JP5088430B2 - 玉軸受及びロボット - Google Patents
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Description
さらに、玉の素材をセラミックスとすれば、セラミックスは鋼よりも転動や摺動に伴う摩耗が格段に少ないので耐摩耗性の高い玉軸受が得られる。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、玉やセパレータに摩耗が生じにくい玉軸受を提供することを課題とする。
半導体製造装置用のロボット(例えば、アームの関節部分)には、薄肉軸受がよく使用される。前述したように、半導体製造装置用のロボットは、清浄度の高い環境下や真空環境下において使用されることが多いので、組み込まれる軸受には低発塵性が求められる。また、潤滑剤の飛散やアウトガスの発生を嫌って、軸受には真空用グリースによる潤滑や少量潤滑法が採用されることが多い。さらに、薄肉軸受は玉の径が小さく、小さい玉で荷重を受ける必要があるので、最大接触面圧を小さくするために通常の軸受よりも多数の玉が使用される。そのため、玉とセパレータとの摺動がより多くの部分で生じて、より多くの摩耗が生じやすい。
さらに、上記玉軸受においては、前記玉及び前記セパレータが異種のセラミックスで構成されていることが好ましい。
酸化ジルコニウムは、他のセラミックスと比べて破壊靱性値が格段に大きいので、玉とセパレータとが衝突しても損傷が生じにくい。特に、玉軸受がロボットの関節部に用いられる場合は、通常玉軸受は揺動し玉とセパレータとが衝突する機会が多くなるので、玉及びセパレータの一方を酸化ジルコニウムで構成することが好ましい。また、このような構成により、色差計等の測定装置を用いなくても、玉とセパレータを肉眼で判別することができる。さらに、酸化ジルコニウムは白色であるので、玉及びセパレータの他方を黒色や灰色のセラミックスで構成すれば、玉とセパレータを肉眼で判別することが容易となる。
さらに、上記玉軸受においては、前記玉が窒化ケイ素で構成されていることが好ましい。
また、上記玉軸受においては、真空用グリースで潤滑されており、該真空用グリースはフッ素系グリースであることが好ましい。
オイルプレーティング法やグリースプレーティング法のような少量潤滑法は、低発塵性及び低アウトガス性が非常に優れており、真空用グリースを玉軸受に充填して潤滑する場合よりも周辺環境を汚染しにくい。よって、このような構成の玉軸受は、清浄度の極めて高いクリーン環境下や高真空環境下において好適に使用可能である。上記のような少量潤滑法は、真空用グリースを玉軸受に充填して潤滑する場合と比べて潤滑性が低いが、玉とセパレータがセラミックスで構成されていて摩耗しにくいので、潤滑不足に陥ることはない。
(1)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
(3)アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
このような構成であれば、直径を測定しなくても玉とセパレータを区別できるので、製造工程や完成後の検査工程において不都合が生じるおそれがない。例えば、組み立てた玉軸受の隣り合う球体について表面色の総合色差を測定すれば、玉とセパレータとが規則正しく交互に配されているか判定することができる。表面色の総合色差が0.2未満であると、総合色差の測定精度や再現性から、玉とセパレータを確実に区別することができないおそれがある。なお、両者が同種の素材で構成されていたとしても、表面色の総合色差が0.2以上であれば、直径を測定しなくても玉とセパレータを区別することができる。
さらに、本発明に係るロボットは、上記の玉軸受が組み込まれており、真空環境下で用いられることを特徴とする。
図1の玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内輪1及び外輪2の間に転動自在に配された複数の玉3と、各玉3の間に介装されたセパレータ4と、内輪1及び外輪2の間の隙間の開口を覆うシール5,5と、を備える総玉軸受である。玉3及びセパレータ4はセラミックスで構成されており、セパレータ4は玉3よりも小径な球形である。なお、シール5は備えていなくてもよい。
なお、玉3の表面色とセパレータ4の表面色との総合色差は、0.2以上であることが好ましい。このような構成であれば、直径を測定しなくても玉3とセパレータ4を区別できるので、例えば、組み立てた玉軸受において玉3とセパレータ4の表面色の総合色差を測定すれば、玉3とセパレータ4とが規則正しく交互に配されているか判定することができる。
さらに、玉3とセパレータ4の一方が酸化ジルコニウムで構成されており、他方が酸化ジルコニウム以外のセラミックスで構成されていることが好ましい。酸化ジルコニウムは、他のセラミックスと比べて破壊靱性値が格段に大きいので、玉3とセパレータ4が衝突しても損傷が生じにくい。さらに、酸化ジルコニウムは白色であるので、玉3及びセパレータ4の他方を黒色や灰色のセラミックスで構成すれば、玉3とセパレータ4を肉眼で判別することが容易となる。
さらに、この玉軸受は、オイルプレーティング法又はグリースプレーティング法で潤滑されていることが好ましい。すなわち、内輪1の軌道面1a,外輪2の軌道面2a,及び玉3の転動面3aの少なくとも一つに、オイルプレーティング法又はグリースプレーティング法により、潤滑油又はグリースからなる潤滑被膜(図示せず)を形成することが好ましい。オイルプレーティング法やグリースプレーティング法のような少量潤滑法は、潤滑剤の量が少量に制限されているため低発塵性及び低アウトガス性が非常に優れており、真空用グリースを玉軸受に充填して潤滑する場合よりも周辺環境を汚染しにくい。よって、このような構成の玉軸受は、清浄度の極めて高いクリーン環境下や高真空環境下において好適に使用可能である。
(1)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
(3)アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
ここで、DFO潤滑剤について、さらに詳細に説明する。DFO潤滑剤は、金属に対する親和性の高い官能基を有する含フッ素重合体とフッ素油(例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE))とを含有する潤滑剤であり、極めて高い粘性を有するものである。官能基を有する含フッ素重合体は、官能基の働きで極めて強く金属表面に吸着する。一方、フッ素油の分子も、例え一旦切り離されてもすぐに再付着する性質があり、逸散し難い。よって、低アウトガス性に優れている。
このような官能基を有する含フッ素重合体の具体例としては、例えば、デュポン社製のクライトックス157FSL,157FSM,157FSHや、ダイキン工業社製のデムナム変性品SA,SH,SY−3や、アウジモント社製のフォンブリンZDEAL,ZDIAC,ZDISCO,ZDOL,ZDOLTX2000等があげられる。
このようなDFO潤滑剤は、内輪や外輪の軌道面や玉の転動面に被覆した上で加熱,減圧等により乾燥させて潤滑被膜を形成させることが好ましい。
(D−d)/d≦0.187
薄肉軸受は玉の径が小さく、小さい玉で荷重を受ける必要があるので、最大接触面圧を小さくするために通常の軸受よりも多数の玉が使用される。そのため、玉とセパレータとの摺動がより多くの部分で生じて、より多くの摩耗が生じやすい。しかしながら、玉とセパレータがセラミックスで構成されていて摩耗しにくいので、低発塵性であるとともに、潤滑性の低い潤滑法が採用されていたとしても潤滑性に問題が生じることはない。
前述した本実施形態の玉軸受とほぼ同様の構成を有する総玉軸受について、回転試験を行い、セパレータの素材の種類と玉軸受の耐久性との関係を評価した。玉は窒化ケイ素で構成し、セパレータは酸化ジルコニウム,窒化ケイ素,鋼(SUS304)のいずれかで構成した。なお、グラフに示した寿命の数値は、セパレータの素材が窒化ケイ素である玉軸受の寿命を10とした場合の相対値で示してある。
グラフから分かるように、セパレータの素材がセラミックスである場合は、素材が鋼である場合と比べて摩耗が生じにくいので、前述したような回転不良や潤滑不良が生じにくい。よって、玉軸受が長寿命となる。
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 玉
3a 転動面
4 セパレータ
Claims (9)
- 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の玉と、前記各玉の間に介装されたセパレータと、を備える玉軸受において、総玉軸受であるとともに、前記玉と前記セパレータが異種のセラミックスで構成され、前記セパレータは前記玉よりも小径な球形であるとともに、前記セパレータが酸化ジルコニウムで構成されていることを特徴とする玉軸受。
- 前記玉が窒化ケイ素で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の玉軸受。
- 真空環境下で用いられるロボットの関節部に使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の玉軸受。
- 内径dと外径Dとが(D−d)/d≦0.187なる式を満足する薄肉玉軸受であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の玉軸受。
- 真空用グリースで潤滑されており、該真空用グリースはフッ素系グリースであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受。
- オイルプレーティング法又はグリースプレーティング法で潤滑されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受。
- 前記内輪の軌道面、前記外輪の軌道面、及び前記玉の転動面の少なくとも一つを、以下の3種の潤滑被膜のいずれか一つで覆ったことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の玉軸受。
(1)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
(3)アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜 - 前記玉の表面色と前記セパレータの表面色との総合色差が0.2以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の玉軸受。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の玉軸受が組み込まれており、真空環境下で用いられるロボット。
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