JP5260379B2 - 有機薄膜太陽電池 - Google Patents
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Description
n層としてチタニア等の無機半導体表面にルテニウム色素等の増感色素を単分子吸着させ、p層として電解質溶液を用いた太陽電池は、色素増感太陽電池(所謂グレッツエルセル)と呼ばれ、変換効率の高さから、1991年以降精力的に研究されてきたが、溶液を用いるため、長時間の使用に際して液漏れする等の欠点を有していた。そこで、このような欠点を克服するため、電解質溶液を固体化して全固体型の色素増感太陽電池を模索する研究も最近なされているが、多孔質チタニアの細孔に有機物をしみ込ませる技術は難易度が高く、再現性よく高変換効率が発現できるセルは完成していないのが現状である。
一方、n層、p層ともに有機薄膜からなる有機薄膜太陽電池は、全固体型のため液漏れ等の欠点がなく、作製が容易であり、稀少金属であるルテニウム等を用いないこと等から最近注目を集め、精力的に研究がなされている。
具体的には、BCPに代表されるフェナントロリン誘導体を電極との界面に有機阻止層又は励起子阻止層として導入した構成が提案されている(特許文献1)。
特許文献1の太陽電池は有機多層型ではあるが、フェナントロリン誘導体に限定された技術であり、当該誘導体を用いた素子は保存特性が悪く、性能の経時変化が大きい問題があった。
1.一対の電極と、
前記一対の電極間に挟持された1以上の有機層からなる有機固体多層部を有し、
前記一対の電極の少なくとも一方に接する有機層が、1以上の電子供与性構造D及び1以上の電子受容性構造Aを有するπ電子共役系分子骨格Lを含む化合物を含有する有機薄膜太陽電池。
2.前記1以上の電子供与性構造D及び1以上の電子受容性構造Aを有するπ電子共役系分子骨格Lからなる化合物が、下記式(1)で表される化合物である1に記載の有機薄膜太陽電池。
Aは、電子受容性置換基である。
Arは、それぞれ置換若しくは無置換のアリーレン基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基である。
Vは、それぞれ置換若しくは無置換のビニレン基、又は置換若しくは無置換のアゾメチン基である。
p、q及びrは、それぞれ0〜3の整数である。
D及びAr並びにV及びAは、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
3.前記式(1)で表される化合物のArがフェニレン基、ナフタレニル基又はアントラセニレン基であり、Vがビニレン基であり、p、q及びrがそれぞれ1〜2の整数であり、電子供与性置換基Dが置換若しくは無置換の水酸基、又は置換若しくは無置換のアミノ基であり、電子受容性置換基Aがニトロ基、シアノ基又は下記式(2)で表される置換基である2に記載の有機薄膜太陽電池。
R2は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基である。
Rは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキルアミノ基、又は置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリールアミノ基である。)
4.前記1以上の電子供与性構造D及び1以上の電子受容性構造Aを有するπ電子共役系分子骨格Lからなる化合物が、下記式(3)で表される化合物である1〜3のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
R3及びR4並びにR5及びR6は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
nは、0〜2の整数である)
5.前記1以上の電子供与性構造D及び1以上の電子受容性構造Aを有するπ電子共役系分子骨格Lからなる化合物が、下記式(4)〜(7)のいずれかで表される化合物である1に記載の有機薄膜太陽電池。
D1は、水素原子、置換若しくは無置換のアミノ基、又は置換若しくは無置換の水酸基である。
D2は、NR2であり、
R2は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基である。
Arは、それぞれ置換若しくは無置換のアリーレン基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基である。
t及びuは、それぞれ0〜3の整数である。)
6.前記1以上の電子供与性構造D及び1以上の電子受容性構造Aを有するπ電子共役系分子骨格Lからなる化合物が、下記式(8)で表される化合物である1に記載の有機薄膜太陽電池。
D3〜D10の少なくとも1つはジアリールアミノ基である。)
Aは、電子受容性置換基である。
Arは、それぞれ置換若しくは無置換のアリーレン基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基である。
Vは、それぞれ置換若しくは無置換のビニレン基(−C=C−)、又は置換若しくは無置換のアゾメチン基(−C=N−)である。
p、q及びrは、それぞれ0〜3の整数である。
D及びAr並びにV及びAは、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
R2は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基である。
Rは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキルアミノ基、又は置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリールアミノ基である。)
R3及びR4並びにR5及びR6は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
nは、0から2の整数である)
D1は、水素原子、置換若しくは無置換のアミノ基、又は置換若しくは無置換の水酸基である。
D2は、NR2であり、
R2は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基である。
Arは、それぞれ置換若しくは無置換のアリーレン基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基である。
t及びuは、それぞれ0〜3の整数である。)
但し、Dが全て水素原子の場合を含まない。)
尚、下記(1)〜(8)の構成において、例えばバッファー層が、本発明の化合物を含有する有機層に相当する。
(2)下部電極/バッファー層/有機化合物層/上部電極
(3)下部電極/p層/n層/バッファー層/上部電極
(4)下部電極/バッファー層/p層/n層/上部電極
(5)下部電極/バッファー層/p層/n層/バッファー層/上部電極
(6)下部電極/p層/i層(又はp材料とn材料の混合層)/n層/バッファー層/上部電極
(7)下部電極/バッファー層/p層/i層(又はp材料とn材料の混合層)/n層/上部電極
(8)下部電極/バッファー層/p層/i層(又はp材料とn材料の混合層)/n層バッファー層/上部電極
図1が示すように、(1)の構成を有する有機薄膜太陽電池1は、上部電極10、バッファー層20、有機化合物層30及び下部電極40がこの順に積層した構造を有する。
有機薄膜太陽電池1において、一対の電極(上部電極10及び下部電極40)がバッファー層20及び有機化合物層30からなる有機固体層部50を挟持し、例えば上部電極10に接するバッファー層が本発明の化合物を含有する。
有機薄膜太陽電池は、一般に総膜厚が薄い場合が多いため、上部電極及び下部電極が短絡して、セル作製の歩留まりが低下するおそれがある。当該短絡は、バッファー層を積層することで防止することができる。
尚、バッファー層は2層以上の積層体であってもよいが、バッファー層が本発明の化合物を含む場合、電極に接するバッファー層が本発明の化合物を含有する。
具体的には有機EL用途で公知な材料であるバソクプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)等が陰極側の正孔障壁層材料として挙げられる。
有機層は、p層、p材料とn材料の混合層(i層)及びn層を含む。
p層の材料(p材料)及びn層の材料(n材料)は、特に限定されず、有機薄膜太陽電池に用いられる公知の化合物を用いることができる。
当該p材料の有機化合物としては、例えばN,N’−ビス(3−トリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(mTPD)、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)、4,4’,4’’−トリス(フェニル−3−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等に代表されるアミン化合物、フタロシアニン(Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、チタニルフタロシアニン(TiOPc)等のフタロシアニン類、オクタエチルポルフィリン(OEP)、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)、亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)等に代表されるポルフィリン類が挙げられる。
当該n材料の有機化合物としては、例えばC60、C70等のフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等、高分子系ではCN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基又はCF3基含有ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体等を挙げることができる。
上記n型特性無機半導体化合物としては、n−Si、GaAs、CdS、PbS、CdSe、InP、Nb2O5,WO3,Fe2O3等のドーピング半導体及び化合物半導体、また、二酸化チタン(TiO2)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti2O3)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の導電性酸化物が挙げられる。
上記n型特性無機半導体化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、好ましくは酸化チタンを用い、特に好ましくは二酸化チタンを用いる。
本発明の有機薄膜太陽電池の一対の電極(上部電極及び下部電極)は特に制限はなく、暗視野で電気伝導性を有する薄膜であればよい。
p層と接続する電極としては、例えば錫ドープ酸化インジウム(ITO)や金(Au)、オスミウム(Os),パラジウム(Pd)等の金属からなる電極が使用できる。
p層と接続する電極の対向電極としては、例えば銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In),カルシウム(Ca),白金(Pt)リチウム(Li)等の金属からなる電極、Mg:Ag、Mg:InやAl:Li等の二成分金属系からなる電極,及び上述のp層と接続する電極が使用できる。
一対の電極は、電極の一方が仕事関数の大きな金属を含み、他方が仕事関数の小さな金属を含むと好ましい。
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有する基板が好ましく、例えばガラス基板及び透明性樹脂フィルムが挙げられる。
透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
本発明の有機薄膜太陽電池の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、インクジェット等の湿式成膜法を適用することができる。
上記溶媒としては、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。
尚、使用可能な溶媒は、これらに限定されるものではない。
一般に有機薄膜の励起子拡散長は短いことが知られており、膜厚が厚すぎると励起子がヘテロ界面に到達する前に失活してしまうため、光電変換効率が低くなるおそれがある。一方、膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生してしまうため、充分なダイオード特性が得られないため、変換効率が低下するおそれがある。通常の各層の膜厚は、それぞれ1nmから10μmの範囲が適しているが、5nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。
使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。
また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
25mm×75mm×0.7mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間実施した。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、下部電極である透明電極ラインが形成されている側の面上に銅フタロシアニンを抵抗加熱蒸着し、透明電極を覆うようにして0.5Å/sで成膜して、膜厚30nmのp層を形成した。次に、フラーレン(C60)を抵抗加熱蒸着し、0.5Å/sで成膜してp層上に膜厚60nmのn層を形成した。以下に示す化合物1(同仁化学製)を抵抗加熱蒸着し、n層上に膜厚10nmのバッファー層を形成し、さらに上部電極として金属Alをバッファー層上に膜厚100nmで蒸着し、有機薄膜太陽電池を作製した。面積は0.05cm2であった。
尚、光電変換効率は下記式によって導出した。
併せて、経時性能(Voc30、Jsc30、FF30及びη30)及び初期性能(Voc0、Jsc0、FF0及びη0)の比率(経時性能/初期性能)も合わせて表1に示す。
バッファー層を形成しなかった他は参考例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
10 上部電極
20 バッファー層
30 有機化合物層
40 下部電極
50 有機固体多層部
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