JP2005307818A - 内燃機関のバルブタイミング調節装置 - Google Patents

内燃機関のバルブタイミング調節装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更を可能とする内燃機関のバルブタイミング調節装置の提供。
【解決手段】 バルブタイミング調節装置4に備えた2ウェイクラッチによりカムトルクが正の時にカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転に連動させ、カムトルクが負の時にカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転から自由にすることでバルブタイミングを進角する。そしてカムトルクが負の時にカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転に連動させ、カムトルクが正の時にカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転から自由にすることでバルブタイミングを遅角する。このようにバルブタイミング変更はカムトルクにてなされることから2ウェイクラッチを切り替えるだけの比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、内燃機関のクランクシャフトに対してカムシャフトを相対回転させることでバルブタイミングの進角遅角を行うバルブタイミング調節装置に関する。
内燃機関の燃焼制御などのために内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブや排気バルブのバルブタイミングを変更するバルブタイミング調節装置が知られている。しかし油圧を用いてバルブタイミングを変更するバルブタイミング調節装置では、始動時や低温時などで油圧が十分でない場合にはバルブタイミングの調節が困難となることから、電動モータを用いてバルブタイミング調節を可能する装置が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
この内、特許文献1の装置では、カムシャフトに対する電動モータの制動力を制御することにより、タイミングプーリとカムシャフトとの間に設けた2つのコイルバネの付勢力とのバランス点を変更して、バルブタイミングを調節するものである。特許文献2の装置では、進角時にはコイル通電により電磁的に制動して進角駆動して通電停止後はワンウェイクラッチにて保持している。そして遅角時には電動モータによりウォームギアを回転させてワンウェイクラッチの位相を変化させ、このことによりバネの付勢力などの協力により遅角駆動するものである。
特開2000−170513号公報(第4−8頁、図4−7) 特開平10−205311号公報(第3−4頁、図1)
このような従来技術においては、いずれにしてもバルブタイミングの変更過渡時においては電動モータやコイルに通電するが、この通電時においては各種機構の制動や回転駆動のために比較的大きい電力を必要とする。このため燃費的に改善する余地が存在する。
本発明は、比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更を可能とする内燃機関のバルブタイミング調節装置の提供を目的とするものである。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング調節装置は、内燃機関のバルブタイミングの進角制御要求時に、バルブ駆動用のカムシャフトに生じるカムトルクが正である時に前記カムシャフトの回転を内燃機関のクランクシャフトの回転に連動させ、前記カムトルクが負である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転から自由にする進角許可状態とすることで前記バルブタイミングを進角させる進角制御手段と、前記バルブタイミングの遅角制御要求時に、前記カムトルクが正である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転から自由にし、前記カムトルクが負である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転に連動させる遅角許可状態とすることで前記バルブタイミングを遅角させる遅角制御手段とを備えたことを特徴とする。
バルブ駆動用のカムシャフトには、バルブ駆動の反力としてカムトルクが発生する。このカムトルクは一定でなく、クランク角に応じて正のカムトルクと負のカムトルクとを周期的に生じる。正のカムトルクではクランクシャフト側からの駆動トルクに対向してカムシャフト側の回転数を低下させようとするトルクとなり、負のカムトルクではクランクシャフト側よりもカムシャフト側の回転数を上昇させようとするトルクとなる。
進角制御手段は、バルブタイミングの進角制御要求時には、上述したごとくの進角許可状態を実現している。このことによりカムトルクが正である時にはカムシャフトの回転をクランクシャフトの回転に連動させているので、カムシャフトの回転位相がクランクシャフトに対して遅れることが無く、バルブタイミングは維持される。そしてカムトルクが負である時にはカムシャフトの回転をクランクシャフトの回転から自由にしているので、負のカムトルクによりカムシャフトの回転位相がクランクシャフトに対して進み、バルブタイミングは進角する。
したがって必要な進角が行われるまで、進角許可状態とすることにより進角側への調節において所望のバルブタイミングにすることができる。
そして遅角制御手段は、バルブタイミングの遅角制御要求時には、上述したごとくの遅角許可状態を実現している。このことによりカムトルクが負である時にはカムシャフトの回転をクランクシャフトの回転に連動させているので、カムシャフトの回転位相がクランクシャフトに対して進むことが無く、バルブタイミングは維持される。そしてカムトルクが正である時にはカムシャフトの回転をクランクシャフトの回転から自由にしているので、正のカムトルクによりカムシャフトの回転位相がクランクシャフトに対して遅れて、バルブタイミングは遅角する。
したがって必要な遅角が行われるまで、遅角許可状態とすることにより遅角側への調節において所望のバルブタイミングにすることができる。
このように進角許可状態あるいは遅角許可状態を実現することで、バルブタイミングの変更はカムトルクにより実現される。このことから大きい電力を必要とすることなく、進角許可状態あるいは遅角許可状態を実現する処理のみの比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
請求項2に記載の内燃機関のバルブタイミング調節装置では、請求項1において、前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間のトルク伝達経路に、前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの進角側相対回転を許し遅角側相対回転を禁止する進角許可状態と、前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの進角側相対回転を禁止し遅角側相対回転を許す遅角許可状態との間で切り替え可能な2ウェイクラッチを備えると共に、前記進角制御手段は、前記バルブタイミングの進角制御要求時に、前記2ウェイクラッチを進角許可状態に切り替えることにより、前記カムトルクが正である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転に連動させ、前記カムトルクが負である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転から自由にすることで前記バルブタイミングを進角させ、前記遅角制御手段は、前記バルブタイミングの遅角制御要求時に、前記2ウェイクラッチを遅角許可状態に切り替えることにより、前記カムトルクが負である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転に連動させ、前記カムトルクが正である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転から自由にすることで前記バルブタイミングを遅角させることを特徴とする。
このような2ウェイクラッチを設けて、バルブタイミングの進角制御要求時には進角許可状態に切り替えて負のカムトルクによりバルブタイミングを進角させ、バルブタイミングの遅角制御要求時には遅角許可状態に切り替えて正のカムトルクによりバルブタイミングを遅角させることができる。
このことから大きい電力を必要とすることなく、進角許可状態あるいは遅角許可状態に切り替える処理のみの比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
請求項3に記載の内燃機関のバルブタイミング調節装置では、請求項2において、前記2ウェイクラッチに対する当接方向によって前記2ウェイクラッチを進角許可状態と遅角許可状態との間で切り替える切替当接体と、該切替当接体を前記カムシャフトと同軸にて回転させる電動モータとを備えると共に、前記進角制御手段は、正トルクを前記電動モータに発生させることで生じた前記切替当接体の当接により前記2ウェイクラッチを進角許可状態に切り替え、前記遅角制御手段は、負トルクを前記電動モータに発生させることで生じた前記切替当接体の当接により前記2ウェイクラッチを遅角許可状態に切り替えることを特徴とする。
このように2ウェイクラッチへの電動モータによる切替当接体の当接方向により進角許可状態と遅角許可状態との間で切り替えるようにしても良い。
進角許可状態あるいは遅角許可状態に切り替える処理は、切替当接体の当接にて実行されることから、比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
請求項4に記載の内燃機関のバルブタイミング調節装置では、請求項3において、前記進角制御手段及び前記遅角制御手段は、内燃機関が高回転判定回転数よりも高回転である場合には、前記バルブタイミングの進角制御要求及び遅角制御要求に応じて、前記電動モータに対して前記2ウェイクラッチの状態切り替え時のトルク以上のトルク出力制御により前記バルブタイミングを調節することを特徴とする。
尚、内燃機関が高回転となると、カムトルクの正負の振幅と継続期間とが短くなる。特に負のカムトルクにおける振幅と継続期間とが短くなる。このためにカムトルクに頼っていたのではバルブタイミングの変更が困難となる場合がある。
したがって、高回転判定回転数を設けて、内燃機関が高回転判定回転数よりも高回転である場合にはバルブタイミングの進角制御要求及び遅角制御要求に対しては、2ウェイクラッチの状態切り替え時のトルク以上のトルク出力制御を電動モータに対して実施する。このことにより電動モータの出力トルクにより直接的にバルブタイミングが調節されることになる。このような電動モータによる直接的なバルブタイミング調節は内燃機関の全運転領域でなく高回転領域に限られているので、バルブタイミングの調節処理全体としては、比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
請求項5に記載の内燃機関のバルブタイミング調節装置では、請求項3又は4において、前記電動モータをモータジェネレータとして構成し、前記遅角制御手段は、前記バルブタイミングの遅角制御要求時には前記電動モータにより前記カムシャフトの回転エネルギーを回収することで負トルクを前記電動モータに発生させることを特徴とする。
このようにバルブタイミングの遅角制御要求時には回転エネルギーを回収できるので、全体として、より少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
[実施の形態1]
図1は上述した発明が適用された内燃機関のバルブ2a,2b,2c,2d(本実施の形態では吸気パルプ)における動弁機構及びバルブタイミング調節装置4を示す斜視図、図2は正面図である。尚、排気バルブにもバルブタイミング調節装置4と同じ機構が適用されているが、機構的には実質的に同じであるので、吸気バルブ側の構成を代表として説明する。
本内燃機関は、4気筒4バルブエンジンであり、カムシャフト6には各気筒毎に2つのカム8a,8b,8c,8dが設けられている。各カム8a〜8dはカムシャフト6が回転することにより、カムノーズ部分にてローラロッカーアーム10a,10b,10c,10dを介して、バルブ2a〜2dを押し下げることにより開弁させる。この時、バルブスプリング12a,12b,12c,12dの付勢力に抗してカムシャフト6は回転するので、カムシャフト6はバルブスプリング12a〜12dにより回転方向とは逆方向の駆動力を受けることになる。
又、カムノーズ部分がローラロッカーアーム10a〜10dから離れると、バルブスプリング12a〜12dの付勢力によりバルブ2a〜2dがローラロッカーアーム10a〜10dと共に押し上げられることにより閉弁される。この時、カムシャフト6はバルブスプリング12a〜12dにより回転方向の駆動力を受けることになる。
尚、図1,2及び後述する図3では、バルブ2a〜2dの開閉状態を示すためにバルブシート14a,14b,14c,14dを各バルブ2a〜2dに対応してリング形状で示している。又、バルブスプリング12a〜12dについては中間の一部のみを示している。
カムシャフト6の回転駆動力はバルブタイミング調節装置4を介して、内燃機関のクランクシャフト側から得ている。ここでバルブタイミング調節装置4について説明する。図3に動弁機構及び一部破断して示したバルブタイミング調節装置4の斜視図、図4及び図5に異なる方向から見たバルブタイミング調節装置4の分解斜視図を示す。
バルブタイミング調節装置4は、アウターレース部20、インナーレース部22、コロ・バネ部24、リリースレバー部26から構成されている。
アウターレース部20は円筒状のアウターレース28、タイミングスプロケット30及び円筒シャフト32から構成されている。アウターレース部20全体は、円筒シャフト32にてシリンダヘッドの一端に設けられたジャーナル部J(図2)にて回転可能に支持されている。タイミングスプロケット30は内燃機関のクランクシャフトにタイミングチェーンにて連結されている。このことによりアウターレース部20全体はクランクシャフトの回転に連動して内燃機関回転数の半分の回転数で回転する。
円筒状のアウターレース28の内部には、インナーレース部22が配置される。インナーレース部22は円板部34及び4つのインナーレース36を備えている。円板部34の中心には、前記アウターレース部20の円筒シャフト32の中心貫通孔32aを貫通したカムシャフト6が結合し、このことによりインナーレース部22とカムシャフト6とは一体に回転する。
図6にインナーレース部22の左側面図、図7に右側面図を示す。円板部34の縁に等角度間隔に設けられた4つのインナーレース36はそれぞれ2つのコロ・バネ収納凹部36a,36bが形成されている。これらコロ・バネ収納凹部36a,36bの内、第1コロ・バネ収納凹部36aはインナーレース部22の回転方向に対して逆方向に開き、第2コロ・バネ収納凹部36bは回転方向(図示矢印)に対して順方向に開いている。そして第1コロ・バネ収納凹部36aには回転とは逆方向に行くにつれて次第に前記アウターレース28の内周面28aに近づく傾斜面36cが形成され、第2コロ・バネ収納凹部36bには回転方向に行くにつれて次第にアウターレース28の内周面28aに近づく傾斜面36dが形成されている。
そして図8に示すごとくコロ・バネ部24のコロ40,42及びバネ44,46の各1つずつが、各コロ・バネ収納凹部36a,36bに配置されており、図9に示すごとくアウターレース28で覆われることにより、コロ40,42及びバネ44,46はコロ・バネ収納凹部36a,36b内に保持されている。
図5に示したごとくリリースレバー部26はリリースレバー50及びモータジェネレータ52を備えている。リリースレバー50はモータジェネレータ52の回転出力シャフト52aに接続されており、モータジェネレータ52により回転駆動されたり、あるいは制動がかけられる。尚、モータジェネレータ52は電動モータと発電機との両方の機能を備えているので、バッテリを電源として回転すると共に、回転エネルギーを回収してバッテリに蓄電することもできる。
リリースレバー50は円板部50a及び円板部50a上に放射状に形成されている4つのリリースアーム50bを備えている。図3に示したごとく、リリースレバー50は、前記4つのインナーレース36の内部空間に、カムシャフト6と同軸にて回転されるように配置され、各リリースアーム50bの先端は、インナーレース36の間まで伸びている。
図10に示すごとく各リリースアーム50bの先端は、アウターレース28の内周面28aに沿って両側に伸びてリリース突起50c,50dを形成している。この内、第1リリース突起50cの先端は第1コロ・バネ収納凹部36aに挿入され、第2リリース突起50dの先端は第2コロ・バネ収納凹部36bに挿入されている。
上述した構成の組み合わせにより、バルブタイミング調節装置4が形成されているが、この内、モータジェネレータ52は自身が回転しないように、図2に示すごとくタイミングチェーンを覆っているチェーンカバーCに固定されている。
バルブタイミング調節装置4からモータジェネレータ52と円板部50aとを取り去った状態の左側面図を図11に示す。タイミングスプロケット30が内燃機関のクランクシャフトの回転に連動して回転すると、タイミングスプロケット30と一体化しているアウターレース28が図示矢印の方向に回転する。コロ40,42はバネ44,46により各傾斜面36c,36dとアウターレース28の内周面28aとの間に押圧されているが、この内、第2コロ・バネ収納凹部36bでは回転方向においてアウターレース28の内周面28aと傾斜面36dとが近づくように形成されている。
バルブスプリング12a〜12dの付勢力、シリンダ内圧力及び摩擦力などの関係によりカムシャフト6にはカムトルク変動が生じる。すなわち図12に示すごとく、正のカムトルク(期間P)と負のカムトルク(期間M)とが周期的に発生する。本内燃機関は4気筒4サイクルエンジンなので1回転に2周期分のカムトルク変動が生じる。
この内、開弁時には主としてバルブスプリング12a〜12dの付勢力によりカムシャフト6にはカムトルクが正方向に機能している期間P(図12)となる。このことからアウターレース28の回転により第2コロ42が内周面28aと傾斜面36dとの間にて押圧されてインナーレース36とアウターレース28とが係合状態となる。したがってアウターレース部20の回転はインナーレース部22に伝達される。インナーレース部22の円板部34の中心部にはカムシャフト6が結合しているので、クランクシャフト側の回転はアウターレース部20、第2コロ42及びインナーレース部22を介してカムシャフト6に伝達されることになり、バルブスプリング12a〜12dの付勢力等に抗してカムシャフト6が回転する。
又、第1コロ・バネ収納凹部36aでは回転とは反対方向においてアウターレース28の内周面28aと傾斜面36cとが近づくように形成されている。閉弁時にはカムシャフト6の回転方向と同じ方向にバルブスプリング12a〜12dの付勢力が作用することにより、カムシャフト6にはカムトルクが負方向に機能する期間M(図12)となる。この時はアウターレース部20に対してインナーレース部22は相対的に順方向に回転しようとするが、第1コロ40が内周面28aと傾斜面36cとの間にて押圧されてインナーレース36とアウターレース28とが係合状態となる。したがってインナーレース部22とアウターレース部20との係合状態は維持される。
このように両方のコロ40,42が機能することで、カムシャフト6とクランクシャフトとの回転位相は変化せずバルブタイミングを維持できる。すなわち、アウターレース28、インナーレース36、コロ40,42及びバネ44,46により2ウェイクラッチが構成され、このことで、カムシャフト6とクランクシャフトとの間のトルク伝達経路に2ウェイクラッチが配置されることになる。
次にモータジェネレータ52を発電モード(回生モード)にすることによりモータジェネレータ52からリリースレバー50に対して遅角側解除レベルの制動力が与えられた場合を考える。この遅角側解除レベルの制動力により、図13の(A)に示すごとく、第2リリース突起50dは第2コロ42に当接してバネ46側へ押圧する。このことにより第2コロ42はバネ46の付勢力に抗して移動し、内周面28aと傾斜面36dとのいずれかから離れ、アウターレース28とインナーレース36との係合を解除する。
したがってアウターレース28に対してインナーレース36が相対的に遅れる方向の回転のみが許可され、進む方向の回転は禁止されることになる。このことにより、カムトルクが正である期間Pにカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転から自由にし、カムトルクが負である期間Mにカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転に連動させる遅角許可状態が実現される。こうして図12にて示した正のカムトルク発生期間Pでは、正のカムトルクによりアウターレース28に対してインナーレース36を遅らせる側へ相対回転させることができ、バルブタイミングを遅角させることができる。
モータジェネレータ52をトルク出力モードにすることにより、モータジェネレータ52からリリースレバー50に対して、タイミングスプロケット30の回転方向と同方向に進角側解除レベルの回転力が与えられた場合を考える。この進角側解除レベルの回転力により、図14の(A)に示すごとく、第1リリース突起50cは第1コロ40に当接してバネ44側へ押圧する。このことにより第1コロ40はバネ44の付勢力に抗して移動し、内周面28aと傾斜面36cとのいずれかから離れ、アウターレース28とインナーレース36との係合を解除する。
したがってアウターレース28に対してインナーレース36が相対的に進む方向の回転のみが許可され、遅れる方向の回転は禁止されることになる。このことにより、カムトルクが正である期間Pではカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転に連動させ、カムトルクが負である期間Mにカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転から自由にする進角許可状態が実現される。こうして図12にて示した負のカムトルク発生期間Mでは、負のカムトルクによりアウターレース28に対してインナーレース36を進める側へ相対回転させることができ、バルブタイミングを進角させることができる。
このようにモータジェネレータ52からリリースレバー50に与える出力により、アウターレース28とインナーレース36との間の係合解除の方向を選択できる。
更に、モータジェネレータ52からリリースレバー50に対して遅角側解除レベルより大きい制動力により、図13の(B)に示すごとく、第2リリース突起50dが第2コロ42を更に押し込むと共に、リリースアーム50b自身をインナーレース36に接触させることができる。このことによりモータジェネレータ52の制動力を直接的にインナーレース36に伝達させることができる。この状態で、モータジェネレータ52の制動力を調節することにより、正のカムトルクに依存していた遅角側解除レベルの制動力による遅角処理の場合よりも、より確実迅速にバルブタイミングを遅角させることができる。
同様に、モータジェネレータ52からリリースレバー50に対して進角側解除レベルの回転力より大きい回転力により、図14の(B)に示すごとく、第1リリース突起50cが第1コロ40を更に押し込むと共に、リリースアーム50b自身をインナーレース36に接触させることができる。このことによりモータジェネレータ52の回転力を直接的にインナーレース36に伝達させることができる。この状態で、モータジェネレータ52の回転力を調節することにより、負のカムトルクに依存していた進角側解除レベルの回転力による進角処理の場合よりも、より確実迅速にバルブタイミングを進角させることができる。
このようなバルブタイミング制御は、図1に示した、マイクロコンピュータを中心として構成されているECU(電子制御ユニット)60により実行される。ECU60はカムシャフト6に設けられたロータ62の回転からカム角センサ64にて検出される360°CA(CA:クランク角)毎に検出されるG2信号と、クランクシャフトに設けられた機関回転数センサ66から出力されるNE信号とに基づいてカム角θcを進角値(例えば吸気TDCを基準として)として求めている。更に吸気量センサ68から単位時間当たりの吸入空気量GAやその他の情報(例えば燃料噴射量やアクセル開度など)を求めて、これらの内燃機関運転状態に基づいて、目標カム角θtを算出している。そしてカム角θcが目標カム角θtとなるようにモータジェネレータ52を制御している。
カム角制御処理を図15のフローチャートに示す。本処理は一定時間周期で繰り返し実行される処理である。
本処理が開始されると、まず内燃機関の運転状態に応じたバルブタイミングを達成するために、内燃機関の運転状態(機関回転数NE及び吸入空気量GA等)の値から、目標カム角マップに基づいて目標カム角θtを算出する(S102)。
次に目標カム角θtと実際に検出されたカム角θcとの差dθが式1のごとく算出される(S104)。
[式1] dθ ← θt − θc
次に機関回転数NEが高回転判定回転数NEHより低いか否かが判定される(S106)。この高回転判定回転数NEH以上の機関回転数領域は、前記図12において示した特にカムトルクが負である振幅や期間Mが短くなって負のカムトルクのみではバルブタイミングの進角が困難となる高回転領域である。すなわち高回転判定回転数NEHはこの高回転領域の境界を示す基準回転数である。
ここでNE<NEHであれば(S106でYES)、前記図13の(A)あるいは前記図14の(A)の各解除レベルによるバルブタイミングの調節が可能であることから、次に差dθの状態が判定される(S108)。ここでdθ<0(°)であれば、すなわちバルブタイミングの遅角制御要求時には、ECU60はモータジェネレータ52に対する出力を、遅角側解除レベルの制動力となるように設定する(S110)。このことにより前記図13の(A)に示した状態となり、図16のタイミングチャートの期間(t0〜t3)に示すごとく、負のカムトルク時(t1〜t2)にはカム角θcは変化しないが正のカムトルク時(t0〜t1,t2〜t3)にはカム角θcは小さくなり目標カム角θtに近づくことになる。すなわちバルブタイミングは遅角されることになる。
一方、dθ>0であれば、すなわちバルブタイミングの進角制御要求時には、ECU60はモータジェネレータ52に対する出力を、進角側解除レベルの回転力となるように設定する(S112)。このことにより前記図14の(A)に示した状態となり、図16のタイミングチャートの期間(t4〜t7)に示すごとく、正のカムトルク時(t5〜t6)にはカム角θcは変化しないが負のカムトルク時(t4〜t5,t6〜t7)にはカム角θcは大きくなり目標カム角θtに近づくことになる。すなわちバルブタイミングは進角されることになる。
dθ=0であれば(図16:t0前、t3〜t4、t7〜)、ECU60はモータジェネレータ52に対する出力を停止することで、リリースレバー50を自由回転状態にする。このことにより遅角方向も進角方向もコロ40,42が機能して、アウターレース部20とインナーレース部22とは一体化して回転するのでバルブタイミングは保持され変化しない。尚、この時に第1リリース突起50cや第2リリース突起50dはコロ40,42に接触することがあるが、係合解除する状態にはならない。
NE≧NEHであった場合には(S106でNO)、正負の各カムトルクの振幅が小さく期間P,M(図12)も短くなる。特に負のカムトルクの振幅が小さく期間Mが短くなるので、進角側解除レベルにしたのみではバルブタイミングを進角させることが困難となる。
このためカム角通常フィードバック制御が実行される(S114)。このカム角通常フィードバック制御は、遅角側解除レベルより大きい制動力及び進角側解除レベルより大きい回転力により、前記図13の(B)あるいは前記図14の(B)の状態とすることで、直接、モータジェネレータ52の制動力及び回転力をインナーレース部22に与える。このことにより、図17のタイミングチャートに示すごとくアウターレース部20に対してインナーレース部22を遅らせたり(t10〜t11)、進めたり(t12〜t13)して、カム角θcを目標カム角θtにフィードバックすることでバルブタイミングの調節を実行する。
上述した構成において、請求項との関係は、リリースレバー50が切替当接体に、モータジェネレータ52が電動モータに相当する。カム角制御処理(図15)が進角制御手段及び遅角制御手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).カムシャフト6には、バルブ駆動の反力として図12に示したごとく正負のカムトルク期間P,Mが周期的に発生する。カム角制御処理(図15)では、バルブタイミングの進角制御要求時には進角許可状態を実現している(S112)。このことによりカムトルクが正である期間Pにはカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転に連動させているので、カムシャフト6の回転位相がクランクシャフトに対して遅れることが無く、バルブタイミングは維持される。そしてカムトルクが負である期間Mにはカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転から自由にしているので、負のカムトルクによりカムシャフト6の回転位相がクランクシャフトに対して進み、バルブタイミングは進角する。したがって必要な進角が行われるまで、進角許可状態(S112)とすることにより進角側への調節において所望のバルブタイミングにすることができる。
一方、バルブタイミングの遅角制御要求時には遅角許可状態を実現している(S110)。このことによりカムトルクが負である期間Mにはカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転に連動させているので、カムシャフト6の回転位相がクランクシャフトに対して進むことが無く、バルブタイミングは維持される。そしてカムトルクが正である期間Pにはカムシャフト6の回転をクランクシャフトの回転から自由にしているので、正のカムトルクによりカムシャフト6の回転位相がクランクシャフトに対して遅れて、バルブタイミングは遅角する。したがって必要な遅角が行われるまで、遅角許可状態(S110)とすることにより遅角側への調節において所望のバルブタイミングにすることができる。
このように進角許可状態(S112)あるいは遅角許可状態(S110)を実現することで、バルブタイミングの変更はカムトルクにより実現される。このことから、モータジェネレータ52に対して大きい電力を必要とすることなく、2ウェイクラッチを切り替えるだけの比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
(ロ).2ウェイクラッチの切り替えは、モータジェネレータ52によるリリースレバー50の当接により実行しているので、切り替え自体も比較的少ないエネルギー消費で済み、バルブタイミングの変更処理全体としても比較的少ないエネルギー消費で可能となる。
(ハ).内燃機関が高回転となると、カムトルクの正負の振幅が小さくなり継続期間(図12:P,M)も短くなる。特に負のカムトルクにおいて顕著である。このためにカムトルクに頼っていたのではバルブタイミングの変更が困難となる場合がある。本実施の形態では高回転判定回転数NEHを設け、内燃機関が高回転判定回転数NEHよりも高回転側である場合にはバルブタイミングの進角制御要求及び遅角制御要求に対しては、2ウェイクラッチの状態切り替え時のトルク以上のトルク出力制御を、モータジェネレータ52に対して実施する(S114)。
このことによりモータジェネレータ52により直接的にバルブタイミングが調節されることになる。このようなモータジェネレータ52による直接的なバルブタイミング調節は内燃機関の全運転領域でなく高回転領域に限られているので、バルブタイミングの調節処理全体としては、比較的少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
(ニ).バルブタイミングの遅角制御要求時にはモータジェネレータ52によりカムシャフト6の回転エネルギーを回収している。このため、バルブタイミングの調節処理全体として、より少ないエネルギー消費でバルブタイミングの変更が可能となる。
[その他の実施の形態]
(a).前記実施の形態において、モータジェネレータ52でなく通常の電動モータでも良く、制動時には逆回転方向の回転力を出力する。
(b).前記実施の形態では、吸気バルブと排気バルブとの両方に対してバルブタイミング調節装置が用いられて、吸気バルブタイミングと排気バルブタイミングとの両方のバルブタイミングが内燃機関の運転状態に応じて調節されていたが、吸気バルブのバルブタイミングのみを調節しても良いし、排気バルブタイミングのみを調節しても良い。
実施の形態1の動弁機構及びバルブタイミング調節装置の斜視図。 同じく動弁機構及びバルブタイミング調節装置の正面図。 同じく動弁機構及びバルブタイミング調節装置の部分破断斜視図。 同じくバルブタイミング調節装置の分解斜視図。 同じくバルブタイミング調節装置の分解斜視図。 同じくインナーレース部の左側面図。 同じくインナーレース部の右側面図。 同じくインナーレース部とコロ・バネ部との組み合わせを示す斜視図。 同じくアウターレース部、インナーレース部及びコロ・バネ部との組み合わせを示す斜視図。 同じくリリースレバー、インナーレース部及びコロ・バネ部との組み合わせを示す部分破断斜視図。 同じくアウターレース部、リリースレバー、インナーレース部及びコロ・バネ部との組み合わせを示す部分破断左側面図。 同じくカムシャフトに生じるカムトルク変動を示すグラフ。 同じくバルブタイミング遅角時のリリース突起の当接状態説明図。 同じくバルブタイミング進角時のリリース突起の当接状態説明図。 同じくカム角制御処理のフローチャート。 同じくカムトルクに基づくバルブタイミング制御の一例を示すタイミングチャート。 同じくモータジェネレータ出力に基づくバルブタイミング制御の一例を示すタイミングチャート。
符号の説明
2a,2b,2c,2d…内燃機関のバルブ、4…バルブタイミング調節装置、6…カムシャフト、8a,8b,8c,8d…カム、10a,10b,10c,10d…ローラロッカーアーム、12a,12b,12c,12d…バルブスプリング、14a,14b,14c,14d…バルブシート、20…アウターレース部、22…インナーレース部、24…コロ・バネ部、26…リリースレバー部、28…アウターレース、28a…内周面、30…タイミングスプロケット、32…円筒シャフト、32a…中心貫通孔、34…円板部、36…インナーレース、36a…第1コロ・バネ収納凹部、36b…第2コロ・バネ収納凹部、36c,36d…傾斜面、40…第1コロ、42…第2コロ、44,46…バネ、50…リリースレバー、50a…円板部、50b…リリースアーム、50c…第1リリース突起、50d…第2リリース突起、52…モータジェネレータ、52a…回転出力シャフト、60…ECU、62…ロータ、64…カム角センサ、66…機関回転数センサ、68…吸気量センサ、C…チェーンカバー、J…ジャーナル部。

Claims (5)

  1. 内燃機関のバルブタイミングの進角制御要求時に、バルブ駆動用のカムシャフトに生じるカムトルクが正である時に前記カムシャフトの回転を内燃機関のクランクシャフトの回転に連動させ、前記カムトルクが負である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転から自由にする進角許可状態とすることで前記バルブタイミングを進角させる進角制御手段と、
    前記バルブタイミングの遅角制御要求時に、前記カムトルクが正である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転から自由にし、前記カムトルクが負である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転に連動させる遅角許可状態とすることで前記バルブタイミングを遅角させる遅角制御手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング調節装置。
  2. 請求項1において、前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間のトルク伝達経路に、前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの進角側相対回転を許し遅角側相対回転を禁止する進角許可状態と、前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの進角側相対回転を禁止し遅角側相対回転を許す遅角許可状態との間で切り替え可能な2ウェイクラッチを備えると共に、
    前記進角制御手段は、前記バルブタイミングの進角制御要求時に、前記2ウェイクラッチを進角許可状態に切り替えることにより、前記カムトルクが正である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転に連動させ、前記カムトルクが負である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転から自由にすることで前記バルブタイミングを進角させ、
    前記遅角制御手段は、前記バルブタイミングの遅角制御要求時に、前記2ウェイクラッチを遅角許可状態に切り替えることにより、前記カムトルクが負である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転に連動させ、前記カムトルクが正である時に前記カムシャフトの回転を前記クランクシャフトの回転から自由にすることで前記バルブタイミングを遅角させることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング調節装置。
  3. 請求項2において、前記2ウェイクラッチに対する当接方向によって前記2ウェイクラッチを進角許可状態と遅角許可状態との間で切り替える切替当接体と、該切替当接体を前記カムシャフトと同軸にて回転させる電動モータとを備えると共に、
    前記進角制御手段は、正トルクを前記電動モータに発生させることで生じた前記切替当接体の当接により前記2ウェイクラッチを進角許可状態に切り替え、
    前記遅角制御手段は、負トルクを前記電動モータに発生させることで生じた前記切替当接体の当接により前記2ウェイクラッチを遅角許可状態に切り替えることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング調節装置。
  4. 請求項3において、前記進角制御手段及び前記遅角制御手段は、内燃機関が高回転判定回転数よりも高回転である場合には、前記バルブタイミングの進角制御要求及び遅角制御要求に応じて、前記電動モータに対して前記2ウェイクラッチの状態切り替え時のトルク以上のトルク出力制御により前記バルブタイミングを調節することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング調節装置。
  5. 請求項3又は4において、前記電動モータをモータジェネレータとして構成し、前記遅角制御手段は、前記バルブタイミングの遅角制御要求時には前記電動モータにより前記カムシャフトの回転エネルギーを回収することで負トルクを前記電動モータに発生させることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング調節装置。
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