒を用いて共重合することによって得られる。重合は、例えば、加圧重合などの既存の重合方法を利用できる。
ここで、(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸の他、3,3-ジメチルアクリル酸、フェニルアクリル酸等の置換(メタ)アクリル酸が挙げられる。
得られたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、電極の柔軟性・可とう性、合剤層と集電体との密着性及び中和剤による水分散エマルション化のバランスなどの点で、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が90/10〜70/30、好ましくは85/15〜75/25であり、MI(メルトインデックス、ASTM−D−1238、以下同様)が50〜2000g/10min、好ましくは100〜1500g/10minであることが適当である。
これらのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
本発明に用いられるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のカルボン酸基は、中和剤によって中和されている。具体的には、中和前の該共重合体が有するカルボン酸基を100モル%とした場合、例えば、10〜100モル%、好ましくは、30〜100モル%、より好ましくは、50〜90モル%のカルボン酸が中和されていることが適当である。中和されたカルボン酸基は、好ましくは、カルボン酸基の水素基がアミン基;ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属基で置換されていることが好適である。
(1−2)中和剤
本発明において、中和剤は、(メタ)アクリル酸のカルボン酸を中和するために使用される。従って、本発明に用いられる中和剤としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のカルボキシル基を中和する能力を有する塩基性化合物であれば特に制限はない。中和剤としては、例えば、アミン化合物(アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のモノアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン)、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、モルホリン等が挙げられる。
これらの中では、入手容易性、加熱しても揮発せずに残留してしまう金属イオンを含まないなどの点でアミン化合物が好ましく、中でも、高い親水性を有し、水分散エマルション化能力に優れるなどの点でアルカノールアミンがより好ましい。
これらの中和剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
(1−3)水性溶媒
本発明のバインダ樹脂エマルションは、水性溶媒を含む。水性溶媒としては、例えば、精製水、イオン交換水、純水等の水が挙げられる。水性溶媒が水である場合、本発明のバインダ樹脂エマルションは水分散エマルションの形態で存在する。得られる水分散エマルションの粒径の調節などのため、必要に応じて水以外の他の溶媒を加えることもできる。
水以外の他の溶媒としては、特に制限はないが、高い親水性を有するメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の炭素数1〜10、好ましくは、2〜4の低級アルコール類が好ましい。水以外の他の溶媒は、水性溶媒全体に対して、例えば、0.1〜30質量%、好ましくは、0.5〜20質量%、より好ましくは、1〜10質量%であることが適当である。また、水以外の他の溶媒を加える場合は、水が、水性溶媒全体に対して、少なくとも50質量%以上、好ましくは、80質量%以上、より好ましくは、90質量%であることが適当である。
これらの溶媒は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
(1−4)他の材料
本発明のバインダ樹脂エマルションには、必要に応じて他の材料を加えることができる。他の材料としては、例えば、電解質に対する耐膨潤性を補完するための架橋成分、電極の柔軟性・可とう性を補完するためのゴム成分、スラリーの電極塗工性を向上させるための増粘剤(粘度調節剤)、沈降防止剤、消泡剤、レべリング剤等が挙げられる。
これらの他の材料は、バインダ樹脂エマルション全体を100質量部とした場合、例えば0.01〜200質量部、好ましくは、0.1〜100質量部含まれることが適当である。
これらの他の材料は、本発明のバインダ樹脂エマルション中にあらかじめ添加するほか、活物質とバインダ樹脂エマルションとを混合してスラリーを調製する際に添加してもよい。
これらの他の材料は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
(1−5)バインダ樹脂エマルションの製法
本発明になるバインダ樹脂エマルションは、上述のようにエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を中和剤で中和したものを含む。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体と、中和剤との中和反応は、水性溶媒の存在下であれば特に制限はないが、通常、常圧(1気圧)で進行する。常圧の場合、反応可能な温度範囲は、水が液体状態を保つ温度範囲である0〜100℃、好ましくは40〜95℃、より好ましくは70〜95℃、更に好ましくは80〜95℃である。
また、終始又は一旦、用いる共重合体の融点以上の温度に上げることが特に好ましい。反応時間は、反応効率、作業効率等の点で、10分以上が好ましく、30分〜20時間がより好ましく、1〜10時間が特に好ましい。
中和剤の量としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の水分散エマルション化に必要な最小限の量以上であれば特に制限はないが、過剰の中和剤を残存させないなどの点で、該共重合体のカルボキシル基の10〜100モル%、好ましくは、30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%を中和するのに相当する量が適当である。
具体的には、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体中に含まれる(メタ)アクリル酸1モルに対して、1規定の中和剤を0.1〜1モル、好ましくは、0.3〜1モル、より好ましくは、0.5〜1モル存在することが適当である。
水性溶媒の量もまた、上記共重合体の水分散エマルション化に必要な最小限の量以上であれば特に制限はないが、活物質とバインダ樹脂エマルションとを混合してスラリーを調製する際にも粘度調節を行うために溶媒を添加するので、バインダ樹脂エマルション中に過剰に存在しないことが好ましい。
例えば、水性溶媒が水の場合、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体と水性溶媒との合計質量に対して、水が30〜95質量%、好ましくは、40〜90質量%、より好ましくは、50〜85質量%であることが適当である。
バインダ樹脂エマルションは、中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の粒子が水性溶媒中に存在する形態を有する。中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の粒子の平均粒子径は、レーザー光散乱法で測定して、例えば、0.001〜10μm、好ましくは、0.01〜1μm、より好ましくは、0.05〜0.3μmであることが適当である。
平均粒子径が0.001μm以上であれば、エネルギーデバイス電極活物質の表面に存在する空隙を埋めず、活物質表面が被覆されることもなく、平均粒子径が10μm以下であれば、活物質とバインダ樹脂エマルションとを混合してスラリーを調製する際に凝集体(継粉)が形成することもなく、良好なスラリーの取り扱い性及び集電体への塗布性が得られるので好ましい。
中和剤の量と水性溶媒の量は、得られる中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の粒子の大きさを基準に、適宜調節してもよい。例えば、中和剤:水性溶媒の質量比が、0.5:99.5〜30:70、好ましくは、2:98〜10:90であれば、中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の粒子の大きさは、0.05〜0.3μm程度となるので好ましい。
(2)バインダ樹脂エマルションの用途
本発明のバインダ樹脂エマルションは、上記のようにして製造され、通常、そのままの水分散エマルションの状態で使用される。
また、本発明になるバインダ樹脂エマルションは、エネルギーデバイス、特にエネルギーデバイスの電極に使用されるバインダとして好適に利用される。ここで、「エネルギーデバイス」とは、蓄電又は発電デバイス(装置)を言う。
エネルギーデバイスとしては、例えば、リチウム電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池等が挙げられる。このうち、本発明のバインダ樹脂エマルションは、特に、リチウム電池の電極(負極)やキャパシタの電極に使用することが好ましい。
なお、本発明のバインダ樹脂エマルションは、エネルギーデバイスの電極のみならず、塗料、接着剤、硬化剤、印刷インキ、ソルダレジスト、研磨剤、電子部品の封止剤、半導体の表面保護膜や層間絶縁膜、電気絶縁用ワニス、バイオマテリアル等の各種コーティングレジンや成形材料、繊維等に幅広く利用できる。
(2−1)エネルギーデバイス電極
本発明のエネルギーデバイス電極は、集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有する。ここで合剤層は、(a)活物質及び上述したエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程及び(b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程から得られる。
ここで、(a)工程で使用されるスラリーには、後述する追加の溶媒を加えてもよい。追加の溶媒を加える場合、(b)工程では、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに含まれる水性溶媒の他、この追加の溶媒も除去されることになる。
(2−1−1)集電体
集電体は、導電性を有する物質であれば特に制限はなく、例えば、金属、エッチング金属箔、エキスパンドメタル、導電性プラスチック等が使用できる。このうち、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル等が使用でき、また導電性プラスチックとしては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリp−フェニレン、ポリフェニレンビニレン等が使用できる。
さらに、集電体の形状は、特に限定はないが、リチウム電池の高エネルギー密度化という点から、薄膜状が好ましい。
集電体の厚みは、例えば、5〜100μm、好ましくは、8〜70μm、より好ましくは、10〜30μm、さらに好ましくは、15〜25μmである。
(2−1−2)合剤層
合剤層は、活物質及び任意の導電助剤、並びにその他の添加剤をバインダ樹脂で結合したものである。バインダ樹脂は、集電体と合剤層の結合、及び合剤層中の活物質同士の結合を行う役割を果たす。ここで、バインダ樹脂は、上記中和剤で中和したエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体である。
合剤層は、例えば、本発明のバインダ樹脂エマルション、活物質、必要に応じて追加の溶媒及びその他の添加剤などを混合してスラリーを調製し、このスラリーを前記集電体に塗布し、バインダ樹脂エマルションに含まれる水性溶媒並びに任意の追加の溶媒を乾燥除去することによって得られる。
なお、スラリーの調製は、公知の混合方法、例えば、ディスパーミキサーを使用して行うことができる。
(a)活物質
活物質は、使用するエネルギーデバイスの種類及び使用される電極の極性によって異なるが、例えば、黒鉛、非晶質炭素、コークス、活性炭、炭素繊維、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
また、活物質は、導電助剤と組み合わせて使用してもよい。導電助剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
これらの活物質及び導電助剤は、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
(b)追加の溶媒
上記スラリーの調製に際しては、本発明のバインダ樹脂エマルション中に含まれる水性溶媒を溶媒として使用するので、必ずしも追加の溶媒を使用する必要はない。しかし、スラリーの粘度調整等のために追加の溶媒を使用してもよい。合剤層の形成に用いられる追加の溶媒としては、特に制限はなく、上述した本発明の中和剤で中和したエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のようなバインダ樹脂成分を均一に分散できる溶媒であればよい。このような溶媒としては、前述のバインダ樹脂エマルションに用いられる追加の溶媒がそのまま使用される。例えば、水が好ましく、水に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の炭素数1〜10、好ましくは、2〜4の低級アルコール類を加えることもできる。
これらの溶媒は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
追加の溶媒は、バインダ樹脂エマルションに含まれる水性溶媒との質量比が、例えば、追加の溶媒:水性溶媒(質量比)=1:99〜9:10、好ましくは、5:95〜30:70となるように添加されることが適当である。
(c)その他の添加剤
合剤層を製造するための上記スラリーには、スラリーの分散安定性や塗工性を改善することを目的に、増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、特に制限はないが、例えば、水溶性高分子が挙げられる。
水溶性高分子としては、グアーガム、ローカストビーンガム、クインシードガム、カラギーナン、ペクチン、マンナン、デンプン、寒天、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の植物系天然高分子、ザンサンガム、サクシノグリカン、カードラン、ヒアルロン酸、デキストラン等の微生物系天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの誘導体等のセルロース系半合成高分子、カルボキシメチルデンプン及びその誘導体等のデンプン系半合成高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びそれらの誘導体などのビニル系合成高分子、ポリエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド系合成高分子、粘土鉱物、シリカ等の無機系高分子などが挙げられる。
これらの中では、入手容易性、増粘効果等の点でセルロース系半合成高分子が好ましく、中でも、結着機能も兼ね備えているなどの点でカルボキシメチルセルロース及びその誘導体がより好ましい。
これらの増粘剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
(d)合剤層を構成する成分の組成
合剤層を構成する活物質は、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、50〜99質量%、好ましくは、80〜99質量%添加することが好ましい。
バインダ樹脂エマルションは、バインダ樹脂エマルションに含まれる固形分が、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の量で存在するように添加されることが適当である。
また、追加の溶媒は、バインダ樹脂エマルション中の水性溶媒の量にもよるが、追加の溶媒を加えた後のバインダ樹脂エマルションに存在する固形分が、例えば、1〜80質量%、好ましくは10〜70質量%となるように存在することが適当である。
その他の材料は、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%添加されることが適当である。
(2−1−3)電極の製法
集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有するエネルギーデバイス電極を製造する方法は、(I)活物質及び上述したエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを集電体の少なくとも1面に塗布する工程、(II)塗布されたスラリーから水性溶媒及び場合により追加の溶媒を除去する工程及び必要に応じて(III)得られた集電体と合剤層の積層体を圧延する工程を含む。
工程(I)は、活物質及び上述したエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを準備し、このスラリーを集電体の少なくとも1面、好ましくは両面に塗布することにより行われる。
塗布は、例えば、転写ロール、コンマコーター等を用いて行うことができる。
また、塗布は、対向する電極において、単位面積あたりの活物質利用率が負極/正極=1以上になるように行うことが適当である。
スラリーの塗布量は、合剤層の乾燥質量が、例えば、1〜50mg/cm2、好ましくは2〜30mg/cm2、より好ましくは、4〜15mg/cm2となる量である。
工程(II)は、水性溶媒及び場合により追加の溶媒を、例えば50〜150℃、好ましくは、80〜120℃で、1〜120分間、好ましくは、3〜10分間乾燥して除去することによって行われる。
工程(III)は、例えばロールプレス機を用いて行われ、合剤層のかさ密度が、1〜5g/cm3、好ましくは、1.5〜4g/cm3となるようにプレスされる。
さらに、電極内の残留溶媒、吸着水の除去等のため、例えば、100〜150℃で1〜20時間真空(約1333Pa(10mmHg以下の真空状態))で乾燥してもよい。
(2−2)電池
本発明のエネルギーデバイス電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、所望のエネルギーデバイスを製造することができる。
(2−2−1)電解液
本発明で使用する電解液としては、エネルギーデバイスの種類によって異なるが、使用するエネルギーデバイスとしての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。
電解液中の電解質としては、例えばリチウム電池では、LiPF6のようなリチウム系化合物、キャパシタではテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどのアンモニウム系化合物が使用される。
また、このような電解質は、水以外の溶媒、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類、アセトニトリル、ニトロメタン、N−メチル−2−等の含窒素類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、スルホラン等のスルホン類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類、1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などの有機溶媒中に適宜加えられ、溶解して電解液とされる。
(2−2−2)エネルギーデバイスの製法
本発明になるエネルギーデバイスは、特に制約はないが、上述した本発明のエネルギーデバイス電極を使用する以外は公知の方法を利用して製造できる。
(3)エネルギーデバイス電極及びエネルギーデバイスの具体的製法
以下、本発明になるエネルギーデバイス電極及びエネルギーデバイスの具体的製法を、リチウム電池の電極及びこれを用いたリチウム電池、キャパシタの電極及びこれを用いたキャパシタを例にとって説明する。
(3−1)リチウム電池の電極
(3−1−1)集電体
本発明で使用するリチウム電池用の集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、金属が使用できる。具体的な金属としては、アルミニウム、銅及びニッケル等が使用できる。
さらに、集電体の形状は、特に限定はないが、リチウム電池の高エネルギー密度化という点から、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、8〜25μmである。
(3−1−2)活物質
本発明で使用するリチウム電池用の活物質は、例えば、リチウム電池の充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入放出できるものであれば特に制限はない。しかしながら、正極は、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを受け取るという機能を有する一方、負極は、充電時にリチウムイオンを受け取り、放電時にリチウムイオンを放出するという正極とは逆の機能を有するので、正極及び負極で使用される活物質は、通常、それぞれの有する機能にあわせて、異なる材料が使用される。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料が好ましく、このような炭素材料とシリコン、すず、銀等の金属又はこれらの酸化物との複合物なども使用できる。
一方、正極活物質としては、例えば、リチウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種類以上の金属を少なくとも含有するリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。
これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
なお、前記導電助剤は、正極活物質と組み合わせて使用することが好ましい。
(3−1−3)その他
合剤層、溶媒、その他の添加剤については、上記(2−1)エネルギーデバイス電極の項で述べた通りである。
(3−2)リチウム電池の電極の製法
本発明のリチウム電池の電極の製法は、原則として、上記(2−1−3)電極の製法の項で述べた通りである。
ただし、合剤層を圧延する場合、合剤層のかさ密度が、負極の合剤層の場合、例えば、1〜2g/cm3、好ましくは、1.2〜1.8g/cm3となるように、正極の合剤層の場合、例えば、2〜5g/cm3、好ましくは、3〜4g/cm3となるようにプレスされることが適当である。
さらに、電極内の残留溶媒、吸着水の除去等のため、例えば、100〜150℃で1〜20時間真空乾燥してもよい。
(3−3)リチウム電池
リチウム電池の電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、リチウム電池を製造することができる。
(3−3−1)電解液
本発明のリチウム電池で使用する電解液としては、リチウム電池としての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。電解液としては、上述した電解質用の有機溶媒に、LiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C254、LiCH3SO3、LiC49SO3、Li(CF3SO22N、Li[(CO222B等の電解質を溶解した溶液などが挙げられる。
これらの中では、カーボネート類にLiPF6を溶解した溶液が好ましい。
電解液は、例えば上記有機溶媒と電解質を、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて調製し、リチウム電池において用いられる。
(3−3−2)リチウム電池の製法
リチウム電池の製造方法については特に制約はないが、いずれも公知の方法を利用できる。例えば、まず、正極と負極の2つの電極を、ポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め負極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。
次いで、得られた電池缶に電解液を注入し、さらに予め正極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池の蓋に溶接し、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、蓋と電池缶とが接した部分をかしめて密閉することによってリチウム電池を得る。
(3−4)キャパシタの電極
(3−4−1)集電体
本発明で使用するキャパシタ用の集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、金属箔、エッチング金属箔、エキスパンドメタル等が使用できる。具体的な材質としては、アルミニウム、タンタル、ステンレス、銅、チタン、ニッケル等が挙げられるが、中でもアルミニウムが好ましい。
集電体の厚みは、特に制限はないが、例えば、通常5〜100μm、好ましくは10〜70μm、より好ましくは15〜30μmである。5μm以上であれば、取り扱いが容易であり、100μm以下であれば、電極中における集電体の占有体積が大きくなりすぎることもなく、十分なキャパシタの容量保持できるので好ましい。
(3−4−2)活物質
本発明で使用するキャパシタ用の活物質は、キャパシタの充放電により電解質との界面で電気二重層を形成できるものであれば特に制限はない。例えば、活性炭、活性炭繊維、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
これらの中では、比表面積が大きい等の点で活性炭が好ましい。好ましくは、500〜5000m2/g、より好ましくは、1500〜3000m2/gの表面積を有する活性炭が適当である。
これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
(3−4−3)その他
合剤層、溶媒、その他の添加剤については、上記(2−1)エネルギーデバイス電極の項で述べた通りである。
(3−5)キャパシタ電極の製法
キャパシタの電極の製法は、原則として、上記(2−1−3)電極の製法の項で述べた通りである。
(3−6)キャパシタ
キャパシタの電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、キャパシタを製造することができる。
(3−6−1)電解液
本発明のキャパシタで使用する電解液としては、キャパシタとしての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。電解液としては、上述した電解質用の有機溶媒に、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート等の電解質を溶解した溶液などが挙げられる。
これらの中では、カーボネート類、特にプロピレンカーボネートにテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを溶解した溶液が好ましい。
電解液は、例えば上記有機溶媒と電解質を、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて調製し、キャパシタにおいて用いられる。
(3−6−2)キャパシタの製法
キャパシタの製造方法については特に制約はないが、いずれも公知の方法を利用できる。例えば、まず、二組の電極に取出し電極(リード線)を接続し、これらをセパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群をケースに挿入し、電解液を注入した後、リード線の一部が外部に露出するようにゴムパッキンを用いてハウジングすることで、キャパシタを得る。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限するものではない。
<バインダ樹脂エマルションの調製>
(実施例1)
撹拌機、温度計及び冷却管を装備した2リットルのセパラブルフラスコを準備した。
エチレン−アクリル酸共重合体〔PRIMACOR5990I、ダウ・ケミカル社製、MI:1300g/10min、エチレンユニット/アクリル酸ユニット=80/20(質量比)、融点:75℃〕300g、精製水1162.9g及び中和剤としてN,N−ジメチルエタノールアミン37.14g(該共重合体のカルボキシル基の50モル%を中和するのに相当する量)を上記セパラブルフラスコに加えた。
フラスコの内容物を撹拌しながら95℃まで昇温した後、同温度で2時間保温し、中和反応により該共重合体を水分散エマルション化させた。その後、室温まで冷却し、本発明のバインダ樹脂エマルションを得た。得られたバインダ樹脂エマルションの平均粒子径は レーザー光散乱法で測定して0.06μmであり、150℃で2時間常圧乾燥後の不揮発分は20.1質量%であった。得られたエチレン−アクリル酸共重合体のカルボン酸基は、中和前の該共重合体が有するカルボン酸基を100モル%とした場合、50%のカルボン酸が中和されていた。
(実施例2)
エチレン−アクリル酸共重合体〔PRIMACOR5980I、ダウ・ケミカル社製〕のMIを300g/10minに変えた以外は、実施例1と同様の工程を経て本発明のバインダ樹脂エマルションを得た。得られたバインダ樹脂エマルションの平均粒子径は0.08μmであり、150℃で2時間常圧乾燥後の不揮発分は20.2質量%であった。得られたエチレン−アクリル酸共重合体のカルボン酸基は、中和前の該共重合体が有するカルボン酸基を100モル%とした場合、50%のカルボン酸が中和されていた。
(比較例1)
日本ゼオン製のスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)40質量%(SBRを固形分として全体の40質量%)水分散エマルションを準備した。
<バインダ樹脂エマルションの評価>
バインダ樹脂エマルションの諸特性(炭素材料に対する吸着性、炭素材料の沈降性、バインダ樹脂エマルションから得た合剤層の電解液浸透性、合剤層と集電体との密着性)を以下のようにして評価した。
試験(1)炭素材料への吸着性
炭素材料(日立化成工業(株)製、商品名:MAG、リチウム電池負極活物質用塊状人造黒鉛、平均粒径20μm)と、水溶性高分子増粘剤〔カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩、2質量%水溶液〕を、固形分換算で前者が97.5質量部、後者が1.25質量部となるように配合し、予備混練した。
その後、この予備混練物98.75質量部と実施例1のバインダ樹脂エマルションを固形分換算で1.25質量部混合して全体で100質量部とし、さらに精製水を全固形分が45.5質量%となるように加え、本混練してスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを容器に入れて密閉し、室温で96時間静置した後、精製水で2倍量(2倍質量)に希釈した。これを10,000min-1で20分間遠心分離して炭素材料を下層部に沈降させた後、上層部の液を150℃で2時間常圧乾燥し、その不揮発分からスラリー中の炭素材料に吸着していない未吸着量を求めた。スラリー中の炭素材料への吸着性は、次式から算出した吸着量で評価した。
Figure 2008066274
上記の式において、吸着量は10質量%以下であることが好ましい。
試験(2)炭素材料の沈降性
上記試験(1)で調製したスラリーを容器に入れて密閉し、室温で96時間静置した後、容器内底部のスラリーをスパチュラでかき混ぜ、触診でスラリー中の炭素材料の沈降性を調べた。
試験(3)合剤層への電解液浸透性
合剤層への電解液浸透性を、合剤層表面における電解液の浸透速度を測定することにより評価した。この電解液浸透性は、合剤層中の活物質に対するバインダの被覆度に影響される。即ち、活物質がバインダによって被覆されていなければ、合剤層中を電解液が浸透しやすくなるため、合剤層への電解液浸透性が高くなる。この電解液浸透性は、合剤層表面において電解液が着液した後の経過時間(電解液の浸透速度)によって評価できる。
具体的には、上記試験(1)で調製したスラリーをガラス板上にマイクロアプリケーターで均一に塗布し、80℃で1時間常圧乾燥後、120℃で5時間真空熱処理して、200μm厚の合剤層を形成した。室温で、この合剤層の表面に電解液(1Mの濃度でLiPF6を溶解したエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートの等体積混合溶液)を1μl着液し、時間の経過と共に電解液が合剤層内部に浸透していく様子をCCDカメラで追跡した。
合剤層への電解液浸透性は、合剤層表面の電解液の残液率が20容量%となる電解液着液後の経過時間(電解液の浸透速度)(msec)で評価した。経過時間は500msec以下であることが好ましい。経過時間が短ければ(浸透速度が速ければ)、電解液浸透性が良好であり、かつ、活物質がバインダで被覆されていないことになる。
試験(4)合剤層と集電体との密着性
上記試験(1)で調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が13mg/cm2となるように負極集電体(日本製箔(株)製、圧延銅箔、厚み18μm、サイズ:150×65mm)にマイクロアプリケーターで均一に片面塗布し、90℃で1時間常圧乾燥して合剤層を形成後、100×45mmのサイズに切り出した。
次いで、これを、段階的にプレス圧を上げながらロールプレス機で圧縮成形し、集電体からの合剤層の剥離が生じる直前のプレス圧での合剤層のかさ密度で評価した。かさ密度は1.85g/cm3以上であることが好ましい。
なお、対照実験として、実施例1のバインダ樹脂エマルションの代わりに実施例2及び比較例1のエマルションを用い、それぞれ上記試験(1)〜(3)を繰り返した。その結果を表1に示す。
Figure 2008066274
表1に示されるように、実施例1で得た本発明のバインダ樹脂エマルションは、従来材であるスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)に対し、スラリー中の炭素材料への吸着性が小さいため、スラリー中の炭素材料の分散安定性(耐沈降性)が良好であり、炭素材料表面を被覆し難いので合剤層に電解液が浸透し易いことがわかった。また集電体との密着性が高く、高いプレス圧でプレスしても剥がれ難いので、合剤層のかさ密度を高められることがわかった。
<リチウム電池用の電極の作製>
(実施例3)
上記試験(1)で調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が12.5mg/cm2となるように負極集電体(日立電線(株)製、圧延銅箔、厚み14μm、サイズ:200×100mm)の片側表面にマイクロアプリケーターで均一に塗布した。その後、80℃で1時間常圧乾燥して合剤層を形成した。
次いで、ロールプレス機で合剤層のかさ密度が1.5g/cm3又は1.8g/cm3となるように圧縮成形した後、打ち抜き機で直径9mm(φ)に打ち抜いた。これを120℃で5時間真空(約1333Pa(10mmHg以下の真空状態))熱処理し、本発明のバインダ樹脂エマルションと活物質から得られた合剤層を表面に設けた負極を作製した。
(実施例4)
実施例2のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例3と同様の工程を経て負極を作製した。
(比較例2)
比較例1のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例3と同様の工程を経て負極を作製した。
(実施例5)
上記試験(1)で調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が29mg/cm2となるように負極集電体(日立電線(株)製、圧延銅箔、厚み10μm、サイズ:200×100mm)の両側表面に転写ロールで均一に塗布した。
次いで、塗工物を、120℃のコンベア炉で5分間乾燥して合剤層を形成し、ロールプレス機で合剤層のかさ密度が1.8g/cm3となるように圧縮成形した。これを56mm角に裁断して短冊状のシートを作製し、120℃の真空(約1333Pa(10mmHg以下の真空状態))乾燥機で5時間真空熱処理して負極を作製した。
(実施例6)
実施例2のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例5と同様の工程を経て負極を作製した。
(比較例3)
比較例1のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例5と同様の工程を経て負極を作製した。
<リチウム電池の作製>
(実施例7)
実施例3の負極を作用極として準備した。
また、表面を軽く磨いた厚さ1mmの金属リチウム(三井金属工業(株)製)を対極として準備し、さらに作用極と対極とを分離するための絶縁体として、セパレーター(東燃タピルス(株)製、微細孔ポリオレフィン、厚み25μm、以下同様)を電解液でしめらせたものを準備した。
アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中で、上記作用極と対極を、セパレーター−対極−セパレーター−作用極−セパレーターの順に積層し、積層体を作製した。これをステンレス製コインセル外装容器に入れてステンレス製の蓋を被せ、コインセル作製用のかしめ器で密封してCR2016コインセルを作製した。
(実施例8)
作用極として、実施例4の負極を用いた以外は、実施例7と同様の工程を経てCR2016コインセルを作製した。
(比較例4)
作用極として、比較例2の負極を用いた以外は、実施例7と同様の工程を経てCR2016コインセルを作製した。
(実施例9)
正極活物質としてコバルト酸リチウム(平均粒径10μm)、バインダ樹脂としてポリ
フッ化ビニリデン〔PVDF、12質量%N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液〕、人造黒鉛系導電助剤(日本黒鉛工業(株)製、商品名:JSP、平均粒径3μm)及びカーボンブラック系導電助剤(電気化学工業(株)製、商品名:デンカブラックHS−100、平均粒径48nm)を、固形分換算で86.0:3.2:9.0:1.8(質量比)となるように配合した。
この配合物に、NMPを全固形分が60.0質量%となるように加え、混練してスラリーを調製した。得られたスラリーを、合剤層の乾燥質量が65mg/cm2となるように正極集電体(アルミニウム箔、厚み10μm)の両側表面に、転写ロールで均一に塗布した。
次いで、塗工物を、120℃のコンベア炉で5分間乾燥して合剤層を形成し、ロールプレス機で合剤層のかさ密度が3.2g/cm3となるように圧縮成形した。これを54mm幅に裁断して短冊状のシートを作製し、120℃の真空乾燥機で5時間真空熱処理して正極を得た。また負極としては、実施例5の負極を使用した。
準備した負極及び正極の集電体露出部にニッケル製の集電タブを超音波溶着した後、これらをセパレーターを介して自動捲回機で捲回し、スパイラル状の捲回群を作製した。この捲回群を電池缶に挿入し、負極の集電タブ端子を電池缶底に溶接した後、正極の集電タブ端子を蓋に溶接した。
次いで、これを蓋が開口した状態で60℃、12時間減圧乾燥した。その後、電池缶にアルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中で電解液(1Mの濃度でLiPF6を溶解したエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートの等体積混合溶液)を5ml注入した。その後、電池缶と蓋とをかしめて密閉し、18650型リチウム電池(円筒形、直径18mm、高さ65mm)を作製した。
(実施例10)
負極として、実施例6の負極を用いた以外は、実施例9と同様の工程を経て18650型リチウム電池を作製した。
(比較例5)
負極として、比較例3の負極を用いた以外は、実施例9と同様の工程を経て18650型リチウム電池を作製した。
<リチウム電池の評価>
リチウム電池の諸特性(初回充放電特性及び充放電リサイクル特性)を以下のようにして評価した。
試験(5)リチウム電池の初回充放電特性
初回充放電特性は、初回充放電時の放電容量、不可逆容量及び充放電効率から判断されるリチウム電池の充放電特性の指針である。初回充放電時の放電容量は、作製された電池の容量の指針となり、初回充放電時の放電容量が大きいほど、容量の大きな電池であるといえる。
初回充放電時の不可逆容量は、(初回充電容量−初回放電容量)から求められ、一般に初回充電時の不可逆容量が小さいほど充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こりにくい優れた電池であると判断される。
また、初回充放電時の充放電効率(%)は、[(初回放電容量/初回充電容量)×100]から求められ、初回充放電時の充放電効率が大きいほど、充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こりにくい優れた電池であると判断される。
本発明のバインダ樹脂エマルションから得たエネルギーデバイスの初回充放電特性の評価には、実施例7のCR2016コインセルを用いた。
この実施例7のコインセルについて、充放電装置(東洋システム(株)製、TOSCAT3100)を用い、アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中、23℃、充電電流0.2mAの条件で0Vまで定電流充電を行った。
なお、この定電流充電は、対極がリチウム金属であるので、電位の関係上、作用極が正極になるため、正確には放電である。
しかし、ここでは、作用極の黒鉛へのリチウムイオンの挿入反応を充電''定義する。
電圧が0Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、さらに電流値が0.02mAに減衰するまで充電を続けた後、放電電流0.2mAで放電終止電圧1.5Vに達するまで定電流放電を行った。このときの炭素材料1g当りの充電容量と放電容量を測定し、さらに不可逆容量及び充放電効率を算出し、実施例7のコインセルの初回充放電特性を評価した。
また、同様の試験及び評価を実施例8及び比較例4のコインセルに対しても行った。
放電容量が、合剤層のかさ密度:1.8g/cm3の場合に340mAh以上であれば、コインセルの初回充放電特性に優れていると判断した。その結果を表2に示す。
Figure 2008066274
表2に示されるように、ロールプレス機で高圧縮成形(合剤層かさ密度:1.8g/cm3)した高密度負極を用いた実施例8のコインセルでも、合剤層への電解液の浸透性が極端に損なわれず、初回充放電特性が良好であることが明らかである。
試験(5)リチウム電池の充放電サイクル特性
実施例9で得られた18650型リチウム電池について、充放電装置(東洋システム(株)製、TOSCAT3000)を用い、23℃、充電電流800mAで4.2Vまで定電流充電を行い、電圧が4.2Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、さらに電流値が20mAに減衰するまで充電を続けた。
その後、放電電流800mAで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行い、初回放電容量を測定した。
次いで、この条件での充電・放電を1サイクルとし、200サイクル充放電を繰り返した。18650型リチウム電池の充放電サイクル特性は、初回放電容量を維持率100%としたときの200サイクル後の放電容量維持率で評価した。放電容量維持率は、以下の式より算出した。
Figure 2008066274
また、同様の試験及び評価を実施例10、比較例5のリチウム電池に対しても行った。
放電容量維持率が、85%以上、好ましくは、90%以上であれば、電池が充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こりにくいため、充放電サイクル特性に優れていると判断できる。その結果を表3に示す。
Figure 2008066274
表3に示しされるように、本発明のバインダ樹脂エマルションを用いて作製される負極(実施例5及び実施例6)を使用したリチウム電池(実施例9及び実施例10)は、比較例5のリチウム電池に比べ、充放電サイクル特性に優れていることが明らかである。
<キャパシタの電極の作製>
(実施例11)
まず、電極活物質として利用する活性炭を、以下のようにして得た。まず、フェノール樹脂(ベルパールRタイプ、エア・ウォーター株式会社製)を原料として、N2雰囲気下、600℃に加熱してフェノール樹脂を炭化した。その後、得られた炭化物を水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて300ml/分の流量の窒素気流中、該炭化物を室温(25℃)から800℃まで昇温させ、1時間保持して賦活を行った(アルカリ賦活)。その後、温度を室温(25℃)に戻し、生成物を水洗して金属不純物を除去した。さらに、得られた生成物を、800℃、1時間、N2雰囲気下で再度加熱処理し、所望の活性炭を得た。
上記のようにして得た活性炭(電極活物質)は、平均粒径2μm、比表面積2000m2/g)を有していた。この活性炭を、活性炭、導電助剤(アセチレンブラック)及び水溶性高分子増粘剤(CMC、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、2質量%水溶液)の量が、固形分換算でそれぞれ、100質量部、10質量部及び6質量部となるように配合し、予備混練した。
その後、この予備混練物に、実施例1で得た本発明のバインダ樹脂エマルションを固形分換算で6質量部加えた。得られたエマルションに、精製水を全固形分が20質量%となるように加え、本混練してスラリーを調製した。
このスラリーを、集電体(化学エッチングにより表面を粗化したアルミ箔、厚み20μm、40×10mm)の両側表面に均一に塗布した。
次いで、塗工物を、100℃で60分間乾燥して片面80μmの合剤層を形成し、電極を得た。
(実施例12)
実施例2で得た本発明のバインダ樹脂エマルションを、実施例1のバインダ樹脂エマルションに代えて使用した以外は、全て実施例11と同様の工程を経て電極を得た。
(比較例6)
ダイキン製のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)60質量%水分散エマルションを、実施例1のバインダ樹脂エマルションに代えて使用した以外は、全て実施例11と同様工程を経て電極を得た。
<キャパシタの作製>
(実施例13)
上記実施例11で得られた電極を2組用意し、それぞれ集電体露出部にアルミニウム製のリード線を超音波溶着した後、これらをセパレーターを介して自動捲回機で捲回し、スパイラル状の捲回群を作製した。この捲回群をアルミニウムケースに挿入した後、これを蓋が開口した状態で60℃、12時間減圧(約1333Pa(10mmHg以下の真空状態))乾燥した。
次いで、アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中で電解液(1Mの濃度でテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを溶解したプロピレンカーボネート溶液)を注入した後、リード線の一部が外部に露出するようにゴムパッキンを用いてハウジングし、キャパシタを作製した。
(実施例14)
実施例11の電極の代わりに実施例12の電極を使用した以外は、実施例13と同様の工程を経てキャパシタを作製した。
(比較例7)
実施例11の電極の代わりに比較例6の電極を使用した以外は、実施例13と同様の工程を経てキャパシタを作製した。
<キャパシタ特性の評価>
実施例13、実施例14及び比較例7のキャパシタについて、容量、直流抵抗、長期信頼性を評価した。
容量は、100mA放電時の1.0Vまでの到達時間を測定した。到達時間が遅い方が容量が大きく、良好なキャパシタであると評価できる。通常、到達時間が13秒より大きければ、良好なキャパシタであるといえる。
直流抵抗は、ソーラトロン社のインピーダンスアナライザを使用して測定した。抵抗値が0.5Ω以下であれば、良好なキャパシタであるといえる。
長期信頼性は、キャパシタに1.8Vの負荷をかけ、70℃で保存し、10000時間後の容量減少率を評価した。容量減少率は、次式により算出した。
Figure 2008066274
上記の式において、容量減少率が小さいほど、長期信頼性が高いと言える。容量減少率は、25%以下であることが長期信頼性の面からは好ましい。上記の結果を表4に示す。
Figure 2008066274
表4に示されるように、本発明のバインダ樹脂エマルションを用いて作製された電極(実施例11及び実施例12)を使用したキャパシタ(実施例13及び実施例14)は、比較例7のキャパシタに比べ、直流抵抗が小さく、長期信頼性に優れていることが明らかである。

Claims (7)

  1. 中和剤で中和した、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が90/10〜70/30で、MIが50〜2000g/10minのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び水性溶媒を含有してなるエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
  2. 中和剤が、アミン化合物である、請求項1記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
  3. 中和剤が、アルカノールアミンである、請求項1記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
  4. 共重合体の10〜100モル%のカルボキシル基が中和されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
  5. 集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有するエネルギーデバイス電極であって、合剤層が、
    (a)活物質及び請求項1〜4のいずれかに記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程;及び
    (b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程;
    から得られる、エネルギーデバイス電極。
  6. 請求項5記載のエネルギーデバイス電極を含む、エネルギーデバイス。
  7. エネルギーデバイスが、リチウム電池又はキャパシタである請求項6記載のエネルギーデバイス。
JP2007045586A 2006-08-08 2007-02-26 エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス Pending JP2008066274A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007045586A JP2008066274A (ja) 2006-08-08 2007-02-26 エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006215648 2006-08-08
JP2007045586A JP2008066274A (ja) 2006-08-08 2007-02-26 エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008066274A true JP2008066274A (ja) 2008-03-21

Family

ID=39288771

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007045586A Pending JP2008066274A (ja) 2006-08-08 2007-02-26 エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2008066274A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009245830A (ja) * 2008-03-31 2009-10-22 Sanyo Electric Co Ltd 非水電解質及び該非水電解質を含む非水電解質二次電池
JP2014137915A (ja) * 2013-01-17 2014-07-28 Nippon Zeon Co Ltd 電気化学素子電極用導電性接着剤組成物
WO2015083358A1 (ja) 2013-12-02 2015-06-11 三井化学株式会社 電気化学セル用バインダー、電気化学セル用ペースト、電気化学セル用電極の製造方法
WO2021039960A1 (ja) * 2019-08-29 2021-03-04 富士フイルム株式会社 蓄電デバイス用結着剤
CN113410462A (zh) * 2021-05-27 2021-09-17 东莞赣锋电子有限公司 锂离子电池正极用添加剂、使用该添加剂的正极浆料及其制备方法
WO2023230786A1 (zh) * 2022-05-30 2023-12-07 宁德时代新能源科技股份有限公司 粘结剂、制备方法、二次电池、电池模块、电池包及用电装置

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11349858A (ja) * 1998-04-08 1999-12-21 Du Pont Mitsui Polychem Co Ltd 帯電防止用水性分散液及びその利用
JP2002134103A (ja) * 2000-10-27 2002-05-10 Toshiba Battery Co Ltd ポリマーリチウム二次電池用電極の製造方法
JP2002256129A (ja) * 2000-11-10 2002-09-11 Sanyo Chem Ind Ltd 電気化学素子の電極用結合剤および電極の製造方法
JP2004211019A (ja) * 2003-01-08 2004-07-29 Du Pont Mitsui Polychem Co Ltd 水性分散液
JP2004247292A (ja) * 2003-01-21 2004-09-02 Hitachi Chem Co Ltd バインダー樹脂、合剤スラリー、非水電解液系二次電池の電極及び非水電解液系二次電池
WO2006085416A1 (ja) * 2005-02-10 2006-08-17 Hitachi Chemical Company, Ltd. エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス
WO2007125924A1 (ja) * 2006-04-26 2007-11-08 Mitsui Chemicals, Inc. 電気化学セル電極用バインダー

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11349858A (ja) * 1998-04-08 1999-12-21 Du Pont Mitsui Polychem Co Ltd 帯電防止用水性分散液及びその利用
JP2002134103A (ja) * 2000-10-27 2002-05-10 Toshiba Battery Co Ltd ポリマーリチウム二次電池用電極の製造方法
JP2002256129A (ja) * 2000-11-10 2002-09-11 Sanyo Chem Ind Ltd 電気化学素子の電極用結合剤および電極の製造方法
JP2004211019A (ja) * 2003-01-08 2004-07-29 Du Pont Mitsui Polychem Co Ltd 水性分散液
JP2004247292A (ja) * 2003-01-21 2004-09-02 Hitachi Chem Co Ltd バインダー樹脂、合剤スラリー、非水電解液系二次電池の電極及び非水電解液系二次電池
WO2006085416A1 (ja) * 2005-02-10 2006-08-17 Hitachi Chemical Company, Ltd. エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス
WO2007125924A1 (ja) * 2006-04-26 2007-11-08 Mitsui Chemicals, Inc. 電気化学セル電極用バインダー

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009245830A (ja) * 2008-03-31 2009-10-22 Sanyo Electric Co Ltd 非水電解質及び該非水電解質を含む非水電解質二次電池
JP2014137915A (ja) * 2013-01-17 2014-07-28 Nippon Zeon Co Ltd 電気化学素子電極用導電性接着剤組成物
WO2015083358A1 (ja) 2013-12-02 2015-06-11 三井化学株式会社 電気化学セル用バインダー、電気化学セル用ペースト、電気化学セル用電極の製造方法
KR20160082535A (ko) 2013-12-02 2016-07-08 미쓰이 가가쿠 가부시키가이샤 전기화학 셀용 바인더, 전기화학 셀용 페이스트, 및 전기화학 셀용 전극의 제조 방법
CN105794029A (zh) * 2013-12-02 2016-07-20 三井化学株式会社 电化学电池用粘结剂、电化学电池用糊剂、电化学电池用电极的制造方法
JPWO2015083358A1 (ja) * 2013-12-02 2017-03-16 三井化学株式会社 電気化学セル用バインダー、電気化学セル用ペースト、電気化学セル用電極の製造方法
KR101831087B1 (ko) 2013-12-02 2018-02-21 미쓰이 가가쿠 가부시키가이샤 전기화학 셀용 바인더, 전기화학 셀용 페이스트, 및 전기화학 셀용 전극의 제조 방법
US10199652B2 (en) 2013-12-02 2019-02-05 Mitsui Chemicals, Inc. Binder for electrochemical cells, paste for electrochemical cells, and method for producing electrode for electrochemical cells
WO2021039960A1 (ja) * 2019-08-29 2021-03-04 富士フイルム株式会社 蓄電デバイス用結着剤
CN113410462A (zh) * 2021-05-27 2021-09-17 东莞赣锋电子有限公司 锂离子电池正极用添加剂、使用该添加剂的正极浆料及其制备方法
WO2023230786A1 (zh) * 2022-05-30 2023-12-07 宁德时代新能源科技股份有限公司 粘结剂、制备方法、二次电池、电池模块、电池包及用电装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4905861B2 (ja) エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス
US9859554B2 (en) Negative electrode material for lithium-based batteries
JP3960193B2 (ja) リチウム二次電池用電極及びリチウム二次電池並びにその製造方法
EP3043406B1 (en) Solid-state batteries and methods for fabrication
TWI258235B (en) Device for storing electrical energy
JP5334156B2 (ja) 非水電解液二次電池の製造方法
JP4834030B2 (ja) リチウム二次電池用正極及びこれを用いたリチウム二次電池
US20150221936A1 (en) Negative electrode material for a lithium ion battery
JP2011192539A (ja) 非水電解質二次電池用電極およびその製造方法、ならびに非水電解質二次電池
EP3602656B1 (en) Compositions and methods for passivation of electrode binders
JP2011150866A (ja) リチウムイオン二次電池
JP2007109549A (ja) 水系リチウム二次電池
JP2008066274A (ja) エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス
JP2005293942A (ja) 二次電池用負極の製造方法
JP2002117860A (ja) 電極およびリチウム二次電池
JP6529700B1 (ja) 蓄電デバイス用集電体、その製造方法、およびその製造に用いる塗工液
JP5200329B2 (ja) 非水電解液二次電池用電極板及びその製造方法並びに非水電解液二次電池
JP2006040748A (ja) 電気化学デバイス
JP2003109596A (ja) 電極材料及びその製造方法、電極並びに電池
JP2006004739A (ja) リチウム二次電池と該電池に備えられる正極及びその製造方法
JP2016081801A (ja) 正極用電極、非水電解液蓄電素子
JP2007265889A (ja) 非水電解液二次電池用電極板及びその製造方法並びに非水電解液二次電池
WO2021019480A1 (ja) 蓄電デバイスの電極の製造方法および蓄電デバイスの電極
WO2015163093A1 (ja) リチウムイオンキャパシタ用正極電極およびリチウムイオンキャパシタ
JP2005032688A (ja) 非水電解質二次電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100129

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120704

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120717

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20121119