JP2008016834A - 有機光電変換素子の製造方法及び有機光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗布プロセスを用いて長寿命な有機光電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】有機光電変換素子の活性層に顔料を含有させると共に、活性層を塗布法により形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機光電変換素子の製造方法及び有機光電変換素子に関するものである。
有機半導体を用いた太陽電池(有機太陽電池)の構造は様々であり、例えば、色素増感型、バルクヘテロ接合型、ヘテロpn接合型、ショットキー型などが提案されている(特許文献1、非特許文献1,2参照)。
また、前記のバルクヘテロ接合型の太陽電池の製造方法として、ポリチオフェン誘導体やポルフェニレンビニレン誘導体とフラーレン(C60)誘導体とを混合したものを塗布により成膜する方法が報告されている(特許文献2、非特許文献3参照)。なお、これにより製造される太陽電池では、混合層の中で、共役高分子とフラーレン化合物とが相分離した構造となっている旨が報告されている。
一方で、有機顔料は、フタロシアニン、キナクリドン、ピロロピロールに代表されるように、高結晶性色素材料であり、光照射に対する高い耐久性を有していることが知られている。
特開平8−500701号公報 特開平6−179802号公報 「有機薄膜太陽電池の最新技術」,2005年11月,シーエムシー出版 「色素増感太陽電池−技術と市場の最新動向−」,2004年7月,東レリサーチセンター Material Reseach Society Bulletin, vol.30, No.1, 33(2005)
太陽電池は、いずれも光を吸収して発電を行なう。有機太陽電池の発電のメカニズムは、通常、以下の過程に分解して説明される。
過程1:光吸収による励起状態(励起子)の生成。
過程2:励起子のイオン対(所謂キャリア)への解離。
過程3:イオン対が分離して電極に到達。
本発明においては、前記の過程1と過程2の起こる場所(層)を活性層と呼ぶ。
ところで、励起子は、通常は、その寿命の中で動ける範囲(励起子拡散距離)が限定されている。具体的には、この励起子の拡散距離は、一般に、10nm程度の小さい距離である。このため、生成した励起子は、生成した場所と解離場所とがその動ける範囲の中にあるものしか光起電力としては利用できない。
そこで、励起子の解離場所を増やすことにより、高効率が達成できると考えられる。
上記の観点から、有機太陽電池の構造においては、前記の過程2(即ち、励起子がイオン対に解離する過程)を効率よく進行させるために、異なる物質の界面、不純物、空乏層、蓄積層などの電荷移動の起こりやすい場を備えさせ、この電荷移動の起こりやすい場を利用して前記過程を進行させることが多い。したがって、前記の有機太陽電池は、通常、その部分に、それぞれ特徴ある構造を有している。
これらの太陽電池の構造の一例に、有機顔料の層を有するものがある。ところが、太陽電池の製造のため有機顔料を成膜しようとする場合、通常は有機顔料が高結晶性の性質を有しているので、前記有機顔料は真空蒸着以外の方法では成膜が困難であった。したがって、大面積の成膜が実用上難しく、高コストになっていた。
また、特許文献2や非特許文献3に記載されているようなバルクヘテロ接合型の太陽電池の製造方法は、塗布プロセスを用いているものの、共役高分子を利用しているため、有機顔料を用いる場合に比較すると強い光の照射に対する耐久性は期待できず、十分に長寿命な太陽電池を得ることが難しかった。
上述したような課題は、太陽電池以外の有機光電変換素子においても存在し、同様に解決が望まれていた。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、塗布プロセスを用いて長寿命な有機光電変換素子を製造しうる、有機光電変換素子の製造方法、並びに、有機顔料と無機粒子とを含む膜を有する有機光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明の発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、活性層に顔料を含有し、活性層を塗布法で形成することにより、塗布プロセスを用いて長寿命な有機光電変換素子を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、少なくとも一方が透明な一対の電極と、前記電極間に形成された活性層とを備えた有機光電変換素子の製造方法であって、該活性層を塗布法で形成するとともに、該活性層が顔料を含有することを特徴とする、有機光電変換素子の製造方法に存する(請求項1)。
このとき、潜在顔料を変換して該顔料とする工程を有することが好ましい(請求項2)。
また、該潜在顔料を塗布法で成膜した後で該潜在顔料を該顔料に変換することが好ましい(請求項3)。
さらに、該潜在顔料と、固体状態で半導体特性を示す材料とを混合して、塗布法により成膜する工程を有することが好ましい(請求項4)。
また、前記材料が粒子であることが好ましく(請求項5)、無機粒子であることがより好ましい(請求項6)。
さらに、前記顔料が半導体特性を示すことが好ましい(請求項7)。
また、前記顔料が半導体特性を示し、前記顔料の多数キャリアと前記材料の多数キャリアとが逆の極性を有することが好ましい(請求項8)。
本発明の別の要旨は、少なくとも一方が透明な一対の電極と、前記電極間に形成された、有機顔料及び無機粒子を含む活性層とを備えることを特徴とする、有機光電変換素子に存する(請求項9)。
このとき、該有機顔料が、潜在顔料を変換して得られたものであることが好ましい(請求項10)。
また、該有機顔料と該無機粒子とが相分離していることが好ましい(請求項11)。
さらに、前記の有機光電変換素子は、太陽電池であることが好ましい(請求項12,13)。
本発明の有機光電変換素子の製造方法によれば、塗布プロセスを用いて長寿命な有機光電変換素子を製造できる。また、通常は、高効率な有機光電変換素子を製造することが可能である。
さらに、本発明によれば、有機顔料と無機粒子とを含む膜を有する有機光電変換素子を提供することができる。
以下、本発明について実施形態や例示物を示して説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[I.概要]
本発明の有機光電変換素子の製造方法は、少なくとも一方が透明な一対の電極と、前記電極間に形成された活性層とを備えた有機光電変換素子の製造方法であって、該活性層を塗布法で形成するとともに、該活性層が顔料を含有することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法である。好ましくは、該顔料が、潜在顔料を変換して得られるものである。潜在顔料を使用する場合には、その方法には特に限定はないが、好ましくは、潜在顔料と、固体状態で半導体特性を示す材料(以下適宜、「固体半導体材料」という)とを混合して、塗布法により膜を成膜する成膜工程を有する。また、通常は、成膜工程の後で、潜在顔料を顔料に変換する変換工程を行ない、顔料及び固体半導体材料を含有する膜(以下適宜、「混合半導体膜」という)を得るようにする。
有機光電変換素子に混合半導体膜を成膜する場合、従来の技術では、顔料及び固体半導体材料の性質などにより、必ずしも成膜性は良好ではなく、また、顔料と固体半導体材料とを良好に分散させることは困難であった。しかし、当該顔料と固体半導体材料とを混合した場合には成膜性が良好でなくとも、顔料の前駆体である潜在顔料と固体半導体材料とを混合した場合には成膜性が良好となり、塗布法などの低コストの方法により潜在顔料及び固体半導体材料を含む膜を容易に成膜することが可能である。これを利用し、本発明では、潜在顔料と固体半導体材料とを、形状、寸法、配設位置などの構成を所望の構成として成膜し、その後、潜在顔料を顔料に変換して混合半導体膜を得ることにより有機光電変換素子を製造するものである。
[II.顔料及び潜在顔料]
本発明に係る潜在顔料とは、顔料の化学構造の異なる前駆体のことをいう。潜在顔料に対して例えば加熱や光照射等の外的な刺激を与えることにより、潜在顔料の化学構造は変化し、顔料に変換されるものである。
また、本発明に係る潜在顔料は、成膜性に優れるものが好ましい。成膜性が良好でない顔料であっても、潜在顔料の状態で成膜してから顔料に変換することにより、成膜時のコストを抑制することができるからである。特に、塗布プロセスを適用できるようにするためには、当該潜在顔料自体が液状で塗布可能であるか、当該潜在顔料が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲を挙げると、潜在顔料の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
さらに、本発明に係る潜在顔料は、容易に顔料に変換できることが好ましい。潜在顔料から顔料への変換工程において、どのような外的な刺激を潜在顔料に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理、光照射などを行なう。
また、本発明に係る潜在顔料は、変換工程を経て、高い収率で顔料に変換されることが好ましい。この際、潜在顔料から変換して得られる顔料の収率は有機光電変換素子の性能を著しく損なわない限り任意である。収率の好適な範囲を挙げると、潜在顔料から得られる顔料の収率は高いほど好ましく、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
一方、本発明に係る顔料とは、前記の潜在顔料が変換してなるものであり、一般的な溶媒への溶解度の小さい材料のことを指す。ここで、一般的な溶媒への溶解度が小さいとは、例えば、トルエンに対する溶解度が、通常1%以下、好ましくは0.1%以下であることをいう。
この顔料は、有機光電変換素子の構成に応じて任意のものを用いることが可能であるが、本発明では通常は顔料として有機物(有機顔料)を使用する。さらに、通常は、顔料中を電荷が移動して有機光電変換素子の変換効果(例えば、太陽電池の発電効果等)が生じることから、顔料としては半導体特性を示すものを使用することが好ましい。ここで、半導体特性を示すとは、例えば、当該顔料単独の層のキャリア移動度が10-7cm2/Vs以上の値を示す事が挙げられる。キャリア移動度は、タイムオブフライト法、電界効果トランジスタの特性、ホール効果、電気伝導度とキャリア密度の測定等により測定できる。
なお、本発明においては、顔料本来の色を発現することは必ずしも関係していないが、一般に、半導体材料はπ共役系の分子を用いるため、太陽光スペクトル領域に吸収帯を有するものが太陽電池等の有機光電返還素子用材料として適している。
外部刺激により、高い収率で顔料分子に変換できる好適な潜在顔料の例を挙げると、例えば、以下のものが挙げられる。
即ち、好適な潜在顔料としては、例えば、米国特許第6071989号明細書に記載のものが挙げられる。具体的には、下記式(1)で表わされる化合物が挙げられる。
A(B)x (1)
式(1)において、xは、1〜8の数を表わす。ただし、xが2〜8である場合、Bは同じでも異なっていても良い。
また、式(1)においてAは、アントラキノン系、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、キナクリドン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系、インダントロン系、インジゴ系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ペリレン系及びフタロシアニン系の発色団のラジカルを表わす。このAは、Aが有するN、O及びSなどのヘテロ原子を介してBに結合されている。
さらに、式(1)においてBは下記式(2)、(3)、(4)(5a)及び(5b)からなる群より選ばれるラジカルを表わす。なお、本明細書において「Ck」(kは自然数)と表記した場合、炭素数がk個であることを表わす。例えば、C1は炭素数が1個であることを表わす。
Figure 2008016834
Figure 2008016834
Figure 2008016834
Figure 2008016834
Figure 2008016834
ここで、式(2)において、mは0又は1を表わす。
また、式(2)、(3)において、Xは、無置換又はC1〜C6のアルキル基、R5又はR6で置換されていても良い、C2〜C5のアルケニレン基、又は、C1〜C6のアルキレン基を表わす。
さらに、式(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C6のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、N(C1〜C6のアルキル基)2{即ち、窒素原子にC1〜C6のアルキル基が結合したアミノ基}、又は、無置換、若しくは、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C1〜C6のアルキル基若しくはC1〜C6のアルコキシ基が置換したフェニル基を表わす。
また、式(3)において、Qは水素原子、C1〜C6のアルキル基、CN、CCl3
Figure 2008016834
で表わされる基、SO2CH3又はSCH3を表わす。ここで、R1及びR2はそれぞれ上述したものと同様である。
さらに、式(4)において、R3及びR4は、それぞれ独立に、ハロゲン基、C1〜C4のアルキル基、
Figure 2008016834
で表わされる基を表わす。また、R3とR4とは互いに結合してピペリジニル基を形成していても良い。ここで、X、m、R1及びR2はそれぞれ上述したものと同様である。
また、式(5a)及び(5b)において、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C24のアルキル基、Oが挿入され、Sが挿入され、或いはC1〜C6のアルキル基が二置換し、更に、Nが挿入されたC1〜C24のアルキル基、C3〜C24のアルケニル基、C3〜C24のアルキニル基、C4〜C12のシクロアルケニル基、無置換又はC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基或いはニトロ基が置換したフェニル基或いはビフェニル基を表わす。なお、O、S、N等の基がアルキル基に挿入されるとは、アルキル基の炭素鎖の途中に当該基を含むことをいう。
さらに、式(5a)において、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C24のアルキル基、又は、C3〜C24のアルケニル基を表わす。
また、式(5b)において、R82は、水素原子、C1〜C6のアルキル基、又は、
Figure 2008016834
で表わされる基を表わす。
ここで、R83はC1〜C6のアルキル基を表わし、R84は水素原子又はC1〜C6のアルキル基を表わし、R85は水素原子、C1〜C6のアルキル基、又は、無置換或いはC1〜C6のアルキル基で置換されたフェニル基を表わす。
または、式(1)において、Bは、下記式
Figure 2008016834
で表わされる基を表わす。
ここで、G1は、無置換、又は、C1〜C12のアルキル基、C1〜C12のアルコキシ基、C1〜C12のアルキルチオ基又はC2〜C24のジアルキルアミノ基で置換された、C2〜C12のp,q−アルキレン基を表わす。なお、p及びqはそれぞれ異なる位置番号を表わす。また、置換基は1つが単独で置換していてもよく、2つ以上が置換していても良い。
さらに、G2はN、O及びSからなる群より選ばれるヘテロ原子を表わす。なお、G2がO又はSである場合は前記式においてiは0であり、G2がNであればiは1である。
また、R10及びR11は、それぞれ独立に、[−(C2〜C12のp’,q’−アルキレン基)−R12−]ii−(C1〜C12のアルキル基){即ち、C2〜C12のp’,q’−アルキレン基とR12とが結合した繰り返し構造がii個結合し、さらに、R12側の末端にC1〜C12のアルキル基が結合した基}、又は、無置換或いは置換のC1〜C12のアルキル基を表わす。ここでC1〜C12のアルキル基の置換基は、C1〜C12のアルコキシ基、C1〜C12のアルキルチオ基、C2〜C24のジアルキルアミノ基、C6〜C12のアリルオキシ基、C6〜C12のアリルチオ基、C7〜C24のアルキルアリルアミノ基又はC12〜C24のジアリルアミノ基が挙げられる。また、置換基は1つが単独で置換していてもよく、2つ以上が置換していても良い。
また、iiは1〜1000の数を表わし、p’及びq’はそれぞれ異なる位置番号を表わす。さらに、R12は、それぞれ独立に、O、S、又は、C1〜C12のアルキル基が置換したN、並びに、C2〜C12のアルキレン基を表わす。なお、前記の繰り返し構造[C2〜C12のアルキレン基−R12]は、同じでもよく異なっていても良い。
また、R10及びR11は、飽和でもよく、不飽和結合を1〜10有していてもよい。また、R10及びR11は、任意の位置に、−(C=O)−及び−C64−からなる群より選ばれる1〜10の基が挿入されていてもよい。さらに、R10及びR11は、無置換でもよく、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基などの置換基で1〜10置換されていても良い。
ただし、−G1−が−(CH2iv−である場合には、ivは2〜12の数を表わし、G2はSを表わし、R11は、無置換、飽和、炭素鎖の途中に炭素以外のO、S、Nが挿入されたC1〜C4のアルキル基ではない。
また、好適な潜在顔料の別の例としては、下記式(6)で表わされる化合物も挙げられる。
Figure 2008016834
式(6)において、X1及びX2の少なくとも一方はπ共役した2価の芳香族環を形成する基を表わし、Z1−Z2は熱または光により脱離可能な基であって、Z1−Z2が脱離して得られるπ共役化合物が顔料分子となるものを表わす。また、X1及びX2のうちπ共役した2価の芳香族環を形成する基でないものは、置換又は無置換のエテニレン基を表わす。
式(6)で表わされる化合物は、下記化学反応式に示すように熱又は光によりZ1−Z2が脱離して、平面性の高いπ共役化合物を生成する。この生成されたπ共役化合物が本発明に係る顔料である。本発明においては、この顔料が半導体特性を示すことが好ましい。
Figure 2008016834
式(6)で表わされる化合物の例としては、以下のものが挙げられる。なお、t−Buはt−ブチル基を表わす。
Figure 2008016834
Figure 2008016834
Figure 2008016834
一方、潜在顔料を変換して生成する顔料(π共役化合物)の具体例を挙げると、ナフタセン、ペンタセン、ピレン、フラーレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のオリゴマー類;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の、芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;銅フタロシアニン、パーフルオロ銅フタロシアニン、テトラベンゾポルフィリン及びその金属塩等の大環状化合物などが挙げられる。例えば、上記潜在顔料を変換する具体例としては、以下の式(7A)、(8A)、(9A)、(10A)で表される化合物などが挙げられる。
Figure 2008016834
Figure 2008016834
Figure 2008016834
Figure 2008016834
これらの潜在顔料を変換して得られる顔料は、一般には結晶性を有する高結晶性材料である。また、本発明に係る顔料は、π共役分子が強い分子間相互作用により凝集しているものである。このため、本発明に係る顔料は可視光領域に強い吸収帯を有し、程度の差はあれ、電荷を輸送できる半導体特性を有する。それらの中でも、高い半導体特性を有するものが望ましい。
これらの観点から、前記の顔料のうちでも、潜在顔料を変換して得られる有機顔料材料としては、例えば、テトラベンゾポルフィリンとその銅や亜鉛等の金属錯体、フタロシアン及びその金属錯体、ペンタセン類、キナクリドン類などが好ましく、中でも、ベンゾポルフィリン、フタロシアニン及びその金属錯体が特に好ましい。
また、顔料は、半導体特性により、p型とn型とに分けられる。一般に、p型、n型とは、半導体材料で電気伝導に寄与するのが、正孔であるか、電子であるかを示しており、材料の電子状態、ドーピング状態、トラップの状態などに依る。p型、n型を示す顔料の例としては、以下のものが挙げられるが、必ずしも明確に分類できるものではなく、同一物質でp型及びn型の両方の特性を示すものもある。
p型の半導体特性を示す顔料(以下適宜、「p型の顔料」という)の例としては、フタロシアニン及びその金属錯体;テトラベンゾポルフィリン及びその金属錯体;テトラセン(ナフタセン)、ペンタセン、ピレン、ペリレン等のポリアセン;セキシチオフェン等のオリゴチオフェン類;及び、これら化合物を骨格として含む誘導体などが挙げられる。
一方、n型の半導体特性を示す顔料(以下適宜、「n型の顔料」という)の例としては、フラーレン(C60);オクタアザポルフィリン;上記p型半導体のパーフルオロ体;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;及び、これら化合物を骨格として含む誘導体などが挙げられる。
さらに、例えば、前記式(7B)で表される化合物の骨格に、その化合物の電子親和力を大きくする構造を導入したものは、n型を示す半導体材料の前駆体化合物として、好適に用いることができる。なお、前記式(7B)で表される化合物は顔料の一種であり、潜在顔料である式(7A)で表される化合物を変換することにより得られる化合物である。
式(7B)で表される化合物の電子親和力を大きくする構造の例を挙げると、フッ素原子に代表される電子吸引性の置換基を複数置換したり、π共役系の炭素原子−CH=を窒素原子に置き換えて、−N=の構造にしたものを挙げることができる。例えば、次のような化合物、あるいは、その銅や亜鉛等との金属錯体が挙げられる。
Figure 2008016834
また、同様に、前記式(8B)、(9B)、(10B)で表される化合物のフッ素置換体や、窒素置換体もn型半導体として用いることができる。なお、前記式(8B)、(9B)及び(10B)で表される化合物はいずれも顔料の一種であり、それぞれ、潜在顔料である式(8A)、(9A)及び(10A)で表される化合物を変換することにより得られる化合物である。
本発明の有機光電変換素子の製造方法により製造される有機光電変換素子では、少なくともp型及びn型の一方の顔料を潜在顔料からの変換により作製することが好ましい。したがって、潜在顔料を選択する際には、少なくとも前記のp型の顔料若しくはn型の顔料に対応した前駆体を選択することが好ましい。
上述した顔料のなかでも、本発明の有機光電変換素子の製造方法により製造される有機光電変換素子においては、顔料として、ポルフィリン、フタロシアニン、キナクリドン、ピロロピロール、ジチオケトピロロピロール及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。その中でも、特に、本発明に係る潜在顔料としては、ベンゾポルフィリン化合物を用いることが好ましい。以下、このベンゾポルフィリン化合物について詳しく説明する。
[II−1.ベンゾポルフィリン化合物]
本発明に係るベンゾポルフィリン化合物は、下記の式(I)又は(II)で表わされる。
Figure 2008016834
Figure 2008016834
(前記式(I)及び式(II)中、Zia及びZib(iは1〜4の整数を表わす)は、各々独立に、原子又は原子団を表わす。ただし、ZiaとZibとが結合して環を形成していてもよい。R1〜R4は、各々独立に、原子又は原子団を表わす。Mは、2価の金属原子、又は、3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団を表わす。)
式(I)及び式(II)において、Zia及びZib(iは1〜4の整数を表わす)は、各々独立に、1価の原子又は原子団を表わす。
ia及びZibの例を挙げると、原子としては、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;などが挙げられる。
一方、原子団としては、水酸基;アミノ基;アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基、ハロアルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基等の有機基;などが挙げられる。
前記の有機基のうち、アルキル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アルキル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アラルキル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アラルキル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアラルキル基の例としては、ベンジル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アルケニル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アルケニル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアルケニル基の例としては、ビニル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アシル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アシル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アルコキシ基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アルコキシカルボニル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アルコキシカルボニル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、アリールオキシ基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。アリールオキシ基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このアリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、ジアルキルアミノ基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。ジアルキルアミノ基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このジアルキルアミノ基の例としては、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、ジアラルキルアミノ基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。ジアラルキルアミノ基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このジアラルキルアミノ基の例としては、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、ハロアルキル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常12以下、好ましくは8以下である。ハロアルキル基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。このハロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基等のα−ハロアルキル基などが挙げられる。
前記の有機基のうち、芳香族炭化水素環基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常6以上、好ましくは10以上、また、通常30以下、好ましくは20以下である。芳香族炭化水素環基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。この芳香族炭化水素環基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
前記の有機基のうち、芳香族複素環基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常2以上、好ましくは5以上、また、通常30以下、好ましくは20以下である。芳香族複素環基の炭素数が大きすぎると、半導体特性が低下したり、溶解性が上がって積層時に再溶解をしたり、耐熱性が低下したりする可能性がある。この芳香族複素環基の例としては、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
さらに、上記の原子団は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の置換基を有していてもよい。前記置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基などが挙げられる。なお、この置換基は、1種が単独又は複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、ZiaとZibとは、結合して環を形成していてもよい。ZiaとZibとが結合して環を形成する場合、当該Zia及びZibを含む環(即ち、Zia−CH=CH−Zibで表わされる構造の環)の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環;ピリジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環等の、置換基を有していてもよい芳香族複素環;シクロヘキサン環等の非芳香族環状炭化水素;などが挙げられる。
iaとZibとが結合して形成する環が有する前記の置換基は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その例としては、Zia及びZibを構成する原子団の置換基として例示したものと同様の置換基が挙げられる。なお、この置換基は、1種が単独又は複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
上述したZia及びZibの中でも、特に水素原子が好ましい。結晶のパッキングが良好で、高い半導体特性が期待できるためである。
式(I)及び式(II)において、R1〜R4は、各々独立に、1価の原子又は原子団を表わす。
1〜R4の例を挙げると、上述したZia及びZibと同様のものが挙げられる。また、R1〜R4が原子団である場合、当該原子団は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の置換基を有していてもよい。この置換基の例としては、前記Zia及びZibの置換基と同様のものが挙げられる。なお、この置換基は、1種が単独又は複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
ただし、R1〜R4は、分子の平面性を高めるためには、水素原子、ハロゲン原子等の原子から選ばれることが好ましい。
式(I)及び式(II)において、Mは、2価の金属原子、又は、3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団を表わす。
Mが2価の金属原子である場合、その例としては、Zn、Cu、Fe、Ni、Co等が挙げられる。一方、Mが3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団である場合、その例としては、Fe−B1、Al−B2、Ti=O、Si−B34などが挙げられる。ここで、B1、B2、B3及びB4は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等の1価の基を表わす。
更に、本発明に係るベンゾポルフィリン化合物は、例えば、1個の原子を2つポルフィリン環が共有して配位しているもの、2個のポルフィリン環が1個以上の原子あるいは原子団を共有して結合したもの、または、それらが3個以上結合して長鎖上に繋がったものであってもよい。
以下に、本発明に係るベンゾポルフィリン化合物として好ましい具体例を挙げる。ただし、本発明に係るベンゾポルフィリン化合物は以下の例に限定されるものではない。また、ここでは対称性の良い分子構造を主に例示しているが、部分的な構造の組み合わせによる非対称構造であっても使用できる。
Figure 2008016834
Figure 2008016834
[II−2.ベンゾポルフィリン化合物の可溶性前駆体]
上述した本発明に係るベンゾポルフィリン化合物は、本発明に係るベンゾポルフィリン化合物の可溶性前駆体に対して熱による変換(以下適宜、「熱変換」という)を行なうことにより、得ることができる。以下、その可溶性前駆体について説明する。
本発明に係る可溶性前駆体は、熱変換により、本発明に係るベンゾポルフィリン化合物に変換しうるものである。その構造は、ビシクロ環を有し、熱変換により本発明に係るベンゾポルフィリン化合物に変換できる限り、任意である。
ただし、本発明に係る可溶性前駆体は、下記式(III)または(IV)で表される化合物が好ましい。
Figure 2008016834
Figure 2008016834
(前記式(III)及び(IV)中、Zia及びZib(iは1〜4の整数を表わす)は、各々独立に、1価の原子又は原子団を表わす。ただし、ZiaとZibとが結合して環を形成していてもよい。R1〜R4は、各々独立に、1価の原子又は原子団を表わす。Y1〜Y4は、各々独立に、1価の原子又は原子団を表わす。Mは、2価の金属原子、又は、3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団を表わす。)
前記式(III)及び(IV)において、Zia、Zib、R1〜R4及びMは、それぞれ、式(I)及び(II)と同様である。
前記式(III)及び(IV)において、Y1〜Y4は、各々独立に、1価の原子又は原子団を表わす。また、前記式(III)及び(IV)においてはY1〜Y4はそれぞれ4個ずつ存在するが、Y1同士、Y2同士、Y3同士、及びY4同士は、それぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。
1〜Y4の例を挙げると、原子としては、水素原子などが挙げられる。
一方、原子団としては、水酸基、アルキル基などが挙げられる。ここで、アルキル基の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下、より好ましくは3以下である。アルキル基の炭素数が大きすぎると、脱離基が大きくなるため、脱離基が揮発しにくくなり、膜内に残留する可能性がある。このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
また、Y1〜Y4が原子団である場合、当該原子団は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の置換基を有していてもよい。この置換基の例としては、前記Zia及びZibの置換基と同様のものが挙げられる。なお、この置換基は、1種が単独又は複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
上述したY1〜Y4の中でも、水素原子、または、炭素数10以下のアルキル基が好ましい。さらにその中でも、Y1〜Y4の全てが水素原子であるか、または、(Y1,Y2)及び(Y3,Y4)のうち少なくとも一方の組がどちらも炭素数10以下のアルキル基であることが特に好ましい。溶解度が高くなり、成膜性が良好となるためである。
本発明に係る可溶性前駆体は、熱変換により本発明に係るベンゾポルフィリン化合物に変換される。変換に際してどのような反応が生じるかについて制限はないが、例えば前記の式(III)又は(IV)で表わされる可溶性前駆体の場合、熱が加えられることによって下記式(V)の化合物が脱離する。この脱離反応は定量的に進行する。そして、この脱離反応によって、本発明に係る可溶性前駆体は本発明に係るベンゾポルフィリン化合物に変換される。
Figure 2008016834
熱変換について、上記にて例示したベンゾポルフィリン化合物BP−1を例に挙げて、具体的に説明する。ベンゾポルフィリン化合物BP−1の可溶性前駆体としては、例えば、式(III)において、Zia、Zib、R1〜R4及びY1〜Y4が全て水素原子である化合物(以下、「BP−1前駆体」という)を用いることができる。ただし、ベンゾポルフィリン化合物BP−1の可溶性前駆体は、このBP−1前駆体に限定されるものではない。
BP−1前駆体は加熱されると、ポルフィリン環に結合した4個の環それぞれからエチレン基が脱離する。この脱エチレン反応により、ベンゾポルフィリン化合物BP−1が得られる。この変換を反応式で表わすと、以下のようになる。
Figure 2008016834
本発明に係る可溶性前駆体を熱変換により本発明に係るベンゾポルフィリン化合物に変換する際、温度条件は前記の反応が進行する限り制限はないが、通常100℃以上、好ましくは150℃以上である。温度が低すぎると、変換に時間がかかり、実用上好ましくなくなる可能性がある。上限は任意であるが、通常400℃以下、好ましくは300℃以下である。温度が高すぎると分解の可能性があるためである。
本発明に係る可溶性前駆体を熱変換により本発明に係るベンゾポルフィリン化合物に変換する際、加熱時間は前記の反応が進行する限り制限はないが、通常10秒以上、好ましくは30秒以上、また、通常100時間以下、好ましくは50時間以下である。加熱時間が短すぎると変換が不十分となる可能性があり、長すぎると実用上好ましくなくなる可能性がある。
本発明に係る可溶性前駆体を熱変換により本発明に係るベンゾポルフィリン化合物に変換する際、その雰囲気は前記の反応が進行する限り制限はないが、不活性雰囲気であることが好ましい。この際に用いることができる不活性ガスの種類としては、例えば、窒素、希ガス等が挙げられる。なお、不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る可溶性前駆体は、有機溶媒等の溶媒に対する溶解性が高い。具体的な溶解性の程度は溶媒の種類などによるが、25℃におけるクロロホルムに対する溶解性は、通常0.1g/L以上、好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1g/L以上である。なお、上限に制限はないが、通常1000g/L以下である。
本発明に係る可溶性前駆体が溶媒に対して溶解性が高いのに対し、それから誘導される本発明に係るベンゾポルフィリン化合物は有機溶媒等の溶媒に対する溶解性が非常に低い。これは、本発明に係る可溶性前駆体の構造が平面構造でないために溶解性が高く且つ結晶化しにくいのに対し、本発明に係るベンゾポルフィリン化合物は構造が平面的であることに起因するものと推察される。したがって、このような溶媒に対する溶解性の違いを利用すれば、当該ベンゾポルフィリン化合物を含む層を塗布法により容易に形成できる。例えば、以下の方法により製造できる。即ち、本発明に係る可溶性前駆体を溶媒に溶解させて溶液を用意し、当該溶液を塗布してアモルファス又はアモルファスに近い良好な層を形成する。そして、この層を加熱処理して熱変換により本発明に係る可溶性前駆体を変換することで、平面性の高いベンゾポルフィリン化合物の層を得ることができる。この際、上述した例のように、式(III)又は(IV)で表わされる化合物のうちY1〜Y4が全て水素原子であるものを可溶性前駆体として用いると、脱離するものがエチレン分子であるため、系内に残りにくく、毒性、安全性の面で好適である。
本発明に係る可溶性前駆体の製造方法に制限はなく、公知の方法を任意に採用することができる。例えば、前記のBP−1前駆体を例に挙げると、以下の合成経路を経て製造できる。なお、ここで、Etはエチル基を表わし、t−Buはt−ブチル基を表わす。
Figure 2008016834
[III.固体半導体材料]
固体半導体材料は、少なくとも固体状態となった場合に電荷を輸送することができる材料を表わす。この際、固体半導体材料が示す半導体特性の程度は有機光電変換素子の材料として使用しうる限り任意であるが、キャリア移動度の値では、通常10-7cm2/Vs以上、好ましくは10-5cm2/Vs以上である。電気伝導度はキャリア移動度×キャリア密度で定義されるため、ある程度の大きさのキャリア移動度を有する材料であれば、例えば熱、ドーピング、電極からの注入などによりキャリアが当該材料内に存在すれば、その材料は電荷を輸送することができるのである。なお、固体半導体材料のキャリア移動度は大きいほど望ましい。
ところで、本発明に係る固体半導体材料や、半導体特性を示す顔料などの半導体材料においては、電荷を輸送するキャリアは電子と正孔の2種類存在し、その密度の大きいほうが多数キャリアと呼ばれる。多数キャリアは、通常は半導体材料の種類やドーピング状態によって決定される。また、半導体材料のタイプとしては、多数キャリアが、電子であるものはn型、正孔であるものはp型、つり合っているものはi型と呼ばれる。
有機光電変換素子は光の吸収により電子と正孔とを分離して外部に取り出すものであるので、p型とn型の両方の半導体材料を含む活性層を有することが多い。したがって、本発明に係る顔料が半導体特性を示す場合には、本発明に係る顔料の多数キャリアと固体半導体材料の多数キャリアとは逆の極性を有していることが好ましい。即ち、本発明に係る顔料がp型である場合には固体半導体材料としてはn型のものを使用し、逆に、本発明に係る顔料がn型である場合には固体半導体材料としてp型のものを使用することが望ましい。なお、顔料又は固体半導体材料が2種以上存在する場合、少なくとも1種の顔料と少なくとも1種の固体半導体材料とが逆の極性の多数キャリアを有していれば好ましく、これに加えて、同じ極性の顔料及び/又は固体半導体材料を有していてもよい。具体例を挙げると、本発明に係る顔料がペンタセンやベンゾポルフィリンである場合には、これらの顔料は通常p型として動作するので、組み合わせる相手である固体半導体材料はn型を示すものが挙げられ、例えば、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、フラーレン(C60)、チタニア、酸化亜鉛、等が挙げられる。
ただし、p型、n型は半導体材料の種類により絶対的に決まるものではない。例えば、同じ型の半導体材料を組み合わせても、そのエネルギー準位(HOMO準位、LUMO準位、フェルミ準位)やドーピング状態の関係で、一方がp型、もう一方がn型として動作することもある。
さらに、本発明の有機光電変換素子において、固体半導体材料は、通常、粒子状、ファイバー状等の凝集状態で存在する。この際の固体半導体材料の粒径等の寸法(粒子では粒径、ファイバではファイバ径)に制限は無い。ただし、固体半導体材料の粒径は、通常2nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下である。このような小粒径の粒子を顔料と共に活性層(中でも、混合半導体膜)内で良好に分散させることは従来の技術では困難であり、中でも、有機顔料と無機の固体半導体材料とが共存する混合半導体膜内においては特に困難であった。しかし、本発明の太陽電池の製造方法によれば、このように小さい粒径の粒子であっても活性層(中でも、混合半導体膜)内において良好に分散させることが可能である。
なお、固体半導体材料の粒径は、電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
固体半導体材料の具体的な種類に制限は無く、有機光電変換素子の材料として使用できる限り任意のものを使用することが可能である。その例を挙げると、ナフタレン(或いはペリレン)テトラカルボン酸ジイミド、フラーレン(C60)およびその誘導体等の有機半導体;チタニア、酸化亜鉛、酸化銅等の酸化物半導体;GaAs、GaP、InP、CdS、CdSe、GaN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se2等の化合物半導体;Si、Ge等の単元素半導体などが挙げられる。
さらに、固体半導体材料の存在状態は任意であり、例えば粒子であっても良く、また、何らかの溶媒に溶解していても良い。したがって、有機光電変換素子の製造方法においては、固体半導体材料は、塗布液(後述する)中において溶解していてもよく、粒子状に分散していても良い。
溶媒に溶解する固体半導体材料の例としては、溶液プロセスで成膜可能な有機半導体材料が挙げられ、具体例としては、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリアニリン等の共役高分子;アルキル置換されたオリゴチオフェン等が挙げられる。
また、粒子状に分散する固体半導体材料の例としては、有機半導体粒子及び無機半導体粒子が挙げられる。有機半導体粒子としては、例えば、溶解性の小さな結晶性有機半導体が挙げられ、具体例としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン、フラーレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を合計4個以上連結したもの;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の、芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;銅フタロシアニン、パーフルオロ銅フタロシアニン、テトラベンゾポルフィリン及びその金属塩等の大環状化合物などが挙げられる。また、上述した酸化物半導体、化合物半導体、単元素半導体等の無機半導体も、通常は、塗布液中で無機半導体粒子として存在することになる。
中でも、固体半導体材料としては、上記の酸化物半導体、化合物半導体、単元素半導体等の無機半導体が好ましい。無機半導体は耐久性に優れており、また、各種ナノ粒子が利用可能である。さらに、無機半導体は耐久性に優れキャリア移動度が大きいものが多く、有機光電変換素子の高効率化が期待できるためである。特に、中でもチタニア、酸化亜鉛が、低コストで利用可能という利点があるため特に好ましい。
また、特に固体半導体材料として無機半導体を使用する場合、当該無機半導体は粒子状の無機粒子であることが好ましい。これにより、混合液の塗布で膜内に容易に導入できるという利点、キャリア分離の場である界面が大きいという利点を得ることができる。
[IV.有機光電変換素子の構造]
有機光電変換素子は、少なくとも一対の電極間に挟まれた活性層を備えて構成される。また、通常は、電極及び活性層を支持するため、有機光電変換素子は基板を備えている。
[IV−1.基板]
基板は、任意の材料により形成することが可能である。基板の材料の例を挙げると、ガラス、サファイア、チタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料;紙、合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート或いはラミネートしたもの等の複合材料などが挙げられる。なお、基板の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、基板の形状及び寸法に制限はなく、任意に設定することができる。
さらに、基板には、ガスバリヤー性の付与や表面状態の制御のために、別の層を積層してもよい。
[IV−2.電極]
電極は、導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。電極の材料の例を挙げると、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはその合金(ITO);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;前記導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを添加したもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。なお、電極の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、有機光電変換素子において、電極は少なくとも一対(2個)設けられ、この一対の電極の間に活性層が設けられる。この際、一対の電極のうち、少なくとも一方は透明(即ち、発電のために活性層が吸収する光を透過させる)であるようにする。透明な電極の材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。また、この際、光の透過率の具体的範囲に制限は無いが、有機光電変換素子の変換効率(例えば、太陽電池の発電効率等)を考慮すると、80%以上が好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
電極は、活性層内に生じた正孔及び電子を捕集する機能を有するものである。したがって、電極には、正孔及び電子を捕集するのに適した電極材料を用いることが好ましい。正孔の捕集に適した電極の材料を挙げると、例えば、Au、ITO等の高い仕事関数を有する材料が挙げられる。一方、電子の捕集に適した電極の材料を挙げると、例えば、Alのような低い仕事関数を有する材料が挙げられる。
なお、電極の形成方法に制限はない。例えば、真空蒸着、スパッタ等のドライプロセスにより形成することができる。また、例えば、導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することもできる。この際、導電性インクとしては任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液等を用いることができる。
さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理による特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
[IV−3.活性層]
活性層は、半導体材料を含有する層であり、光を吸収して電荷を分離する層である。この活性層は、単層の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の積層膜によって構成されていても良い。
また、活性層には、少なくともp型の半導体及びn型の半導体が含有されていれば、その具体的な構成は任意である。例えば、n型の半導体とp型の半導体とを別々の膜に含有させるようにしても良く、n型の半導体とp型の半導体とを同じ膜に含有させても良い。
ただし、本発明に係る活性層には、本発明に係る顔料を含有させる。この場合、顔料のうちの少なくと一部は半導体特性を示すことが好ましく、これにより、活性層のp型の半導体及びn型の半導体の一方又は両方が、本発明に係る顔料によって形成されていることが好ましい。
更に、半導体として本発明に係る顔料以外の半導体を用いる場合は、上述した固体半導体材料を用いることが好ましい。活性層において、固体半導体材料は、固体状態で存在する。したがって、活性層内において、固体半導体材料は、半導体特性を示す状態で存在することになる。さらに、上述したように、固体半導体材料は、活性層内において粒子として存在することが好ましい。粒子としては、粒状及びファイバー状のいずれであっても構わないが、中でも、ファイバー状であることが特に好ましい。
ところで、上述したように、本発明に係る顔料は潜在顔料から変換して得ることができるため、固体半導体材料と良好に混合することが可能である。よって、活性層には、顔料と固体半導体材料とを含んだ混合半導体膜を備えさせることが好ましい。即ち、活性層が単層の膜によって形成されている場合、当該膜は混合半導体膜として形成することが好ましい。一方、活性層が2以上の膜からなる場合、活性層は混合半導体膜を少なくとも一層備えて構成することが好ましい。
混合半導体膜において、顔料と固体半導体材料との比率に制限はなく、有機光電変換素子のタイプ、用途などに応じて任意である。ただし、固体半導体材料と顔料との使用比率は、「固体半導体材料/顔料」で表わされる体積比(重量/密度の比)で、通常1/99以上、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、また、通常99/1以下、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下である。特に、本発明に係る混合半導体膜においては潜在顔料から誘導される顔料と固体半導体材料とが相分離(後述する)をして電荷を輸送できるように連続相を形成することが好ましく、これを実現するためには、それぞれの相の体積が極端に違わない方が好ましい。このため、前記体積比は、更に好ましくは30/70以上、特に好ましくは40/60以上、また、更に好ましくは70/30以下、特に好ましくは60/40以下である。顔料及び固体半導体材料の一方の量が少なすぎると島状に孤立した相になりやすい。
また、活性層が2以上の膜により形成されている場合、活性層を構成する膜の種類は任意である。通常は混合半導体膜により活性層を構成することが好ましいが、混合半導体膜以外の膜を有していてもよい。活性層を形成する混合半導体膜以外の膜に制限はなく、半導体材料を含有する膜であれば、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。このような膜としては、例えば、半導体特性を示す顔料のみで形成された膜、固体半導体材料のみで形成された膜、半導体特性を示す顔料及び固体半導体材料の一方と顔料及び固体半導体材料以外の成分とで形成された膜などを有していてもよい。
なお、活性層及び混合半導体膜には、本発明の効果を著しく損なわない限り、顔料及び固体半導体材料以外の成分を含有していてもよい。また、顔料及び固体半導体材料は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、活性層においては、顔料と固体半導体材料とは相分離して、活性層が相分離構造を有していることが好ましい。活性層が相分離構造を有している場合には、光照射によりキャリア分離が起こり、正孔と電子とが生じた後で、それらが再結合することなく電極にたどりつく確率を高くすることが期待できるからである。この利点は、特に混合半導体膜が相分離構造を有している場合に顕著である。また、このような相分離構造は、顔料及び固体半導体材料として有機顔料及び無機粒子を用いた場合に好適に実現できる。
なお、相分離構造とは、相を構成する材料(例えば、顔料、固体半導体材料等)が分子レベルで均一に混合しておらず、それぞれの材料が凝集状態をとっている構造であり、その凝集状態の間に界面を有するものである。この相分離構造は、光学顕微鏡、あるいは電子顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)等の局所的な構造を調べる手法で観察したり、X線回折で、凝集部分に由来する回折を観察したりして確認することができる。
また、活性層においては、顔料として有機顔料を用いると共に、固体半導体材料として無機粒子を使用することが好ましい。従来の技術では有機顔料と無機粒子とを共に含有する活性層を作製することは困難であり、特に、有機顔料と無機粒子とを含む混合半導体膜を作製することは非常に困難であったが、本発明によれば、潜在顔料を変換して有機顔料を得るようにしたことで、このような活性層及び混合半導体膜を容易に且つ良好に得ることができる。
活性層の具体的な構成は、その有機光電変換素子のタイプにより様々である。活性層の構成の例を挙げると、バルクヘテロ接合型、積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型、ハイブリッド型などが挙げられる。なお、以下の具体例においては、特に好ましい例として活性層が混合半導体膜を有する場合を挙げて説明するが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない限り、そのような場合に限定されるものではない。
バルクヘテロ接合型は、単一の活性層内に、p型の半導体材料とn型の半導体材料とを含んで構成されている。そして、p型の半導体材料とn型の半導体材料とが相分離した相分離構造となっていて、当該相の界面でキャリア分離が起こり、各相において正電荷(正孔)と負電荷(電子)とが分離、輸送されるものである。
なお、このバルクヘテロ接合型の活性層は、相分離構造を有する混合半導体膜を備えて形成されていることになる。また、本発明の有機光電変換素子では、p型及びn型の半導体材料の少なくとも一方は固体半導体材料である。さらに、p型及びn型の半導体材料の他方は、固体半導体材料であっても良いが、半導体特性を示す顔料であって潜在顔料から誘導されたものが好ましい。
バルクヘテロ接合型の活性層において、その相分離構造は、光吸収過程、励起子の拡散過程、励起子の解離(キャリア分離)過程、キャリア輸送過程などに対する影響がある。したがって、相分離構造を最適化することにより、良好な光電変換効率を実現することができるものと考えられる。
積層型(ヘテロpn接合型)は、活性層が2以上の膜から構成されていて、少なくとも一つの膜がp型の半導体材料を含有して形成され、他の膜がn型の半導体材料を含有して形成されているものである。そして、当該p型の半導体材料を含有する膜とn型の半導体材料を含有する膜との境界にはp型の半導体材料とn型の半導体材料との相界面が形成されて、当該相界面でキャリア分離が起こるようになっている。
なお、本発明の有機光電変換素子では、用いられる半導体材料のうち、p型及びn型の半導体材料の少なくとも一方は固体半導体材料であることが好ましい。さらに、p型及びn型の半導体材料の他方は、固体半導体材料であっても良いが、半導体特性を示す顔料であってもよい。ただし、本発明の有機光電変換素子においては、活性層を形成する膜の少なくとも一つは固体半導体材料と共に顔料を含有して形成された混合半導体膜であることが好ましく、この際、顔料は半導体特性を示すものが好ましい。
また、バルクヘテロ接合型と積層型とを組み合わせることも可能である。例えば、活性層を2以上の膜から構成すると共に、それらの膜の少なくとも一つに固体半導体材料と顔料とを含有させるとともに、当該固体半導体材料の多数キャリアと顔料の多数キャリアの極性を逆にして、p型及びn型の一方の固体半導体材料とp型及びn型の他方の顔料とが相分離するように構成するのである。この場合、積層した膜間に形成される相界面、及び、混合半導体膜内における固体半導体材料と顔料との相界面の両方でキャリア分離が生じるようになっている。或いは、この場合、例えば積層した膜間において一方のキャリアをブロックして、電気取り出し効率を向上させることも期待されている。
ショットキー型は、電極近傍にショットキー障壁が形成され、この部分の内部電場でキャリア分離を行なうものである。電極としてショットキー障壁を形成するものを用いればその活性層の構成に制限は無いが、中でも、混合半導体膜を少なくとも一層備えて構成することが好ましい。ショットキー型における活性層の具体的な構成は、前記のバルクヘテロ接合型、積層型及び両者を組み合わせた型のいずれを採用することも可能であり、特に高い特性(例えば、変換効率など)が期待できる。
ハイブリッド型は、活性層が無機物質及び有機物質を共に含有して形成されるものである。この際、ハイブリッド型の活性層が含有する無機物質及び有機物質は半導体特性を有していないものでもよいが、半導体特性を有しているもの(即ち、無機半導体及び有機半導体)を使用することが好ましい。例えば、無機半導体としてはチタニア、酸化亜鉛等が上げられ、有機半導体としてはペリレン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。
ハイブリッド型の活性層の層構成の具体例を挙げると、バルクヘテロ接合型の活性層において、固体半導体材料及び顔料の一方として無機物質を使用すると共に他方として有機物質を使用した場合、固体半導体材料及び顔料の一方又は両方として無機物質及び有機物質を使用した場合などがハイブリッド型の活性層の例として挙げられる。これにより、活性層(中でも好ましくは混合半導体膜)は、無機半導体と有機半導体との混合膜として構成され、有機光電変換素子の高効率化が期待できる。特に、顔料として有機顔料を使用すると共に固体半導体材料として無機顔料(中でも好ましくは無機粒子)を使用することによって、混合半導体膜が有機顔料と無機顔料(中でも好ましくは無機粒子)とを含むように形成されている場合、当該混合半導体膜は従来の技術では製造が困難であったものであるため本発明の利点を顕著に発揮でき、更に、耐久性をより向上させることが可能であるため、特に好ましい。
[IV−4.電極界面層]
活性層と電極との間には、電気特性の改良に電極界面層を設ける事が望ましい。通常は、正孔を捕集する電極と活性層との間には電子をブロックして正孔のみ伝導する層(p型半導体層)を形成し、電子を捕集する電極と活性層との間には正孔をブロックして電子のみ伝導する層(n型半導体層)を形成する。
p型半導体層の材料(p型半導体材料)としては、活性層で生成した正孔を効率よく正極へ輸送できるものが好ましい。そのためには、p型半導体材料は、正孔移動度が高いこと、導電率が高いこと、正極3との間の正孔注入障壁が小さいこと、活性層からp型半導体層への正孔注入障壁が小さいこと、などの性質を有することが好ましい。
さらに、p型半導体層を通して活性層に光を取り込む場合には、p型半導体材料として透明な材料を用いることが好ましい。通常は光のうちでも可視光を活性層に取り込むことになるため、透明なp型半導体材料としては、当該p型半導体層を透過する可視光の透過率が、通常60%以上、中でも80%以上となるものを用いることが好ましい。これを実現するためには、可視光の吸収のない材料を用いるか、吸収があっても前記透過率を満たす程度に薄い薄膜としてp型半導体層を形成すればよい。
さらに、有機光電変換素子の製造コストの抑制、大面積化などを実現するためには、p型半導体材料として有機半導体材料を用い、p型半導体層をp型有機半導体層として形成することが好ましい。
このような観点から、p型半導体材料の好適な例を挙げると、ポルフィリン化合物又はフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は、中心金属を有していてもよいし、無金属のものでもよい。その具体例を挙げると、29H,31H−フタロシアニン、銅(II)フタロシアニン、亜鉛(II)フタロシアニン、チタンフタロシアニンオキシド、銅(II)4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;などが挙げられる。
また、ポルフィリン化合物及びフタロシアニン化合物以外の好ましいp型半導体材料の例としては、正孔輸送性高分子にドーパントを混合した系が挙げられる。この場合、正孔輸送性高分子の例としては、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられる。一方、ドーパントの例としては、ヨウ素;ポリ(スチレンスルホン酸)、カンファースルホン酸等の酸;PF5、AsF5、FeCl3等のルイス酸;などが挙げられる。
なお、p型半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
p型半導体層の厚みに制限はない。ただし、通常3nm以上、中でも10nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。p型半導体層が厚すぎると透過率が低下したり、直列抵抗が増大したりする可能性があり、薄すぎると不均一な膜となる可能性がある。
一方、n型半導体層に求められる役割は、活性層から分離された正孔をブロックし、電子のみを負極に輸送するものである。n型半導体層の材料(n型半導体材料)としては、活性層で生成した電子を効率よく負極へ輸送できるものが好ましい。そのためには、n型半導体材料は、電子移動度が高いこと、導電率が高いこと、負極との間の電子注入障壁が小さいこと、活性層からn型半導体への電子注入壁が小さいこと、などの性質を有することが好ましい。
さらに、n型半導体層を通して活性層に光を取り込む場合には、n型半導体材料として透明な材料を用いることが好ましい。通常は光のうちでも可視光を活性層に取り込むことになるため、透明なn型半導体材料としては、当該n型半導体層を透過する可視光の透過率が、通常60%以上、中でも80%以上となるものを用いることが好ましい。これを実現するためには、可視光の吸収のない材料を用いるか、吸収があっても前記透過率を満たす程度に薄い薄膜としてn型半導体層を形成すればよい。
また、n型半導体層に求められる役割は、活性層で光を吸収して生成する励起子(エキシトン)が負極により消光されるのを防ぐことにもある。そのためには、電子供与体及び電子受容体が有する光学的ギャップより大きい光学的ギャップを、n型半導体材料が有することが好ましい。
このような観点から、n型半導体材料の好適な例を挙げると、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体等の電子輸送性を示す有機化合物;TiO2等の無機半導体などが挙げられる。なお、n型半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
n型半導体層の厚みに制限はない。ただし、通常2nm以上、中でも5nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。n型半導体層をこのような範囲の厚みに形成することにより、正極3より入射した光が活性層で吸収されずに透過した場合、負極で反射されて再び活性層に戻ることによる光干渉効果を活用することが可能である。
この電極界面層の形成に潜在顔料を用いることも可能である。即ち、上記のp型半導体材料及び/又はn型半導体材料として、本発明に係る顔料のうち半導体特性を示すものを用いると共に、潜在顔料を前記の顔料に変換することで電極界面層を形成することも可能である。
[IV−5.その他の部材]
有機光電変換素子は、上述した基板、電極及び活性層以外の構成部材を備えていても良い。
例えば、有機光電変換素子は、外気の影響を最小限にするために、保護膜を備えていても良い。保護層は、例えば、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンポリビニルアルコール共重合体、等のポリマー膜;酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化膜や窒化膜;あるいはこれらの積層膜などにより構成することができる。
なお、前記の保護膜の形成方法に制限はない。例えば、保護膜をポリマー膜とする場合には、例えば、ポリマー溶液の塗布乾燥による形成方法、モノマーを塗布或いは蒸着して重合する形成方法などが挙げられる。また、ポリマー膜の形成に際しては、さらに架橋処理を行なったり、多層膜を形成したりすることも可能である。一方、保護膜を無機酸化膜や窒化膜等の無機物膜とする場合には、例えば、スパッタ法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法、ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法などを用いることができる。
また、有機光電変換素子は、例えば紫外線を透過させない光学フィルタを備えさせることが好ましい。紫外線は一般に有機光電変換素子の劣化を促進することが多いため、この紫外線を遮断することにより、有機光電変換素子を長寿命化させることができるからである。
[V.有機光電変換素子の製造方法]
本発明の有機光電変換素子の製造方法においては、前記の活性層を作製する工程を経て有機光電変換素子を製造する。この際、活性層は、活性層以外の有機光電変換素子の構成部材とは別に作製し、活性層の作製後に他の構成部材と組み合わせるようにしてもよいが、通常は、基板や電極等の構成部材上に成膜することにより活性層を形成する。
また、本発明の有機光電変換素子の製造方法では、活性層を作製する工程において、塗布法を用いて活性層を形成する。ただし、活性層に含有させる顔料は、潜在顔料を変換して得るようにすることが好ましい。したがって、本発明の有機光電変換素子の製造方法では、潜在顔料を変換して顔料とする変換工程を行なうようにする。
このとき、潜在顔料が溶媒に溶解しやすいため、潜在顔料は塗布法により容易に成膜することができる。したがって、本発明の有機光電変換素子の製造方法では、潜在顔料を塗布法で成膜して潜在顔料を含む膜(以下適宜、「前駆体膜」という)を得て(成膜工程)、その後で、潜在顔料を顔料に変換する工程(変換工程)を行なうことが好ましい。
中でも、混合半導体膜を製造する場合には、潜在顔料と固体半導体材料とを混合して塗布法により前駆体膜を成膜する成膜工程と、成膜工程の後で、潜在顔料を顔料に変換する変換工程とを行なうことが好ましい。これにより、固体半導体材料と顔料とを含有する混合半導体膜を形成することができる。そして、この混合半導体膜自体を活性層として用いたり、混合半導体膜を他の膜と組み合わせて活性層を構成したりするのである。
[V−1.成膜工程]
成膜工程では、前駆体膜を成膜する。成膜の手法は塗布法により成膜するものであれば他に制限は無い。潜在顔料が液状であればそのまま塗布することも可能であるが、通常は、適切な溶媒に潜在顔料を溶解させた塗布液を用意し、この塗布液を基板、電極等の塗布対象に塗布して成膜を行なう。
塗布液用の溶媒に制限は無く、潜在顔料を溶解する溶媒であれば任意のものを使用することができる。溶媒の例を挙げると、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類、ピリジン、キノリン等の含窒素有機溶媒類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類などが挙げられる。
なお、溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
塗布液には潜在顔料を少なくとも1種含有させるようにすればよいが、2種以上の潜在顔料を含有させても構わない。その際に用いる潜在顔料の種類、並びに、2種以上の潜在顔料の組み合わせ及び比率は、有機光電変換素子のタイプや当該有機光電変換素子の活性層に含有させる顔料の種類及び比率などに応じて適切に選択すればよい。
また、混合半導体膜を製造する場合は、潜在顔料と固体半導体材料とを混合して塗布液を調製し、その塗布液を塗布法により成膜して前駆体膜を形成する。固体半導体材料も、塗布液に、1種を含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有させてもよい。また、固体半導体材料は、製造された有機光電変換素子において固体状態で半導体として機能すれば製造工程中においてはどのような状態であってもよく、例えば、塗布液中において溶解していてもよく、粒子状に分散していても良い。この際、2種以上の固体半導体材料を用いる場合、塗布液中に溶解するもの及び分散するものの一方のみを含有させるようにしてもよく、両方を含有させるようにしても良い。ただし、固体半導体材料としては、塗布液中で粒子状に分散する無機粒子等の粒子を使用することが好ましい。
また、粒子状の固体半導体材料を用いる場合、塗布液中における固体半導体材料の粒径の範囲は、活性層中における固体半導体材料の好適な粒径として上述した範囲と同様である。
固体半導体材料が好適な範囲の粒径を有していない場合には、必要に応じて以下に例示するような処理を行ない、固体半導体材料の粒径を好適な範囲に納めるようにすることができる。
1)例えばボールミルやサンドミルの様な機械的な手法、超音波処理などを用い、固体半導体材料を粉砕して固体半導体材料の粒子を作製する。
2)溶媒中或いは気相中で前駆体材料から変換或いは合成して、固体半導体材料の粒子を作製する。
3)油膜上に真空蒸着或いはスパッタ法などで固体半導体材料を成膜し、油膜ごと膜を回収して、固体半導体材料の粒子を得る。
4)固体半導体材料を適切な溶媒に溶解しておき、それを貧溶媒に添加して、析出する固体半導体材料の粒子を得る。
さらに、塗布液には、本発明の効果を著しく損なわない限り、潜在顔料、固体半導体材料及び溶媒以外の成分を含有していてもよい。例えば、塗布液を安定に分散させるために、界面活性剤等の分散剤を含有させてもよい。また、例えば、活性層中の電気伝導度等の電気物性を制御するドーパントを含有させてもよい。なお、潜在顔料、固体半導体材料及び溶媒以外の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、塗布液の濃度も、所望の活性層を成膜できる限り、制限は無い。したがって、塗布液中の潜在顔料及び固体半導体材料並びにその他の成分の濃度は、それぞれ任意である。ただし、塗布性を良好にするため、塗布液の粘度が塗布に適した粘度範囲となるように、溶媒を選択したり、前記濃度を設定したりすることが好ましい。また、混合半導体膜を形成する場合には、塗布液中の潜在顔料と固体半導体材料との比率は、潜在顔料を顔料に変換した場合に「固体半導体材料/顔料」で表わされる体積比が上述した好適な範囲に収まるように設定することが望ましい。
さらに、塗布液を用意する場合、潜在顔料、固体半導体材料及び溶媒並びにその他の成分の混合順序に制限は無い。例えば、溶媒に固体半導体材料を溶解又は分散させた後で溶媒に潜在顔料を溶解させてもよく、溶媒に潜在顔料を溶解させた後で溶媒に固体半導体材料を溶解又は分散させてもよい。
また、固体半導体材料が塗布液中で粒子状に分散するものである場合、塗布液は固体半導体材料を十分に分散させて分散性を高めておくことが好ましい。このため、塗布液中の固体半導体材料の分散性を高めるために、例えば、塗布液の濃度及び攪拌状態を制御したり、超音波処理を行なったりしてもよい。
用意された塗布液は、適切な塗布方法により塗布対象(通常は、基板又は電極)に塗布して、前駆体膜を成膜する。この際に使用する塗布方法に制限は無いが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
さらに、塗布法により前駆体膜を成膜した後には、必要に応じて、前駆体膜から溶媒を除去するようにしてもよい。溶媒除去の方法に制限はなく、加熱乾燥、減圧乾燥など、任意の方法を用いることができる。また、後述する変換工程においては前駆体膜を加熱することが多く、この場合には、加熱と共に溶媒が乾燥・除去されることが多い。したがって、溶媒の除去を変換工程と共に行なうようにしてもよい。
以上の成膜工程により、前駆体膜を成膜することができる。塗布液が固体半導体材料を含有している場合には、固体半導体材料が塗布液中で粒子状で分散していたとしても、前駆体膜内では固体半導体材料は塗布膜中と同様に良好に分散することになり、また、潜在顔料も一度溶媒に溶解してあるために高い分散性で分散することになる。一方、固体半導体材料が塗布液中で溶解していた場合、潜在顔料及び固体半導体材料は共に溶媒に一度溶解してあるため、前駆体膜内においては潜在顔料及び固体半導体材料はそれぞれ高い分散性で分散することになる。
[V−2.変換工程]
成膜工程で前駆体膜を形成した後、当該前駆体膜に外部から刺激を与え、前駆体膜における分散状態を保ったまま潜在顔料を顔料に変換する。これにより、顔料を含む膜を形成することができる。また、前駆体膜が潜在顔料及と固体半導体材料とを含有していた場合には、変換により、当該顔料を含む膜として、顔料と固体半導体材料とを含有する混合半導体膜を形成することができる。この際、前駆体膜における分散状態を保ったまま潜在顔料を顔料に変換するため、混合半導体膜内においても顔料及び固体半導体材料の分散性は良好なまま保たれる。
前記のように、潜在顔料を顔料に変換するための外部刺激は、例えば、熱処理や光照射等が挙げられるが、中でも、熱処理が望ましい。熱処理温度は用いる材料によるが、一般には、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、また、通常350℃以下、好ましくは300℃以下である。低い温度で変換される潜在顔料は、潜在顔料自体の安定性が悪く取り扱いが難しいことがある。一方、熱処理時の温度が高すぎると基板や電極等の有機光電変換素子の構成部材に高い耐熱性が要求され、製造コストが高くなることがある。
また、前記の外的な刺激を与える時間についても任意であるが、製造コストを考慮すると、短時間であることが好ましい。外的な刺激を与える時間は外的な刺激の種類にもよるが、好適な範囲の例を挙げると、例えば、レーザー加熱であれば1ナノ秒〜1秒、通常の加熱であれば1秒〜1時間、熱成するのであれば1時間〜数日である。
さらに、変換工程を行なう雰囲気は、空気中でも可能であるが、酸化等の影響を抑えるために、窒素やアルゴン等の不活性ガス中、或いは真空中で行なうことが好ましい。
なお、変換工程において温度変化を伴う場合には、昇温速度や冷却速度などによって生成する顔料の結晶の状態を制御することができる。
このように、変換工程によって顔料を含有する膜(好ましくは混合半導体膜)を形成することができる。活性層が単層構造である場合には、こうして得られた膜(好ましくは、混合半導体膜)が単独で活性層を構成する。また、活性層が2層以上の膜を有して構成される場合、各膜は、上述した塗布工程及び変換工程を繰り返すことにより形成することが可能である。ただし、2以上の膜を積層して活性層を構成する場合、前駆体膜を全て積層して成膜した後で、各前駆体膜に含まれる潜在顔料を一度に顔料に変換するようにしてもよいが、通常は、前駆体膜を成膜する度に変換を行ない、成膜と変換とを交互に行なうことが好ましい。通常、変換により得られる顔料は通常は溶媒に対して溶解しにくいため、積層の際に先に成膜された前駆体膜が後で積層される際に使用される塗布液によって溶解され乱されることが抑制できるからである。
さらに、2以上の膜を積層してなる活性層の場合、当該活性層は上述した製造方法により形成された膜以外の膜を備えていてもよい。その場合、膜の形成方法に制限は無い。したがって、例えば上述した電極界面層などは、公知の任意の方法によって形成することができる。
[V−3.有機光電変換素子のタイプ別の製造方法の例]
以下、有機光電変換素子のタイプ別に、製造方法の手順について具体例を挙げて説明する。なお、以下の具体例においては、特に好ましい例として活性層が混合半導体膜を有する場合を挙げて説明するが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない限り、そのような場合に限定されるものではない。
例えば、バルクヘテロ接合型の有機光電変換素子を製造する場合、半導体特性を示す顔料と固体半導体材料とを用いて混合半導体膜を形成するのであれば、まず、少なくとも、p型及びn型の一方の顔料に対応した潜在顔料と、p型及びn型の他方の固体半導体材料と、溶媒とを含有する塗布液を用意する。この際、塗布液中に含有させる潜在顔料と固体半導体材料との混合比率は、潜在顔料を顔料に変換した場合に、作製しようとする混合半導体膜中において顔料と固体半導体材料とが好適な比率範囲に収まるように設定すればよい。
なお、潜在顔料は、通常は、顔料に変化すると重量や体積などが減少するため、その減少分を加味して設定することが好ましい。そして、用意した塗布液を基板や電極に塗布して前駆体膜を成膜する(成膜工程)。その後、この前駆体膜内の潜在顔料を加熱等の外部刺激により顔料に変換し(変換工程)、p型及びn型の一方の顔料と、p型及びn型の他方の固体半導体材料とを同じ膜内に含む混合半導体膜を作製する。そして、この混合半導体膜自体を活性層として使用することができる。
バルクヘテロ接合型の有機光電変換素子においては、活性層内の相分離構造が、使用する顔料及び固体半導体材料の分子構造及び成膜処理により、様々に制御が可能である。例えば、混合する潜在顔料と固体半導体材料の混合比を変化させて相分離構造を制御することができる。また、固体半導体材料としては、上述したとおり、塗布液中において粒子として分散したものを使用することもできるし、溶媒中に溶解するものを使用することもできる。
これらのいずれの場合でも、本発明の有機光電変換素子の製造方法によれば、潜在顔料由来の顔料が固体半導体材料と相分離構造を形成する為に、バルクヘテロ接合型の有機光電変換素子に適した膜を作製することができる。
なお、ここでは顔料として半導体特性を示す顔料を用いた例を示したが、有機光電変換素子の用途などによっては半導体特性を有さない顔料を用いることも可能である。その場合には、固体半導体材料としてp型のもの及びn型のものをそれぞれ少なくとも1種用いることになる。また、このような顔料としては、増感作用のみを示し電気を流さないものが例として挙げられる。
また、例えば積層型の有機光電変換素子を製造する場合、p型及びn型の一方の固体半導体材料を含有する膜と、p型及びn型の他方の固体半導体材料を含有する膜とを形成する際に、これらのうち1以上の膜を、上述した成膜工程及び変換工程により成膜する。このとき、活性層を構成する膜の少なくとも一層は、混合半導体膜として形成することが好ましい。具体的には、前記の膜のうち少なくとも1つの膜を製造する際に、p型及びn型の一方の固体半導体材料、潜在顔料及び溶媒を含有する塗布液を用意し、この塗布液を塗布して前駆体膜を成膜し(成膜工程)、前駆体膜内の潜在顔料を顔料に変換する(変換プロセス)ことが好ましい。
ここで、顔料は半導体特性を有していてもよく、有していなくてもよい。ただし、顔料が半導体特性を示す場合、顔料の多数キャリアと固体半導体材料の多数キャリアとは、同じ極性でもよいが、逆の極性にするほうが好ましい。これにより、バルクヘテロ接合型と積層型とを組み合わせた型の有機光電変換素子を製造することができる。
また、例えばショットキー型の有機光電変換素子を製造する場合、ショットキー障壁を形成する電極に接するように活性層を設けるようにすれば良い。この場合の活性層の形成方法は、前記のバルクヘテロ接合型の活性層と同様にしてもよく、積層型の活性層と同様にしても良い。これにより、バルクヘテロ接合型又は積層型とショットキー型とを組み合わせた活性層を作製することができる。
また、例えばハイブリッド型の有機光電変換素子を製造する場合、活性層(好ましくは混合半導体膜)内に有機物質及び無機物質の両方を含有させるようにする以外は、ハイブリッド型の活性層の形成方法は、前記のバルクヘテロ接合型の活性層と同様にしてもよく、積層型の活性層と同様にしても良い。具体例を挙げると、顔料として有機物質及び無機物質の少なくとも2種を使用したり、固体半導体材料として有機物質及び無機物質の少なくとも2種を用いたり、顔料及び固体半導体材料の一方として有機物質を用いると共に顔料及び固体半導体材料の他方として無機物質を用いたりすればよい。さらに、顔料及び固体半導体材料として有機物質及び無機物質の一方のみを使用し、顔料及び固体半導体材料以外の物質を、有機物質及び無機物質の他方として含有させるようにしてもよい。このとき、無機物質は、粒子状の無機粒子であることが好ましい。
より具体的な例を挙げると、塗布液中に、潜在顔料、固体半導体材料及び溶媒の他に、チタニア、酸化亜鉛等の無機顔料粒子や、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料粒子を混合させておくようにすればよい。これにより、有機物質及び無機物質の両方を含有したハイブリッド型の活性層を形成することができる。
また、これらのタイプはいずれも他のタイプと組み合わせて実施することも可能である。ただし、本発明の有機光電変換素子の製造方法においては、いずれのタイプの有機光電変換素子を製造する場合であっても、活性層には混合半導体膜を備えさせると共に、当該混合半導体膜を、成膜工程を経て形成することが好ましい。
中でも、前記のバルクヘテロ接合型のように、一つの膜内においてp型の顔料とn型の顔料とが相分離構造を有しているものは、相の界面が大きくなり、発電効率が向上すると考えられる。さらに、本発明の製造方法においては、固体半導体材料及び顔料が良好に分散した膜を形成することが可能であることから、混合半導体膜内においては、固体半導体材料の多数キャリアと顔料の多数キャリアの極性を逆にすることが好ましい。
なお、上記の例においては、電極界面層等の混合半導体膜以外の膜を設けて活性層を構成しても良い。この際、混合半導体膜以外の膜は任意の方法により製造すればよい。
[V−4.その他]
本発明の有機光電変換素子の製造方法においては、本発明の要旨を逸脱しない限り、上述した以外の工程を行なうようにしてもよい。
例えば、塗布液を塗布する前に、潜在顔料の一部を変換しても良い。例えば、塗布液を加熱して潜在顔料の一部を顔料に変換する場合には、加熱により顔料及び/又は潜在顔料が溶液中に析出することがあるが、この顔料及び/又は潜在顔料は塗布液中に分散するため、分散性及び塗布性は良好に保たれる。
また、活性層以外の構成部材については、その製造方法に制限は無く、任意の方法を採用できる。
[V−5.効果]
以上のように、本発明の有機光電変換素子の製造方法によれば、塗布プロセスを用いて有機光電変換素子を製造することが可能である。ここで、顔料は一般に耐久性が高い。このため、本発明の有機光電変換素子は、長寿命を実現することができる。具体的な有機光電変換素子の寿命に制限は無いが長いほうが好ましく、通常1年以上、好ましくは3年以上、より好ましくは5年以上である。この効果は、活性層に混合半導体膜を備えている場合に特に顕著である。
また、本発明によっては、通常は、以下のような利点が得られる。
例えば、本発明の有機光電変換素子の製造方法によって製造された有機光電変換素子に混合半導体膜を設けた場合、その混合半導体膜において顔料及び固体半導体材料が良好に分散している。このため、高い光電変換率が実現可能である。具体的な光電変換率の範囲を挙げると、通常3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。また、上限に制限はなく、高いほど好ましい。
さらに、例えば、本発明の有機光電変換素子の製造方法では、塗布法により成膜を行なうため、印刷プロセスを利用した大面積素子の実現が可能である。
また、例えば、塗布法の利用により、低コストでの有機光電変換素子の製造が可能である。
さらに、例えば、従来困難であった顔料や固体半導体材料のナノ粒子の利用も可能である。
また、例えば、顔料として有機物質を使用し、固体半導体材料として粒子状のものを用いた場合には、有機顔料と粒子との混合膜を混合半導体膜として得ることができるが、このような混合半導体膜は従来の技術では製造が非常に困難であったものであり、当該膜を製造できることは大きな利点の一つである。中でも、当該混合半導体膜を有機顔料と無機粒子とを含む混合膜とした場合には、無機粒子の高い耐久性を有効に活用して有機光電変換素子の耐久性をよりいっそう高めることが可能となるため、好ましい。また、この場合、固体半導体材料と共に、又は、固体半導体材料に代えて、半導体特性を有さない無機粒子を使用することも可能である。この場合にも、従来は製造が困難であった有機顔料と無機粒子とを有する混合膜を有する有機光電変換素子を容易に製造できるという利点を得ることができる。
上記のような利点を有効に活用する観点から、本発明に係る有機光電変換素子は太陽電池であることが好ましい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
[実施例1]
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を145nm堆積したもの(シート抵抗8.4Ω)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅のストライプにパターニングして、透明電極を形成した。パターン形成した透明電極を、界面活性剤による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
この透明基板上に、導電性高分子であるポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS、スタルクヴィテック社製、品名Baytron PH)を40nmの膜厚でスピンコートした後、120℃で大気中10分間加熱乾燥した。
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を180℃で3分間加熱処理した。
クロロホルム/クロロベンゼンの1:1混合溶媒(重量)に下記化合物(A)を0.25重量%溶解した液をろ過後1500rpmでスピンコートし、180℃で20分加熱し、下記化合物(B)の膜を得た。
Figure 2008016834
クロロホルム/クロロベンゼンの1:1混合溶媒(重量)に化合物(A)を1.2重量%溶解した液と、フロンティアカーボン社製PCBNB(下記化合物(C))を0.8重量%溶解した液を調製し、それを重量比1:1で混合し、ろ過後1500rpmでスピンコートし、180℃で20分加熱し(B)と(C)の混合膜を得た。
Figure 2008016834
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。そこで、以下に示すフェナントロリン誘導体(通称BCP)を入れ、加熱して、蒸着した。蒸着速度は約1nm/秒とした。これにより、膜厚6nmの膜を積層した。
Figure 2008016834
引続き、上部電極形成用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、透明電極のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置した。そして、n型半導体層を形成した際と同様にして、アルミニウムを蒸着速度3nm/秒でBCP層上に膜厚80nmで蒸着し、上部電極を形成した。
以上のようにして、2mm×2mmのサイズの受光面積部分を有する有機光電変換素子からなる有機薄膜太陽電池が得られた。
この有機光電変換素子に、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cm2の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定したところ、開放電圧(Voc)0.38V、短絡電流(Jsc)7.7mA/cm2、エネルギー変換効率(ηp)1.22%、形状因子(FF)0.42、という光電変換特性が得られた。
また、この有機光電変換素子の分光感度の測定から、波長470nmにおいて、外部量子効率の最大値56%を示した。なお、前記の分光感度は、単色光を照射し、光電変換された電流強度を測定して、当該電流量を光子1個当たりに対する割合で表わした。
[実施例2]
実施例1で、化合物(B)と化合物(C)の混合層を作製する際に、クロロホルム/クロロベンゼンの1:1混合溶媒(重量)に化合物(A)を0.8重量%溶解した液と、化合物(C)を1.2重量%溶解した液を調製し、それを重量比1:1で混合したものを塗布して、160℃20分アニールした他は、全く同様にして有機光電変換素子を作製した。
この有機光電変換素子に、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cm2の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定したところ、開放電圧(Voc)0.38V、短絡電流(Jsc)7.7mA/cm2、エネルギー変換効率(ηp)1.34%、形状因子(FF)0.40、という光電変換特性が得られた。
また、この有機光電変換素子の分光感度の測定から、外部量子効率の極大値は、波長450nmにおいて57%、670nmにおいて62%を示した。
[実施例3]
ITO基盤上に、PEDOT:PSS(PH;40nm)を塗布し加熱乾燥した。クラリアントジャパン製PV−Fast Red Bを0.3g、及び、シクロヘキサノン30mlをガラスビーズと6時間攪拌して分散し、ガラスビーズをろ過して分散液を作製した。一方、0.4質量%のCPのシクロヘキサノン溶液を作製した。この二つの溶液を1:1で混合した。これを1000rpmでスピンコートし、210℃でアニールして40nmの膜を得た。この上に、アルミニウム50nmを蒸着してサンドイッチ型の素子を作製した。
Figure 2008016834
ITOとAl電極間に電圧を印加し、ITO側から林時計工業製ルミナーエースLA−100SAE 光ファイバーから出射する光で素子を照射した場合に暗所と比較して流れる電流を観測した。例えば、ITO−Al電極間に+1V(ITOが正)の電圧を印加して、流れる電流は、光照射により約8倍に増大することが観測され、光電変換素子として動作することが観測された。
本発明は例えば太陽電池について用いることができ、特に、有機半導体を用いた太陽電池に用いて好適である。

Claims (13)

  1. 少なくとも一方が透明な一対の電極と、前記電極間に形成された活性層とを備えた有機光電変換素子の製造方法であって、
    該活性層を塗布法で形成するとともに、
    該活性層が顔料を含有する
    ことを特徴とする、有機光電変換素子の製造方法。
  2. 潜在顔料を変換して該顔料とする工程を有する
    ことを特徴とする、請求項1に記載の有機光電変換素子の製造方法。
  3. 該潜在顔料を塗布法で成膜した後で該潜在顔料を該顔料に変換する
    ことを特徴とする、請求項2に記載の有機光電変換素子の製造方法。
  4. 該潜在顔料と、固体状態で半導体特性を示す材料とを混合して、塗布法により成膜する工程を有する
    ことを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の有機光電変換素子の製造方法。
  5. 前記材料が粒子である
    ことを特徴とする、請求項4に記載の有機光電変換素子の製造方法。
  6. 前記材料が無機粒子である
    ことを特徴とする、請求項5記載の有機光電変換素子の製造方法。
  7. 前記顔料が半導体特性を示す
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
  8. 前記顔料が半導体特性を示し、前記顔料の多数キャリアと前記材料の多数キャリアとが逆の極性を有する
    ことを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
  9. 少なくとも一方が透明な一対の電極と、
    前記電極間に形成された、有機顔料及び無機粒子を含む活性層とを備える
    ことを特徴とする、有機光電変換素子。
  10. 該有機顔料が、潜在顔料を変換して得られたものである
    ことを特徴とする、請求項9記載の有機光電変換素子。
  11. 該有機顔料と該無機粒子とが相分離している
    ことを特徴とする、請求項9又は請求項10記載の有機光電変換素子。
  12. 有機光電変換素子が太陽電池である
    ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
  13. 有機光電変換素子が太陽電池である
    ことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の有機光電変換素子。
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