JP2008001883A - フェノール樹脂成形材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェノール樹脂、ワラストナイト及び炭素物質を含有するフェノール樹脂成形材料であって、炭素物質として付着性炭素物質を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料である。
【選択図】なし
Description
ガラス繊維を充填剤とし、その配合量を高めたフェノール樹脂成形材料は、耐熱性、寸法安定性及び強度の点では、金属材料の代替材料として十分な特性を有する。
しかしながら、ガラス繊維の添加量が増加すると、それに依存して耐摩耗性が低下する傾向にあり、このため耐摩耗性が要求される用途への適用は困難であった。
そこで、ガラス繊維を充填剤として含有するフェノール樹脂成形材料の耐摩耗性を向上させようとする試みが多くなされてきた。
例えば、特許文献1には、ノボラック型フェノール樹脂をベース樹脂として、主たる充填剤に、ガラス繊維とガラスビーズを用いた樹脂製プーリーの発明が、特許文献2には、主たる充填剤として、アラミド繊維とガラス繊維とガラス粉とを用いたフェノール樹脂成形材料の発明が、更に特許文献3には、主たる充填剤にガラス繊維を使用し、耐摩耗性向上のため有機天然材料と潤滑剤を用いたフェノール樹脂成形材料の発明が開示されている。
特許文献4には、結晶構造がオニオン構造の炭素繊維〔例えば、PAN(ポリアクリロニトリル)系〕を使用した報告があるが、機械的強度は向上しているが耐摩耗性が不充分である。
特許文献5にはグラファイトの添加、特許文献6には、黒鉛の添加による耐摩耗性の向上が記載されているが、いずれも機械的強度を低下させる欠点がある。
これらのように耐摩耗性の向上が試みられているが、機械的強度を落とさずに、耐摩耗性を高く保持することは非常に困難であった。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
本発明は、以下に関する。
1.フェノール樹脂、炭素物質及び無機物質を含有するフェノール樹脂成形材料であって、炭素物質として付着性炭素物質含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料、
2.付着性炭素物質の含有量が成形材料全体の0.3〜70質量%である上記1記載のフェノール樹脂成形材料、
3.無機物質の含有量が成形材料全体の10〜80質量%である上記1又は2記載のフェノール樹脂成形材料、
4.炭素物質が繊維状の炭素物質である上記1〜3のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料、
5.繊維状の炭素物質の平均繊維長が、樹脂と混練した後の段階において、10〜250μmである上記4記載のフェノール樹脂成形材料、
6.繊維状の炭素物質がピッチ系炭素繊維である上記4又は5記載のフェノール樹脂成形材料、
7.無機物質がシリカ及び/又はガラスである上記1〜6のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料、
8.シリカが球状シリカである上記7記載のフェノール樹脂成形材料、
9.ガラスがガラス繊維である上記7記載のフェノール樹脂成形材料、
10.ガラス繊維の含有量が成形材料全体の10〜50質量%である上記9に記載のフェノール樹脂成形材料
以下、フェノール樹脂成形材料は、フェノール樹脂成形材料又は単に成形材料と表す。
本発明のフェノール樹脂成形材料に使用するフェノール樹脂は、ノボラック型又はレゾール型を単独で使用してもよく、また両者を併用してもよい。
本発明で使用するノボラック型フェノール樹脂については特に限定はないが、例えば、ランダムノボラック樹脂、ハイオルソノボラック樹脂が挙げられる。
ノボラック型フェノール樹脂は、蓚酸などの酸触媒の存在下でフェノール類とホルムアルデヒドを第二族元素又は遷移元素と蟻酸、酢酸などの有機モノカルボン酸又はホウ酸、塩酸、硝酸などの無機酸との塩の存在下で反応させることによって合成できる。
本発明で使用するレゾール型フェノール樹脂については特に限定されず、メチロール型、ジメチレンエーテル型が挙げられるが、これらの中でも硬化性と熱安定性のバランスが良好であるという理由でジメチレンエーテル型を用いるのが好ましい。
ジメチレンエーテル型レゾール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドを第二族元素又は遷移元素と蟻酸、酢酸などの有機モノカルボン酸又はホウ酸、塩酸、硝酸などの無機酸との塩の存在下で反応させることによって合成できる。
本発明で使用するジメチレンエーテル型レゾール樹脂は、ジメチレンエーテル基含有量20〜70モル%で、数平均分子量400〜1000のものが硬化性の点から望ましい。
レゾール型フェノール樹脂の軟化点は特に制約されないが、70℃以上であることが作業性に優れ好ましい。
すなわち、レゾール型樹脂の粉砕が容易になり他の充填材などとの混合がやり易くなる。
より好ましくは12〜18質量%である。
10質量%以上では、硬化が十分であり、25質量%以下では、硬化が十分であるとともに、分解ガス等による成形不良の発生もない。
この付着性炭素物質は、フェノール樹脂及び/又は無機物質に対して付着性を有していると考えられる。
平板表面に付着残存している炭素物質は1質量%以上が好ましい。より好ましくは2質量%以上である。
また、付着性炭素物質と付着性を有しない炭素物質の混合物であっても、該混合物が付着性を有する場合、これらを数種組み合わせてもよい。
数種を組み合わせた混合物の場合、単独で付着性炭素物質が成形材料全体の0.3〜70質量%含むように調節することが好ましい。
なお、炭素物質が数種の混合物であって、如何なる炭素物質の混合物か不明である場合には、単独で付着性を有する炭素物質量が不明確であるので、添加量を変えて適切な添加量を見出すことが必要とはなるが、該混合物が付着性を有する場合は適量加えることにより、耐摩耗性の効果を発現することができる。
つまり、付着性炭素物質は、摩耗により摩耗粉を発生させ、それと同時に摩耗面を平らにコーティングする働きをする。
また、炭素の潤滑性によって、摩耗を抑制し、摩耗面の凹凸を減少させることができる。
炭素物質は、成形品の耐摩耗性を保持するために成形材料全体の0.3〜70質量%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは5〜20質量%である。
配合量がこの範囲にあると、機械的強度と耐摩耗性を高く保持することができる。
配合量が2質量%以上では、耐摩耗効果が十分に発揮され、配合量が70質量%以下であると機械的強度が上昇して良好な成形品が得られる。
ピッチ系炭素繊維は主に炭素原子六角網平面から構成され、網平面が乱雑に集合した等方性のものが特に好ましい。
このようなピッチ系炭素繊維の例としては、日本グラファイトファイバー社製(XN−100−03S)などが挙げられる。
以下、繊維状の炭素物質は、付着性炭素繊維又は単に炭素繊維と表す。
成形材料中の炭素繊維の平均繊維長が10μm未満では、機械的強度が低下し、250μmを超えると、成形しにくくなる。
本発明における炭素繊維の平均繊維長は、例えば、粉砕したBステージ(半硬化)状態の成形材料を10質量%になるようにアセトンを加え、24〜48時間浸漬し、フェノール樹脂部分を溶解させ、その後、凹凸のないガラス板にキャストし、無作為に1mm四方の枠の中に存在するすべての炭素繊維の長さを顕微鏡を用いて測定し、測定数が100本以上になるまでこれを繰り返して得た繊維長分布のピーク位置を意味する。
また、炭素繊維の平均繊維径は、通常5〜30μm、好ましくは7〜20μm、より好ましくは8〜18μmである。
無機物質としては、ワラストナイト(モース硬度4〜5)のモース硬度と同等以下の無機物質が好ましく、例えば、蛍石、パール(モース硬度4)など、燐灰石、ガラス(モース硬度5)などが挙げられる。
無機物質の含有量は、成形材料全体の10〜80質量%であることが好ましい。
より好ましくは20〜70質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。
配合量が10質量%以上では、耐摩擦性が上昇し、80質量%以下であると、機械的強度が向上する。
無機物質の形状としては、粉末状、粒状、繊維状等の物質が挙げられる。
無機物質の形状は、成形材料の耐摩耗性の点から、また成形材料の流動性の点から、不定形の粒子よりも球状粒子を用いることが好ましい。
球状粒子の平均粒径は、炭素物質及び/又はフェノール樹脂と緻密に分散しやすい50μm以下が好ましい。
より好ましくは10〜40μm、更に好ましくは15〜35μmである。
平均粒径が50μm以下であると、破砕粉の大きさが小さくなるため、耐摩耗効果が上昇する。
球状粒子の含有量は、成形材料全体の10〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜50質量%である。
配合量が10質量%以上では、流動性及び成形性が共に向上し、60質量%以下であると、機械的強度が上昇する。
球状粒子としては、破砕のしやすさ、破砕粉のサイズ、硬度などのバランスから球状シリカがより好ましい。
それによって、付着性炭素物質から発生する摩耗粉が、摩耗面全体を均一にコーティングし、摩耗粉に含まれている炭素の潤滑性が作用するため、耐摩耗性の効果を高めることができる。
従って、耐摩耗効果を高めるため、成形材料中の無機物質の質量を成形材料中の炭素物質の質量で除した値をαとすると、通常、0.15≦α<266の範囲である。
好ましくは0.4≦α≦70、より好ましくは1.5≦α≦14である。
αが上記範囲内であると耐摩耗性が十分である。
すなわち、αが0.15以上であると、炭素物質の量が適性であるため、耐摩耗効果がよく、機械的強度も上昇する。
αが266以下であると、摩耗粉に含まれる炭素物質の量が適性であるため、摩耗粉が摩耗面を均一にコーティングし易く、炭素の潤滑性が十分に発揮されるため、耐摩耗効果が上昇する。
すなわち、本発明の成形材料は、無機繊維を含有することにより、得られる成形品の機械的強度が向上する。
無機繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、通常5〜50μmであり、好ましくは6〜40μm、より好ましくは6〜30μmである。
平均繊維径の範囲の繊維を用いることにより、成形材料化段階での作業性を向上させることができる。
また、繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、樹脂と混練した後の段階において、通常10μm〜500μmであり、好ましくは20μm〜200μmmである。
平均繊維長の範囲の繊維を用いることにより、成形材料化時の作業性、成形性及び成形体の強度を向上させることができる。
この無機繊維の含有量は、成形材料全体に対して10〜80質量%であることが好ましく、強度が十分で流動性が高くなる点でより好ましくは30〜70質量%である。
ガラス繊維を添加する場合には、含有量は成形材料全体に対して10〜30質量%が好ましい。
かかる無機繊維の含有量が10質量%以上では、成形品の機械的強度が十分であり、80質量%以下であると、成形材料製造時の作業性が良好である。
無機繊維としては、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維としては、通常繊維長が1〜6mm、より好ましくは1〜4mmのチョップドストランドタイプのものを使用することが好ましい。
平均繊維長の範囲のガラス繊維を用いることにより、樹脂との混練時に平均的繊維長が、通常、10〜500μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜130μmの範囲になり、成形材料化時の作業性、成形性及び成形体の強度を向上させることができる。
ガラス繊維をこの範囲で添加すると、成形材料の強度を向上させることができる。
すなわち、フェノール樹脂、硬化剤、炭素物質、無機物質、離型剤、硬化助剤、顔料等の各種添加剤を加えて、均一に混合後、加熱ロール、コニーダ、二軸押出し機等の混練機単独又はロールと他の混合機との組合せで加熱混練し、粉砕又は造粒機によりペレット化して得られる。
表1に炭素物質の付着性試験を行った結果を、表2に実施例及び比較例に使用した原材料を、表3、表4に各組成分の配合割合と得られたフェノール樹脂成形品の特性を示す。
本発明における炭素物質の付着性は、室温(25℃)で基台上に凹凸のないガラス製の平板を固定し、その平板上の荷重のかかる面の中央部分に、秤量した炭素物質10〜30mgを置き、炭素物質を前後それぞれ4cmに渡って、3kgf/cm2(0.294MPa)の荷重をかけながら連続100回往復させた後、綿ガーゼ布を用いて、ガラス平板上を荷重10g(98mN)で10回往復させ、ガラス平板表面上に粉体状に残存している炭素物質を完全に取り除き、ガラス平板に載せた炭素物質全質量Xに対して、Xの0.1質量%以上の炭素物質が平板表面に付着残存しているものを付着性が有、0.1質量%未満のものを付着性が無として判断した。
表2に示す原材料を使用し、表3に示す配合割合で配合し、加熱混練し、成形材料とした。
但し、実施例7については、炭素繊維を除いた残りの成分を混練機で加熱混合後、粉砕し、炭素繊維をミキサーで混練し、成形材料とした。
なお、付着性炭素繊維として表1に記載の炭素繊維のうち、XN−100−03S〔商品名;日本グラファイトファイバー(株)製〕及びK223GM〔商品名;三菱化学産資(株)製〕を使用した。
また、実施例6については、実施例1〜5に用いたピッチ系炭素繊維を用いると、混練が不十分になり、成形できなかったため、別種の材料を用いた。
また、使用した炭素繊維に関しては、再度付着性試験を行った。射出成形は、金型温度180℃、硬化時間1分で行った。
但し、射出成形できない実施例7については、プレス成形した。プレス成形は、金型温度180℃、硬化時間1分で行った。
結果を表4に示した。
上記の通り測定した。
JIS K 6911により成形した試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm)を島津製作所(株)社製テンシロンにて測定した。
測定条件はスパン距離;64mm、ヘッドスピード;2mm/minである。
円柱状摩耗輪(ローター、ステンレス製、直径18mm、幅10mm、比重7.86)を試験片(ステーター)が、摩耗輪上部で左右対称な2箇所で線接触し、荷重3kgが2箇所の接触部に均等にかかるように設置した。
ローターを60rpm、10時間回転させた後、ローターとステーターの摩耗した質量をローターとステーター各々の材料の比重で除した値を求めた。
繊維長は、粉砕したBステージ状態の成形材料を10質量%になるようにアセトンを加え、24〜48時間浸漬し、樹脂部分を溶解させ、その後凹凸のないガラス板にキャストし、無作為に1mm四方の枠の中に存在するすべての炭素繊維の長さは顕微鏡を用いて測定し、測定数が100本以上になるまでこれを繰り返して得た繊維長分布のピーク位置を求めた。
摺動摩耗試験処理後のステーターの摩耗面を走査型電子顕微鏡により観察し、評価した。
連続射出成形可能なものを○、成形不可能なものを×として評価した。
なお、実施例で用いたピッチ系炭素繊維の付着性は、付着試験に使用した炭素繊維量の2質量%程度であった。
特に、混練後の繊維長が250μm以下である実施例1〜6は連続射出成形ができ、成形性に優れている。
表4より、比較例1〜5は、球状シリカのほか、ガラス繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、黒鉛粉末、ワラストナイトをそれぞれ添加した。
比較例1は、付着性のないPAN系炭素繊維を添加した。
この場合は、強度は高い値を示しているが、付着性を有していないため、ステーター及びローター摩耗量が共に大きい。
また、比較例1の摩耗面は、走査型電子顕微鏡を用いて観察した結果、凹凸のある状態であった。
比較例2は、実施例1〜6と同程度の強度が保持されているものの、発生するガラス粉による摩耗のため、ステーター及びローター摩耗量がいずれも大きい。
比較例3は実施例4と同程度の炭素物質を含有しているが、比較例4の炭素物質が付着性を有していないため摩耗量が大きい。
比較例4は付着性炭素物質を含まず、ワラストナイトの硬度が低いため、実施例1〜6のいずれと比較しても強度が低く、ステーター及びローター摩耗量も大きい。
このような特性を有することから、本発明のフェノール樹脂成形材料は、樹脂製摺動部品用材等として適している。
Claims (10)
- フェノール樹脂、炭素物質及び無機物質を含有するフェノール樹脂成形材料であって、炭素物質として付着性炭素物質含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
- 付着性炭素物質の含有量が成形材料全体の0.3〜70質量%である請求項1記載のフェノール樹脂成形材料。
- 無機物質の含有量が成形材料全体の10〜80質量%である請求項1又は2記載のフェノール樹脂成形材料。
- 炭素物質が繊維状の炭素物質である請求項1〜3のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
- 繊維状の炭素物質の平均繊維長が、樹脂と混練した後の段階において、10〜250μmである請求項4記載のフェノール樹脂成形材料。
- 繊維状の炭素物質がピッチ系炭素繊維である請求項4又は5記載のフェノール樹脂成形材料。
- 無機物質がシリカ及び/又はガラスである請求項1〜6のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
- シリカが球状シリカである請求項7記載のフェノール樹脂成形材料。
- ガラスがガラス繊維である請求項7記載のフェノール樹脂成形材料。
- ガラス繊維の含有量が成形材料全体の10〜50質量%である請求項9に記載のフェノール樹脂成形材料。
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