本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るモータの使用状態を説明する説明図である。図2は、積載台及びワークの一例を示す模式図である。モータ1は、回転中心Zrを中心に積載台52を回転する。例えば、図2に示すように、積載台52は、円盤状のプレート部52aと、ウエハ搬送用などのためのアーム部52bとを含む。そして、アーム部52bは、ワーク53を搭載する。積載台52のプレート部52aの回転により、半導体製造装置における真空雰囲気Vaのチャンバ51内に配置されるアーム部52bがワーク53aを搭載した状態で位置決めされる。
モータ1は、ギヤ、ベルトまたはローラ等の伝達機構を介在させることなく負荷体50であるワーク53及び積載台52に回転力をダイレクトに伝達し、ワーク53を回転させることができる。モータ1は、いわゆるモータ回転軸と負荷体50とを直結したダイレクトドライブモータである。なお、モータ1は、いわゆるモータ回転軸と負荷体50としてワーク53とを直結したダイレクトドライブモータとしてもよい。また、実施形態1に係るモータ1は、後述するように、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータがモータロータよりも回転中心Zr寄りとなる配置としている。
一般に、半導体製造装置は、半導体の集積度が高まり、それに伴って同時にICのパターン幅の微細化による高密度化が進められている。この微細化に対応できるウエハを製造するために、ウエハ品質に対する高度の均一性が要求されている。その要求に応えるためには、真空雰囲気Vaにおける不純物ガス濃度の一層の低減が重要である。このため、チャンバ51の取り付け孔に配置されるモータ1においては、真空雰囲気Vaの空間とハウジング外部の大気雰囲気Atとを離隔することも必要となる。なお、本実施形態では、チャンバ51内を真空雰囲気Vaとしているが、真空雰囲気Vaを真空でなく、例えば、窒素ガス、希ガスなど大気雰囲気Atと異なる雰囲気としてもよい。
図1に示すように、外部のコンピュータからモータ回転指令iが入力されたとき、モータ制御回路90は、CPU(Central Processing Unit)91から3相アンプ(AMP:Amplifier)92に駆動信号を出力し、AMP92からモータ1に駆動電流Miが供給される。モータ1は、駆動電流Miにより積載台52が回転し、ワーク53を移動させるようになっている。積載台52が回転すると、後述する回転角度を検出したレゾルバ等の角度検出器から検出信号(レゾルバ信号)Srが出力される。モータ制御回路90は、検出信号Srをレゾルバデジタル変換器(RDC:Resolver to Digital Converter)93でデジタル変換する。RDC93からの検出信号Srのデジタル情報に基づいて、CPU91はワーク53が指令位置に到達したか否かを判断し、指令位置に到達する場合、AMP92への駆動信号を停止する。
図1に示すように、モータ1は、後述するように、気体送出手段であるポンプP1に吸入流路A1を介して接続している。図1に示すように、モータ1は、後述するように、気体送出手段であるポンプP2に排出流路A2を介して接続していてもよい。ポンプP1は、CPU91のポンプ制御信号pi1に基づき駆動し、気体をモータ1に吸入流路A1を介して送出する。ポンプP2は、CPU91のポンプ制御信号pi2に基づき駆動し、気体をモータ1に排出流路A2を介して送出する。ポンプP1、P2は、CPU91とは別の図示しないコントローラにより制御されていてもよい。
図3は、回転中心を含む仮想平面で実施形態1のモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。モータ1は、静止状態に維持される固定子(以下、モータステータという)30と、モータステータ30に対して回転可能に配置された回転子(以下、モータロータという)40と、モータステータ30を固定してチャンバ51の支持部材に円筒状のフランジ部材24を介して取り付けられるモータハウジング20と、モータロータ40に固定されてモータロータ40と共に回転可能なモータ回転体10と、モータハウジング20とモータ回転体10との間に介在されてモータ回転体10をモータハウジング20に対して回転可能に支持する真空側の軸受装置14と、を含む。
モータ回転体10は、回転プレート10Aと、回転プレート10Aの回転中心Zrと同軸のシャフト部10S及びシャフト部10Mとを含む。シャフト部10S及びシャフト部10Mは、ボルトなどの固定部材10bにより、回転中心Zrの延長方向に延びるように、接続されて出力シャフトとなっている。また、実施形態1のモータ回転体10は、回転プレート10Aとシャフト部10Sとがボルト等の固定部材19により固定されている。出力シャフトは、シャフト部10S及びシャフト部10Mのように分割して構成したが一体として構成してもよい。シャフト部10Mの端部には、チャンバ51の真空側の内側面51a側に、ボルトなどの固定部材50bにより積載台52が固定されている。
モータハウジング20、モータロータ40及びモータステータ30はいずれも環状の構造体である。モータロータ40及びモータステータ30は、回転中心Zrを中心に同心状に配置されている。また、モータ1は、回転中心Zrから外側へモータステータ30、モータロータ40の順に配置されている。このようなモータ1は、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータ30がモータロータ40よりも回転中心Zr寄りとなる。
モータハウジング20は、略円板状のハウジングベース21と、ハウジングアウタ22と、ハウジングインナ23とを備えている。実施形態1のモータハウジング20は、チャンバ51の大気側にあり、チャンバ51の外側の外側面51b側に配置される。このため、モータハウジング20は、円筒状のフランジ部材24を介してチャンバ51に固定されている。フランジ部材24は、中空の構造体であり、鍔部27と、円筒部26と、突出部28と、モータハウジング固定部29とを含む。
フランジ部材24の鍔部27は、チャンバ51の外側の外側面51b上に配置され、ボルト等の固定部材20cを介して固定される。フランジ部材24のハウジングベース21の固定面24aは、チャンバ51の大気側にあり、Oリング等の密封部材20pを介してチャンバ51の外側面51bに固定されている。この構造により、実施形態1のモータ1は、チャンバ51の取り付け孔から大気側である大気雰囲気Atに吊されるように配置されて、フランジ部材24とチャンバ51の外側の外側面51bとは封止されている。
フランジ部材24は、回転中心Zr側に、シャフト部10M及びシャフト部10Sのシャフト外周表面10a側に突出する突出部28を有していることが好ましい。突出部28は、円筒部26の内周表面26bとシャフト外周表面10aとの距離よりも突出部28の内周表面28bとシャフト外周表面10aとの隙間l2を狭め、異物の混入または、後述するパージガス(気体)の漏れを防ぐことができるラビリンスシールとなる。
フランジ部材24のモータハウジング固定部29は、モータハウジング20とボルト等の固定部材20bにより、例えば、ハウジングアウタ22の端部でOリング等の密封部材20aを介して密封連結されている。
フランジ部材24の円筒部26は、中空構造であり、回転中心Zrには、モータロータ40及び回転プレート10Aと連結した出力シャフトであるシャフト部10S及びシャフト部10Mが貫通している。
真空側の軸受装置14は、フランジ部材24の内径とシャフト部10Sとの間に配置されている。軸受装置14は、外輪がフランジ部材24側に固定され、内輪がシャフト部10S側に固定されている。例えば、フランジ部材24の内側には、ボルトなどの固定部材25bで円筒部26の端部に固定され、かつ円環状であって軸受装置14の内輪を固定する軸受け抑え部材25が配置されている。また、シャフト部10Mは、軸受装置14の外輪を固定する軸受け抑え部材となっている。
また、軸受装置14は、外輪がフランジ部材24に固定され、内輪がシャフト部10Sに固定されている。これにより、軸受装置14は、ハウジングベース21に対して、モータ回転体10及びモータロータ40を回転自在に支持することができる。このため、モータ1は、モータ回転体10及びモータロータ40をハウジングベース21及びモータステータ30に対して回転させることができる。
なお、真空側の軸受装置14は、複数の軸受装置であることが好ましく、第1軸受装置14A、第2軸受装置14Bを背面組み合わせとして配置することが好ましい。軸受装置14の外輪は、フランジ部材24に嵌め合い、外輪の端面が軸受け抑え25に押圧されている。第1軸受装置14A、第2軸受装置14Bは、複数のアンギュラ軸受であることが好ましいが、深溝玉軸受など他の形式の軸受でもよい。
また、第1軸受装置14A、第2軸受装置14Bは、インナ間座10C及びアウタ間座20Cを介して配置することが好ましい。インナ間座10Cとアウタ間座20Cとの間には、円環状の空間ccが形成されている。また、インナ間座10C及びアウタ間座20Cは、第1軸受装置14A、第2軸受装置14B間の距離を広げることで許容モーメント荷重を大きくすることができる。
軸受け抑え部材25の回転中心Zr側は、シャフト部10S側に突出する突出部23aを有していることが好ましい。突出部25aは、軸受け抑え部材25とシャフト部10Sの隙間l1を狭め、異物の混入または、後述する気体a6の漏れを防ぐことができるラビリンスシールとなる。また、突出部25aは、第2軸受装置14Bの潤滑剤が後述する気体a6により外部に押し出され潤滑不良となる可能性を低減することができる。
軸受装置14の内輪及び外輪は、マルテンサイト系ステンレス鋼等で形成されている。この構造により、軸受装置14の内輪及び外輪は、焼き入れによる硬化を施すことができるため、耐錆性及び耐久性を向上することができる。軸受装置14の転動体は、セラミックボール等で形成されている。軸受装置14の転動体は、軸受装置14の内輪及び外輪の材料と異なる材料であるので、耐久性を向上させることができる。軸受装置14の転動体と転動体との間には、マルテンサイト系ステンレス鋼等のスペーサボールを配置することがより好ましい。この構造により、セラミックボールの転動体同士が接触することを防ぐことができる。
または、軸受装置14の内輪及び外輪は、オーステナイト系ステンレス鋼で形成されることもでき、表面硬化処理を施すことにより、耐錆性及び耐久性を向上できる。この場合、軸受装置14の転動体は、マルテンサイト系ステンレス鋼で形成されており、焼き入れによる硬化を施すことができるため耐錆性及び耐久性を向上できる。また、軸受装置14の転動体は、軸受装置14の内輪及び外輪の材料と異なる材料であるので、耐久性を向上させることができる。また、図示しない保持器は、オーステナイト系ステンレス鋼等であり、第1軸受装置14A、第2軸受装置14Bの転動体同士が接触することを防止している。
モータハウジング20は、フランジ部材24の下面に配置され、ボルト等の固定部材20bを介して固定される。モータハウジング20のハウジングベース21の底面21aは、チャンバ51の大気側である大気雰囲気Atに露出する。
ハウジングベース21は、回転中心Zr近傍に突出する中心突出部21Aを備えている。中心突出部21Aは、後述する気密封止部材60を固定している。
ハウジングインナ23は、回転中心Zrを囲むようにハウジングベース21から凸状に突出した同心円となる突出部である。ハウジングアウタ22は、ハウジングインナ23を囲むようにハウジングベース21から凸状に突出した同心円となる突出部である。このため、ハウジングベース21の上面21bは、ハウジングインナ23とハウジングアウタ22に囲まれた円環状の溝を含む。
ハウジングインナ23の回転中心Zr側と反対側の側面には、モータステータ30がボルト等の固定部材によって締結されている。これにより、モータステータ30はハウジングベース21に対して位置決め固定されている。モータステータ30の中心軸は、モータロータ40の回転中心Zrと一致する。
モータステータ30は、ステータコア31と、励磁コイル32とを含む。モータステータ30は、ステータコア31に励磁コイル32が巻きつけられる。モータステータ30には、電源からの電力を供給するための配線32aが接続されており、この配線32aを通じて励磁コイル32に対して上述したモータ制御回路90から電力が供給されるようになっている。
モータロータ40は、モータロータ40の内径がモータステータ30の外径寸法よりも大きい円筒状である。モータロータ40は、ロータヨーク41及びロータヨーク41の内周に貼り付けられたマグネット42を含む。なお、マグネット42については、後述する。
回転プレート10Aは、円板状であり、外縁にロータヨーク41が一体となっている。モータロータ40は、一方の端部の円板状の回転プレート10Aが蓋となり、他方の端部が開放されている円筒形状である。モータロータ40は、円筒状の回転プレート10Aにボルト等の固定部材により固定されてもよい。回転プレート10Aは、中心軸がモータ1の回転中心Zrと同軸に形成されている。
大気側の軸受装置74は、内側ロータ82を中心突出部21Aに対して回転自在に支持している。また、大気側の軸受装置74は、複数の深溝玉軸受74A、74Bを上述した中心突出部21Aに嵌め合い固定することが好ましい。深溝玉軸受74A、74Bは、予圧ばね75により定圧予圧している。
予圧ばね75は、モータステータ30の配置された空間の温度変化に伴う予圧荷重の過大な変化を抑制することができる。このため、予圧ばね75は、磁気カップリング効果のねじりばね定数と、大気側の軸受装置74の起動トルクのヒステリシスとにより生じるロストモーションの増大、または予圧抜けによる角度検出器70の無用な振動を抑制することができる。なお、ロストモーションとは、ある位置への正の向きでの位置決めと負の向きでの位置決めによる両停止位置の差をいう。
モータ1は、カップリング磁石84と、カップリング磁石84を支持するカップリングヨーク81とを含む。モータロータ40のマグネット42は、後述する気密封止部材60を介してカップリング磁石84に対向して配置され、複数のカップリング磁石84と、カップリング磁石84及びカップリングヨーク81を保持するホルダとなる内側ロータ82とを含む。カップリングヨーク81は、内側ロータ82とボルト等の固定部材83で固定されている。
この構成により、モータロータ40のマグネット42とカップリング磁石84との間に発生する磁気力が作用し、内側ロータ82がモータロータ40の回転に連動して回転する。例えば、モータロータ40のマグネット42と、カップリング磁石84との間に磁気的吸引または磁気的反発が生じることで、いわゆる磁気カップリング効果が生じて、モータロータ40が内側ロータ82を連れ回る。
磁気カップリング効果のねじりばね定数は、磁石の残留磁束密度が温度の影響を受け、ねじりばね定数が若干変化するものの、ほぼ一定であり、内側ロータ82の回転モーメントも一定である。よって、磁気カップリング効果のねじりばね定数と内側ロータ82の回転モーメントとから定まる共振周波数も一定であり、この共振周波数はモータロータ40の積載する負荷体50の回転モーメントとは無関係である。本実施形態のモータ1では、共振周波数近傍を上述したモータ制御回路90の制御帯域からノッチフィルタまたはローパスフィルタで減衰させることで、内側ロータ82の振動を抑制している。
カップリング磁石84は、単一の磁石の面に多極着磁がなされており、モータロータ40に対向する位置で互いに異なる極性を対向させていることが好ましい。
また、モータ1は、角度検出器70を備えることが好ましい。角度検出器70は、例えばレゾルバであって、モータロータ40及びモータ回転体10の回転位置を高精度に検出することができる。
角度検出器70は、静止状態に維持されるレゾルバステータ71A、71Bと、レゾルバステータ71A、71Bと所定のギャップを隔てて対向配置され、レゾルバステータ71A、71Bに対して回転可能なレゾルバロータ72A、72Bを備えている。レゾルバステータ71A、71Bは、ハウジングインナ23に配設されている。また、レゾルバロータ72A、72Bは、内側ロータ82に配設されている。
そして、モータステータ30の励磁コイル32が励磁され、モータロータ40が回転駆動すると、内側ロータ82が同時に回転駆動する。この構成により、モータロータ40の回転角度を気密封止部材60越しに角度検出器70で検出することができる。
レゾルバステータ71A、71Bは、複数のステータ磁極が円周方向に等間隔に形成された環状の積層鉄心を有し、各ステータ磁極にレゾルバコイルが巻回されている。各レゾルバコイルには、検出信号(レゾルバ信号)Srが出力される配線73が接続されている。
レゾルバロータ72A、72Bは、中空環状の積層鉄心により構成されており、内側ロータ82の外側に固定されている。角度検出器70の配設位置は、モータロータ40(モータ回転体10)の回転を検出することが可能であれば特に限定されず、モータ回転体10及びモータハウジング20の形状に応じて任意の位置へ配設することができる。
モータロータ40が回転すると、モータロータ40と共にモータ回転体10が回転し、連動してレゾルバロータ72A、72Bも回転する。これにより、レゾルバロータ72A、72Bと、レゾルバステータ71A、71Bとの間のリラクタンスが連続的に変化する。レゾルバステータ71A、71Bは、リラクタンスの変化を検出し、RDC93によって上述した検出信号Srをデジタル信号に変換する。モータ1を制御するモータ制御回路90のCPU91は、RDC93の電気信号に基づいて、単位時間当たりのレゾルバロータ72A、72Bと連動するモータ回転体10及びモータロータ40の位置や回転角度を演算処理することができる。その結果、モータ1を制御するモータ制御回路90は、モータ回転体10の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測することが可能となる。
上述したレゾルバロータ72Aは、偏心させた外周を有する円環状となっている。このため、モータロータ40の回転に伴ってレゾルバロータ72Aが回転すると、レゾルバステータ71Aとの間の距離を円周方向に連続して変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ72Aの位置により連続的に変化する。レゾルバロータ72Aの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が1周期となる単極レゾルバ信号を出力しており、レゾルバロータ72Aと、レゾルバステータ71Aと、はいわゆる単極レゾルバとなる。
また、レゾルバロータ72Bは、突極状の複数の歯が円周方向に等間隔で形成される。このため、モータロータ40の回転に伴ってレゾルバロータ72Bが回転すると、レゾルバステータ71Bとの間の距離を円周方向に周期的に変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ72Bの歯の位置により連続的に変化する。レゾルバロータ72Bの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が多周期となる多極レゾルバ信号を出力しており、レゾルバロータ72Bとレゾルバステータ71Bとは、いわゆる多極レゾルバとなる。
このように、モータ1は、モータロータ40の1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分の周期が異なる角度検出器70を備えることにより、モータ回転体10の絶対位置を把握することができ、また、モータ回転体10の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測する精度を高めることができる。また、モータ1は、一相通電による極検知動作、または原点復帰動作を行う必要がなく、位置決めを行うことができる。
モータ1は、例えばボルト等の固定部材により負荷体50がモータ回転体10に直接固定されている。上述した特許文献1に記載のモータは、負荷体50であるワーク53の温度が高い場合、ワーク53の熱が積載台52、モータ回転体10を介してモータロータ40に伝達される可能性がある。上述した特許文献1に記載のモータにおいて、伝達された熱がモータロータ40に蓄積されると、モータロータ40に配置された永久磁石であるマグネット42が減磁する可能性がある。マグネット42が減磁する場合、モータ1は、モータトルクを十分に発揮することができない可能性がある。
また、上述した特許文献1に記載のモータは、モータロータ40に伝達された熱により軸受装置14の潤滑剤が劣化または蒸発する可能性がある。潤滑剤が劣化または蒸発する場合、軸受装置14の摩擦が過大となり出力トルクが低下する可能性がある。また、スパイク状のトルク変動が生じ、負荷体50に搭載されたワーク53を損傷してしまう可能性がある。このように、上述した特許文献1に記載のモータは、モータ回転体10の振動を生じさせる可能性があり、モータ回転体10の振動は、負荷体50に伝達される。
上述した特許文献1に記載のモータは、モータロータ40は、真空側の真空雰囲気Vaに連通する空間に配置されており、伝熱による冷却効果が小さい傾向にある。例えば、真空中では大気中と比較して、気体の対流による冷却効果が得られない。その結果、モータロータ40には、熱が蓄積されやすい傾向がある。また、真空中に配置する部品は、付着物のガス放出を低減するために、部品表面を清浄な金属色に磨くことが多く、輻射による放熱の冷却効果も小さい傾向にある。
しかしながら、上述した特許文献1に記載のモータと比較して、実施形態1に係るモータ1は、マグネット42の減磁を抑制し、使用する環境雰囲気中で不純物ガスの放出を低減することができる。実施形態1のモータ1は、モータステータ30と、ハウジングであるモータハウジング20及びフランジ部材24と、モータロータ40と、軸受装置14と、気密封止部材60と、給気口61Hと、強制排気口68とを含む。実施形態1に係るモータ1は、モータロータ40に伝達される熱を、給気口61Hからモータロータ40の配置された空間に供給する気体であるパージガスを介して強制排気口68から逃がすことができる。このため、モータ1は、気体の対流による冷却効果を得て、モータロータ40に熱が蓄積される可能性を低減することができ、モータロータ40に配置されたマグネット42の減磁を抑制することができる。
図4は、実施形態1のモータの構成を回転中心に直交する仮想平面で切ってモータロータを模式的に示す部分断面図である。図4に示すように、モータロータ40は、ロータヨーク41と、マグネット42とを含む。ロータヨーク41は、筒状に形成される。ロータヨーク41は、強磁性体の低炭素鋼で形成され、表面にニッケルめっきを施すことが好ましい。ニッケルめっきを施すことで、ロータヨーク41は錆を防ぐことができ、アウトガスを低減することができる。
マグネット42は、ロータヨーク41の内周表面に沿って貼り付けられ、複数設けられている。マグネット42は、永久磁石であり、S極及びN極がロータヨーク41の円周方向に交互に等間隔で配置される。これにより、図4に示すモータロータ40の極数は、ロータヨーク41の外周側にN極と、S極とがロータヨーク41の円周方向に交互に配置された20極である。
図4に示すように、本実施形態のモータ1は、20極18スロットというスロットコンビネーション構成である。例えば、10極9スロットのスロットコンビネーション構成は、分数スロットであり、コギング力は小さいが径方向に磁気吸引力が生じやすいことが一般的に知られている。これに対して、本実施形態のモータ1は、10極9スロットのスロットコンビネーション構成の2倍の構成であり、径方向の磁気吸引力を相殺することで、固定子と回転子の真円度または、同軸度を高めることなく、回転時の振動を小さくできると共に、コギングを抑制し、非常に滑らかな回転を得ることができる。なお、モータロータ40の極数及びモータステータ30のスロット数は、20極18スロットの構成に限られず、必要に応じて適宜変更できる。
また、マグネット42の永久磁石は、例えばNd−Fe−B系磁石(ネオジム系磁石)を用いることができる。マグネット42は、表面にニッケルめっきを施すことが好ましい。ニッケルめっきを施すことで、マグネット42は、錆を防ぐと共に真空雰囲気Vaに配置されても、アウトガスを低減することができる。
モータ1は、モータロータ40に熱が蓄積される可能性を低減することができ、モータロータ40に配置されたマグネット42の減磁を抑制することができる。このため、モータ1は、他の希土類磁石と比較して、エネルギー積は高いが高温における減磁しやすいネオジム系磁石をマグネット42に使用することができ、モータロータ40を小型にできる。その結果、モータ1は、コンパクトとなり、例えば、チャンバ51の支持部材に開ける取り付け孔を小さくすることができる。
図5は、マグネットの貼り付け状態を示す分解斜視図である。図6は、回転中心に直交する仮想平面で切ってマグネットの取り付け状態を模式的に示す部分断面図である。図3に示すロータヨーク41の内周には、図5に示すマグネット42を位置決めするための一対の磁石押さえ部材43が備えられている。一対の磁石押さえ部材43は、非磁性体であって、例えばオーステナイト系ステンレス鋼等で形成され、モータロータ40の温度変化により締めしろの変化する比率を低減することができる。また、一対の磁石押さえ部材43は、ロータヨーク41の内周に圧入または焼きばめ等により固定される。
一般的に、モータにおけるセグメント状のマグネットの固定には接着剤が用いられることが多い。しかしながら、実施形態1のモータ1は、真空雰囲気Vaに配置されているので、接着剤から放出されるアウトガスを低減する必要がある。また、真空雰囲気Vaに曝される接着剤は劣化し、接着強度の劣化の可能性がある。実施形態1のモータ1は、接着剤を用いずに、磁石押さえ部材43を用いることでマグネット42を固定することができる。その結果、実施形態1のモータ1は、マグネット42の位置決めを確実にすると共に、使用する環境雰囲気中で不純物ガスの放出を低減することができる。
図5に示すように、磁石押さえ部材43は、ロータヨーク41の内周径に沿った円環部44Aと、円環部44Aに設けられた複数の凸部である位置決め部44Bとを含む。位置決め部44Bは、磁石の極数をnとするとn−1個が円周方向に複数設けられている。隣り合う位置決め部44B間は、マグネット42を収容する凹部となる。そして、マグネット42は、マグネット42を収容する凹部に挟み込まれる。マグネット42は、一対の磁石押さえ部材43の間に収容され、ロータヨーク41の内周に取り付けられる。実施形態1では、マグネット42は、ロータヨーク41の内周表面の密着面に沿って貼り付けられ、複数設けられている分割形状(セグメント構造)のセグメント磁石である。
図6に示すように、マグネット42の円周方向の端面は、位置決め部44Bに対しての接線の交点Mrが回転中心Zrよりもマグネット42寄りとなるようにしている。このため、磁石押さえ部材43は、マグネット42が位置決め部44Bよりも回転中心Zr側に飛び出す可能性を低減している。マグネット42の半径方向の外周部(外周表面)における回転方向の円弧の曲率半径をロータヨーク41の内周径の曲率半径よりも微小に小さい形状とすることで、マグネット42の半径方向の外周部を2点でロータヨーク41の内周径に線接触させることがより好ましい。これにより、モータ1は、マグネット42がロータヨーク41に対してがたつく可能性を低減することができる。
モータステータ30は、回転中心Zr側にハウジングインナ23を包囲するように筒状に設けられる。図4に示すように、モータステータ30は、ステータコア(ステータ磁極)31が上述した回転中心Zrを中心とした円周方向にティース31aが等間隔で並んで、バックヨーク31bが一体に配置される。モータステータ30は、このような一体コアに限られず、複数の分割されたステータコア31が上述した回転中心Zrを中心とした円周方向に等間隔で並んで配置される分割コアであってもよい。そして、ステータコア31がハウジングインナ23を介してハウジングベース21に固定される。
また、ステータコア31は、略同形状に形成された複数のティース31aが回転中心Zr方向に積層されて束ねられることで形成される。ステータコア31は、電磁鋼板などの磁性材料で形成される。モータステータ30は、複数のステータコア31が組み合わされると、環状形状を形成する。
図4に示す励磁コイル32は、線状の電線である。励磁コイル32は、ステータコア31のティース31aにインシュレータを介して集中巻きされる。励磁コイル32は、U相正巻、U相逆巻、U相正巻、V相正巻、V相逆巻、V相正巻、W相正巻、W相逆巻、W相正巻の順を繰り返すことで結線される。この構成により、磁極数を低減でき、かつ分布巻きに比較してコイルエンドが短くなることからコイル量を低減できる。その結果、コストを低減でき、モータ1をコンパクトにすることができる。なお、インシュレータは、励磁コイル32とステータコア31とを絶縁するための部材であり、耐熱部材で形成される。
励磁コイル32は、ステータコア31のティース31aの複数の外周に分布巻きされていてもよい。この構成により、磁極数が増え、磁束の分布が安定することからトルクリップルを抑制することができる。励磁コイル32は、バックヨーク31bの外周にトロイダル巻きされていてもよい。この構成により、分布巻きと同等の磁束分布を発生することができる。その結果、トルクリップルを抑制することができる。
このように構成されたステータコア31が図3に示すように複数組み合わされることにより、モータステータ30は、ハウジングインナ23を包囲できる形状となる。つまり、ステータコア31は、ロータヨーク41の内側(回転中心Zrから遠い側)に磁気ギャップGとなる隙間を有して環状に配置される。
図3に示すように、気密封止部材60は、天板部61と、胴部62と、口元フランジ部63とを含む。気密封止部材60は、図4に示すように、胴部62がステータコア31とロータヨーク41との間の磁気ギャップGに配置され、モータロータ40の配置された空間にモータステータ30の配置された空間の気体が流通しないように密閉する隔壁となる。
気密封止部材60は、天板部61と、胴部62と、口元フランジ部63とをオーステナイト系ステンレス鋼等から削りだした一体成形品である。胴部62は、例えば0.5mm以上0.6mm以下の厚さで薄管状(厚みの薄い円筒状)に形成されている。この構造により、胴部62は、磁界変化に伴う渦電流損失を抑制することができる。
天板部61は、ハウジングベース21の回転中心Zr近傍で、ハウジングベース21の中心突出部21Aと嵌め合い連結されている。天板部61は、ハウジングベース21と図示しないボルト等の固定部材で固定されていてもよい。天板部61は、ハウジングベース21と連結されることで、真空雰囲気Vaと大気雰囲気Atの間の圧力差による変形を抑制することができる。
口元フランジ部63は、Oリング等の密封部材65を介してハウジングベース21の上面21bに、ボルト等の固定部材64で固定されている。この構造により、ハウジングインナ23とハウジングアウタ22に囲まれた円環状の溝は、気密封止部材60でモータロータ40の配置された空間とモータステータ30の配置された空間とに区画され、大気側の気体が真空側に流通しないようにすることができる。
図3に示すように、気密封止部材60には、パージガスを供給する給気口61Hが備えられている。また、上述した円筒部26には、パージガスを強制的に排気するための強制排気口68が備えられている。
例えば、ポンプP1は、ポンプP1を接続した給気用コネクタ66に、吸入流路A1を介して清浄な気体a1を供給する。パージガスとなる気体a1は、例えば、窒素等の不活性ガスが好ましい。
気体a1は、中心突出部21Aの連通孔67を介して給気口61Hに到達する。つまり、給気口61Hは、連通孔67及び給気用コネクタ66と連通している。連通孔67及び給気口61Hは、モータロータ40の回転中心Zrの延長線上に備えられている。気体a1は給気口61Hに送出され、給気口61Hから気体a2として、気密封止部材60により大気雰囲気Atと隔離され、かつモータロータ40の配置された空間に吐出する。給気口61Hは、モータロータ40の回転中心Zrの延長線上に備えられているので、気体a2がモータ回転体10の径方向外側に向かって均等に送出することができる。気体a2は、気体a3としてマグネット42の少なくとも表面の一部を通過する。このため、給気口61Hは、マグネット42の少なくとも表面の一部を通気する気体a3を吸入する入り口である。
例えば、気体a3は、胴部62とマグネット42の表面との間を通過し、マグネット42を冷やすことができる。気体a3は、口元フランジ部63で気体a4として反転し、気体a5としてロータヨーク41を冷やしながら、ロータヨーク41の径方向外側と、ハウジングアウタ22との間を通過する。気体a5は、気体a6の位置に到達する。気体a6は、フランジ部材24とモータ回転体10の間を回転中心Zrに近づく方向に向かって流れ、シャフト部10Sに開けられたシャフト部気体導入孔10Gに導かれる。シャフト部気体導入孔10Gの直径d1は、上述した隙間l1よりも大きいことが好ましい。これにより、突出部25aは第2軸受装置14Bに気体a6が流れることを抑制することができる。
図7は、実施形態1のモータの構成を回転中心に直交する仮想平面で切ってシャフト部のシャフト部気体導入孔を模式的に示す部分断面図である。図7に示すように、シャフト部気体導入孔10Gは、回転中心Zrを中心に放射状に径方向外側に複数設けられている。シャフト部気体導入孔10Gは、1つでもよいが、周方向に複数均等に配置されている場合、シャフト部10Sの周囲からより均等に気体a6を集めることができる。シャフト部10Sは、回転中心Zrを含む気体導入路10Hを備えている。気体導入路10Hは、シャフト部気体導入孔10Gに接続されている。それぞれの図3及び図7に示すように、シャフト部10Sに開けられたシャフト部気体導入孔10Gに導かれた気体a6は、気体導入路10Hで合流し、気体a7として流通する。
図8は、実施形態1のモータの構成を回転中心に直交する仮想平面で切って排出孔を模式的に示す部分断面図である。図8に示すように、シャフト部気体放出孔10Jは、回転中心Zrを中心に放射状に径方向外側に複数設けられている。シャフト部気体放出孔10Jは、1つでもよいが、周方向に複数均等に配置されている場合、シャフト部10Sの周囲からより均等に気体a8を放出することができる。そして、上述した気体導入路10Hは、シャフト部気体放出孔10Jの一端に接続されている。シャフト部気体放出孔10Jの他端は、インナ間座10Cにあけられた空間ccに通じる孔に接続されている。
図8に示すように、強制排気口68は、アウタ間座20Cにあけられた空間ccに通じる孔に接続されている。そして、強制排気口68は、第1軸受装置14Aと第2軸受装置14Bとの間に開口している。このため、シャフト部気体放出孔10Jと強制排気口68とは連通する。気体a7は、気体a8としてシャフト部気体放出孔10Jを通過する。シャフト部気体放出孔10Jを通過した気体a9は、空間ccに入り、強制排気口68に導かれる。アウタ間座20Cにあけられた空間ccに通じる孔の直径d2は、上述した隙間l1または隙間l2よりも大きいことが好ましい。
強制排気口68は、円筒部26の外周表面26aに取り付けた排気用コネクタ69と接続されている。排気用コネクタ69は、1つでもよいが、周方向に複数均等に配置されている場合、円筒部26からより均等に気体a9を放出することができる。強制排気口68を通過した気体a9は、排気用コネクタ69を介して排出流路A2を通過し、ポンプP2に戻る。このように、ポンプP2は、強制排気口68を介して気体a9を強制的に排気する。このため、給気口61Hで供給できるパージガス(気体a1、気体a2、気体a3、気体a4、気体a5、気体a6、気体a7、気体a8及び気体a9)の流量を増加させ、冷却効率を高めることができる。
気体a1、気体a2、気体a3、気体a4、気体a5、気体a6、気体a7、気体a8及び気体a9のようなパージガスの気体の流れは、マグネット42の熱を奪い、モータ1外へ排出することができる。ポンプP1、P2は、モータロータ40の配置された空間内にパージガスの気体を流れさせ強制的に冷却する気体送出手段である。ポンプP1、P2は、気体を吐出または吸引する時間あたりの体積量を増やすことで、冷却量を増やすことができる。モータ1は、ポンプP1とポンプP2とを分けて、パージガスの気体の流れを形成したので、排出流路A2の気体a9に含まれる物質を気体a1に混合させることがなく、気体a1を清浄な状態とすることができる。
ワーク53が高温である場合、モータロータ40に伝達される熱は、マグネット42を加熱する場合がある。上記構成により、モータ1は、気体(パージガス)を媒体としてマグネット42の熱を奪うことにより、マグネット42の温度の上昇を抑制することができる。これにより、モータ1は、マグネット42の減磁を抑制することができる。
一般的に、軸受装置14に伝達される熱は、軸受装置14の潤滑剤の蒸発を促進する。実施形態1に係るモータ1では、ワーク53が高温である場合、軸受装置14に伝達された熱は、気体(パージガス)を媒体として軸受装置14の熱を奪うことにより、軸受装置14の潤滑剤が劣化または蒸発する可能性を低減できる。つまり、実施形態1のモータ1は、軸受装置14がモータロータ40の回転中心Zrと平行な方向に互いに離れた第1軸受装置14Aと第2軸受装置14Bとを含み、気体a9の流通により第1軸受装置14Aと第2軸受装置14Bとの熱が気体a9を媒体として外部に排出される。このため、実施形態1のモータ1は、モータロータ40の配置された空間、例えば空間cc内の熱を気体a9に伝達して奪うことにより、軸受装置14の温度の上昇を抑制することができる。これにより、潤滑剤の劣化または蒸発が抑制されるので、軸受装置14の摩擦が過大となり出力トルクが低下する可能性が低減する。また、実施形態1に係るモータ1では、潤滑不良によるスパイク状のトルク変動が抑制され、負荷体50に搭載されたワーク53を損傷してしまう可能性を低減することができる。また、第1軸受装置14A及び第2軸受装置14Bの間にパージガスが流通することで、第1軸受装置14A及び第2軸受装置14Bの冷却効率を高めることができる。
なお、第1軸受装置14A及び第2軸受装置14Bの潤滑剤は、フッ素系合成油を基油としたグリースであることが好ましい。フッ素系合成油は、例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE:perfluoropolyether)油である。一般的に、フッ素系合成油は、蒸気圧が低く真空中であっても、揮発を抑制することができる。
以上説明したように、実施形態1のモータ1は、モータステータ30と、ハウジングであるモータハウジング20及びフランジ部材24と、モータロータ40と、軸受装置14と、気密封止部材60と、給気口61Hと、強制排気口68とを含む。モータステータ30は、励磁コイル32及びステータコア31を備える。モータハウジング20のハウジングインナ23は、モータステータ30を固定する。モータロータ40は、ステータコア31に対して所定の磁気ギャップGを介して対向すると共に、円周方向に配列される複数のマグネット42を備える。軸受装置14は、モータハウジング20のハウジングアウタ22に回転自在にモータロータ40を支持する。気密封止部材60は、モータロータ40の配置された空間に、モータステータ30の配置された空間の気体が流通しないように密閉する。また、気密封止部材60の胴部62は、磁気ギャップGに配置される。給気口61Hは、マグネット42の少なくとも表面の一部に通気する気体a1を供給する。強制排気口68は、給気口61Hから供給される気体をモータ1の外へ排気する。
そして、モータロータ40に伝達される熱は、マグネット42の少なくとも表面の一部に通気する気体a3を媒体として逃がすことができる。このため、モータロータ40に熱が蓄積される可能性を低減することができ、モータロータ40に配置されたマグネット42の減磁を抑制することができる。また、気密封止部材60がモータロータ40の配置された空間にモータステータ30の配置された空間の気体が流通しないように密閉するので、モータステータ30に起因する不純物ガスが使用する環境雰囲気、真空雰囲気Va中に放出される可能性を低減できる。
実施形態1において、チャンバ51は、真空雰囲気Vaを含むが、例えば真空雰囲気Vaの代わりに、マグネット42の腐食などを引き起こす可能性のあるプロセスガスを保持する場合がある。このように、チャンバ51内がプロセスガスで満たされた環境においても、マグネット42には給気口61Hから流入してくるパージガスでマグネット42の表面が保護されるため、マグネット42の表面がプロセスガスに曝される可能性を低減することができる。
上述したように第1軸受装置14A、第2軸受装置14Bは、インナ間座10C及びアウタ間座20Cを介して配置されている。実施形態1のモータ1は、インナ間座10C及びアウタ間座20Cの回転中心Zrと平行な方向の長さを長くすることで、空間ccの体積を増加させ、冷却効率を高めることができる。また、上述したインナ間座10Cにあけた孔及びアウタ間座20Cにあけた孔は、回転中心Zrと平行な方向の位置と同じ(いずれも回転中心Zrと直交する平面にある)としているが、異なる位置としてもよい。
インナ間座10Cにあけた孔は、アウタ間座20Cにあけた孔と回転中心Zrと直交する平面で異なる平面にある場合、インナ間座10Cにあけた孔を第1軸受装置14Aの近くとし、アウタ間座20Cにあけた孔を第2軸受装置14Bに近くとする。この構造によれば、インナ間座10Cにあけた孔からアウタ間座20Cにあけた孔までの気体a9の流路を長くすることができる。その結果、気体a9が奪う熱が増えるため、冷却効率を高めることができる。また、インナ間座10Cにあけた孔及びアウタ間座20Cにあけた孔が第1軸受装置14A及び第2軸受装置14Bに近くなるので、第1軸受装置14A及び第2軸受装置14Bの冷却が促進される。
上述したように、実施形態1のモータ1は、一対の磁石押さえ部材43を用いて、モータロータ40を配置する空間のアウトガスを抑制している。実施形態1のモータ1は、強制排気口68を備え、パージガスを強制的に排出している。このため、モータロータ40を配置する空間にアウトガスがあっても、アウトガスごと強制排気口68から排気することで、アウトガスが真空雰囲気Va中に放出される可能性を低減できる。このため、モータ1は、上述した一対の磁石押さえ部材43の代わりに、接着剤などを用いることができることで、モータ1の構成が簡素となり、モータ1のコストを抑制することができる。
(実施形態2)
図9は、回転中心を含む仮想平面で実施形態2のモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態2のモータ1は、実施形態1のモータ1と同様に、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータ30がモータロータ40よりも回転中心Zr寄りとなる配置としている。実施形態2のモータ1は、実施形態1のモータ1と比較して、複数の排気口である、第1強制排気口68A及び第2強制排気口68Bを備えている。
第1強制排気口68Aは、上述した実施形態1の強制排気口68と同じ構造であり、円筒部26Aに取り付けた排気用コネクタ69Aと接続され、連通している。そして、第1強制排気口68Aを通過した気体a9は、排気用コネクタ69Aを介して排出流路A2を通過する。このように、ポンプP2は、強制排気口68A及び排出流路A2を介して気体a9を吸引し強制排気する。このため、ポンプP2は、給気口61Hで供給できるパージガス(気体a1、気体a2、気体a3、気体a4、気体a5、気体a6、気体a7、気体a8及び気体a9)の流量を増加させ、冷却効率を高めることができる。
実施形態2のフランジ部材24Aは、中空の構造体であり、鍔部27と、円筒部26Aと、突出部28Aと、突出部28Bと、モータハウジング固定部29とを含む。突出部28Aは、フランジ部材24Aの内周表面28Abとシャフト外周表面10aとの隙間l2を狭め、異物の混入または、パージガスの漏れを防ぐことができるラビリンスシール(微小隙間)となる。
隙間l2は、例えば数十μm以下、より好ましくは5μm以上10μm以下の間隙の微小隙間である。突出部28Bは、フランジ部材24Aの内周表面28Bbとシャフト外周表面10aとの隙間l2を狭め、異物の混入または、パージガスの漏れを防ぐことができるラビリンスシールとなる。内周表面28Bbとシャフト外周表面10aとの隙間も、例えば数十μm以下、より好ましくは5μm以上10μm以下の間隙の微小隙間である。
実施形態2のモータ1は、フランジ部材24Aの内周側(回転中心Zr側)に突出部28Aと、突出部28Bとを備えることにより、フランジ部材24Aと、突出部28Aと、突出部28Bと、シャフト部10S及びシャフト部10Mと、第1軸受装置14Aとで囲まれる空間26P及び空間26Qを備えている。フランジ部材24Aの円筒部26Aには、空間26Qに開口する第2強制排気口68Bが開口しており、第2強制排気口68Bは、円筒部26Aに取り付けた排気用コネクタ69Bと接続され、連通している。空間26Qの気体a10は、第2強制排気口68Bを通過し、排気用コネクタ69Bを介して排出流路A3を通過する。ポンプP3は、排出流路A3を介して気体a10を吸引し強制排気する。
空間26Pは、第1軸受装置14Aを介して空間ccと隣り合うように配置されている。隙間l2は、空間26Pと空間26Qとの流路の抵抗を大きくする絞り流路となっている。ポンプP2により吸引される排気系統、すなわち強制排気口68A、排気用コネクタ69A、ポンプP2までの流出流路A2を含む第1排気系統は、この第1排気系統全体の抵抗よりも隙間l2の抵抗が著しく大きい。このため、気体a9がポンプP2により強制的に吸引されると、気体a9の大部分は、抵抗が小さい第1排気系統に配置されたポンプP2に吸引される。空間26Qには、ポンプP2に吸引されず、突出部28Aとシャフト外周表面10aとの隙間l2を通過した僅かな気体気体a10が流入する。この気体a10の流量は、空間26Pと空間26Qとの間に圧力の差及び絞り流路の抵抗により決まることになる。気体a10の流量は、概ね空間26Pと空間26Qとの間に圧力の差に比例し、絞り流路の抵抗に反比例する。
突出部28Bと、シャフト外周表面10aとの隙間l3は、空間26Qを区切り、チャンバ51内の空間と、空間26Qとの流路の抵抗を大きくする絞り流路となっている。
ポンプP3により吸引される排気系統、すなわち強制排気口68B、排気用コネクタ69B、ポンプP2までの流出流路A3を含む第2排気系統は、この第2排気系統全体の抵抗よりも隙間l3の抵抗が著しく大きい。このため、気体a10がポンプP3により強制的に吸引されると、気体a10の大部分は、抵抗が小さい第2排気系統に配置されたポンプP3に吸引される。
チャンバ51内が高真空の真空雰囲気Vaである場合、パージガス(気体a10)の流入を抑制するには、ポンプP2に大容量の排気に適したポンプを選定し、ポンプP3に気体10aを排気した場合に、空間26Pの圧力よりも低い吸い込み口圧力が得られるポンプを選定することが好ましい。吸い込み口圧力は、概ね気体の流量に比例し気体の排気速度に反比例する。この構成により、隙間l2を通過した僅かな気体a10をポンプP3が吸引することができる。圧力差の異なる空間P2と、チャンバ51の間に空間26Qを備え、空間26Qに流入する気体10aを排気するシール方式が差動排気シールと呼ばれている。なお、空間26Pの圧力は、第1排気系統での流れに伴う圧損(=流量×抵抗)を吸い込み口圧力に足した圧力となる。空間26Qの圧力は、第2排気系統での流れに伴う圧損(=流量×抵抗)を吸い込み口圧力に足した圧力となる。
チャンバ51内と空間26Pとの間に生じる気体の流れを抑制し、高いシール効率を得るためには、突出部28Aとシャフト外周表面10aとの隙間l2、または突出部28Bとシャフト外周表面10aとの隙間l3を、例えば数十μm以下、より好ましくは5μm以上10μm以下の間隙となるように、微小とすることが好ましい。あるいは、チャンバ51内と空間26Pとの間に生じる気体の流れを抑制するためには、突出部28Aまたは突出部28Bの回転中心Zrと平行な方向の長さを長くすることで、シール長さを長くすることが好ましい。
このように、実施形態2のモータ1は、シャフト部10Sまたはシャフト部10Mの周囲に隙間l2のような微小隙間により、絞り流路を備え、第1強制排気口68Aに繋がる空間26Pと第2強制排気口68Bに繋がる空間26Qとの間に差圧を生じさせる。実施形態2のモータ1は、第2強制排気口68Bを備えることにより、モータ1側からチャンバ51内のプロセス内へパージガス(気体a9)を抑制することができる。
実施形態2のモータ1の変形例として、チャンバ51内がプロセスガスなどの給気による減圧空間である場合、パージガスである気体a1がプロセス室となるチャンバ51に流入することのないように、空間26Pと空間26Qにおいて、空間26Qの方が圧力が高くなるように、上述した第1配管系統及びポンプP2と第2配管系統及びポンプP3とを構成することが好ましい。
実施形態2のモータ1の他の変形例として、チャンバ51内へのガスの供給がない単に減圧空間である場合には、空間26Qに開口する第2強制排気口68Bを閉鎖するまたは第2強制排気口68Bを開口しないようにする。この構造は、上述した実施形態1のモータ1と同じ構成となり、ポンプP3により強制的に気体a10が吸引されていなくても、モータ1のハウジング内では、空間Qと、第1強制排気口68Aが通じるハウジング内の空間Pとの間に差圧が生じている。このため、モータ1は、気体a9のチャンバ51内への流入を抑制することができる。
以上説明したように、ハウジングとなるフランジ部材24Aには、前記気体が強制的に排気される第1強制排気口68A及び第2強制排気口68Bを備え、第1強制排気口68A及び第2強制排気口68Bとの間の流路を絞る絞り流路として微小隙間を備えている。
第1強制排気口68A及び第2強制排気口68Bとの間の流路を境に差圧が生じて、給気口61Hから流入するパージガスが第1強制排気口68A及び第2強制排気口68B以外のチャンバ51内に漏れる可能性を低減することができる。このため、実施形態2のモータ1は、高真空の真空雰囲気Va中の環境、密閉された空間で減圧された環境またはプロセスガスを含有する雰囲気の環境等の特殊環境で用いられても、この特殊環境に給気口61Hから流入する気体を放出してしまう可能性を低減することができる。
(実施形態3)
図10は、回転中心を含む仮想平面で実施形態3のモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。なお、上述した実施形態1及び実施形態2で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態3のモータ1は、実施形態1のモータ1と同様に、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータ30がモータロータ40よりも回転中心Zr寄りとなる配置としている。実施形態3のモータ1は、実施形態1のモータ1と比較して、複数の排気口である、第1強制排気口68A及び第2強制排気口68Bを備え、実施形態2のモータ1と比較して、弾性体シール86を備えている。
第1強制排気口68Aは、上述した実施形態1の強制排気口68と同じ構造であり、円筒部26Bに取り付けた排気用コネクタ69Aと接続され、連通している。そして、第1強制排気口68Aを通過した気体a9は、排気用コネクタ69Aを介して排出流路A2を通過する。ポンプP2は、排出流路A2を介して気体a9を吸引し強制排気する。
実施形態3のフランジ部材24Bは、中空の構造体であり、鍔部27と、円筒部26Bと、突出部28Cと、モータハウジング固定部29とを含む。突出部28Cは、弾性体シール86の取付位置を位置決めする。弾性体シール86は、例えば、リップシールまたはOリングと呼ばれ、アウトガスの放出のすくない材料が好ましく、例えばシリコンゴム、フッ素ゴム等で成形された弾性体である。
弾性体シール86は、フランジ部材24Bの内周表面とシャフト外周表面10aとの隙間を狭め、異物の混入または、パージガスの漏れを防ぐことができる。弾性体シール86は、フランジ部材24Bの内周表面に固定される弾性体基部87と、リップ部88を備えている。リップ部88は、モータ回転体10の回転に伴ってシャフト外周表面10aを摺動する。弾性体シール86は、リップ部88を2つ備えているが、リップ部88を1つ備えていてもよく、また3つ以上備えていてもよい。
実施形態3のモータ1は、フランジ部材24Bの内周側(回転中心Zr側)に弾性体シール86、86を備えることにより、フランジ部材24Bと、弾性体シール86、86と、シャフト部10S及びシャフト部10Mと、第1軸受装置14Aとで囲まれる空間26Pa及び空間26Qaを備えている。フランジ部材24Bの円筒部26Bには、空間26Qaに開口する第2強制排気口68Bが開口しており、第2強制排気口68Bは、円筒部26Bに取り付けた排気用コネクタ69Bと接続され、連通している。空間26Qaの気体a11は、第2強制排気口68Bを通過し、排気用コネクタ69Bを介して排出流路A3を通過する。ポンプP3は、排出流路A3を介して気体a11を吸引し強制排気する。
空間26Paは、第1軸受装置14Aを介して空間ccと隣り合うように配置されている。リップ部88とシャフト外周表面10aとの間は、基本的には当接した摺接面であり、リップ部88とシャフト外周表面10aとの間には、わずかな、部分的な隙間が生じると、この隙間が空間26Paと空間26Qaとの流路を絞る絞り流路となっている。そして、第1強制排気口68A及び第2強制排気口68Bの間の排気差圧が絞り流路における抵抗を高め、絞り流路はいわゆる差動排気シールとして作用する。リップ部88とシャフト外周表面10aとの隙間を流通する気体が抑制されるため、気体a9及び気体a11がポンプP2及びポンプP3により強制的に吸引されると、空間26Paと空間26Qaとの間に圧力の差が生じる。空間26Qaの圧力を空間26Paの圧力よりも高くする場合、気体a9のチャンバ51内への流入が抑制される。このように、実施形態3のモータは、シャフト部10Sまたはシャフト部10Mの周囲に微小隙間により、絞り流路を備え、第1強制排気口68Aに繋がる空間26Paと第2強制排気口68Bに繋がる空間26Qaとの間に差圧を生じさせることで、モータ1側からチャンバ51内のプロセス内へパージガス(気体a9)または異物の混入を抑制することができる。
以上説明したように、実施形態3のモータ1は、ハウジングとなるフランジ部材24Bには、気体a9及び気体a11が強制的に排気される第1強制排気口68A及び第2強制排気口68Bを備え、第1強制排気口68A及び第2強制排気口68Bとの間の流路をシールするシール部材として弾性体シール86を備えている。
この構造により、圧力差の異なる空間26Paとチャンバ51との間に第2強制排気口を備えた空間26Qaができ、第2強制排気口68Bを備えた空間26Qaを弾性シール86がシールし、かつ第2強制排気口68Bを備えた空間26Qaに流入する気体a11を排気する。このため、実施形態3のモータ1は、高真空の真空雰囲気Va中の環境、密閉された空間で減圧された環境またはプロセスガスを含有する雰囲気の環境等の特殊環境で用いられても、この特殊環境に給気口61Hから流入する気体a1を放出してしまう可能性を低減することができる。