JP2008031905A - バルブタイミング調整装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関に適したバルブタイミング調整を実現する高耐久のバルブタイミング調整装置を提供すること。
【解決手段】バルブタイミング調整装置1は、印加される磁界に応じて粘度が変化する磁気粘性流体150と、磁気粘性流体150に接触することにより、磁気粘性流体150の粘度に応じたブレーキトルクが付与される回転体130と、回転体130から入力されるブレーキトルクに従ってクランク軸及びカム軸2の間の相対位相を調整する位相調整機構8と、磁気粘性流体150へ印加する磁界を通電により発生するソレノイドコイル140と、内燃機関の運転時にソレノイドコイル140への通電電流を可変制御し、内燃機関の停止時にソレノイドコイル140への通電を停止する通電制御回路160と、永久磁石144により着磁部を形成しており、磁気粘性流体150への印加磁界を発生する支持体110と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、クランク軸からのトルク伝達によりカム軸が開閉する吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方のバルブタイミングを調整する内燃機関のバルブタイミング調整装置に関する。
従来、バルブタイミングを決めるクランク軸及びカム軸間の相対位相(以下、「機関位相」という。)を、内燃機関の始動を許容する特定位相(以下、「始動位相」という。)に保持可能としたバルブタイミング調整装置が知られている。
例えば特許文献1に開示の装置では、ヒステリシス部材を一対の磁界発生部材間に配置してなるヒステリシスブレーキを用い、内燃機関の停止時や始動時に始動位相を実現するようにしている。具体的には、永久磁石の働きにより磁界を磁界発生部材間に発生させてブレーキトルクをヒステリシス部材へと付与し、当該ブレーキトルクに従う始動位相を機関位相として実現するように、ヒステリシスブレーキを構成しているのである。
特開2005−146993号公報
しかし、上述の如き構成のヒステリシスブレーキでは、磁界を発生させるエアギャップをヒステリシス部材と磁界発生部材との間に必ず形成しなければならない。ここで、ヒステリシス部材はヒステリシス損失によって発熱するが、エアギャップ内の空気は断熱層として働くため、ヒステリシス部材からは熱が逃げ難い。しかも、バルブタイミング調整装置に用いられるヒステリシスブレーキでは、内燃機関の運転に合わせてブレーキトルクを逐次変化させることになるため、ヒステリシス部材には、発熱を生むヒステリシス損失が略絶え間なく発生することになる。これらのことから、ヒステリシス部材は高温となり易いため、熱変形が生じる等、耐久性の低下が問題となっている。尚、ヒステリシス部材が熱変形した場合には、発生するブレーキトルクに変動が生じるため、始動位相を実現できなくなるおそれがある。
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、内燃機関に適したバルブタイミング調整を実現する高耐久のバルブタイミング調整装置を提供することにある。
請求項1に記載の発明によると、機関位相の調整のために回転体から位相調整機構へ入力されるブレーキトルクは、磁気粘性流体(Magneto-Rheological Fluid)の粘度に応じて回転体へ付与される。ここで磁気粘性流体の粘度は、磁気粘性流体へ印加される磁界に応じて変化するが、当該磁界については、通電状態のソレノイドコイルと、少なくとも一部が着磁されて着磁部を形成する磁界発生体とが発生する。故に、内燃機関の運転時には、通電制御回路がソレノイドコイルへの通電電流を可変制御することにより、磁気粘性流体へ印加されるソレノイドコイル及び磁界発生体の合成磁界、さらにはそれに応じた流体粘度を変化させることができる。したがって、ソレノイドコイルへの通電電流の可変制御により所望のブレーキトルクを発生して、バルブタイミングを決める機関位相を内燃機関にとって適切に調整することができる。また、内燃機関の停止時には、通電制御回路がソレノイドコイルへの通電を停止するので、ソレノイドコイルは磁界を発生しないが、磁界発生体は着磁部の着磁状態に応じた磁界を発生することができる。したがって、磁界発生体の発生磁界に応じた粘度の磁気粘性流体によりブレーキトルクを発生して、当該ブレーキトルクに従う機関位相を始動位相として実現することができる。
さらに請求項1に記載の発明によると、ブレーキトルクは、回転体が磁気粘性流体に接触することによって回転体へ付与されるので、回転体がブレーキトルクの発生等に起因して発熱したとしても、磁気粘性流体を通じて放熱可能となる。こうした放熱作用によると、回転体の熱変形を抑制することができるので、内燃機関の停止時には、回転体が磁気粘性流体との接触によって付与されるブレーキトルク、即ち始動位相の実現トルクが安定して得られることになる。
以上説明した請求項1に記載の発明によれば、内燃機関に適したバルブタイミング調整を高い耐久性によって継続的に実現することができる。
請求項2に記載の発明によると、内燃機関の運転時のうち内燃機関の始動時には、通電制御回路がソレノイドコイルへの通電電流を零に制御するので、内燃機関の停止時と同様にして、始動位相を実現するブレーキトルクを発生することができる。これにより、内燃機関の始動に伴って機関位相が始動位相からずれて、内燃機関の始動が困難となる事態を回避することができる。尚、「内燃機関の始動時」とは、例えば内燃機関が完爆するまでのクランキング時である。
請求項3に記載の発明によると、磁界発生体は、ソレノイドコイルとは逆向きの磁界を発生するので、磁界発生体の発生磁界の少なくとも一部をソレノイドコイルの発生磁界によって打消すことができる。これによれば、ブレーキトルクの下限値が始動位相の実現トルクよりも小さくなるので、ブレーキトルクに従って調整される始動位相を最進角位相及び最遅角位相の間の中間位相に設定可能となる。ここで、中間位相における内燃機関の始動によれば、当該始動性の確保と燃費、出力の向上との両立を図ることができる。尚、磁界発生体としては、請求項3に記載の発明のもの以外にも、例えばソレノイドコイルと同じ向きの磁界を発生するものを採用してもよい。
請求項4に記載の発明によると、磁界発生体の着磁部は、回転体及びソレノイドコイルと中心軸線が一致する環状に形成され、軸方向の両端にそれぞれ相反する磁極を有するので、回転体の回転方向において均一な合成磁界を形成することができる。これによれば、磁気粘性流体から回転体へ作用する力が回転方向において偏り難くなるので、ブレーキトルクの付与により回転体が中心軸線に対して傾くことを抑制できる。
通電状態のソレノイドコイルの内周側では、外部磁界の影響を受け難くなる。そこで、請求項5に記載の発明によると、磁界発生体の着磁部がソレノイドコイルの内周側に同心的に配置されるので、当該着磁部とソレノイドコイルとの合成磁界の強度を通電電流の可変制御によって精確に設定することができる。これによれば、機関位相の調整精度、ひいてはバルブタイミングの調整精度が向上する。
請求項6に記載の発明によると、磁界発生体は、着磁部としての永久磁石が母材に保持されてなるので、所望の形状を有する着磁部を容易に形成することができる。尚、磁界発生体としては、請求項6に記載の発明のもの以外にも、例えば磁性部材の少なくとも一部が直接着磁されてなるものを採用してもよい。
請求項7に記載の発明によると、支持体は、ソレノイドコイル及び磁界発生体が磁界を発生させる磁気ギャップを回転体との間に形成するが、当該磁界の発生は、磁気ギャップに磁気粘性流体が介在する状態下、実現されることとなる。ここで、ブレーキトルクを生む磁気粘性流体のせん断応力は、磁気粘性流体の存在スペースのサイズ減少に伴って大きくなるので、支持体及び回転体間の限られた磁気ギャップ内の磁気粘性流体によれば、大きなブレーキトルクを発生することができる。しかも、上述した放熱作用によって回転体の発熱が軽減されるので、回転体を回転自在に支持する支持体が回転体からの熱伝達によって変形することを抑制できる。
先述の特許文献1に開示されるようなヒステリシスブレーキでは、透磁率の低い空気が介在するエアギャップに磁界を発生させるため、エアギャップのサイズを十分に小さくする必要がある。それ故、エアギャップを間に形成するヒステリシス部材及び磁界発生部材の製造公差を厳しく管理しなければならず、またそれらの部材を適確に配置しなければならないため、生産性を高めることが難しい。また、一般にバルブタイミング調整装置は車両等の振動環境下において使用されるので、小さなエアギャップを挟むヒステリシス部材と磁界発生部材との衝突によって変形が生じるという問題もある。これに対して、請求項7に記載の発明によると、一般に透磁率が高く且つ印加磁界に対する粘度変化率の大きい磁気粘性流体が磁気ギャップに介在する状態下、磁気ギャップに磁界を発生させるので、磁気ギャップのサイズを可及的に大きくすることができる。したがって、回転体や支持体の製造公差及び配置精度に関する要求レベルを下げることができると共に、振動環境下で使用される場合であっても回転体及び支持体の衝突による変形を防止することができる。
請求項8に記載の発明によると、回転体を支持する支持体がソレノイドコイルを保持し且つ磁界発生体として機能するので、相互に近距離となるソレノイドコイル及び磁界発生体によって合成磁界を確実に形成することができる。尚、請求項8に記載の形態以外にも、例えば請求項9に記載の発明のように、ソレノイドコイルを保持した支持体により支持される回転体を磁界発生体として機能させてもよい。
請求項10に記載の発明によると、回転体及び支持体の一方の内部には、他方が収容されると共に磁気粘性流体が封入されるので、回転体及び支持体間の磁気ギャップに磁気粘性流体を介在させ易くなる。したがって、磁気ギャップ内の磁気粘性流体が不足することによるブレーキトルクの低下を抑制しつつ、特別な冷却機構を必要とすることなく磁気粘性流体によって熱変形を抑制することができる。
請求項11に記載の発明によると、回転体は支持体内部に収容されるので、回転体の発生熱を磁気粘性流体を通じて支持体へ伝達し、当該伝達熱を支持体から外部へ放射することができる。また、支持体内部に収容される回転体は支持体に比して小型になるので、回転体の回転イナーシャを低減して回転体の支持ガタによる振動を抑えることができる。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
図1〜3は、本発明の第一実施形態によるバルブタイミング調整装置1を示している。バルブタイミング調整装置1は車両に搭載され、内燃機関のクランク軸(図示しない)からカム軸2へ機関トルクを伝達する伝達系に設けられている。バルブタイミング調整装置1はブレーキ系4及び位相調整機構8等を組み合わせてなり、機関位相を調整することによって内燃機関に適したバルブタイミングを逐次実現する。尚、本実施形態においてカム軸2は内燃機関の吸気弁(図示しない)を開閉するものであり、バルブタイミング調整装置1は当該吸気弁のバルブタイミングを調整する。
まず、ブレーキ系4について説明する。図1に示すようにブレーキ系4は、流体ブレーキ100及び通電制御回路160を備えている。流体ブレーキ100は、支持体110の内部に収容した回転体130へ付与するブレーキトルクを、支持体110の内部に封入した磁気粘性流体150によって発生する。この流体ブレーキ100には、支持体110内部の磁気粘性流体150へ磁界を印加するソレノイドコイル140及び永久磁石144が設けられており、当該印加磁界に応じて磁気粘性流体150の見かけ上の粘度が変化し、それに応じて回転体130への付与ブレーキトルクが変化する。
通電制御回路160はマイクロコンピュータ等から構成されており、流体ブレーキ100の外部に配置されてソレノイドコイル140と電気的に接続されている。通電制御回路160は、内燃機関の運転時においてソレノイドコイル140への通電電流を可変制御し、内燃機関の停止時においてソレノイドコイル140への通電を停止する。こうした通電制御回路160によるソレノイドコイル140への通電状況に応じて流体ブレーキ100は、回転体130へ付与するブレーキトルクを保持又は増減する。
次に、位相調整機構8について説明する。位相調整機構8は、駆動側回転体10、従動側回転体20、付勢部材30、遊星キャリア40及び遊星歯車50を備えている。
図1に示すように、駆動側回転体10は、共に筒状に形成された歯車部材12及びスプロケット13を同軸上に螺子止めしてなる。歯車部材12の内周部は駆動側内歯車部14を形成している。スプロケット13には、回転径方向の外側へ突出する複数の歯16が設けられている。スプロケット13は、それらの歯16とクランク軸の複数の歯との間で環状のタイミングチェーンが巻き掛けられることにより、クランク軸と連繋している。したがって、クランク軸から出力された機関トルクがタイミングチェーンを通じてスプロケット13に入力されるとき、駆動側回転体10は、クランク軸と連動して当該クランク軸に対する相対位相を保ちつつ回転する。このとき駆動側回転体10の回転方向は、図2,3の反時計方向となる。
図1,3に示すように、従動側回転体20は有底筒状に形成され、スプロケット13の内周側に同心的に配置されている。従動側回転体20の周壁部は従動側内歯車部22を形成している。従動側内歯車部22の歯数は駆動側内歯車部14の歯数(図2参照)よりも多く設定されている。従動側内歯車部22は、駆動側内歯車部14に対し回転軸方向へずれて隣接する形態でスプロケット13の内周側に嵌合している。
図1に示すように、従動側回転体20の底壁部は、カム軸2に同軸上にボルト固定されて連繋する連繋部24を形成している。この連繋により従動側回転体20は、カム軸2と連動して当該カム軸2に対する相対位相を保ちつつ回転可能となっており、また駆動側回転体10に対して相対回転可能となっている。尚、駆動側回転体10に対して従動側回転体20が進角する相対回転方向が図2,3の方向Xであり、駆動側回転体10に対して従動側回転体20が遅角する相対回転方向が図2,3の方向Yである。
図1に示すように、付勢部材30はねじりコイルばねからなり、スプロケット13の内周側に同心的に配置されている。付勢部材30の一端部31はスプロケット13により係止され、また付勢部材30の他端部32は連繋部24により係止されている。これらの連繋により付勢部材30は、従動側回転体20を駆動側回転体10に対する遅角側(即ち、図2,3の方向Y)へ付勢している。
図1〜3に示すように、遊星キャリア40は筒状に形成され、流体ブレーキ100の回転体130からブレーキトルクが入力される入力部41を内周部によって形成している。回転体10,20及び回転体130に対して同心的な入力部41には複数の溝部42が開口しており、それら溝部42に嵌合する継手43を介して遊星キャリア40が回転体130の軸部131に連繋している。この連繋により遊星キャリア40は回転体130と一体に回転可能となっており、また駆動側回転体10に対して相対回転可能となっている。
遊星キャリア40は、歯車部14,22に対して偏心する偏心部44を外周部によって形成している。偏心部44は、遊星歯車50の中心孔部51の内周側にベアリング45を介して嵌合している。この嵌合により遊星歯車50は、偏心部44の偏心中心周りに自転しつつ偏心部44の回転方向へ公転する遊星運動を実現可能となっている。
遊星歯車50は二段の段付筒状に形成され、偏心部44に対して同心的に配置されている。即ち遊星歯車50は、歯車部14,22に対しては偏心して配置されている。遊星歯車50は、駆動側外歯車部52及び従動側外歯車部54をそれぞれ小径部分及び大径部分によって形成している。駆動側外歯車部52の歯数は駆動側内歯車部14の歯数よりも所定数N少なく設定され、また従動側外歯車部54の歯数は従動側内歯車部22よりも所定数N少なく設定されている。したがって、従動側外歯車部54の歯数は駆動側外歯車部52の歯数よりも多くなっている。駆動側外歯車部52は駆動側内歯車部14の内周側に配置されて当該歯車部14と噛合しており、また従動側外歯車部54は従動側内歯車部22の内周側に配置されて当該歯車部22と噛合している。
以上の構成により、歯車部14,22に噛合する遊星歯車50が遊星運動することによって遊星キャリア40の回転をカム軸2へ減速して伝達する差動歯車部60が形成されている。この差動歯車部60を備えた位相調整機構8は、遊星キャリア40へ付与されるブレーキトルクと、差動歯車部60を通じて遊星キャリア40へ伝達される付勢部材30の付勢トルク及びカム軸2の変動トルクの平均トルクとの大小関係に従って、位相調整作動を実施する。尚、カム軸2の変動トルクとは、内燃機関の運転に伴って位相調整機構8へ伝達されるトルクであり、その平均トルクによって従動側回転体20は、本実施形態では駆動側回転体10に対する遅角側(即ち、図2,3の方向Y)へと付勢される。
具体的に位相調整作動としては、回転体130へ付与されるブレーキトルクの保持等により遊星キャリア40が駆動側回転体10に対して相対回転しないときには、遊星歯車50が歯車部14,22との噛合位置を保ちつつ、回転体10,20と一体に回転する。したがって、機関位相は変化せず、その結果としてバルブタイミングが一定に保たれる。
回転体130へ付与されるブレーキトルクの増大等により遊星キャリア40が駆動側回転体10に対して方向Yへ相対回転するときには、遊星歯車50が歯車部14,22との噛合位置を変化させつつ遊星運動することにより、従動側回転体20が駆動側回転体10に対して方向Xへと相対回転する。したがって、機関位相は進角側へ変化し、その結果としてバルブタイミングが進角する。
回転体130へ付与されるブレーキトルクの減少等により遊星キャリア40が駆動側回転体10に対して方向Xへ相対回転するときには、遊星歯車50が歯車部14,22との噛合位置を変化させつつ遊星運動することにより、従動側回転体20が駆動側回転体10に対して方向Yへと相対回転する。したがって、機関位相は遅角側へ変化し、その結果としてバルブタイミングが遅角する。
次に、ブレーキ系4の特徴部分について詳細に説明する。図4に示すように、回転体130は軸部131及びロータ部132を有している。本実施形態において軸部131とロータ部132とは鉄等の強磁性材によって一体に形成されているが、例えば軸部131とロータ部132とを別体化して、それらのうち少なくともロータ部132を強磁性材によって形成するようにしてもよい。軸部131はシャフト状であり、その一端部において位相調整機構8の入力部41(図1参照)に連繋している。ロータ部132は一定厚の環板状であり、軸部131の軸方向中間部の外周側に同心的に設けられている。
支持体110は固定部材111、カバー部材112、軸受113,114及び永久磁石144からなり、全体として中空形状である。本実施形態において固定部材111は鉄等の強磁性材によって形成され、カバー部材112はアルミニウム等の非磁性材によって形成されているが、例えばカバー部材112については鉄等の強磁性材によって形成してもよい。固定部材111は、固定節である内燃機関にステー(図示しない)を介して固定される。固定部材111は環板状に形成され、その内周縁部に軸受113が設けられている。軸受113は、ロータ部132よりも位相調整機構8側において軸部131を回転自在に支持している。
カバー部材112はカップ状に形成され、その周壁部116が固定部材111の外周縁部に液密に接合されている。これによりカバー部材112の周壁部116は、固定部材111の内壁部117とカバー部材112の底壁部118との間を接続した形となっている。カバー部材112の底壁部118には、軸受114が設けられている。軸受114は、ロータ部132を挟んで位相調整機構8とは反対側において軸部131を回転自在に支持している。
以上の構成により、支持体110の内部空間119にはロータ部132が収容され、ロータ部132の一端面と固定部材111の内壁部117の内面との間に磁気ギャップ120が形成されている。この磁気ギャップ120のギャップ方向はロータ部132の回転軸方向と略一致しており、当該ギャップ方向における磁気ギャップ120の幅が一定となっている。
支持体110の内部空間119には、磁気粘性流体150が完全充填状態で封入されている。これにより、支持体110が回転体130との間に形成する磁気ギャップ120には、磁気粘性流体150が常時介在するようになっている。ここで、磁気粘性流体150は「機能性流体」の一種であり、液状のベース材に磁性粒子を懸濁させてなる。磁気粘性流体150のベース材としては、例えばオイル等の液状の非磁性材が使用され、より好ましくは内燃機関の潤滑オイルと同種のオイルが使用される。尚、一般に潤滑オイルは地球環境に優しい成分であることから、それと同種のオイルを使用することによって環境汚染の抑制に貢献することができる。磁気粘性流体150の磁性粒子としては、例えばカルボニル鉄等の粉状の磁性材が使用される。こうした成分構成の磁気粘性流体150は、印加される磁界の強度に追従して見かけ上の粘度が図5に示すように上昇し、当該粘度に比例して且つ磁気粘性流体150の存在スペースのサイズに反比例してせん断応力が増大する特性を現出する。
図4,6に示すように、永久磁石144は固定部材111の内壁部117に埋設され、当該内壁部117によって保持されている。永久磁石144はフェライト・ネオジ鉄ボロン等の強磁性材を予め着磁してなり、本実施形態では円環状に形成されている。永久磁石144は、ロータ部132と中心軸線(図4の一点鎖線参照)が一致するようにロータ部132に対して同軸上に配設され、軸方向の両端にそれぞれ相反する磁極を有している。永久磁石144の一端面は固定部材111の内壁部117の内面と略面一となっており、ロータ部132の一端面との間に一定幅の磁気ギャップ120が確保されている。こうした構成の下、永久磁石144は、図7(a)の破線矢印の如く磁束が固定部材111、磁気ギャップ120、ロータ部132、磁気ギャップ120及び永久磁石144を順に通過する向きに磁界を発生する。
図4,6に示すように、ソレノイドコイル140は永久磁石144の外周側において固定部材111の内壁部117に埋設され、当該内壁部117によって保持されている。ソレノイドコイル140は、永久磁石144と中心軸線(図4の一点鎖線参照)が一致するように永久磁石144に対して同心的に配設され、内周側の永久磁石144に隣接している。ソレノイドコイル140の一端面は固定部材111の内壁部117の内面と略面一となっており、ロータ部132の一端面との間に一定幅の磁気ギャップ120が確保されている。こうした構成の下、ソレノイド140は、永久磁石144とは逆向きの磁界、即ち図7(b)の破線矢印の如く磁束が永久磁石144、磁気ギャップ120、ロータ部132及び磁気ギャップ120及び固定部材111を順に通過する向きの磁界を、通電制御回路160からの通電によって発生する。
したがって、本実施形態では、ソレノイドコイル140の発生磁界により永久磁石144の発生磁界の少なくとも一部を打消してなる合成磁界が形成されるのであり、当該合成磁界は、ソレノイドコイル140への通電状況に応じて強度と向きが変化するものとなる。磁気ギャップ120内の磁気粘性流体150は、このようなソレノイドコイル140及び永久磁石144の合成磁界が印加されることによって、当該合成磁界の強度に対応した粘度状態を実現する。故に、磁気ギャップ120を挟んで向き合う要素110,132間では、流体粘度に比例のせん断応力によって、ロータ部132を支持体110に対して制動させる方向(例えば内燃機関の運転時は、図2,3の方向Y)にブレーキトルクを発生することができる。
そこで以下では、ソレノイドコイル140への通電状況に応じたブレーキトルクの発生形態について、具体的に説明する。通電制御回路160がソレノイドコイル140に対して通電を中止する又は通電電流を零に制御するときには、ソレノイドコイル140の発生磁界が消失する。これにより合成磁界は、永久磁石144単独の発生磁界に等しい初期強度で図7(a)の向きに形成されるので、図8に示すように合成磁界の初期強度に対応した初期トルクT0をブレーキトルクとして発生することができる。尚、本実施形態の初期トルクT0は、付勢部材30の付勢トルク及びカム軸2の変動トルクの平均トルクとのバランスにより、最進角位相及び最遅角位相の間の中間位相を始動位相として実現可能な値とされる。また、本実施形態の初期トルクT0は、内燃機関の停止状態においてバルブ反力に起因するカム軸2の回転により位相調整機構8を通じて回転体130に作用する回転トルクに比して、大きな値とされる。
通電制御回路160がソレノイドコイル140への通電電流を零よりも大きく且つ境界値Ibよりも小さい図8の範囲R1に制御するときには、永久磁石144よりも弱い磁界がソレノイドコイル140によって発生する。これにより合成磁界は、初期強度よりも弱い強度で図7(a)の向きに形成されるので、図8に示すように初期トルクT0よりも小さい範囲で通電電流が増大するほど減少するブレーキトルクを発生することができる。
通電制御回路160がソレノイドコイル140への通電電流を境界値Ibに制御するときには、永久磁石144と同程度且つ逆向きの磁界がソレノイドコイル140によって発生する。これにより、磁気粘性流体150へ印加される合成磁界が実質的に零となるので、図8に示すようにブレーキトルクの発生を規制することができる。
通電制御回路160がソレノイドコイル140への通電電流を境界値Ibよりも大きい図8の範囲R2に制御するときには、永久磁石144よりも強い磁界がソレノイドコイル140によって発生する。これにより合成磁界は、零を超える強度で図7(b)の向きに形成されるので、図8に示すように通電電流に追従して増大するブレーキトルクを発生することができる。
次に、ブレーキ系4による特徴的な機関位相の調整方法について詳細に説明する。通電制御回路160は、アイドル回転状態の内燃機関がイグニッションスイッチのオフ指令等の停止指令を受けて停止するとき、当該停止指令を検知してソレノイドコイル140への通電を停止する。すると、流体ブレーキ100がブレーキトルクとしての初期トルクT0を回転体130へ付与するので、内燃機関が完全に停止するまでの間に機関位相が始動位相に調整される。
この後、内燃機関が停止している間は、通電制御回路160がソレノイドコイル140への通電を実施しないので、バルブ反力に起因するカム軸2の回転トルクが回転体130に作用したとしても、流体ブレーキ100がブレーキトルクとして初期トルクT0を発生することができるので、始動位相が維持される。
停止状態の内燃機関がイグニッションスイッチのオン指令等の始動指令を受けて始動するときには、当該始動指令を検知して通電制御回路160が、例えばクランキングにより内燃機関が完爆するまでの間、ソレノイドコイル140への通電電流を零に保持制御する。すると、流体ブレーキ100がブレーキトルクとしての初期トルクT0を回転体130へ付与するので、機関位相が始動位相に保たれる。
尚、内燃機関の始動後においては、通電制御回路160は、内燃機関の運転に適した機関位相となるようにソレノイドコイル140への通電電流を可変制御する。このとき、本実施形態の通電制御回路160は図8の境界値Ib及び範囲R2で通電電流の制御を実施するが、例えば同図の可変範囲の全域で通電電流の制御を実施するようにしてもよい。また、本実施形態において内燃機関の始動後、通電電流を境界値Ibに制御する場合には、ブレーキトルクの発生を規制して、例えば実質的に零にまで減少させることができる。したがって、この場合には、付勢部材30の付勢トルク及びカム軸2の変動トルクの平均トルクにより従動側回転体20を駆動側回転体10に対して迅速に遅角させることができるので、バルブタイミングの遅角応答性が高くなる。
以上説明した第一実施形態によると、ロータ部132が収容される支持体110の内部には、空気に比べて伝熱性の高い磁気粘性流体150が封入されている。故に、ブレーキトルクの発生等に起因してロータ部132が発熱したとしても、磁気粘性流体150を経由して支持体110から外部へと放熱することができる。したがって、ロータ部132を有する回転体130やその支持体110の熱変形、熱劣化を抑制して、流体ブレーキ100の耐久性を高めることができる。また、そうした熱変形及び熱劣化の抑制機能は、特別な冷却機構を用いることなく、ブレーキトルク発生用の磁気粘性流体150を利用することによって実現されるので、流体ブレーキ100の大型化及び複雑化を伴うことがない。
さらに第一実施形態によると、内燃機関の停止時、停止中並びに始動時のいずれにおいても、上述したように熱変形の抑制されたロータ部132を磁気粘性流体150と接触させることにより、ブレーキトルクを発生することができる。したがって、特に内燃機関の停止時、停止中並びに始動時においては、始動位相を実現するブレーキトルクを安定して得ることができるので、内燃機関の始動が困難となる事態を確実に且つ長期に亘って回避することができる。
またさらに第一実施形態によると、磁気粘性流体150のせん断応力は当該流体150の存在スペースのサイズに反比例するので、幅の制限された磁気ギャップ120内の磁気粘性流体150によっても、大きなブレーキトルクを発生することができる。したがって、特に内燃機関の始動後において所望のブレーキトルクを得るのに必要な流体ブレーキ100の体格を小さくすることができる。
加えて第一実施形態によると、支持体110の永久磁石144は、ロータ部132及びソレノイドコイル140と中心軸線が一致する円環状に形成され、軸方向の両端にそれぞれ相反する磁極を有している。これによれば、ソレノイドコイル140及び永久磁石144の合成磁界をロータ部132の回転方向において均一に形成できるので、当該合成磁界の印加によって磁気粘性流体150は、ロータ部132の中心軸線に対する傾きを抑制しつつロータ部132へブレーキトルクを付与することができる。
さらに加えて第一実施形態によると、永久磁石144が配置されるソレノイドコイル140の内周側では、通電時に外部磁界の影響を受け難いので、ソレノイドコイル140及び永久磁石144の合成磁界の強度を通電電流の可変制御によって精確に設定することができる。また、ソレノイドコイル140と永久磁石144とは共に固定部材111によって保持されて互いに隣接しているので、それらの合成磁界を確実に形成することができる。これらによれば、内燃機関の始動後において所望のブレーキトルクを安定して得ることができるので、当該ブレーキトルクに従う機関位相の調整精度、ひいてはバルブタイミングの調整精度が向上する。
またさらに加えて第一実施形態によると、磁気粘性流体150は、印加磁界に対する粘度変化率が大きいことに加え、透磁率も当然に高くなる。故に、磁気粘性流体150を介在させる磁気ギャップ120の幅については、所望のブレーキトルクが得られる限りにおいて拡大することができる。したがって、支持体110や回転体130の製造公差、配置精度等に関する要求レベルを下げることができるばかりでなく、車両という振動環境下にあっても、支持体110と回転体130とが磁気ギャップ120において相互に衝突し変形する事態を回避して、耐久性を高めることができる。
尚、ここまで説明した第一実施形態では、永久磁石144を有する支持体110が「磁界発生体」に相当し、着磁され支持体110の一部として機能する永久磁石144が「着磁部」に相当し、支持体110において永久磁石144を保持する固定部材111が「母材」に相当する。
(第二実施形態)
図9に示すように、本発明の第二実施形態は第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、支持体200の固定部材201及びカバー部材202が共に鉄等の強磁性材で形成されている。固定部材201はカップ状に形成され、その底壁部203に軸受113が設けられている。カバー部材202の周壁部204は固定部材201の周壁部205に液密に接合されて、底壁部203,118間を接続した形となっている。支持体200の内部には、回転体210の本体部材211が形成するロータ部212が収容されている。このロータ部212の外周部214は、その内周側よりも厚肉に形成されている。
こうした構成により、ロータ部212の外周部214と、各部材201,202において外周部214を回転軸方向に挟んだ両側の底壁部203,118との間には、磁気ギャップ220,221が形成されている。ここで磁気ギャップ220は、支持体200の内部空間206のうち、ロータ部212の外周部214の一端面と固定部材201の底壁部203の内面とによって挟まれた部分である。また、磁気ギャップ221は、内部空間206のうち、ロータ部212の外周部214の他端面とカバー部材202の底壁部118の内面とによって挟まれた部分である。これら磁気ギャップ220,221は、ロータ部212の回転軸方向と略一致するギャップ方向の幅が一定となっている。尚、本実施形態においても磁気ギャップ220,221は支持体200の内部空間206の一部をなしているので、内部空間206に完全充填された磁気粘性流体150が磁気ギャップ220,221に常時介在することとなる。
さらに、第二実施形態において円環状の永久磁石216は、本体部材211により保持されて回転体210を構成している。具体的に永久磁石216は、本体部材211のロータ部212と中心軸線(図9の一点鎖線参照)が一致するようにロータ部212の外周部214に同心的に外嵌固定され、軸方向の両端にそれぞれ相反する磁極を有している。永久磁石216の両端面は外周部214の両端面と略面一となっており、固定部材201及びカバー部材202の各底壁部203,118との間に一定幅の磁気ギャップ220,221が確保されている。こうした構成の下、永久磁石216は、図10(a)の破線矢印の如く磁束が永久磁石216、磁気ギャップ220、固定部材201、カバー部材202及び磁気ギャップ221を順に通過する向きに磁界を発生する。
またさらに、第二実施形態においてソレノイドコイル240は、カバー部材202の周壁部204の内周面により永久磁石216の外周側において保持されている。ソレノイドコイル240は、永久磁石216と中心軸線(図9の一点鎖線参照)が一致するように永久磁石216に対して同心的に配設され、内周側の永久磁石216との間に隙間をあけて近接している。こうした構成の下、ソレノイドコイル240は、永久磁石216とは逆向きの磁界、即ち図10(b)の破線矢印の如く磁束が永久磁石216、磁気ギャップ221、カバー部材202、固定部材201及び磁気ギャップ220を順に通過する向きの磁界を、通電制御回路160からの通電によって発生する。
このような第二実施形態によっても、ソレノイドコイル240の発生磁界により永久磁石216の発生磁界の少なくとも一部を打消してなる合成磁界が形成されるのであり、当該合成磁界は、ソレノイドコイル240への通電状況に応じて強度と向きが変化するものとなる。そこで、ソレノイドコイル240への通電状況に応じたブレーキトルクの発生を第一実施形態に準ずる形態にて実現し、またブレーキ系4による機関位相の調整を第一実施形態に準ずる方法にて実施する。これにより、第一実施形態と同様な作用、効果を発揮することができる。
尚、ここまで説明した第二実施形態では、永久磁石216を有する回転体210が「磁界発生体」に相当し、着磁され回転体210の一部として機能する永久磁石216が「着磁部」に相当し、回転体210において永久磁石216を保持する本体部材211が「母材」に相当する。
(第三実施形態)
図11に示すように、本発明の第三実施形態は第一実施形態の変形例である。第三実施形態においてソレノイドコイル300は、永久磁石144とは同じ向きの磁界、即ち図11の破線矢印の如く磁束が固定部材111、磁気ギャップ120、ロータ部132、磁気ギャップ120及び永久磁石144を順に通過する向きの磁界を、通電制御回路310からの通電によって発生する。
このような第三実施形態では、ソレノイドコイル300の発生磁界により永久磁石144の発生磁界を増強してなる合成磁界が形成されるのであり、当該合成磁界は、ソレノイドコイル140への通電状況に応じて強度と向きが変化するものとなる。したがって、通電制御回路310がソレノイドコイル300に対して通電を中止する又は通電電流を零に制御するときには、永久磁石144単独の発生磁界に等しい初期強度で図11の向きの合成磁界が形成されるので、ブレーキトルクとして図12の初期トルクT0を発生することができる。また、通電制御回路310がソレノイドコイル300への通電電流を零よりも大きい範囲に制御するときには、初期強度よりも強い強度で図11の向きに形成される。故に、図12に示すように初期トルクT0よりも大きい範囲で通電電流に追従して増大するブレーキトルクを発生することができる。
こうした形態によりブレーキトルクを発生する第三実施形態では、内燃機関の停止時、停止中並びに始動時において、ブレーキ系4による機関位相の調整を第一実施形態に準ずる方法にて実施する。その結果として得られる始動位相は、図12に示すように最小のブレーキトルクとなる初期トルクT0によって実現されるので、本実施形態では最遅角位相を始動位相とすることができる。尚、内燃機関の始動後においては、ソレノイドコイル300への通電電流が図12に示す可変範囲の全域で制御されることとなる。
以上、第三実施形態によれば、第一実施形態と同様な作用、効果を発揮することができる。
さて、ここまで本発明の複数の実施形態について説明してきたが、本発明はそれらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
例えば第一〜第三実施形態では、位相調整機構8に連繋する回転体130,210を支持体110,200の内部に収容して小型化することにより、回転体130,210の回転イナーシャが低減しているが、位相調整機構8に連繋する回転体の内部に支持体を収容することもできる。また、位相調整機構8としては、上述したように遊星キャリア40をブレーキトルクの入力回転体とする差動歯車部60を備えたもの以外にも、本発明の作用効果が得られる限りにおいて、各種構成の機構を採用することができる。
第一〜第三実施形態では、支持体110,200の内部に磁気粘性流体150を部分充填状態で封入してもよい。また、第一〜第三実施形態において使用する磁気粘性流体150は、磁性流体が混合されたもの(Magnetic Compound Fluid)であってもよい。さらに第一〜第三実施形態では、支持体110,200の内部に磁気粘性流体150を封入する代わりに、印加される磁界に応じて結合力が変化する磁性粉体(パウダ)を封入してもよい。またさらに第一〜第三実施形態では、ロータ部132,212の回転方向に沿って延伸する形の円環状の永久磁石144,216を設ける代わりに、ロータ部132,212の回転方向に沿って並ぶ複数の永久磁石を設けてもよい。
第一及び第三実施形態では、支持体110の固定部材111に永久磁石144を埋設して「着磁部」を形成する代わりに、固定部材111の一部を直接着磁して「着磁部」を形成するようにしてもよい。また同様に第二実施形態では、回転体210の本体部材211に永久磁石216を埋設して「着磁部」を形成する代わりに、本体部材211の一部を直接着磁して「着磁部」を形成するようにしてもよい。
第一及び第三実施形態では、図13(同図は第一実施形態の例)に示すように、支持体110において永久磁石144をソレノイドコイル140,300の外周側に同心的に設けてもよい。また、第一及び第三実施形態では、図14(同図は第一実施形態の例)に示すように、支持体110において永久磁石144をソレノイドコイル140,300の一端側に同軸上に設けてもよい。さらに第一及び第三実施形態では、図15(同図は第一実施形態の例)に示すように、回転体130において永久磁石144をソレノイドコイル140,300の一端側に同軸上に設ける(同図の例では埋設する)ようにしてもよい。
第二実施形態では、図16に示すように、支持体200において永久磁石216をソレノイドコイル240の内周側に同心的に設けてもよい。また、第二実施形態では、図17に示すように、支持体200において永久磁石216をソレノイドコイル240の外周側に同心的に設けてもよい。さらに第二実施形態では、図18に示すように、支持体200において永久磁石216をソレノイドコイル240の一端側に同軸上に設けてもよい。
第一及び第二実施形態では、内燃機関の始動後においてソレノイドコイル140,240への通電電流を零値及び範囲R1のうち少なくとも範囲R1で可変制御してもよい。また、第二実施形態では、ソレノイドコイル240への通電状況に応じたブレーキトルクの発生を第三実施形態に準ずる形態にて実現し、またブレーキ系4による機関位相の調整を第三実施形態に準ずる方法にて実施してもよい。
そして、本発明は、第一〜第九実施形態の如く吸気弁のバルブタイミングを調整する装置以外にも、排気弁のバルブタイミングを調整する装置や、吸気弁及び排気弁の双方のバルブタイミングを調整する装置に適用することができる。
第一実施形態のバルブタイミング調整装置を示す断面図である。 図1のII−II線断面図である。 図1のIII−III線断面図である。 第一実施形態の流体ブレーキを示す断面図である。 磁気粘性流体への印加磁界と磁気粘性流体の粘度との相関を示す特性図である。 図4のVI−VI線断面図である。 第一実施形態の特徴を説明するための断面図である。 第一実施形態におけるソレノイドコイルへの通電電流とブレーキトルクとの相関を示す模式図である。 第二実施形態の流体ブレーキを示す断面図である。 第二実施形態の特徴を説明するための断面図である。 第三実施形態の流体ブレーキを示す断面図である。 第三実施形態におけるソレノイドコイルへの通電電流とブレーキトルクとの相関を示す模式図である。 第一実施形態の変形例を示す断面図である。 第一実施形態の変形例を示す断面図である。 第一実施形態の変形例を示す断面図である。 第二実施形態の変形例を示す断面図である。 第二実施形態の変形例を示す断面図である。 第二実施形態の変形例を示す断面図である。
符号の説明
1 バルブタイミング調整装置、2 カム軸、4 ブレーキ系、8 位相調整機構、60 差動歯車部、100 流体ブレーキ、110 支持体(磁界発生体)、111 固定部材(母材)、112,202 カバー部材、120,220,221 磁気ギャップ、130 回転体、132,212 ロータ部、140,240,300 ソレノイドコイル、144,216 永久磁石(着磁部)、150 磁気粘性流体、160,310 通電制御回路、200 支持体、201 固定部材、210 回転体(磁界発生体)、211 本体部材(母材)、214 外周部、Ib 境界値、R1,R2 範囲、T0 初期トルク

Claims (11)

  1. クランク軸からのトルク伝達によりカム軸が開閉する吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方のバルブタイミングを調整する内燃機関のバルブタイミング調整装置であって、
    印加される磁界に応じて粘度が変化する磁気粘性流体と、
    前記磁気粘性流体に接触することにより、前記磁気粘性流体の粘度に応じたブレーキトルクが付与される回転体と、
    前記回転体から入力される前記ブレーキトルクに従って前記クランク軸及び前記カム軸の間の相対位相を調整する位相調整機構と、
    前記磁気粘性流体へ印加する磁界を通電により発生するソレノイドコイルと、
    前記内燃機関の運転時に前記ソレノイドコイルへの通電電流を可変制御し、前記内燃機関の停止時に前記ソレノイドコイルへの通電を停止する通電制御回路と、
    少なくとも一部が着磁されて着磁部を形成しており、前記磁気粘性流体へ印加する磁界を発生する磁界発生体と、
    を備えることを特徴とするバルブタイミング調整装置。
  2. 前記通電制御回路は、前記内燃機関の運転時のうち前記内燃機関の始動時に前記ソレノイドコイルへの通電電流を零に制御することを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
  3. 前記磁界発生体は、前記ソレノイドコイルとは逆向きの磁界を発生することを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブタイミング調整装置。
  4. 前記着磁部は、前記回転体及び前記ソレノイドコイルと中心軸線が一致する環状に形成され、軸方向の両端にそれぞれ相反する磁極を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
  5. 前記着磁部は、前記ソレノイドコイルの内周側に同心的に配置されることを特徴とする請求項4に記載のバルブタイミング調整装置。
  6. 前記磁界発生体は、前記着磁部としての永久磁石が母材に保持されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
  7. 前記回転体を回転自在に支持し、前記ソレノイドコイル及び前記磁界発生体が磁界を発生させる磁気ギャップを前記回転体との間に形成する支持体を備え、
    前記ソレノイドコイル及び前記磁界発生体は、前記磁気ギャップに前記磁気粘性流体が介在する状態下、磁界を発生することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
  8. 前記ソレノイドコイルを保持する前記磁界発生体としての前記支持体を備えることを特徴とする請求項7に記載のバルブタイミング調整装置。
  9. 前記磁界発生体としての前記回転体、並びに前記ソレノイドコイルを保持する前記支持体を備えることを特徴とする請求項7に記載のバルブタイミング調整装置。
  10. 前記回転体及び前記支持体の一方の内部には、他方が収容されると共に前記磁気粘性流体が封入されることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
  11. 前記回転体は前記支持体の内部に収容されることを特徴とする請求項10に記載のバルブタイミング調整装置。
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