JP4476606B2 - 転動装置 - Google Patents

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Description

本発明は転動装置に関し、特に転動部位に潤滑が施された転動装置に関する。
転がり軸受、リニアガイド、リニアベアリング、及び、ボールねじ装置などの転動装置は、例えば半導体製造装置内部に配設される搬送系装置に用いられることがある。このような真空環境下あるいはクリーンルーム等の清浄雰囲気中(以下、「真空環境下等」と記すこともある。)で使用される転動装置には、動作円滑性、高耐久性などに加え、低発塵性が要求される。
このため、従来においては、転動装置の転動部位に潤滑剤を塗布・封入することにより、転動体及び転動体と接触する部位の摩耗を防ぎ、動作の円滑性を保っている。また、発塵等による汚染がほとんど許容されない前述の真空環境下等で用いられる転動装置においては、極めて揮発性が低いフッ素系潤滑油を基油としたフッ素系潤滑剤を用いることにより、転動装置外部に飛散あるいは蒸発する潤滑剤の量を抑制している。
特許文献1及び特許文献2には、このようなフッ素系潤滑剤を用いた転動装置の例が示されている。これらの転動装置では、潤滑部位にフッ素系潤滑剤を付着させて、該フッ素系潤滑剤からなる潤滑膜を形成している。また、フッ素系潤滑剤として、分子構造中に官能基を有し、軸受材料との親和性が高いフッ素系潤滑剤を用いることにより、軸受材料に強固に吸着する潤滑膜を形成し、低発塵性及び耐久性を実現している。
また、フッ素系潤滑剤の一例として特許文献3には、基油としてフッ素系潤滑油と、増ちょう剤としてポリテトラフルオロエチレンと、を含有するフッ素系グリースが、示されている。さらに、特許文献4及び5には、フッ素系グリースを封入して用いる転動装置の例が示されている。また、特許文献6には、このポリテトラフルオロエチレンを主として含有するフッ素系固体潤滑剤を用いた転がり軸受が示されている。
特開2001−173667号公報 特開昭62−246621号公報 特開平1−284542号公報 特開2003−13974号公報 特開2002−357225号公報 特開平5−240257号公報
しかしながら、上記フッ素系グリースを使用した場合には、外部飛散を抑制するためにフッ素系グリースの使用量を少量にする必要があるが、この場合には、潤滑作用の不足や耐久性の低下を余儀なくされる。
これに対し、上記フッ素系高分子固体潤滑剤で転動部位をコーティングすることも考えられているが、比較的大きなアキシャル荷重がかかる状況においては、固体潤滑剤の剥離や欠落が生じたり、摩耗による発塵が多くなるので、耐久性及び低発塵性の点で不十分な場合がある。
また、上述のように、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油を付着させることにより、低発塵性、耐久性を向上させる方法が提案されているが、軸受材料等に化学的に付着している分子は一分子層であり、余分の官能基を有するフッ素系潤滑油は、化学的に付着している訳ではない。一般に官能基を有するフッ素系潤滑油は、官能基を有しないフッ素系潤滑油と比較して蒸気圧が高い。このため、化学的に付着していない余分のフッ素系潤滑油が蒸発することによりアウトガスが発生しやすい。さらに、余分なフッ素系潤滑油は発塵粒子としても放出されることから、アウトガスや発塵による有機汚染がほとんど許容されない環境下で使用するためには、アウトガスや発塵をより高度に抑制可能な対策が要求されることとなる。この点、余分なフッ素系潤滑油が存在せず一分子層のみならば、上記アウトガス等の問題はなくなるものの、耐久性は不十分といわざるを得ない。
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、真空環境下等において好適に使用でき、装置から発生する塵埃やアウトガスが少なく、優れた耐久性を有する転動装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1による転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面の間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備え、真空環境下あるいは清浄雰囲気中で使用される転動装置において、前記外方部材の軌道面と前記内方部材の軌道面と前記転動体の転動面と、のうちの少なくとも1つに、オイルプレーティング処理により、20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下のフッ素系潤滑油と粒径1μm以下のパウダー状フッ素樹脂とを含有し、前記フッ素樹脂の含有量が5質量%以上40質量%以下である潤滑剤からなる潤滑膜を形成したことを特徴とする。
ここで、オイルプレーティング処理とは、前記外方部材の軌道面、前記内方部材の軌道面、あるいは、前記転動体の転動面に、薄膜を付着させるための処理をいう。例えば、後述のように、希釈した潤滑剤を前記転動面等に付着させ、熱処理により希釈溶媒を除去することにより、本発明にかかる潤滑膜を形成可能である。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、低発塵化の達成には、潤滑油にフッ素樹脂を添加することが有効であることを見出した。20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下の潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑剤で潤滑膜を形成すれば、軌道面には潤滑剤が常に供給されて軌道面と転動面とが直接的に接触することなく、かつ、余分な潤滑油がフッ素樹脂によりトラップされるため、低発塵及び低アウトガスで潤滑作用が安定的に維持される。また、固体潤滑膜とは異なり流動性が保たれることから、固体潤滑膜において発生した剥離や欠落、摩耗による発塵が抑制される。さらに、オイルプレーティング処理によって潤滑膜を形成させることから、通常のグリース潤滑などに比べ回転抵抗がきわめて小さくなるために、高精度な回転性能が得られる。
上記のように、本発明における潤滑油は20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下であり、蒸気圧が低いものであるほどアウトガスが少なく好ましい。一方、20℃における蒸気圧が1×10-5Paを超えると、フッ素樹脂を添加してもアウトガス抑制の効果が十分に得られない。
さらに、従来においては潤滑膜を薄く形成することにより発塵及びアウトガスの抑制を行わなければならなかったが、本発明においてはフッ素樹脂の添加により発塵及びアウトガスの抑制効果が得られることから、潤滑膜を若干厚く形成することができ、このため耐久性の向上も図ることができる。すなわち、潤滑膜は、前記潤滑膜を形成すべき面における粗さの山をそれぞれ覆うことができる程度にまで形成させることが望ましい。これよりも潤滑膜が薄くなると、一部の上記山が容易に露出してしまい、接触する相手側の油膜をかきとりやすくなる境界潤滑状態となって局部的な焼き付きが容易に発生するなど、耐久性が不十分となるからである。逆にあまりに潤滑膜が厚くなると、余分な潤滑剤が飛散しやすくなるため、発塵やアウトガスの抑制効果が低下する。このような潤滑膜の厚さの調整は、例えば後述するオイルプレーティング処理において、潤滑膜を形成すべき面に付着させる潤滑剤の希釈溶液の希釈濃度を調節することなどによって、行うことができる。
また、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン( 以下、PTFEと略称する)のほか、四フッ化エチレンパーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)などを好適に使用できる。
また、潤滑油としてフッ素系潤滑油を用いているため、揮発性が極めて低いのでアウトガスが少ない
ッ素樹脂の含有量が5質量%より低い場合には、発塵抑制効果が劣化し、40質量%よりも高い場合には、潤滑油の含有量が低くなるため、潤滑性が劣化する。より望ましくは、10質量%以上30質量%以下である。
ッ素系潤滑油として、上記軌道面等を構成する材料との親和性が高い、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油を用いて、軌道面等に強固に付着する潤滑膜を形成させることにより、耐久性や発塵抑制効果を向上することができる。
一方、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油は、一般に蒸気圧が高くアウトガスが発生しやすいことから、材料への強固な付着によりもたらされる効果を維持しつつ、使用される環境の条件に応じたアウトガス量となるように、その含有量を調節することが望ましい。
すなわち、潤滑剤へのフッ素樹脂の添加により、従来よりもアウトガスを抑制することができるが、よりアウトガス抑制の要求が厳しい環境においては、分子構造中に官能基を有しないフッ素系潤滑油10質量%以上98質量%以下と、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油90質量%以下2質量%以上と、でフッ素系潤滑油を構成することが望ましい。
また、アウトガス抑制の要求がさらに厳しい環境においては、本発明の請求項による転動装置のように、分子構造中に官能基を有しないフッ素系潤滑油50質量%以上98質量%以下と、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油50質量%以下2質量%以上と、でフッ素系潤滑油を構成することが望ましい。
さらに、アウトガス抑制の要求がもっとも厳しい環境においては、フッ素系潤滑油として、分子構造中に官能基を有しないフッ素系潤滑油のみを用い、フッ素樹脂を添加することにより、アウトガスを抑制することが望ましい。
本発明の請求項による転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面の間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備え、真空環境下あるいは清浄雰囲気中で使用される転動装置において、前記外方部材の軌道面と前記内方部材の軌道面と前記転動体の転動面と、のうちの少なくとも1つに、オイルプレーティング処理により、20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下のアルキル化シクロペンタンを主成分として含有する潤滑油と粒径1μm以下のパウダー状フッ素樹脂とを含有し、前記フッ素樹脂の含有量が5質量%以上60質量%以下である潤滑剤からなる潤滑膜を形成したことを特徴とする。
アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分として含有する潤滑油は、20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下であるので真空中においてもアウトガスの抑制効果がある。加えて、これら炭化水素系の潤滑油はフッ素系潤滑油と比べると潤滑性に優れており、転動装置を長寿命にする。
ッ素樹脂の含有量が5質量%より低い場合には、発塵抑制効果が劣化し、60質量%よりも高い場合には、潤滑油の含有量が低くなるため、潤滑性が劣化し、トルクが増加する。より望ましくは、5質量%以上40質量%以下である。
本発明の請求項による転動装置は、請求項1〜のいずれか1項において、前記潤滑膜は、前記潤滑剤0.5質量%以上10質量%以下と希釈溶媒99.5質量%以下90質量%以上とからなる潤滑剤希釈溶液を、該潤滑膜を形成すべき面に付着させて、50℃以上250℃以下で、15分間以上300分間以下加熱し、前記希釈溶媒を除去することにより形成したことを特徴とする。
このようなオイルプレーティング処理により、前記作用、効果を発揮する潤滑膜の形成が可能である。
この場合において、潤滑剤の含有量が0.5質量%より低い場合には、前記軌道面及び転動面に付着する潤滑膜が薄くなり過ぎるため、上述のように耐久性が不十分となる。一方、10質量%より高いと潤滑剤希釈溶液がべとつき、均一な付着や作業性に悪影響を及ぼすと共に、潤滑膜が厚くなり過ぎるため、上述のように発塵やアウトガスの抑制効果についての劣化を招くこととなる。
また、加熱温度及び加熱時間については、上記の上限温度及び上限加熱時間を超える場合には、潤滑膜を構成する潤滑剤の潤滑性が劣化し、また、内方部材及び外方部材の軌道面や転動体の転動面の硬度低下及び寸法変化の原因となる。逆に、あまりに低い温度や短い加熱時間に設定すると、希釈溶媒を完全に除去することができない。このため、実際のオイルプレーティング処理の際には、上記の範囲内であって、かつ、用いた希釈溶媒の種類や含有量に応じて該希釈溶媒を除去するのに十分な加熱温度及び加熱時間を設定する。また、軌道面等を構成する材料についても考慮し、例えば焼入れ・焼き戻し処理した鋼を用いる場合には、上記硬度低下及び寸法変化をもたらさないような加熱温度及び加熱時間を設定する。
ここで、前記潤滑剤希釈溶液の付着方法としては、例えば、塗布や、噴霧等が挙げられる。あるいは、前記潤滑剤希釈溶液中に浸漬後、引き上げる方法も用いることができる。この場合は、組み立てた転動装置を浸漬してもよいし、転動装置の部品を浸漬して潤滑膜を形成した後に組み立ててもよい。
また、前記希釈溶媒は、潤滑油及びフッ素樹脂双方の溶媒として用いることができるものであり、具体例としては、代替フロン系の希釈溶媒、パーフロオロカーボン(PFC)、フッ素系不活性溶液のノベック(住友スリーエム株式会社製)、バートレル(デュポン株式会社製)、及び、ガルデン(アウジモント株式会社製)などが挙げられる。炭化水素系の潤滑油を用いる場合には、希釈溶媒としてヘキサンなども用いることができる。
本発明の請求項による転動装置は、請求項1〜のいずれか1項において、前記外方部材の軌道面及び前記内方部材の軌道面の中心線平均粗さRaをそれぞれ0.02μm以上0.2μm以下とし、前記転動体の転動面の中心線平均粗さRaを0.002μm以上0.01μm以下としたことを特徴とする。
このような表面粗さに設定することにより、接触面の面圧を抑制して耐久性を向上させることができる。これとともに、上述のような表面粗さに設定することにより、潤滑膜を少量に抑えるられるため、余分な潤滑油の飛散を防止し、発塵及びアウトガスの抑制効果についても高めることができる
発明による転動装置は、発塵量及びアウトガスの量が非常に低量であるので、真空中や精密機械製造工場等のクリーンルーム等での使用に好適である。
以上詳細に説明したように、本発明の転動装置によれば、潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑剤からなる潤滑膜を形成することにより、高度な回転性能を維持しつつ、発塵及びアウトガスを抑制することができるとともに、耐久性にも優れる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において参照する各図においては、他の図と同等の部分が同一符号によって示されている。
(第1実施形態)
図1は、フッ素系潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑剤(フッ素系潤滑剤)を用いてオイルプレーティング処理を施した転がり軸受(転動装置)10の、転動体としての玉13の一部分を破断して示した断面図である。転がり軸受10は、外輪(外方部材)12と、内輪(内方部材)11と、玉13と、プレス加工により製造した波形の保持器14と、を備えている。
より具体的には、外輪12、内輪11、玉13、及び、保持器14は、一般的に軸受用として使用されている金属材料で形成される他、例えば耐食性を有する金属材料により形成される。この種の金属材料としては、JIS規格SUJ2などの軸受鋼、JIS規格SUS440Cなどのマルテンサイト系ステンレス鋼、JIS規格SUS630などの析出硬化型ステンレス鋼、及び、これらの金属材料に浸炭処理、窒化処理や、ダイヤモンドライクカーボンの皮膜処理などの適当な硬化熱処理を施したものなどが挙げられる。また、軽荷重用途であれば、例えばJIS規格SUS304やSUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼や、チタン合金に表面硬化処理を施したものを用いることができる。なお、玉13には、上記金属材料のほかに窒化けい素、アルミナ、ジルコニア等のセラミックを用いることができる。
上記に列挙した金属材料及びセラミックの中でも、耐食性を有する材料を用いることが好ましく、特に、外輪12及び内輪11にはマルテンサイト系ステンレス鋼を用い、玉13にはマルテンサイト系ステレンス鋼及びセラミックを用いることが望ましい。その理由は以下の通りである。通常、転がり軸受に耐食性を持たせるために、潤滑剤中に防錆剤を添加するという方法が取られる。ところが、この防錆剤は本発明の潤滑膜を構成するフッ素系潤滑剤の成分と比べ蒸発しやすいことから、防錆剤の添加は発塵やアウトガスを増加させる要因となってしまう。そこで、内輪11、外輪12等に耐食性の材料を用いれば、耐食性を実現するとともに、潤滑剤の使用量を低減できるので本発明が目的とする発塵及びアウトガスの抑制も達成することができる。
また、保持器14には、上記金属材料の他、黄銅、チタン材などが好適に用いられるが、合成樹脂材料を用いることもできる。この合成樹脂材料としては、例えばPTFE、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などのフッ素樹脂や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ナイロン46等のエンジニアリングプラスチックなどの使用も可能である。これらの合成樹脂材料には、ガラス繊維などの強化繊維が添加されていてもよい。保持器14の形式は、波形の他に、冠形、もみ抜き形とすることもできる。
そして、本実施の形態における転がり軸受10には、外輪12の玉13との接触面(軌道面)、内輪11の玉13との接触面(軌道面)、及び、玉13の転動面に、オイルプレーティング処理により、フッ素系潤滑剤からなる潤滑膜15が形成されている。図2は、外輪12の軌道面、内輪11の軌道面、あるいは、玉13の転動面に対する潤滑膜の形成状態を示す拡大模式図である。図2に示される転がり軸受10には、潤滑膜15を形成すべき面Dにおける粗さの山頂線(同図中では、一点鎖線Bにより示されている)を越える程度に(同図中では実線Eで示される位置まで)、潤滑膜15が形成されている。このように、面Dを粗さの山がそれぞれ露出しない程度に潤滑膜で覆うことにより、耐久性を向上させることができる。なお、潤滑膜15は、図2に示されるように軌道面等に連続的に形成されることが望ましいが、不連続的、例えば島状に形成されていてもよい。
また、本実施の形態における転がり軸受10の外輪12の軌道面、及び、内輪11の軌道面の中心線平均粗さRaはそれぞれ0.02μm以上0.2μm以下に、玉13の転動面の中心線平均粗さRaは0.002μm以上0.01μm以下に、設定されている。このような表面粗さに設定することにより、形成すべき潤滑膜15の量を抑えて、発塵抑制効果を向上させることができる。
潤滑膜15を形成するフッ素系潤滑剤は、フッ素樹脂としてPTFEパウダーと、フッ素系潤滑油と、を含有するものであり、いわゆるゲル状になっている。
フッ素系潤滑油としては、例えば、フルオロポリエーテル重合体又はポリフルオロアルキル重合体が用いられる。このフルオロポリエーテル重合体としては、-CX2X-O-という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要な繰り返し単位とする重合体で、数平均分子量が1000〜50000であるものが挙げられる。また、ポリフルオロアルキル重合体は、R1−(CF2n−R2という式(nは自然数)で表されるものであり、R1及びR2としては下記化学式1に示すものが挙げられる。なお、R1及びR2は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
Figure 0004476606
また、フッ素系潤滑油には、分子構造中に官能基を有しないものに加え、分子構造中に官能基を有するものを一定量添加させても良い。この官能基については、金属に対して親和性の高いもの、例えばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、スルフォン基又はエステル基などが好ましく、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油の例としては、下記化学式2,3に示すものが挙げられる。
Figure 0004476606
Figure 0004476606
上述のフッ素系潤滑油として、より詳しくは、パーフルオロポリエーテル(PFPE)あるいはその誘導体との混合物、例えばアウジモント株式会社の商品名フォンブリン(FONBLIN)Yスタンダード、フォンブリンエマルジョン(FE20,EM04など)又はフォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DEAL,FONBLIN Z DIAC,FONBLIN Z DISOC,FONBLIN Z DOL,FONBLIN Z DOLTX2000,FONBLIN Z TETRAOLなど)が好適に用いられる。
フッ素樹脂としては、PTFEのほか、四フッ化エチレンパーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)などを用いることができる。
上記フッ素系潤滑油と上記PTFEパウダーを混合したものを、フッ素系潤滑剤として用いる。しかし、上記例示したフッ素系潤滑油にPTFEパウダーを混合したままでは、いずれも濃度が高いので、後述するように適当な希釈溶媒で希釈したフッ素系潤滑剤希釈溶液を、オイルプレーティング処理に用いることが好ましい。
次に、オイルプレーティング処理の一例を説明する。
まず、外輪12、内輪11、玉13、及び、保持器14をそれぞれ組み立てて転がり軸受10を完成状態としてから、脱脂洗浄後この外輪12及び内輪11間で玉13の存在する箇所に、用意したフッ素系潤滑剤希釈溶液をスポイドなどにより必要量だけ注入する。その後、転がり軸受10を数回回転させることにより、フッ素系潤滑剤希釈溶液を外輪12、内輪11、玉13、及び、保持器14の転動部位、摺動部位に付着させる。このフッ素系潤滑剤希釈溶液の供給は、塗布により行ってもよいし、スプレーを用いた噴霧により行ってもよい。あるいは、フッ素系潤滑剤希釈溶液の貯留槽に組み立てた転がり軸受10を浸漬後に引き上げることにより、フッ素系潤滑剤希釈溶液の供給を行ってもよい。
ここで用意したフッ素系潤滑油は、例えば、フォンブリンZ 25(分子構造中に官能基を有しないフッ素系潤滑油)90質量%と、フォンブリンZ DOL(分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油)10質量%と、から構成されるものである。また、付着させたフッ素系潤滑剤希釈溶液は、このフッ素系潤滑油80質量%と粒径1μm以下のPTFEパウダー20質量%とを混在させてなるフッ素系潤滑剤を調整し、これを1質量%となるまで希釈溶媒アサヒクリンAK−225(旭硝子株式会社製)で希釈して得たものである。
この後、フッ素系潤滑剤希釈溶液を付着させた転がり軸受10の全体を120〜140℃で約30分間加熱し、付着したフッ素系潤滑剤希釈溶液中に含まれる希釈溶媒を除去する。
このようにして、フッ素系潤滑剤からなる潤滑膜を形成することができる。
ここで、上述した実施形態に関して、発塵量試験、アウトガス速度試験、及び、トルク耐久試験を行ったので説明する。
発塵量試験、アウトガス速度試験、及び、トルク耐久試験における比較例については、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油、具体的には末端にカルボキシル基を有する含フッ素重合体(FONBLIN Z DIAC)のみからフッ素系潤滑剤を構成し、使用した。希釈溶媒、オイルプレーティング処理方法や、転がり軸受の構成などの他の条件は、上述の実施形態と同様である。なお、実施例及び比較例ともにオイルプレーティング処理に用いるフッ素系潤滑剤希釈溶液の希釈濃度は1%とした。
また、試験軸受は日本精工株式会社製呼び番号608である。さらに、内輪及び外輪の軌道面の表面粗さRaは0.05μmに、玉の表面粗さRaは0.005μmに、それぞれ設定され、上述したようなオイルプレーティング処理によって、潤滑膜が形成されているものである。
まず、発塵量試験について説明する。図3(a)には、発塵量試験を行う際に用いた軸受回転試験機(日本精工株式会社製)が示されている。
試験軸受50の内輪50aを軸受回転試験機のスピンドル軸(SUS440C製)51に取り付ける。このとき、試験軸受50へのアキシアル荷重は、スプリング55により調整可能となっている。
そして、スピンドル軸51の一端には磁性流体シールユニット56が設けられ、スピンドル軸51にはモータ54の回転トルクがプーリ57,ベルト58,プーリ59,及び磁性流体シールユニット56を介して伝わるようになっている。一方、試験軸受50の外輪50bはハウジング52を介して微小荷重変換器60に接続されており、したがって、微小荷重変換器60を用いて試験軸受50のトルクを測定できるようになっている。
また、試験軸受50は容器61及び隔壁62に囲まれ、その空間の底部はレーザ光散乱式パーティクルカウンタ63に接続されている。一方、この囲まれた空間の上部には、フィルタ64を介して空気導入口65が設けられている。そして、空気導入口65から容器61及び隔壁62で囲まれた空間に清浄な空気を所定の流量で供給することにより、空気導入口65からパーティクルカウンタ63へ向けて気流が生じるため、試験軸受50から生じる摩耗粉の量をパーティクルカウンタ63で検出できるようになっている。
試験軸受50の回転速度が1000rpm、荷重が50Nという試験条件で発塵量試験を行った結果は、図3(b)に示すように、本実施形態のものの方が、比較例のものに比べて発塵量(個/m3)が1/10以下ときわめて低いレベルとなった。
次に、アウトガス速度試験(スループット法)について説明する。図4(a)には、本試験に用いられたアウトガス速度評価試験装置が示されている。
アウトガス速度評価試験装置においては、試験軸受90が収容される試料室92と、ターボ分子ポンプ96及びロータリーポンプ97が接続された分析室91とが、直径Rが2〜3mmの円形の断面を有するオリフィス93により連通している。そして、ターボ分子ポンプ96及びロータリーポンプ97によって分析室91内の気体を吸引すると、分析室91の気圧は試料室92内よりも低くなるので、試料室92内の気体がオリフィス93を通って分析室91内へ流れ込む。なお、同図中の分析室91には、四重極質量分析計98も設置されており、試料室92で発生し分析室91に流入した気体の種類を分析可能になっている。
この試料室92から分析室91へ気体が流れ込む状態において、試料室92及び分析室91にそれぞれ設置されたイオンゲージ94,95により気圧を測定して、試験軸受90からのアウトガスの発生速度(アウトガス速度)を測定する。アウトガス速度は下記の式(1)により求められる。
Qb=C(P2−P1)−Qc ・・・(1)
ここで、式(1)中の各値は、次の通りである。
Qb:試験軸受のアウトガス速度(Pa・m3/s)
Qc:チャンバーのアウトガス速度(Pa・m3/s)
C:オリフィスのコンダクタンス(定数)(m3/s)
1:分析室チャンバー圧力(Pa)
2:試料室チャンバー圧力(Pa)
なお、上記チャンバーのアウトガス速度Qcは、試料室92に試験軸受90を収容しない時に測定されるアウトガス速度であり、気圧の測定値に基づいて下記の式(2)により求められるものである。
Qc=C(P2’−P1’) ・・・式(2)
ここで、P1’,P2’は、それぞれ試験軸受90を収容しない時に測定される分析室チャンバー圧力及び試料室チャンバー圧力である。
また、アウトガス速度試験結果については、図4(b)に示すように、本実施形態の方が比較例と比べて約1/5と格段に低くなることが分かった。なお、図4に示すアウトガス速度は、比較例のアウトガス速度を1とした場合の相対値で示してある。
さらに、トルク耐久試験について説明する。トルク耐久試験においては、上記発塵量試験と同様に、図3(a)に示される軸受回転試験機(日本精工株式会社製)を使用した。回転速度を1000rpm、荷重を50Nとして試験軸受50を駆動させ、所定時間経過後における試験軸受50のトルクを微小荷重変換器60を用いて測定した。
このトルク耐久試験(大気中)の結果については、図5に示すように、比較例のものは試験開始から100時間を超えたあたりでトルク値が著しく高くなったが、本実施形態のものは500時間を超えても低いトルク値のまま、ほとんど変化なく継続できた。
なお、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
例えば、本実施形態では、深溝玉軸受に本発明を適用しているが、その他の軸受形式の転がり軸受にも本発明を適用できる。
また、転がり軸受の他に、図6及び図7に示すリニアガイド装置やリニアベアリングなどの直動型軸受や、図8に示すボールねじ装置などにも本発明を同様に適用できる。
図6は、リニアガイド装置(転動装置)20を、エンドキャップを省略して示した正面図である。リニアガイド装置20(日本精工株式会社製呼び番号:LS20AL)は、両側面に軸方向に断面円弧状の転動体転動溝21aを有する角形の案内レール(内方部材)21と、案内レール21に軸方向に相対移動可能に跨架される横断面形状がほぼコ字状のスライダ(外方部材)22とを備えている。
スライダ22の内側両側面には、案内レール21の転動体転動溝21aに対向する断面円弧状の転動体転動溝22aが備えられており、案内レール21の転動体転動溝21aとスライダ22の転動体転動溝22aとから形成される断面ほぼ円形で直線状のボール転動空間には、転動体としての複数の玉23(一部のみ図示した)が転動自在に装填されている。
このようなリニアガイド装置20の案内レール21の転動体転動溝21aと玉23との接触面、及び、スライダ22の転動体転動溝22aと玉23との接触面は、上記実施形態の転がり軸受10の内・外輪の軌道面に相当し、リニアガイド装置20における玉23が、上記実施形態の転がり軸受10における玉13に相当する。したがって、これらの転動体転動溝21a,22a、及び、玉23は、表面粗さが上記実施形態と同様にそれぞれ設定されており、また上述の方法に従って同様の潤滑膜(図示せず)がそれぞれ形成されている。そのため、リニアガイド装置20は、発塵及びアウトガスが少なく、耐久性に優れている。
また、図7に示すリニアベアリング30は、軸(内方部材)31と、軸31の外方に配置された外筒(外方部材)32と、軸31の外周面31aと外筒32の内径面32aとの間において転動自在に装填された複数の玉33と、を備え、玉33の転動に従って、軸31又は外筒32がその軸線方向に相対移動する構成となっている。なお、留め金34は、玉33の転動に伴う一定距離以上の移動を阻止するためのものである。
このようなリニアベアリング30の軸31の外周面31a、及び、外筒32の内径面32aは、上記実施形態の転がり軸受10の内・外輪の軌道面に相当し、リニアベアリング30における玉33が、上記実施形態の転がり軸受10における玉13に相当する。したがって、これらの外周面31a、内径面32a、及び、玉33は、表面粗さが上記実施形態と同様にそれぞれ設定されており、また上述の方法に従って同様の潤滑膜(図示せず)がそれぞれ形成されている。そのため、リニアベアリング30は、発塵及びアウトガスが少なく、耐久性に優れている。
また、図8に示すボールねじ装置40は、外周面に螺旋状の軌道溝を有するねじ軸(内方部材)41と、内周面に螺旋状の軌道溝を有するナット(外方部材)42と、それらの両軌道溝間に転動自在に介装される複数の玉(転動体)43とを含み、ねじ軸41又はナット42のいずれか一方の回転動作によりねじ軸41の軸線方向に一方が直線的に相対移動する構成である。なお、玉43は、ねじ軸41の軌道溝41aとナット42の軌道溝42bとの間を転動した後、ナット42に付設されるサーキュレータチューブ44を通って循環する形態になっている。
このようなボールねじ装置40におけるねじ軸41の軌道溝及びナット42の軌道溝の表面が、上記実施形態の転がり軸受10における内・外輪11,12の軌道面に相当し、また、ボールねじ装置40における玉43が、上記実施形態の転がり軸受10における玉13に相当する。したがって、これらのねじ軸41の軌道溝、ナット42の軌道溝、及び、玉43は、表面粗さが上記実施形態と同様にそれぞれ設定されており、また上述の方法に従って同様の潤滑膜(図示せず)をそれぞれ形成されている。そのため、ボールねじ装置40は、発塵及びアウトガスが少なく、耐久性に優れている。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の第1実施形態と異なる点は、本発明における潤滑膜を構成する潤滑油として、第1実施形態のフッ素系潤滑油ではなく、炭化水素系の潤滑油を用いている点である。以下、この炭化水素系の潤滑油及び該潤滑油を含有する潤滑剤のオイルプレーティング処理を中心に説明する。
図9は、炭化水素系潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑剤を用いてオイルプレーティング処理を施した転がり軸受(転動装置)70の、転動体としての玉73の一部分を破断して示した断面図である。
第2実施形態の転がり軸受70は、図1に示した転がり軸受10とほぼ同様の構成を有するものであり、潤滑膜75の構成材料、及び、潤滑膜75の付着状態においてのみ異なっている。なお、符号71は内輪、72は外輪、73は玉、74は保持器である。
図10は外輪72の軌道面、内輪71の軌道面、あるいは、玉73の転動面に対する潤滑膜75の形成状態を示す拡大模式図であり、同図(a)には外輪72(内輪71)の軌道面、同図(b)には玉73の転動面が示されている。
同図に示されるように、本実施形態では、潤滑膜75を形成すべき面における粗さの山頂線と同等程度の位置まで、潤滑膜75が形成されている。耐久性を向上させるためには第1実施形態のように粗さの山頂線を越える程度に軌道面等を潤滑膜で覆うことが望ましいが、本実施形態のように潤滑膜を上記山頂線と同等程度の位置まで形成させてもよい。この場合には潤滑膜の量が少ないので発塵及びアウトガスがより少ない。なお、同図では、潤滑膜75は軌道面等に連続的に形成されているが、不連続的、例えば島状に形成されていてもよい。
また、本実施形態における転がり軸受70の外輪72の軌道面、及び、内輪71の軌道面の中心線平均粗さRaはそれぞれ0.02μm以上0.2μm以下であり、より好ましくは0.02μm以上0.08μm以下である。玉13の転動面の中心線平均粗さRaは0.002μm以上0.01μm以下であり、より好ましくは0.002μm以上0.005μm以下である。
この潤滑膜75を形成する潤滑剤は、フッ素樹脂パウダーと、アルキル化シクロぺンタン又はポリフェニルエーテルを主成分として含有する潤滑油と、を含有するものであり、いわゆるゲル状になっている。
このようなアルキル化シクロペンタンとしては、トリ(2−オクチルドデシル)シクロペンタンがあげられる。なお、トリ(2−オクチルドデシル)シクロペンタンとしては、例えば、Nye Lubicants社製のSynthetic Oil 2001A(商品名)が市販されている。また、トリ−n−オクチルシクロペンタン、テトラ−n−オクチルシクロペンタン、ペンタ−n−オクチルシクロペンタン、トリ−n−ノニルシクロペンタン、ペンタ−n−ノニルシクロペンタン、ペンタ−n−デシルシクロペンタン、ペンタ−n−ドデシルシクロペンタン、テトラ−2−エチルヘキシルシクロペンタン等のようなアルキル化シクロペンタンは、蒸気圧が20℃で1×10-5Pa以下(例えば、1×10-7〜1×10-8Pa)と低いので、潤滑油として用いることができる。このようなアルキル化シクロペンタンを用いれば、本発明の転動装置は真空中において使用しても潤滑剤が蒸発することがほとんどない。
ポリフェニルエーテルとしては、例えば、株式会社松村石油研究所のフェニルエーテル型合成油を用いることができ、このうちペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテルが好適に使用できる。これらのポリフェニルエーテルは蒸気圧が低く、耐熱性にも優れるため真空中や高温環境下においてもアウトガスが少ない。
次に、本実施形態の潤滑剤のオイルプレーティング処理の一例を説明する。
まず、外輪72、内輪71、玉73、及び、保持器74をそれぞれ組み立てて転がり軸受70を完成状態としてから、脱脂洗浄後この外輪72及び内輪71間で玉73の存在する箇所に、用意した潤滑剤の希釈溶液をスポイドなどにより必要量だけ注入する。その後、転がり軸受70を数回回転させることにより、希釈溶液を外輪72、内輪71、玉73、及び、保持器74の転動部位、摺動部位に付着させる。この希釈剤の供給は、塗布により行ってもよいし、スプレーを用いた噴霧により行ってもよい。あるいは、希釈溶液の貯留槽に組み立てた転がり軸受70を浸漬後に引き上げることにより、希釈溶液の供給を行ってもよい。
ここで用意した潤滑剤は、例えばNye Lubicants社製のSynthetic Oil 2001A(商品名)60質量%と、粒径1μm以下のPTFEパウダー40質量%と、からなるものである。この潤滑剤の希釈溶液は、へキサンやアサヒクリンAK−225(旭硝子株式会社製)等の希釈溶媒で潤滑剤を1質量%になるまで希釈して得たものである。フッ素樹脂としては、溶媒中にPTFEが分散したデュポン株式会社製ドライフィルムRA/IPAを使用した。
この後、希釈溶液を付着させた転がり軸受70の全体を100〜140℃で約30分間加熱し、付着した希釈溶液中に含まれる希釈溶媒を除去する。
このようにして、本実施形態の潤滑剤からなる潤滑膜を形成することができる。
ここで、上述した第2実施形態に関して、発塵量試験、及び、トルク耐久試験を行ったので説明する。
発塵量試験、及び、トルク耐久試験における比較例については、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油、具体的には末端にカルボキシル基を有する含フッ素重合体(FONBLIN Z DIAC)のみから潤滑剤を構成し、使用した。希釈溶媒の種類、オイルプレーティング処理方法や、転がり軸受の構成などの他の条件は、上述の第2実施形態と同様である。なお、実施例及び比較例ともにオイルプレーティング処理に用いる希釈溶液の希釈濃度は1%とした。
また、試験軸受は日本精工株式会社製呼び番号608(内径8mm、外径22mm、幅7mm)である。さらに、内輪及び外輪の軌道面の表面粗さRaは0.05μmに、玉の表面粗さRaは0.005μmに、それぞれ設定され、これら各面には上述したようなオイルプレーティング処理によって、潤滑膜が形成されている。
上記試験軸受についての発塵量試験は、上記第1実施形態における発塵量試験に用いた軸受回転試験機(図3(a)参照)と同じ試験機を用い、第1実施形態における発塵量試験と同様の方法で行った。また、試験条件も同様であり、試験軸受50の回転速度が1000rpm、荷重が50Nである。試験結果を図11のグラフに示す。同図に示されるように、本実施形態のものの方が、比較例のものに比べて発塵量(個/m3)が1/10以下ときわめて低いレベルとなった。
次に、上記試験軸受について行ったトルク耐久試験について説明する。このトルク耐久試験においても、上記発塵量試験と同様に図3(a)に示す軸受回転試験機を使用し、回転速度を1000rpm、荷重を50Nとして試験軸受50を駆動させ、所定時間経過後における試験軸受50のトルクを微小荷重変換器60を用いて測定した。
試験結果を図12のグラフに示す。同図に示すように、比較例のものは試験開始から100時間を超えたあたりでトルク値が著しく高くなったが、本実施形態のものは500時間を超えても低いトルク値のまま、ほとんど変化なく継続できた。
なお、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。例えば、第1実施形態においても記述したように、深溝玉軸受以外の軸受形式の転がり軸受への適用や、転がり軸受の他に、図6及び図7に示すリニアガイド装置やリニアベアリングなどの直動型軸受や、図8に示すボールねじ装置などにも本発明を同様に適用できる。
潤滑膜を形成した第1実施形態の転がり軸受の断面図である。 第1実施形態の潤滑膜の形成状態を示す拡大模式図である。 (a)は軸受回転試験機を説明する図であり、(b)は発塵量試験の結果を示すグラフである。 (a)はアウトガス速度試験装置を示す図であり、(b)はアウトガス速度試験の結果を示すグラフである。 トルク耐久試験の結果を示すグラフである。 本発明を適用したリニアガイド装置を説明する図である。 本発明を適用したリニアベアリングを説明する図である。 本発明を適用したボールねじ装置を説明する図である。 潤滑膜を形成した第2実施形態の転がり軸受の断面図である。 第2実施形態の潤滑膜の形成状態を示す拡大模式図である。 発塵量試験の結果を示すグラフである。 トルク耐久試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
10,70 転がり軸受
11,71 内輪
12,72 外輪
13,73 玉
14,74 保持器
15,75 潤滑膜
20 リニアガイド装置
21 案内レール
21a,22a 転動体転動溝
22 スライダ
23 玉
30 リニアベアリング
31 軸
31a 外周面
32 外筒
32a 内径面
33 玉
34 留め金
40 ボールねじ装置
41 軸
41a 軌道溝
42 ナット
42b 軌道溝
43 玉
44 サーキュレータチューブ
50,90 試験軸受
50a 内輪
50b 外輪
51 スピンドル軸
52 ハウジング
54 モータ
55 スプリング
56 磁性流体シールユニット
57,59 プーリ
58 ベルト
60 微小荷重変換器
61 容器
62 隔壁
63 レーザ光散乱式パーティクルカウンタ
64 フィルタ
65 空気導入口
91 分析室
92 試料室
93 オリフィス
94,95 イオンゲージ
96 ターボ分子ポンプ
97 ロータリーポンプ
98 四重極質量分析計

Claims (5)

  1. 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面の間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備え、真空環境下あるいは清浄雰囲気中で使用される転動装置において、
    前記外方部材の軌道面と前記内方部材の軌道面と前記転動体の転動面と、のうちの少なくとも1つに、オイルプレーティング処理により、20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下のフッ素系潤滑油と粒径1μm以下のパウダー状フッ素樹脂とを含有し、前記フッ素樹脂の含有量が5質量%以上40質量%以下である潤滑剤からなる潤滑膜を形成したことを特徴とする転動装置。
  2. 前記フッ素系潤滑油を、分子構造中に官能基を有しないフッ素系潤滑油50質量%以上98質量%以下と、分子構造中に官能基を有するフッ素系潤滑油50質量%以下2質量%以上と、で構成したことを特徴とする請求項1に記載の転動装置。
  3. 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面の間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備え、真空環境下あるいは清浄雰囲気中で使用される転動装置において、
    前記外方部材の軌道面と前記内方部材の軌道面と前記転動体の転動面と、のうちの少なくとも1つに、オイルプレーティング処理により、20℃における蒸気圧が1×10 -5 Pa以下のアルキル化シクロペンタンを主成分として含有する潤滑油と粒径1μm以下のパウダー状フッ素樹脂とを含有し、前記フッ素樹脂の含有量が5質量%以上60質量%以下である潤滑剤からなる潤滑膜を形成したことを特徴とする転動装置。
  4. 前記潤滑膜は、前記潤滑剤0.5質量%以上10質量%以下と希釈溶媒99.5質量%以下90質量%以上とからなる潤滑剤希釈溶液を、該潤滑膜を形成すべき面に付着させて、50℃以上250℃以下で、15分間以上300分間以下加熱し、前記希釈溶媒を除去することにより形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の転動装置。
  5. 前記外方部材の軌道面及び前記内方部材の軌道面の中心線平均粗さRaをそれぞれ0.02μm以上0.2μm以下とし、
    前記転動体の転動面の中心線平均粗さRaを0.002μm以上0.01μm以下としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに1項に記載の転動装置。
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