JP2008062589A - ポリ乳酸系離型フィルム - Google Patents
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Abstract
生分解性を有し、且つ耐熱性に優れる離型フィルムを開発することを目的とする。
【解決手段】
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に離型層を設けてなることを特徴とするポリ乳酸系離型フィルムに関する。
【選択図】図1
Description
一方、近年、離型フィルムを使用した後の不要となったフィルムの廃棄において、環境意識の高揚や、廃棄物処理問題から焼却処分の必要のない生分解性離型フィルムへの要求が高まりつつある。この要求に対して、従来から離型フィルムの支持体として使用されてきた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムは生分解性が無く、焼却処分せざるを得ない状況にある。これに対し、ポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリエステル系フィルムは、自然環境下に棄却された場合に分解すること(例えば、ポリ乳酸フィルムは土壌中において自然に加水分解したのち微生物によって無害な分解物となること)を主眼にして開発されてきた。
かかる生分解性を有するポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルからなる二軸延伸フィルムを離型フィルムに用いることが種々提案されている(例えば、特許文献1)。
本発明のポリ乳酸系離型フィルムを構成する成分に係わるポリ乳酸系組成物の1成分であるポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物からなる層あるいは当該層を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
<ポリ−D−乳酸>
本発明のポリ乳酸系離型フィルムを構成する成分に係わるポリ乳酸系組成物の1成分であるポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物からなる層あるいは当該層を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
本発明のポリ乳酸系離型フィルムに係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下、好ましくは0.1以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムである。
<ポリ乳酸系組成物>
本発明に係わる上記特性を有するポリ乳酸系延伸フィルムを得るには、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物として、以下の熱融解特性を有するポリ乳酸系組成物を用意して、延伸することが好ましい。
さらに、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、そのDSCの第2回昇温時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)において得られたDSC曲線の150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)のピーク比(ピーク10/ピーク20)が好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下であるという熱特性を有することが望ましい。これは、この組成物がステレオコンプレックス晶を選択的に形成しているためと考えられる。
ピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5より大きいと、結晶化後にPLLA、PDLA単体結晶の形成量が大きく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが十分に混練されていないので、結晶化後のα晶(PLLAあるいはPDLAの単独結晶)の形成量が大きいため、延伸しても耐熱性に劣る虞がある。
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCの第2回昇温時における205〜240℃の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が35J/g以上であることが好ましい。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、前記ポリ乳酸系延伸フィルムの熱融解特性を求めた方法と同様な方法で、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠して求めた。なお、ポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、降温時と第2回昇温時における特性を求めた。
PLLAの量が上記範囲外の組成物は上述の方法で混練しても、得られる組成物を延伸してなるフィルムはα晶の結晶体を含み、耐熱性が不十分となる虞がある。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物が耐熱性に優れるのは、当該組成物がステレオコンプレックス構造を形成しており、ステレオコンプレックス構造はPLLAとPDLAの等量から構成されるためであると考えられる。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物を得るために、PLLAとPDLAを溶融混練するときの温度は、好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物を用いて、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、さらに好ましくは3〜6倍延伸することにより、耐熱性、透明性に優れる延伸フィルムが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
本発明のポリ乳酸系離型フィルムに係わる離型層は、種々公知の重合体(樹脂)、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどから形成されるが、特にシリコーン樹脂からなる層が好ましい。
本発明に係わる離型層として、例えばシリコーン樹脂を用いた場合、その離型層は、例えば硬化性シリコーン樹脂を含む塗液をポリ乳酸延伸フィルムの表面に塗布し、乾燥、硬化させることにより形成することができる。
硬化性シリコーン樹脂としては、例えば付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のものなどいずれの反応系のものも用いることができる。
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、前記紫外線の代わりに電子線を用いることもできる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくても、ラジカルによる架橋反応を行うことが可能である。
<ポリ乳酸系離型フィルム>
本発明のポリ乳酸系離型フィルムは、前記熱的特性を有するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に、前記離型層を設けてなる離型フィルムである。
<ポリ乳酸系離型フィルムの製造方法>
本発明のポリ乳酸系離型フィルムは、前記熱的特性を有するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に離型層となる前記重合体、例えば、前記記載の付加反応系、縮合反応系、紫外線硬化系のシリコーン樹脂を樹脂成分とするいずれかの塗布液を塗布し、加熱乾燥、熱硬化または紫外線硬化することにより離型性塗膜を形成することができる。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用でき、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、マイヤーバーなどのバーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等の従来から知られている種々公知の方法を使用することができる。
塗布した後のシリコーン樹脂層の乾燥及び硬化は同時に行うことができ、条件としては乾燥温度が100℃以上で、乾燥時間を20秒以上にすることが好ましい。乾燥温度が100℃未満、及び乾燥時間が20秒未満ではシリコーン樹脂の硬化が不完全であり、重剥離化(目標剥離力に達しない)やシリコーン樹脂層の背面転写(裏移り)の原因となり、好ましくない。
離型層(硬化させたシリコーン樹脂層)の乾燥後の塗布量は、0.05〜0.2g/m2の範囲が好ましい。シリコーン樹脂層の乾燥塗布量が0.05g/m2未満では、剥離性能が低下し、本来の剥離性能が出なくなる傾向がある。また、乾燥塗布量が0.2g/m2を超えると、硬化に時間がかかり生産上不都合が生じる虞がある。
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA―1):
D体量:1.9% Mw:22万(g/モル)、Tm:163℃。
(ロ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―2):
D体量:100.0% Mw:135万(g/モル)、Tm:180℃。
インヘレント粘度(溶媒;クロロホルム、測定温度;25℃、濃度;0.1g/dl):7.04(dl/g)
本発明における測定方法は以下のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を以下の方法で測定した。
測定装置;Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置;データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器;示差屈折検出器(RI)
カラム;Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度;40℃
溶離液;クロロホルム
流速;1.0ml/分
注入量;200μL
分子量校正;単分散ポリスチレン
(2)DSC測定
前記記載の方法で測定した。
(3)透明性
日本電色工業社製 ヘイズメーター300Aを用いてフィルムのヘイズ(HZ)及び平行光光線透過率(PT)を測定した。
(4)表面粗さ
株式会社小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE−30Kを用いてフィルム表面の中心面平均粗さ(SRa)を測定した。
(5)引張り試験
フィルムからMD方向及びTD方向に、夫々短冊状の試験片(長さ:150mm、幅:15mm)を採取して、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。
(6)耐熱性
熱分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 熱・応用・歪測定装置 TMA/SS120)を用いてフィルムから幅4mmの試験片を切り出し、チャック間5mmで試験片に荷重0.25MPaを掛け、100℃(開始温度)から5℃/分で昇温し、各温度における試験片の変形(伸びまたは収縮)を測定した。
(7)広角X線測定
測定装置:X線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200)
反射法
X線ターゲット;Cu K―α
出力;40kV×40mA
回転角;4.0度/分
ステップ;0.02度
走査範囲;10〜30度
(8)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。
(9)酸素透過度
JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。
(10)剥離力
ポリ乳酸系離型フィルムを水平台の上に離型層を上にして載置し、その離型層面に粘着テープ「No.31B」(日東電工(株)製)を貼り付けて200mm×50mmの大きさにカットし、さらにその粘着テープの上から20g/cm2となるように荷重を載せ、70℃で20時間エージングした。
ついで、引張試験機にて引張速度300mm/分で180°剥離を行い、剥離が安定した領域における平均剥離荷重を剥離力[N/50mm]として求めた。
参考例1
PLLA―1:PDLA―2を50:50(重量部)の比で計量し、二軸混練押出機を用い、溶融温度;250℃、混練時間;6分で、溶融混練してポリ乳酸系組成物を得た後、T−ダイシート成形機で、厚さ約300μmのポリ乳酸系組成物からなるシートを得た。かかるポリ乳酸系組成物の熱融解特性を前記記載の方法で測定した。
次に、当該シートをブルックナー社製二軸延伸機で、縦方向に延伸温度;65℃で3倍に、横方向に延伸温度;70℃で3倍に延伸し、テンター内で180℃で約40秒間のヒートセットを行い、ポリ乳酸系延伸フィルムを得た。得られたポリ乳酸系延伸フィルムの物性を前記記載の方法で測定した。測定結果を表1に、熱融解特性を図1及び図2に示す。
参考例2
参考例1で用いたPLLA―1及びPDLA―1に代えて、PLLA―1を単独で用い、二軸延伸フィルムのヒートセットを150℃で約40秒間行う以外は参考例1と同様に行い、PLLA―1のシート及び二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に、熱融解特性を図3及び図4に示す。
表1から明らかなように、参考例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムは、熱融解特性において、150〜200℃の範囲の吸熱ピーク(吸熱量)は僅かで、205〜240℃の範囲の吸熱ピークは大きく、吸熱量(ΔHm)も66.1J/gと多く、降温した際の発熱量(ΔHc)も49.7J/gある。また、二軸延伸フィルムの素材となるポリ乳酸系組成物(シート)の熱融解特性は、第1回降温時の発熱量(ΔHc)が20.3J/gと20J/g以上であり、第2回昇温時には、150〜200℃の範囲には吸熱ピークはみられず、205〜240℃の範囲の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)は51.0J/gと35J/g以上である。さらに、参考例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムは、透明性、耐熱性に優れ、透湿度及び酸素透過度も低く、バリア性能を有し、広角X線測定における回折ピークは2θが12、21、24度近辺にのみ有し、2θが17、19度近辺には回折ピークは現れなかった。また17、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して0%と5%未満であり、2θが12、21、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して51%と20%以上であった。
実施例1
参考例1のポリ乳酸系延伸フィルムの片面にコロナ処理を行い(濡れ調は39ダイン)、当該コロナ面に、シリコーン〔シリコーン 商品名:KS−847(信越化学(株)製)および触媒 商品名:PL−50T(信越化学(株)製)〕のトルエン/メチルエチルケトン(70/30容量比)混合溶媒の溶液をメーヤーNo.4を用いて塗布し、100℃のオーブンで20秒乾燥させ、 0.1g/m2の離型層を形成させ、40℃で数十時間エージングしてポリ乳酸系離型フィルムを得た。ついで、当該ポリ乳酸系離型フィルムを120、140、160℃に加熱した熱ロールに3m/分の速度で通したところ、いずれの温度で通したポリ乳酸系離型フィルムも収縮がなく、美麗であった。
得られたポリ乳酸系離型フィルムの離型層の剥離力は、0.1(N/50mm幅)であるのに対し、離型層を塗布しないポリ乳酸系延伸フィルムの剥離力は10(N/50mm幅)であり、本発明のポリ乳酸系離型フィルムは離型フィルムとしての性能を有していた。
比較例1
参考例2の二軸延伸フィルムの片面にコロナ処理を行い、実施例1と同様な方法で、離型フィルムを得た。ついで、当該離型フィルムを120、140、160℃に加熱した熱ロールに3m/分の速度で通したところ、120及び140℃では、延伸フィルムの収縮が大きくカールが生じた。また160℃では加熱ロールに延伸フィルムが融着した。
実施例2
厚さ25μmのポリ乳酸二軸延伸フィルム(東セロ株式会社製 パルグリーンLC)を用いてA4大の開口部のある溶断シール袋を作製し、当該袋の開口部に粘着テープ「No.31B」(日東電工(株)製)を用いて3mm幅の粘着部分を設け、当該部に実施例1で得られたポリ乳酸系離型フィルムを貼付した。次いで、貼付したポリ乳酸系離型フィルムを手で剥離したところ、容易に剥離できた。また、ポリ乳酸系離型フィルムを剥離した粘着部に、袋の蓋部を折り返して圧着した結果、粘着部は十分な粘着力を維持していることが確認できた。
Claims (11)
- ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に離型層を設けてなることを特徴とするポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、広角X線測定における2θが12度、21度および24度近辺のピーク面積の総和(SSC)が全体の面積に対して20%以上であり、かつ2θが17度および19度近辺のピーク面積の総和(SPL)が全体の面積に対して5%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、250℃で10分間経過後に降温した際の発熱量が20J/g以上のポリ乳酸系組成物を延伸してなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、第2回昇温時における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)とのピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5以下のポリ乳酸系組成物を延伸してなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、第2回昇温時における205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が35J/g以上のポリ乳酸系組成物を延伸してなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系組成物が、ポリ−L−乳酸75〜25重量部及びポリ−D−乳酸25〜75重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部)から調製されてなる請求項1〜7のいずれかに記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、少なくとも一方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムからなる層である請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系離型フィルム。
- ポリ乳酸系延伸フィルムが、140〜220℃で1秒以上熱処理してなる請求項10または10に記載のポリ乳酸系離型フィルム。
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