しかし、本発明者らが鋭意研究を行った結果、特許文献1の流体ブレーキ装置では、以下の要因によりブレーキ特性の変化を惹起するおそれのあることが、判明したのである。その要因とは、磁束ガイド及びブレーキ軸間のシールギャップにおいて、捕捉状態にある磁気粘性流体が変質することにある。これは、非磁性のベース液に磁性粒子が分散されてなる磁気粘性流体に、ブレーキ軸の回転による遠心力が作用することで、当該流体の成分のうちシールギャップを通じた案内磁束の作用を受けることがないベース液は、外周側となる磁束ガイド側に偏り易くなるためである。こうして偏ったベース液は、遠心力の作用によって磁束ガイドに押し付け続けられることで、シールギャップから軸方向へ逃げ易くなるので、当該シールギャップにおいては、ベース液の減少による磁気粘性流体の変質が生じてしまう。
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、磁気粘性流体の漏出及び変質によるブレーキ特性の変化を回避する流体ブレーキ装置、並びにそれを備えたバルブタイミング調整装置を、提供することにある。
請求項1に記載の発明は、流体室を内部に形成する筐体と、非磁性のベース液に磁性粒子が分散されてなり、流体室に封入され、通過する磁束に応じて粘度が変化する磁気粘性流体と、流体室の磁気粘性流体に磁束を通過させることにより、磁気粘性流体の粘度を可変制御する粘度制御手段と、筐体を内外に貫通するブレーキ軸を有し、流体室の磁気粘性流体と接触することにより、磁気粘性流体の粘度に応じたブレーキトルクが入力されるブレーキ回転体と、筐体においてブレーキ軸を回転方向に沿って囲む形態に設けられ、流体室に連通するシールギャップをブレーキ軸との間に形成し、当該シールギャップを通じてブレーキ軸に案内する磁束を発生する磁気シールスリーブと、備える流体ブレーキ装置であって、磁気シールスリーブは、内周側のブレーキ軸との間に形成のシールギャップを通じて磁束を当該ブレーキ軸へ案内する磁束ガイドが、設けられてなり、ブレーキ軸の回転方向において、磁束ガイドの内周面の軸長が変化することを特徴とする。
この発明によると、磁気シールスリーブの磁束ガイドとブレーキ軸と間のシールギャップへ流体室から流入することになる磁気粘性流体は、磁束ガイドからブレーキ軸へ当該ギャップを通じて案内される磁束の作用によって粘度上昇することで、膜状に捕捉される。こうしてシールギャップに形成されるシール膜は、筐体内部側から筐体外部側へ向かう磁気粘性流体の流動につき、流体自身で抑制する自己シール機能を、果たし得る。したがって、磁気粘性流体が筐体外部へ漏出することによるブレーキ特性の変化を、回避可能となる。
それと共に、磁気シールスリーブのうち内周面の軸長がブレーキ軸の回転方向にて変化する磁束ガイドは、内周側のブレーキ軸との間に形成するシールギャップの磁束通過部分の縦断面積を、当該回転方向にて変化させる。このように磁束通過部分の縦断面積が変化することになるシールギャップでは、捕捉状態にある磁気粘性流体がブレーキ軸の回転に伴って圧縮及び拡散を繰り返すことで、攪拌される。故に、ブレーキ軸の回転によって遠心力が作用する磁気粘性流体の成分のうち、シールギャップを通じた案内磁束の作用を受けない非磁性のベース液は、当該回転に伴う攪拌機能によって、外周側となる磁束ガイド側には偏り難くなる。また、そうした偏りが生じたとしても、攪拌機能によってベース液は、磁束ガイドへの押し付けを抑制され得る。したがって、シールギャップからベース液が逃げて減少することによる磁気粘性流体の変質、ひいては当該変質によるブレーキ特性の変化を回避可能となるのである。
請求項2に記載の発明によると、磁束ガイドは、軸方向を向く基準面から突出することにより内周面の軸長を拡大変化させる突出部を、有する。このように、磁気シールスリーブの磁束ガイドにおいて軸方向を向く基準面から突出する突出部によれば、ブレーキ軸の回転方向のうち当該突出箇所では、磁束ガイドの内周面の軸長を確実に拡大変化させることができる。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を確固たるものとして、獲得可能となる。
請求項3に記載の発明によると、ブレーキ軸は、外周側の磁気シールスリーブのうち磁束ガイドとしてのスリーブ側磁束ガイドへ向かって突出することにより、当該スリーブ側磁束ガイドからシールギャップを通じて磁束を案内される軸側磁束ガイドが、設けられてなる。このようにブレーキ軸の軸側磁束ガイドは、外周側の磁気シールスリーブのうちスリーブ側磁束ガイドへと向かって突出することで、当該スリーブ側磁束ガイドに近付けられ得る。これによれば、スリーブ側磁束ガイドから軸側磁束ガイドへの案内磁束が通過するシールギャップの幅径につき、可及的に小さく設定することができる。故に、そうした小幅径のシールギャップを通じることで磁束がスリーブ側磁束ガイドから軸側磁束ガイドへと集中し、当該ギャップでの磁気粘性流体の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を齎すための攪拌機能を確保しつつ、磁気粘性流体の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を高めることが、可能となる。
請求項4に記載の発明によると、スリーブ側磁束ガイドは、軸方向を向く基準面から突出することにより、当該スリーブ側磁束ガイドの内周面の軸長を軸側磁束ガイドの外周面の軸長よりも拡大変化させる突出部を、有する。このように、スリーブ側磁束ガイドにおいて軸方向を向く基準面から突出する突出部によれば、ブレーキ軸の回転方向のうち当該突出箇所にて、スリーブ側磁束ガイドの内周面の軸長を確実に拡大変化させることができる。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を確固たるものとして、獲得可能となる。しかも、基準面からの突出部の突出箇所においてスリーブ側磁束ガイドの内周面の軸長が軸側磁束ガイドの外周面の軸長よりも拡大変化する構成では、スリーブ側磁束ガイドのうち当該基準面の形成部分と、可及的に短軸長に形成可能な軸側磁束ガイドとの間にて、磁束密度を高め易くなる。これによれば、スリーブ側磁束ガイド及び軸側磁束ガイド間のギャップにおいて磁気粘性流体の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上するので、磁気粘性流体の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を高めることも、可能となる。
請求項5に記載の発明によると、磁束ガイドの内周面の軸長は、ブレーキ軸の回転方向の複数個所において変化する。かかる変化形態によれば、磁気シールスリーブの磁束ガイドとブレーキ軸との間においてシールギャップの磁束通過部分の縦断面積は、ブレーキ軸の回転方向の複数個所にて変化することになる。故に、シールギャップにおいては、捕捉状態にある磁気粘性流体がブレーキ軸の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことになるので、攪拌機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を、高めることができるのである。
請求項6に記載の発明は、流体室を内部に形成する筐体と、非磁性のベース液に磁性粒子が分散されてなり、流体室に封入され、通過する磁束に応じて粘度が変化する磁気粘性流体と、流体室の磁気粘性流体に磁束を通過させることにより、磁気粘性流体の粘度を可変制御する粘度制御手段と、筐体を内外に貫通するブレーキ軸を有し、流体室の磁気粘性流体と接触することにより、磁気粘性流体の粘度に応じたブレーキトルクが入力されるブレーキ回転体と、筐体においてブレーキ軸を回転方向に沿って囲む形態に設けられ、流体室に連通するシールギャップをブレーキ軸との間に形成し、当該シールギャップを通じてブレーキ軸に案内する磁束を発生する磁気シールスリーブと、備える流体ブレーキ装置であって、磁気シールスリーブは、内周側のブレーキ軸との間に形成のシールギャップを通じて磁束を当該ブレーキ軸へ案内する磁束ガイドが、設けられてなり、ブレーキ軸の回転方向において、磁束ガイドの内周面の内径が変化することを特徴とする。
この発明によると、磁気シールスリーブの磁束ガイドとブレーキ軸と間のシールギャップへ流体室から流入することになる磁気粘性流体は、磁束ガイドからブレーキ軸へ当該ギャップを通じて案内される磁束の作用によって粘度上昇することで、膜状に捕捉される。こうしてシールギャップに形成されるシール膜は、筐体内部側から筐体外部側へ向かう磁気粘性流体の流動につき、流体自身で抑制する自己シール機能を、果たし得る。したがって、磁気粘性流体が筐体外部へ漏出することによるブレーキ特性の変化を、回避可能となる。
それと共に、磁気シールスリーブのうち内周面の内径がブレーキ軸の回転方向にて変化する磁束ガイドは、内周側のブレーキ軸との間に形成するシールギャップの磁束通過部分の縦断面積を、当該回転方向にて変化させる。このように磁束通過部分の縦断面積が変化することになるシールギャップでは、捕捉状態にある磁気粘性流体が当該ブレーキ軸の回転に伴って圧縮及び拡散を繰り返すことで、攪拌される。故に、ブレーキ軸の回転によって遠心力が作用する磁気粘性流体の成分のうち、シールギャップを通じた案内磁束の作用を受けない非磁性のベース液は、当該回転に伴う攪拌機能によって、外周側となる磁束ガイド側には偏り難くなる。また、そうした偏りが生じたとしても、攪拌機能によってベース液は、磁束ガイドへの押し付けを抑制され得る。したがって、シールギャップからベース液が逃げて減少することによる磁気粘性流体の変質、ひいては当該変質によるブレーキ特性の変化を回避可能となるのである。
請求項7に記載の発明によると、磁束ガイドは、内周面から凹陥することにより当該内周面の内径を拡大変化させる凹部を、有する。このように、磁気シールスリーブにおいて磁束ガイドの内周面から凹陥する凹部によれば、ブレーキ軸の回転方向のうち当該凹陥箇所では、磁束ガイドの内周面の内径を確実に拡大変化させることができる。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を確固たるものとして、獲得可能となる。
請求項8に記載の発明によると、ブレーキ軸は、外周側の磁気シールスリーブのうち磁束ガイドとしてのスリーブ側磁束ガイドへ向かって突出することにより、当該スリーブ側磁束ガイドからシールギャップを通じて磁束を案内される軸側磁束ガイドが、設けられてなる。このようにブレーキ軸の軸側磁束ガイドは、外周側の磁気シールスリーブのうちスリーブ側磁束ガイドへと向かって突出することで、当該スリーブ側磁束ガイドに近付けられ得る。これによれば、スリーブ側磁束ガイドから軸側磁束ガイドへの案内磁束が通過するシールギャップの幅径につき、当該スリーブ側磁束ガイドの内周面の内径変化によって攪拌機能に必要な変化が生じる範囲で、可及的に小さく設定可能することができる。故に、そうした小幅径のシールギャップを通じることで磁束がスリーブ側磁束ガイドから軸側磁束ガイドへと集中し、当該ギャップでの磁気粘性流体の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を齎すための攪拌機能を確保しつつ、磁気粘性流体の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を高めることが、可能となる。
請求項9に記載の発明によると、磁束ガイドの内周面の内径は、ブレーキ軸の回転方向の複数個所において変化する。かかる変化形態によれば、磁気シールスリーブの磁束ガイドとブレーキ軸との間においてシールギャップの磁束通過部分の縦断面積は、ブレーキ軸の回転方向の複数個所にて変化することになる。故に、シールギャップにおいては、捕捉状態にある磁気粘性流体がブレーキ軸の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことになるので、攪拌機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を、高めることができるのである。
請求項10に記載の発明によると、磁気シールスリーブは、ブレーキ軸の外周側に配置される筒状の永久磁石のうち磁極により磁束を発生する軸方向端部に、当該永久磁石の発生磁束をブレーキ軸へ案内する環板状の磁束ガイドが、隣接して設けられてなる。このような構成の磁気シールスリーブにおいて、ブレーキ軸の外周側に配置される筒状永久磁石が軸方向端部の磁極によって発生する磁束は、当該軸方向端部に隣接する環板状磁束ガイドから集中してブレーキ軸へ案内されることとなる。かかる磁束の集中案内作用によれば、磁束ガイド及びブレーキ軸間のシールギャップでは磁束の通過密度が増大し、磁気粘性流体の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を、高めることができるのである。
請求項11に記載の発明は、流体室を内部に形成する筐体と、非磁性のベース液に磁性粒子が分散されてなり、流体室に封入され、通過する磁束に応じて粘度が変化する磁気粘性流体と、流体室の磁気粘性流体に磁束を通過させることにより、磁気粘性流体の粘度を可変制御する粘度制御手段と、筐体を内外に貫通するブレーキ軸を有し、流体室の磁気粘性流体と接触することにより、磁気粘性流体の粘度に応じたブレーキトルクが入力されるブレーキ回転体と、筐体においてブレーキ軸を回転方向に沿って囲む形態に設けられ、流体室に連通するシールギャップをブレーキ軸との間に形成し、当該シールギャップを通じてブレーキ軸に案内する磁束を発生する磁気シールスリーブと、備える流体ブレーキ装置であって、ブレーキ軸は、外周側の磁気シールスリーブへ向かって突出することにより、当該磁気シールスリーブとの間に形成のシールギャップを通じて磁束を案内される磁束ガイドが、設けられてなり、ブレーキ軸の回転方向において、磁束ガイドの外周面の軸長が変化することを特徴とする。
この発明によると、磁気シールスリーブとブレーキ軸の磁束ガイドとの間のシールギャップへ流体室から流入することになる磁気粘性流体は、磁気シールスリーブから磁束ガイドへ当該ギャップを通じて案内される磁束の作用によって粘度上昇することで、膜状に捕捉される。こうしてシールギャップに形成されるシール膜は、筐体内部側から筐体外部側へ向かう磁気粘性流体の流動につき、流体自身で抑制する自己シール機能を、果たし得る。したがって、磁気粘性流体が筐体外部へ漏出することによるブレーキ特性の変化を、回避可能となる。
それと共に、ブレーキ軸のうち外周側へ突出した外周面の軸長が回転方向にて変化する磁束ガイドは、外周側の磁気シールスリーブとの間に形成するシールギャップの磁束通過部分の縦断面積を、当該回転方向にて変化させる。このように磁束通過部分の縦断面積が変化することになるシールギャップでは、捕捉状態にある磁気粘性流体がブレーキ軸の回転に伴って圧縮及び拡散を繰り返すことで、攪拌される。故に、ブレーキ軸の回転によって遠心力が作用する磁気粘性流体の成分のうち、シールギャップを通じた案内磁束の作用を受けない非磁性のベース液は、当該回転に伴う攪拌機能によって、外周側となる磁気シールスリーブ側には偏り難くなる。また、そうした偏りが生じたとしても、攪拌機能によってベース液は、磁気シールスリーブへの押し付けを抑制され得る。したがって、シールギャップからベース液が逃げて減少することによる磁気粘性流体の変質、ひいては当該変質によるブレーキ特性の変化を回避可能となるのである。
請求項12に記載の発明によると、磁束ガイドは、軸方向を向く基準面から突出することにより外周面の軸長を拡大変化させる突出部を、有する。このように、ブレーキ軸の磁束ガイドにおいて軸方向を向く基準面から突出する突出部によれば、ブレーキ軸の回転方向のうち当該突出箇所では、磁束ガイドの外周面の軸長を確実に拡大変化させることができる。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を確固たるものとして、獲得可能となる。
請求項13に記載の発明によると、磁気シールスリーブは、内周側のブレーキ軸のうち磁束ガイドとしての軸側磁束ガイドへ向かって突出することにより、シールギャップを通じて磁束を当該軸側磁束ガイドへ案内するスリーブ側磁束ガイドが、設けられてなる。このように磁気シールスリーブのスリーブ側磁束ガイドは、内周側のブレーキ軸のうち軸側磁束ガイドへと向かって突出することで、当該軸側磁束ガイドに近付けられ得る。これによれば、スリーブ側磁束ガイドから軸側磁束ガイドへの案内磁束が通過するシールギャップの幅径につき、可及的に小さく設定することができる。故に、そうした小幅径のシールギャップを通じることで磁束がスリーブ側磁束ガイドから軸側磁束ガイドへと集中し、当該ギャップでの磁気粘性流体の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を齎すための攪拌機能を確保しつつ、磁気粘性流体の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を高めることが、可能となる。
請求項14に記載の発明によると、軸側磁束ガイドは、軸方向を向く基準面から突出することにより、当該軸側磁束ガイドの外周面の軸長をスリーブ側磁束ガイドの内周面の軸長よりも拡大変化させる突出部を、有する。このように、軸側磁束ガイドにおいて軸方向を向く基準面から突出する突出部によれば、ブレーキ軸の回転方向のうち当該突出箇所にて、軸側磁束ガイドの外周面の軸長を確実に拡大変化させることができる。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を確固たるものとして、獲得可能となる。しかも、基準面からの突出部の突出箇所において軸側磁束ガイドの外周面の軸長がスリーブ側磁束ガイドの内周面の軸長よりも拡大変化する構成では、軸側磁束ガイドのうち当該基準面の形成部分と、可及的に短軸長に形成可能なスリーブ側磁束ガイドとの間にて、磁束密度を高め易くなる。これによれば、スリーブ側磁束ガイド及び軸側磁束ガイド間のギャップにおいて磁気粘性流体の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上するので、磁気粘性流体の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を高めることも、可能である。
請求項15に記載の発明によると、磁束ガイドの外周面の軸長は、ブレーキ軸の回転方向の複数個所において変化する。かかる変化形態によれば、磁気シールスリーブとブレーキ軸の磁束ガイドとの間においてシールギャップの磁束通過部分の縦断面積は、ブレーキ軸の回転方向の複数個所にて変化することになる。故に、シールギャップにおいては、捕捉状態にある磁気粘性流体がブレーキ軸の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことになるので、攪拌機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を、高めることができるのである。
請求項16に記載の発明は、流体室を内部に形成する筐体と、非磁性のベース液に磁性粒子が分散されてなり、流体室に封入され、通過する磁束に応じて粘度が変化する磁気粘性流体と、流体室の磁気粘性流体に磁束を通過させることにより、磁気粘性流体の粘度を可変制御する粘度制御手段と、筐体を内外に貫通するブレーキ軸を有し、流体室の磁気粘性流体と接触することにより、磁気粘性流体の粘度に応じたブレーキトルクが入力されるブレーキ回転体と、筐体においてブレーキ軸を回転方向に沿って囲む形態に設けられ、流体室に連通するシールギャップをブレーキ軸との間に形成し、当該シールギャップを通じてブレーキ軸に案内する磁束を発生する磁気シールスリーブと、備える流体ブレーキ装置であって、ブレーキ軸は、外周側の磁気シールスリーブへ向かって突出することにより、当該磁気シールスリーブとの間に形成のシールギャップを通じて磁束を案内される磁束ガイドが、設けられてなり、ブレーキ軸の回転方向において、磁束ガイドの外周面の外径が変化することを特徴とする。
この発明によると、磁気シールスリーブとブレーキ軸の磁束ガイドとの間のシールギャップへ流体室から流入することになる磁気粘性流体は、磁気シールスリーブから磁束ガイドへ当該ギャップを通じて案内される磁束の作用によって粘度上昇することで、膜状に捕捉される。こうしてシールギャップに形成されるシール膜は、筐体内部側から筐体外部側へ向かう磁気粘性流体の流動につき、流体自身で抑制する自己シール機能を、果たし得る。したがって、磁気粘性流体が筐体外部へ漏出することによるブレーキ特性の変化を、回避可能となる。
それと共に、ブレーキ軸のうち外周側へ突出した外周面の外径が回転方向にて変化する磁束ガイドは、外周側の磁気シールスリーブとの間に形成するシールギャップの磁束通過部分の縦断面積を、当該回転方向にて変化させる。このように磁束通過部分の縦断面積が変化することになるシールギャップでは、捕捉状態にある磁気粘性流体がブレーキ軸の回転に伴って圧縮及び拡散を繰り返すことで、攪拌される。故に、ブレーキ軸の回転によって遠心力が作用する磁気粘性流体の成分のうち、シールギャップを通じた案内磁束の作用を受けない非磁性のベース液は、当該回転に伴う攪拌機能によって、外周側となる磁気シールスリーブ側には偏り難くなる。また、そうした偏りが生じたとしても、攪拌機能によってベース液は、磁気シールスリーブへの押し付けを抑制され得る。したがって、シールギャップからベース液が逃げて減少することによる磁気粘性流体の変質、ひいては当該変質によるブレーキ特性の変化を回避可能となるのである。
請求項17に記載の発明によると、磁束ガイドは、外周面から凹陥することにより当該外周面の外径を拡大変化させる凹部を、有することを特徴とする。このように、ブレーキ軸において磁束ガイドの外周面から凹陥する凹部によれば、ブレーキ軸の回転方向のうち当該凹陥箇所では、磁束ガイドの外周面の外径を確実に拡大変化させることができる。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を確固たるものとして、獲得可能となる。
請求項18に記載の発明によると、磁気シールスリーブは、内周側のブレーキ軸のうち磁束ガイドとしての軸側磁束ガイドへ向かって突出することにより、シールギャップを通じて磁束を当該軸側磁束ガイドへ案内するスリーブ側磁束ガイドが、設けられてなる。このように磁気シールスリーブのスリーブ側磁束ガイドは、内周側のブレーキ軸のうち軸側磁束ガイドへと向かって突出することで、当該軸側磁束ガイドに近付けられ得る。これによれば、スリーブ側磁束ガイドから軸側磁束ガイドへの案内磁束が通過するシールギャップの幅径につき、当該軸側磁束ガイドの外周面の外径変化によって攪拌機能に必要な変化が生じる範囲で、可及的に小さく設定することができる。故に、そうした小幅径のシールギャップを通じることで磁束がスリーブ側磁束ガイドから軸側磁束ガイドへと集中し、当該ギャップでの磁気粘性流体の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を齎すための攪拌機能を確保しつつ、磁気粘性流体の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を高めることが、可能となる。
請求項19に記載の発明によると、磁束ガイドの外周面の外径は、ブレーキ軸の回転方向の複数個所において変化する。かかる変化形態によれば、磁気シールスリーブとブレーキ軸の磁束ガイドとの間においてシールギャップの磁束通過部分の縦断面積は、ブレーキ軸の回転方向の複数個所にて変化することになる。故に、シールギャップにおいては、捕捉状態にある磁気粘性流体がブレーキ軸の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことになるので、攪拌機能が向上する。したがって、磁気粘性流体の変質によるブレーキ特性変化の回避効果を、高めることができるのである。
尚、以上説明した請求項1〜19の発明である流体ブレーキ装置において、磁気シールスリーブ及びブレーキ軸の特徴的構成については、磁気粘性流体を用いたシール構造に関する発明として、流体ブレーキ装置以外の各種装置、例えば回転モータ等にも適用可能である。
請求項20に記載の発明は、内燃機関においてクランク軸からのトルク伝達によりカム軸が開閉する動弁のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、請求項1〜19のいずれか一項に記載の流体ブレーキ装置と、流体ブレーキ装置の筐体の外部においてブレーキ軸と連繋し、当該流体ブレーキ装置のブレーキ回転体へ入力されたブレーキトルクに応じてクランク軸及びカム軸の間の相対位相を調整する位相調整機構と、
を備えることを特徴とする。
この発明の流体ブレーキ装置では、磁気粘性流体による自己シール機能及び磁気粘性流体の攪拌機能が発揮され得るので、磁気粘性流体の漏出及び変質によるブレーキ特性の変化を回避して、当該特性が左右する機関位相の調整精度を高精度に維持することが可能である。さらに、流体ブレーキ装置において磁気粘性流体が形成するシール膜によれば、ブレーキ軸へ与える摩擦抵抗が低減され得るので、当該摩擦抵抗に起因して内燃機関の燃費低下を招くトルクロスについても、回避可能である。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態による流体ブレーキ装置100を備えたバルブタイミング調整装置1を、示している。バルブタイミング調整装置1は車両に搭載され、内燃機関のクランク軸(図示しない)からカム軸2へ機関トルクを伝達する伝達系に設けられている。ここでカム軸2は、内燃機関の「動弁」のうち吸気弁(図示しない)を機関トルクの伝達によって開閉するものであり、バルブタイミング調整装置1は、当該吸気弁のバルブタイミングを調整する。
図1〜3に示すようにバルブタイミング調整装置1は、流体ブレーキ装置100に加えて、通電制御回路200及び位相調整機構300等を組み合わせてなり、クランク軸に対するカム軸2の相対位相としての機関位相を調整することにより、所望のバルブタイミングを実現する。
(流体ブレーキ装置)
図1に示す電動式の流体ブレーキ装置100は、筐体110、ブレーキ回転体130、磁気粘性流体140、シール構造160及びソレノイドコイル150を備えている。
全体として中空形状の筐体110は、固定部材111及びカバー部材112を有している。段付円筒状の固定部材111は磁性材により形成され、内燃機関の固定節であるチェーンケース(図示しない)に固定される。円形皿状のカバー部材112は、固定部材111と同質又は異質の磁性材により形成され、軸方向に固定部材111を挟んで位相調整機構300とは反対側に配置されている。固定部材111に同軸上に且つ液密に嵌入固定されるカバー部材112は、固定部材111との間の空間部114を、筐体110内部の流体室114として形成している。
ブレーキ回転体130は磁性材により形成され、ブレーキ軸131及びブレーキロータ132を有している。シャフト状のブレーキ軸131は、筐体110のうち位相調整機構300側の固定部材111を内外に貫通し、当該筐体110の外部側の軸方向端部にて位相調整機構300と連繋している。ブレーキ軸131の軸方向中間部は、筐体110のうち固定部材111に設けられた軸受116により、回転可能に支持されている。これらの構成によりブレーキ回転体130は、内燃機関の運転中にクランク軸から出力される機関トルクが位相調整機構300から伝達されることで、図2,3の反時計方向となる一定方向に回転する。
図1に示すように円環板状のブレーキロータ132は、ブレーキ軸131のうち位相調整機構300とは反対側の軸方向端部から外周側へ突出し、筐体110内部の流体室114に収容されている。かかる収容により流体室114は、ブレーキロータ132と固定部材111とに軸方向に挟まれる部分を磁気ギャップ114aとして有し、またブレーキロータ132とカバー部材112とに軸方向に挟まれる部分を磁気ギャップ114bとして有している。
このような磁気ギャップ114a,114bを有してなる流体室114には、磁気粘性流体140が封入されている。ここで、機能性流体の一種である磁気粘性流体140は、非磁性のベース液に磁性粒子を懸濁状に分散させてなる流体である。磁気粘性流体140のベース液としては、例えばオイル等といった液状の非磁性材が用いられ、より好ましくは内燃機関の潤滑オイルと同種のオイルが用いられる。磁気粘性流体140の磁性粒子としては、例えばカルボニル鉄等といった粉状の磁性材が用いられる。こうした成分構成の磁気粘性流体140は、磁束の通過により当該通過磁束の密度に追従して見かけ上の粘度が図4の如く上昇変化し、当該粘度に比例して降伏応力が増大する特性を、有している。
図1に示すようにシール構造160は、筐体110において軸方向の流体室114及び軸受116間となる箇所に、設けられている。シール構造160は、筐体110のうち固定部材111と、ブレーキ回転体130のうちブレーキ軸131との間をシールすることにより、磁気粘性流体140が筐体110の外部へ漏出するのを抑制する。
ソレノイドコイル150は、樹脂ボビン151に金属線材を巻回してなり、ブレーキロータ132の外周側に同心上に配置されている。ソレノイドコイル150は、固定部材111及びカバー部材112の間に軸方向に挟まれた状態で、筐体110に保持されている。かかる保持形態のソレノイドコイル150は通電されると、固定部材111、磁気ギャップ114a、ブレーキロータ132、磁気ギャップ114b及びカバー部材112を順次通過するように、磁束を発生する。
したがって、図2,3の反時計方向へブレーキ回転体130が回転する内燃機関の運転中に、通電によりソレノイドコイル150が磁束を発生するときには、流体室114のうち磁気ギャップ114a,114b内の磁気粘性流体140に対して当該発生磁束が通過する。その結果、粘度変化した磁気粘性流体140に接触する要素110,130間では、粘性抵抗の作用によりブレーキ回転体130(ブレーキロータ132)を制動するブレーキトルクが、図2,3の時計方向に発生する。このように本実施形態では、通電を受けるソレノイドコイル150が流体室114の磁気粘性流体140に磁束を通過させることにより、当該流体140の粘度に応じたブレーキトルクをブレーキ回転体130へと入力することができるのである。
(通電制御回路)
マイクロコンピュータを主体に構成される通電制御回路200は、流体ブレーキ装置100の外部に配置されてソレノイドコイル150及び車両のバッテリ4と電気接続されている。内燃機関の停止中において通電制御回路200は、バッテリ4からの電力供給の遮断により、ソレノイドコイル150への通電をカットした状態とする。したがって、このときには、ソレノイドコイル150により磁束が発生せず、ブレーキ回転体130へ入力されるブレーキトルクが消失した状態となる。
一方、内燃機関の運転中において通電制御回路200は、バッテリ4からの電力供給下、ソレノイドコイル150への通電電流を制御することにより、磁気粘性流体140に通過させる磁束を発生する。したがって、このときには、磁気粘性流体140の粘度が可変制御され、ブレーキ回転体130へ入力されるブレーキトルクが、ソレノイドコイル150への通電電流に追従して増減されることとなる。
(位相調整機構)
図1〜3に示すように位相調整機構300は、駆動回転体10、従動回転体20、アシスト部材30、遊星キャリア40及び遊星歯車50を備えている。
全体として円筒状を呈する駆動回転体10は、歯車部材12及びスプロケット部材13を同軸上に螺子留めしてなる。図1,2に示すように円環板状の歯車部材12は、歯底円よりも小径の歯先円を有する駆動側内歯車部14を、周壁部に形成している。図1に示すように円筒状のスプロケット部材13は、周壁部から外周側へ突出する歯16を、回転方向に複数有している。スプロケット部材13は、それらの歯16とクランク軸の複数の歯との間でタイミングチェーン(図示しない)を掛け渡されることにより、クランク軸と連繋する。かかる連繋により、クランク軸から出力される機関トルクがタイミングチェーンを通じてスプロケット部材13へと伝達されるときには、駆動回転体10がクランク軸と連動して回転する。このとき駆動回転体10の回転方向は、図2,3の反時計方向となる。
図1,3に示すように有底円筒状の従動回転体20は、駆動回転体10のうちスプロケット部材13の内周側に同軸上に配置されている。従動回転体20は、カム軸2に同軸上に外嵌されて螺子留めにより固定される固定部21を、底壁部に形成している。かかる固定により従動回転体20は、カム軸2と連動して回転可能且つ駆動回転体10に対して相対回転可能となっている。ここで従動回転体20の回転方向は、駆動回転体10と同様、図2,3の反時計方向に設定されている。
図1に示すように従動回転体20は、歯底円よりも小径の歯先円を有する従動側内歯車部22を、周壁部に形成している。従動側内歯車部22の内径は駆動側内歯車部14の内径よりも大きく設定され、また従動側内歯車部22の歯数は駆動側内歯車部14の歯数よりも多く設定されている。従動側内歯車部22は、駆動側内歯車部14に対して流体ブレーキ装置100とは反対側へ同軸上にずれて、配置されている。
アシスト部材30はねじりコイルばねからなり、スプロケット部材13の内周側に同軸上に配置されている。アシスト部材30の一端部31はスプロケット部材13に係止され、アシスト部材30の他端部32は固定部21に係止されている。アシスト部材30は回転体10,20間にてねじり変形することによりアシストトルクを発生して、駆動回転体10に対する遅角側へ従動回転体20を付勢する。
図1〜3に示すように、全体として円筒状を呈する遊星キャリア40は、流体ブレーキ装置100のブレーキ回転体130からブレーキトルクが伝達される伝達部41を、周壁部に形成している。回転体10,20及びブレーキ回転体130のブレーキ軸131に対して同軸上に配置される円筒孔状の伝達部41には、一対の溝部42が開口しており、それら溝部42に嵌合する継手43を介して伝達部41とブレーキ軸131とが連繋している。かかる連繋により遊星キャリア40は、ブレーキ回転体130と一体に回転可能且つ駆動回転体10に対して相対回転可能となっている。ここで、内燃機関の運転中における遊星キャリア40の回転方向は、ブレーキ回転体130と同様、図2,3の反時計方向となる。
図1〜3に示すように遊星キャリア40は、遊星歯車50を軸受する軸受部46を、周壁部に形成している。回転体10,20及びブレーキ回転体130のブレーキ軸131に対して偏心配置される円筒面状の軸受部46は、遊星歯車50の中心孔51に対して遊星ベアリング48を介して同軸上に嵌入されている。かかる嵌入により遊星歯車50は、遊星運動可能に軸受部46に支持されている。ここで遊星運動とは、遊星歯車50がブレーキ軸131に対する軸受部46の偏心中心線周りに自転しつつ、遊星キャリア40の回転方向へと公転する運動をいう。したがって、遊星キャリア40が駆動回転体10に対して遊星歯車50の公転方向に相対回転するときには、当該遊星歯車50が遊星運動することになる。
全体として段付円筒状を呈する遊星歯車50は、歯底円よりも大径の歯先円を有する外歯車部52,54を、周壁部に形成している。駆動側内歯車部14の内周側に配置されている駆動側外歯車部52は、ブレーキ軸131に対する軸受部46の偏心側において当該内歯車部14と噛合している。駆動側外歯車部52から流体ブレーキ装置100とは反対側へ同軸上にずれて従動側内歯車部22の内周側に配置されている従動側外歯車部54は、ブレーキ軸131に対する軸受部46の偏心側において当該内歯車部22と噛合している。従動側外歯車部54の外径は駆動側外歯車部52の外径よりも大きく設定され、またそれら従動側外歯車部54及び駆動側外歯車部52の歯数は、それぞれ従動側内歯車部22及び駆動側内歯車部14の歯数よりも同数ずつ少なく設定されている。
以上の構成の位相調整機構300は、ブレーキ回転体130へ入力されるブレーキトルクと、当該ブレーキトルクとは反対向きにブレーキ回転体130へ作用することになるアシスト部材30のアシストトルクと、カム軸2からブレーキ回転体130へ伝達される変動トルクとの釣り合いに応じて、機関位相を調整する。
具体的には、ブレーキトルクの保持等によりブレーキ回転体130が駆動回転体10との同速回転を実現するときには、遊星キャリア40が当該回転体10に対して相対回転しない。その結果、遊星歯車50が遊星運動することなく回転体10,20と連れ回りするので、機関位相が保持されることになる。一方、ブレーキトルクの増大等により、ブレーキ回転体130がアシストトルクに抗して駆動回転体10よりも低速の回転を実現するときには、遊星キャリア40が当該回転体10に対する遅角側へと相対回転する。その結果、遊星歯車50が遊星運動して従動回転体20が駆動回転体10に対する進角側へ相対回転するので、機関位相が進角することになる。また一方、ブレーキトルクの減少等により、ブレーキ回転体130がアシストトルクを受けて駆動回転体10よりも高速の回転を実現するときには、遊星キャリア40が当該回転体10に対する進角側へと相対回転する。その結果、遊星歯車50が遊星運動して従動回転体20が駆動回転体10に対する遅角側へ相対回転するので、機関位相が遅角することになる。
(シール構造)
以下の説明では、流体室114を形成する筐体110の内部を単に「筐体内部」といい、位相調整機構300が配置される筐体110の外部を単に「筐体外部」というものとする。
図5に示すように、ブレーキ軸131のうちシール構造160の内周側には、一対の軸側磁束ガイド134,135が軸方向に間隔をあけて設けられている。ブレーキ軸131において、外周側のシール構造160へ向かって個別に突出する各軸側磁束ガイド134,135は、それぞれ回転方向に連続する円環板状を、呈している。
ここで、各軸側磁束ガイド134,135の外周面134a,135aについて、図6,7に示す外径Rsh_o,Rsh_iは、それぞれブレーキ軸131の回転方向Dr(以下、単に「回転方向Dr」という)及び軸方向の任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。さらに、各軸側磁束ガイド134,135の外周面134a,135aの軸長(板厚)Lsh_o,Lsh_iは、それぞれ回転方向Drの任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。
図5に示すように、筐体内部において磁気粘性流体140の封入された流体室114を筐体外部に対して隔絶するためのシール構造160は、磁気シールスリーブ170を有している。
ブレーキ軸131を回転方向に囲む形状を全体として呈する磁気シールスリーブ170は、永久磁石171及び一対のスリーブ側磁束ガイド174,175を組み合わせてなる。円筒状の永久磁石171は、例えばフェライト磁石等により形成され、ブレーキ軸131の外周側に同軸上に配置されて固定部材111に嵌入固定されている。本実施形態の永久磁石171は、回転方向Dr及び軸方向の任意箇所にて実質一定内径Rsl_m(図6参照)の内周面を、有している。永久磁石171は、軸方向両端部にそれぞれ相反極性の磁極N,Sが形成されており、それら磁極N,S間に磁束MFを常時発生させる。これらの構成により、永久磁石171の磁極N,Sによる発生磁束MFは、図5の如く内周側へと向かって集中するようになっている。
円環板状の各スリーブ側磁束ガイド174,175は、例えば炭素鋼等の磁性材により形成され、ブレーキ軸131の外周側に同軸上に配置されて固定部材111に嵌入固定されている。各スリーブ側磁束ガイド174,175は、永久磁石171の軸方向両端部に隣接することにより、永久磁石171を軸方向に挟んで筐体外部側と筐体内部側とにそれぞれ位置している。これにより、外周側のスリーブ側磁束ガイド174へ向かって突出する軸側磁束ガイド134が、シールギャップ180を挟んで設けられた形となっている。それと共に、外周側のスリーブ側磁束ガイド175へ向かって突出する軸側磁束ガイド135が、シールギャップ181を挟んで設けられた形となっている。このような本実施形態では、固定部材111の内周側を通じてシールギャップ181が筐体内部の流体室114に連通し、また当該ギャップ180を通じてシールギャップ180が筐体内部の流体室114に連通しているのである。
ここで、各スリーブ側磁束ガイド174,175の内周面174a,175aについて、図6,7に示す内径Rsl_o,Rsl_iは、それぞれ回転方向Dr及び軸方向の任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。これにより、各スリーブ側磁束ガイド174,175と各軸側磁束ガイド134,135との間のシールギャップ180,181は、それぞれ実質一定の幅径Δg_o,Δg_iを回転方向Drの全域において確保するように、形成されている。
さらに図6に示すように、各スリーブ側磁束ガイド174,175の内周面174a,175aの軸長(板厚)Lsl_o,Lsl_iは、それぞれ回転方向Drにおいて変化している。これによりシールギャップ180,181は、それぞれ図8に示すように各スリーブ側磁束ガイド174,175と各軸側磁束ガイド134,135との間を繋ぐ部分、即ち磁束MFの通過部分(図8のクロスハッチング部分)について縦断面積Cg_o,Cg_iが回転方向Drにおいて変化するように、形成されている。
具体的には、図6に示すようにスリーブ側磁束ガイド174は、軸方向の筐体外部側を向く基準面174bから当該筐体外部側へ突出する突出部176を、回転方向Drの複数個所(本実施形態では、図7に示すように12箇所)に等間隔に有している。ここで基準面174bは、スリーブ側磁束ガイド174に対応する軸側磁束ガイド134の筐体外部側の軸方向端面134bと、実質同一仮想平面S_o上に配置されている。したがって、各磁束ガイド174,134の周面174a,134aについては、かかる仮想平面S_oからの軸長Lsl_o,Lsh_o(図6(a)参照)が、互いに実質同一寸法に設定されている。これにより、スリーブ側磁束ガイド174の内周面174aの軸長Lsl_oは、突出部176が突出する回転方向Drの複数個所(図6(b)参照)において、軸側磁束ガイド134の外周面134aの軸長Lsh_oよりも拡大変化する形と、なっている。
また、図6に示すようにスリーブ側磁束ガイド175は、軸方向の筐体内部側を向く基準面175bから当該筐体内部側へ突出する突出部177を、回転方向Drの複数個所(本実施形態では、各突出部176に対して軸方向の筐体内部側に重なる配置位置を図7に括弧書きで示すように、12箇所)に等間隔に有している。ここで基準面175bは、スリーブ側磁束ガイド175に対応する軸側磁束ガイド135の筐体内部側の軸方向端面135bと、実質同一仮想平面S_i上に配置されている。したがって、各磁束ガイド175,135の周面175a,135aについては、かかる仮想平面S_iからの軸長Lsl_i,Lsh_i(図6(a)参照)が、互いに実質同一寸法に設定されている。これにより、スリーブ側磁束ガイド175の内周面175aの軸長Lsl_iは、突出部177が突出する回転方向Drの複数個所(図6(b)参照)において、軸側磁束ガイド135の外周面135aの軸長Lsh_iよりも拡大変化する形と、なっている。
以上の構成を備えた磁気シールスリーブ170によると、永久磁石171の発生磁束MFは、当該磁石171の軸方向両端部にそれぞれ隣接して設けられたスリーブ側磁束ガイド174,175に、図5の如く集中する。その結果、磁束MFは、各スリーブ側磁束ガイド174,175から各シールギャップ180,181を通じてブレーキ軸131の各軸側磁束ガイド134,135に、案内される。ここで特に、軸側磁束ガイド134,135は、それぞれ対応するスリーブ側磁束ガイド174,175へ向かって突出して、当該対応ガイド174,175に近付けられていることにより、磁束MFの集中案内作用が高められている。
このような集中案内作用によって磁束MFが高密度に通過するシールギャップ180,181は、筐体内部の流体室114と連通しているので、それらギャップ180,181には、流体室114の磁気粘性流体140が、磁性粒子に対する磁気吸引によって流入し易い。故に、各シールギャップ180,181へ流入した磁気粘性流体140は、それらギャップ180,181の通過磁束MFを受けて粘度上昇することで、磁束ガイド174,134間及び磁束ガイド175,135間に膜状に捕捉される。こうして高い耐圧性をもって形成されるシール膜によれば、筐体内部側から筐体外部側へ向かう磁気粘性流体140の流動につき、当該流体140自身によって抑制する自己シール機能が、永久磁石171を挟む軸方向の両側箇所にて発揮され得る。即ち、磁気シールスリーブ170及びブレーキ軸131の間に生じる磁気粘性流体140の漏出経路のうち、筐体外部に近い箇所だけでなく、その上流側箇所においても、優れた自己シール機能を発揮する磁気粘性流体140のシール膜が形成されることになる。したがって、磁気粘性流体140が筐体外部へ漏出する事態を、抑制できるのである。
それと共に、回転方向Drの複数個所にて内周面174aの軸長Lsl_oが変化するスリーブ側磁束ガイド174は、一定軸長Lsh_oの軸側磁束ガイド134との間に、、縦断面積Cg_oが当該複数個所にて変化するシールギャップ180を形成する。同様に、回転方向Drの複数個所にて内周面175aの軸長Lsl_iが変化するスリーブ側磁束ガイド175は、一定軸長Lsh_iの軸側磁束ガイド135との間に、縦断面積Cg_iが当該複数個所にて変化するシールギャップ181を形成する。このように縦断面積Cg_o,Cg_iが変化するシールギャップ180,181においては、捕捉状態にある磁気粘性流体140がブレーキ軸131の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことで、確実に攪拌される。故に、ブレーキ軸131の回転により遠心力が作用する磁気粘性流体140の成分のうち、シールギャップ180,181を通じた案内磁束MFの作用を受けない非磁性のベース液は、当該回転に伴う攪拌機能によって、外周側となる磁束ガイド174,175側には偏り難い。また、そうした偏りが生じたとしても、攪拌機能によって磁気粘性流体140中のベース液は、磁束ガイド174,175への押し付けを抑制され得る。したがって、シールギャップ180,181から、特に筐体外部側のシールギャップ180からベース液が逃げて減少することで磁気粘性流体140が変質する事態を、抑制できるのである。
しかも、スリーブ側磁束ガイド174について、基準面174bからの突出部176の突出箇所では、内周面174aの軸長Lsl_oが軸側磁束ガイド134の外周面134aの軸長Lsh_oよりも、拡大変化している。同様に、スリーブ側磁束ガイド175についても、基準面175bからの突出部177の突出箇所では、内周面175aの軸長Lsl_iが軸側磁束ガイド135の外周面135aの軸長Lsh_iよりも、拡大変化している。これらによると、スリーブ側磁束ガイド174,175のうち基準面174b,175bの形成部分と、可及的に短軸長Lsh_o,Lsh_iに形成可能な軸側磁束ガイド134,135との間にて、磁束MFの通過密度を高め易くなる。その結果、スリーブ側磁束ガイド174,175及び軸側磁束ガイド134,135間のシールギャップ180,181では、磁気粘性流体140の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上する。したがって、磁気粘性流体140の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を、高めることもできる。
以上説明した第一実施形態によれば、磁気粘性流体140の漏出及び変質によるブレーキ特性の変化を回避して、機関位相の調整精度を高精度に維持することができる。さらに、磁気粘性流体140により各シールギャップ180,181に形成されるシール膜によれば、ブレーキ軸131に与える摩擦抵抗が低減され得るので、当該摩擦抵抗に起因して内燃機関の燃費低下を招くトルクロスを、回避することもできるのである。尚、ここまでの第一実施形態では、ソレノイドコイル150及び通電制御回路200が共同して「粘度制御手段」を構成している。
(第二実施形態)
図9,10に示すように、本発明の第二実施形態は第一実施形態の変形例である。第二実施形態のブレーキ軸2131において、図9に示す軸側磁束ガイド134の筐体外部側の軸方向端面2134bは、スリーブ側磁束ガイド174の基準面174bよりも軸方向の筐体外部側へと張り出している。ここで、特に本実施形態の軸方向端面2134bは、スリーブ側磁束ガイド174の筐体外部側の軸方向端面2174bを形成している突出部176の先端面と、実質同一仮想平面S_o上に配置されている。したがって、各磁束ガイド174,134の周面174a,2134aについては、かかる仮想平面S_oからの軸長Lsl_o,Lsh_o(図9(b)参照)が、互いに実質同一寸法に設定されている。これにより、スリーブ側磁束ガイド174の内周面174aの軸長Lsl_oは、突出部176が突出する回転方向Drの複数個所(図9(a)参照)において、軸側磁束ガイド134の外周面2134aの軸長Lsh_oよりも縮小変化する形と、なっている。
また、第二実施形態のブレーキ軸2131において、軸側磁束ガイド135の筐体内部側の軸方向端面2135bは、スリーブ側磁束ガイド175の基準面175bよりも軸方向の筐体内部側へと張り出している。ここで、特に本実施形態の軸方向端面2135bは、スリーブ側磁束ガイド175の筐体内部側の軸方向端面2175bを形成している突出部177の先端面と、実質同一仮想平面S_i上に配置されている。したがって、各磁束ガイド175,135の周面175a,2135aについては、かかる仮想平面S_iからの軸長Lsl_i,Lsh_i(図9(b)参照)が、互いに実質同一寸法に設定されている。これにより、スリーブ側磁束ガイド175の内周面175aの軸長Lsl_iは、突出部177が突出する回転方向Drの複数個所(図9(a)参照)において、軸側磁束ガイド135の外周面2135aの軸長Lsh_iよりも縮小変化する形と、なっている。
こうした構成下、スリーブ側磁束ガイド174,175は、回転方向Drの任意箇所にて軸長Lsh_o,Lsh_iが一定となっている軸側磁束ガイド134,135との間に、シールギャップ2180,2181を形成する。かかるシールギャップ2180,2181については、図10に示す磁束MFの通過部分(図10のクロスハッチング部分)の縦断面積Cg_o,Cg_iが、回転方向Drの複数個所にて変化するものとなる。故に、シールギャップ2180,2181に捕捉される磁気粘性流体140は、ブレーキ軸2131の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことになるので、確実に攪拌される。したがって、シールギャップ2180,2181から、特に筐体外部側のシールギャップ2180からベース液が逃げて減少することで磁気粘性流体140が変質する事態を抑制し、当該変質によるブレーキ特性の変化を回避することができるのである。
(第三実施形態)
図11に示すように、本発明の第三実施形態は第一実施形態の変形例である。第三実施形態の磁気シールスリーブ3170においてスリーブ側磁束ガイド174,175は、永久磁石3171の軸方向端部3174,3175を内周側に突出させることによって、形成されている。このような構成においても、回転方向Drの複数個所に突出部176,177を有するスリーブ側磁束ガイド174,175は、当該複数個所にて軸長Lsl_o,Lsl_iが変化する形となる。したがって、第一実施形態と同様の原理により磁気粘性流体140の変質を抑制して、当該変質によるブレーキ特性の変化を回避することができるのである。
(第四実施形態)
図12〜14に示すように、本発明の第四実施形態は第一実施形態の変形例である。第四実施形態の磁気シールスリーブ4170において、図12に示す各スリーブ側磁束ガイド174,175の内周面4174a,4175aの軸長Lsl_o,Lsl_iは、それぞれ回転方向Drの任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。また、特に本実施形態の各軸長Lsl_o,Lsl_iは、対応する軸側磁束ガイド134,135の外周面134a,135aの軸長Lsh_o,Lsh_iと、実質同一寸法に設定されている。さらに、各スリーブ側磁束ガイド174,175の相反側の軸方向端面4174b,4175bは、対応する軸側磁束ガイド134,135の軸方向端面134b,135bと、実質同一仮想平面S_o,S_i上に配置されている。
さらに、第四実施形態の磁気シールスリーブ4170において、図12,13に示す各スリーブ側磁束ガイド174,175の内周面4174a,4175aの内径Rsl_o,Rsl_iは、それぞれ回転方向Drにおいて変化している。ここで第一実施形態と同様、各軸側磁束ガイド134,135の外周面134a,135aの外径Rsh_o,Rsh_iは、それぞれ回転方向Dr及び軸方向の任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。したがって、各スリーブ側磁束ガイド174,175と各軸側磁束ガイド134,135との間に形成されるシールギャップ4180,4181は、それぞれ幅径Δg_o,Δg_iが回転方向Drにおいて変化するように、形成されている。
具体的には、図12,13に示すようにスリーブ側磁束ガイド174は、内周面4174aから外周側へ向かって凹陥する凹部4176を、回転方向Drの複数個所(本実施形態では、図13に示すように12箇所)に等間隔に有している。これにより、スリーブ側磁束ガイド174の内周面4174aの内径Rsl_oは、凹部4176が凹陥する回転方向Drの複数個所(図12(b)参照)において、当該凹部4176の非形成部分(図12(a)参照)よりも拡大変化する形と、なっている。
また、図12,13に示すようにスリーブ側磁束ガイド175は、内周面4175aから外周側へ向かって凹陥する凹部4177を、回転方向Drの複数個所(本実施形態では、各突出部176に対して軸方向の筐体内部側に重なる配置位置を図13に括弧書きで示すように、12箇所)に等間隔に有している。これにより、スリーブ側磁束ガイド175の内周面4175aの内径Rsl_iは、凹部4177が凹陥する回転方向Drの複数個所(図12(b)参照)において、当該凹部4177の非形成部分(図12(a)参照)よりも拡大変化する形と、なっている。
こうした構成下、回転方向Drの複数個所にて内周面4174aの内径Rsl_oが変化するスリーブ側磁束ガイド174は、一定外径Rsh_oの軸側磁束ガイド134との間に、幅径Δg_oが当該複数個所にて変化するシールギャップ4180を形成する。同様に、回転方向Drの複数個所にて内周面4175aの内径Rsl_iが変化するスリーブ側磁束ガイド175は、一定外径Rsh_iの軸側磁束ガイド135との間に、幅径Δg_iが当該複数個所にて変化するシールギャップ4181を形成する。これらにより、図14に示す磁束MFの通過部分(図14のクロスハッチング部分)の縦断面積Cg_o,Cg_iが回転方向Drの複数個所にて変化しているシールギャップ4180,4181では、捕捉状態にある磁気粘性流体140がブレーキ軸131の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことで、確実に攪拌される。したがって、シールギャップ4180,4181から、特に筐体外部側のシールギャップ4180からベース液が逃げて減少することで磁気粘性流体140が変質する事態を抑制し、当該変質によるブレーキ特性の変化を回避することができるのである。
しかも、第一実施形態と同様に第四実施形態においても、対応するスリーブ側磁束ガイド174,175へ向かって突出する軸側磁束ガイド134,135は、当該対応ガイド174,175に近付けられている。これにより、シールギャップ4180,4181の幅径Δg_o,Δg_iについては、スリーブ側磁束ガイド174,175の内径変化によって上記攪拌機能に必要な変化が生じる範囲で、可及的に小さく設定され得る。故に、そうした小幅径Δg_o,Δg_iのシールギャップ4180,4181を通じることで磁束MFが磁束ガイド174,134間及び磁束ガイド175,135間に集中するので、シール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上する。したがって、磁気粘性流体140の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を、高めることもできるのである。
(第五実施形態)
図15,16に示すように、本発明の第五実施形態は第四実施形態の変形例である。第三実施形態の磁気シールスリーブ5170は、磁束ガイド174,175とは別のスリーブ側磁束ガイド5178が、筐体外部側の軸方向端部に追加されてなる。具体的には図15に示すように、配置形態以外はスリーブ側磁束ガイド175と実質同一構成のスリーブ側磁束ガイド5178は、磁性材からなる円環板状の磁性スペーサ5179及び磁束ガイド175を介して、永久磁石171の筐体内部側の軸方向端部に隣接している。このスリーブ側磁束ガイド5178の内周側には、配置形態以外は軸側磁束ガイド135と実質同一構成の軸側磁束ガイド5138が、ブレーキ軸5131に追加形成されている。
こうした構成により、図16に示すようにスリーブ側磁束ガイド5178の内周面5178aの内径Rsl_aは、凹部4177が凹陥する回転方向Drの複数個所において拡大変化している。故に、スリーブ側磁束ガイド5178の内周面5178aが軸側磁束ガイド5138の外周面5138aとの間に形成して磁束MFを通過させるシールギャップ5188については、図16に示す磁束MFの通過部分(図16のクロスハッチング部分)の縦断面積Cg_aが、回転方向Drの複数個所にて変化するものとなっている。
このような第五実施形態によると、シールギャップ4180,4181,5188に捕捉される磁気粘性流体140は、ブレーキ軸5131の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことになるので、確実に攪拌される。したがって、シールギャップ4180,4181,5188からからベース液が逃げて減少することで磁気粘性流体140が変質する事態を抑制し、当該変質によるブレーキ特性の変化を回避することができるのである。
(第六実施形態)
図17〜19に示すように、本発明の第六実施形態は第一実施形態の変形例である。第六実施形態の磁気シールスリーブ6170において、図17に示す各スリーブ側磁束ガイド174,175の内周面6174a,6175aの軸長Lsl_o,Lsl_iは、それぞれ回転方向Drの任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。これに対し、第六実施形態のブレーキ軸6131において、各軸側磁束ガイド134,135の外周面6134a,6135aの軸長Lsh_o,Lsh_iは、それぞれ回転方向Drにおいて変化している。こにより、各スリーブ側磁束ガイド174,175と各軸側磁束ガイド134,135との間に形成されるシールギャップ6180,6181は、それぞれ図19に示す磁束MFの通過部分(図19のクロスハッチング部分)の縦断面積Cg_o,Cg_iが回転方向Drにおいて変化するように、形成されている。
具体的には、図17に示すように軸側磁束ガイド134は、軸方向の筐体外部側を向く基準面6134bから当該筐体外部側へ突出する突出部6136を、回転方向Drの複数個所(本実施形態では、図18に示すように12箇所)に等間隔に有している。ここで基準面6134bは、軸側磁束ガイド134に対応するスリーブ側磁束ガイド174の筐体外部側の軸方向端面6174bと、実質同一仮想平面S_o上に配置されている。したがって、各磁束ガイド174,134の周面6174a,6134aについては、かかる仮想平面S_oからの軸長Lsl_o,Lsh_o(図17(a)参照)が、互いに実質同一寸法に設定されている。これにより、軸側磁束ガイド134の外周面6134aの軸長Lsh_oは、突出部6136が突出する回転方向Drの複数個所(図17(b)参照)において、スリーブ側磁束ガイド174の内周面6174aの軸長Lsl_oよりも拡大変化する形と、なっている。
また、図17に示すように軸側磁束ガイド135は、軸方向の筐体内部側を向く基準面6135bから当該筐体内部側へ突出する突出部6137を、回転方向Drの複数個所(本実施形態では、各突出部176に対して軸方向の筐体内部側に重なる配置位置を図18に括弧書きで示すように、12箇所)に等間隔に有している。ここで基準面6135bは、軸側磁束ガイド135に対応するスリーブ側磁束ガイド175の筐体内部側の軸方向端面6175bと、実質同一仮想平面S_i上に配置されている。したがって、各磁束ガイド175,135の周面6175a,6135aについては、かかる仮想平面S_iからの軸長Lsl_i,Lsh_i(図17(a)参照)が、互いに実質同一寸法に設定されている。これにより、軸側磁束ガイド135の外周面6135aの軸長Lsh_iは、突出部6137が突出する回転方向Drの複数個所(図17(b)参照)において、スリーブ側磁束ガイド175の内周面6175aの軸長Lsl_iよりも拡大変化する形と、なっている。
尚、図17,18に示すように、各スリーブ側磁束ガイド174,175の内周面6174a,6175aの内径Rsl_o,Rsl_iは、それぞれ回転方向Dr及び軸方向の任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。それと共に、各軸側磁束ガイド134,135の外周面6134a,6135aの外径Rsh_o,Rsh_iは、回転方向Dr及び軸方向の任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。したがって、これらの設定により第六実施形態においても、各スリーブ側磁束ガイド174,175と各軸側磁束ガイド134,135との間のシールギャップ6180,6181は、それぞれ実質一定の幅径Δg_o,Δg_iを回転方向Drの全域において確保するように、形成されている。
こうした構成下、回転方向Drの複数個所にて外周面6134aの軸長Lsh_oが変化する軸側磁束ガイド134は、一定軸長Lsl_oのスリーブ側磁束ガイド174との間に、縦断面積Cg_oが当該複数個所にて変化するシールギャップ6180を形成する。同様に、回転方向Drの複数個所にて外周面6135aの軸長Lsh_iが変化する軸側磁束ガイド135は、一定軸長Lsl_iのスリーブ側磁束ガイド175との間に、縦断面積Cg_iが当該複数個所にて変化するシールギャップ6181を形成する。このように縦断面積Cg_o,Cg_iが回転方向Drの複数個所にて変化するシールギャップ6180,6181においては、捕捉状態にある磁気粘性流体140がブレーキ軸6131の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことで、確実に攪拌される。したがって、シールギャップ6180,6181から、特に筐体外部側のシールギャップ6180からベース液が逃げて減少することで磁気粘性流体140が変質する事態を抑制し、当該変質によるブレーキ特性の変化を回避することができるのである。
しかも、軸側磁束ガイド134について、基準面6134bからの突出部6136の突出箇所では、外周面6134aの軸長Lsh_oがスリーブ側磁束ガイド174の内周面6174aの軸長Lsl_oよりも、拡大変化している。同様に、軸側磁束ガイド135についても、基準面6135bからの突出部6137の突出箇所では、外周面6135aの軸長Lsh_iがスリーブ側磁束ガイド175の内周面6175aの軸長Lsl_iよりも、拡大変化している。これらによると、軸側磁束ガイド134,135のうち基準面6134b,6135bの形成部分と、可及的に短軸長Lsl_o,Lsl_iに形成可能なスリーブ側磁束ガイド174,175との間にて、磁束MFの通過密度を高め易くなる。その結果、スリーブ側磁束ガイド174,175及び軸側磁束ガイド134,135間のシールギャップ6180,6181では、磁気粘性流体140の粘度に応じたシール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上する。したがって、磁気粘性流体140の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を高めることも、できるのである。
(第七実施形態)
図20〜22に示すように、本発明の第七実施形態は第六実施形態の変形例である。第七実施形態のブレーキ軸7131において、図20,21に示す各軸側磁束ガイド134,135の外周面7134a,7135aの外径Rsh_o,Rsh_iは、それぞれ回転方向Drにおいて変化している。これに対し、第七実施形態の磁気シールスリーブ7170において、各スリーブ側磁束ガイド174,175の内周面6174a,6175aの内径Rsl_o,Rsl_iは、それぞれ回転方向Dr及び軸方向の任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。これらの構成により、各スリーブ側磁束ガイド174,175と各軸側磁束ガイド134,135との間に形成されるシールギャップ7180,7181については、それぞれ幅径Δg_o,Δg_iが回転方向Drにおいて変化するように、形成されている。
具体的には、図20,21に示すように軸側磁束ガイド134は、外周面7134aから内周側へ向かって凹陥する凹部7136を、回転方向Drの複数個所(本実施形態では、図21に示すように12箇所)に等間隔に有している。これにより、軸側磁束ガイド134の外周面7134aの外径Rsh_oは、凹部7136が凹陥する回転方向Drの複数個所(図20(b)参照)において、当該凹部7136の非形成部分(図20(a)参照)よりも拡大変化する形と、なっている。
また、図20,21に示すように軸側磁束ガイド135は、外周面7135aから内周側へ向かって凹陥する凹部7137を、回転方向Drの複数個所(本実施形態では、各突出部176に対して軸方向の筐体内部側に重なる配置位置を図21に括弧書きで示すように、12箇所)に等間隔に有している。これにより、軸側磁束ガイド135の外周面7135aの外径Rsh_iは、凹部7137が凹陥する回転方向Drの複数個所(図20(b)参照)において、当該凹部7137の非形成部分(図20(a)参照)よりも拡大変化する形と、なっている。
尚、図20に示すように、各スリーブ側磁束ガイド174,175の内周面6174a,6175aの軸長Lsl_o,Lsl_iは、それぞれ回転方向Drの任意箇所にて実質一定寸法に、且つ互いに実質同一寸法に設定されている。それと共に、各軸長Lsl_o,Lsl_iは、対応する軸側磁束ガイド134,135の外周面7134a,7135aの軸長Lsh_o,Lsh_iと、実質同一寸法に設定されている。さらに、各軸側磁束ガイド134,135の相反側の軸方向端面7134b,7135bは、対応するスリーブ側磁束ガイド174,175の軸方向端面6174b,6175bと、実質同一仮想平面S_o,S_i上に配置されている。
こうした構成下、回転方向Drの複数個所にて外周面7134aの外径Rsh_oが変化する軸側磁束ガイド134は、一定内径Rsl_oのスリーブ側磁束ガイド174との間に、幅径Δg_oが当該複数個所にて変化するシールギャップ7180を形成する。同様に、回転方向Drの複数個所にて外周面7135aの外径Rsh_iが変化する軸側磁束ガイド135は、一定内径Rsl_iのスリーブ側磁束ガイド175との間に、幅径Δg_iが当該複数個所にて変化するシールギャップ7181を形成する。これらにより、図22に示す磁束MFの通過部分(図22のクロスハッチング部分)の縦断面積Cg_o,Cg_iが回転方向Drの複数個所にて変化しているシールギャップ7180,7181においては、捕捉状態にある磁気粘性流体140がブレーキ軸7131の一回転の間に圧縮及び拡散を複数回繰り返すことで、確実に攪拌される。したがって、シールギャップ7180,7181から、特に筐体外部側のシールギャップ7180からベース液が逃げて減少することで磁気粘性流体140が変質する事態を抑制し、当該変質によるブレーキ特性の変化を回避することができるのである。
しかも、第六実施形態と同様に第七実施形態においても、対応するスリーブ側磁束ガイド174,175へ向かって突出する軸側磁束ガイド134,135は、当該対応ガイド174,175に近付けられている。これにより、シールギャップ7180,7181の幅径Δg_o,Δg_iについては、軸側磁束ガイド134,135の外径変化によって上記攪拌機能に必要な変化が生じる範囲で、可及的に小さく設定され得ている。故に、そうした小幅径Δg_o,Δg_iのシールギャップ7180,7181を通じることで磁束MFが磁束ガイド174,134間及び磁束ガイド175,135間に集中するので、シール膜の耐圧性、ひいては自己シール機能が向上することとなる。したがって、磁気粘性流体140の漏出によるブレーキ特性変化の回避効果を、高めることもできるのである。
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
第一〜第七実施形態では、図23の変形例の如く、他の実施形態と組み合わせてもよい(図23は、第一実施形態において第四実施形態を組み合わせた例)。また、第一〜第七実施形態では、図24の変形例の如く、突出部176,177,6136,6137又は凹部4176,4177,7136,7137の回転方向Drにおける数を、1個又は12個以外の複数個に適宜変更してもよい(図24は、第四実施形態において凹部4176,4177の数を二個に変更した例)。さらに、第一〜第三、第六実施形態では、磁束ガイド174,134の軸長Lsl_o,Lsh_oと、磁束ガイド174,134の軸長Lsl_i,Lsh_iとのうち一方を、回転方向Drの任意箇所にて実質一定寸法に、設定してもよい。またさらに、第四、第五及び第七実施形態では、磁束ガイド174,134の径Rsl_o,Rsh_oと、磁束ガイド174,134の径Rsl_i,Rsh_iとのうち一方を、回転方向Dr及び軸方向の任意箇所にて実質一定寸法に設定してもよい。
第三実施形態では、図25の変形例の如く、磁気シールスリーブ8170において内外周部に磁極N,Sを有する永久磁石8171により形成したスリーブ側磁束ガイド174,175間と、ブレーキ軸8131における軸側磁束ガイド134,135とを、それぞれ軸方向に実質同一径に接続してもよい(図25は、N極を永久磁石8171の内周部に形成した例)。この場合、軸側磁束ガイド134,135の一体の軸長Lshに対して軸長Lslが変化する一つの磁束ガイド8171が、スリーブ側磁束ガイド174,175を一体に有する永久磁石8171の全体により、実現されることとなる。
第五実施形態では、スリーブ側磁束ガイド5178及び磁性スペーサ5179の組を複数組、軸方向に重ねて設けてもよい。また、第五実施形態では、スリーブ側磁束ガイド5178及び磁性スペーサ5179の組に加えて又は当該組に代えて、配置形態以外はスリーブ側磁束ガイド174と実質同一構成のスリーブ側磁束ガイドを、磁性スペーサ及び磁束ガイド174を介して永久磁石171の筐体外部側の軸方向端部に隣接させ、且つその内周側に、配置形態以外は軸側磁束ガイド134と実質同一構成の軸側磁束ガイドを、ブレーキ軸5131に追加形成してもよい。
第六実施形態では、第二実施形態に準じて、図26の変形例の如く磁気シールスリーブ9170のスリーブ側磁束ガイド174のうち筐体外部側の軸方向端面9174bを、軸側磁束ガイド134の基準面6134bよりも軸方向の筐体外部側へ張り出させ、スリーブ側磁束ガイド175の筐体内部側の軸方向端面9175bを、軸側磁束ガイド135の基準面6135bよりも軸方向の筐体内部側へ張り出させてもよい。また、第三実施形態又はそれの上記変形例に準じて第二、第四〜第七実施形態では、各実施形態の磁束ガイド174,175を永久磁石171により実現してもよい。さらに、第五実施形態又はそれの上記変形例に準じて第一、第二、第四、第六及び第七実施形態では、各実施形態の磁束ガイド174,175,134,135と実質同一構成の磁束ガイドを、さらに追加形成してもよい。
第一〜第七実施形態において位相調整機構300の構造としては、ブレーキ軸131と連繋してブレーキ回転体130へ入力のブレーキトルクに応じて機関位相を調整可能な限りにて、任意の構造を採用してもよい。そして、本発明は、「動弁」としての吸気弁のバルブタイミングを調整する装置以外にも、「動弁」としての排気弁のバルブタイミングを調整する装置や、それら吸気弁及び排気弁の双方のバルブタイミングを調整する装置の他、ブレーキトルクを利用する各種の装置に適用することができる。