本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るモータの使用状態を説明する説明図である。図2は、積載台及びワークの一例を示す模式図である。モータ1は、回転中心Zrを中心に積載台52を回転する。例えば、図2に示すように、積載台52は、円盤状のプレート部52aと、ウエハ搬送用などのためのアーム部52bとを含む。そして、アーム部52bは、ワーク53を搭載する。積載台52のプレート部52aの回転により、半導体製造装置における真空雰囲気Vaのチャンバ51内に配置されるアーム部52bがワーク53を搭載した状態で位置決めされる。モータ1は、ギヤ、ベルトまたはローラ等の伝達機構を介在させることなく負荷体(搭載物)50であるワーク53及び積載台52に回転力をダイレクトに伝達し、ワーク53を回転させることができる。モータ1は、いわゆるモータ回転軸と負荷体50とを直結したダイレクトドライブモータである。なお、モータ1は、いわゆるモータ回転軸と負荷体50としてのワーク53とを直結したダイレクトドライブモータとしてもよい。また、実施形態1に係るモータ1は、後述するように、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータがモータロータよりも回転中心Zr寄りとなる配置としている。これにより、モータ1は、高精度にワーク53の位置決めをすることができる。なお、本実施形態において、軸方向とは、回転中心Zrの軸と平行な方向である。なお、実施形態1において、軸方向とは、回転中心Zrの軸と平行な方向である。
一般に、半導体製造装置は、半導体の集積度が高まり、それに伴って同時にICのパターン幅の微細化による高密度化が進められている。この微細化に対応できるウエハ(半導体部品)を製造するために、ウエハ品質に対する高度の均一性が要求されている。その要求に応えるためには、真空雰囲気Vaにおける不純物ガス濃度の一層の低減が重要である。このため、チャンバ51の取り付け孔に配置されるモータ1においては、真空雰囲気Vaの空間とハウジング外部の大気雰囲気Atとを離隔することも必要となる。なお、本実施形態では、チャンバ51内を真空雰囲気Vaとしているが、真空雰囲気Vaを真空でなく、例えば、窒素ガス、希ガスなど大気雰囲気Atと異なる雰囲気としてもよい。
図1に示すように、例えば半導体製造100に用いられる製造装置は、チャンバ51と、モータ1と、モータ制御回路90と、モータ制御回路を制御する制御装置99を含む。半導体製造100に用いられる半導体製造装置100は、搬送テーブル(可動部材)33を回転させる。製造装置100は、真空雰囲気Vaにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物又は工具)を搬送テーブル(プレート部52a)に搭載して移動させる。制御装置99は、入力回路と、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置であるメモリと、出力回路とを含む。メモリに記憶させるプログラムに応じて、モータ1を制御するモータ回転指令iを生成し、真空雰囲気Vaにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物又は工具)を搬送テーブル(プレート部52a)に搭載して移動させる搬送装置110を備え、製造装置は、所望の製品を製造することができる。なお、真空雰囲気Vaは、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境であってもよい。
図1に示すように、外部のコンピュータからモータ回転指令iが入力されたとき、モータ制御回路90は、CPU(Central Processing Unit)91から3相アンプ(AMP:Amplifier)92に駆動信号を出力し、AMP92からモータ1に駆動電流Miが供給される。モータ1は、駆動電流Miにより積載台52が回転し、ワーク53を移動させるようになっている。積載台52が回転すると、後述する回転角度を検出したレゾルバ等の角度検出器から検出信号(レゾルバ信号)Srが出力される。モータ制御回路90は、検出信号Srをレゾルバデジタル変換器(RDC:Resolver to Digital Converter)93でデジタル変換する。RDC93からの検出信号Srのデジタル情報に基づいて、CPU91はワーク53が指令位置に到達したか否かを判断し、指令位置に到達する場合、AMP92への駆動信号を停止する。
図3は、回転中心を含む仮想平面で実施形態1のモータの構成を切って模式的に示す断面図である。モータ1は、静止状態に維持される固定子(以下、モータステータという)30と、モータステータ30に対して回転可能に配置された回転子(以下、モータロータという)40と、モータステータ30を固定してチャンバ51の支持部材に取り付けられるハウジング20と、モータロータ40に固定されてモータロータ40とともに回転可能なロータフランジ45と、隔壁部材60と、角度フィードバックシャフト10と、角度フィードバックシャフト10と、ハウジング20との間の隙間を密封する回転型真空シール部材65と、を含む。
ハウジング20、ロータフランジ45、モータロータ40及びモータステータ30はいずれも環状の構造体である。ロータフランジ45、モータロータ40及びモータステータ30は、回転中心Zrを中心に同心状に配置されている。また、モータ1は、回転中心Zrから外側へモータステータ30、モータロータ40の順に配置されている。このようなモータ1は、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータ30がモータロータ40よりも回転中心Zr寄りとなる。また、モータ1は、ロータフランジ45、モータロータ40及びモータステータ30がハウジング20の上に配置されている。
ハウジング20は、ハウジングベース21と、ハウジングフランジ24と、外側隔壁押さえ部材23とを備える。ハウジングフランジ24と、外側隔壁押さえ部材23とは、円環状の部材である。ハウジングベース21は、筒状のハウジングアウタ22と、筒状のハウジングインナ25とを備えている。ハウジングアウタ22は、チャンバ51の内側の内側面51a上に配置され、不図示のボルト等の固定部材によりOリングなどの密封部材29aを介して固定される。モータ1は、ハウジングアウタ22が支持部材であるチャンバ51に取り付けられることで、チャンバ51に対して位置決め固定される。ハウジングベース21は、チャンバ51に取り付けられた状態において、底面21aと接する内側面51aを一連の連続面として少なくとも1つ有している。この連続面は、モータ1の自重や回転時の振動などをチャンバ51に分散して作用させることができる。このため、ハウジングベース21に歪み(撓み)が生ずるおそれを防止することができる。
ハウジングインナ25は、円板状のベース部25Aと回転中心Zr近傍に突出する円筒部25Bと、底部25Cを備えている。ハウジングインナ25は、ベース部25Aの外周の取付面25aでハウジングベース21の内周と嵌め合い、ボルト等の固定部材を介してハウジングベース21に固定されている。
ハウジングアウタ22とハウジングインナ25は別体であるので、材料を異なるものにすることができる。例えば、ハウジングアウタ22はその一部が真空中に曝されるため、オーステナイト系ステンレス、アルミ合金など、真空中での放出ガスが少なく、かつ放出ガスの成分が既知の真空用材料を用いることができる。ハウジングアウタ22は、適用する真空度によっては、電解研磨、平滑化処理、酸化被膜などの表面処理が施されることで、表面積を低減させ、溶存気体の放出を低減させることがより好ましい。ハウジングインナ25は、本実施形態では、真空中に曝されないため、鋳鉄、低炭素鋼など一般的な構造用材料を用いていてもよい。この構造により、モータ1は、構造用材料の使用の比率を高め、構造用材料よりも高価な、真空用材料の使用量を減らすことができる。
ハウジング20のハウジングインナ25の底部25Cは、チャンバ51の取り付け孔51eに挿入され、チャンバ51の大気側である大気雰囲気Atに露出する。底部25Cは、筒状の部材で囲む中空空間74を備え、中空空間74には、後述する角度検出器70を備えている。なお、底部25Cは、中空空間74を覆う蓋部75を備えることで、中空空間74への異物の混入を抑制することができる。
円筒部25Bは、回転中心Zrを囲むようにベース部25Aから凸状に突出した同心円となる突出部である。ハウジングアウタ22は、ハウジングインナ25の円筒部25Bを囲むようにハウジングベース21から凸状に突出した同心円となる突出部である。このため、ハウジングベース21の上面は、ハウジングインナ25の円筒部25Bとハウジングアウタ22に囲まれた円環状の溝を含む。
また、ハウジングフランジ24は、ボルト等の固定部材を介してハウジングアウタ22に固定され、ハウジングアウタ22の回転中心Zr側側面の嵌合部24aに第3軸受装置14の外輪を固定している。
ハウジングインナ25の径方向外側の側面(回転中心Zrとは反対側の側面)には、モータステータ30がボルト等の固定部材によって締結されている。これにより、モータステータ30はハウジングベース21に対して位置決め固定されている。モータステータ30の中心軸は、モータロータ40の回転中心Zrと一致する。
モータステータ30は、ステータコア31と、励磁コイル32とを含む。モータステータ30は、ステータコア31に励磁コイル32が巻きつけられる。モータステータ30には、電源からの電力を供給するための配線32aが接続されており、この配線32aを通じて励磁コイル32に対して上述したモータ制御回路90から電力が供給されるようになっている。
モータロータ40は、モータロータ40の内径がモータステータ30の外径寸法よりも大きい円筒状である。モータロータ40は、ロータヨーク41及びロータヨーク41の内周に貼り付けられたマグネット42を含む。なお、マグネット42については、後述する。
ロータフランジ45は、円板状であり、下面がロータヨーク41に嵌め合い、ボルト等の固定部材で固定されている。ロータフランジ45は、全体が真空中に曝されるため、オーステナイト系ステンレス、アルミ合金など、真空中での放出ガスが少なく、かつ放出ガスの成分が既知の真空用材料であることが好ましい。適用する真空度によっては、表面積の低減や、溶存気体の放出低減を図るべく、電解研磨や平滑化、酸化被膜などの表面処理が施される。ロータフランジ45は、適用する真空度によっては、電解研磨、平滑化処理、酸化被膜などの表面処理が施されることで、表面積を低減させ、溶存気体の放出を低減させることがより好ましい。
ロータヨーク41は、ロータフランジ45と逆側の端部から固定部材を介して、ロータヨーク41の外周側面の嵌合部に第3軸受装置14の内輪を挟み固定する。これにより、第3軸受装置14の内輪の内径部が中間ばめ又はすきまばめされて、内輪の端面が押圧される。第3軸受装置14は、内輪の端面同士が密着することで、適正な予圧又は適正な軸受すきまが得られる。モータロータ40は、円筒状のロータフランジ45にボルト等の固定部材により固定されてもよい。ロータフランジ45は、中心軸がモータ1の回転中心Zrと同軸に形成されている。ロータフランジ45は、上面に上述した負荷体(搭載物)50を固定する搭載面50Pを備え、搭載面50Pと重なり合わない範囲(図3においては、径方向内側)で、角度フィードバックシャフト10と連結する連結部材である連結板46とがボルト等の固定部材で固定されている。
また、第3軸受装置14は、内輪がロータヨーク41及びロータフランジ45に固定され、外輪がハウジングフランジ24及びハウジングアウタ22に固定されている。第3軸受装置14は、外輪の外径部がすきまばめされており、図示しないボルト等の固定部材がハウジングフランジ24をハウジングアウタ22に固定(締結)することで、外輪同士の端面が押圧される。これにより、第3軸受装置14は、ハウジングベース21に対して、ロータフランジ45及びモータロータ40を回転自在に支持することができる。このため、モータ1は、ロータフランジ45及びモータロータ40をハウジングベース21、ハウジングインナ25及びモータステータ30に対して回転させることができる。
なお、真空側の第3軸受装置14は、複数のアンギュラ軸受の軸受装置14A、14Bを背面組み合わせとして配置することが好ましい。第3軸受装置14の外輪は、ハウジングアウタ22に嵌め合い、外輪の端面がハウジングフランジ24に押圧されている。ハウジングフランジ24の回転中心Zr側は、ロータヨーク41側に突出する突出部を有していることが好ましい。この突出部は、ハウジングフランジ24とロータフランジ45(又はロータヨーク41)の隙間を狭め、異物の混入を防ぐことができるラビリンスシールとなる。
第3軸受装置14の内輪及び外輪は、マルテンサイト系ステンレス鋼等で形成されている。この構造により、第3軸受装置14の内輪及び外輪は、焼き入れによる硬化を施すことができるため、耐錆性及び耐久性を向上することができる。第3軸受装置14の転動体は、セラミックボール等で形成されている。第3軸受装置14の転動体は、第3軸受装置14の内輪及び外輪の材料と異なる材料であるので、耐久性を向上させることができる。第3軸受装置14の転動体と転動体との間には、マルテンサイト系ステンレス鋼等のスペーサボールを配置することがより好ましい。この構造により、セラミックボールの転動体同士が接触することを防ぐことができる。
また、モータ1は、角度検出器70を備える。角度検出器70は、例えばレゾルバであって、モータロータ40及びロータフランジ45の回転位置を高精度に検出することができる。
角度検出器70は、静止状態に維持されるレゾルバステータ71A、71Bと、レゾルバステータ71A、71Bと所定のギャップを隔てて対向配置され、レゾルバステータ71A、71Bに対して回転可能なレゾルバロータ72A、72Bを備えている。レゾルバステータ71A、71Bは、ハウジングインナ25に配設されている。また、レゾルバロータ72A、72Bは、角度フィードバックシャフト10にレゾルバロータスペーサ76を介して取り付けられている。
角度フィードバックシャフト10は、軸方向の異なる位置に、真空側小径部(第1小径部)12と、大気側小径部(第2小径部)13との間であって、真空側小径部12及び大気側小径部13よりも直径を大きくした大径部11とを有している。角度フィードバックシャフト10の材質は、マルテンサイト系ステンレス、析出硬化系ステンレス、シリコン(Si)を3.4質量%以上含む析出硬化性ステンレスの高珪素合金のいずれかを用いることで、後述する回転型真空シール部材65と摺動する部位の耐摩耗性を向上している。そして、角度フィードバックシャフト10は、軸受装置15によりハウジングインナ25に対して回転自在に支持されている。軸受装置15は、複数の深溝玉軸受の第1軸受装置15A、第2軸受装置15Bで、大径部11の軸方向両側から嵌め合わせる配置としている。
第2軸受装置15Bの内輪の内径部は角度フィードバックシャフト10の大気側小径部13にしまりばめされ、さらに第2軸受装置15Bの内輪の端面は角度フィードバックシャフト10の段付き部(大径部11と大気側小径部13との段差部)および止め輪16Aで軸方向に固定される。外輪の外径部はハウジングインナ25の座ぐり穴に接着固定され、さらに外輪の端面はハウジングインナ25の座ぐり穴肩部および止め輪16Bで軸方向に固定される。このように、止め輪16は、止め輪16Aおよび止め輪16Bを備え、第2軸受装置15Bを固定できる。第2軸受装置15Bは、軸受隙間(ラジアル内部隙間)が第1軸受装置15Aよりも小さいことが好ましい。例えば、第2軸受装置15Bは、軸受隙間(ラジアル内部隙間)がC2又はCMであることが好適である。以上説明したように、第2軸受装置15Bを径方向および軸方向に固定し、かつ軸受隙間の小さい軸受を用いた構造により、レゾルバロータ72A、72Bを精度良く回転させることが可能となる。このため、角度検出器70は、角度検出精度を向上できる。また、レゾルバロータ72A、72Bとレゾルバステータ71A、71Bとの軸方向位置を精度良く位置決めすることができるため、角度検出器70は、角度検出精度を向上できる。また、温度変化や衝撃などによりレゾルバロータ72A、72Bとレゾルバステータ71A、71Bとの軸方向位置がずれてしまい、角度検出精度が劣化してしまう可能性を低減できる。
第1軸受装置15Aは、例えば通常すきまの深溝玉軸受の軸受装置である。第1軸受装置15Aの内輪の内径部は、角度フィードバックシャフト10の真空側小径部12にしまりばめされる。第1軸受装置15Aの外輪は、ハウジングインナ25の内壁にすきまばめされ、外輪の端面と、後述するシールホルダ27との間に挟まれた予圧ばね26により、第2軸受装置15Bの基本動定格荷重の0.5%程度の予圧が付加されている。この構造により、レゾルバロータ72A、72Bの振動を抑制しつつ回転させることが可能となる。このため、角度検出器70は、角度検出精度を向上できる。また、本実施形態のモータ1は、温度変化により過大な予圧となったり、予圧が抜けたりして、角度検出精度が劣化してしまうことを防ぐことができる。
真空側小径部12は、真空側小径部12よりも直径が大きな顎状の連結フランジ47の中心を貫通し、不図示のセットビスなどの固定部材により、真空側小径部12と、連結フランジ47とが固定されている。上述した連結板46は、厚さ0.5mm以上数mm以下の板ばね状であり、図示しないボルトなどの固定部材により、連結フランジ47と固定されている。このように、モータ1は、ロータフランジ45と角度フィードバックシャフト10とを薄板状の連結板46で連結することで、角度フィードバックシャフト10に対するロータフランジ45の軸芯のずれ、ミスアライメント、高さ違いなどを吸収できる。このため、大気側の軸受装置15に過大な荷重が加わったり、角度フィードバックシャフト10がロータフランジ45につられて振られてしまったりするなどの相互干渉を抑制することができる。
角度フィードバックシャフト10、連結フランジ47及び連結板46は、真空中に曝されるため、オーステナイト系ステンレス、アルミ合金など、真空中での放出ガスが少なく、かつ放出ガスの成分が既知の真空用材料であることが好ましい。適用する真空度によっては、表面積の低減や、溶存気体の放出低減を図るべく、電解研磨や平滑化、酸化被膜などの表面処理が施される。ロータフランジ45は、適用する真空度によっては、電解研磨、平滑化処理、酸化被膜などの表面処理が施されることで、表面積を低減させ、溶存気体の放出を低減させることがより好ましい。
そして、モータステータ30の励磁コイル32が励磁され、モータロータ40が回転駆動すると、連結部材である連結板46で連結された角度フィードバックシャフト10が同時に回転駆動する。この構成により、モータロータ40の回転角度と角度フィードバックシャフト10の回転角度とが同期し、角度フィードバックシャフト10の回転角度を角度検出器70で検出することでモータロータ40の回転角度を検出することができる。モータロータ40に加わる、搭載物の質量の大きさ、搭載位置が変化しても角度検出器70のロータ慣性には影響を与えないので、角度フィードバックシャフト10のねじれ剛性とレゾルバロータ72A、72Bのロータ慣性との関係で定まる共振周波数が安定し、角度検出器70の検出値の精度を高めることができる。
レゾルバステータ71A、71Bは、複数のステータ磁極が円周方向に等間隔に形成された環状の積層鉄心を有し、各ステータ磁極にレゾルバコイルが巻回されている。各レゾルバコイルには、検出信号(レゾルバ信号)Srが出力される配線73が接続されている。
レゾルバロータ72A、72Bは、中空環状の積層鉄心により構成されており、ロータフランジ45の内側に固定されている。角度検出器70の配設位置は、モータロータ40(ロータフランジ45)の回転を検出することが可能であれば特に限定されず、ロータフランジ45及びハウジング20の形状に応じて任意の位置へ配設することができる。
モータロータ40が回転すると、モータロータ40とともにロータフランジ45が回転し、連動してレゾルバロータ72A、72Bも回転する。これにより、レゾルバロータ72A、72Bと、レゾルバステータ71A、71Bとの間のリラクタンスが連続的に変化する。レゾルバステータ71A、71Bは、リラクタンスの変化を検出し、RDC93によって上述した検出信号Srをデジタル信号に変換する。モータ1を制御するモータ制御回路90のCPU91は、RDC93の電気信号に基づいて、単位時間当たりのレゾルバロータ72A、72Bと連動するロータフランジ45及びモータロータ40の位置や回転角度を演算処理することができる。その結果、モータ1を制御するモータ制御回路90は、ロータフランジ45の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測することが可能となる。
上述したレゾルバロータ72Aは、偏心させた外周を有する円環状となっている。このため、モータロータ40の回転に伴ってレゾルバロータ72Aが回転すると、レゾルバステータ71Aとの間の距離を円周方向に連続して変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ72Aの位置により連続的に変化する。レゾルバロータ72Aの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が1周期となる単極レゾルバ信号を出力しており、レゾルバロータ72Aと、レゾルバステータ71Aと、はいわゆる単極レゾルバとなる。
また、レゾルバロータ72Bは、突極状の複数の歯が円周方向に等間隔で形成される。このため、モータロータ40の回転に伴ってレゾルバロータ72Bが回転すると、レゾルバステータ71Bとの間の距離を円周方向に周期的に変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ72Bの歯の位置により連続的に変化する。レゾルバロータ72Bの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が多周期となる多極レゾルバ信号を出力しており、レゾルバロータ72Bとレゾルバステータ71Bとは、いわゆる多極レゾルバとなる。
このように、モータ1は、モータロータ40の1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分の周期が異なる角度検出器70を備えることにより、モータロータ40(ロータフランジ45)の絶対位置を把握することができ、また、モータロータ40(ロータフランジ45)の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測する精度を高めることができる。また、モータ1は、一相通電による極検知動作、または原点復帰動作を行う必要がなく、位置決めを行うことができる。
図4は、実施形態1のモータの構成を回転中心に直交する仮想平面で切ってモータロータを模式的に示す部分断面図である。図4に示すように、モータロータ40は、ロータヨーク41と、マグネット42とを含む。ロータヨーク41は、筒状に形成される。ロータヨーク41は、強磁性体の低炭素鋼で形成され、表面にニッケルめっきを施すことが好ましい。ニッケルめっきを施すことで、ロータヨーク41は錆を防ぐことができ、アウトガスを低減することができる。
マグネット42は、ロータヨーク41の内周表面に沿って貼り付けられ、複数設けられている。マグネット42は、永久磁石であり、S極及びN極がロータヨーク41の円周方向に交互に等間隔で配置される。これにより、図4に示すモータロータ40の極数は、ロータヨーク41の外周側にN極と、S極とがロータヨーク41の円周方向に交互に配置された20極である。
図4に示すように、本実施形態のモータ1は、20極18スロットというスロットコンビネーション構成である。例えば、10極9スロットのスロットコンビネーション構成は、分数スロットであり、コギング力は小さいが径方向に磁気吸引力が生じやすいことが一般的に知られている。これに対して、本実施形態のモータ1は、10極9スロットのスロットコンビネーション構成の2倍の構成であり、径方向の磁気吸引力を相殺することで、固定子と回転子の真円度または、同軸度を高めることなく、回転時の振動を小さくできると共に、コギングを抑制し、非常に滑らかな回転を得ることができる。なお、モータロータ40の極数及びモータステータ30のスロット数は、20極18スロットの構成に限られず、必要に応じて適宜変更できる。
また、マグネット42の永久磁石は、例えばNd−Fe−B系磁石(ネオジム系磁石)を用いることができる。マグネット42は、表面にニッケルめっきを施すことが好ましい。ニッケルめっきを施すことで、マグネット42は、錆を防ぐと共に真空雰囲気Vaに配置されても、アウトガスを低減することができる。
図5は、マグネットの貼り付け状態を示す分解斜視図である。図6は、回転中心に直交する仮想平面で切ってマグネットの取り付け状態を模式的に示す部分断面図である。ロータヨーク41の内周には、マグネット42を位置決めする位置決めのための一対の磁石押さえ部材43が備えられている。一対の磁石押さえ部材43は、非磁性体であって、例えばオーステナイト系ステンレス鋼等で形成され、モータロータ40の温度変化により締めしろの変化する比率を低減することができる。また、一対の磁石押さえ部材43は、ロータヨーク41の内周に圧入または焼きばめ等により固定される。
一般的に、モータにおけるセグメント状のマグネットの固定には接着剤を用いられることが多い。しかしながら、本実施形態1のモータ1は、真空雰囲気Vaに配置されているので、接着剤から放出されるアウトガスを低減する必要がある。また、真空雰囲気Vaに曝される接着剤は劣化し、接着強度の劣化のおそれがある。本実施形態のモータ1は、接着剤を用いずに、磁石押さえ部材43を用いることでマグネット42を固定することができる。その結果、本実施形態のモータ1は、マグネット42の位置決めを確実にすると共に、使用する環境雰囲気中で不純物ガスの放出を低減することができる。
図5に示すように、磁石押さえ部材43は、ロータヨーク41の内周径に沿った円環部44Aと、円環部44Aに設けられた複数の凸部である位置決め凸部44Bとを含む。位置決め凸部44Bは、磁石の極数をnとするとn−1個が円周方向に複数設けられている。隣合う位置決め凸部44B間は、マグネット42を収容する凹部となる。そして、マグネット42は、マグネット42を収容する凹部に挟み込まれる。マグネット42は、一対の磁石押さえ部材43の間に収容され、ロータヨーク41の内周に取り付けられる。本実施形態では、マグネット42は、ロータヨーク41の内周表面の密着面に沿って貼り付けられ、複数設けられている分割形状(セグメント構造)のセグメント磁石である。
図6に示すように、マグネット42の円周方向の端面は、位置決め凸部44Bに対しての接線の交点Mrが回転中心Zrよりもマグネット42寄りとなるようにしている。このため、磁石押さえ部材43は、マグネット42が位置決め凸部44Bよりも回転中心Zr側に飛び出すおそれを低減している。マグネット42の半径方向の外周部(外周表面)における回転方向の円弧の曲率半径をロータヨーク41の内周径の曲率半径よりも微小に小さい形状とすることで、マグネット42の半径方向の外周部を2点でロータヨーク41の内周径に線接触させることがより好ましい。これにより、モータ1は、マグネット42がロータヨーク41に対してがたつくおそれを低減することができる。
モータステータ30は、回転中心Zr側にハウジングインナ25を包囲するように筒状に設けられる。図4に示すように、モータステータ30は、ステータコア(ステータ磁極)31が上述した回転中心Zrを中心とした円周方向にティース31aが等間隔で並んで、バックヨーク31bが一体に配置される。モータステータ30は、このような一体コアに限られず、複数の分割されたステータコア31が上述した回転中心Zrを中心とした円周方向に等間隔で並んで配置される分割コアであってもよい。そして、ステータコア31がハウジングインナ25を介してハウジングアウタ22に固定される。
また、ステータコア31は、略同形状に形成された複数のティース31aが回転中心Zr方向に積層されて束ねられることで形成される。ステータコア31は、電磁鋼板などの磁性材料で形成される。モータステータ30は、複数のステータコア31が組み合わされると、環状形状を形成する。
図4に示す励磁コイル32は、線状の電線である。励磁コイル32は、ステータコア31のティース31aにインシュレータを介して集中巻きされる。励磁コイル32は、U相正巻、U相逆巻、U相正巻、V相正巻、V相逆巻、V相正巻、W相正巻、W相逆巻、W相正巻の順を繰り返すことで結線される。この構成により、磁極数を低減でき、かつ分布巻きに比較してコイルエンドが短くなることからコイル量を低減できる。その結果、コストを低減でき、モータ1をコンパクトにすることができる。なお、インシュレータは、励磁コイル32とステータコア31とを絶縁するための部材であり、耐熱部材で形成される。
励磁コイル32は、ステータコア31のティース31aの複数の外周に分布巻きされていてもよい。この構成により、磁極数が増え、磁束の分布が安定することからトルクリップルを抑制することができる。励磁コイル32は、バックヨーク31bの外周にトロイダル巻きされていてもよい。この構成により、分布巻きと同等の磁束分布を発生することができる。その結果、トルクリップルを抑制することができる。
このように構成されたステータコア31の複数のティース31aが周方向に並ぶことにより、モータステータ30は、ハウジングインナ25を包囲できる形状となる。つまり、ステータコア31は、ロータヨーク41の内側(回転中心Zrから遠い側)に磁気ギャップGとなる隙間を有して環状に配置される。
次に、隔壁部材60について説明する。図3に示すように、隔壁部材60は、天板部61と、胴部62と、口元フランジ部63とを含む。隔壁部材60は、図4に示すように、胴部62がステータコア31とロータヨーク41との間の磁気ギャップGに配置され、モータロータ40の配置された空間にモータステータ30の配置された空間の気体が流通しないように密閉する隔壁となる。
隔壁部材60は、天板部61と、胴部62と、口元フランジ部63とを深絞り用非磁性ステンレス鋼板に深絞り加工を施すことで、円筒形状とした一体成形品である。深絞り用非磁性ステンレス鋼板は、強加工に伴い誘起されるマルテンサイトに起因する磁化現象を抑えられるため、隔壁部材60越しにモータロータ40を駆動する際の界磁の低下を抑制することができる。隔壁部材60は、天板部61及び口元フランジ部63が数mmの肉厚であるのに対し、胴部は0.2mm以上0.5mm以下の肉厚まで引き延ばしている。このように、胴部62は、0.2mm以上0.5mm以下の肉厚まで引き延ばした形状とすることで、モータロータ40が回転する際の、磁界変化に伴う筒状の胴部62の部分に生じる渦電流損を抑えることができる。また、隔壁部材60は、加工硬化により内圧1気圧に十分耐える剛性を得ている。隔壁部材60の口元フランジ部63は、図示しないボルトにて、外側隔壁押さえ部材23を介して、ハウジングアウタ22にはめこまれたOリング等の密封部材29bに押し当てられる。この構造により、ボルトの軸力は分散され、口元フランジ部63を全周に渡り均一に密封部材29bに押し当てられることから、空間Vbと空間Vcとの間で気体の漏れを防ぐことができる。
隔壁部材60は、天板部61の回転中心Zr近傍に、貫通孔があり、この貫通孔を角度フィードバックシャフト10が貫通している。ハウジングインナ25の回転中心Zr近傍において、天板部61の内側端は、Oリング等の密封部材29cを介して、シールホルダ27と内側隔壁押さえ部材28で挟まれる。この構造により、ボルトの軸力は分散され、中心穴部を全周に渡り均一に、密封部材29cに押し当てられることから、空間Vbと空間Vcとの間で気体の漏れを防ぐことができる。そして、天板部61は、内側隔壁押さえ部材28がシールホルダ27に図示しないボルト等の固定部材で固定されることで、位置が固定されている。天板部61は、シールホルダ27と図示しないボルト等の固定部材で直接固定されていてもよい。天板部61は、シールホルダ27が固定されるハウジングインナ25と連結されることで、真空雰囲気Vaと大気雰囲気Atの間の圧力差による変形を抑制することができる。
隔壁部材60は、その一部が真空中に曝されるため、適用する真空度によっては、表面積の低減や、溶存気体の放出低減を図るべく、電解研磨や平滑化、酸化被膜などの表面処理が施される。ロータフランジ45は、適用する真空度によっては、電解研磨、平滑化処理、酸化被膜などの表面処理が施されることで、表面積を低減させ、溶存気体の放出を低減させることがより好ましい。
以上説明したように、ハウジングインナ25とハウジングアウタ22に囲まれた円環状の溝は、隔壁部材60でモータロータ40の配置された空間Vbとモータステータ30の配置された空間Vcとに区画され、大気側の気体が真空側に流通しないようにすることができる。
ハウジングアウタ22には真空側に連通した排気ポート80が設けてあり、排気ポート80には、図示しないバルブを介して真空ポンプPが接続されている。真空側に最も近い回転体と固定体の境界つまり、ハウジングフランジ24の内径部とロータフランジ45の外径部との間には、コンダクタンス係数を小さくするために微小な隙間が構成されており、気体が流れ難いようにしている。角度フィードバックシャフト10と連結フランジ47の間、連結フランジ47と連結板46との間、連結板46とロータフランジ45との間の各接合部は略密閉構造としており、気体が流れない。真空ポンプPは、少なくともチャンバ51内を減圧する場合、あるいは大気圧に戻す場合において、空間Vbの気体を排気ポート80を介して流路a1から流路a2へ真空吸引する。排気ポート80より空間Vbの気体が真空吸引されることにより、チャンバ51内を減圧する場合、あるいは大気圧に戻す場合に、回転型真空シール部材65から発生した磨耗粉、真空側軸受装置から飛散した潤滑剤などが真空チャンバ内に飛散してしまう可能性を低減できる。
図7は、実施形態1に係る回転型真空シール部材の拡大図である。シールホルダ27は、隙間の大きさを規定するとともに、回転型真空シール部材65を固定する。図3に示すように、シールホルダ27は、環状の部材である。図7に示すように、シールホルダ27は、角度フィードバックシャフト10の真空側小径部12の外周面12fに接しない位置に配置され、外周面12fを囲っている。シールホルダ27の外周面12fと対向する、内側表面の一部を突出させて、座ぐり穴肩部27e(突出部)と内側隔壁押さえ部材28との間にできる表面の凹部である座ぐり穴部には、回転型真空シール部材65の外径側にある固定部65bが圧入される。回転型真空シール部材65は、リップシールと呼ばれ、固定部65bと、真空側小径部12の外周面12fに接するリップ部65aと、固定部65bとリップ部65aとを連結する環状連結部65cとを備える。また、固定部65bは、内圧1気圧において、回転型真空シール部材65が抜けることがないように、シールホルダ27の座ぐり穴肩部27eおよび内側隔壁押さえ部材28で軸方向に挟まれ固定される。回転型真空シール部材65は、軸受装置15よりも圧力の異なる二つの空間のうち、低圧側の空間Vb寄りに配置されている。この構造により、回転型真空シール部材65が、軸受装置15に用いられている潤滑剤などを内部空間Vb側に飛散させないようにしている。
固定部65b、環状連結部65c及びリップ部65aは、断面形状が略U字形状となっており、固定部65b、環状連結部65c及びリップ部65aが囲む空間は、圧力の異なる二つの空間のうち、高圧側となる外部空間(大気雰囲気At)に向かって開口している。なお、回転型真空シール部材65の材質は、ポリエチレン又はポリテトラフルオロチレンであるとより好ましい。ポリエチレン又はポリテトラフルオロチレンは、回転型真空シール部材65の材質として、耐摩耗性、耐薬品性に優れ、角度フィードバックシャフト10との潤滑に好適である。上述したように、接触する角度フィードバックシャフト10の材質は、高炭素クロム軸受鋼鋼材、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、Siを3.4質量%以上含む析出硬化性ステンレスの高珪素合金のいずれか1つが好ましい。この構造により、回転型真空シール部材65の摩耗が抑制され、モータ1は、密封性を高める部品の交換頻度を低減することができる。
内側隔壁押さえ部材28は、径方向内径側面と外周面12fとの隙間s1の距離Δd1を適宜設定して真空度を調整することができる。距離Δd1は、例えば、0.001mm以上0.5mm以下が好ましい。同様に、座ぐり穴肩部27eは、径方向内径側と外周面12fとの隙間s2の距離Δd2を適宜設定して真空度を調整することができる。
図7に示すように、固定部65b、環状連結部65c及びリップ部65aが囲む空間の内部に付勢部材66が配置されている場合、リップ部65aの押圧力を角度フィードバックシャフト10側へより付勢することができる。付勢部材66は、例えばステンレス鋼などで、いずれも平板状の板状部66a及び板状部66bを屈曲部66cで折り曲げた、断面視でV字状となる弾性体である。付勢部材66は、板状部66a及び板状部66bの先端同士が広がるように付勢されている。なお、付勢部材66は、なくてもよい。
回転型真空シール部材65は、リップ部65aの弾性変形による圧力に加え、付勢部材66に付加された圧力を受けたリップ部65aが角度フィードバックシャフト10の外周面12fへ接触する。このため、モータ1は、リップ部65aが角度フィードバックシャフト10の外周面12fへ接触する接触圧を高めることができる。さらに、固定部65b、環状連結部65c及びリップ部65aが囲む空間は、圧力の異なる二つの空間のうち、高圧側となる外部空間(大気雰囲気At)側に向かって開口しているので、圧力の異なる二つの空間の圧力差は、リップ部65aが角度フィードバックシャフト10(真空側小径部12)の外周面12fへ接触する接触圧を高めることができる。これにより、モータ1は、空間Vbの真空を高くしても、高い密封性を維持できる。また、リップ部65aの内周側先端のみが外周面12fへ接触するだけでなく、環状連結部65cに近いリップ部65aの内周側基部の少なくとも一部も外周面12fへ接触する。その結果、リップ部65aの内周側が面で外周面12fへ接触し、外周面12fに摺動するので、密封性を維持できる。回転型真空シール部材65は、リップ部65aを備えているので、モータ1を磁性流体シールや磁気カップリング等、他の形式の回転型真空シールと比較し、安価に真空用ダイレクトドライブモータとすることができる。
リップ部65aが摩耗又は変形を生じても、付勢部材66が接触圧を維持するように作用する。このため、モータ1は、密封性を高める部品である回転型真空シール部材65の交換頻度を低減することができる。
以上説明したように、回転型真空シール部材65は、シールホルダ27に接する固定部65bと、角度フィードバックシャフト10の外周面12fに接するリップ部65aと、固定部65bとリップ部65aとを連結する環状連結部65cとを備える。付勢部材66は、リップ部65aの押圧力を角度フィードバックシャフト10側へ付勢する。
外側隔壁押さえ部材23、内側隔壁押さえ部材28、シールホルダ27は、真空中に曝されるため、オーステナイト系ステンレス、アルミ合金など、真空中での放出ガスが少なく、かつ放出ガスの成分が既知の真空用材料を用いることができる。外側隔壁押さえ部材23、内側隔壁押さえ部材28、シールホルダ27は、適用する真空度によっては、電解研磨、平滑化処理、酸化被膜などの表面処理が施されることで、表面積を低減させ、溶存気体の放出を低減させることがより好ましい。
以上説明したように、実施形態1のモータ1は、モータは、励磁コイル32及びステータ磁極を備えるモータステータ30と、筒状の部材の径方向外側にモータステータ30を固定するハウジングインナ25と、ステータ磁極の径方向外側に対して所定の磁気ギャップGを介して対向すると共に、円周方向に配列される複数のマグネット42を備え、ハウジング20に回転可能に支持されるモータロータ40と、モータロータ40の配置された空間Vbにモータステータ30の配置された空間Vcの気体が流通しないように密閉すると共に、磁気ギャップGに配置される隔壁部材60と、ハウジング20の径方向内側に回転可能に支持され、モータロータ40と連結された角度フィードバックシャフト10と、角度フィードバックシャフト10と、ハウジングインナ25との間の隙間を密封する回転型真空シール部材65と、を含む。
本実施形態1のモータは、上述した特許文献1に記載のようなモータロータと負荷体(搭載物)とを連結する回転中心Zrにある駆動軸シャフトが存在せず、モータロータ40と負荷体50とを直に連結している。一方、特許文献1に記載されたモータは、負荷体(搭載物)とモータロータとが、駆動軸シャフトを介して回転可能となっており、負荷体(搭載物)のイナーシャ(慣性)をm[kg・m2]、駆動軸シャフトねじれのばね定数をk[Nm/rad]として、モータロータが制御によりロックした場合、負荷体(搭載物)の回転方向の共振周波数fは下記式(1)で求めることができる。
f=(1/2π)×(k/m)1/2・・・(1)
式(1)に示すように、特許文献1に記載されたモータは、負荷体(搭載物)のイナーシャmが大きくなると、共振周波数fが低くなる。これに対して、本実施形態1のモータは、モータロータ20と負荷体(搭載物)50とが回転中心Zrにある角度フィードバックシャフト10を介して連結されておらず、角度フィードバックシャフト10の径方向外側で、モータロータ40と負荷体50とを直に連結している。つまり、モータロータ20は、角度フィードバックシャフト10を回転駆動することで、負荷体(搭載物)50を回転させておらず、モータロータ20の回転駆動により角度フィードバックシャフト10を
ねじりながら負荷体(積載物)50を回転させるものではない。このため、本実施形態1のモータは、特許文献1に記載されたモータと比較して、特許文献1に記載の駆動軸シャフトに相当する部材がなく駆動軸シャフトねじれのばね定数kが非常に大きくなる。本実施形態1のモータは、上述した式(1)において、駆動軸シャフトねじれのばね定数kが非常に大きいので、負荷体(搭載物)のイナーシャmが大きくなっても、共振周波数fを高いままに維持できる。なお、レゾルバロータ72A、72Bは、角度フィードバックシャフト10に取り付けられているが、レゾルバロータ72A、72Bは、負荷体(積載物)50の回転に連動して、回転されるので、レゾルバロータ72A、72Bが角度フィードバックシャフト10をねじりながら負荷体(積載物)50が回転するものではない。従って、レゾルバロータ72A、72Bは、角度フィードバックシャフト10を介して、負荷体(搭載物)50と連結されていても、共振周波数fに影響を与えない。
このように、モータロータ40と、封止される角度フィードバックシャフト10とを別体にすることにより、角度フィードバックシャフト10を小径化することができる。このため、回転型真空シール部材65の周速上限に余裕ができるため、圧力の異なる二つの空間を隔てる密封性を維持しつつモータロータ40の回転速度を高くできる。そして、モータ1は、圧力の異なる二つの空間を隔てる密封性を維持しつつ、モータロータ40が共振周波数を高めた回転を伝達可能になる。その結果、搬送装置110および半導体製造装置100は、モータロータ40で搬送する被搬送物の追随性、駆動速度を高めることができる。
(実施形態2)
図8は、回転中心を含む仮想平面で実施形態2のモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態2のモータ1は、実施形態1のモータ1と同様に、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータ30がモータロータ40よりも回転中心Zr寄りとなる配置としている。実施形態2のモータ1は、実施形態1のモータ1と比較して、連結フランジ47に代わり、角度フィードバックシャフト10を第1シャフトとして、さらに第2シャフト17を備えており、第2シャフト17を介して、角度フィードバックシャフト10と、連結板46とを連結している。
第2シャフト17は、テーパーシャンク部17dと、本体部17cと、フランジ部17bと、凸部17aとを軸方向に順に備えている。テーパーシャンク部17dは、角度フィードバックシャフト10に設けられたテーパー穴12Hに嵌め合わせられる。テーパーシャンク部17dには、回転中心Zrに沿って、雌ねじが切ってあり、角度フィードバックシャフト10の真空側小径部12の大気側軸端から開けられた穴に挿入された、ボルト17Lを締め付けることで、第2シャフト17と角度フィードバックシャフト10とが互いに締結される。
同様に、シールホルダ27とハウジングインナ25とは、大気側軸端からボルト25Lを締め付けることで互いに締結される。ハウジングインナ25は、ベース部25Aの外周の取付面25aでハウジングアウタ22の内周と嵌め合い、ボルト等の固定部材を介してハウジングアウタ22に固定されている。取付面25aは、モータステータ31の外周の外径よりも大きな径である。モータ1は、ボルト17L、ボルト25L及びハウジングアウタ22とハウジングインナ25とを締結しているボルトを大気側から取り外すことで、ハウジングインナに配置されている角度検出器70やモータステータ30などの真空中に曝されていない部材を一括して取り外せる構造としている。角度フィードバックシャフト10は、角度フィードバックシャフト10を第1シャフトとして、さらに第2シャフト17を備えており、回転型真空シール部材65は、第2シャフト17と、ハウジングインナ25との間の隙間を密封し、角度フィードバックシャフト10としての第1シャフト及び第2シャフト17は、角度フィードバックシャフト10の軸方向に、着脱可能に連結されている。この構造により、モータは、回転型真空シール部材を介して隔てられた2つの空間のうち、一方の空間から他方の空間に曝されていない、角度フィードバックシャフト10(第1シャフト)ごと部材を一括して取り外せるようになる。モータは、熱が加わった場合に損傷を受ける角度検出器70及びモータステータ30を取り外した状態で、密封性を維持しつつ、真空度に応じて100℃を超えるベーキング処理をすることができる。半導体製造装置100では、このような構造により、適用する真空度によっては100℃を超えるベーキング処理を施す場合があり、ハウジングインナ25ごと角度検出器70やモータステータ30などを取り外すことで、熱による角度検出器70の損傷や精度劣化、コイル被覆および図示しない電線の被覆などの樹脂材料の熱劣化を防ぐことができる。
なお、第2シャフト17の材質は、マルテンサイト系ステンレス、析出硬化系ステンレス、シリコン(Si)を3.4質量%以上含む析出硬化性ステンレスの高珪素合金のいずれかを用いることで、上述した回転型真空シール部材65のリップ部65aと摺動する部位の耐摩耗性を向上している。
(実施形態3)
図9は、回転中心を含む仮想平面で実施形態3のモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態3のモータ1は、実施形態1のモータ1と同様に、アウターロータ型と呼ばれ、モータステータ30がモータロータ40よりも回転中心Zr寄りとなる配置としている。実施形態2のモータ1は、実施形態1のモータ1と比較して、第3軸受装置14がなく、軸受装置15は、ハウジング20に回転自在に角度フィードバックシャフト10を支持するとともに、連結部材としてロータフランジ45Aを介してモータロータ40を支持している。
本実施形態3のモータ1は、モータロータ20と負荷体(搭載物)50とが回転中心Zrにある角度フィードバックシャフト10を介して連結されておらず、角度フィードバックシャフト10の径方向外側で、モータロータ40と負荷体50とを直に連結している。つまり、モータロータ20は、角度フィードバックシャフト10を回転駆動することで、負荷体(搭載物)50をさせておらず、モータロータ20の回転駆動により角度フィードバックシャフト10をねじりながら負荷体(積載物)50を回転させるものではない。このため、本実施形態3のモータは、特許文献1に記載されたモータと比較して、特許文献1に記載の駆動軸シャフトに相当する部材がなく駆動軸シャフトねじれのばね定数kが非常に大きくなる。本実施形態3のモータは、上述した式(1)において、駆動軸シャフトねじれのばね定数kが非常に大きいので、負荷体(搭載物)のイナーシャmが大きくなっても、共振周波数fを高いままに維持できる。なお、レゾルバロータ72A、72Bは、角度フィードバックシャフト10に取り付けられているが、レゾルバロータ72A、72Bは、負荷体(積載物)50の回転に連動して、回転されるので、レゾルバロータ72A、72Bが角度フィードバックシャフト10をねじりながら負荷体(積載物)50が回転するものではない。従って、レゾルバロータ72A、72Bは、角度フィードバックシャフト10を介して、負荷体(搭載物)50と連結されていても、共振周波数fに影響を与えない。
角度フィードバックシャフト10は、角度フィードバックシャフト10の内部を軸方向に貫通する貫通孔10Hを有している。排気ポート80は、蓋部75Aを貫通し、ロータリージョイント80aを介して、貫通孔10Hと接続されている。回転型真空シール部材65と、内側隔壁押さえ部材28との間の空間に連通する開口12Vと接続している。ロータリージョイント80aは、貫通孔10Hとを接続し、角度フィードバックシャフト10の回転を排気ポート80に非連動とする。真空ポンプPは、少なくともチャンバ51内を減圧する場合、あるいは大気圧に戻す場合において、空間Vbの気体を排気ポート80を介して流路a1から流路a2へ真空吸引する。排気ポート80より空間Vbの気体が真空吸引されることにより、チャンバ51内を減圧する場合、あるいは大気圧に戻す場合に、回転型真空シール部材65から発生した磨耗粉、真空側の第1軸受装置15Aから飛散した潤滑剤などが真空チャンバ内に飛散してしまう可能性を低減できる。内側隔壁押さえ部材28の回転中心Zr側は、角度フィードバックシャフト10に突出する突出部を有していることが好ましい。この突出部は、内側隔壁押さえ部材28と角度フィードバックシャフト10の距離Δd1を狭め、隙間自体が異物の混入を防ぐことができるラビリンスシールとなる。