JP2005146993A - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents

内燃機関のバルブタイミング制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 機関始動時や機関停止後の慣性回転時に、回転位相が最遅角位相と最進角位相の間の中間位相に自然に戻されるようにして、機関始動可能な回転位相を中間位相に設定できるようにする。
【解決手段】 駆動リング2と従動軸部材4を位相変更機構5を介して組付ける。位相変更機構5は制動ロータ24と渦巻きプレート19を有し、この両者はゼンマイばね6の付勢力とヒステリシスブレーキ7の制動力のバランスによって回動操作される。制動ロータ24に離接するプランジャ34と、プランジャ34をロータ24方向に付勢するリターンスプリング37と、プランジャ34を吸引する電磁コイル36と、を備えたサブブレーキ手段33を設ける。サブブレーキ手段33は、非制御状態において、プランジャ34をロータ24に圧接させ、その制動力とばね6の力のバランスによって位相変更機構5を中間位相に保持する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内燃機関の吸気側または排気側の機関弁の開閉タイミングを運転状態に応じて可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置に関する。
この種のバルブタイミング制御装置として、特許文献1に記載されるようなものがある。
この装置は、クランクシャフトの動力を受けて回転する筒状のハウジング(駆動回転体)と、カムシャフトに動力を伝達する従動部材(従動回転体)が位相変更機構を介して連係され、その位相変更機構の回転操作部であるドラムがコイルスプリング(付勢手段)と電磁ブレーキ(ブレーキ手段)の力のバランスによって操作されるようになっている。
具体的には、コイルスプリングは、回転位相を進角側と遅角側の一方に付勢するようにハウジングとドラムの間に取り付けられ、電磁ブレーキは、非回転部材に取り付けられ、ドラムに離接する摩擦材を電磁力によって操作するようになっている。この装置の場合、回転位相を進角側と遅角側の一方に変更するときには、電磁ブレーキの磁力を弱め、若しくは、オフにすることによってコイルスプリングの力でドラムを増速させ、回転位相を他方に変更するときには、逆に電磁ブレーキの磁力を強めることによってドラムを減速させる。
特開2003-65131号公報
この従来のバルブタイミング制御装置においては、コイルスプリングの付勢力と、電磁ブレーキの制動力とのバランスによって回転操作部であるドラムを増減速制御するものであるため、電磁ブレーキの制動力がオフになる機関停止時にはコイルスプリングの力によって最遅角位置または最進角位置に戻されてしまう。このため、機関始動可能な回転位相は最遅角位置付近または最進角位置付近に設定せざるを得ず、機関運転中に機関始動可能な位相に対してより進角側や遅角側に寄った位相領域を使用することができなかった。
そこで本発明は、機関始動時や機関停止後の慣性回転時に、回転位相が最遅角位相と最進角位相の間の中間位相に自然に戻されるようにして、機関始動可能な回転位相を中間位相に設定することの可能なバルブタイミング制御装置を提供しようとするものである。
上述した課題を解決するための手段として、本発明は、付勢手段に抗する制動力を非制御状態で位相変更機構の回転操作部に付与し、このときの制動力と付勢力のバランスによって駆動回転体と従動回転体を最遅角位相と最進角位相の間の中間位相に保持するサブブレーキ手段を設けるようにした。
この発明の場合、機関始動時や機関停止後の慣性回転時には、サブブレーキ手段の作用により非制御のまま自然に中間位相に戻される。
前記サブブレーキ手段は、例えば、位相変更機構の回転操作部に接離する摩擦部材と、この摩擦部材を前記回転操作部に当接させる方向に付勢する付勢部材と、前記摩擦部材に付勢部材に抗する向きの操作力を付与する操作力付与手段と、を備えた構成とし、機関の始動後に、前記操作力付与手段を機関の運転状態に応じて制御するようにしても良い。
この場合、機関始動時や機関停止後の慣性回転時には、操作力付与手段が制御されないため、摩擦材が付勢部材の力を最大に受けて回転操作部に押し付けられ、このとき発生する制動力が付勢手段の力とバランスして回転位相を中間位相に保持することとなる。機関の始動後には、操作力付与手段をブレーキ手段と共に制御することにより、任意の回転位相に変更することが可能となる。
また、サブブレーキ手段は、位相変更機構の回転操作部に制動力を作用させる永久磁石と、この永久磁石の磁界を打ち消す向きの磁界を発生する電磁コイルと、を備えた構成とし、機関の始動後に、前記電磁コイルを機関の運転状態に応じて制御するようにしても良い。
この場合、機関始動時や機関停止後の慣性回転時には、電磁コイルが制御されないため、永久磁石による制動力が最大に発揮され、このときの制動力が付勢手段の力とバランスして回転位相を中間位相に保持することとなる。機関の始動後には、電磁コイルを制御することにより、電磁コイルと永久磁石の合成磁力によって得られる制動力と付勢手段の付勢力とのバランスによって任意の回転位相に変更することが可能となる。
本発明は、機関始動時や機関停止後の慣性回転時に回転位相を中間位相に自然に戻すことができるため、内燃機関の機関始動可能な回転位相を中間位相に設定することができる。したがって、この発明によれば、機関始動可能な位相に対して、より遅角側や進角側に寄った位相領域を機関運転中に使用することが可能となる。
次に、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図11に示す第1の実施形態について説明する。尚、この実施形態は、本発明にかかるバルブタイミング制御装置を内燃機関の吸気側の動弁系に適用したものであるが、排気側の動弁系に同様に適用することも可能である。
バルブタイミング制御装置は、内燃機関のシリンダヘッドに回転自在に支持されたカムシャフト(図示せず)の前端部に配置され、図1に示すように、クランクシャフト(図示せず)に連係されるタイミングスプロケット1を外周に有する駆動リング2(駆動回転体)と、カムシャフトの前端部に一体に結合され、その基部側外周で前記駆動リング2を相対回動可能に支持する従動軸部材4(従動回転体)と、駆動リング2の前方側(図1中左側)に配置されて、駆動リング2と従動軸部材4の組付角を操作する位相変更機構5と、この位相変更機構5のさらに前方側に配置されて、同機構5を機関運転状態に応じて制御する操作制御手段3と、内燃機関の機関ブロックの前面に取り付けられて上記の各構成部材の前面と周域を覆う図示しないVTCカバーと、を備えている。
尚、この内燃機関の吸気側の回転位相はバルブタイミング制御装置によって任意に制御されるが、この内燃機関の吸気側の始動可能な位相は、図9に示すように最遅角位相と最進角位相の間の所定の中間位相に設定されている。
駆動リング2は、段差状の挿通孔2aを備え、その挿通孔2a部分が従動軸部材4の基部側外周に回転可能に組み付けられている。そして、駆動リング2の前端面には、図1,図2に示すように3つの径方向溝11が同リング2のほぼ半径方向に沿うように形成されている。
また、従動軸部材4は、カムシャフトの前端部に突き合わされる基部側外周に拡径部が形成されると共に、その各径部よりも前方側の外周面に放射状に突出する3つのレバー12が一体に形成されている。各レバー12には、リンク13の基端が回動可能にピン枢支され、各リンク13の先端には前記各径方向溝11に摺動自在に係合する円筒状の突出部14が一体に形成されている。
各リンク2は、突出部14が対応する径方向溝11に係合した状態において従動軸部材4に揺動自在に連結されているため、リンク13の先端側が外力を受けて径方向溝11に沿って変位すると、駆動リング2と従動軸部材4はリンク13とレバー12の作用でもって突出部14の変位に応じた方向及び角度だけ相対回動する。
また、各リンク13の先端部には、軸方向前方側に開口する収容孔が設けられ、この収容孔に、後述する渦巻き溝18(渦巻き状ガイド)に係合する係合ピン16と、この係合ピン16を前方側(渦巻き溝18側)に付勢するコイルばね17とが収容されている。尚、この実施形態の場合、リンク13の先端の突出部14と係合ピン16、コイルばね17等によって径方向に変位可能な可動案内部が構成されている。
一方、従動軸部材4のレバー12の突設位置よりも前方側には、後面に断面半円状の渦巻き溝18(渦巻き状ガイド)を有する渦巻きプレート19が回転自在に支持されている。この渦巻きプレート19の渦巻き溝18には、前記各リンク13の先端の係合ピン16が転動自在に案内係合されている。この渦巻き溝18の渦巻きは、機関回転方向R(図2参照。)に沿って次第に縮径するように形成されている。したがって、各リンク13先端の係合ピン16が渦巻き溝18に係合した状態において、渦巻きプレート19が駆動リング2に対して遅れ方向に相対回転すると、リンク13の先端部は径方向溝11に案内されつつ、渦巻き溝18の渦巻き形状に誘導されて半径内側に移動し、渦巻きプレート19が進み方向に相対変位すると、逆に半径方向外側に移動する。
この実施形態の場合、位相変更機構5は、以上説明した駆動リング2の径方向溝11、リンク13、突出部14、係合ピン16、レバー12、渦巻きプレート19、渦巻き溝18等によって構成されている。この位相変更機構5は、後述する操作制御手段3から渦巻きプレート19に回転方向の操作力が入力されると、その操作力が渦巻き溝18と係合ピン16の係合部を通して各リンク13の先端部を径方向に変位させ、このときリンク13とレバー12の作用でもって駆動リング2と従動軸部材4に相対的な回動力を作用させる。尚、図2は、中間位相の状態を示し、図7は、最遅角位相の状態、図8は、最進角位相の状態を夫々示す。
また、駆動リング2の前端部には、前記各リンク13と渦巻きプレート19の外周側を覆う筒状壁20が延設され、渦巻きプレート19の前方側には円筒状の小径基部19aが一体に形成されている。そして、筒状壁20と小径基部19aの間には、本発明の付勢手段を成す図3に示すようなゼンマイばね6が収容されている。このゼンマイばね6は、その内周側と外周側の各端部が小径基部19aと筒状壁20に夫々係止され、筒状壁20から渦巻きプレート19に機関回転方向Rに沿うばね力を作用させるようになっている。
渦巻きプレート19とゼンマイばね6の前方側には、本発明のブレーキ手段を成すヒステリシスブレーキ7が配置されている。このヒステリシスブレーキ7は図外のコントローラによって通電制御されて制動力を渦巻きプレート19に適宜作用させるものであり、前記コントローラとゼンマイばね6と共に操作制御手段3を構成している。そして、このヒステリシスブレーキ7は渦巻きプレート19に作用するゼンマイばね6の付勢力とのバランスによって駆動リング2に対する渦巻きプレート19の回転位相を制御する。
ヒステリシスブレーキ7は、図4〜図6に示すように、非回転部材であるVTCカバー(図示せず)に固定設置され、略円筒状の隙間を挟んで対向する一対の周面状の対向面を有する磁気誘導部材22と、前記両対向面に夫々設けられた内側極歯30、及び、外側極歯31と、磁気誘導部材22に取り付けられて内側極歯30と外側極歯31の間に通電電流に応じた磁界を生じさせる電磁コイル23と、前記極歯30,31間に非接触状態で挿入配置された有底円筒状の制動ロータ24と、を備え、電磁コイル23が上述のコントローラによって通電制御されるようになっている。
図4に示すように、内側極歯30と外側極歯31は夫々軸方向に沿って延出する複数の極歯要素30a…、31a…を有し、両極歯30,31の極歯要素30a,31a同士は円周方向に相互にオフセットされている。したがって、電磁コイル23が通電されると、両極歯30,31間には、オフセットした位置関係にある相手極歯要素30a,31aに向かう磁界が発生する。
制動ロータ24は、周壁部分が磁気的ヒステリシス特性を有するヒステリシス材によって形成され、底壁24a部分の内周縁が軸部材25を介して磁気誘導部材22に軸受支持されると共に、前記渦巻きプレート19にゴムブッシュ26と連結ピン27を介して一体回転可能に結合されている。したがって、このヒステリシスブレーキ7においては、前記電磁コイル23の通電によって内側極歯30と外側極歯31の間に磁界が発生すると、制動ロータ24には通電電流に応じた制動力が作用し、その制動力が渦巻きプレート19を減速させることとなる。尚、この実施形態においては、渦巻きプレート19と制動ロータ24が本発明における回転操作部を構成している。
また、このバルブタイミング制御装置は、磁気誘導部材22の内側極歯30よりも径方向内側位置に、制動ロータ24の底壁24aに対向するようにサブブレーキ手段33が設けられている。このサブブレーキ手段33は、制動ロータ24の底壁24aに対して接離可能なリング状のプランジャ34(摩擦材)と、このプランジャ34を軸方向に進退自在に収容する円環状のハウジング35と、このハウジング35内の底部に設置され、通電によって磁界を発生する電磁コイル36と、ハウジング35内に収容されてプランジャ34を底壁24aに押し付ける方向に付勢するリターンスプリング37(付勢部材)と、を備えている。
ハウジング35とプランジャ34は磁性材料によって形成され、ハウジング35のプランジャ収容部と、プランジャ34の内外周面には外開きのテーパが設けられている。そして、プランジャ34は、図5に示すように、制動ロータ24の底壁24a方向に突出した状態においてハウジング35に対して所定隙間をもって離間しており、電磁コイル36の通電によってハウジング35とプランジャ34のギャップに磁界が生じると、図6に示すように、その磁界からリターンスプリング37の力に抗する吸引作用を受け後退する。また、ハウジング35のプランジャ収容部の開口縁にはストッパ突起38が設けられ、このストッパ突起38によってプランジャ34の突出変位を規制するようになっている。尚、この実施形態の場合、電磁コイル36とハウジング35、プランジャ34等による電磁弁構造が操作力付与手段を構成している。
ところで、メインのブレーキ手段であるヒステリシスブレーキ7は内燃機関の始動後にコントローラによって通電制御されるが、サブブレーキ手段33はコントローラによる制御が行われない非制御時に最大の制動力を発揮する。即ち、サブブレーキ手段33は前述のように電磁コイル36が非通電状態のときにプランジャ34がリターンスプリング37によって制動ロータ24に押し付けられるため、この状態において制動ロータ24にはサブブレーキ手段33による摩擦制動力が最大に働く。
今、ヒステリシスブレーキ7が制御されていない状態(非通電状態)において渦巻きプレート19と制動ロータ24が駆動リング2に追従して回転したとすると、渦巻きプレート19と制動ロータ24にはゼンマイばね6による増速方向の力とサブブレーキ手段33による減速方向の力が働き、これらの力のバランスによって位相変更機構5が操作されることとなる。非制御状態で最大に発揮されるサブブレーキ手段33の制動力は、上記の条件下において位相変更機構5が機関始動可能な中間位相(図9参照)に操作されるように設定されている。
このバルブタイミング制御装置の場合、ヒステリシスブレーキ7やサブブレーキ手段33に対してコントローラによる通電制御が行われないときに、図10に示すように中間位相(同図中b点)でエネルギー的に最も安定しており、この状態から遅角側に位相を変更するときには、図11に示すようにサブブレーキ手段33に通電することによってリターンスプリング37に抗する力をプランジャ34に付与し、逆に、進角方向に位相を変更するときには、ヒステリシスブレーキ7に通電することによってゼンマイばね6に抗する力を制動ロータ24に作用させる。
次に、このバルブタイミング制御装置の作動について説明する。
内燃機関の始動時にイグニッションキーがオンにされるまでは、ヒステリシスブレーキ7とサブブレーキ手段33はコントローラによる通電制御が行われておらず、制動ロータ24と渦巻きプレート19にはサブブレーキ手段33の摩擦力とゼンマイばね6の力が作用している。したがって、この状態でイグニッションキーがオンにされると、サブブレーキ手段33の摩擦力とゼンマイばね6の力によって機関は始動可能な中間位相に戻され、或いは、維持され、その状態においてクランキングが行われる。したがって、このとき内燃機関は確実に始動を行うことができ、たとえ、ヒステリシスブレーキ7やサブブレーキ手段33に断線等の故障があったとしても最低限機関の始動は補償される。
この状態で内燃機関が始動された後に、回転位相を遅角側に変更する場合には、サブブレーキ手段33の電磁コイル36に通電し、プランジャ34に後退方向の吸引力を作用させて制動ロータ24に作用するプランジャ34の制動力を弱め、ゼンマイばね6の付勢力によって渦巻きプレート19を増速方向に回転させる。こうして、渦巻きプレート19が増速されると、位相変更機構5が操作され、駆動リング2と従動軸部材4が遅角位相になるように回動制御される。
また、この状態から回転位相を中間位相側に変更する場合には、サブブレーキ手段33の電磁コイル36に通電する電流を弱め、完全に中間位相に戻す場合には、電磁コイル36を非通電にする。そして、回転位相を中間位相から進角側に変更する場合には、ヒステリシスブレーキ7に通電し、ゼンマイばね6の力に抗する制動力を制動ロータ24と渦巻きプレート19に作用させる。これにより、渦巻きプレート19が減速され、駆動リング2に対して相対回動することととなり、その結果、位相変更機構5が操作され、駆動リング2と従動軸部材4が進角位相になるように回動制御される。尚、このときサブブレーキ手段33の電磁コイル36は非通電の状態に維持され、制動ロータ24にはサブブレーキ手段33とヒステリシスブレーキ7の制動力が同時に作用する。このため、ヒステリシスブレーキ7の通電時には所定の進角位相に速やかに変更することができる。
また、機関停止時にイグニッションキーをオフにすると、ヒステリシスブレーキ7とサブブレーキ手段33の通電制御が行われなくなるため、制動ロータ24と渦巻きプレート19にはサブブレーキ手段33の摩擦力とゼンマイばね6の力だけが作用することとなり、カムシャフトが慣性回転している間に機関の回転位相は中間位相に戻される。尚、カムシャフトの慣性回転条件によっては回転位相は完全に中間位相に戻らないこともあるが、その場合であっても内燃機関の再始動時には上述のようにして中間位相に確実に変更される。
このバルブタイミング制御装置は、以上説明したように少なくともクランキング時に機関始動可能な中間位相に確実に戻すことができるため、機関の運転中により遅角側の回転位相領域を使用することができる。このため、例えば、燃焼の安定している所謂ホットアイドル時に吸気バルブを下死点よりも充分に遅く閉じることで実質圧縮率を下げ、燃費の向上を図ることができる。また、高回転域での加速時に吸気バルブを充分に遅く閉じることで空気の過吸効果を高め、機関出力を高めることもできる。
尚、この実施形態では、ブレーキ手段としてヒステリシスブレーキ7を採用したが、摩擦接触式のブレーキ手段を採用することも可能である。また、上記の実施形態では、サブブレーキ手段33のプランジャ34を前方に付勢する付勢部材としてコイルばね式のリターンスプリング37を採用したが、付勢部材としてはこの他にもゴム弾性体や皿ばね、空気ばね等も採用可能である。
また、サブブレーキ手段33のプランジャ34に後退方向の力を付与する操作力付与手段は電磁コイル36に限らず、油圧を用いることも可能である。
つづいて、図12〜図17に示す第2の実施形態について説明する。この実施形態のバルブタイミング制御装置は基本的な構成は第1の実施形態のものとほぼ同様であるが、サブブレーキ手段40が第1の実施形態のものと異なり、メインのブレーキ手段であるヒステリシスブレーキ107に一体に組み込まれている。この第2の実施形態の装置は、サブブレーキ手段40を含むヒステリシスブレーキ107の構成以外は第1の実施形態と同様であるため、以下ではヒステリシスブレーキ107を中心に説明し、第1の実施形態と同一部分に同一符号を付して重複する説明を省略するものとする。
ヒステリシスブレーキ107は、第1の実施形態と同様に磁気誘導部材22、内側極歯30及び外側極歯31、電磁コイル23、制動ロータ24等を備えているが、図13〜図16に示すように、内側極歯30の各極歯要素30aの頂部には永久磁石41が埋設されている。すべての永久磁石41は上面側が同極になるように配置され、例えば、図13〜図16に示すように上面側にN極が向くように配置されている。そして、各永久磁石41のN極から出た磁束は、図14に示すように、その一部が内側極歯30の磁石格納部の側壁30bを通って磁気リークし、残余の磁束は制動ロータ24を横切って外側極歯31の極歯要素31aに向かって流れ、さらに磁気誘導部材22の内部を通って各永久磁石41のS極に戻る。このとき、制動ロータ24を横切る磁束に応じた制動力が制動ロータ24と渦巻きプレート19に作用する。
また、このとき制動ロータ24と渦巻きプレート19に作用する制動力は、永久磁石41の磁力と内側極歯30側の側壁30bでの磁気リーク量の設定によって調整することができるが、この制動力は、ヒステリシスブレーキ107が非制御の状態にあるとき(非通電時)に、機関始動可能な中間位相でゼンマイばね6の力とバランスするように設定されている。
また、ヒステリシスブレーキ107の電磁コイル23はコントローラによる制御によって機関運転状態に応じて通電制御されるが、回転位相を遅角側に変更するときは永久磁石41の磁束を打ち消す向きに磁束が流れ、逆に進角側に変更するときには永久磁石41の磁束の向きと同方向に磁束が流れるように通電制御される。この実施形態においては、サブブレーキ手段40は永久磁石41と電磁コイル23によって構成されている。
次に、このバルブタイミング制御装置の作動について説明する。
内燃機関の始動時にイグニッションキーがオンにされるまでは、ヒステリシスブレーキ107の電磁コイル23は通電制御されていないため、制動ロータ24と渦巻きプレート19には永久磁石41による制動力とゼンマイばね6の力が作用している。そして、この状態からイグニッションキーがオンにされると、機関は永久磁石41とゼンマイばね6の力によって機関始動可能な中間位相に戻され、或いは、維持され、その状態においてクランキングが行われる。したがって、このとき内燃機関は確実に始動を行うことができる。また、この機関始動時の位相調整は電磁コイル23を非通電にしたまま自然に行われるものであるため、電磁コイル23の通電系統に故障があったとしても機関始動は確実に行うことができる。
この状態から機関の回転位相を遅角側に変更する場合には、ヒステリシスブレーキ107の電磁コイル23に永久磁石41の磁束を打ち消す向きに磁束が生じるように通電を行い、図15に示すように制動ロータ24に作用する制動力を弱め、或いは、ゼロにする。この結果、制動ロータ24と渦巻きプレート19がゼンマイばね6の付勢力によって増速方向に回転し、位相変更機構5が遅角位相になるように回動制御される。
この状態から機関の回転位相を中間位相側に変更する場合には、電磁コイル23の通電電流を弱め、完全に中間位相に戻す場合には、機関始動時と同様に電磁コイル23を非通電にする。これにより、制動ロータ24には、再び図14に示すように永久磁石41の制動力が作用するようになり、制動ロータ24と渦巻きプレート19は永久磁石41とコイルばね6の力がバランスする位置まで回動する。そして、回転位相を中間位相から進角側にさらに変更する場合には、電磁コイル23に永久磁石41の磁束と同じ向きの磁束が発生するように電流を流し、図16に示すように制動プレート24に永久磁石41による制動力と電磁コイル23による制動力を重ね合わせて作用させる。これにより、制動ロータ24と渦巻きプレート19が減速され、位相変更機構5がさらに進角方向に回動操作されるようになる。このとき、制動ロータ24には電磁コイル23による制動力に加えて永久磁石41による制動力が作用するため、電磁コイル23のみによって遅角位相に変更する場合に比較して迅速に位相を変更することができる。
また、機関運転状態からイグニッションキーがオフにされると、電磁コイル23の通電が行われなくなり、制動ロータ24と渦巻きプレート19には永久磁石41の制動力とゼンマイばね6の付勢力だけが作用するようになるため、カムシャフトが慣性回転している間に回転位相が中間位相に戻される。
尚、図17は、電磁コイル23の通電状態とそのときの発生制動トルクと、回転位相の関係を示す特性図であるが、同図中の記号a,b,cは、図10の特性図のエネルギー状態に対応する。
このバルブタイミング制御装置は、以上説明したように第1の実施形態と同様に機関のクランキング時までに機関始動可能な中間位相に確実に戻すことができるため、従来のものに比較して機関運転中により遅角側の回転位相領域を使用することができる。
また、この実施形態の装置は、メインのブレーキ手段として非接触状態で制動力を得ることのできるヒステリシスブレーキ107を用いたうえ、サブブレーキ手段40も永久磁石41の磁力によって同様に非接触で制動力を得られる構造を採用したため、経時使用による部材摩耗や損傷等が少ないという利点がある。
さらに、この装置の場合、メインのブレーキ手段であるヒステリシスブレーキ107の内側極歯30に永久磁石41を埋め込み、その永久磁石41による制動力を打ち消すための磁力をヒステリシスブレーキ107の電磁コイル23で発生するようにしているため、装置の構造を簡素化し、装置のコンパクト化と製造コストの削減を図ることができる。ただし、永久磁石41による制動力を打ち消す電磁コイルは別に設けることも可能である。
ところで、以上説明した二つの実施形態は、いずれも駆動リング2と従動軸部材4をリンク13を介して連結すると共に、リンク13の一端の可動操作部を駆動リング2の径方向溝11と渦巻きプレート19の渦巻き溝18に係合させた構造の位相変更機構5を採用したが、この位相変更機構5は渦巻き溝18の傾斜が緩くなるように設定することによって回転位相を一定角度に維持するための保持機構として作用させることができる。即ち、渦巻きプレート19の回転に対して渦巻き溝18の径方向の変位が緩やかになるように設定した場合、ゼンマイばね6とブレーキ手段(ヒステリシスブレーキ7)やサブブレーキ手段33の力はリンク13側に容易に伝達されるようになるが、カムシャフトの交番トルク(バルブスプリングと駆動カムのプロフィールに起因する変動トルク)はリンク13を介して渦巻きプレート19の回転に変換されにくくなり、その結果、交番トルクによって位相が変更されてしまう不具合は生じなくなる。
尚、位相を保持する保持機構としては上記の実施形態のものに限らず、例えばスプリングクラッチ等のワンワェイクラッチを採用することも可能である。また、位相変更機構5も上記の構成に限らず、付勢手段とブレーキ手段のバランスによって操作される回転操作部を有するものであれば良く、例えば、駆動回転体と従動回転体にヘリカルスプラインで係合する回転操作部を設け、その回転操作部を回動操作することによって駆動回転体と従動回転体の回転位相を変更するようなものであっても良い。
また、上記の実施形態では付勢手段としてゼンマイばね6を採用したが、ゼンマイばね6以外にも、例えば、捩りコイルばね等の他のばね手段を用いることも可能である。さらに、この実施形態のように渦巻きプレート19を用いる場合には、渦巻き溝18の傾斜が径方向に急に変化するように設定することにより、カムシャフトの交番トルクを逆に利用して付勢手段として用いることも可能である。即ち、この実施形態のようにバルブタイミング制御装置を吸気側の動弁系に用いる場合には、交番トルクの遅角成分が進角成分よりも大きいため、上記の渦巻き溝18の傾斜の設定により、カムシャフトの交番トルクを、制動ロータ24や渦巻きプレート19を遅角方向に付勢する力として利用することができる。
また、上述した二つの実施形態においては、ヒステリシスブレーキ7,107やサブブレーキ手段33の電磁コイル36を専用のコントローラで制御するようにしても良いが、内燃機関全体を制御するコントローラによって併せて制御するようにしても良い。
さらに、上記の実施形態では、クランクシャフトから駆動リング2にチェーンとスプロケットによる噛合い伝達によって動力を伝達しているが、ギヤ同士の噛合い伝達や、ベルトとプーリーによる摩擦伝達であっても良い。また、上記の実施形態では従動回転体としてカムシャフトに直結された従動軸部材4を用いたが、従動軸部材4をギヤ等を介してカムシャフトに連係させるようにしても良く、さらにカムシャフト自体を従動回転体としても良い。
次に、上記の実施形態から把握し得る請求項に記載以外の発明について、以下にその作用効果と共に記載する。
(イ) 前記ブレーキ手段は、位相変更機構の回転操作部に一体に設けられたヒステリシス材と、このヒステリシス材に臨むように非回転部材に固定設置された少なくとも一組の極歯対と、通電によって前記極歯対に磁界を生じさせて前記ヒステリシス材に制動力を付与する電磁コイルと、を備えたヒステリシスブレーキによって構成し、
ブレーキ手段の極歯対の少なくとも一方の極歯に前記サブブレーキ手段の永久磁石を設け、前記ブレーキ手段の電磁コイルを制動力発生時と逆向きに通電することにより、永久磁石の磁界を打ち消す向きの磁界を発生するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
この場合、ブレーキ手段とサブブレーキ手段で同じ電磁コイルを共用するため、装置全体の構成を簡素化することができる。また、ブレーキ手段、サブブレーキ手段のいずれも非接触状態で制動力を得ることができるため、経時使用に伴なう部材の磨耗や損傷等が少なく、装置の耐久性が高いという利点がある。さらに、この発明の場合、ブレーキ手段の制動力によって位相を変更するときには、電磁コイルと永久磁石の磁力が同じ向きに作用するため、より迅速な位相変更を実現することができる。
(ロ) 前記位相変更機構は、カムシャフト側からのトルクの入力によって回転操作部が操作されるのを阻止する保持機構を備えていることを特徴とする請求項1〜3、前記(イ)のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
この場合、クランキング時に、カムシャフトに作用する交番トルクによって回転操作部が動かされてしまうことがないため、機関が完全に始動されるまでの間、回転位相を中間位相に維持することができる。
(ハ) 前記位相変更機構は、
駆動回転体と従動回転体のいずれか一方に設けられた径方向ガイドと、
駆動回転体と従動回転体に対して相対回動可能に設けられた回転操作部と、
前記回転操作部の前記径方向ガイドに対峙する側の面に設けられた渦巻き状ガイドと、
前記径方向ガイドと渦巻き状ガイドに変位可能に案内係合される可動案内部と、
駆動回転体と従動回転体のいずれか他方のものの回転中心から離間した部位と前記可動案内部を揺動可能に連結するリンクと、を備え、
前記可動案内部と、渦巻き状ガイド及び径方向ガイドの係合部が前記保持機構を構成することを特徴とする前記(ロ)に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
この場合、渦巻き状ガイドの渦巻き形状を径方向変位に対して周方向変位が大きくなるように設定しておけば、回転操作部の回転変位はリンクの作動に容易に変換されるもの、カムシャフト側からリンクに入力される変動トルクは回転操作部の変位に変換されにくくなる。
本発明の第1の実施形態を示す縦断面図。 同実施形態を示す図1のA−A断面に対応する中間位相時の断面図。 同実施形態を示す図1のB矢視に対応する端面図。 同実施形態を示す図1のC−C断面に対応する断面図。 同実施形態を示す図1のD部の非通電時の拡大断面図。 同実施形態を示す図1のD部の通電時の拡大断面図。 同実施形態を示す図1のA−A断面に対応する最遅角位相時の断面図。 同実施形態を示す図1のA−A断面に対応する最進角位相時の断面図。 同実施形態における機関始動時のバルブタイミング特性図。 同実施形態の回転操作部に外部から付与するエネルギーと回転位相の関係を示す特性図。 同実施形態の各位相と制動トルク及び通電状態の関係を示す特性図。 本発明の第2の実施形態を示す縦断面図。 同実施形態を示す図12のE−E断面に対応する断面図。 同実施形態を示す図13のF部の機関始動時における展開した拡大断面図。 同実施形態を示す図13のF部の遅角制御時における展開した拡大断面図。 同実施形態を示す図13のF部の進角制御時における展開した拡大断面図。 同実施形態の各位相と制動トルク及び通電状態の関係を示す特性図。
符号の説明
2…駆動リング(駆動回転体)
4…従動軸部材(従動回転体)
5…位相変更機構
7…ヒステリシスブレーキ(ブレーキ手段)
19…渦巻きプレート(回転操作部)
24…制動ロータ(回転操作部)
33…サブブレーキ手段
34…プランジャ(摩擦部材、操作力付与手段)
35…ハウジング(操作力付与手段)
36…電磁コイル(操作力付与手段)
37…リターンスプリング(付勢部材)
40…サブブレーキ手段
41…永久磁石
107…ヒステリシスブレーキ(ブレーキ手段)

Claims (3)

  1. 内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動される駆動回転体と、
    この駆動回転体の動力を受けて従動回転し、その回転をカムシャフトに伝達する従動回転体と、
    前記駆動回転体に対し回転操作部を操作することによって駆動回転体と従動回転体の回転位相を変更する位相変更機構と、
    前記駆動回転体と従動回転体の回転位相が進角側と遅角側の一方に変更されるように位相変更機構の回転操作部に付勢力を付与する付勢手段と、
    この付勢手段の力に抗するように位相変更機構の回転操作部に制動力を付与するブレーキ手段と、を備え、
    機関の始動後に前記ブレーキ手段の制動力を機関の運転状態に応じて制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
    前記付勢手段に抗する制動力を非制御状態で前記回転操作部に付与し、このときの制動力と付勢力のバランスによって前記両回転体を最遅角位相と最進角位相の間の中間位相に保持するサブブレーキ手段を設けたことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  2. 前記サブブレーキ手段を、位相変更機構の回転操作部に接離する摩擦部材と、この摩擦部材を前記回転操作部に当接させる方向に付勢する付勢部材と、前記摩擦部材に付勢部材に抗する向きの操作力を付与する操作力付与手段と、を備えた構成とし、
    機関の始動後に、前記操作力付与手段を機関の運転状態に応じて制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  3. 前記サブブレーキ手段を、位相変更機構の回転操作部に制動力を作用させる永久磁石と、この永久磁石の磁界を打ち消す向きの磁界を発生する電磁コイルと、を備えた構成とし、
    機関の始動後に、前記電磁コイルを機関の運転状態に応じて制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
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