JP2004124951A - 転がり軸受用保持器及び転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受用保持器及び転がり軸受 Download PDF

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松山 直樹
Kenji Yakura
矢倉 健二
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Abstract

【課題】転動体案内形の合成樹脂製保持器を用いた場合においても、高速回転時に転動体の運動を阻害することなく、低発熱で信頼性の高い転がり軸受を提供する。
【解決手段】内輪1と外輪2との間に複数の玉3が玉案内形の保持器4を介して周方向に転動可能に配設されたアンギュラ玉軸受において、前記保持器4を合成樹脂製とし、且つ該合成樹脂の素材として、曲げ弾性率10000MPa以上、比重2以下、吸水率1%以下(23°C、浸漬24時間)、ガラス転移点80°C以上のものを用いる。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転動体案内形の合成樹脂製保持器及び該保持器を備えた転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
転がり軸受の一例である工作機械主軸用軸受においては、工作精度上向上のため、振動、音響等の特性が良好であることが求められる。また、近年においては、取り扱いやすさや、環境、コストに有効なグリース潤滑での高速回転性(高回転速度で長時間安定して使用できること)が求められている。
【0003】
このような特性を満たすために、従来では、保持器を軽量で柔軟性に優れる合成樹脂製とし、該合成樹脂材としては、常温状態で軸受を使用する場合はポリアミド66やポリアミド46にガラス繊維等の短繊維を強化材として混入させた複合材料が多く用いられている。
また、アンギュラ玉軸受では、高速回転域で使用する場合は、ポリアミド系のプラスチック製保持器ではなく、外輪案内形のフェノール樹脂製保持器が多く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、転がり軸受に対してより高速化の要求が強くなりグリース潤滑でdm n値が100万も珍しくはなくなってきた。高速化に必要な技術は多々あるが、保持器も高速化に重要な役目を担っている。
保持器は転動体を保持し、転動体の公転、自転を円滑に回転させる役割をもっているが、逆に軸受回転時の遠心力による保持器の振れまわりや保持器の変形により転動体を拘束して転動体の運動を阻害してしまい、高速回転時に支障をきたしてしまうことがある。
【0005】
このような転動体の運動の阻害は、軌道輪案内の保持器に比べて転動体案内の保持器の方がより顕著に起こってしまう。
即ち、転動体案内の保持器では、高速回転時の遠心力による保持器が振れ回りにより、転動体の持たせ部分が転動体を拘束して異常昇温し最終的に軸受の焼付きに至ることもある。
【0006】
また、保持器の転動体の持たせ部と転動体との接触部分でのすべり摩擦により発熱し、転動体もたせ部分の温度が上がって軟化し、最終的には溶融してしまう問題もある。
従って、高速回転領域で使用される軸受には、外輪案内形のフェノール樹脂製保持器を採用することが主流となっている。
【0007】
一方で、外輪案内形のフェノール樹脂製保持器を用いた転がり軸受においては、潤滑状態(油膜形成状態)が悪化すると保持器音が出る問題があり、転動体案内形の樹脂製保持器と比較すると音に関しては安定性に欠ける部分がある。
本発明はこのような技術的背景を鑑みてなされたものであり、高速回転時に転動体の運動を阻害することなく、低発熱で信頼性の高い転動体案内形の合成樹脂製保持器及び該保持器を備えた転がり軸受を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、転がり軸受の内輪と外輪との間に配設される複数の転動体を周方向に転動可能に保持する転動体案内形の転がり軸受用保持器において、
曲げ弾性率10000MPa以上、比重2以下、吸水率1%以下(23°C、浸漬24時間)、ガラス転移点80°C以上の合成樹脂を素材としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、内輪と外輪との間に複数の転動体が転動体案内形の保持器を介して周方向に転動可能に配設された転がり軸受において、
前記保持器を合成樹脂製とし、且つ該合成樹脂の素材として、曲げ弾性率10000MPa以上、比重2以下、吸水率1%以下(23°C、浸漬24時間)、ガラス転移点80°C以上のものを用いたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記転動体をセラミック製としたことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項2又は3において、dm n値(dm :軸受内径と外径との平均(mm)×n:軸受回転速度(min−1))が80万以上で使用されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4のいずれか一項において、工作機械主軸用スピンドルに使用されることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1は本発明の転がり軸受の実施の形態の一例である玉案内形の合成樹脂製保持器を備えたアンギュラ玉軸受を説明するための要部断面図、図2は玉案内形の合成樹脂製保持器の変形例を示す要部断面図、図3は荷重に対する保持器の変形量の計算に用いた保持器形状の一例を示す要部断面図、図4は保持器に負荷した荷重と保持器の変形量との関係を素材毎に比較したグラフ図、図5は回転数と保持器に作用する力との関係を示すグラフ図、図6は保持器素材の比重と保持器に作用する力との関係を示すグラフ図、図7は比較例としての外輪案内形のフェノール樹脂製保持器を備えたアンギュラ玉軸受を示す要部断面図、図8は実施例及び比較例毎に回転数と外輪の上昇温度との関係を比較したグラフ図、図9〜図14は本発明の他の実施の形態を説明するための図である。
【0013】
本発明の実施の形態の一例であるアンギュラ玉軸受は、図1に示すように、内輪1と外輪2との間に転動体としての複数の玉(例えばセラミック玉)3が玉案内形の保持器4を介して周方向に転動可能に配設されている。
ここで、この実施の形態では、保持器4を合成樹脂製とし、且つ該合成樹脂の素材として、曲げ弾性率10000MPa以上、比重2以下、吸水率1%以下(23°C、浸漬24時間)、ガラス転移点80°C以上のものを用いている。
【0014】
これにより、例えば工作機械主軸用スピンドルの支持に玉案内形の合成樹脂製保持器4を組み込んだ転がり軸受を用いた場合においても、軸受の高速回転時(dm n値80万以上)の遠心力による保持器4の変形を抑制し、該保持器4が玉3を拘束することにより生じる異常昇温を防止することができる。この結果、高速回転時に玉3の運動を阻害することなく、低発熱で信頼性の高いものとすることができる。
【0015】
なお、図1では、軸方向の左右の肉厚が同一の保持器4を組み込んだアンギュラ玉軸受を示したが、図2に示すように、軸方向の左右の肉厚が相違した保持器4を組み込んだアンギュラ玉軸受にも同様に本発明を適用できるのは勿論である。
保持器4を形成する合成樹脂の素材例としては、特許第2628674号公報に記載の直鎖状ポリフェニレンサルファイド樹脂(直鎖状PPS樹脂)に強化繊維としてガラス繊維30〜40%若しくはカーボン繊維15〜30%を混入したもの、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に強化繊維としてガラス繊維30〜40%若しくはカーボン繊維15〜30%を混入したもの、ポリイミド樹脂に強化繊維としてガラス繊維30〜40%若しくはカーボン繊維15〜30%を混入したもの等が挙げられる。
【0016】
直鎖状PPS樹脂は、重合段階で直鎖状に分子鎖を高分子量にまで生長させたもので、優れた耐熱性、耐油性、耐薬品性を示すと同時に高い機械的特性を有している。
直鎖状PPS樹脂は、特開昭61−7332号公報及び特開昭61−66720号公報に開示の方法により製造することができる。
【0017】
この直鎖状PPS樹脂は重合後、高温下で熱処理を受けておらず、また、架橋剤や分岐剤などの添加もなされていないが、分子量の目安となる溶融粘度は、溶融温度310°Cで剪断速度が200sec−1で測定した場合、700ポアース以上である。このような直鎖状PPS樹脂は呉羽化学工業(株)より「フォートロンKPS(商品名)」として入手することができる。
【0018】
直鎖状PPS樹脂は前述のような靭性等の機械的性質が分岐状PPS樹脂に比べて優れていることに加え、同一分子量では分岐状PPS樹脂と比較して分子鎖間の絡み合いが大きくなるため、組成物の靭性を著しく向上させることができる。また、直鎖状PPSは成形収縮率が小さいため、成形物の寸法精度を向上させることもできる。
【0019】
次に、合成樹脂の素材として、曲げ弾性率10000MPa以上、比重2以下、吸水率1%以下(23°C、浸漬24時間)、ガラス転移点80°C以上のものを用いる根拠について説明する。
合成樹脂の曲げ弾性率を10000MPa以上としたのは、保持器の素材として曲げ弾性率の大きい合成樹脂を採用することで高速回転時の保持器変形を抑えて転動体を拘束しないようにするためである。
【0020】
表1の▲1▼〜▲4▼の合成樹脂を素材とした保持器に荷重を負荷した際の保持器変形量を計算した結果を図4に示す。なお、図3に保持器変形量の計算に用いた保持器形状の一例を示す。
【0021】
【表1】
Figure 2004124951
【0022】
次に、下記の条件で各回転数における保持器に作用する力を計算した結果を図5に示す。
保持器の内外径変肉:0.06(保持器アンバランス要因)
ポケットピッチ不同:0.30(保持器アンバランス要因)
保持器の比重   :2(保持器重量に影響)
保持器半径方向動き量:0.5mm(保持器回転中心のズレ量)
図4及び図5から判るように、高速回転になれば、保持器に作用する力も大きくなり保持器の変形量も大きくなるが、この変形量は合成樹脂の曲げ弾性率が大きいほど小さくなる。
【0023】
従って、保持器に曲げ弾性率が大きい合成樹脂素材を使用することにより、軸受の高速回転時の遠心力により保持器に力が作用しても変形を小さく抑えることができる。但し、曲げ弾性率を上げるために合成樹脂に混入する強化繊維の量が多くなりすぎたり、強化繊維として金属繊維を採用すると比重が大きくなって遠心力により保持器に作用する力を増大させてしまい、結局は保持器の変形を大きくしてしまう。
【0024】
上記の条件で、回転数20000min−1時の各比重毎の保持器に作用する力を計算した結果を図6に示す。図6から、比重が大きい程、遠心力により保持器に作用する力が大きくなるのが判る。
この実施の形態では、合成樹脂の曲げ弾性率を10000MPa以上とした場合に、dm n値80万以上の高速回転時の遠心力による保持器の変形を抑制し、該保持器が転動体を拘束することによる異常昇温を防止することを条件に、合成樹脂の比重を2以下、好ましくは1.5以下としている。
【0025】
また、ガラス転移点に関しては、ガラス転移点以上に温度が上がると分子の運動性が大きくなり(ゴム状態)、保持器の変形が大きくなってしまうため、曲げ弾性率の大きい素材を使用しても転動体を拘束してしまう方向に働いてしまう。通常、高温で使用される場合はアニーリングを施して結晶化を進め、組織の構造の安定化を図ったりしているが、逆に脆くなるという欠点もある。
【0026】
通常、工作機械主軸で使用される温度範囲は、機械の精度を確保する意味でも(熱変形を抑え加工精度を維持する)運転時の温度は60°C以下が一般的な温度であるため、ガラス転移点が80°C以上あれば、使用に問題ないといえる。
更に、吸水率に関しては、保持器を成形加工若しくは機械加工で製作した場合、大気中での保管だと、吸水率が大きいと水分を吸ってしまい寸法変化が生じてしまう。従って、当初狙っていた最適な保持器寸法からずれて安定した性能が得られなくなってしまう問題がある。特に転動体案内の場合、保持器の半径方向の動き量が性能を左右するため、製作時の寸法を維持する必要がある。そこで、吸水率を1%以下(23°C、浸漬24時間)と低くして安定した寸法の保持器を提供できるようにしている。
【0027】
次に、アンギュラ玉軸受を用いての外輪温度上昇及び高速限界の回転評価試験について説明する。
試験軸受としては、図1に示す玉案内形の合成樹脂製保持器4を組み込んだアンギュラ玉軸受と図7に示す外輪案内形のフェノール樹脂製保持器4aを組み込んだアンギュラ玉軸受とを、それぞれ2列背面組合せ(DB組合せ定位置予圧)としたものを用いた。
【0028】
保持器以外の軸受仕様は、いずれも内径65mm、外径100mm、幅18mm、玉径7.144mm、玉数28個、接触角18°とした。
また、図1に示すアンギュラ玉軸受については、保持器4の合成樹脂素材を表1の▲1▼〜▲4▼としたものを用い、▲1▼の合成樹脂素材(ポリアミド66)の保持器4が組み込まれたアンギュラ玉軸受を比較例1、▲2▼の合成樹脂素材(ポリアミド46)の保持器4が組み込まれたアンギュラ玉軸受を比較例2、▲3▼の合成樹脂素材(直鎖状PPS樹脂)の保持器4が組み込まれたアンギュラ玉軸受を本発明例1、▲4▼の合成樹脂素材(PEEK)の保持器4が組み込まれたアンギュラ玉軸受を本発明例2とした。
【0029】
なお、図7に示す外輪案内形のフェノール樹脂製保持器4aを組み込んだアンギュラ玉軸受は従来高速領域で使用していた例として従来例1とした。
試験条件は次の通りである。
潤滑:グリース(イソフレックスNBU15(商品名))
組込時アキシアルばね定数:100N/μm
(予圧の影響を受けないように同じばね定数に設定)
駆動方法:ベルト
周囲温度:25°C
試験結果を図8に示す。
【0030】
図8から判るように、保持器の合成樹脂素材の曲げ弾性率が10000MPa未満の比較例1及び比較例2は回転数が16000min−1までは外輪温度上昇はほぼ同等であるが、外輪温度上昇が30°Cを越えると比較例1が急激に外輪温度の上昇率が高くなり、比較例2と比較して高速限界も低い結果となった。
この時の比較例1の保持器4のリップ部(玉もたせ部)を調査したところ、一部溶融していた。
【0031】
比較例1及び比較例2の保持器の合成樹脂素材の曲げ弾性率に大きな差はないが、軸受の温度が55°C以上となり比較例1の保持器4の合成樹脂素材のガラス転移点近傍となり、保持器強度が急激に落ちて保持器4が変形し、玉3を拘束した結果であると推定される。
比較例2は回転数が20000min−1で急激に外輪温度が上昇し、23000min−1 付近で高速限界に至った。
【0032】
これは、比較例2の保持器4の合成樹脂素材の曲げ弾性率が10000MPa未満と低いため、保持器の強度不足が影響して遠心力による保持器変形により玉が拘束されたためと推測される。
一方、保持器の合成樹脂素材の曲げ弾性率が10000MPa以上と大きい本発明例1は急激な外輪温度上昇の変曲点もなく、25000min−1まで問題なく回転が可能であった。
【0033】
また、本発明例1は従来例1と比較すると低速回転域では外輪の上昇温度は低く低発熱であった。但し、22000min−1を超えるあたりで従来例1の外輪の上昇温度より高い結果となったが比較例1及び2と比較すると性能は大幅に上回っている。
また、保持器の合成樹脂素材の曲げ弾性率が20200MPaと最も大きい本発明例2は一番安定しており、回転数25000min−1までの外輪の温度上昇も最も低い結果となった。
【0034】
次に、複列円筒ころ軸受(NN3019)を用いての外輪温度上昇及び高速限界の回転評価試験について説明する。
試験軸受としては、図9に示すように、内輪101と外輪102との間に複数のころ103が片持ちころ案内形の合成樹脂製保持器104を介して周方向に転動可能に配設された複列円筒ころ軸受と、図10に示すように、内輪101と外輪102との間に複数のころ103が片持ちころ案内形の銅合金製保持器104aを介して周方向に転動可能に配設された複列円筒ころ軸受とを用いた。
【0035】
保持器以外の軸受仕様は、いずれも内径95mm、外径145mm、幅37mm,ころ径11mm、ころ長さ11mm、ころ数28個×2とした。
また、図9に示す複列円筒ころ軸受については、保持器104の合成樹脂素材を表1の▲1▼、▲2▼、▲4▼としたものを用い、▲1▼の合成樹脂素材(ポリアミド66)の保持器104が組み込まれた複列円筒ころ軸受を比較例3、▲2▼の合成樹脂素材(ポリアミド46)の保持器104が組み込まれた複列円筒ころ軸受を比較例4、▲4▼の合成樹脂素材(PEEK)の保持器104が組み込まれた複列円筒ころ軸受を本発明例3とした。
【0036】
なお、図10に示す片持ちころ案内形の銅合金製保持器104aを組み込んだ複列円筒ころ軸受は従来標準的に使用される例として従来例2とした。
試験条件は次の通りである。
潤滑:グリース(イソフレックスNBU15:商品名)
組込時ラジアルすきま:0μm
駆動方法:ベルト
周囲温度:25°C
図11に結果を示す。
【0037】
図11から判るように、この例では保持器が片持ち形状なため、アンギュラ玉軸受以上に保持器の曲げ弾性率(剛性)が性能に影響をしている。
保持器の合成樹脂素材の曲げ弾性率が10000MPa未満の比較例3及び比較例4は回転数が3000min−1までは外輪温度上昇はほぼ同等であるが、回転数が3000min−1を越えると比較例3が急激に外輪温度の上昇率が高くなり、比較例4と比較して高速限界も低い結果となった。
【0038】
比較例4は回転数が5000min−1を過ぎると急激に外輪温度が上昇し、8000min−1 付近で高速限界に至った。
これは、保持器の合成樹脂素材の曲げ弾性率が10000MPa未満と低いことに加えて、保持器が片持ち形状のため、軸受回転時の遠心力による保持器の変形が円環部のみでなく柱部も持ち上がるように変形してしまうことにより保持器の動き量が大きくなり、また、回転中の保持器偏心量が大きくなって保持器に作用する力も増え、更に保持器を変形させてころを拘束する形となってしまうためと推測される。
【0039】
保持器の合成樹脂素材の曲げ弾性率が20200MPaと最も大きい本発明例3は一番安定しており、回転数13000min−1までの外輪の温度上昇も保持器の強度が本発明例3より大きい従来例2(銅合金製保持器)より低く最も低い結果となった。
これは、単に銅合金と合成樹脂の摩擦係数の影響だけでなく比重の重い銅合金の方が保持器に作用する力が大きくなり、ころを拘束する力がPEEK樹脂に比べ大きくなったことが要因と推定できる。
【0040】
なお、複列円筒ころ軸受の保持器としては、図9に限らず、図12の片持ちころ案内形の合成樹脂製保持器104や、図13の両円環ころ案内形の合成樹脂保持器104bを用いることができ、また、図14に示すように、内輪111と外輪112との間に複数の玉113が合成樹脂製の冠形保持器114を介して周方向に転動可能に配設された深溝玉軸受に本発明を適用しても複列円筒ころ軸受の場合と同様なことがいえる。
【0041】
更に、図示は省略するが、単列円筒ころ軸受にも同じことがいえる。軸受のタイプ、用途に限らず、転動体案内形の保持器で高速回転する軸受全てにおいて本発明は有効である。
【0042】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明によれば、高速回転時に転動体の運動を阻害することなく、低発熱で信頼性の高い転動体案内形の合成樹脂製保持器及び該保持器を備えた転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受の実施の形態の一例である玉案内形の合成樹脂製保持器を備えたアンギュラ玉軸受を説明するための要部断面図である。
【図2】玉案内形の合成樹脂製保持器の変形例を示す要部断面図である。
【図3】荷重に対する保持器の変形量の計算に用いた保持器形状の一例を示す要部断面図である。
【図4】保持器に負荷した荷重と保持器の変形量との関係を素材毎に比較したグラフ図である。
【図5】回転数と保持器に作用する力との関係を示すグラフ図である。
【図6】保持器素材の比重と保持器に作用する力との関係を示すグラフ図である。
【図7】比較例としての外輪案内形のフェノール樹脂製保持器を備えたアンギュラ玉軸受を示す要部断面図である。
【図8】実施例及び比較例毎に回転数と外輪の上昇温度との関係を比較したグラフ図である。
【図9】本発明の転がり軸受の他の実施の形態である片持ちころ案内形の合成樹脂製保持器を備えた複列円筒ころ軸受を説明するための要部断面図である。
【図10】比較例としての片持ちころ案内形の銅合金製保持器を備えた複列円筒ころ軸受を示す要部断面図である。
【図11】実施例及び比較例毎に回転数と外輪の上昇温度との関係を比較したグラフ図である。
【図12】片持ちころ案内形の合成樹脂製保持器の変形例を示す要部断面図である。
【図13】両円環ころ案内形保持器を備えた複列円筒ころ軸受を示す要部断面図である。
【図14】冠形保持器を備えた深溝玉軸受を示す要部断面図である。
【符号の説明】
1…内輪
2…外輪
3…玉(転動体)
4…合成樹脂製保持器

Claims (5)

  1. 転がり軸受の内輪と外輪との間に配設される複数の転動体を周方向に転動可能に保持する転動体案内形の転がり軸受用保持器において、
    曲げ弾性率10000MPa以上、比重2以下、吸水率1%以下(23°C、浸漬24時間)、ガラス転移点80°C以上の合成樹脂を素材としたことを特徴とする転がり軸受用保持器。
  2. 内輪と外輪との間に複数の転動体が転動体案内形の保持器を介して周方向に転動可能に配設された転がり軸受において、
    前記保持器を合成樹脂製とし、且つ該合成樹脂の素材として、曲げ弾性率10000MPa以上、比重2以下、吸水率1%以下(23°C、浸漬24時間)、ガラス転移点80°C以上のものを用いたことを特徴とする転がり軸受。
  3. 前記転動体をセラミック製としたことを特徴とする請求項2記載の転がり軸受。
  4. m n値(dm :軸受内径と外径との平均(mm)×n:軸受回転速度(min−1))が80万以上で使用されることを特徴とする請求項2又は3記載の転がり軸受。
  5. 工作機械主軸用スピンドルに使用されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の転がり軸受。
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