JP2008066274A - エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】中和剤で中和した、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が90/10〜70/30でMIが50〜2000g/10minのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び水を含有してなるエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこのエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを使用したエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス。
【選択図】なし
Description
従って、上記活物質とバインダ樹脂組成物を含む合剤層にリチウムイオンを含む電解液が浸透し難く、結果として、炭素材料でのリチウムイオンの授受が困難になることがあった。
さらに、ロールプレス機等で上記合剤層を集電体に高圧縮成形した場合、密着性不足により、集電体からの合剤層の剥がれが生じる場合があった。
本発明の第二の目的は、上記エマルション中において、活物質が良好な分散安定性(耐沈降性)を示す、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを提供することにある。
本発明の第三の目的は、上記活物質と上記バインダ樹脂エマルションとから得られた合剤層において、集電体との密着性が良好なエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを提供することにある。
本発明の第五の目的は、高密度で良好な充放電特性を有するリチウム電池及び抵抗が低減し長期信頼性が向上したエネルギーデバイスを提供することにある。
また、本発明は、中和剤が、アミン化合物である、前記のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
また、本発明は、共重合体の10〜100モル%のカルボキシル基が中和されたものである、前記のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
(a)活物質及び前記のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程;及び
(b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程;
から得られるエネルギーデバイス電極に関する。
また、本発明は、前記のエネルギーデバイス電極を含む、エネルギーデバイスに関する。
さらに、本発明は、エネルギーデバイスが、リチウム電池又はキャパシタである前記のエネルギーデバイスに関する。
以下、バインダ樹脂エマルション、エネルギーデバイス電極及びこれらの製造方法等について、詳述する。
本発明になるバインダ樹脂エマルションは、中和剤で中和した、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が90/10〜70/30で、MIが50〜2000g/10minのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、水性溶媒及び任意のその他の材料を含む。
本発明に用いられるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、エチレンと(メタ)アクリル酸とを、適宜触媒を用いて共重合することによって得られる。重合は、例えば、加圧重合などの既存の重合方法を利用できる。
ここで、(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸の他、3,3-ジメチルアクリル酸、フェニルアクリル酸等の置換(メタ)アクリル酸が挙げられる。
これらのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
本発明において、中和剤は、(メタ)アクリル酸のカルボン酸を中和するために使用される。従って、本発明に用いられる中和剤としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のカルボキシル基を中和する能力を有する塩基性化合物であれば特に制限はない。中和剤としては、例えば、アミン化合物(アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のモノアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン)、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、モルホリン等が挙げられる。
これらの中和剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
本発明のバインダ樹脂エマルションは、水性溶媒を含む。水性溶媒としては、例えば、精製水、イオン交換水、純水等の水が挙げられる。水性溶媒が水である場合、本発明のバインダ樹脂エマルションは水分散エマルションの形態で存在する。得られる水分散エマルションの粒径の調節などのため、必要に応じて水以外の他の溶媒を加えることもできる。
これらの溶媒は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
本発明のバインダ樹脂エマルションには、必要に応じて他の材料を加えることができる。他の材料としては、例えば、電解質に対する耐膨潤性を補完するための架橋成分、電極の柔軟性・可とう性を補完するためのゴム成分、スラリーの電極塗工性を向上させるための増粘剤(粘度調節剤)、沈降防止剤、消泡剤、レべリング剤等が挙げられる。
これらの他の材料は、バインダ樹脂エマルション全体を100質量部とした場合、例えば0.01〜200質量部、好ましくは、0.1〜100質量部含まれることが適当である。
これらの他の材料は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
本発明になるバインダ樹脂エマルションは、上述のようにエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を中和剤で中和したものを含む。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体と、中和剤との中和反応は、水性溶媒の存在下であれば特に制限はないが、通常、常圧(1気圧)で進行する。常圧の場合、反応可能な温度範囲は、水が液体状態を保つ温度範囲である0〜100℃、好ましくは40〜95℃、より好ましくは70〜95℃、更に好ましくは80〜95℃である。
中和剤の量と水性溶媒の量は、得られる中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の粒子の大きさを基準に、適宜調節してもよい。例えば、中和剤:水性溶媒の質量比が、0.5:99.5〜30:70、好ましくは、2:98〜10:90であれば、中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の粒子の大きさは、0.05〜0.3μm程度となるので好ましい。
本発明のバインダ樹脂エマルションは、上記のようにして製造され、通常、そのままの水分散エマルションの状態で使用される。
また、本発明になるバインダ樹脂エマルションは、エネルギーデバイス、特にエネルギーデバイスの電極に使用されるバインダとして好適に利用される。ここで、「エネルギーデバイス」とは、蓄電又は発電デバイス(装置)を言う。
本発明のエネルギーデバイス電極は、集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有する。ここで合剤層は、(a)活物質及び上述したエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程及び(b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程から得られる。
ここで、(a)工程で使用されるスラリーには、後述する追加の溶媒を加えてもよい。追加の溶媒を加える場合、(b)工程では、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに含まれる水性溶媒の他、この追加の溶媒も除去されることになる。
集電体は、導電性を有する物質であれば特に制限はなく、例えば、金属、エッチング金属箔、エキスパンドメタル、導電性プラスチック等が使用できる。このうち、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル等が使用でき、また導電性プラスチックとしては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリp−フェニレン、ポリフェニレンビニレン等が使用できる。
集電体の厚みは、例えば、5〜100μm、好ましくは、8〜70μm、より好ましくは、10〜30μm、さらに好ましくは、15〜25μmである。
合剤層は、活物質及び任意の導電助剤、並びにその他の添加剤をバインダ樹脂で結合したものである。バインダ樹脂は、集電体と合剤層の結合、及び合剤層中の活物質同士の結合を行う役割を果たす。ここで、バインダ樹脂は、上記中和剤で中和したエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体である。
合剤層は、例えば、本発明のバインダ樹脂エマルション、活物質、必要に応じて追加の溶媒及びその他の添加剤などを混合してスラリーを調製し、このスラリーを前記集電体に塗布し、バインダ樹脂エマルションに含まれる水性溶媒並びに任意の追加の溶媒を乾燥除去することによって得られる。
なお、スラリーの調製は、公知の混合方法、例えば、ディスパーミキサーを使用して行うことができる。
活物質は、使用するエネルギーデバイスの種類及び使用される電極の極性によって異なるが、例えば、黒鉛、非晶質炭素、コークス、活性炭、炭素繊維、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
これらの活物質及び導電助剤は、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
上記スラリーの調製に際しては、本発明のバインダ樹脂エマルション中に含まれる水性溶媒を溶媒として使用するので、必ずしも追加の溶媒を使用する必要はない。しかし、スラリーの粘度調整等のために追加の溶媒を使用してもよい。合剤層の形成に用いられる追加の溶媒としては、特に制限はなく、上述した本発明の中和剤で中和したエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のようなバインダ樹脂成分を均一に分散できる溶媒であればよい。このような溶媒としては、前述のバインダ樹脂エマルションに用いられる追加の溶媒がそのまま使用される。例えば、水が好ましく、水に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の炭素数1〜10、好ましくは、2〜4の低級アルコール類を加えることもできる。
これらの溶媒は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
追加の溶媒は、バインダ樹脂エマルションに含まれる水性溶媒との質量比が、例えば、追加の溶媒:水性溶媒(質量比)=1:99〜9:10、好ましくは、5:95〜30:70となるように添加されることが適当である。
合剤層を製造するための上記スラリーには、スラリーの分散安定性や塗工性を改善することを目的に、増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、特に制限はないが、例えば、水溶性高分子が挙げられる。
これらの増粘剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
合剤層を構成する活物質は、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、50〜99質量%、好ましくは、80〜99質量%添加することが好ましい。
バインダ樹脂エマルションは、バインダ樹脂エマルションに含まれる固形分が、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の量で存在するように添加されることが適当である。
その他の材料は、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%添加されることが適当である。
集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有するエネルギーデバイス電極を製造する方法は、(I)活物質及び上述したエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを集電体の少なくとも1面に塗布する工程、(II)塗布されたスラリーから水性溶媒及び場合により追加の溶媒を除去する工程及び必要に応じて(III)得られた集電体と合剤層の積層体を圧延する工程を含む。
また、塗布は、対向する電極において、単位面積あたりの活物質利用率が負極/正極=1以上になるように行うことが適当である。
スラリーの塗布量は、合剤層の乾燥質量が、例えば、1〜50mg/cm2、好ましくは2〜30mg/cm2、より好ましくは、4〜15mg/cm2となる量である。
工程(III)は、例えばロールプレス機を用いて行われ、合剤層のかさ密度が、1〜5g/cm3、好ましくは、1.5〜4g/cm3となるようにプレスされる。
さらに、電極内の残留溶媒、吸着水の除去等のため、例えば、100〜150℃で1〜20時間真空(約1333Pa(10mmHg以下の真空状態))で乾燥してもよい。
本発明のエネルギーデバイス電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、所望のエネルギーデバイスを製造することができる。
本発明で使用する電解液としては、エネルギーデバイスの種類によって異なるが、使用するエネルギーデバイスとしての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。
電解液中の電解質としては、例えばリチウム電池では、LiPF6のようなリチウム系化合物、キャパシタではテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどのアンモニウム系化合物が使用される。
本発明になるエネルギーデバイスは、特に制約はないが、上述した本発明のエネルギーデバイス電極を使用する以外は公知の方法を利用して製造できる。
以下、本発明になるエネルギーデバイス電極及びエネルギーデバイスの具体的製法を、リチウム電池の電極及びこれを用いたリチウム電池、キャパシタの電極及びこれを用いたキャパシタを例にとって説明する。
(3−1−1)集電体
本発明で使用するリチウム電池用の集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、金属が使用できる。具体的な金属としては、アルミニウム、銅及びニッケル等が使用できる。
さらに、集電体の形状は、特に限定はないが、リチウム電池の高エネルギー密度化という点から、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、8〜25μmである。
本発明で使用するリチウム電池用の活物質は、例えば、リチウム電池の充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入放出できるものであれば特に制限はない。しかしながら、正極は、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを受け取るという機能を有する一方、負極は、充電時にリチウムイオンを受け取り、放電時にリチウムイオンを放出するという正極とは逆の機能を有するので、正極及び負極で使用される活物質は、通常、それぞれの有する機能にあわせて、異なる材料が使用される。
これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
なお、前記導電助剤は、正極活物質と組み合わせて使用することが好ましい。
合剤層、溶媒、その他の添加剤については、上記(2−1)エネルギーデバイス電極の項で述べた通りである。
本発明のリチウム電池の電極の製法は、原則として、上記(2−1−3)電極の製法の項で述べた通りである。
さらに、電極内の残留溶媒、吸着水の除去等のため、例えば、100〜150℃で1〜20時間真空乾燥してもよい。
リチウム電池の電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、リチウム電池を製造することができる。
本発明のリチウム電池で使用する電解液としては、リチウム電池としての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。電解液としては、上述した電解質用の有機溶媒に、LiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5) 4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2) 2N、Li[(CO2) 2] 2B等の電解質を溶解した溶液などが挙げられる。
電解液は、例えば上記有機溶媒と電解質を、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて調製し、リチウム電池において用いられる。
リチウム電池の製造方法については特に制約はないが、いずれも公知の方法を利用できる。例えば、まず、正極と負極の2つの電極を、ポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め負極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。
(3−4−1)集電体
本発明で使用するキャパシタ用の集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、金属箔、エッチング金属箔、エキスパンドメタル等が使用できる。具体的な材質としては、アルミニウム、タンタル、ステンレス、銅、チタン、ニッケル等が挙げられるが、中でもアルミニウムが好ましい。
本発明で使用するキャパシタ用の活物質は、キャパシタの充放電により電解質との界面で電気二重層を形成できるものであれば特に制限はない。例えば、活性炭、活性炭繊維、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
合剤層、溶媒、その他の添加剤については、上記(2−1)エネルギーデバイス電極の項で述べた通りである。
キャパシタの電極の製法は、原則として、上記(2−1−3)電極の製法の項で述べた通りである。
キャパシタの電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、キャパシタを製造することができる。
本発明のキャパシタで使用する電解液としては、キャパシタとしての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。電解液としては、上述した電解質用の有機溶媒に、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート等の電解質を溶解した溶液などが挙げられる。
電解液は、例えば上記有機溶媒と電解質を、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて調製し、キャパシタにおいて用いられる。
キャパシタの製造方法については特に制約はないが、いずれも公知の方法を利用できる。例えば、まず、二組の電極に取出し電極(リード線)を接続し、これらをセパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群をケースに挿入し、電解液を注入した後、リード線の一部が外部に露出するようにゴムパッキンを用いてハウジングすることで、キャパシタを得る。
<バインダ樹脂エマルションの調製>
(実施例1)
撹拌機、温度計及び冷却管を装備した2リットルのセパラブルフラスコを準備した。
エチレン−アクリル酸共重合体〔PRIMACOR5980I、ダウ・ケミカル社製〕のMIを300g/10minに変えた以外は、実施例1と同様の工程を経て本発明のバインダ樹脂エマルションを得た。得られたバインダ樹脂エマルションの平均粒子径は0.08μmであり、150℃で2時間常圧乾燥後の不揮発分は20.2質量%であった。得られたエチレン−アクリル酸共重合体のカルボン酸基は、中和前の該共重合体が有するカルボン酸基を100モル%とした場合、50%のカルボン酸が中和されていた。
日本ゼオン製のスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)40質量%(SBRを固形分として全体の40質量%)水分散エマルションを準備した。
バインダ樹脂エマルションの諸特性(炭素材料に対する吸着性、炭素材料の沈降性、バインダ樹脂エマルションから得た合剤層の電解液浸透性、合剤層と集電体との密着性)を以下のようにして評価した。
炭素材料(日立化成工業(株)製、商品名:MAG、リチウム電池負極活物質用塊状人造黒鉛、平均粒径20μm)と、水溶性高分子増粘剤〔カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩、2質量%水溶液〕を、固形分換算で前者が97.5質量部、後者が1.25質量部となるように配合し、予備混練した。
上記試験(1)で調製したスラリーを容器に入れて密閉し、室温で96時間静置した後、容器内底部のスラリーをスパチュラでかき混ぜ、触診でスラリー中の炭素材料の沈降性を調べた。
合剤層への電解液浸透性を、合剤層表面における電解液の浸透速度を測定することにより評価した。この電解液浸透性は、合剤層中の活物質に対するバインダの被覆度に影響される。即ち、活物質がバインダによって被覆されていなければ、合剤層中を電解液が浸透しやすくなるため、合剤層への電解液浸透性が高くなる。この電解液浸透性は、合剤層表面において電解液が着液した後の経過時間(電解液の浸透速度)によって評価できる。
具体的には、上記試験(1)で調製したスラリーをガラス板上にマイクロアプリケーターで均一に塗布し、80℃で1時間常圧乾燥後、120℃で5時間真空熱処理して、200μm厚の合剤層を形成した。室温で、この合剤層の表面に電解液(1Mの濃度でLiPF6を溶解したエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートの等体積混合溶液)を1μl着液し、時間の経過と共に電解液が合剤層内部に浸透していく様子をCCDカメラで追跡した。
上記試験(1)で調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が13mg/cm2となるように負極集電体(日本製箔(株)製、圧延銅箔、厚み18μm、サイズ:150×65mm)にマイクロアプリケーターで均一に片面塗布し、90℃で1時間常圧乾燥して合剤層を形成後、100×45mmのサイズに切り出した。
(実施例3)
上記試験(1)で調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が12.5mg/cm2となるように負極集電体(日立電線(株)製、圧延銅箔、厚み14μm、サイズ:200×100mm)の片側表面にマイクロアプリケーターで均一に塗布した。その後、80℃で1時間常圧乾燥して合剤層を形成した。
実施例2のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例3と同様の工程を経て負極を作製した。
比較例1のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例3と同様の工程を経て負極を作製した。
上記試験(1)で調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が29mg/cm2となるように負極集電体(日立電線(株)製、圧延銅箔、厚み10μm、サイズ:200×100mm)の両側表面に転写ロールで均一に塗布した。
実施例2のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例5と同様の工程を経て負極を作製した。
比較例1のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例5と同様の工程を経て負極を作製した。
(実施例7)
実施例3の負極を作用極として準備した。
また、表面を軽く磨いた厚さ1mmの金属リチウム(三井金属工業(株)製)を対極として準備し、さらに作用極と対極とを分離するための絶縁体として、セパレーター(東燃タピルス(株)製、微細孔ポリオレフィン、厚み25μm、以下同様)を電解液でしめらせたものを準備した。
作用極として、実施例4の負極を用いた以外は、実施例7と同様の工程を経てCR2016コインセルを作製した。
作用極として、比較例2の負極を用いた以外は、実施例7と同様の工程を経てCR2016コインセルを作製した。
正極活物質としてコバルト酸リチウム(平均粒径10μm)、バインダ樹脂としてポリ
フッ化ビニリデン〔PVDF、12質量%N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液〕、人造黒鉛系導電助剤(日本黒鉛工業(株)製、商品名:JSP、平均粒径3μm)及びカーボンブラック系導電助剤(電気化学工業(株)製、商品名:デンカブラックHS−100、平均粒径48nm)を、固形分換算で86.0:3.2:9.0:1.8(質量比)となるように配合した。
負極として、実施例6の負極を用いた以外は、実施例9と同様の工程を経て18650型リチウム電池を作製した。
負極として、比較例3の負極を用いた以外は、実施例9と同様の工程を経て18650型リチウム電池を作製した。
リチウム電池の諸特性(初回充放電特性及び充放電リサイクル特性)を以下のようにして評価した。
初回充放電特性は、初回充放電時の放電容量、不可逆容量及び充放電効率から判断されるリチウム電池の充放電特性の指針である。初回充放電時の放電容量は、作製された電池の容量の指針となり、初回充放電時の放電容量が大きいほど、容量の大きな電池であるといえる。
この実施例7のコインセルについて、充放電装置(東洋システム(株)製、TOSCAT3100)を用い、アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中、23℃、充電電流0.2mAの条件で0Vまで定電流充電を行った。
しかし、ここでは、作用極の黒鉛へのリチウムイオンの挿入反応を充電''定義する。
放電容量が、合剤層のかさ密度:1.8g/cm3の場合に340mAh以上であれば、コインセルの初回充放電特性に優れていると判断した。その結果を表2に示す。
実施例9で得られた18650型リチウム電池について、充放電装置(東洋システム(株)製、TOSCAT3000)を用い、23℃、充電電流800mAで4.2Vまで定電流充電を行い、電圧が4.2Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、さらに電流値が20mAに減衰するまで充電を続けた。
次いで、この条件での充電・放電を1サイクルとし、200サイクル充放電を繰り返した。18650型リチウム電池の充放電サイクル特性は、初回放電容量を維持率100%としたときの200サイクル後の放電容量維持率で評価した。放電容量維持率は、以下の式より算出した。
放電容量維持率が、85%以上、好ましくは、90%以上であれば、電池が充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こりにくいため、充放電サイクル特性に優れていると判断できる。その結果を表3に示す。
(実施例11)
まず、電極活物質として利用する活性炭を、以下のようにして得た。まず、フェノール樹脂(ベルパールRタイプ、エア・ウォーター株式会社製)を原料として、N2雰囲気下、600℃に加熱してフェノール樹脂を炭化した。その後、得られた炭化物を水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて300ml/分の流量の窒素気流中、該炭化物を室温(25℃)から800℃まで昇温させ、1時間保持して賦活を行った(アルカリ賦活)。その後、温度を室温(25℃)に戻し、生成物を水洗して金属不純物を除去した。さらに、得られた生成物を、800℃、1時間、N2雰囲気下で再度加熱処理し、所望の活性炭を得た。
上記のようにして得た活性炭(電極活物質)は、平均粒径2μm、比表面積2000m2/g)を有していた。この活性炭を、活性炭、導電助剤(アセチレンブラック)及び水溶性高分子増粘剤(CMC、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、2質量%水溶液)の量が、固形分換算でそれぞれ、100質量部、10質量部及び6質量部となるように配合し、予備混練した。
次いで、塗工物を、100℃で60分間乾燥して片面80μmの合剤層を形成し、電極を得た。
実施例2で得た本発明のバインダ樹脂エマルションを、実施例1のバインダ樹脂エマルションに代えて使用した以外は、全て実施例11と同様の工程を経て電極を得た。
ダイキン製のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)60質量%水分散エマルションを、実施例1のバインダ樹脂エマルションに代えて使用した以外は、全て実施例11と同様工程を経て電極を得た。
(実施例13)
上記実施例11で得られた電極を2組用意し、それぞれ集電体露出部にアルミニウム製のリード線を超音波溶着した後、これらをセパレーターを介して自動捲回機で捲回し、スパイラル状の捲回群を作製した。この捲回群をアルミニウムケースに挿入した後、これを蓋が開口した状態で60℃、12時間減圧(約1333Pa(10mmHg以下の真空状態))乾燥した。
実施例11の電極の代わりに実施例12の電極を使用した以外は、実施例13と同様の工程を経てキャパシタを作製した。
実施例11の電極の代わりに比較例6の電極を使用した以外は、実施例13と同様の工程を経てキャパシタを作製した。
実施例13、実施例14及び比較例7のキャパシタについて、容量、直流抵抗、長期信頼性を評価した。
容量は、100mA放電時の1.0Vまでの到達時間を測定した。到達時間が遅い方が容量が大きく、良好なキャパシタであると評価できる。通常、到達時間が13秒より大きければ、良好なキャパシタであるといえる。
長期信頼性は、キャパシタに1.8Vの負荷をかけ、70℃で保存し、10000時間後の容量減少率を評価した。容量減少率は、次式により算出した。
Claims (7)
- 中和剤で中和した、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が90/10〜70/30で、MIが50〜2000g/10minのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び水性溶媒を含有してなるエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
- 中和剤が、アミン化合物である、請求項1記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
- 中和剤が、アルカノールアミンである、請求項1記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
- 共重合体の10〜100モル%のカルボキシル基が中和されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
- 集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有するエネルギーデバイス電極であって、合剤層が、
(a)活物質及び請求項1〜4のいずれかに記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程;及び
(b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程;
から得られる、エネルギーデバイス電極。 - 請求項5記載のエネルギーデバイス電極を含む、エネルギーデバイス。
- エネルギーデバイスが、リチウム電池又はキャパシタである請求項6記載のエネルギーデバイス。
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