JP2008025672A - 玉軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】玉やセパレータに摩耗が生じにくい玉軸受を提供する。
【解決手段】内輪1と、外輪2と、複数の玉3と、各玉3の間に介装されたセパレータ4と、を備える総玉軸受において、玉3及びセパレータ4をセラミックスで構成し、セパレータ4を玉3よりも小径な球形とした。玉3の表面色とセパレータ4の表面色との総合色差は、0.2以上であることが好ましい。また、玉3とセパレータ4は、異種のセラミックスで構成されていることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、セラミックスで構成された玉及びセパレータを備える玉軸受に関する。
半導体製造装置用のロボットは通常は真空環境下で使用されるため、前記ロボットに使用される軸受も真空用の仕様となっている。例えば、内輪及び外輪はSUJ2等の軸受鋼やSUS440C等のマルテンサイト系ステンレス鋼で構成されており、転動体は前記鋼又は窒化ケイ素,炭化ケイ素,酸化ジルコニウム,酸化アルミニウム等のセラミックスで構成されている。
また、潤滑剤としては通常はフッ素グリース等の真空用グリースが使用され、特にアウトガスの発生を嫌うような環境下では、潤滑剤の量を少量に制限するために、オイルプレーティング法,グリースプレーティング法のような少量潤滑法が採用される。このオイルプレーティング法,グリースプレーティング法とは、潤滑油やグリースのような潤滑剤からなる被膜を摺動部に形成して潤滑を行う方法である。
一方、玉軸受には、転動体同士が回転中に競り合いを生じないように、転動体と転動体との間に球形のセパレータ(以降はスペーサボールと記すこともある)を配する場合がある。このスペーサボールの直径は、通常は転動体よりも20μm〜0.1mm程度小さくしてある。
特開2001−41232号公報
転動体とスペーサボールを鋼で構成すると、直径を測定しない限り両者の区別ができないので、製造工程や完成後の検査工程において不都合が生じる場合がある。両者を異なる素材で構成して、外見上の差異(例えば色の差異)を生じさせると、前述の不都合が解消される。そこで、転動体の素材をセラミックスとすれば、前述の不都合が解消される上、セラミックスは鋼よりも摩耗が格段に生じにくいので有利である。
しかしながら、スペーサボールの素材が鋼であると、セラミックスよりも耐摩耗性が低いので、セラミックスで構成された転動体には摩耗はあまり生じず、鋼で構成されたスペーサボールに転動体との摺動により摩耗が生じることとなる。スペーサボールに摩耗が生じると、表面に凹凸が形成されて自転しにくくなり、玉軸受の円滑な回転に支障をきたすおそれがある(すなわち、回転不良が生じるおそれがある)。
また、潤滑剤が摩耗粉に吸着されて潤滑状態が劣化するため、玉軸受が潤滑不良となるおそれがある。特に、玉軸受の潤滑法として少量潤滑法が採用されている場合には、潤滑状態の劣化が顕著となりやすい。これは、少量潤滑法が、飛散する潤滑剤の量や潤滑剤から発生するガスの量を抑制するために、潤滑剤の量を少量に制限する潤滑法であるためである。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、玉やセパレータに摩耗が生じにくい玉軸受を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の玉軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の玉と、前記各玉の間に介装されたセパレータと、を備える玉軸受において、総玉軸受であるとともに、前記玉及び前記セパレータがセラミックス製であり、前記セパレータは前記玉よりも小径な球形であることを特徴とする。
玉及びセパレータがセラミックスで構成されているので、鋼製の場合と比べて耐摩耗性が高く摩耗が生じにくい。よって、摩耗粉がほとんど発生しないので、玉軸受の潤滑法として少量潤滑法等が採用されている場合であっても、潤滑不良が発生しにくい。また、玉やセパレータの表面に凹凸が形成されにくいので、長期間にわたって回転不良が発生しにくい。セラミックスの種類は特に限定されるものではないが、窒化ケイ素,炭化ケイ素,酸化ジルコニウム,酸化アルミニウムが好ましい。
また、本発明に係る請求項2の玉軸受は、請求項1に記載の玉軸受において、前記玉の表面色と前記セパレータの表面色との総合色差が0.2以上である。
このような構成であれば、直径を測定しなくても転動体である玉とセパレータを区別できるので、製造工程や完成後の検査工程において不都合が生じるおそれがない。例えば、組み立てた玉軸受の隣り合う球体について表面色の総合色差を測定すれば、玉とセパレータとが規則正しく交互に配されているか判定することができる。表面色の総合色差が0.2未満であると、総合色差の測定精度や再現性から、玉とセパレータを確実に区別することができないおそれがある。なお、両者が同種の素材で構成されていたとしても、表面色の総合色差が0.2以上であれば、直径を測定しなくても玉とセパレータを区別することができる。
ここで、総合色差について説明する。色は色彩値と呼ばれる数値で定量化することができる。この色彩値は、分光光度計や色差計で測定することができる。そして、2つの色の色彩値の差が色差である。色差には、ΔL* (明るさの色差)、Δa* (赤みの色差)、及びΔb* (黄みの色差)の3つの値があり、これら3つの数値から総合色差が算出される。
さらに、本発明に係る請求項3の玉軸受は、請求項1又は請求項2に記載の玉軸受において、前記玉及び前記セパレータが異種のセラミックスで構成されていることを特徴とする。
玉とセパレータが異種のセラミックスで構成されていれば、色差計等の測定装置を用いなくても、玉とセパレータを肉眼で判別することができる。また、玉とセパレータの間で凝着摩耗が生じにくい。玉とセパレータが同種のセラミックスで構成されていると、友材となるため、玉とセパレータの間で凝着摩耗が生じやすくなる。特に、玉軸受がクリーンルームのような清浄度の高い環境下や真空環境下で使用される場合には、雰囲気の清浄度が高い上に、空気中の水分の表面吸着が少ないので、凝着摩耗が生じやすい。
さらに、本発明に係る請求項4の玉軸受は、請求項3に記載の玉軸受において、前記玉及び前記セパレータの一方が酸化ジルコニウムで構成されており、他方が酸化ジルコニウム以外のセラミックスで構成されていることを特徴とする。
酸化ジルコニウムは、他のセラミックスと比べて破壊靱性値が格段に大きいので、玉とセパレータとが衝突しても損傷が生じにくい。特に、玉軸受がロボットの関節部に用いられる場合は、通常玉軸受は揺動し玉とセパレータとが衝突する機会が多くなるので、玉及びセパレータの一方を酸化ジルコニウムで構成することが好ましい。さらに、酸化ジルコニウムは白色であるので、玉及びセパレータの他方を黒色や灰色のセラミックスで構成すれば、玉とセパレータを肉眼で判別することが容易となる。
さらに、本発明に係る請求項5の玉軸受は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受において、真空用グリースで潤滑されていることを特徴とする。
真空用グリースは、基油として蒸気圧の低いフッ素系,シリコーン系の潤滑油が使用されているので、揮発成分の発生が少量である。よって、周辺環境を汚染しにくいため、このような構成の玉軸受は、清浄度の高い環境下や真空環境下において好適に使用可能である。例えば、清浄度の高い環境下や真空環境下において使用されることの多い半導体製造装置や半導体製造装置用のロボットに組み込まれる玉軸受として好適である。真空用グリースは、一般のグリースと比べて潤滑性が低いが、玉とセパレータがセラミックスで構成されていて摩耗しにくいので、潤滑性に問題が生じることはない。
さらに、本発明に係る請求項6の玉軸受は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受において、オイルプレーティング法又はグリースプレーティング法で潤滑されていることを特徴とする。
オイルプレーティング法やグリースプレーティング法のような少量潤滑法は、低発塵性及び低アウトガス性が非常に優れており、真空用グリースを用いた場合よりも周辺環境を汚染しにくい。よって、このような構成の玉軸受は、清浄度の極めて高い環境下や高真空環境下において好適に使用可能である。上記のような少量潤滑法は、真空用グリースと比べて潤滑性が低いが、玉とセパレータがセラミックスで構成されていて摩耗しにくいので、潤滑性に問題が生じることはない。
さらに、本発明に係る請求項7の玉軸受は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受において、前記内輪の軌道面,前記外輪の軌道面,及び前記玉の転動面の少なくとも一つを、以下の3種の潤滑被膜のいずれか一つで覆ったことを特徴とする。
(1)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
(3)アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
このような潤滑被膜による潤滑法は、低発塵性及び低アウトガス性が非常に優れており、前述のような少量潤滑法よりも周辺環境を汚染しにくい。よって、このような構成の玉軸受は、清浄度の極めて高い環境下や高真空環境下において好適に使用可能である。上記のような潤滑被膜による潤滑法は、前述のような少量潤滑法と比べて潤滑性が低いが、玉とセパレータがセラミックスで構成されていて摩耗しにくいので、潤滑性に問題が生じることはない。
さらに、本発明に係る請求項8の玉軸受は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の玉軸受において、内径dと外径Dとが(D−d)/d≦0.187なる式を満足する薄肉軸受であることを特徴とする。
半導体製造装置用のロボット(例えば、アームの関節部分)には、薄肉軸受がよく使用される。前述したように、半導体製造装置用のロボットは、清浄度の高い環境下や真空環境下において使用されることが多いので、組み込まれる軸受には低発塵性が求められる。また、潤滑剤の飛散やアウトガスの発生を嫌って、軸受には真空用グリースによる潤滑や少量潤滑法が採用されることが多い。さらに、薄肉軸受は転動体の径が小さく、小さい転動体で荷重を受ける必要があるので、最大接触面圧を小さくするために通常の軸受よりも多数の転動体が使用される。そのため、玉とセパレータとの摺動がより多くの部分で生じて、より多くの摩耗が生じやすい。
しかしながら、上記のような構成の玉軸受は、玉とセパレータがセラミックスで構成されていて摩耗しにくいので、低発塵性であるとともに、潤滑性の低い潤滑法が採用されていたとしても潤滑性に問題が生じることはない。
本発明の玉軸受は、玉やセパレータに摩耗が生じにくい。
本発明に係る玉軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1の玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内輪1及び外輪2の間に転動自在に配された複数の玉3と、各玉3の間に介装されたセパレータ4と、内輪1及び外輪2の間の隙間の開口を覆うシール5,5と、を備える総玉軸受である。玉3及びセパレータ4はセラミックスで構成されており、セパレータ4は玉3よりも小径な球形である。なお、シール5は備えていなくてもよい。
このような玉軸受は、玉3及びセパレータ4がセラミックスで構成されているので、鋼製の場合と比べて耐摩耗性が高く摩耗が生じにくい。よって、摩耗粉がほとんど発生しない。また、玉3やセパレータ4の表面に凹凸が形成されにくいので、長期間にわたって回転不良が発生しにくい。
なお、玉3の表面色とセパレータ4の表面色との総合色差は、0.2以上であることが好ましい。このような構成であれば、直径を測定しなくても玉3とセパレータ4を区別できるので、例えば、組み立てた玉軸受において玉3とセパレータ4の表面色の総合色差を測定すれば、玉3とセパレータ4とが規則正しく交互に配されているか判定することができる。
また、玉3とセパレータ4は、異種のセラミックスで構成されていることが好ましい。このような構成であれば、色差計等の測定装置を用いなくても、玉3とセパレータ4を肉眼で判別することができる。また、玉3とセパレータ4の間で凝着摩耗が生じにくい。
さらに、玉3とセパレータ4の一方が酸化ジルコニウムで構成されており、他方が酸化ジルコニウム以外のセラミックスで構成されていることが好ましい。酸化ジルコニウムは、他のセラミックスと比べて破壊靱性値が格段に大きいので、玉3とセパレータ4が衝突しても損傷が生じにくい。さらに、酸化ジルコニウムは白色であるので、玉3及びセパレータ4の他方を黒色や灰色のセラミックスで構成すれば、玉3とセパレータ4を肉眼で判別することが容易となる。
さらに、この玉軸受は、真空用グリースで潤滑されていることが好ましい。真空用グリースは揮発成分の発生が少量であるので、このような構成の玉軸受は、清浄度の高い環境下や真空環境下において好適に使用可能である。
さらに、この玉軸受は、オイルプレーティング法又はグリースプレーティング法で潤滑されていることが好ましい。すなわち、内輪1の軌道面1a,外輪2の軌道面2a,及び転動体3の転動面3aの少なくとも一つに、オイルプレーティング法又はグリースプレーティング法により、潤滑油又はグリースからなる潤滑被膜(図示せず)を形成することが好ましい。オイルプレーティング法やグリースプレーティング法のような少量潤滑法は、潤滑剤の量が少量に制限されているため低発塵性及び低アウトガス性が非常に優れており、真空用グリースよりも周辺環境を汚染しにくい。よって、このような構成の玉軸受は、清浄度の極めて高い環境下や高真空環境下において好適に使用可能である。
さらに、前記潤滑被膜を、以下の3種の潤滑被膜(以降はDFO潤滑剤と記す)のうちのいずれか一つとすることがより好ましい。このようなDFO潤滑剤による潤滑法は、低発塵性及び低アウトガス性が非常に優れており、前述のような少量潤滑法よりも周辺環境を汚染しにくい。よって、このような構成の玉軸受は、清浄度の極めて高い環境下や高真空環境下において好適に使用可能である。
(1)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
(3)アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
このDFO潤滑剤は、アウトガスの発生を抑えるために必要最少量の潤滑剤しか使用しないので(潤滑被膜の厚さを最小限とするので)、潤滑不良が比較的発生しやすい潤滑法である。よって、このような潤滑法を用いた玉軸受に、玉3及びセパレータ4をセラミックスで形成する本実施形態の構成を適用すれば、潤滑不良が生じにくく長寿命となる。
ここで、DFO潤滑剤について、さらに詳細に説明する。DFO潤滑剤は、金属に対する親和性の高い官能基を有する含フッ素重合体とフッ素油(例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE))とを含有する潤滑剤であり、極めて高い粘性を有するものである。官能基を有する含フッ素重合体は、官能基の働きで極めて強く金属表面に吸着する。一方、フッ素油の分子も、例え一旦切り離されてもすぐに再付着する性質があり、逸散し難い。よって、低アウトガス性に優れている。
官能基を有する含フッ素重合体としては、フルオロポリエーテル重合体やポリフルオロアルキル重合体が好ましい。フルオロポリエーテル重合体としては、下記の化1で示される繰り返し単位を有する、数平均分子量が1000〜50000の重合体があげられる。なお、このフルオロポリエーテル重合体は、少なくとも一方の分子末端に、後述する官能基を有している。
Figure 2008025672
また、ポリフルオロアルキル重合体としては、下記の化2に示すものがあげられる。化2中のYは金属に対して親和性の高い官能基であり、例えば、エポキシ基,アミノ基,カルボキシル基,水酸基,メルカプト基,イソシアネート基,スルフォン基,エステル基等が好ましい。ポリフルオロアルキル重合体としては、化2に示すものの他、例えば、化3,4に示すものも好適に使用することができる。
Figure 2008025672
Figure 2008025672
Figure 2008025672
このような官能基は、DFO潤滑剤が内輪や外輪の表面に被覆された際に、内輪や外輪を構成する金属と結合するので、内輪や外輪の表面と強く結合した潤滑膜が形成される。なお、一つの分子に官能基を複数有する含フッ素重合体の場合は、そのうち少なくとも一つが金属と結合していればよい。前記含フッ素重合体は、上に例示したものを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、その官能基同士が反応して金属と結合する官能基が減少することがないように、その組合せを選択することが好ましい。
このような官能基を有する含フッ素重合体の具体例としては、例えば、デュポン社製のクライトックス157FSL,157FSM,157FSHや、ダイキン工業社製のデムナム変性品SA,SH,SY−3や、アウジモント社製のフォンブリンZDEAL,ZDIAC,ZDISCO,ZDOL,ZDOLTX2000等があげられる。
また、PFPEのようなフッ素油の種類は特に限定されるものではないが、アウトガスを低く抑えるためには、できるだけ蒸気圧の低いものを使用することが好ましい。具体的には、デュポン社製のクライトックス143AB,143AC,143ADや、アウジモント社製のフォンブリンYHVAC18/8,25/9,40/11,140/13,Z25,Z60や、ダイキン工業社製のS−65,S−100,S−200等があげられる。
官能基を有する含フッ素重合体とPFPEのようなフッ素油とを含有するDFO潤滑剤の具体例としては、PFPEとしてダイキン工業社製S−200を用い、これに官能基を有する含フッ素重合体としてデュポン社製のクライトックス157FSHを5%添加し、これをフッ素系の溶剤(例えば、旭化学工業社製AK225)で2%に希釈したもの等があげられる。
なお、さらにフッ素樹脂の粉末を添加すれば、DFO潤滑剤をより低発塵とすることができる。また、フッ素油の代わりにアルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油を用いれば、玉軸受をより長寿命とすることができる。アルキル化シクロペンタンとしては、例えばトリ(2−オクチルドデシル)シクロペンタンがあげられる。
このようなDFO潤滑剤は、玉軸受の内輪と外輪との間に形成される軸受内部空間に封入して用いてもよいが、内輪や外輪の軌道面や転動体の転動面に被覆した上で加熱,減圧等により乾燥させて潤滑膜を形成させることが好ましい。
さらに、本発明は、薄肉軸受に対して特に効果的である。薄肉軸受とは、内径dと外径Dとが下記式を満足する軸受である。
(D−d)/d≦0.187
薄肉軸受は転動体の径が小さく、小さい転動体で荷重を受ける必要があるので、最大接触面圧を小さくするために通常の軸受よりも多数の転動体が使用される。そのため、玉とセパレータとの摺動がより多くの部分で生じて、より多くの摩耗が生じやすい。しかしながら、玉とセパレータがセラミックスで構成されていて摩耗しにくいので、低発塵性であるとともに、潤滑性の低い潤滑法が採用されていたとしても潤滑性に問題が生じることはない。
また、薄肉軸受は半導体製造装置用のロボットに使用されることが多いが、該ロボットは通常は清浄度の高い環境下や真空環境下で使用されるため、組み込まれる軸受には低発塵性が求められる。また、潤滑剤の飛散やアウトガスの発生を嫌って軸受には真空用グリースによる潤滑や少量潤滑法が採用されることが多い。よって、前記ロボットに使用され真空用グリースや少量潤滑法で潤滑された薄肉軸受に本実施形態の構成を適用すれば、潤滑不良が生じにくく長寿命となる。
〔実施例〕
前述した本実施形態の玉軸受とほぼ同様の構成を有する総玉軸受について、回転試験を行い、セパレータの素材の種類と玉軸受の耐久性との関係を評価した。玉は窒化ケイ素で構成し、セパレータは酸化ジルコニウム,窒化ケイ素,鋼(SUS304)のいずれかで構成した。また、潤滑剤として真空用グリースを用いた。結果を図2のグラフに示す。なお、グラフに示した寿命の数値は、セパレータの素材が窒化ケイ素である玉軸受の寿命を1とした場合の相対値で示してある。
グラフから分かるように、セパレータの素材がセラミックスである場合は、素材が鋼である場合と比べて摩耗が生じにくいので、前述したような回転不良や潤滑不良が生じにくい。よって、玉軸受が長寿命となる。
本実施形態の玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。 玉軸受の耐久性試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 内輪
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 玉
3a 転動面
4 セパレータ

Claims (8)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の玉と、前記各玉の間に介装されたセパレータと、を備える玉軸受において、総玉軸受であるとともに、前記玉及び前記セパレータがセラミックス製であり、前記セパレータは前記玉よりも小径な球形であることを特徴とする玉軸受。
  2. 前記玉の表面色と前記セパレータの表面色との総合色差が0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の玉軸受。
  3. 前記玉及び前記セパレータが異種のセラミックスで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の玉軸受。
  4. 前記玉及び前記セパレータの一方が酸化ジルコニウムで構成されており、他方が酸化ジルコニウム以外のセラミックスで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の玉軸受。
  5. 真空用グリースで潤滑されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受。
  6. オイルプレーティング法又はグリースプレーティング法で潤滑されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受。
  7. 前記内輪の軌道面,前記外輪の軌道面,及び前記玉の転動面の少なくとも一つを、以下の3種の潤滑被膜のいずれか一つで覆ったことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受。
    (1)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
    (2)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
    (3)アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
  8. 内径dと外径Dとが(D−d)/d≦0.187なる式を満足する薄肉軸受であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の玉軸受。
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