JP2007297587A - フェノール樹脂成形材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェノール樹脂、ワラストナイト及び炭素物質を含有するフェノール樹脂成形材料において、炭素物質としてフェノール樹脂及び/又はワラストナイトに対して付着性を有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料である。
【選択図】なし
Description
ガラス繊維を充填剤とし、その含有量を高めたフェノール樹脂成形材料は、耐熱性、寸法安定性及び強度の点では、金属材料の代替材料として十分な特性を有する。
しかしながら、ガラス繊維の含有量が増加すると、それに依存して耐摩耗性が低下する傾向にあり、このため樹脂製摺動部品の耐摩耗性が要求される用途への適用は困難であった。
そこで、ガラス繊維を充填剤として含有するフェノール樹脂成形材料の耐摩耗性を向上させようとする試みが多くなされてきた。
例えば、特許文献1には、ノボラック型フェノール樹脂をベース樹脂として、主たる充填剤に、ガラス繊維とガラスビーズを用いた樹脂製プーリーの発明が、特許文献2には、主たる充填剤として、アラミド繊維とガラス繊維とガラス粉とを用いたフェノール樹脂成形材料の発明が、更に特許文献3にあるように、主たる充填剤として、ガラス繊維とワラストナイトを用いたフェノール成形材料の発明がなされている。
従って、耐摩耗性を向上させるため、主たる充填剤の他に様々な物質を添加した成形材料が発明されている。
特許文献4には、主たる充填剤としてガラス繊維とワラストナイトを使用し、有機天然材料とグラファイトを添加したフェノール樹脂成形材料の発明が開示されている。
特許文献5には、焼成クレイを添加した発明が、特許文献6には、ポリイミドパウダーとパルプ粉を添加した耐摩耗性を有する成形材料の発明が記載されているが、近年の自動車、産業機器などの摺動部品への金属代替樹脂への要求として、更なる耐摩耗性の向上と低コスト化が望まれている。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
本発明は、以下に関する。
1.フェノール樹脂、ワラストナイト及び炭素物質を含有するフェノール樹脂成形材料であって、炭素物質として付着性炭素物質を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料、
2.フェノール樹脂100質量部に対して、ワラストナイトを80質量部以上、200質量部未満、炭素物質を1.5〜180質量部含む上記1に記載のフェノール樹脂成形材料、
3.更に、補強繊維を、フェノール樹脂100質量部に対して50〜150質量部含む上記1又は2に記載のフェノール樹脂成形材料、
4.炭素物質が繊維状である上記1〜3のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料
また、ワラストナイトと付着性炭素物質の相乗効果により、成形品の耐摩耗効果が大きく、機械的強度も高い。
以下、フェノール樹脂成形材料は、フェノール樹脂成形材料又は単に成形材料と表す。
本発明のフェノール樹脂成形材料に使用するフェノール樹脂は、ノボラック型又はレゾール型を単独で使用してもよく、また両者を併用してもよい。
本発明で使用するノボラック型フェノール樹脂については特に限定はないが、例えば、ランダムノボラック樹脂、ハイオルソノボラック樹脂が挙げられる。
ノボラック型フェノール樹脂は、蓚酸などの酸触媒の存在下でフェノール類とホルムアルデヒドを第二族元素又は遷移元素と蟻酸、酢酸などの有機モノカルボン酸又はホウ酸、塩酸、硝酸などの無機酸との塩の存在下で反応させることによって合成できる。
本発明で使用するレゾール型フェノール樹脂については特に限定されず、メチロール型、ジメチレンエーテル型が挙げられるが、これらの中でも硬化性と熱安定性のバランスが良好であるという理由でジメチレンエーテル型を用いるのが好ましい。
ジメチレンエーテル型レゾール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドを周期律表第2族元素又は遷移元素と蟻酸、酢酸などの有機モノカルボン酸又はホウ酸、塩酸、硝酸などの無機酸との塩の存在下で反応させることによって合成できる。
本発明で使用するジメチレンエーテル型レゾール樹脂は、ジメチレンエーテル基含有量20〜70モル%で、数平均分子量400〜1000のものが硬化性の点から望ましい。
レゾール型フェノール樹脂の軟化点は特に制約はないが、70℃以上であることが作業性に優れ好ましい。
すなわち、レゾール型樹脂の粉砕が容易になり他の充填材などとの混合がやり易くなる。
より好ましくは12〜18質量%である。
10質量%以上配合することにより、硬化が充分となり、25質量%以下では硬化が充分であるとともに分解ガス等により成形不良の発生もない。
また、ワラストナイトの配合量は、フェノール樹脂100質量部に対して、80質量部以上、200質量部未満であることが好ましい。
より好ましくは80〜180質量部、更に好ましくは90〜170質量部である。
ワラストナイトの配合量が80質量部以上、200質量部未満では、耐摩擦性及び機械的強度が向上する。
ワラストナイト以外の無機物質としては、ワラストナイト(モース硬度4〜5)のモース硬度と同等以下の無機物質が好ましく、例えば、蛍石、パール(モース硬度4)など、燐灰石、ガラス(モース硬度5)などが挙げられる。
一方、正長石、オパール(モース硬度6)など、シリカ、水晶、トルマリン、ジルコニア、ムライト、アルミナ(モース硬度7以上)などのモース硬度がワラストナイトより高い無機物質を含むと耐摩耗性が低下する場合がある。
ワラストナイト以外の無機物質の配合量は、フェノール樹脂成形材料中、通常、0〜30質量%、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜15質量%である。
この付着性炭素物質は、フェノール樹脂及び/又は無機物質に対して付着性を有していると考えられる。
平板表面に付着残存している炭素物質は1質量%以上が好ましい。より好ましくは2質量%以上である。
また、付着性炭素物質と付着性を有しない炭素物質の混合物であっても、該混合物が付着性を有する場合、これらを数種組み合わせてもよい。
数種を組み合わせた混合物の場合、単独で付着性炭素物質をフェノール樹脂100質量部に対して1.5〜180質量部含むように調節することが好ましい。
なお、炭素物質が数種の混合物であって、如何なる炭素物質の混合物か不明である場合には、単独で付着性を有する炭素物質量が不明確であるので、添加量を変えて適切な添加量を見出すことが必要とはなるが、該混合物が付着性を有する場合は適量加えることにより、耐摩耗性の効果を発現することができる。
つまり、付着性炭素物質は、摩耗により摩耗粉を発生させ、それと同時に摩耗面を平らにコーティングする働きをする。
また、炭素の潤滑性によって、摩耗を抑制し、摩耗面の凹凸を減少させることができる。
成形品の摩耗面に、付着性炭素物質とワラストナイトが均一に分散すると、良好な機械強度を保持することができると共に、摩耗面に均一に付着性炭素物質が現れるため、耐摩耗性の効果を十分発揮することができる。
付着性炭素物質は、成形品の耐摩耗性を保持するために、フェノール樹脂100質量部に対して通常、1.5〜180質量部の範囲で使用される。
好ましくは3〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部である。
配合量がこの範囲内であると、機械的強度と耐摩耗性を高く保持することができる。
すなわち、配合量が1.5質量部以上であると、耐摩耗効果が十分に発揮され、180質量部以下であると、機械的強度が著しく向上し、良好な成形品を容易に得ることができる。
ピッチ系炭素繊維は、主として炭素原子六角網平面から構成され、網平面が乱雑に集合した等方性のものが特に好ましい。
このようなピッチ系炭素繊維の例としては、日本グラファイトファイバー社製(XN−100−03S)などが挙げられる。
以下、繊維状の炭素物質は、付着性炭素繊維又は単に炭素繊維と表す。
それによって、付着性炭素物質から発生する摩耗粉が、摩耗面全体を均一にコーティングし、摩耗粉に含まれている炭素の潤滑性が作用するため、耐摩耗性の効果を高めることができる。
従って、耐摩耗効果を高めるためには、ワラストナイトと付着性炭素物質の配合割合は、フェノール樹脂100質量部に対するワラストナイトの質量部を、フェノール樹脂100質量部に対する付着性炭素物質の質量部で除した値をαとすると、通常、0.5≦α<133の範囲である。
好ましくは0.8≦α≦60、より好ましくは1.8≦α≦34である。
αが上記範囲内であると耐摩耗性が十分である。
すなわち、αが0.5以上であると、炭素物質の量が適性であるため、耐摩耗効果がよく、機械的強度も上昇する。
αが133以下であると、摩耗粉に含まれる炭素物質の量が適性であるため、摩耗粉が摩耗面を均一にコーティングしやし易く、炭素の潤滑性が十分に発揮されるため、耐摩耗効果が上昇する。
なお、付着性炭素物質のみを添加し、ワラストナイトを添加しない場合でも耐摩耗性向上の効果は得られるが、付着性炭素物質を多量に添加しなければならない。
すなわち、付着性炭素物質とワラストナイトの両者を併用した場合には以下の利点がある。
付着性炭素物質の一つであるピッチ系炭素繊維に比べてワラストナイトは安価であるため、製造コストの低減も可能であり、機械的強度の低下もない。
すなわち、ワラストナイトは、硬度が低くいため、ワラストナイトによる摩耗粉はガラスのように摩耗面を粗く削ることがなく、付着性炭素物質から発生する摩耗粉の生成を維持することができるため、付着性炭素物質の摩耗粉が平らな摩耗面に付着することができる。
それによって、付着性炭素物質から発生する摩耗粉が、摩耗面全体を均一にコーティングし、摩耗粉に含まれている炭素の潤滑性が作用するため、耐摩耗性の効果を高めることができる。
また、機械的強度は、付着性炭素物質自身の機械的強度が低いために、付着性炭素物質の含有量の増加と共に、成形材料の機械的強度が低下すると考えられる。
従って、ワラストナイトと付着性炭素物質を併用することにより、大きな耐摩耗性効果を維持したまま、付着性炭素物質の含有量を低減させることができるため、成形材料において良好な機械的強度が得られるというものである。
この場合には、補強繊維として繊維状のフィラーを添加することが好ましい。
このような補強繊維としては、ガラス繊維が挙げられる。
また、ガラス繊維以外の補強繊維としては、公知のロックウール、セラミック繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維等の無機繊維、解繊パルプ、粉末パルプ、粉砕布、芳香族ポリアラミド繊維等の有機繊維、金属繊維などが挙げられる。
本発明に用いられる補強繊維は、単独1種類で使用してもよく、また、2〜3種類の補強繊維を併用してもよい。
補強繊維としてガラス繊維などを添加することにより、得られる成形品の機械的強度が向上する。
本発明においては、補強繊維としてガラス繊維を添加することが好ましい。
ガラス繊維の平均繊維直径は、特に限定されないが、通常、6〜15μmである。
また、平均繊維直径の範囲のガラス繊維を用いることにより、成形材料化段階での作業性を向上させることができる。
ガラス繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、混練前において、通常、1〜6mm、好ましくは1〜5mm、より好ましくは1〜4mmのチョップドストランドタイプのものを使用する。
平均繊維長の範囲のガラス繊維を用いることにより、樹脂との混練時に平均的繊維長が、通常、10〜500μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜130μmの範囲になり、成形材料化時の作業性、成形性及び成形体の強度を向上させることができる。
また、炭素繊維の平均繊維径は、通常5〜30μm、好ましくは7〜20μm、より好ましくは8〜18μmである。
好ましくは55〜140質量部、より好ましくは60〜100質量部である。
かかる補強繊維の配合量が50質量部以上であると、成形品の機械的強度が十分となり、150質量部以下であると、耐摩耗性及び成形材料製造時の作業性が向上する。
すなわち、フェノール樹脂、硬化剤、炭素物質、ワラストナイト、他の無機物質、補強繊維、無機基材、離型剤、硬化助剤、顔料等の各種添加剤を加えて、均一に混合後、加熱ロール、コニーダ、二軸押出し機等の混練機単独又はロールと他の混合機との組合せで加熱混練し、粉砕又は造粒機によりペレット化して得られる。
表1に実施例及び比較例で使用した原材料を、表2に各原材料の配合割合を、表3に得られたフェノール樹脂成形品の特性を示す。
本発明における炭素物質の付着性は、室温(25℃)で基台上に凹凸のないガラス製の平板を固定し、その平板上の荷重のかかる面の中央部分に、秤量した炭素物質10〜30mgを置き、炭素物質を前後それぞれ4cmに渡って、3kgf/cm2(0.294MPa)の荷重をかけながら連続100回往復させた後、綿ガーゼ布を用いて、ガラス平板上を荷重10g(98mN)で10回往復させ、ガラス平板表面上に粉体状に残存している炭素物質を完全に取り除き、ガラス平板に載せた炭素物質全質量Xに対して、Xの0.1質量%以上の炭素物質が平板表面に付着残存しているものを付着性が有、0.1質量%未満のものを付着性が無として判断した。
表1に示す原材料を使用し、表2に示す配合割合で配合し、加熱混練し、成形材料とした。
なお、付着性炭素繊維として表1に記載の炭素繊維のうち、XN−100−03S〔商品名;日本グラファイトファイバー(株)製〕を使用した。
また、使用した炭素繊維に関しては、再度付着性試験を行った。
射出成形は、金型温度180℃、硬化時間1分で行った。
結果を表3に示す。
上記の通り測定した。
JIS K 6911により成形した試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm)を島津製作所(株)社製テンシロンにて測定した。
測定条件はスパン距離;64mm、ヘッドスピード;2mm/minである。
JIS K 6911 により成形した試験片を東京衝機(株)社製シャルピー衝撃試験機で測定した。
加熱ロールを用いて混練を行う際に、混練可能なものを○、混練不可能なものを×として評価した。
円柱状摩耗輪(ローター、ステンレス製、直径18mm、幅10mm、比重7.86)を試験片(ステーター)が、摩耗輪上部で左右対称な2箇所で線接触し、荷重3kgが2箇所の接触部に均等にかかるように設置した。
ローターを60rpm、10時間回転させた後、ローターとステーターの摩耗した質量をローターとステーター各々の材料の比重で除した値を求めた。
摺動摩耗試験処理後のステーターの摩耗面を走査型電子顕微鏡により観察し、評価した。
実施例1及び2の摩耗面は、凹凸のない非常に滑らかな摩耗面上に凹凸なく摩耗粉が付着している状態であった。
なお、実施例で用いたピッチ系炭素繊維の付着性は、付着試験に使用したピッチ系炭素繊維量の2質量%程度であった。
比較例1は、付着性炭素物質及びワラストナイトが無添加で、無機物質としてワラストナイトよりも高硬度のシリカを添加した。
この場合は、曲げ強度及びシャルピー強度は高い値を示すが、ステーター摩耗量及びローター摩耗量が共に大きい。
また、比較例1の摩耗面は、走査型電子顕微鏡を用いて観察した結果、凹凸のある状態であった。
比較例2は、PAN系炭素繊維を添加した。
この場合、実施例1及び2と同程度のシャルピー強度が得られるものの、付着性炭素物質が存在しないため、ステーター摩耗量及びローター摩耗量がいずれも大きい。
比較例3は、実施例1及び2と比較して、ガラス繊維及び付着性炭素物質を添加していないため機械的強度が低く、ステーター摩耗量及びローター摩耗量が共に大きい。
比較例4及び5は、機械的強度は高く保持されているものの、付着性炭素物質が無添加のため、ステーター摩耗量及びローター摩耗量が共に大きい。
比較例6は、実施例1及び2と比較して、ステーター摩耗量及びローター摩耗量は同程度に保持されるが、ワラストナイトを含んでいないため曲げ強さ及びシャルピー強度が低い。
比較例7及び8は、実施例1及び2と比較して、ワラストナイトが無添加であるため、耐摩耗性の効果はある程度みられるが、曲げ強さ及びシャルピー強度が良好に維持されていない。
しかし、これら3つの比較例は、実施例1及び2と比較して、付着性炭素物質及びガラスの配合量が多いにも関わらず、機械的強度及び耐摩耗効果が実施例1及び2よりも低減している。
また、比較例4は、実施例1及び2と比較して、ガラス繊維の配合量が多いにも関わらず、バランスのよい機械的強度の増加がみられない。
また、耐摩耗性の効果を損なうことなく、耐摩耗性に優れたピッチ系炭素繊維の一部を安価なワラストナイトに代替できることも明らかになった。
以上のように、本発明のフェノール樹脂成形材料は、付着性炭素物質とワラストナイトの相乗効果により、低コスト性及び耐摩耗性に極めて優れるほか、ガラス繊維などの補強繊維を併用することにより、更に良好な機械的強度を有する。
このような特性を有することから、本発明のフェノール樹脂成形材料は、樹脂製摺動部品用材として適している。
Claims (4)
- フェノール樹脂、ワラストナイト及び炭素物質を含有するフェノール樹脂成形材料であって、炭素物質として付着性炭素物質を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
- フェノール樹脂100質量部に対して、ワラストナイトを80質量部以上、200質量部未満、付着性炭素物質を1.5〜180質量部含む請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
- 更に、補強繊維を、フェノール樹脂100質量部に対して50〜150質量部含む請求項1又は2に記載のフェノール樹脂成形材料。
- 炭素物質が繊維状である請求項1〜3のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
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