JP2008064310A - 車両用軸受装置 - Google Patents

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孝則 山田
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Abstract

【課題】回転輪と位置決め部材の当接面相互の硬度差を小さくし、当該当接面相互の耐摩耗性を向上させることで、フレッチング摩耗を抑制、並びに防止することが可能な車両用軸受装置を提供する。
【解決手段】各種車両の車軸Sを回転自在に軸支し、複数の転動体6a,6bを介して相対回転可能に対向配置された静止輪4及び回転輪2a,2bを有する転がり軸受Aと、回転輪を軸方向に位置決めするための環状の位置決め部材F,Pとを具備する車両用軸受装置であって、位置決め部材と回転輪とは、対向する軸方向の端面同士が相互に当接し、車軸とともに回転可能に配置されており、当該位置決め部材の端面F1,P1及び当該端面に当接する回転輪の端面2e,2fの各ロックウェル硬さのCスケールに基づく硬度の差が、20ポイント以下に設定されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、鉄道車両の車軸などに用いられる軸受装置に関し、特に、軸受装置の回転輪と位置決め部材の当接面相互で発生するフレッチング摩耗を有効に抑制、並びに防止することが可能な車両用軸受装置の構造に関する。
鉄道車両用の軸受装置は、例えば、図1(a)に示すような構成をしており、車軸Sに外嵌されて当該車軸Sを軸支する軸受(複列の円すいころ軸受)Aと、軸受Aの回転輪(内輪)2(後述する)を軸方向に位置付けるための環状の後ろ蓋F並びに環状の油切りPと、軸受A内に封入された潤滑剤が外部へ漏洩することを防止するためのオイルシール18とを備えている。
かかる軸受Aは、車輪(図示しない)に接続されて車輪とともに回転する回転輪(内輪)2と、車両のハウジング(図示しない)に固定されて常時非回転状態に維持される静止輪(外輪)4と、回転輪(内輪)2と静止輪(外輪)4との間に複列(例えば、2列)で転動可能に組み込まれた複数の転動体(ころ)6a,6bと、転動体(ころ)6a,6bを1つずつ回転自在に保持する保持器12とを具備している。なお、図1(a)に示す構成において、内輪2は、第1の内輪2aと第2の内輪2bとから構成されており、第1の内輪2aには第1の軌道面8aが形成され、第2の内輪2bには第2の軌道面8bがそれぞれ形成され、外輪4には、当該第1及び第2の軌道面8a,8bに対向して複列(2列)の軌道面10a,10bが形成されている。また、内輪2は、第1の内輪2aの端面2cと第2の内輪2bの端面2dとが直接当接している。
また、後ろ蓋Fと油切りPは、それぞれ円筒状を成しており、車軸Sに外嵌されている。この場合、第1の内輪2aの端面2eと後ろ蓋Fの端面F1とが当接し、第2の内輪2bの端面2fと油切りPの端面P1とが当接している。このように、軸受Aは、内輪2(2a,2b)が後ろ蓋F及び油切りPにそれぞれ当接し、外輪4が車両のハウジング(図示しない)に固定されることにより、軸方向に沿って位置決めされている。なお、内輪2(2a,2b)及び外輪4は、一例として軸受鋼で形成されており、後ろ蓋Fと油切りPは、一例として焼ならしを施した炭素鋼で形成されている。
また、軸受Aには、第1の内輪2aと後ろ蓋Fとの当接部(端面2e,F1)、及び第2の内輪2bと油切りPとの当接部(端面2f,P1)を覆うようにして、断面視階段状(例えば、3段)の円筒を成すシールケース16が設けられている。この場合、当該シールケース16は、その一端側(大径側)が外輪4に内嵌され、その他端側(小径側)が後ろ蓋F及び油切りP方向に延出し、その延出端は後ろ蓋F及び油切りPとは非接触状態に位置決めされている。また、シールケース16と後ろ蓋Fとの間並びにシールケース16と油切りPとの間には、それぞれ軸受Aを密封するためのオイルシール18が介在されている。なお、オイルシール18としては、その外径部18aがシールケース16に内嵌され、その内径部18bが後ろ蓋F及び油切りPの外周面F2,P2に摺接する接触型のシールが適用されている。このようにシールケース16及びオイルシール18を設けることで、軸受外部から軸受内部への異物(例えば、水や塵埃)の侵入や、軸受内部から軸受外部への潤滑剤(例えば、潤滑油やグリース)の漏洩が防止されている。
ところで、鉄道車両用の軸受装置は、当該軸受装置が車輪(図示しない)の外側(図1(a)の左側)に配置され(いわゆる、アウトボードタイプ)、当該鉄道車両の重量を負荷している。このため、軸受装置に対して非常に大きな荷重が作用し、これにより当該軸受装置に曲げモーメントがかかり、車軸Sが撓む場合がある。特に、軸受装置に対して、鉄道車両の重量が車軸Sと直角方向(ラジアル方向)に負荷された場合(図1(a)の矢印Fc)、当該車軸Sの撓みが大きくなり、さらに、かかる撓みは、当該車軸Sの軸端Stへ向かうに従って大きくなる。
このように車軸Sが撓んだ状態で車輪(車軸S)が回転すると、内輪2a,2bと後ろ蓋F及び油切りPとがそれぞれ相互に回転して擦れ合い、内輪2a,2bの端面2e,2f、後ろ蓋F及び油切りPの端面F1,P1において応力変動が繰り返されるとともに、これらの端面相互間で微小滑りが繰り返される。
ここで、通常、軸受Aの内輪2(2a,2b)、後ろ蓋F及び油切りPは、上述したような金属製であり、このような応力変動や微小滑りが繰り返されることで、内輪2a,2bの端面2e,2f、後ろ蓋F及び油切りPの端面F1,P1が摩耗し、摩耗粉(金属粉)が発生してしまう。すなわち、軸受装置において、いわゆるフレッチングが生じてしまう。
かかるフレッチングによって発生した金属粉(フレッチング金属粉)は、遠心力によって内輪2a,2bの端面2e,2fと後ろ蓋F及び油切りPの端面F1,P1との間から径方向外側(内輪2から外輪4に向かう方向(図1(a),(b)の上方向))へ移動して軸受A内に侵入し、例えば、軸受A内に封入された潤滑剤(各種グリースや潤滑油)に混入してしまう場合がある。この結果、例えば、潤滑剤の潤滑性能が劣化したり、あるいは当該金属粉が転動体(ころ)6a,6bと内外輪2,4との間に入り込むことで、転動体(ころ)6a,6bの表面や軌道面8a,8b,10a,10bが損傷し、軸受寿命を低下させるなど、長期に亘って軸受Aを一定の性能で連続して使用することが困難になってしまう場合がある。
このため、従来から、このようなフレッチング金属粉によって生じる不都合を回避する各種の方策が知られている。
例えば、特許文献1には、内輪と後ろ蓋との当接部、又は内輪と油切りとの当接部のうち、いずれか少なくとも一方の当接部の外周面に周方向に沿って円環状の溝を設け、当該溝に円環状の弾性体(例えば、ゴムなど)を取り付けた鉄道車両用の軸受装置が開示されている。このような構成により、フレッチング金属粉が軸受装置(軸受)内に侵入することを防止している。
また、例えば、特許文献2には、内輪と後ろ蓋との当接面間、又は内輪と油切りとの当接面間のうち、いずれか少なくとも一方の当接面間に軸受装置(軸受)内に封入したグリースの寿命を延長させる材料(例えば、銅など)で成る部材を介在させた鉄道車両用の軸受装置が開示されている。このような構成により、フレッチング金属粉が軸受装置(軸受)内に侵入することを防止しているとともに、仮に侵入した場合であっても、当該フレッチング金属粉により、グリース寿命を延長させることを可能としている。
さらに、例えば、特許文献3には、内輪の端部(後ろ蓋及び油切りとの当接端部)に所定の溝を設け、当該溝に後ろ蓋及び油切りと所定の間隔を空けて磁気回路(永久磁石)を対向配置した鉄道車両用の軸受装置が開示されている。このような構成により、かかる磁気回路(永久磁石)の磁力によってフレッチング金属粉を捕捉することで、フレッチング金属粉が軸受装置(軸受)内に侵入することを防止している。
特開平11−336774号公報 特開2000−52986号公報 特開2005−226794号公報
このように、特許文献1〜3に開示された鉄道車両用の軸受装置の構成によれば、フレッチング金属粉が軸受装置(軸受)内に侵入することを防止することができる。あるいは、フレッチング金属粉が軸受装置(軸受)内に侵入し、グリースと混入した場合、当該グリースの潤滑性能に与える影響を最小限に抑制する、すなわち、グリースの潤滑性能の劣化を防止することができる。
しかしながら、特許文献1〜3では、フレッチング金属粉自体の発生を抑制、並びに防止する方策(例えば、軸受装置の構成)について、特に言及されていない。このため、例えば、フレッチング金属粉が継続して発生した場合、その発生量によっては、上述したような軸受装置(軸受)内への侵入防止効果や、グリース潤滑性能の劣化防止効果などが十分に得られない、若しくは発揮されない場合も想定される。
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、回転輪と位置決め部材の当接面相互の硬度差を小さくし、当該当接面相互の耐摩耗性を向上させることで、フレッチング摩耗を抑制、並びに防止することが可能な車両用軸受装置を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明に係る車両用軸受装置は、各種車両の車軸を回転自在に軸支し、複数の転動体を介して相対回転可能に対向配置された静止輪及び回転輪を有する転がり軸受と、回転輪を軸方向に位置決めするための環状の位置決め部材とを具備している。このような構成において、位置決め部材と回転輪とは、対向する軸方向の端面同士が相互に当接し、車軸とともに回転可能に配置されており、当該位置決め部材の端面及び当該端面に当接する回転輪の端面の各ロックウェル硬さのCスケールに基づく硬度の差が、20ポイント以下に設定されている。
なお、この場合、位置決め部材としては、後ろ蓋、油切り及び間座のうちの少なくとも1つが適用されている。
本発明によれば、回転輪と位置決め部材の当接面相互の硬度差を小さくし、当該当接面相互の耐摩耗性を向上させることで、フレッチング摩耗を抑制、並びに防止することが可能な車両用軸受装置を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る車両用軸受装置について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明の軸受装置は、例えば、鉄道や自動車など各種の車両の車軸を支持するための軸受装置として適用することができるが、ここでは、鉄道車両用の軸受装置を一例として想定する。また、この場合、軸受装置を構成する各部品の基本的な構造としては、上述した鉄道車両用の軸受装置(図1(a))と同様の構造を成している場合を一例として想定し、以下、説明する。
図1(a),(b)には、本発明の一実施形態に係る鉄道車両用軸受装置が示されている。
かかる軸受装置は、鉄道車両の車軸Sを回転自在に軸支し、複数の転動体(ころ)6a,6bを介して相対回転可能に対向配置された静止輪(外輪)4及び回転輪(内輪)2を有する転がり軸受Aと、内輪2を軸方向に位置決めするための環状の位置決め部材とを具備している。ここで、位置決め部材としては、転がり軸受Aの軸方向両側に設けられた後ろ蓋Fと油切りPが適用されており、後ろ蓋Fは、車軸Sの基端側(例えば、車輪(図示しない)側(図1(a)の右側))において外周面段差部S1に外嵌され、油切りPは、車軸Sの軸端St側(図1(a)の左側)において外周面小径部S3に外嵌されている。なお、車軸Sには、外周面段差部S1を境界にして図1(a)の右側に比較的大径の外周面大径部S2が形成され、同図の左側に比較的小径の外周面小径部S3が形成されている。この場合、軸受装置の軸受Aの内輪2、後ろ蓋F及び油切りPは、車軸Sの外周面段差部S1とナット20との間で挟み付けられた状態となるように、車軸Sの軸端St側(図1(a)の左側)から回り止めリング22を介してボルト24で固定(緩み止め)されている。
図1(a)に示す構成において、転がり軸受Aとしては、外輪一体型の複列(2列)タイプの円すいころ軸受が適用されている。この場合、軸受Aは、内輪2が車輪(図示しない)に接続された車軸Sとともに回転する回転輪として構成されているのに対し、外輪4が車両のハウジング(図示しない)に固定されて常時非回転状態に維持される静止輪として構成されている。かかる軸受Aは、内輪2が第1の内輪2aと第2の内輪2bとで構成されており、第1の内輪2aには第1の軌道面8aが形成され、第2の内輪2bには第2の軌道面8bがそれぞれ形成され、外輪4には、当該第1及び第2の軌道面8a,8bに対向して複列(2列)の軌道面10a,10bが形成されている。また、内外輪2,4の軌道面8a,10a間及び軌道面8b,10b間には、複数のころ6a及びころ6bがそれぞれ転動自在に組み込まれており、各ころ6a,6bは、1つずつ回転自在に等間隔を成して保持器12によって保持されている。
また、図1(a)に示す構成において、第1の内輪2aと第2の内輪2bとは、一例として、対向する端面2c,2d同士が互いに直接当接するように配設されている。なお、図4に示すように、第1の内輪2aと第2の内輪2bとの間には、環状を成す内輪間座14を介在させてもよい。この場合、第1の内輪2aの端面2cと内輪間座14の一方側(図4の右側)の端面14aとが当接し、第2の内輪2bの端面2dと内輪間座14の他方側(図4の左側)の端面14bとが当接するように、内輪2a,2b及び内輪間座14とを配設させればよい。
この場合、ころ6aの自転軸に直交する作用線(図示しない)と、ころ6bの自転軸に直交する作用線(図示しない)とは、外輪4の外側(例えば、車両のハウジング(図示しない)側)で交差する。これにより背面組合せ形(DB)軸受が構成される。このような構成において、例えば、鉄道車両の車輪に作用する力は、車輪(図示しない)から車軸S、軸受装置(軸受A)を通じて車体(例えば、車両のハウジング(図示しない))に伝達されることになり、その際、軸受装置(軸受A)には、各種の荷重(ラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重など)が作用する。しかし、軸受Aは、背面組合せ形(DB)軸受となっているため、各種の荷重(ラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重など)に対して高い剛性を維持することができる。
また、軸受Aには、第1の内輪2aの端面2eと後ろ蓋Fの端面F1とが互いに当接する部分、及び第2の内輪2bの端面2fと油切りPの端面P1とが互いに当接する部分を覆うようにして、断面視階段状(例えば、3段)の円筒を成すシールケース16が設けられている。この場合、シールケース16は、一例として、その一端側(大径側)が外輪4に内嵌され、その他端側(小径側)が後ろ蓋F及び油切りP方向に延出し、その延出端は後ろ蓋F及び油切りPとは非接触状態に位置決めされている。
また、シールケース16と後ろ蓋Fとの間、並びにシールケース16と油切りPとの間には、それぞれ軸受Aを密封するためのオイルシール18が介在されている。なお、オイルシール18としては、その外径部18aがシールケース16に内嵌され、その内径部18bが後ろ蓋F及び油切りPの外周面F2,P2に摺接する接触型のシールが適用されている。
このようにシールケース16及びオイルシール18を設けることで、軸受外部から軸受内部への異物(例えば、水や塵埃)の侵入や、軸受内部から軸受外部への潤滑剤(例えば、潤滑油やグリース)の漏洩を防止することができる。なお、シールケース16は、その一端側(大径側)が外輪4に外嵌されていてもよく、オイルシール18は、非接触型のシールやシールドであってもよい。
また、本実施形態において、後ろ蓋Fと油切りPは、それぞれ円筒状を成しており、軸受Aの内輪2(2a,2b)とともに回転可能に車軸Sへ外嵌されている。図1(a),(b)及び図2に示す構成では、後ろ蓋Fは、一例として、断面視階段状(2段)の円筒を成し、その大径側内周面F4が車軸Sの外周面大径部S2に当接し、当該大径側内周面F4と小径側内周面F5とを連結する内周中間部F6が車軸Sの外周面段差部S1に当接するとともに、その小径側内周面F5が車軸Sの外周面小径部S3と所定の間隔を空けて対向するように当該車軸Sへ外嵌されている。この場合、後ろ蓋Fの内周中間部F6は、車軸Sの外周面段差部S1に沿って連続した凸曲面状に形成されている。また、後ろ蓋Fには、小径側外周面F2と大径側外周面F3とを連結する外周中間部(シールケース16との対向面)F7に、周方向に沿って所定のシール溝Fmが形成されている。
この状態において、後ろ蓋Fは、その小径側外周面F2がオイルシール18の内径部(例えば、シールのリップ部(図示しない))18bと摺接するとともに、そのシール溝Fmが、シールケース16の延出端16sを非接触状態にその内部へ収容している。また、後ろ蓋Fは、一端側(例えば、車軸Sの軸端St側(図1(a),(b)の左側))の端面F1が、対向する内輪2(第1の内輪2a)の端面2eに軸方向(例えば、車輪(図示しない)側(図1(a)の右側))から当接している。
これに対し、油切りPは、筒状に形成された本体Pmと、当該本体Pmの一端側(例えば、車軸Sの軸端St側(図1(a)の左側))の外周面P2に環状且つ一連に設けられたフランジ部Pfとで構成され、本体Pmの内周面P3が車軸Sの外周面小径部S3に当接するように当該車軸Sへ外嵌されている。
この状態において、油切りPは、その本体Pmの外周面P2がオイルシール18の内径部(例えば、シールのリップ部)18bと摺接するとともに、そのフランジ部Pfがシールケース16の小径側内周面16aと部分的に対向している。また、油切りPは、一端側(例えば、車輪(図示しない)側(図1(a)の右側))の端面P1が、対向する内輪2(第2の内輪2b)の端面2fに軸方向(例えば、車輪側(図1(a)の左側))から当接しているとともに、他端側(例えば、車輪側(図1(a)の左側))の端面P4がナット20と当接している。
このように、本実施形態において、位置決め部材(後ろ蓋F及び油切りP)と回転輪(内輪2(2a,2b))とは、対向する軸方向(図1(a),(b)の左右方向)の端面同士が相互に当接し、車軸Sとともに回転可能に配置されている。一例として、図1(a),(b)に示す構成においては、後ろ蓋Fの端面F1と第1の内輪2aの端面2eとが相互に当接して車軸Sに外嵌固定され、当該後ろ蓋Fと当該第1の内輪2aとが車軸Sとともに回転している。また、油切りPの端面P1と第2の内輪2bの端面2fとが相互に当接して車軸Sに外嵌固定され、当該油切りPと当該第2の内輪2bとが車軸Sとともに回転している。
また、本実施形態においては、位置決め部材(後ろ蓋F及び油切りP)の端面F1,P1及び当該端面F1,P1に当接する回転輪(内輪2(2a,2b))の端面2e,2fの各ロックウェル硬さのCスケールに基づく硬度(HRC硬度:以下、単に硬度という)の差が、20ポイント以下に設定されている。この場合、上記当接する端面同士の硬度差を20ポイント以下に設定するためには、互いに当接する後ろ蓋Fの端面F1と内輪2aの端面2eのうち、より小さい方の硬度を大きい方の硬度の20ポイント以内となるように上げればよい。同様に、互いに当接する油切りPの端面P1と内輪2bの端面2fのうち、より小さい方の硬度を大きい方の硬度の20ポイント以内となるように上げればよい。
なお、内輪2a,2b、後ろ蓋F及び油切りPは、それぞれ任意の素材を材料として構成することができ、内輪2a,2b、後ろ蓋F及び油切りPの各硬度は、その構成材料(組成)によって変動し、当該硬度の大小関係も当該構成材料によって変動する。
例えば、内輪2a,2bが軸受鋼、後ろ蓋F及び油切りPが炭素鋼で構成されている場合、通常は、当該内輪2a,2bの硬度の方が、当該後ろ蓋F及び油切りPの硬度よりも大きい。すなわち、内輪2a,2bの端面2e,2fの硬度の方が、これと当接する後ろ蓋Fの端面F1及び油切りPの端面P1の硬度よりも大きい。したがって、この場合、当接する内輪2aの端面2eの硬度に合わせて、後ろ蓋Fの端面F1の硬度を上げることで、両端面2e,F1の硬度差を20ポイント以下となるように設定すればよい。また、当接する内輪2bの端面2fの硬度に合わせて、油切りPの端面P1の硬度を上げることで、両端面2f,P1の硬度差を20ポイント以下となるように設定すればよい。
この場合、後ろ蓋Fの端面F1及び油切りPの端面P1の硬度をそれぞれ上げる(大きくする)ためには、例えば、後ろ蓋F及び油切りPに対し、所定の熱処理を施し、焼入れを行えばよい。このような焼入れを行う際、後ろ蓋F及び油切りPが含有する炭素量に応じて、焼入れ後の後ろ蓋Fの端面F1及び油切りPの端面P1の硬度は、それぞれ変動する。このような変動を考慮し、さらには、焼入れ後の後ろ蓋Fの端面F1及び油切りPの端面P1の硬度を、内輪2a,2bの端面2e,2fの硬度の20ポイント以内に上げることを考慮すれば、後ろ蓋F及び油切りPは、炭素含有量が0.35%以上の炭素鋼で構成することが好ましい。
また、後ろ蓋F及び油切りPに対して焼入れを行う場合、その方法としては、通常の焼入れ法の他、例えば、高周波焼入れ、浸炭焼入れ及びショットピーニングなど各種の方法を適用することができる。さらに、この場合、焼入れ時の各種の条件(加熱する方法、時間、温度及び速度、並びに冷却する方法、時間、温度及び速度等)などは、例えば、後ろ蓋F及び油切りPの組成や焼入れ後の設定硬度などに応じて具体的に設定されるため、ここでは特に限定しない。
なお、内輪2a,2bと後ろ蓋F及び油切りPは、相互に当接する端面同士の硬度差が20ポイント以下となるように構成されていればよく、各当接端面同士の硬度の大小関係は、特に限定されない。例えば、内輪2aの端面2eの硬度が後ろ蓋Fの端面F1の硬度より大きくてもよいし、逆に、後ろ蓋Fの端面F1の硬度が内輪2aの端面2eの硬度より大きくてもよい。さらに、当該両端面2e,F1の硬度が同一(同一ポイント値)であってもよい。同様に、内輪2bの端面2fの硬度が油切りPの端面P1の硬度より大きくてもよいし、逆に、内輪2bの端面2fの硬度が油切りPの端面P1の硬度より大きくてもよい。さらに、当該両端面2f,P1の硬度が同一(同一ポイント値)であってもよい。なお、これらの各端面の硬度は、全て異なっていてもよいし、全てあるいはその一部が同一となっていてもよい。
また、上述した本実施形態においては、内輪2aの端面2e及び後ろ蓋Fの端面F1の硬度差を20ポイント以下に設定し、内輪2bの端面2f及び油切りPの端面P1の硬度差を20ポイント以下に設定したが、当該内輪2aの端面2e及び後ろ蓋Fの端面F1の硬度差のみ、若しくは当該内輪2bの端面2f及び油切りPの端面P1の硬度差のみを20ポイント以下に設定してもよい。ただし、軸受装置において、後述するフレッチング摩耗を抑制、並びに防止する効果を最大限に発揮させるためには、上述した本実施形態のように、内輪2aの端面2e及び後ろ蓋Fの端面F1の硬度差、並びに内輪2bの端面2f及び油切りPの端面P1の硬度差をそれぞれ20ポイント以下に設定することが好ましい。
さらに、図4に示す構成のように、第1の内輪2aと第2の内輪2bとの間に内輪間座14を介在させた場合、上述した内輪2a,2b、後ろ蓋F及び油切りPの当接端面に加えて、内輪2aの端面2c及び内輪間座14の端面14aの硬度差を20ポイント以下に設定するとともに、内輪2bの端面2d及び内輪間座14の端面14bの硬度差を20ポイント以下に設定すればよい。
この場合、上記当接する端面同士の硬度差を20ポイント以下に設定するためには、互いに当接する内輪間座14の端面14aと内輪2aの端面2cのうち、より小さい方の硬度を大きい方の硬度の20ポイント以内となるように上げればよい。同様に、互いに当接する内輪間座14の端面14bと内輪2bの端面2dのうち、より小さい方の硬度を大きい方の硬度の20ポイント以内となるように上げればよい。例えば、内輪間座14の端面14a,14bの硬度を上げる(大きくする)ためには、一例として、上述した後ろ蓋F及び油切りPの場合と同様に、内輪間座14に対し、所定の熱処理を施し、焼入れを行えばよい。
ここで、以上のような構成を成す本実施形態に係る軸受装置は、鉄道車両の重量に相当する非常に大きな荷重(特に、ラジアル荷重)を負荷するため、上述した従来の鉄道車両用の軸受装置の場合と同様に、軸受装置に対して曲げモーメントがかかり、車軸Sが撓む場合がある。同様に、軸受装置に対して、鉄道車両の重量が車軸Sと直角方向(ラジアル方向)に負荷された場合(図1(a)の矢印Fc)、当該車軸Sの撓みは大きくなり、さらに、かかる撓みは、当該車軸Sの軸端Stへ向かうに従って大きくなる。
このように車軸Sが撓んだ場合、図1(a),(b)に示す構成においては、内輪2a,2b、後ろ蓋F及び油切りPがそれぞれラジアル方向へ変位し、図4に示す構成においては、これらに加えて、内輪間座14もラジアル方向へ変位する。特に、車軸Sが大きく撓んだ場合、内輪2b及び油切りP、あるいは内輪間座14と比べ、内輪2a及び後ろ蓋Fがそれぞれ大きく変位する。
さらに、図1(a),(b)に示す構成において、後ろ蓋Fは、その大径側内周面F4を車軸Sの外周面大径部S2に当接させるとともに、その内周中間部F6を当該車軸Sの外周面段差部S1に当接させて、当該車軸Sに外嵌固定されている。これに対し、内輪2aは、その内周面2gを車軸Sの外周面小径部S3に当接させて、当該車軸Sに外嵌固定されている。このため、車軸Sが大きく撓んだ際における後ろ蓋Fと内輪2aのそれぞれのラジアル方向への変位量は、後ろ蓋Fよりも内輪2aの方が大きい。
例えば、図3に示すように、内輪2aは、その端面2eの中心点O2が後ろ蓋Fの端面F1の中心点Ofに対してδrだけラジアル方向へずれるように、その位置が変位する(同図においては、中心点O2が中心点Ofに対してδrだけ下側にずれた状態を示す)。このように内輪2aと後ろ蓋Fが、相互に当接する端面2e,F1の中心点O2,Ofがずれた状態で車軸Sとともに回転すると、当該内輪2aの端面2eと当該後ろ蓋Fの端面F1との間には、周速差(内輪2a(端面2e)の周速度<後ろ蓋F(端面F1)の周速度)が生じ、当該両端面2e,F1には、常に一定の微小滑りが発生する。なお、角速度をω(rad/sec)とした場合、後ろ蓋Fの端面F1の周速度をv1とすると、v1=rωとなり、内輪2aの端面2eの周速度をv2とすると、v2=(r−δr)ωとなって、周速差V(V=v1−v2)は、δrωとなる。
ところで、上記微小滑りはその滑り量が小さいため、当該微小滑りによって内輪2aの端面2e及び後ろ蓋Fの端面F1において摩耗(フレッチング摩耗)が生じる場合、当該フレッチング摩耗はマイルド摩耗状態となり、これによって発生するフレッチング金属粉が酸化された状態となる。このように酸化されたフレッチング金属粉は、その硬度が内輪2aの端面2e及び後ろ蓋Fの端面F1の硬度よりも大きく、当該端面2e,F1において、アブレシブ摩耗を引き起こし、フレッチング摩耗をさらに進行させてしまう場合がある。
しかしながら、上述した本実施形態においては、後ろ蓋Fの端面F1及び当該端面F1に当接する内輪2aの端面2eの硬度の差を20ポイント以下に設定することで、当該後ろ蓋Fの端面F1及び当該内輪2aの端面2eの耐摩耗性の向上、特に、端面F1の端面2eに対する耐摩耗性の向上を図ることができる。これにより、内輪2aの端面2eと後ろ蓋Fの端面F1との間で、上述したような微小滑りが発生した場合であっても、当該両端面2e,F1において、フレッチング摩耗が発生することを有効に抑制することができるとともに、防止することができる。
その反面、後ろ蓋Fの端面F1及び内輪2aの端面2eの硬度差が20ポイントより大きい場合は、より硬度の大きな一方の端面(例えば、内輪2aの端面2e)が、他方の端面(例えば、後ろ蓋Fの端面F1)に食い込み、当該一方の端面が他方の端面を削ってしまうことがある。また、フレッチング金属粉がより硬度の小さな一方の端面(例えば、後ろ蓋Fの端面F1)に食い込み、他方の端面(例えば、内輪2aの端面2e)を削ってしまうことがある。すなわち、上述したフレッチング摩耗、ひいては、アブレシブ摩耗を引き起こすことにつながる。
したがって、本発明のように、油切りPの端面P1及び当該端面P1に当接する内輪2bの端面2fの硬度の差を20ポイント以下に設定することで、当該油切りPの端面P1及び当該内輪2bの端面2fの耐摩耗性の向上、特に、端面P1の端面2fに対する耐摩耗性の向上を図ることができる。これにより、内輪2bの端面2fと油切りPの端面P1との間で、上述したような微小滑りが発生した場合であっても、当該両端面2f,P1において、フレッチング摩耗が発生することを有効に抑制することができるとともに、防止することができる。
さらに、図4に示す構成においては、内輪間座14の端面14a,14b及び当該端面14a,14bに当接する内輪2a,2bの端面2c,2dの硬度の差を20ポイント以下に設定することで、当該内輪間座14の端面14a,14b及び当該内輪2a,2bの端面2c,2dの耐摩耗性の向上、特に、端面14a,14bの端面2c,2dに対する耐摩耗性の向上を図ることができる。これにより、内輪2a,2bの端面2c,2dと内輪間座14の端面14a,14bとの間で、上述したような微小滑りが発生した場合であっても、当該両端面2f,P1において、フレッチング摩耗が発生することを有効に抑制することができるとともに、防止することができる。
ここで、本実施形態に係る軸受装置における内輪2(内輪2a,2b)、後ろ蓋F及び油切りP、あるいは内輪間座14に対するフレッチング摩耗防止効果について試験を行い、検証した。当該試験内容及び試験結果について、以下、説明する。
当該試験においては、図5に示すような試験装置を用いて、所定の大きさの環状を成して構成された2つの部材を試料として用いた。このうち、1つは、内輪2に相当する部材(テストリングTr)とし、もう1つは、後ろ蓋F及び油切りP、あるいは内輪間座14に相当する部材(テストピースTp)とした。試験に当たっては、まず、テストリングTr及びテストピースTpをその一端面r1,p1同士が相互に当接するように配置し、次いで、当該当接端面r1,p1に対して、所定の大きさの荷重Tfを負荷して面圧を加えるとともに、所定の回転滑りを発生させた状態で、当該テストリングTr及び当該テストピースTpを所定速度で、所定時間だけ回転させた。そして、試験終了後のテストピースTpの当接端面p1における摩耗量を測定した。
なお、図5に示す試験装置においては、一例として、テストリングTrは、回転軸Tsに係合固定されており、テストピースTpは、回転軸Tsに係合固定された取付台Ttの上に、その端面p1が当該テストリングTrの端面r1と当接可能な所定位置へ取り付けられている。これにより、テストリングTr及びテストピースTpは、回転軸Tsとともに回転するように構成されている。
また、試験中は、弾性体(コイルばね)Tcの弾性力によって、回転軸Tsを介して所定の大きさの荷重Tfを加えることで、テストリングTr及びテストピースTpの当接端面r1,p1に対して面圧を加えた。
具体的には、テストリングTrの端面r1との硬度差が略10ポイント、40ポイント及び60ポイントとなるように、その端面p1の硬度をそれぞれ設定した3種類のテストピースTpを上述した試験装置に取り付け、それぞれ所定個数のテストピースTpに対して試験を行い、試験後の各テストピースTpの端面p1の摩耗量を測定した。なお、本発明に係る後ろ蓋F及び油切りP、あるいは内輪間座14に相当するテストピースTpとしては、炭素含有量が0.35%以上の炭素鋼で構成された試料を適用し、かかる試料に対して、高周波焼入れを施したものを使用した。
図6(a)には、上述した試験の結果が示されている。図6(a)から明らかなように、テストリングTr及びテストピースTpの当接端面r1,p1の硬度差が小さくなるに従って、当該テストピースTpの端面p1の摩耗量は減少した。この場合、当該硬度差を略20ポイントに設定した場合、当該硬度差が60ポイントのテストピースTpの端面p1の摩耗量(40μm)と比較して、約37%、40ポイントのテストピースTpの端面p1の摩耗量(30μm)と比較して、約50%の摩耗量(15μm)となった。特に、当該硬度差を10ポイント以下に設定した場合、60ポイント及び40ポイントのテストピースTpの端面p1の摩耗量と比較して、それぞれ25%以下及び30%以下の摩耗量(10μm)となり、そのフレッチング摩耗防止効果が非常に高いことが確認できた。
このように、テストリングTr及びテストピースTpの当接端面r1,p1の硬度差を20ポイント以下とすること、すなわち、軸受装置における内輪2a及び後ろ蓋Fの当接端面2e,F1の硬度差を20ポイント以下、さらには10ポイント以下とすることで、当該端面2e,F1におけるフレッチング摩耗に対して、優れた防止効果が得られることが確認できた。同様に、軸受装置における内輪2b及び油切りPの当接端面2f,P1の硬度差、並びに内輪2a,2b及び内輪間座14の当接端面2c,2d,14a,14bの硬度差をそれぞれ20ポイント以下、さらには10ポイント以下とすることで、当該各端面2f,P1,2c,2d,14a,14bにおけるフレッチング摩耗に対して、優れた防止効果が得られることが確認できた。
ここで、実際の軸受装置(一例として、図1(a)に相当する鉄道車両用の軸受装置)におけるフレッチング摩耗防止効果について、当該軸受装置に組み込んだ内輪2a及び後ろ蓋Fに対するフレッチング摩耗の発生量を測定する試験を行うことで実証した。当該試験においては、2種類の軸受装置を用意し、一方を本願発明品に相当する軸受装置(以下、本件軸受装置という)として、内輪2a及び後ろ蓋Fの当接端面2e,F1の硬度差を10ポイント以下に設定し、他方を従来品に相当する軸受装置(以下、従来軸受装置という)として、かかる硬度差を40〜45ポイント程度に設定した。そして、上述した本件軸受装置(4セット)、並びに従来軸受装置(3セット)を、それぞれ鉄道車両が80万km〜120万km走行した場合に相当するだけ回転させ、試験後における内輪2a及び後ろ蓋Fの当接端面2e,F1に生じた相対的なフレッチング摩耗の量を各軸受装置(本件軸受装置及び従来軸受装置)に対してそれぞれ測定した。
図7には、かかる試験の結果が示されており、同図から明らかなようにフレッチング摩耗量は、内輪2a及び後ろ蓋Fの当接端面2e,F1の硬度差を40〜45ポイント程度に設定した従来軸受装置の場合、14μm〜22μm程度であったのに対し、かかる硬度差を10ポイント以下に設定した本件軸受装置の場合、3μm〜8μm程度に抑制された。すなわち、本件軸受装置においては、摩耗量が従来軸受装置の20%〜37%程度に抑制可能であり、そのフレッチング摩耗防止効果が非常に高いことが実証できた。
ところで、軸受装置の後ろ蓋F及び油切りP、あるいは内輪間座14には、防錆効果を高めるため、通常、その表面に対して所定の被膜を形成する表面処理(例えば、リン酸マンガン塩被膜処理など)を施している。この場合、被膜形成処理後の表面が粗くなることがないように、当該処理を施す前にその表面を滑らかにしておくことが好ましい。そこで、後ろ蓋F及び油切りP、あるいは内輪間座14に相当するテストピースTpに対し、被膜形成処理(一例として、リン酸マンガン塩被膜処理)を施す前の事前処理として、その表面粗さを小さくする、すなわち、その表面を滑面状にするための処理を施した上で、当該被膜形成処理(リン酸マンガン塩被膜処理)を施した。そして、その表面の算術平均粗さ(Ra)を略0.3μmRa〜3.5μmRaの範囲の所定値に設定したテストピースTpに対しても、上述と同様の試験を実施し、テストリングTrの端面R1と当接するテストピースTpの端面p1の摩耗量を測定した。
図6(b)には、かかる試験の結果が示されている。図6(b)から明らかなように、テストピースTpの端面p1の粗さが小さくなるに従って、すなわち、端面p1が滑面状になるに従って、当該テストピースTpの端面p1の摩耗量は減少した。この場合、テストピースTpの端面p1の粗さを2.0μmRaに設定した場合、当該粗さが3.5μmRaのテストピースTpの端面p1の摩耗量(35μm)と比較して、約70%の摩耗量(25μm)となった。特に、当該端面p1の粗さを1.0μmRa以下に設定した場合、3.5μmRaのテストピースTpの端面p1の摩耗量と比較して、57%以下の摩耗量(20μm)となり、そのフレッチング摩耗防止効果が非常に高いことが確認できた。
このように、テストピースTpの端面p1の粗さを1.0μmRa以下とすること、すなわち、軸受装置における後ろ蓋Fの端面f1の粗さを1.0μmRa以下とすることで、当該端面f1におけるフレッチング摩耗に対して、優れた防止効果が得られることが確認できた。同様に、軸受装置における油切りPの端面P1の粗さ、並びに内輪間座14の端面14a,14bの粗さをそれぞれ1.0μmRa以下とすることで、当該各端面P1,14a,14bにおけるフレッチング摩耗に対して、優れた防止効果が得られることが確認できた。
なお、上述した本実施形態においては、軸受装置を構成する転がり軸受Aの形式として、内部が密封された円すいころ軸受を適用した場合を想定して説明したが、かかる軸受形式は、特に上述した本実施形態に限定されない。例えば、転がり軸受Aとして、円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受、球面ころ(たる形ころ)軸受、あるいは玉軸受など各種形式の軸受を適用することができる。また、この場合、軸受内部の密封手段の有無も特に限定されず、上述した本実施形態のように、その内部が密封された軸受であってもよいし、その内部が密封されていない軸受であってもよい。
(a)は、本発明の一実施形態に係る鉄道車両用軸受装置の構成例を示す断面図、(b)は、同図(a)の要部拡大断面図。 本発明の一実施形態に係る鉄道車両用軸受装置の後ろ蓋の全体構成例を示す斜視図。 車軸の撓み時における内輪と後ろ蓋との変位量及び微小滑りを説明するための図。 第1の内輪と第2の内輪との間に内輪間座を介在させた鉄道車両用軸受装置の構成例を示す要部拡大断面図。 本発明の一実施形態に係る鉄道車両用軸受装置のフレッチング摩耗防止効果を検証するための試験装置の全体構成例を示す斜視図。 本発明の一実施形態に係る鉄道車両用軸受装置のフレッチング摩耗防止効果の検証試験結果を示す図であって、(a)は、テストリングとテストピースとの硬度差に対する当該テストピースの当接面の摩耗量の関係を示す図、(b)は、テストピースの表面粗さに対する当該テストピースの当接面の摩耗量の関係を示す図。 本発明の一実施形態に係る鉄道車両用軸受装置のフレッチング摩耗防止効果について、実際の鉄道車両用軸受装置を用いて比較検証した試験結果を示す図。
符号の説明
2(2a,2b) 回転輪(内輪)
2e,2f 内輪端面
4 静止輪(外輪)
6a,6b 転動体(ころ)
A 転がり軸受
F 位置決め部材(後ろ蓋)
F1 後ろ蓋端面
P 位置決め部材(油切り)
P1 油切り端面
S 車軸

Claims (2)

  1. 各種車両の車軸を回転自在に軸支し、複数の転動体を介して相対回転可能に対向配置された静止輪及び回転輪を有する転がり軸受と、回転輪を軸方向に位置決めするための環状の位置決め部材とを具備する車両用軸受装置であって、
    位置決め部材と回転輪とは、対向する軸方向の端面同士が相互に当接し、車軸とともに回転可能に配置されており、当該位置決め部材の端面及び当該端面に当接する回転輪の端面の各ロックウェル硬さのCスケールに基づく硬度の差が、20ポイント以下に設定されていることを特徴とする車両用軸受装置。
  2. 位置決め部材は、後ろ蓋、油切り及び間座のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の車両用軸受装置。
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