JP2010190398A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この真空用軸受(転がり軸受)1は、ボール(転動体)4を保持する保持器5を備えるものであり、その内外輪2,3の二つの軌道2a、3aの軌道面およびボール4の転動面4aの少なくとも一つが、オイルまたはグリースによる潤滑被膜Jで潤滑されて用いられ、ボール4がステンレス製であり、潤滑被膜Jの厚みが1〜10g/m2の薄膜潤滑である。
【選択図】図1
Description
この場合、転がり軸受の全ての転動体を負荷転動体とした場合に比べて、転動体の個数が略半減するため、最大接触面圧は大きくなる。しかし、最大接触面圧は大きくなるものの、それ以上に前述の転動体同士の競り合いによる転動体の摩耗が軸受の耐久性を左右することが知られており、スペーサ用転動体を用いる構成が選定される場合が多くある。なお、スペーサ用転動体を用いる構成において、転がり軸受の耐久性を向上させるために、負荷転動体に窒化珪素(Si3N4)等のセラミックスを用い、スペーサ用転動体にSUS440C等のステンレスを用いることがある。ステンレス製の転動体を負荷転動体にしたときよりもセラミックスは摩耗が少ないので、負荷転動体の耐摩耗性を高くすることができる。
保持器を用いた転がり軸受の場合は、薄膜潤滑時は、保持器の表面(特にポケット内面とその周辺)の潤滑油が転動体に転移し、その転移した潤滑油が、今度は転動体と転動面(レース)との間を潤滑する。つまり、保持器は、潤滑油のリザーバとして機能する。そのため、保持器を用いた転がり軸受の寿命をさらに向上させる上では、転動体に転移した潤滑油によって、潤滑油の付着面とレースとがより円滑に転動することが重要な課題である。
前述のように、セラミックス製の負荷転動体の方がステンレス製の負荷転動体よりも耐磨耗性に優れている。しかし、セラミックスとステンレスとの潤滑油に対する濡れ性を比較すると、セラミックスはステンレス程の濡れ性を持たないのである。つまり、セラミックスはステンレスに比べて潤滑油を弾いてしまう。
なお、本明細書において、DFO潤滑とは、転がり軸受の二つの軌道面および転動体の転動面の少なくとも一つを潤滑する潤滑被膜が、以下の(1)〜(3)の3種類のうちのいずれかであるものをいう。
(2) 上記(1)に、更にフッ素樹脂を添加してなる潤滑被膜。
(3) アルキル化シクロペンタンまたはポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑剤からなる潤滑被膜。
Δd/ID<0.187 (式1)
図1に示すように、この真空用軸受1は、外周面に軌道2aを有する内輪2と、内周面に軌道3aを有する外輪3と、これら軌道2a、3a同士の間に転動自在に介装されるステンレス製の複数の転動体4(同図の例ではボール)と、これら複数の転動体4を回転自在に保持する保持器5とを備えている。そして、二つの軌道2a、3aの軌道面および転動体4の転動面4aは、潤滑量を管理したオイルまたはグリースによる潤滑被膜Jで潤滑されている。
以下、この潤滑被膜Jの厚みを、1〜10g/m2の所定の薄膜潤滑とする根拠について確認試験の結果とともに詳しく説明する。
このアウトガス試験装置は、真空用軸受1から出たガスを、コンダクタンスの判っているオリフィス部を通過させて、オリフィス前後の圧力差(P1−P2)を調べることで以下の(式2)により、オリフィスを通過したガス量を測定することができる。
この測定方法によって、潤滑剤として塗布したフッ素オイルの被膜厚さをパラメータにして、放出ガス量の変化を調べた。この測定方法により、上記潤滑被膜Jの被膜厚さと放出ガス量との関係が求められる。結果を図3に示す。なお、測定条件は以下のとおりである。
潤滑剤:フッ素オイル(塗布)
軸受装着状態:横置き、静置
温度:100℃
圧力:8×10-6Pa
潤滑剤:フッ素オイル(塗布)
パラメータ:潤滑剤の被膜厚さ
軸受姿勢:垂直軸
回転速度:150min-1
温度:100℃
圧力環境:真空
終了条件:1.軸受トルクが初期値の2倍を超えた時。
2.あるいは、総回転数が107回転を超えた時(注)。
(注)107回転は、薄肉軸受の走行距離として必要十分距離とされる回転数。
図3示す耐久試験結果によれば、上記潤滑被膜Jの被膜厚さが0.5g/m2のときは、107回転に到達することなく、寿命となっている。これに対し、被膜厚さが1g/m2のときは、107回転に達して打ち切りとなっている。つまり、同図に示す結果から、真空用軸受1の耐久性からいえば、潤滑被膜Jの被膜厚さは1g/m2以上あればよいということがわかる。
以下、実施例について説明する。なお、以下説明する各実施例(および比較例)での転がり軸受の構成は、各例中に差異を示す点を除き、上記実施形態のものと同じである。
本発明の効果を確認するために耐久試験を行った。試験条件は以下のとおりである。ここで、実施例1の真空用軸受1と比較例1のそれとは、転動体が、実施例1がステンレス製のボールであり、比較例1がセラミックス製のボールである点のみが異なる。
[試験条件]
軸受寸法:内径φ15mm
環境:真空
回転条件:揺動180度、150サイクル/min
試験荷重:アキシャル荷重のみ
潤滑:フッ素オイル2.8g/m2塗布
温度:常温
試験結果を図4に示す。
ここで、ボール4の耐磨耗性を考えると、ボール4がセラミックス製である比較例1の方が寿命が勝りそうであるが、逆の結果である。ボール4の表面を観察すると、実施例1でのステンレス製のボール4は、滑らかに全面を覆うようにフッ素オイルが付着しており、一方、比較例1でのセラミックス製のボール4は、フッ素オイルを弾いていた。
実施例1に続き、本発明の効果を確認するために薄肉軸受の例により耐久試験を行った。試験条件は以下のとおりである。ここで、この実施例2において、上記実施例1とは、試験条件のうち軸受寸法(薄肉軸受)および回転条件が異なる。但し、「薄肉軸受」は、その軸受内径をIDとし軸受幅をΔdとするとき、以下の(式1)であらわされる薄肉軸受である。
Δd/ID<0.187 (式1)
軸受寸法:内径φ44mm
環境:真空
回転条件:揺動90度、200サイクル/min
試験荷重:アキシャル荷重のみ
潤滑:フッ素オイル2.8g/m2塗布
温度:常温
試験結果を図5に示す。
このように、真空用軸受1を薄肉軸受とした場合でも、上記実施例1同様、実施例2と比較例2とでは、介装されたボール4のみが異なるのであるから、保持器5から同じ量のフッ素オイルが供給されたものと考えると、濡れ性の良いステンレス製のボール4で構成される実施例2の軸受が、比較例2の軸受よりも濡れ性が良いため潤滑が良くなり、濡れ性の悪いものと比べて軸受寿命を延す効果があることが確認された。
実施例3は、保持器5を樹脂材料製とし、その樹脂材料としてPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、あるいはPI(芳香族ポリイミド:例えばベスペル(商品名))を用いた例である。なお、図示は省略する。
つまり、樹脂材料製の保持器5は、保持器自体が局所的に変形し易いので、二個のボール4によって保持器5の柱が挟まれて、内輪2や外輪3に押しつけられることがあっても、容易に変形して、内外輪2,3との摺動面圧を自動的に低下させることができる。それにより、金属製の保持器で発生する保持器の飛び出しや破損がなくなり、また、保持器の摩耗も少なくなる。
つまり、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または芳香族ポリイミド(PI)であれば、その融点が高く(例えばPEEKは343℃)、そのため、250℃程度まで使用可能である。加えてこれら樹脂材料は、低アウトガス性に優れているため、高温且つ高真空環境下であっても、放出ガス量が少なく環境を汚染しない。したがって、高温高真空環境下で耐久性のある、低アウトガス性に優れる軸受を構築する上で好適である。
実施例4は、潤滑被膜Jが、以下の(1)〜(3)の3種類のうちのいずれかであるDFO潤滑による被膜とした例である。
(1) 官能基を有するフッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑被膜。
(2) 上記(1)に記載の潤滑被膜に、更にフッ素樹脂を添加してなる潤滑被膜。
(3) アルキル化シクロペンタンまたはポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑剤からなる潤滑被膜。
同図に示すように、DFO潤滑による被膜は、フッ素油を用いた潤滑被膜に比べて、放出ガスが少なく、アウトガス性に優れていることがわかる。
以上説明したように、保持器5を有するこの真空用軸受1において、転動体であるボール4をステンレス製とし、潤滑被膜Jの厚みを1〜10g/m2の薄膜潤滑とすれば、その寿命をさらに向上させることができることが確認された。
例えば、上記実施形態ないし各実施例では、転動体がボールの例で説明したが、これに限定されず、転動体がローラ(円筒ころ)であっても、ローラ(円筒ころ)をステンレス製とし、潤滑被膜Jの厚みを1〜10g/m2の薄膜潤滑とすれば、その寿命をさらに向上させることができる。
2 内輪
3 外輪
4 ボール(転動体)
5 保持器
Claims (4)
- 外周面に軌道を有する内輪と、内周面に軌道を有する外輪と、これら軌道同士の間に転動自在に介装される複数の転動体と、該複数の転動体を回転自在に保持する保持器とを備え、前記二つの軌道の軌道面および転動体の転動面の少なくとも一つが、オイルまたはグリースによる潤滑被膜で潤滑されて用いられる転がり軸受であって、
前記転動体がステンレス製であり、前記潤滑被膜の厚みが1〜10g/m2の薄膜潤滑であることを特徴とする転がり軸受。 - 前記保持器の材料は、樹脂材料であり、該樹脂材料がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または芳香族ポリイミド(PI)であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
- 前記潤滑被膜が、以下の(1)〜(3)の3種類のうちのいずれかであるDFO潤滑による被膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の転がり軸受。
(1) 官能基を有するフッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑被膜。
(2) 上記(1)に記載の潤滑被膜に、更にフッ素樹脂を添加してなる潤滑被膜。
(3) アルキル化シクロペンタンまたはポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑剤からなる潤滑被膜。 - 前記転がり軸受の軸受内径と軸受幅との関係が、軸受内径をIDとし軸受幅をΔdとするとき、以下の(式1)であらわされる薄肉軸受であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受。
Δd/ID<0.187 (式1)
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JP2009038120A JP2010190398A (ja) | 2009-02-20 | 2009-02-20 | 転がり軸受 |
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CN112303107A (zh) * | 2020-10-09 | 2021-02-02 | 贵州兴利旺轴承有限公司 | 一种高转低噪探入式轴承密封组件 |
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-
2009
- 2009-02-20 JP JP2009038120A patent/JP2010190398A/ja active Pending
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