JP3903151B2 - ボールねじおよびボールねじの潤滑薄膜形成方法 - Google Patents

ボールねじおよびボールねじの潤滑薄膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ボールねじおよびボールねじの潤滑薄膜形成方法に係り、特に通常のグリースやオイルの使用ができない真空環境、清浄環境および腐食環境等で用いるのに好適なボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
前述の環境として、例えば半導体製造装置内部に配設される搬送系などが挙げられるが、このような環境では、ボールねじの潤滑剤としてグリースを用いていると、グリースの油分が蒸発することにより、潤滑機能の劣化や使用環境の汚染といった不具合が発生する。
【0003】
このような場合、従来では、ねじ軸およびナットの軌道面やボールの表面の少なくともいずれかに、金、銀、鉛、銅などの軟質金属、カーボンや二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を膜状にコーティングすることが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述の固体潤滑剤からなるコーティング膜では、このコーティング膜がボールの転動動作に伴い僅かずつ剥がれるなど、発塵状況がグリース使用時に比べると低レベルになるものの、特に清浄環境では不適合となるレベルである。特に、高荷重条件においては発塵量が増大する。
【0005】
また、本願出願人は、バインダーにふっ素系樹脂を混合した固体潤滑剤を、ねじ軸およびナットの軌道面やボールの表面の少なくともいずれかにコーティングすることを行っており、この場合には、先の従来例よりも発塵を桁違いに減らせるようになる。しかしながら、このコーティング膜でも、比較的大きなアキシャル荷重がかかる状況において、剥離や欠落の他、摩耗による発塵が著しく増加し、発塵寿命が短くなる。
【0006】
しかも、前述のようなコーティング膜の剥離、欠落が発生すると、転動・摺接部位での潤滑作用が低下して、金属どうしの接触となるなど凝着しやすくなる他、各構成要素の摩耗が促進されるなど、寿命という点において問題がある。
【0007】
また、腐食性ガスがある環境では、前述のようにコーティング膜の剥離、欠落箇所の軸受構成要素が腐食されることになる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ボールねじにおいて、発塵の抑制および潤滑性の向上を図り、長寿命を達成できるようにすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のボールねじは、ねじ軸およびナットが金属材で、少なくとも前記ねじ軸およびナットの軌道面に、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜が形成されているボールねじにおいて、前記薄膜が、パーフルオロポリエーテル(PFPE)とその誘導体との混合物を希釈溶媒で希釈した潤滑油により形成されてなり、前記薄膜は流動性を有する。
【0010】
本発明のボールねじは、ねじ軸およびナットが金属材で、ボールがセラミックス材で形成されており、少なくともねじ軸およびナットの軌道面に、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜が形成されている。
【0011】
なお、前述の薄膜は、0.2μm以下に設定することが好ましい。この場合の薄膜は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)とその誘導体との混合物を希釈溶媒で0.25mass%にまで希釈した潤滑油により形成することができる。
【0012】
本発明のボールねじの潤滑薄膜形成方法はねじ軸、ナットおよびボールを組み立てた請求項1に記載のボールねじにおいてそれら各要素の少なくとも転動、摺動部位に、パーフルオロポリエーテル(PFPE)とその誘導体との混合物を希釈溶媒で希釈した潤滑油を膜状に付着させる工程と、膜状とした潤滑油を加熱することにより、それに含まれる混合物を除去する工程と、を含むことを特徴とするボールねじの流動性を有する潤滑薄膜形成方法である。
【0013】
【作用】
本発明のボールねじでは、潤滑要素として、従来の固体潤滑剤のコーティング膜のように剥離、欠落の他、摩耗が起こらない流動性を有する潤滑薄膜としている。しかも、この潤滑薄膜は、従来のようにボールねじ内部に潤滑油を封入するといった形態でもないので、それらの外部漏洩の心配もない。
【0014】
このような本発明の潤滑薄膜では、比較的大きなアキシャル荷重がかかる状況でも、各構成要素間での摺接が金属どうしの無潤滑の接触状態とならず、常に各構成要素の表面全面に途絶えることなく付着する状態が維持されるから、各構成要素それぞれの転動、摺動が常に潤滑油を介して行われるようになり、潤滑作用が安定的に維持されるようになる。しかも、従来のコーティング膜に比べてボールの転動抵抗が小さくなるとともに、ボールをねじ軸およびナット間にある程度、負隙間で配設することが可能となるから、ボールねじの動作を高精度にできるようになる。
【0015】
特に、薄膜の膜厚を特定すると、発塵性と潤滑性との両方に関して優れた結果が得られるようになる。この膜厚については、薄膜を形成するベースとなる潤滑油を特定すれば、容易に設定できるようになる。
【0016】
また、本発明のボールねじの潤滑薄膜形成方法では、油膜形成対象部位に対して、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑油の薄膜を発塵性と潤滑性との両方に優れた膜厚で、良好に形成することが可能となる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の詳細を図面に示す実施例に基づいて説明する。図1および図2は本発明の一実施例にかかり、図1は、ボールねじの概略構成を示す縦断面図、図2は、図1のB部拡大図である。
【0018】
図中、Aはボールねじ、1はねじ軸、2はナット、3はボール、4はサーキュレータチューブ、5は潤滑薄膜である。
【0019】
ねじ軸1は、その外周面に螺旋溝11が形成されている。ナット2は、ねじ軸1に外嵌されており、その内周面にねじ軸1の螺旋溝11に対応する螺旋溝21が形成されている。複数のボール3は、ねじ軸1の螺旋溝11と、ナット2の螺旋溝21との間に介装されている。サーキュレータチューブ4は、ねじ軸1またはナット2のいずれか一方の回転により両螺旋溝11,21間に介装されるボール3を転動循環させるためのもので、ナット2に取り付けられている。
【0020】
ねじ軸1の螺旋溝11およびナット2の螺旋溝21の断面形状は、ゴチックアーチ状、すなわち二つの曲率中心の異なる円弧の組み合わせによりほぼV字形に形成されている。なお、両螺旋溝11,21の断面形状は、図3に示すような円弧とすることもできる。
【0021】
これらねじ軸1、ナット2、ボール3およびサーキュレータチューブ4は、耐食性材料により形成されている。具体的に、ねじ軸1およびナット2の素材としては、例えばJIS規格SUS440Cなどのマルテンサイト系ステンレス鋼に適当な硬化熱処理を施したものや、JIS規格SKH4、AISI規格M−50材などの耐熱鋼とすることができる。また、ボール3は、前述と同様の鋼材の他、セラミックス材とすることができる。さらに、サーキュレータチューブ4は、例えばSUS304などのステンレス鋼で形成される。なお、前述のセラミックス材としては、焼結助剤として、イットリア(Y23)およびアルミナ(Al23)、その他、適宜、窒化アルミ(AlN)、酸化チタン(TiO2)、スピネル(MgAl24)を用いた窒化けい素(Si34)を主体とするものの他、アルミナ(Al23)や炭化けい素(SiC)、ジルコニア(ZrO2)、窒化アルミ(AlN)などが好ましい。
【0022】
このような材料でボールねじAの各構成要素を形成すれば、例えば半導体製造装置などにおいて用いられるハロゲン系腐食性ガスに対しても、腐食せずに済むようになる。
【0023】
そして、ねじ軸1の外周面、ナット2の内周面、ボール3の表面およびサーキュレータチューブ4の内面には、潤滑薄膜5が被覆形成されている。
【0024】
この薄膜5は、官能基を有する含フッ素重合体からなる。この含フッ素重合体としては、フルオロポリエーテル重合体またはポリフルオロアルキル重合体が好ましい。フルオロポリエーテル重合体は、−CX2X−O− という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、いずれも数平均分子量が1000〜50000の重合体とするものが挙げられる。ポリフルオロアルキル重合体は、下記化学式1に示すものが挙げられる。また、前述の官能基は、金属に対して親和性の高いもの(例えばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフォン基またはエステル基など)が好ましく、例えば下記化学式2,3に示すものが挙げられる。このような含フッ素重合体は、単独で用いるか、または2種以上を併用して用いてもよい。その場合は、より耐摩耗性の優れた薄膜が得られるように、組み合わされた基が互いに反応して重合体をより高分子量化させるように配慮するのが望ましい。
【0025】
【化1】
Figure 0003903151
【0026】
【化2】
Figure 0003903151
【0027】
【化3】
Figure 0003903151
【0028】
前述の薄膜5として、より詳しくは、パーフルオロポリエーテル(PFPE)あるいはその誘導体との混合物、具体的に例えばモンテカチーニ社の商品名フォンブリン(FONBLIN)Yスタンダード、フォンブリンエマルジョン(FE20、EM04など)またはフォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DEAL、FONBLIN Z DIAC、FONBLIN Z DISOC、FONBLIN Z DOL、FONBLIN Z DOLTX2000、FONBLIN Z TETRAOLなど)が好適に用いられる。これら例示したものは、いずれも濃度が濃く、金属に対する親和性がきわめて悪いので、そのままでは膜状に付着させることが困難である。そのため、薄膜5の形成は、下記するような方法が適用される。なお、前述のフォンブリンZ誘導体は、真空環境で用いると、真空排気系に対して害を及ぼす可能性があるので、使用環境を考慮するのが好ましい。
【0029】
次に、前述の潤滑薄膜5の形成方法の一例を説明する。
【0030】
(a) ボールねじAを完成状態に組み立ててから、このねじ軸1とナット2との間でボール3の存在する箇所において、用意した潤滑油をスポイドなどにより数滴、注入し、数回回転させることにより、潤滑油を膜状にねじ軸1、ナット2、ボール3およびサーキュレータチューブ4の転動、摺動部位に被覆させる(供給処理)。この潤滑油の供給はスプレーにより塗布してもよいし、また、潤滑油の貯溜槽に浸漬してもよい。ここで用意した潤滑油は、例えばフォンブリンエマルジョンFE20(フォンブリン濃度20mass%の)を適当な希釈溶媒でフォンブリン濃度を0.25mass%にまで希釈したものである。なお、前述の希釈溶媒は、メタノール溶液、アルコール溶液や水などの揮発性のものとすることができる。
【0031】
(b) 前記潤滑油を塗布したボールねじAの全体を40〜50度で約3分間加熱し、潤滑油に含むメタノール溶液など溶媒を除去する(乾燥処理)。
【0032】
(c) この後、ボールねじAの使用環境での雰囲気温度に応じて、例えば150〜300度で15〜30分間、加熱する(仕上げ乾燥処理)。
【0033】
なお、(a)、(b)は必要に応じて数回繰り返すようにしてもよく、最終的には、潤滑薄膜5の膜厚を例えば0.2μm以下に設定する。
【0034】
このようにすれば、ボールねじAの各構成要素において互いに接触する部位に潤滑薄膜5を好適な膜厚で形成することができる。そして、前述したように溶媒を除去しておけば、ボールねじAの動作時の不要な発塵成分がなくなる。また、潤滑薄膜5の膜厚をきわめて薄く設定しているから、油成分による発塵もほとんどなくなる。さらに、最終の加熱処理により、使用環境での発塵をもなくせるようになる。
【0035】
次に、上述した潤滑油について、▲1▼希釈濃度とボールねじにおける回転初期の発塵量との関係、▲2▼薄膜5を形成するときの供給処理および乾燥処理の繰返回数(ディッピング回数)とボールねじにおける回転初期の発塵量との関係、▲3▼誘導体分子の有無と発塵寿命との関係をそれぞれ調べているので、説明する。
【0036】
試験は、図4に示す装置を用いている。図中、60はボールねじAのねじ軸、61はボールねじAのサポート軸受、62は負荷用ばね、63はパーティクルカウンター、64はボールねじAのナット、65は支持板、66はナット64のハウジング、67はハウジングの回転止め、68はモータ、69はモータ68とねじ軸60とのカップリングである。
【0037】
試験条件は、下記のとおり。
【0038】
・回転速度 :120rpm
・荷重 :アキシャル荷重(Fa)490N
・ストローク:50mm
・雰囲気 :大気、クリーンベンチ内(クラス10)
・環境温度 :室温
・計測条件 :粒子径0.1μm以上、0.3μm以上の発塵粒子数
試験に用いたボールねじAは、呼び番号1404、7TS3、5C7で、ねじ軸1の軸径を14mm、ボール3の径を2mm(3.5巻、1列)、リードを3/16″(4.763mm)としている。
【0039】
▲1▼ 試験時間は、回転初期10時間(h)とする。潤滑油は、フォンブリンエマルジョンFE20のフォンブリン濃度(mass%)を、“5”、“2”、“0.5”、“0.25”の4段階に希釈溶媒(エチルアルコールまたは水)で希釈したものを用いている。薄膜5の形成方法は、前述した方法とする。但し、供給処理および乾燥処理を二回繰り返してから、仕上げ乾燥(170℃、15分間)を施す。
【0040】
結果は、下記表1に示すように、0.25mass%とした場合の発塵量が、他に比べて格段に少なくなっている。
【0041】
【表1】
Figure 0003903151
【0042】
▲2▼ 試験時間は、回転初期10時間(h)とする。供給処理および乾燥処理の繰り返し回数は、“4”、“3”、“2”、“1”の4段階としている。潤滑油は、前述の▲1▼で述べたもの(フォンブリンエマルジョンFE20のフォンブリン濃度を0.25mass%に希釈したもの)を用いる。
【0043】
結果は、下記表2に示すように、繰り返し回数を2回以下とした場合の発塵量が、他に比べて格段に少なくなっている。
【0044】
【表2】
Figure 0003903151
【0045】
上記▲2▼での繰り返し回数別の薄膜5それぞれの膜厚について、ボール3の質量増加量に基づいて推定した。この場合、薄膜5を得た後で、ボールねじAを分解し、ボール3の質量増加量を測定している。結果を、下記表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0003903151
【0047】
・膜の比重 :1.88g/cm3
・ボールの表面積:0.495cm2
この結果と、上記▲1▼,▲2▼の結果とに鑑み、薄膜5の膜厚については0.2μm以下とするのが好ましいと言える。但し、0.2μm以下と言えどもあまり薄くしすぎると、金属材どうしの摺接部位における潤滑性が低下するおそれがあるので、0.2μm以下でその近傍に設定するのが好ましいと言える。
【0048】
▲3▼ 試験時間を発塵寿命とするので、限定しない。発塵寿命は、総発塵量が1000個/0.1cf以上となる状況を、連続10回測定した時点までの時間を計測している。なお、測定は10分間隔とする。
【0049】
試験では、三つの実施例品、比較品、従来品を用いている。実施例品は、フォンブリンエマルジョンFE20を希釈溶媒(エチルアルコールまたは水)でフォンブリン濃度を0.25mass%にまで希釈した潤滑油を用いており、同一仕様のものを三つ用いている。比較品は、フォンブリンZ25を希釈溶媒(ガルデンSV90)でフォンブリン濃度を0.25mass%にまで希釈した潤滑油を用いている。つまり、実施例品の潤滑油は誘導体を含み、比較品の潤滑油は誘導体を含まない。従来品は、ねじ軸、ナットおよびボール全面にコーティング膜を形成したものとする。このコーティング膜は、熱硬化性合成樹脂からなるバインダー中にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を分散混合したものである。
【0050】
結果は、下記表4に示すように、アキシャル荷重を100Nとした場合、実施例品が比較品および従来品に比べ、約10倍と耐荷重性が大幅に向上しており、特に高荷重条件下で用いる場合に優位であると言える。ちなみに、従来品のコーティング膜でも、他の一般的な固体潤滑剤のコーティング膜に比べると発塵量が格段に少ない。このような結果が得られる理由は、本実施例品である潤滑薄膜5が流動性を有していて、ねじ軸、ナットおよびボールの摺接が常に潤滑油を介する状態となり、従来品である固体潤滑剤のコーティング膜のような剥離や欠落の他、摩耗が発生しないからと言える。
【0051】
【表4】
Figure 0003903151
【0052】
なお、実施例品と比較品とにおける回転初期10時間の発塵量は、下記表5に示すように、ほとんど差がなかった。
【0053】
【表5】
Figure 0003903151
【0054】
この▲3▼の結果より、薄膜5を形成する潤滑油としても、誘導体分子を含むものとするのが特に耐荷重性において優れることが判った。
【0055】
以上▲1▼〜▲3▼の各試験における結果が示すように、薄膜5としては、使用潤滑油の性状、薄膜形成方法や生成後の膜厚などを、ある程度、特定することが、発塵性、耐荷重性において重要となることが判るであろう。
【0056】
ところで、前述した潤滑油(フォンブリンエマルジョンFE20を希釈したもの)からなる薄膜5を形成したボールねじAにおいて、ねじ軸1、ナット2、ボール3およびサーキュレータチューブ4を金属材料としたものの場合、偏荷重などが作用したりすると、はなはだしい場合に摺接部位において腐食が発生する可能性があると考えられる。というのは、偏荷重などが作用したときに、薄膜5の一部がかきとられてしまうと、ねじ軸1、ナット2、ボール3およびサーキュレータチューブ4の表面(金属面上の酸化面)が露出することになって、ここで金属材どうしの凝着摩耗が発生するようになるが、このような凝着摩耗が発生すると、ねじ軸1、ナット2、ボール3およびサーキュレータチューブ4の表面でも新生面(酸化されていない純粋の金属面)が露出することになるため、この新生面が潤滑油の成分中のフッ素と反応し、腐食されることが起こりうるのである。また、凝着摩耗時の触媒作用によりフッ素成分のガスを発生することも起こりうる。これに対して、ボールねじAにおいて少なくともボール3をセラミックス材とすれば、前述したような凝着摩耗が発生せずに済むので、前述したような腐食やガス発生といった心配がなくなる。したがって、ボールねじAの構成を、少なくともボール3についてセラミックス材で形成したものの方がすべて金属材とするものに比べて優れていると言える。
【0057】
なお、本発明は上記実施例のみに限定されるものでなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0058】
(1) ナット2の軸方向一端または軸方向両端には、必要に応じねじ軸1の螺旋溝11に対して近接する非接触タイプのシールを設けてもよく、この場合には低発塵性により貢献できる。このシールとしては、合成ゴムなどの弾性体により円筒形に形成されており、内周面の所要角度範囲にねじ軸1の螺旋溝11に近似する断面形状の凸部を有するものが考えられる。
【0059】
(2) 本発明のボールねじAは、真空環境のみに限定されず、大気環境でも使用することができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明のボールねじでは、従来の固体潤滑剤のコーティング膜のような剥離や欠落の他、摩耗がない流動性を有する潤滑薄膜を用いるから、比較的大きなアキシャル荷重がかかる状況でも、各構成要素間での摺接が金属どうしの無潤滑の接触状態とならず、常に潤滑油を介して摺接する状態となり、発塵が格段に少なくなって潤滑性が格段に向上するようになる。このように、潤滑薄膜からの発塵だけでなく、各構成要素からの発塵を抑制できるとともに、動作安定性の向上に貢献できる。しかも、従来のコーティング膜に比べてボールの転動抵抗が小さくなるとともに、ボールをねじ軸およびナット間にある程度、負隙間で配設することが可能となるから、ボールねじの高精度化に寄与できる。
【0061】
したがって、例えば半導体製造過程のように高精度な加工が要求されるところに本発明のボールねじを用いると、清浄雰囲気を阻害しにくくなるので、半導体製造品の歩留まり向上に貢献できる。
【0062】
特に、薄膜の膜厚を特定すると、発塵性と潤滑性との両方に関して優れた結果が得られるようになる。この膜厚については、薄膜を形成するベースとなる潤滑油を特定すれば、容易に設定できるようになる。
【0063】
また、本発明のボールねじの潤滑薄膜形成方法では、油膜形成対象部位に、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑油の薄膜を発塵とならない量でかつ潤滑作用を妨げない量として良好に付着させることができるから、発塵がほとんどなくて、しかも各構成要素間での潤滑作用を安定的に得ることができて、ボールねじの長寿命化を達成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボールねじの概略構成を示す縦断面図。
【図2】図1のB部を拡大した断面図。
【図3】ボール転動溝の他の例を示す部分断面図。
【図4】試験装置の概略構成を示す縦断面図。
【符号の説明】
A ボールねじ
1 ねじ軸
2 ナット
3 ボール
4 サーキュレータチューブ
5 潤滑薄膜
11 ねじ軸の螺旋溝
21 ナットの螺旋溝

Claims (5)

  1. ねじ軸およびナットが金属材で、少なくとも前記ねじ軸およびナットの軌道面に、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜が形成されているボールねじにおいて、
    前記薄膜が、パーフルオロポリエーテル(PFPE)とその誘導体との混合物を希釈溶媒で希釈した潤滑油により形成されてなり、前記薄膜は流動性を有する、ことを特徴とするボールねじ。
  2. ボールがセラミックス材で形成されてなる、ことを特徴とする請求項1のボールねじ。
  3. 前記薄膜の膜厚が、0.2μm以下に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2のボールねじ。
  4. 前記薄膜が、パーフルオロポリエーテル(PFPE)とその誘導体との混合物を希釈溶媒で0.25mass%にまで希釈した潤滑油により形成されてなる、ことを特徴とする請求項3のボールねじ。
  5. ねじ軸、ナットおよびボールを組み立てた請求項1に記載のボールねじにおいてそれら各要素の少なくとも転動、摺動部位に、パーフルオロポリエーテル(PFPE)とその誘導体との混合物を希釈溶媒で希釈した潤滑油を膜状に付着させる工程と、
    膜状とした潤滑油を加熱することにより、それに含まれる混合物を除去する工程と、を含むことを特徴とするボールねじの流動性を有する潤滑薄膜形成方法。
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