JP2024038948A - 軸受密封装置および車両用軸受装置 - Google Patents

軸受密封装置および車両用軸受装置 Download PDF

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Dongkelong Ai
智洋 水貝
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智也 坂口
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力 大木
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Abstract

【課題】泥水などが浸入する環境下でも耐三元アブレシブ摩耗性に優れ、密封性能を向上できる軸受密封装置および車両用軸受装置を提供する。【解決手段】軸受密封装置11は、外輪および内輪の間に装着され軸受空間を密封し、弾性材料からなるシール部材14と金属製のスリンガ16とを備え、シール部材14は、メインリップ14bと、メインリップ14bよりも外側に設けられるサイドリップ14cとを有し、各リップ14b、14cが所定の締め代をもってスリンガ16に接触し、スリンガ16においてメインリップ14bおよびサイドリップ14cと摺接する部分の硬さHRCが10より大きい。【選択図】図3

Description

本発明は、軸受密封装置および車両用軸受装置に関し、具体的には、自動車関連分野におけるハブベアリングの密封装置およびハブベアリングに関する。
自動車関連分野や一般産業機械分野などに用いられる軸受では、軸受内部の空間を密封する密封装置が用いられており、例えばハブベアリングの密封装置などが知られている。このような密封装置は、軸受空間に封入されたグリースの漏洩を防止するとともに、外部からの塵埃、水、水蒸気、泥水などの軸受内部への侵入を防止するために用いられている。近年の技術の進歩に伴い、密封装置は、密封性能が求められる他に、低トルク、長寿命など様々な性能が求められている。
軸受密封装置としては、例えば、外輪および内輪のいずれか一方の軌道輪に嵌合されるスリンガと、該スリンガに摺接するシール部材とを有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。このような軸受密封装置において、例えば、シール部材は芯金に取り付けられ、リップによってスリンガの表面に摺接する。
特開2020-101235号公報
軸受密封装置は、清浄な環境下では密封性能を十分に発揮しやすい。しかしながら、例えば、ハブベアリングは屋外で使用され、時には多量の塵埃に曝され、また、雨水や洗車時の水、凍結防止剤などがかかることがある。さらに場合によっては、泥水に浸漬した状況で使用されることがある。このような状況では、塵埃や水などがハブベアリング内に侵入しやすく、十分な密封性能が得られないことがある。
密封性能の低下の一因としては、密封装置の接触部に硬質粒子(砂塵、塵埃)が侵入し、弾性部材であるリップおよびスリンガを攻撃する、いわゆる三元アブレシブ摩耗が接触部で起きることが考えられる。三元アブレシブ摩耗が起きると、接触部におけるリップの締め代が急速に減少し、かつ、リップとスリンガの接触幅が急速に増加する。その結果、接触部での面圧が急速に低下し、密封性能が低下するおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、リップをスリンガに摺接させて軸受空間を密封する軸受密封装置において、泥水などが浸入する環境下でも耐三元アブレシブ摩耗性に優れ、密封性能を向上できる軸受密封装置および車両用軸受装置を提供することを目的とする。
本発明の軸受密封装置は、外輪および内輪の間に装着され軸受空間を密封する軸受密封装置において、上記軸受密封装置は、弾性材料からなるシール部材と金属製のスリンガとを備え、上記シール部材は、第1のリップと、該第1のリップよりも外側に設けられる第2のリップとを有し、各リップが所定の締め代をもって上記スリンガに接触し、上記スリンガにおいて上記第1のリップおよび上記第2のリップと摺接する部分の硬さHRCが10より大きいことを特徴とする。
上記第2のリップの初期の平均面圧は、上記第1のリップの初期の平均面圧よりも小さいことを特徴とする。
リップの初期の相手部材に対する平均面圧Pは、下記の式(1)より算出できる。
平均面圧P=F/A・・・(1)
F:リップ全周における相手部材に対する反力(=緊迫力)、A:リップの接触面積
上記の式(1)中、リップの反力Fは、解析モデルを用いた解析値や、ロードセルを用いて測定した測定値が用いられる。また、接触面積Aは、下記の式(2)より算出できる。
A=π((r+W)-r)・・・(2)
π:円周率、r:リップの接触円の内径、W:接触幅
リップの接触幅Wは、リップの反力Fの解析と同一モデルの解析モデルを用いた解析値や、光学顕微鏡を用いて測定した測定値が用いられる。
上記第2のリップの締め代は、上記第1のリップの締め代よりも大きいことを特徴とする。
上記スリンガにおいて上記第1のリップおよび上記第2のリップと摺接する部分の硬さHRCが15~45であることを特徴とする。
上記スリンガは、上記内輪に嵌合されるスリーブと、該スリーブから径方向外側に広がるフランジとを有し、上記第1のリップおよび上記第2のリップはそれぞれ、上記スリンガの上記フランジに摺接することを特徴とする。
上記第1のリップと上記第2のリップの間にグリースが封入されていることを特徴とする。
本発明の車両用軸受装置は、自動車の車輪を回転支持する車両用軸受装置であって、軸受空間を密封する軸受密封装置を有し、上記軸受密封装置が本発明の軸受密封装置であることを特徴とする。
本発明の軸受密封装置は、弾性材料からなるシール部材と金属製のスリンガとを備え、シール部材は、第1のリップ(例えばメインリップ)と、該第1のリップよりも外方側に位置する第2のリップ(例えばサイドリップ)とを有し、各リップが所定の締め代をもってスリンガに接触し、スリンガにおいて第1のリップおよび第2のリップと摺接する部分の硬さHRCが10より大きい(例えば15~45)ので、各リップとスリンガとの接触部に泥水などが浸入する環境下でも、スリンガの摩耗速度を抑えることができる。これにより、耐三元アブレシブ摩耗性に優れ、密封性能を向上させることができる。
第2のリップの初期の平均面圧は、第1のリップの初期の平均面圧よりも小さいので、第2のリップに比べて第1のリップの摩耗が速くなるが、第2のリップが残存することから、例えば、第1のリップと第2のリップの間に封入されたグリースを保持しやすくなる。また、第2のリップの締め代は、第1のリップの締め代よりも大きいので、グリースの保持性に優れるとともに、耐水性にも優れる。
第1のリップと第2のリップの間にグリースが封入されているので、接触部にグリースが供給されやすく、スリンガの摩耗速度を一層抑えることができる。
本発明の軸受密封装置が適用されるハブベアリングの一例を示す縦断面図である。 本発明の軸受密封装置の構成部材を示す拡大端面図である。 本発明の軸受密封装置を示す拡大断面図である。 スリンガの一例を軸方向に沿って見た平面図である。 泥水浸入試験機の模式図である。 スリンガの硬さと泥水浸入までの運転時間などの関係を示すグラフである。 接触部の顕微鏡画像と断面形状の例を示す図である。 スリンガの硬さと接触部の摩耗速度などの関係を示すグラフである。 各リップの締め代と緊迫力との関係を示すグラフである。
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は、本発明の軸受密封装置を有する車両用軸受装置の一例としてハブベアリングを示す縦断面図である。図1に示すハブベアリングは、車軸を回転可能に支持する駆動輪側の車軸用軸受装置でもある。
図1に示すように、ハブベアリング1は、外周に車体(図示省略)に取り付けられる車体取付フランジ2bを一体に有し、内周に複列の外側軌道面2a、2aが形成された外方部材(外輪)2と、一端部に車輪(図示省略)が取り付けられる車輪取付フランジ4bを一体に有し、外周に上記複列の外側軌道面2a、2aに対向する一方の内側軌道面4a、および該内側軌道面4aから軸方向に延びる円筒状の小径段部4cが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション6が形成されたハブ輪4と、小径段部4cに圧入され、外周に他方の内側軌道面5aが形成された内輪5とを備えている。
回転側部材となる内方部材3は、内側軌道面4a、5aを有し、固定側部材となる外方部材2は、複列の外側軌道面2a、2aを有する。複列の外側軌道面2a、2aと、これらに対向する内側軌道面4a、5a間には複列の転動体(ボール)7が保持器8によって転動自在に収容されている。また、ハブ輪4と内輪5とからなる内方部材3と、外方部材2との間に形成される環状空間には軸受密封装置11、18がそれぞれ装着され、軸受空間9に封入されたグリースの漏洩と、外部から雨水やダストなどが軸受空間9に侵入するのを防止している。
アウトボード側(図中左側)の軸受密封装置18は、外方部材2に内嵌され、円環状に形成された芯金19と、この芯金19に一体に加硫接着されたシール部材20とからなる。シール部材20はニトリルゴムなどの弾性部材からなり、2本のシールリップ20b、20cと単一のシールリップ20aを備え、それぞれの先端縁をハブ輪4の表面、具体的には、車輪取付フランジのインボード側基部の円弧状に形成された摺接面に直接摺接させている。
一方、図1において、インボード側(図中右側)の軸受密封装置11が本発明の軸受密封装置である。詳細については、図2および図3を用いて説明する。
まず、図2に、軸受密封装置の構成部材であるシールリングとスリンガ部材をそれぞれ示す。図2において、各部材は、軸受密封装置の組み立て前の状態を示す。図2は、環状のシールリングとスリンガ部材をそれぞれ軸方向で切断した切断面を示しており、図2(a)がシールリングを示し、図2(b)がスリンガ部材を示す。これらは環状であるが、図2においては、その上側部分のみを示している。
図2(a)に示すように、シールリング12は、外方部材に内嵌され、断面L字状に形成された芯金13と、この芯金13に一体に加硫接着されたシール部材14を有する。シール部材14はゴムなどの弾性部材からなり、内側から順に、グリースリップ14a、メインリップ14b、サイドリップ14cを有している。メインリップ14bが本発明の第1のリップに相当し、サイドリップ14cが本発明の第2のリップに相当する。本発明の軸受密封装置において、軸受空間側を内側(密封側ともいう)、反対側を外側(大気側ともいう)という。
グリースリップ14aは、主に軸受空間内部からのグリースの流出を防止する役割を担い、径方向内側かつ軸受空間内側に向かって斜めに延びている。一方、メインリップ14bおよびサイドリップ14cは、主に外部から軸受空間内部への異物の流入を防止する役割を担っている。メインリップ14bおよびサイドリップ14cは、途中で屈曲して、先端が径方向外側かつ軸受空間外側に向かって斜めに延びている。
図2(a)において、各リップの長さは、グリースリップ14a、メインリップ14b、サイドリップ14cの順に長くなるように形成されている。なお、メインリップ14bおよびサイドリップ14cのリップ長さはそれぞれ、屈曲した箇所から先端までの長さである。例えば、各リップの幅は、メインリップ14bの方が、サイドリップ14cよりも大きく(幅広)なっている。
図2(b)に示すように、スリンガ部材15は、内輪に外嵌され、断面L字状に形成されたスリンガ16と、スリンガ16に一体に接着された弾性部材17とを有する。また、スリンガ16は、内輪に嵌合されるスリーブ16aと、スリーブ16aから径方向外側に広がるフランジ16bとを有する。スリンガ16の材質は特に限定されないが、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系など)、マルテンサイト系ステンレス鋼鈑(SUS440C系など)、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系など)などを用いることができ、これらをプレス加工にて形成される。これらの中でも、マルテンサイト系ステンレス鋼鈑が好ましく、耐食性の点から、熱処理したマルテンサイト系ステンレス鋼鈑がより好ましい。なお、シールリング12の芯金13も同様の材質を用いることができる。
次に、図3に軸受密封装置の拡大断面図を示す。軸受密封装置11は外方部材(外輪)と内輪との間に装着される。軸受密封装置11は、メインリップ14b、サイドリップ14cが所定の締め代をもってスリンガ16に接触するように装着される。図3では、メインリップ14b、サイドリップ14cは所定の軸方向締め代をもってスリンガ16のフランジ16bに接触する。なお、図3において、変形前のメインリップ14b、サイドリップ14cをそれぞれ点線で示している。また、グリースリップ14aは所定の径方向締め代をもってスリンガ16のスリーブ16aに接触する。
本発明では、スリンガ16においてメインリップ14bおよびサイドリップ14cと摺接する部分の硬さHRC(JIS Z 2245)が10より大きいことを特徴としている。図3では、例えば、スリンガ16のフランジ部16bの内側面の硬さHRCが10より大きくなっている。これらリップ14b、14cが摺接する部分の硬さHRCを10より大きくすることで、リップ14b、14cとスリンガ16の接触部に硬質粒子が侵入して、スリンガ16を攻撃するような場合であっても、スリンガ16の摩耗速度を低下させることができる。なお、三元アブレシブ摩耗においては、スリンガ16の摩耗速度がより支配的であることから、スリンガ16の硬さHRCを規定することで、接触部の摩耗速度を効果的に抑えることができる。その結果、実施例で示すように、泥水浸入試験において、泥水が浸入するまでの運転時間を長くすることができる。
スリンガ16においてメインリップ14bおよびサイドリップ14cと摺接する部分の硬さHRCは15~70が好ましい。具体的には、上記硬さHRCは15~45であってもよく、15~30であってもよく。また、後述の実施例に示すように、硬さHRCを増大させることで摩耗速度を一層抑えられる傾向があることから、その観点では上記硬さHRCは50~70が好ましい。
スリンガ16においてメインリップ14bおよびサイドリップ14cと摺接する部分の表面粗さは特に限定されないが、例えばRa0.05~0.20μmである。
なお、スリンガ16において、グリースリップ14aが摺接する部分の硬さHRCについては、特に限定されないが、硬さHRC10より大きいことが好ましく、また、メインリップ14bおよびサイドリップ14cと摺接する部分と同程度の硬さHRCとしてもよい。
スリンガ16において、硬さHRCを所望の範囲にするための方法は特に限定されないが、例えば、浸炭処理、浸炭窒化処理、高周波焼入れなどの各種熱処理を適用できる。上記硬さHRCについては、少なくとも表面が所望の硬さであればよく、内部も所望の硬さであってもよい。
スリンガ16の摩耗速度をより抑える観点から、図3に示すように、メインリップ14bとサイドリップ14cと相手部材であるスリンガ16との間に形成される空間Sにグリースgが封入されていることが好ましい。この空間Sは環状に形成される。これにより、接触部にグリースgを供給しやすくなることから、スリンガ16の摩耗速度を一層抑えることができる。空間Sにグリースを封入する方法としては、特に限定されず、例えば、メインリップ14bの先端外側や、サイドリップ14cの先端内側にグリースを塗布することなどが挙げられる。また、2つのリップの間にスポット状に塗布してもよい。
ここで、グリースgをより長期に保持する(グリース漏れを抑制する)構成として図4を用いて説明する。図4は、スリンガの一例をスリーブ側から軸方向に沿って見た平面図である。スリンガにおいて、リップと摺接するスリンガの表面は、例えば研削などの加工によって凹凸が生じ、加工目が生じる場合がある。その場合、グリース保持の観点から、スリンガの回転方向と反対向きの加工目を形成することが好ましい。例えば図4において、スリンガ16が反時計周り(回転方向X)に回転するとした場合、スリンガ16のフランジ16bの表面に、回転方向Xとは反対側に向かって外径側から内径側にかけて加工目16cが形成される。図4では、スパイラル状に加工目16cが形成されている。このように、スリンガ16の回転方向に対して加工目が交差するように形成されるとよい。また、スリンガ16において、フランジ16bに限らず、スリーブ16aに上記のような加工目が形成されてもよい。なお、スリンガ16が両方向に回転する場合、ここでは、主に回転する方向を回転方向とする。
また、図3に示すように、グリースリップ14aとメインリップ14bとスリンガ16との間に形成される空間にもグリースgが封入されていてもよい。
空間Sに封入されるグリースgの封入量は、グリースリップ14aとメインリップ14bとスリンガ16との間に形成される空間に封入されるグリースgの封入量以上であることが好ましく、当該グリースgの封入量よりも多くてもよい。
このように、リップ間に封入されるグリースgには、例えば、軸受空間内の潤滑剤として封入されるグリースとは異なるグリースが用いられる。グリースgは、基油と増ちょう剤を含み、必要に応じて、酸化防止剤や防錆剤などの添加剤を含む。グリースgの混和ちょう度(JIS K 2220)は、例えば265~340であり、280~310であってもよい。基油の40℃における動粘度は、例えば10mm/s~120mm/sであり、グリースの自重による偏りを抑制し、グリースが全周においてリップ間でならされやすくするため、100mm/s以下が好ましく、50mm/s以下がより好ましく、30mm/s以下であってもよい。
また、各リップの初期の平均面圧は、適宜設定することができる。メインリップ14bの初期の平均面圧は、特に限定されないが、例えば0.30MPa~0.75MPaであり、0.50MPa~0.75MPaであることが好ましい。また、サイドリップ14cの初期の平均面圧は、例えば0.40MPa~0.70MPaであり、0.40MPa~0.65MPaであることが好ましい。
サイドリップ14cの初期の平均面圧は、メインリップ14bの初期の平均面圧よりも小さいことが好ましい。この関係にすることにより、サイドリップ14cに比べてメインリップ14bの摩耗が速くなるが、サイドリップ14cが残存することから、これらリップ間に封入されたグリースgを保持しやすくなる。
また、メインリップ14bの締め代T、サイドリップ14cの締め代Tは特に限定されないが、例えば0.10mm~1.5mmであり、0.30mm~1.2mmであってもよい。グリースgの保持性の観点では、サイドリップ14cの締め代Tは、メインリップ14bの締め代Tよりも大きいことが好ましい。この場合、例えば、サイドリップ14cの締め代Tは0.60mm~1.2mmであり、メインリップ14bの締め代Tは0.30mm~0.80mmである。
グリースリップ14aの締め代T(図示省略)については、特に限定されないが、メインリップ14bの締め代T、サイドリップ14cの締め代Tの両方よりも小さいことが好ましい。
シール部材14の材質としては、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴムなどが用いられる。これらのゴムは、耐熱性の限界をこえて使用すると、熱劣化し、硬化して弾性が損なわれ、極端な場合はリップにクラックが生じ、シール性能が低下するおそれがある。このため、使用環境(温度)に応じて適宜選択することが好ましい。
本発明の軸受密封装置は、図3の構成に限定されるものではない。例えば、図3では、シール部材14のグリースリップ14aを所定の径方向締め代をもってスリンガ16に接触させる構成としたが、非接触の構成としてもよい。例えば、グリースリップ14aを、スリンガ16のスリーブ16aと僅かな径方向隙間を介して対向するラビリンスシール構造としてもよい。この場合、シールトルクを低減して、車両の燃費向上などを図ることができる。
また、シール部材14において、メインリップ14bが、径方向内側かつ軸受空間外側に向かって延びるように形成されていてもよい。この場合、メインリップ14bがスリンガ16のスリーブ16aに摺接するようにしてもよい。
図3では、シール部材14は3枚リップ構造としたが、4枚以上のリップ構造であってもよい。
図1では、ハブベアリング1の転動体7にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受を例示したが、本発明はこれに限らず、転動体7に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受であってもよい。また、本発明の軸受密封装置が適用されるハブベアリングの構造は、図1の構造に限定されるものではない。
本発明の軸受密封装置は、ハブベアリングに限らず、例えば、自動車の差動歯車機構、ポンプ(ウォータポンプなど)の回転軸の軸受などにも使用することができる。
[試験例1]
図3に示した軸受密封装置と同様の形状の軸受密封装置を3種類準備した。3種類の軸受密封装置として、シールリングには同じものを用い、スリンガ部材にはスリンガの硬さが異なるものを用いた。シールリングのシール部材には、ニトリル(NBR)ゴムを用いた。当該シールリングに、スリンガ部材を装着して、軸受密封装置を得た。
実施例1は、スリンガ(材質:SUS440C)の硬さHRCが19であり、実施例2は、スリンガ(材質:SUS440C)の硬さHRCが60であり、比較例1は、スリンガ(材質:SUS430)の硬さHRCが10である。実施例2のスリンガは、実施例1のスリンガを熱処理したものである。なお、スリンガの表面粗さはRa0.13とした。
この試験の初期(試験前)において、サイドリップの締め代は0.90mm、メインリップの締め代は0.50mm、グリースリップは非接触の形態とした。また、サイドリップの緊迫力は3.932N、メインリップの緊迫力は4.160Nであり、サイドリップの平均面圧は0.55MPa、メインリップの平均面圧は0.61MPaであった。
図5に示す泥水浸入試験機を用いて、3種類の軸受密封装置による泥水浸入試験を実施した。図5に示すように、泥水中に半分浸漬された場合を想定して密封性試験を実施した。試験機21は、回転軸22と、回転軸22と一体に回転する内輪23と、固定輪である外輪24と、内輪23と外輪24の間の空間を密封する軸受密封装置25と、軸受密封装置25の大気側に位置する収容室26と、収容室26の内部に貯留した泥水27と、泥水27を撹拌するプロペラ28とを有する。図5に示すように、試験機21は、軸受密封装置25を泥水27に半分浸漬させながら所定の回転速度で回転させる構成となっている。そして、軸受密封装置25の寿命となった場合、内部に泥水が浸入し、密封側にある通電センサ29により通電が検出される構成となっている。
試験は以下の条件で行い、泥水の浸入が検出されるまでの時間を測定した。
・回転速度:1100rpm
・軸偏心:0mm狙い
・泥水組成:関東ローム(JIS Z 8901、試験用粉体1の8種)、10質量%
・グリース:(基油:鉱油(40℃における動粘度94.4mm/s)、混和ちょう度289、ウレア系)
・グリース塗布量:サイドリップ0.15g、メインリップ0.15g
スリンガの硬さと泥水浸入までの運転時間の関係を図6(a)に示す。図6(a)に示すように、スリンガが硬くなるにつれて、泥水が浸入するまでの運転時間が長くなった。
続いて、スリンガの硬さと泥水浸入時の接触部の摩耗量の関係を図6(b)に示す。また、泥水浸入時における接触部の顕微鏡画像と断面形状の一例を図7に示す。摩耗量は、図7の左列に示すように、シール(リップ)側では、試験前の断面形状で最も高い点から、泥水浸入時の断面形状で最も高い点までの水平距離として算出した。また、スリンガ側の摩耗量は、図7の右列に示すように、摩耗していない面から、最も凹んでいる点までの距離として算出した。接触部の摩耗量は、リップ側の摩耗量とスリンガ側の摩耗量の合計である。図6(b)に示すように、スリンガの硬さが変わっても、泥水浸入時の摩耗量(特にメインリップの摩耗量)は、概ね同様であった。つまり、いずれの試験例においても、接触部(特にメインリップとの)が所定量摩耗した時点で泥水が浸入したといえる。
上記接触部の摩耗量を泥水浸入までの運転時間で割って、摩耗速度(μm/h)を算出した。スリンガの硬さと接触部の摩耗速度の関係を図8(a)に示す。スリンガが硬くなるにつれて、接触部の摩耗速度(特にメインリップ側)が低減された。
次に、スリンガの硬さとスリンガの摩耗速度の関係を図8(b)に示す。スリンガが硬くなるにつれて、スリンガの摩耗速度が低減された。具体的には、実施例1、2の軸受密封装置では、スリンガの摩耗速度が0.7μm/h以下であった。接触部の摩耗速度が低減された原因は、主にスリンガの摩耗速度が低減されたためであるといえる。そのため、この試験では、スリンガを所定以上に硬くすることで、スリンガの摩耗速度が低減され、その結果、泥水が浸入するまでの運転時間を延長させることができた。
ここで、図9に、この試験で使用した軸受密封装置のシール部材の各リップの締め代と緊迫力との関係を示す。図9に示すように、締め代の増加に伴って緊迫力が大きくなる。リップの公差範囲は、例えば±0.15mmであるため、メインリップは少なくとも0.15mmの締め代を確保することが好ましい。例えば、サイドリップの締め代の上限値は、サイドリップの緊迫力が急上昇する手前の範囲にすることが好ましく、図9では1.3mm程度である。この場合について、各リップの緊迫力の好適な範囲を表1に示す。また、各リップの初期の平均面圧の好適な範囲を表2に示す。
Figure 2024038948000002
Figure 2024038948000003
[試験例2]
次に、メインリップとサイドリップとの間にグリースが保持されることについて評価した。
試験は、図5に示す泥水浸入試験機を用いて、以下の条件で行い、泥水の浸入が検出されるまでの時間を測定した。結果を表3に示す。
・シール部材:シールA(サイドリップのみ、メインリップとグリースリップを切除)
シールB(サイドリップとメインリップ、グリースリップは非接触)
・スリンガ:スリンガA(硬さHRC19を使用)
スリンガB(硬さHRC60を使用)
・回転速度:1100rpm
・軸偏心:0mm狙い
・泥水組成:関東ローム(JIS Z 8901、試験用粉体1の8種)、10質量%
・グリース:(基油:鉱油(40℃における動粘度94.4mm/s)、混和ちょう度289、ウレア系)
・グリース塗布量:サイドリップ0.15g、メインリップ0.15g
Figure 2024038948000004
表3に示すように、シール部材にシールBを用いた場合は、スリンガの摩耗速度が低減され、泥水が浸入するまでの運転時間が長くなった。具体的には、シールBの運転時間は、シールAより約25倍長く、シールBのスリンガの摩耗速度は、シールAより大幅に遅くなった。シールAの場合はリップ1枚のみであり、グリースを塗布しても、運転した際に、遠心力やグリースの自重により、接触部にグリースを長期保持することが困難である。一方、シールBではリップ2枚で、サイドリップとメインリップの空間内にグリースが封鎖されることで、接触部にグリースを常に供給することが可能である。
このように、本実施例に係る軸受密封装置は、スリンガの摩耗速度を抑えることができ、耐三元アブレシブ摩耗性に優れ、泥水が浸入するまでの運転時間を大幅に延長でき、その結果、密封性を向上することができた。
本発明の軸受密封装置は、泥水などが浸入する環境下でも耐三元アブレシブ摩耗性に優れ、密封性能を向上できるので、グリースを軸受空間内に密封する密封型の転がり軸受の軸受密封装置として広く利用できる。
1 ハブベアリング(車両用軸受装置)
2 外方部材(外輪)
3 内方部材
4 ハブ輪
5 内輪
6 セレーション
7 転動体
8 保持器
9 軸受空間
11 軸受密封装置(インナー側)
12 シールリング
13 芯金
14 シール部材
15 スリンガ部材
16 スリンガ
16a スリーブ
16b フランジ
16c 加工目
17 弾性部材
18 軸受密封装置(アウター側)
19 芯金
20 シール部材
20a~20c シールリップ
21 試験機
22 回転軸
23 内輪
24 外輪
25 軸受密封装置
26 収容室
27 泥水
28 プロペラ
29 通電センサ
g グリース

Claims (7)

  1. 外輪および内輪の間に装着され軸受空間を密封する軸受密封装置において、
    前記軸受密封装置は、弾性材料からなるシール部材と金属製のスリンガとを備え、
    前記シール部材は、第1のリップと、該第1のリップよりも外側に設けられる第2のリップとを有し、各リップが所定の締め代をもって前記スリンガに接触し、前記スリンガにおいて前記第1のリップおよび前記第2のリップと摺接する部分の硬さHRCが10より大きいことを特徴とする軸受密封装置。
  2. 前記第2のリップの初期の平均面圧は、前記第1のリップの初期の平均面圧よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の軸受密封装置。
  3. 前記第2のリップの締め代は、前記第1のリップの締め代よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2記載の軸受密封装置。
  4. 前記スリンガにおいて前記第1のリップおよび前記第2のリップと摺接する部分の硬さHRCが15~45であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の軸受密封装置。
  5. 前記スリンガは、前記内輪に嵌合されるスリーブと、該スリーブから径方向外側に広がるフランジとを有し、前記第1のリップおよび前記第2のリップはそれぞれ、前記スリンガの前記フランジに摺接することを特徴とする請求項1または請求項2記載の軸受密封装置。
  6. 前記第1のリップと前記第2のリップの間にグリースが封入されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の軸受密封装置。
  7. 自動車の車輪を回転支持する車両用軸受装置であって、
    軸受空間を密封する軸受密封装置を有し、前記軸受密封装置が請求項1または請求項2記載の軸受密封装置であることを特徴とする車両用軸受装置。
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