本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るモータの使用状態を説明する説明図である。図2は、積載台及びワークの一例を示す模式図である。モータ1は、回転中心Zrを中心に積載台52を回転する。例えば、図2に示すように、積載台52は、円盤状のプレート部52aと、ウエハ搬送用などのためのアーム部52bとを含む。そして、アーム部52bは、ワーク53を搭載する。積載台52のプレート部52aの回転により、半導体製造装置における真空雰囲気Vaのチャンバ51内に配置されるアーム部52bがワーク53を搭載した状態で位置決めされる。モータ1は、ギヤ、ベルトまたはローラ等の伝達機構を介在させることなく負荷体50であるワーク53及び積載台52に回転力をダイレクトに伝達し、ワーク53を回転させることができる。モータ1は、いわゆるモータ回転軸と負荷体50とを直結したダイレクトドライブモータである。なお、モータ1は、いわゆるモータ回転軸と負荷体50としてワーク53とを直結したダイレクトドライブモータとしてもよい。また、実施形態1に係るモータ1は、後述するように、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータがモータロータよりも回転中心Zr寄りとなる配置としている。これにより、モータ1は、高精度のワーク53の位置決めをすることができる。
一般に、半導体製造装置は、半導体の集積度が高まり、それに伴って同時にICのパターン幅の微細化による高密度化が進められている。この微細化に対応できるウエハを製造するために、ウエハ品質に対する高度の均一性が要求されている。その要求に応えるためには、真空雰囲気Vaにおける不純物ガス濃度の一層の低減が重要である。このため、チャンバ51の取り付け孔に配置されるモータ1においては、真空雰囲気Vaの空間とハウジング外部の大気雰囲気Atとを離隔することも必要となる。なお、本実施形態では、チャンバ51内を真空雰囲気Vaとしているが、真空雰囲気Vaを真空でなく、例えば、窒素ガス、希ガスなど大気雰囲気Atと異なる雰囲気としてもよい。
図1に示すように、外部のコンピュータからモータ回転指令iが入力されたとき、モータ制御回路90は、CPU(Central Processing Unit)91から3相アンプ(AMP:Amplifier)92に駆動信号を出力し、AMP92からモータ1に駆動電流Miが供給される。モータ1は、駆動電流Miにより積載台52が回転し、ワーク53を移動させるようになっている。積載台52が回転すると、後述する回転角度を検出したレゾルバ等の角度検出器から検出信号(レゾルバ信号)Srが出力される。モータ制御回路90は、検出信号Srをレゾルバデジタル変換器(RDC:Resolver to Digital Converter)93でデジタル変換する。RDC93からの検出信号Srのデジタル情報に基づいて、CPU91はワーク53が指令位置に到達したか否かを判断し、指令位置に到達する場合、AMP92への駆動信号を停止する。
図3は、回転中心を含む仮想平面で実施形態1のモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。モータ1は、静止状態に維持される固定子(以下、モータステータという)30と、モータステータ30に対して回転可能に配置された回転子(以下、モータロータという)40と、モータステータ30を固定してチャンバ51の支持部材に取り付けられるハウジング20と、モータロータ40に固定されてモータロータ40とともに回転可能なモータ回転体10と、ハウジング20とモータ回転体10との間に介在されてモータ回転体10をハウジング20に対して回転可能に支持する真空側の軸受装置14と、を含む。
ハウジング20、モータ回転体10、モータロータ40及びモータステータ30はいずれも環状の構造体である。モータ回転体10、モータロータ40及びモータステータ30は、回転中心Zrを中心に同心状に配置されている。また、モータ1は、回転中心Zrから外側へモータステータ30、モータロータ40の順に配置されている。このようなモータ1は、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータ30がモータロータ40よりも回転中心Zr寄りとなる。また、モータ1は、モータ回転体10、モータロータ40及びモータステータ30がハウジング20の上に配置されている。
ハウジング20は、略円板状のハウジングベース21と、ハウジングアウタ22と、ハウジングインナ25とを備えている。ハウジング20は、チャンバ51の内側の内側面51a上に配置され、ボルト等の固定部材20aを介して固定される。ハウジング20のハウジングベース21の底面21aは、チャンバ51の大気側である大気雰囲気Atに露出する。ハウジングベース21の底面21aは、Oリング等の密封部材20pを介してチャンバ51の内側の内側面51a上に固定されている。
ハウジングベース21は、回転中心Zr近傍に突出するシャフト部21Aを備えている。シャフト部21Aは、後述する気密封止部材60を固定している。
ハウジングインナ25は、回転中心Zrを囲むようにハウジングベース21から凸状に突出した同心円となる突出部である。ハウジングアウタ22は、ハウジングインナ25を囲むようにハウジングベース21から凸状に突出した同心円となる突出部である。このため、ハウジングベース21の上面21bは、ハウジングインナ25とハウジングアウタ22に囲まれた円環状の溝を含む。
また、ハウジングアウタ22は、ボルト等の固定部材24を介してハウジングアウタ22の回転中心Zr側側面の嵌合部22aに軸受装置14の外輪を固定するハウジングフランジ23と、を含む。
ハウジングインナ25の回転中心Zr側と反対側の側面には、モータステータ30がボルト等の固定部材によって締結されている。これにより、モータステータ30はハウジングベース21に対して位置決め固定されている。モータステータ30の中心軸は、モータロータ40の回転中心Zrと一致する。
モータステータ30は、ステータコア31と、励磁コイル32とを含む。モータステータ30は、ステータコア31に励磁コイル32が巻きつけられる。モータステータ30には、電源からの電力を供給するための配線32aが接続されており、この配線32aを通じて励磁コイル32に対して上述したモータ制御回路90から電力が供給されるようになっている。
モータロータ40は、モータロータ40の内径がモータステータ30の外径寸法よりも大きい円筒状である。モータロータ40は、ロータヨーク41及びロータヨーク41の内周に貼り付けられたマグネット42を含む。なお、マグネット42については、後述する。
モータ回転体10は、円板状であり、外縁にロータヨーク41が一体となっている。ロータヨーク41は、モータ回転体10と逆側の端部に固定部材47を介して、ロータヨーク41の外周側面の嵌合部15に軸受装置14の内輪を固定するロータフランジ13とを含む。モータロータ40は、一方の端部の円板状のモータ回転体10が蓋となり、他方の端部が開放されている円筒形状である。モータロータ40は、円筒状のモータ回転体10にボルト等の固定部材により固定されてもよい。モータ回転体10は、中心軸がモータ1の回転中心Zrと同軸に形成されている。
ロータヨーク41には、内周側と外周側とを連通する連通孔11が設けられている。連通孔11は、モータロータ40の配置された空間48、49を繋いでいる。連通孔11は、後述する液状媒体46の液面よりも高い位置に設けられていることが好ましい。この構造により、空間48の気体が気抜きされる。その結果、連通孔11は、チャンバ51内の圧力を変化させた場合、液状媒体46の液面の変動または液状媒体46の漏れを抑制することができる。
また、軸受装置14は、内輪がロータフランジ13に固定され、外輪がハウジングフランジ23に固定されている。これにより、軸受装置14は、ハウジングベース21に対して、モータ回転体10及びモータロータ40を回転自在に支持することができる。このため、モータ1は、モータ回転体10及びモータロータ40をハウジングベース21及びモータステータ30に対して回転させることができる。
なお、真空側の軸受装置14は、複数のアンギュラ軸受14A、14Bを薄肉大径の背面組み合わせとして配置することが好ましい。軸受装置14の外輪は、ハウジングアウタ22に嵌め合い、外輪の端面がハウジングフランジ23に押圧されている。ハウジングフランジ23の回転中心Zr側は、ロータヨーク41側に突出する突出部23aを有していることが好ましい。突出部23aは、ハウジングフランジ23とロータヨーク41の隙間を狭め、異物の混入または、後述する液状媒体46の漏れを防ぐことができるラビリンスシールとなる。
軸受装置14の内輪及び外輪は、マルテンサイト系ステンレス鋼等で形成されている。この構造により、軸受装置14の内輪及び外輪は、焼き入れによる硬化を施すことができるため、耐錆性及び耐久性を向上することができる。軸受装置14の転動体は、セラミックボール等で形成されている。軸受装置14の転動体は、軸受装置14の内輪及び外輪の材料と異なる材料であるので、耐久性を向上させることができる。軸受装置14の転動体と転動体との間には、マルテンサイト系ステンレス鋼等のスペーサボールを配置することがより好ましい。この構造により、セラミックボールの転動体同士が接触することを防ぐことができる。
大気側の軸受装置74は、内側ロータ82をシャフト部21Aに対して回転自在に支持している。また、大気側の軸受装置74は、複数の深溝玉軸受74A、74Bを上述したシャフト部21Aに嵌め合い固定することが好ましい。深溝玉軸受74A、74Bは、予圧ばね75により定圧予圧している。
予圧ばね75は、モータステータ30の配置された空間39の温度変化に伴う予圧荷重の過大な変化を抑制することができる。このため、予圧ばね75は、磁気カップリング効果のねじりばね定数と、大気側の軸受装置74の起動トルクのヒステリシスとにより生じるロストモーションの増大、または予圧抜けによる角度検出器70の無用な振動を抑制することができる。なお、ロストモーションとは、ある位置への正の向きでの位置決めと負の向きでの位置決めによる両停止位置の差をいう。
モータ1は、カップリング磁石84と、カップリング磁石84を支持するカップリングヨーク81とを含む。真空側のモータロータ40のマグネット42は、後述する気密封止部材60を介してカップリング磁石84に対向して配置され、複数のカップリング磁石84と、カップリング磁石84及びカップリングヨーク81を保持するホルダとなる内側ロータ82とを含む。カップリングヨーク81は、内側ロータ82とボルト等の固定部材83で固定されている。
この構成により、モータロータ40のマグネット42とカップリング磁石84との間に発生する磁気力が作用し、内側ロータ82がモータロータ40の回転に連動して回転する。例えば、モータロータ40のマグネット42と、カップリング磁石84との間に磁気的吸引または磁気的反発が生じることで、いわゆる磁気カップリング効果が生じて、モータロータ40が内側ロータ82を連れ回る。
磁気カップリング効果のねじりばね定数は、磁石の残留磁束密度が温度の影響を受け、ねじりばね定数が若干変化するものの、ほぼ一定であり、内側ロータ82の回転モーメントも一定である。よって、磁気カップリング効果のねじりばね定数と内側ロータ82の回転モーメントとから定まる共振周波数も一定であり、この共振周波数はモータロータ40の積載する負荷体50の回転モーメントとは無関係である。本実施形態のモータ1では、共振周波数近傍を上述したモータ制御回路90の制御帯域からノッチフィルタまたはローパスフィルタで減衰させることで、内側ロータ82の振動を抑制している。
カップリング磁石84は、単一の磁石の面に多極着磁がなされており、モータロータ40に対向する位置で互いに異なる極性を対向させていることが好ましい。
また、モータ1は、角度検出器70を備えることが好ましい。角度検出器70は、例えばレゾルバであって、モータロータ40及びモータ回転体10の回転位置を高精度に検出することができる。
角度検出器70は、静止状態に維持されるレゾルバステータ71A、71Bと、レゾルバステータ71A、71Bと所定のギャップを隔てて対向配置され、レゾルバステータ71A、71Bに対して回転可能なレゾルバロータ72A、72Bを備えている。レゾルバステータ71A、71Bは、ハウジングインナ25に配設されている。また、レゾルバロータ72A、72Bは、内側ロータ82に配設されている。
そして、モータステータ30の励磁コイル32が励磁され、モータロータ40が回転駆動すると、内側ロータ82が同時に回転駆動する。この構成により、モータロータ40の回転角度を気密封止部材60越しに角度検出器70で検出することができる。
レゾルバステータ71A、71Bは、複数のステータ磁極が円周方向に等間隔に形成された環状の積層鉄心を有し、各ステータ磁極にレゾルバコイルが巻回されている。各レゾルバコイルには、検出信号(レゾルバ信号)Srが出力される配線73が接続されている。
レゾルバロータ72A、72Bは、中空環状の積層鉄心により構成されており、モータ回転体10の内側に固定されている。角度検出器70の配設位置は、モータロータ40(モータ回転体10)の回転を検出することが可能であれば特に限定されず、モータ回転体10及びハウジング20の形状に応じて任意の位置へ配設することができる。
モータロータ40が回転すると、モータロータ40とともにモータ回転体10が回転し、連動してレゾルバロータ72A、72Bも回転する。これにより、レゾルバロータ72A、72Bと、レゾルバステータ71A、71Bとの間のリラクタンスが連続的に変化する。レゾルバステータ71A、71Bは、リラクタンスの変化を検出し、RDC93によって上述した検出信号Srをデジタル信号に変換する。モータ1を制御するモータ制御回路90のCPU91は、RDC93の電気信号に基づいて、単位時間当たりのレゾルバロータ72A、72Bと連動するモータ回転体10及びモータロータ40の位置や回転角度を演算処理することができる。その結果、モータ1を制御するモータ制御回路90は、モータ回転体10の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測することが可能となる。
上述したレゾルバロータ72Aは、偏心させた外周を有する円環状となっている。このため、モータロータ40の回転に伴ってレゾルバロータ72Aが回転すると、レゾルバステータ71Aとの間の距離を円周方向に連続して変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ72Aの位置により連続的に変化する。レゾルバロータ72Aの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が1周期となる単極レゾルバ信号を出力しており、レゾルバロータ72Aと、レゾルバステータ71Aと、はいわゆる単極レゾルバとなる。
また、レゾルバロータ72Bは、突極状の複数の歯が円周方向に等間隔で形成される。このため、モータロータ40の回転に伴ってレゾルバロータ72Bが回転すると、レゾルバステータ71Bとの間の距離を円周方向に周期的に変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ72Bの歯の位置により連続的に変化する。レゾルバロータ72Bの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が多周期となる多極レゾルバ信号を出力しており、レゾルバロータ72Bとレゾルバステータ71Bとは、いわゆる多極レゾルバとなる。
このように、モータ1は、モータロータ40の1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分の周期が異なる角度検出器を備えることにより、モータ回転体10の絶対位置を把握することができ、また、モータ回転体10の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測する精度を高めることができる。また、モータ1は、一相通電による極検知動作、または原点復帰動作を行う必要がなく、位置決めを行うことができる。
モータ1は、ハウジングベース21が支持部材であるチャンバ51に取り付けられることで、チャンバ51に対して位置決め固定される。ハウジングベース21は、チャンバ51に取り付けられた状態において、底面21aと接する一連の連続面を少なくとも1つ有している。この連続面は、モータ1の自重や回転時の振動などをチャンバ51に分散して作用させることができる。このため、ハウジングベース21に歪み(撓み)が生ずるおそれを防止することができる。
モータ1は、例えばボルト等の固定部材により負荷体50がモータ回転体10に直接固定されている。上述した特許文献1に記載のモータは、負荷体50であるワーク53の温度が高い場合、ワーク53の熱が積載台52、モータ回転体10を介してモータロータ40に伝達されるおそれがある。上述した特許文献1に記載のモータにおいて、伝達された熱がモータロータ40に蓄積されると、モータロータ40に配置された永久磁石であるマグネット42が減磁するおそれがある。マグネット42が減磁する場合、モータ1は、モータトルクを十分発揮することができないおそれがある。
また、上述した特許文献1に記載のモータは、モータロータ40に伝達された熱により軸受装置14の潤滑剤が劣化または蒸発するおそれがある。潤滑剤が劣化または蒸発する場合、軸受装置14の摩擦が過大となり出力トルクが低下するおそれがある。また、スパイク状のトルク変動が生じ、負荷体50に搭載されたワーク53を損傷してしまうおそれがある。このように、上述した特許文献1に記載のモータは、モータ回転体10の振動を生じさせるおそれがあり、モータ回転体10の振動は、負荷体50に伝達される。
本実施形態のモータ1は、モータロータ40は、真空側の真空雰囲気Vaに配置されており、伝熱による冷却効果が小さい傾向にある。例えば、真空中では大気中と比較して、気体の対流による冷却効果が得られない。その結果、モータロータ40には、熱が蓄積されやすい傾向がある。また、真空中に配置する部品は、付着物のガス放出を低減するために、部品表面を清浄な金属色に磨くことが多く、輻射による放熱の冷却効果も小さい傾向にある。
しかしながら、上述した特許文献1に記載のモータと比較して、本実施形態に係るモータ1は、マグネット42の減磁を抑制し、使用する環境雰囲気中で不純物ガスの放出を低減することができる。実施形態1のモータ1は、モータステータ30と、ハウジング20と、モータロータ40と、軸受装置14と、気密封止部材60と、貯留部45と、を含む。モータロータ40に伝達される熱は、貯留部45の液状媒体46を介して逃がすことができる。このため、モータ1は、モータロータ40に熱が蓄積されるおそれを低減することができ、モータロータ40に配置されたマグネット42の減磁を抑制することができる。以下、図3、図4及び図5を用いて、貯留部45とモータロータ40について説明する。
図4は、実施形態1のモータの構成を回転中心に直交する仮想平面で切ってモータロータを模式的に示す部分断面図である。図4に示すように、モータロータ40は、ロータヨーク41と、マグネット42とを含む。ロータヨーク41は、筒状に形成される。ロータヨーク41は、強磁性体の低炭素鋼で形成され、表面にニッケルめっきを施すことが好ましい。ニッケルめっきを施すことで、ロータヨーク41は錆を防ぐことができ、アウトガスを低減することができる。
マグネット42は、ロータヨーク41の内周表面に沿って貼り付けられ、複数設けられている。マグネット42は、永久磁石であり、S極及びN極がロータヨーク41の円周方向に交互に等間隔で配置される。これにより、図4に示すモータロータ40の極数は、ロータヨーク41の外周側にN極と、S極とがロータヨーク41の円周方向に交互に配置された20極である。
図4に示すように、本実施形態のモータ1は、20極18スロットというスロットコンビネーション構成である。例えば、10極9スロットのスロットコンビネーション構成は、分数スロットであり、コギング力は小さいが径方向に磁気吸引力が生じやすいことが一般的に知られている。これに対して、本実施形態のモータ1は、10極9スロットのスロットコンビネーション構成の2倍の構成であり、径方向の磁気吸引力を相殺することで、固定子と回転子の真円度または、同軸度を高めることなく、回転時の振動を小さくできると共に、コギングを抑制し、非常に滑らかな回転を得ることができる。なお、モータロータ40の極数及びモータステータ30のスロット数は、20極18スロットの構成に限られず、必要に応じて適宜変更できる。
また、マグネット42の永久磁石は、例えばNd−Fe−B系磁石(ネオジム系磁石)を用いることができる。マグネット42は、表面にニッケルめっきを施すことが好ましい。ニッケルめっきを施すことで、マグネット42は、錆を防ぐと共に真空雰囲気Vaに配置されても、アウトガスを低減することができる。
モータ1は、モータロータ40に熱が蓄積されるおそれを低減することができ、モータロータ40に配置されたマグネット42の減磁を抑制することができる。このため、モータ1は、他の希土類磁石と比較して、エネルギー積は高いが高温における減磁しやすいネオジム系磁石をマグネット42に使用することができ、モータロータ40を小型にできる。その結果、モータ1は、コンパクトとなり、例えば、チャンバ51の支持部材に開ける取り付け孔を小さくすることができる。
図5は、マグネットの貼り付け状態を示す分解斜視図である。図6は、回転中心に直交する仮想平面で切ってマグネットの取り付け状態を模式的に示す部分断面図である。ロータヨーク41の内周には、マグネット42を位置決めする位置決めのための一対の磁石押さえ部材43が備えられている。一対の磁石押さえ部材43は、非磁性体であって、例えばオーステナイト系ステンレス鋼等で形成され、モータロータ40の温度変化により締めしろの変化する比率を低減することができる。また、一対の磁石押さえ部材43は、ロータヨーク41の内周に圧入または焼きばめ等により固定される。
一般的に、モータにおけるセグメント状のマグネットの固定には接着剤を用いられることが多い。しかしながら、本実施形態1のモータ1は、真空雰囲気Vaに配置されているので、接着剤から放出されるアウトガスを低減する必要がある。また、真空雰囲気Vaに曝される接着剤は劣化し、接着強度の劣化のおそれがある。本実施形態のモータ1は、接着剤を用いずに、磁石押さえ部材43を用いることでマグネット42を固定することができる。その結果、本実施形態のモータ1は、マグネット42の位置決めを確実にすると共に、使用する環境雰囲気中で不純物ガスの放出を低減することができる。
図5に示すように、磁石押さえ部材43は、ロータヨーク41の内周径に沿った円環部44Aと、円環部44Aに設けられた複数の凸部である位置決め部44Bとを含む。位置決め部44Bは、磁石の極数をnとするとn−1個が円周方向に複数設けられている。隣合う位置決め部44B間は、マグネット42を収容する凹部となる。そして、マグネット42は、マグネット42を収容する凹部に挟み込まれる。マグネット42は、一対の磁石押さえ部材43の間に収容され、ロータヨーク41の内周に取り付けられる。本実施形態では、マグネット42は、ロータヨーク41の内周表面の密着面に沿って貼り付けられ、複数設けられている分割形状(セグメント構造)のセグメント磁石である。
図6に示すように、マグネット42の円周方向の端面は、位置決め凸部44Bに対しての接線の交点Mrが回転中心Zrよりもマグネット42寄りとなるようにしている。このため、磁石押さえ部材43は、マグネット42が位置決め凸部44Bよりも回転中心Zr側に飛び出すおそれを低減している。マグネット42の半径方向の外周部(外周表面)における回転方向の円弧の曲率半径をロータヨーク41の内周径の曲率半径よりも微小に小さい形状とすることで、マグネット42の半径方向の外周部を2点でロータヨーク41の内周径に線接触させることがより好ましい。これにより、モータ1は、マグネット42がロータヨーク41に対してがたつくおそれを低減することができる。
モータステータ30は、回転中心Zr側にハウジングインナ25を包囲するように筒状に設けられる。図4に示すように、モータステータ30は、ステータコア(ステータ磁極)31が上述した回転中心Zrを中心とした円周方向にティース31aが等間隔で並んで、バックヨーク31bが一体に配置される。モータステータ30は、このような一体コアに限られず、複数の分割されたステータコア31が上述した回転中心Zrを中心とした円周方向に等間隔で並んで配置される分割コアであってもよい。そして、ステータコア31がハウジングインナ25を介してハウジングベース21に固定される。
また、ステータコア31は、略同形状に形成された複数のティース31aが回転中心Zr方向に積層されて束ねられることで形成される。ステータコア31は、電磁鋼板などの磁性材料で形成される。モータステータ30は、複数のステータコア31が組み合わされると、環状形状を形成する。
図4に示す励磁コイル32は、線状の電線である。励磁コイル32は、ステータコア31のティース31aにインシュレータを介して集中巻きされる。励磁コイル32は、U相正巻、U相逆巻、U相正巻、V相正巻、V相逆巻、V相正巻、W相正巻、W相逆巻、W相正巻の順を繰り返すことで結線される。この構成により、磁極数を低減でき、かつ分布巻きに比較してコイルエンドが短くなることからコイル量を低減できる。その結果、コストを低減でき、モータ1をコンパクトにすることができる。なお、インシュレータは、励磁コイル32とステータコア31とを絶縁するための部材であり、耐熱部材で形成される。
励磁コイル32は、ステータコア31のティース31aの複数の外周に分布巻きされていてもよい。この構成により、磁極数が増え、磁束の分布が安定することからトルクリップルを抑制することができる。励磁コイル32は、バックヨーク31bの外周にトロイダル巻きされていてもよい。この構成により、分布巻きと同等の磁束分布を発生することができる。その結果、トルクリップルを抑制することができる。
このように構成されたステータコア31が図3に示すように複数組み合わされることにより、モータステータ30は、ハウジングインナ25を包囲できる形状となる。つまり、ステータコア31は、ロータヨーク41の内側(回転中心Zrから遠い側)に磁気ギャップGとなる隙間を有して環状に配置される。
図3に示すように、気密封止部材60は、天板部61と、胴部62と、口元フランジ部63とを含む。気密封止部材60は、図3に示すように、胴部62がステータコア31とロータヨーク41との間の磁気ギャップGに配置され、モータロータ40の配置された空間にモータステータ30の配置された空間の気体が流通しないように密閉する隔壁となる。
気密封止部材60は、天板部61と、胴部62と、口元フランジ部63とをオーステナイト系ステンレス鋼等から削りだした一体成形品である。胴部62は、例えば0.5mm以上0.6mm以下の厚さで薄管状(厚みの薄い円筒状)に形成されている。この構造により、胴部62は、磁界変化に伴う渦電流損失を抑制することができる。
天板部61は、ハウジングベース21の回転中心Zr近傍で、ハウジングベース21のシャフト部21Aと嵌め合い連結されている。天板部61は、ハウジングベース21と図示しないボルト等の固定部材で固定されていてもよい。天板部61は、ハウジングベース21と連結されることで、真空雰囲気Vaと大気雰囲気Atの間の圧力差による変形を抑制することができる。
口元フランジ部63は、Oリング等の密封部材65を介してハウジングベース21の上面21bに、ボルト等の固定部材64で固定されている。この構造により、ハウジングインナ25とハウジングアウタ22に囲まれた円環状の溝は、気密封止部材60でモータロータ40の配置された空間48とモータステータ30の配置された空間39とに区画され、大気側の気体が真空側に流通しないようにすることができる。
ハウジングアウタ22と、ハウジングベース21と、気密封止部材60とで囲まれた円環状の溝には、液状媒体46が貯留される貯留部45が形成されている。この構成により、実施形態1に係るモータ1では、モータロータ40に伝達された熱により軸受装置14の潤滑剤が劣化または蒸発するおそれを低減できる。潤滑剤の劣化または蒸発が抑制されるので、軸受装置14の摩擦が過大となり出力トルクが低下するおそれが低減する。また、実施形態1に係るモータ1では、潤滑不良によるスパイク状のトルク変動が抑制され、負荷体50に搭載されたワーク53を損傷してしまうおそれを低減することができる。
液状媒体46は、フッ素系合成油であることが好ましい。フッ素系合成油は、例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE:perfluoropolyether)油である。一般的に、フッ素系合成油は、蒸気圧が低く真空中であっても、液状媒体46の揮発を抑制することができる。
なお、蒸気圧と油粘度の関係は反比例する。このため、蒸気圧の低い超高真空に耐える油の場合は、粘度が高く、モータロータ40が液状媒体46中を回転する場合に、回転中の出力トルクが低下する傾向がある。一方、蒸気圧の高い油の場合は、超高真空では蒸発する割合が高くなるが、回転中の出力トルクの低下は抑制される。このため、液状媒体46は、モータ1の用途によって粘度及び蒸気圧で適宜選択されることが好ましい。
貯留部45に貯留する液状媒体46は、少なくともマグネット42の一部を覆う程度に貯留していることが好ましい。液状媒体46は、マグネット42の一部に接することで、マグネット42の熱を奪うことができる。液状媒体46は、マグネット42の全部を覆う程度に貯留していることがより好ましい。液状媒体46は、マグネット42の一部に接することで、マグネット42の熱を奪うことができる。軸受装置14の少なくとも一部が液状媒体46に覆われることがより好ましい。これにより、液状媒体46は、軸受装置14の潤滑剤として作用することができる。
モータステータ30の配置された空間39内に大気雰囲気Atの気体を吐出させる吐出孔28、吐出孔66または排出させる排出孔29をハウジングベース21または気密防止部材60に設けることが好ましい。
図3に示すように、例えば、ポンプ59は、ポンプ59を接続した強制空冷吸気口26に清浄な圧縮空気である気体a1を供給する。気体a1は、シャフト部21Aの連通孔27を介して気体a2として、空間39内に大気雰囲気Atの気体を吐出させる吐出孔28に送出される。吐出孔28は、吐出孔66と連通しており、吐出孔66は、例えば、径方向外側に向かって吐出できるように上述した天板部61に複数開けられており、モータステータ30の配置された空間39内に気体a3を吐出する。
例えば、気体a3は、カップリングヨーク81に開けられた連通孔85を気体a4として通過し、モータステータ30を空冷しながら気体a5の位置に到達する。気体a5は、ハウジングベース21に開けられた排出孔29から気体a6として排出する。
気体a1、気体a2、気体a3、気体a4、気体a5及び気体a6のような気体の循環は、液状媒体46及び気密封止部材60を介して伝熱してくるマグネット42の熱を奪い、モータ1外へ排出することができる。ポンプ59は、モータステータ30の配置された空間39内に気体を循環させ強制的に冷却する。
ワーク53が高温である場合、モータロータ40に伝達される熱は、貯留部45の液状媒体46を加熱する。上記構成により、液状媒体46の熱が気密封止部材60の胴部62を介して、モータステータ30の配置された空間39内に伝達される。このため、モータステータ30の配置された空間39内の熱を気体の循環で奪うことにより、貯留部45の液状媒体46の温度の上昇を抑制することができる。また、モータロータ40に伝達される熱によるマグネット42の温度の上昇を抑制することができる。これにより、モータ1は、マグネット42の減磁を抑制することができる。
以上説明したように、実施形態1のモータ1は、モータステータ30と、ハウジング20と、モータロータ40と、軸受装置14と、気密封止部材60と、貯留部45と、を含む。モータステータ30は、励磁コイル32及びステータコア31を備える。ハウジング20のハウジングインナ25は、モータステータ30を固定する。モータロータ40は、ステータコア31に対して所定の磁気ギャップGを介して対向すると共に、円周方向に配列される複数のマグネット42を備える。軸受装置14は、ハウジング20のハウジングアウタ22に回転自在にモータロータ40を支持する。気密封止部材60は、モータロータ40の配置された空間48、49に、モータステータ30の配置された空間39の気体が流通しないように密閉する。また、気密封止部材60の胴部62は、ギャップに配置される。貯留部45は、少なくともマグネット42の一部を覆う液状媒体46をハウジング20と気密封止部材60との間に貯留する。
そして、モータロータ40に伝達される熱は、貯留部45の液状媒体46を介して逃がすことができる。このため、モータロータ40に熱が蓄積されるおそれを低減することができ、モータロータ40に配置されたマグネット42の減磁を抑制することができる。また、気密封止部材60がモータロータ40の配置された空間48、49にモータステータ30の配置された空間39の気体が流通しないように密閉するので、モータステータ30に起因する不純物ガスの放出が使用する環境雰囲気、真空雰囲気Va中に放出されるおそれを低減できる。
本実施形態1の軸受装置14の少なくとも一部が液状媒体46に覆われる。このため、液状媒体46は、軸受装置14の潤滑剤として作用する。その結果、モータ1は、潤沢な軸受装置14の潤滑剤があるので、モータ回転が滑らかとなり、軸受装置14の寿命を延ばすことができる。
(実施形態2)
図7は、回転中心を含む仮想平面で実施形態2のモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態2のモータ1は、実施形態1のモータ1と同様に、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータ30がモータロータ40よりも回転中心Zr寄りとなる配置としている。実施形態2のモータ1は、実施形態1のモータ1と比較して、チャンバ51の支持部材への取り付け位置が異なっている。
本実施形態のハウジング20は、チャンバ51の大気側にあり、チャンバ51の外側の外側面51b側に配置される。このため、ハウジング20は、円筒状のフランジ部材20Aを介してチャンバ51に固定されている。
フランジ部材20Aは、チャンバ51の外側の外側面51b上に配置され、ボルト等の固定部材20cを介して固定される。フランジ部材20Aのハウジングベース21の固定面は、チャンバ51の大気側にあり、Oリング等の密封部材20pを介してチャンバ51の外側面51bに固定されている。この構造により、実施形態2のモータ1は、チャンバ51の取り付け孔から大気側に吊されるように配置されて、フランジ部材20Aとチャンバ51の外側の外側面51bとは封止されている。
フランジ部材20Aの真空側端部近傍の回転中心Zr側である内径部には、ロータヨーク41側に突出する突出部20Bを有していることが好ましい。突出部20Bは、フランジ部材20Aとモータ回転体10Aの隙間を狭め、異物の混入または、後述する液状媒体46の漏れを防ぐことができるラビリンスシールとなる。
フランジ部材20Aは、中空構造であり、回転中心Zrにはモータ回転体10Aが貫通している。真空側の軸受装置14は、フランジ部材20Aの内径とモータ回転体10Aとの間に配置されている。軸受装置14は、外輪がフランジ部材20Aに固定され、内輪がモータ回転体10Aに固定されている。これにより、軸受装置14は、フランジ部材20Aに対して、モータ回転体10A及びモータロータ40を回転自在に支持することができる。このため、モータ1は、モータ回転体10及びモータロータ40をハウジングベース21及びモータステータ30に対して回転させることができる。
フランジ部材20Aは、ハウジング20とボルト等の固定部材20bにより、例えば、ハウジングアウタ22の端部でOリング等の密封部材20qを介して密封連結されている。この構造により、貯留部45に貯留した液状媒体46をフランジ部材20A内部まで満たすことができるので、冷却効率を向上させることができる。
本実施形態のモータ回転体10は、モータ回転体10Aとボルト等の固定部材19により固定されている。モータ回転体10には、連通孔11Aがあることが好ましい。これにより、液状媒体46の振動を抑制することができる。
モータ回転体10が回転する場合、連動してモータ回転体10Aも回転する。モータ回転体10Aは、積載台52とチャンバ51の内部で固定されており、モータ回転体10Aの回転は、積載台52の回転として伝達される。そして、ワーク53は、回転駆動される。このように、実施形態2のモータ1は、伝達機構を介在させることなく負荷体50とモータロータ40とを直結するダイレクトドライブモータである。
なお、真空側の軸受装置14は、複数のアンギュラ軸受14C、14Dを背面組み合わせとして間座20Cを介して配置することが好ましい。軸受装置14の外輪は、フランジ部材20Aに嵌め合い、外輪の端面がハウジングフランジ23に押圧されている。
軸受装置14の内輪及び外輪は、オーステナイト系ステンレス鋼で形成されており、表面硬化処理を施すことにより、耐錆性及び耐久性を向上できる。また、軸受装置14の転動体は、マルテンサイト系ステンレス鋼で形成されており、焼き入れによる硬化を施すことができるため耐錆性及び耐久性を向上できる。また、軸受装置14の転動体は、軸受装置14の内輪及び外輪の材料と異なる材料であるので、耐久性を向上させることができる。また、図示しない保持器は、オーステナイト系ステンレス鋼等であり、アンギュラ軸受14C、14Dの転動体同士が接触することを防止している。また、間座20Cは、軸受間の距離を広げることで許容モーメント荷重を大きくすることができる。
液冷機構86は、フランジ部材20Aの外周を取り囲んでいる。液冷機構86は、フランジ部材20Aの外周に接触して取り付ける冷却ジャケット89と、冷却ジャケット89に融点の低い金属で溶接された液冷管87と、液冷管87内を流通する第2の冷却媒体88とを含む。冷却ジャケット89は、フランジ部材20Aの外周の外径と同じ円筒状であることが好ましい。
液冷管87は、第2の冷却媒体88の媒体通路であり、冷却ジャケット89の周囲を巻回する。また、液冷管87は、一端が図示しない第2の冷却媒体88を吐出するポンプと接続しており、他端が図示しないラジエータと接続しており、ラジエータで冷却された第2の冷却媒体88をポンプから受け入れ、第2の冷却媒体88が液冷管87を流通する間に、液状媒体46及びフランジ部材20Aの熱を奪うことができる。液冷機構86は、液状媒体46及びフランジ部材20Aの強制液冷する作用がある。
フランジ部材20Aとハウジング20とは、隣接して結合しているので、液冷機構86が、液状媒体46及びフランジ部材20Aを強制液冷する場合、フランジ20の温度も下がる。
以上説明したように、実施形態2のモータ1は、本実施形態のハウジングであるフランジ部材20A及びハウジング20を冷却する。ワーク53が高温である場合、モータロータ40に伝達される熱は、貯留部45の液状媒体46を加熱する。上記構成により、液状媒体46の熱が、ハウジングであるフランジ部材20A及びハウジング20に伝達される。このため、ハウジングであるフランジ部材20A及びハウジング20の熱を奪うことにより、貯留部45の液状媒体46の温度の上昇を抑制することができる。また、モータロータ40に伝達される熱によるマグネット42の温度上昇を抑制することができる。これにより、モータは、マグネット42の減磁を抑制することができる。なお、フランジ部材20A及びハウジング20の熱は、循環する液冷により冷却することがより好ましい。
なお、液冷機構86は、モータ1の始動時に液冷管87に温度の高い温水を流通させ、液状媒体46を暖め、液状媒体46を所定の粘度とすることで、運転開始直後から安定した回転動作とすることもできる。
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係るウエハ搬送アーム装置を示す構成図である。図8に示すように、ウエハ搬送アーム装置は、フロッグレッグ型の複数のアームを備えた装置であり、上述した実施形態1の同じモータ1を2つ上下に重ね合わせたモータ1B、モータ1Cと、上述した実施形態1のワーク53に相当するアームA1、アームA2と、アームA1、アームA2に連結された連結アームL1、連結アームL2と、テーブルTと、ウエハWとを含む。実施形態1の同じモータ1を2つ上下に重ね合わせているので、真空環境では外界との接触表面積を極力小さくすると同時に、スペースを有効に活用するためにモータ等の取付穴をなるべく少なくすることができる。
例えば、モータ1B、モータ1Cがそれぞれ同方向に回転すれば、アームA1、アームA2に連結された連結アームL1、連結アームL2を介して回転自在に結合されたテーブルTも同方向に回転する。モータ1B、モータ1Cがそれぞれ逆方向に回転すれば、アームA1、アームA2に連結された連結アームL1、連結アームL2を介して回転自在に結合されたテーブルTもモータ1B及びモータ1Cに接近もしくは離隔するようになっている。従って、モータ1B、モータ1Cを任意の角度で回転させれば、テーブルTが届く範囲内で、任意の2次元位置にウエハWを搬送させることができる。
上述した実施形態1または実施形態2のモータ1は、実施形態3において上述したようにアームA1、アームA2等の伝達機構を介在させて負荷体であるテーブルTまたはウエハWを搬送させることができる。