JP2006200655A - 摩擦材セット - Google Patents
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Abstract
【課題】 摩擦係数が高くかつ耐摩耗性に優れる摩擦材と相手材との組み合わせを提供する。
【解決手段】 摩擦材と相手材とを有し、これら摩擦材と相手材との間に生じる摩擦力によって制動力を発生する摩擦材セットであって、摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤とを主成分に有しており、かつ摩擦調整剤としてSiC繊維を有している。相手材は、表面にサーメット層を有している。そしてこれら摩擦材と相手材との組み合わせからなることを特徴としている。
【選択図】 なし
【解決手段】 摩擦材と相手材とを有し、これら摩擦材と相手材との間に生じる摩擦力によって制動力を発生する摩擦材セットであって、摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤とを主成分に有しており、かつ摩擦調整剤としてSiC繊維を有している。相手材は、表面にサーメット層を有している。そしてこれら摩擦材と相手材との組み合わせからなることを特徴としている。
【選択図】 なし
Description
本発明は、摩擦材と相手材とを有し、これら摩擦材と相手材との間に生じる摩擦力によって制動力を発生する摩擦材セットに関する。
摩擦材セットは、従前から基本特性である摩擦係数の向上と、耐摩耗性の向上とが図られている。そしてこれらを向上させることによって摩擦材セットの小型化と軽量化が試みられている。
しかしながら摩擦係数の向上と耐摩耗性の向上は、互いに相補的な関係にある。例えば摩擦材の研削力を上げて摩擦係数を高くした場合には、相手材の摩耗量が大きくなってしまう。摩擦材に金属原料を多量に添加して凝着力を上げることで摩擦係数を高くした場合には、摩擦係数の温度依存性が大きくなってしまい、しかも焼き付きも生じやすくなってしまう。
しかしながら摩擦係数の向上と耐摩耗性の向上は、互いに相補的な関係にある。例えば摩擦材の研削力を上げて摩擦係数を高くした場合には、相手材の摩耗量が大きくなってしまう。摩擦材に金属原料を多量に添加して凝着力を上げることで摩擦係数を高くした場合には、摩擦係数の温度依存性が大きくなってしまい、しかも焼き付きも生じやすくなってしまう。
そしてこれらを解決するために、従来様々な摩擦材と相手材が開発されている。
特許文献1には、摩擦材が開示されている。本摩擦材は、摩擦係数を高める炭化ケイ素と、潤滑性を向上させる無機物とを有している。そして適度な摩擦係数と適度な耐磨耗性とを得るために炭化ケイ素の配合量を10〜30重量%にしている。しかし本摩擦材では、十分に高い摩擦係数を得ることが容易でなかった。
特許文献2には、ロータ(相手材)が開示されている。本ロータは、表面に硬質のサーメット層を有しており、これによって耐磨耗性の向上が図られている。しかしロータの表面が硬質であるために、ロータに摺接される摩擦材を選択しなければ十分に高い摩擦係数を得ることができない場合がある。これに対して、特許文献2には、本ロータに対する好適な摩擦材が開示されていなかった。
特許文献1には、摩擦材が開示されている。本摩擦材は、摩擦係数を高める炭化ケイ素と、潤滑性を向上させる無機物とを有している。そして適度な摩擦係数と適度な耐磨耗性とを得るために炭化ケイ素の配合量を10〜30重量%にしている。しかし本摩擦材では、十分に高い摩擦係数を得ることが容易でなかった。
特許文献2には、ロータ(相手材)が開示されている。本ロータは、表面に硬質のサーメット層を有しており、これによって耐磨耗性の向上が図られている。しかしロータの表面が硬質であるために、ロータに摺接される摩擦材を選択しなければ十分に高い摩擦係数を得ることができない場合がある。これに対して、特許文献2には、本ロータに対する好適な摩擦材が開示されていなかった。
特許文献3には、摩擦材と相手材との組み合わせが開示されている。すなわち一方が炭素―炭素複合材料であり、他方が炭化ケイ素を繊維状補強材によって補強した複合材料からなる組み合わせが開示されている。そして本組み合わせにすることによって、炭素―炭素複合材料同士の組み合わせに比べて摩擦係数が高くなり、しかも安価に構成され得ることが開示されている。しかしながら本組み合わせの摩擦材セットは、炭素―炭素複合材料側の摩耗量が非常に多くなってしまうという問題がある。しかも特許文献3に記載された摩擦材と相手材は、レース用または航空機などのために開発されたものであって、炭素あるいは炭化ケイ素をベースとするものである。そのため本発明のように繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤とを主成分とする摩擦材を備える摩擦材セットとは、材料において大きく異なっている。
特許文献4には、摩擦材が開示されている。本摩擦材は、セラミックマトリックス複合材料を原料とするものであって、炭化ホウ素を非酸化物セラミック繊維によって強化した材料などを原料としている。そして本摩擦材を用いることによって摩擦材の耐磨耗性の向上が図られている。しかしながら特許文献4に記載された摩擦材は、レース用または航空機などに使用されるものであって、セラミックをベースとしている。そのため材料において本発明にかかる摩擦材セットと大きく異なっている。
特開2004−35871号公報
特開2001−317573号公報
特公平7−68991号公報
特表2004−510674号公報
そこで本発明は、摩擦係数が高くかつ耐摩耗性に優れる摩擦材と相手材との組み合わせであり、摩擦材が繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤を主成分に有する摩擦材セットを提供することを課題とする。
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える摩擦材セットであることを特徴とする。
すなわち請求項1に記載の発明によると、摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤とを主成分に有しており、かつ摩擦調整剤としてSiC繊維を有している。相手材は、表面にサーメット層を有している。そしてこれら摩擦材と相手材との組み合わせからなることを特徴としている。
すなわち請求項1に記載の発明によると、摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤とを主成分に有しており、かつ摩擦調整剤としてSiC繊維を有している。相手材は、表面にサーメット層を有している。そしてこれら摩擦材と相手材との組み合わせからなることを特徴としている。
したがって摩擦材に非常に硬いSiC繊維が含まれているために、摩擦材と相手材との間には、高い摩擦係数が生じる。しかもSiC繊維は、繊維状であるために粒状の場合に比べてマトリックスに接する表面積が広い。そのためSiC繊維は、マトリックによって強く保持され、マトリックスから離脱しにくい(抜けにくい)。とりわけ高温時(高負荷時)あるいは高温履歴後においては、マトリックスが有機物の結合材を含んでいるためにぼろぼろになってしまうが、その状況下においてもSiC繊維は、マトリックスから離脱しにくい。したがって摩擦材は、SiC繊維によって耐摩耗性が高くなり、とりわけ高温時での耐磨耗性が高くなる。
一方、相手材は、サーメット層を有している。そして実験結果からサーメット層を設けることによって相手材は、SiC繊維を含む摩擦材によって削れにくく、しかも摩擦係数を十分に得ることができることがわかった。
かくして本摩擦材と相手材との組み合わせにすることによって、摩擦係数の向上と耐摩耗性の向上とを図ることができる。
一方、相手材は、サーメット層を有している。そして実験結果からサーメット層を設けることによって相手材は、SiC繊維を含む摩擦材によって削れにくく、しかも摩擦係数を十分に得ることができることがわかった。
かくして本摩擦材と相手材との組み合わせにすることによって、摩擦係数の向上と耐摩耗性の向上とを図ることができる。
請求項2に記載の発明によると、SiC繊維は、繊維長さが0.5mm〜20mmである。
したがってSiC繊維は、繊維長さが0.5mm以上であるためにマトリックスに対して十分に抜けにくくなる。そのため摩擦材の耐摩耗性がSiC繊維によって十分に高くなる。またSiC繊維は、繊維長さが20mm以下であるために製造過程の一つである原料混合工程において混合機に絡みつくことが抑制され得る。かくして摩擦材の成形の容易化と、摩擦材の耐摩耗性の向上とを図ることができる。
したがってSiC繊維は、繊維長さが0.5mm以上であるためにマトリックスに対して十分に抜けにくくなる。そのため摩擦材の耐摩耗性がSiC繊維によって十分に高くなる。またSiC繊維は、繊維長さが20mm以下であるために製造過程の一つである原料混合工程において混合機に絡みつくことが抑制され得る。かくして摩擦材の成形の容易化と、摩擦材の耐摩耗性の向上とを図ることができる。
請求項3に記載の発明によると、摩擦材は、SiC繊維を5〜50体積%有している。
したがって本配合量によって摩擦係数を十分に高くすることができる。
したがって本配合量によって摩擦係数を十分に高くすることができる。
請求項4に記載の発明によると、相手材のサーメット層は、タングステンカーバイトを含んでいる。
実験結果からサーメット層にタングステンカーバイトが含まれることで、相手材と本発明にかかる摩擦材(請求項1〜3参照)との間には、高い摩擦係数が発生し、しかも両部材の耐磨耗性が高くなることがわかった。
実験結果からサーメット層にタングステンカーバイトが含まれることで、相手材と本発明にかかる摩擦材(請求項1〜3参照)との間には、高い摩擦係数が発生し、しかも両部材の耐磨耗性が高くなることがわかった。
本発明にかかる摩擦材セットは、摩擦材と相手材とを有し、これらを摺接させた際に生じる摩擦力によって制動力を発生する。
摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤(充填剤)と結合剤とを主成分に有している。そして本発明では、摩擦調整剤にSiC繊維を含んでいる。
一方、相手材には、サーメット層が設けられている。以下に、これらの成分と製造方法について詳述する。
摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤(充填剤)と結合剤とを主成分に有している。そして本発明では、摩擦調整剤にSiC繊維を含んでいる。
一方、相手材には、サーメット層が設けられている。以下に、これらの成分と製造方法について詳述する。
繊維基材としては、無機繊維および有機繊維を適宜選択して使用することができる。無機繊維としては、例えばスチール繊維,銅繊維,ガラス繊維,セラミックス繊維(アルミナ−シリカ系セラミックス繊維など),チタン酸カリウム繊維などを使用することができ、有機繊維としては、アラミド繊維などを使用することができる。そしてこれら繊維基材は、それぞれ個別に用いることもできるが、数種を混合して用いることもできる。
また繊維基材は、短繊維状、粉末状(例えば銅紛)が用いられており、繊維基材の添加量は、摩擦材全体の10〜50重量%であることが好ましい。
また繊維基材は、短繊維状、粉末状(例えば銅紛)が用いられており、繊維基材の添加量は、摩擦材全体の10〜50重量%であることが好ましい。
摩擦調整剤(充填剤)は、摩擦係数の調整、異音調整、錆防止などのために含まれるものであって、無機充填材,有機充填材,潤滑剤などが適宜含まれる。
無機充填剤は、研削材であるSiC繊維が含まれる。その他の無機充填剤としては、アブレーシブ,硫酸バリウム,炭酸カルシウム,水酸化カルシウム,雲母(マイカ),カオリン,タルクなどが必要に応じて含まれる。有機充填剤としては、カシューダストやラバーダストなどを使用できる。潤滑剤としては、黒鉛(グラファイト),三硫化アンチモン,二硫化モリブデン,二硫化亜鉛などを使用できる。
無機充填剤は、研削材であるSiC繊維が含まれる。その他の無機充填剤としては、アブレーシブ,硫酸バリウム,炭酸カルシウム,水酸化カルシウム,雲母(マイカ),カオリン,タルクなどが必要に応じて含まれる。有機充填剤としては、カシューダストやラバーダストなどを使用できる。潤滑剤としては、黒鉛(グラファイト),三硫化アンチモン,二硫化モリブデン,二硫化亜鉛などを使用できる。
SiC繊維は、直径が5〜15μm、長さが0.5〜20mmであって、好ましくは長さが1〜10mmのものが使用される。
SiC繊維の添加量は、摩擦材全体の5〜35体積%であることが好ましい。
なお摩擦調整剤は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
SiC繊維の添加量は、摩擦材全体の5〜35体積%であることが好ましい。
なお摩擦調整剤は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
結合剤としては、有機物である樹脂が使用される。例えばフェノール樹脂,イミド樹脂,ゴム変性フェノール樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,NBR,ニトリルゴム,アクリルゴムなどが使用される。そして結合剤は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
結合剤の添加量は、摩擦材全体の5〜30体積%であることが好ましい。
結合剤の添加量は、摩擦材全体の5〜30体積%であることが好ましい。
次に、摩擦材の製造方法を説明する。
先ず、摩擦材原料を混合して原料混合物を得る(原料混合工程)。混合機としては、アイリッヒミキサー、ユニバーサルミキサー、レーディゲミキサーなどを利用することができる。
次に、原料混合物を予備金型にて予備成形し、その後、成形用金型によって加圧加熱成形する。加圧加熱成形における成形温度は、例えば130〜200℃であり、成形圧力は、100〜1000kgf/cm2、成形時間は、2〜15分である。
そして成形後に、成形体を140〜400℃で2〜48時間硬化させる。
先ず、摩擦材原料を混合して原料混合物を得る(原料混合工程)。混合機としては、アイリッヒミキサー、ユニバーサルミキサー、レーディゲミキサーなどを利用することができる。
次に、原料混合物を予備金型にて予備成形し、その後、成形用金型によって加圧加熱成形する。加圧加熱成形における成形温度は、例えば130〜200℃であり、成形圧力は、100〜1000kgf/cm2、成形時間は、2〜15分である。
そして成形後に、成形体を140〜400℃で2〜48時間硬化させる。
相手材は、表面にサーメット層を有している。例えば、鋳鉄製のディスクブレーキ用のロータを準備し、その表面にサーメット原料粉を溶射する。そして溶射した表面を研磨で仕上げる。
サーメット原料粉は、Coなどの金属粉末と、炭化系または酸化系のセラミック粉末とを含んでおり、溶射されることでサーメット層になる。サーメット層としては、タングステンカーバイト(WC−12Co)を含んでいるものが好ましく、厚さとしては、50〜1000μmであることが好ましい。
サーメット原料粉は、Coなどの金属粉末と、炭化系または酸化系のセラミック粉末とを含んでおり、溶射されることでサーメット層になる。サーメット層としては、タングステンカーバイト(WC−12Co)を含んでいるものが好ましく、厚さとしては、50〜1000μmであることが好ましい。
以下に、本発明に係る実施例1〜3と比較例1〜5を具体的な数字を用いて説明する。
実施例1〜3に係る摩擦材と、比較例1〜5に係る摩擦材は、表1に示す原料成分と配合量にて配合する。
実施例1〜3に係る摩擦材と、比較例1〜5に係る摩擦材は、表1に示す原料成分と配合量にて配合する。
実施例1〜3に係る摩擦材は、研削材としてSiC繊維を含んでいる点において共通している。
実施例2は、実施例1に比べてSiC繊維の配合量が少なく、比較例1は、実施例2よりもさらにSiC繊維の配合量が少ない。
実施例3は、実施例1に比べてSiC繊維の長さが短く、比較例2は、実施例3よりもさらにSiC繊維の長さが短い。
比較例3〜5に係る摩擦材は、研削材として粒状(パーティクル)のSiC粒子を有しており、比較例3〜5の順にSiC粒子の配合量が多い。
実施例2は、実施例1に比べてSiC繊維の配合量が少なく、比較例1は、実施例2よりもさらにSiC繊維の配合量が少ない。
実施例3は、実施例1に比べてSiC繊維の長さが短く、比較例2は、実施例3よりもさらにSiC繊維の長さが短い。
比較例3〜5に係る摩擦材は、研削材として粒状(パーティクル)のSiC粒子を有しており、比較例3〜5の順にSiC粒子の配合量が多い。
実施例1〜3と比較例1〜5に係る摩擦材の製造方法は、先ず、表1に示す原料をアイリッヒミキサーによって5分間乾式にて混合し、原料混合物を得た。そして原料混合物を成形温度160℃、成形圧力200kgf/cm2、成形時間10分の条件において加圧加熱成形した。そして成形物を230℃、3時間の条件において硬化させた。
実施例1〜3と比較例1〜5に係る相手材は、すべて同じものを用いた。すなわち鋳鉄製のディスクブレーキ用のロータを準備し、その表面にWC−Co粉を溶射し、溶射後に表面を研磨し、サーメット層の層厚さを約300μmに仕上げた。
実施例1〜3と比較例1〜5に係る相手材は、すべて同じものを用いた。すなわち鋳鉄製のディスクブレーキ用のロータを準備し、その表面にWC−Co粉を溶射し、溶射後に表面を研磨し、サーメット層の層厚さを約300μmに仕上げた。
上記した摩擦材をディスクブレーキ用のパッドに用いて摩擦材セットによる各特性を測定し、その測定結果を表2にまとめた。
各特性は、以下のように測定した。
<試験後摩耗量> JASO C−406−87に従って第一効力、第一フェード、第二効力、第二フェード、第三効力、第三フェードの摩擦係数の測定試験を行い、これら試験終了時の相手材(ロータ)と摩擦材の摩耗量を測定した。
<第二効力、第三効力の摩擦係数> JASO C―406−87に従って制動前速度50km/hにおける平均摩擦係数とばらつきを測定した。
<第二フェードの摩擦係数> JASO C―406−87に従って制動前速度50km/hにおけるフェード時の瞬間最低摩擦係数とその時の温度を測定した。
<判定> 表3の判定基準によって各測定結果を判定した。
○:判定基準を全て満たすもの
△:判定基準を全て満たすが、判定基準に近い結果が一つでもあるもの
×:一つ以上において判定基準を満たさないもの
各特性は、以下のように測定した。
<試験後摩耗量> JASO C−406−87に従って第一効力、第一フェード、第二効力、第二フェード、第三効力、第三フェードの摩擦係数の測定試験を行い、これら試験終了時の相手材(ロータ)と摩擦材の摩耗量を測定した。
<第二効力、第三効力の摩擦係数> JASO C―406−87に従って制動前速度50km/hにおける平均摩擦係数とばらつきを測定した。
<第二フェードの摩擦係数> JASO C―406−87に従って制動前速度50km/hにおけるフェード時の瞬間最低摩擦係数とその時の温度を測定した。
<判定> 表3の判定基準によって各測定結果を判定した。
○:判定基準を全て満たすもの
△:判定基準を全て満たすが、判定基準に近い結果が一つでもあるもの
×:一つ以上において判定基準を満たさないもの
表3の測定結果から以下のことがわかった。
すなわち実施例1〜3の測定結果から、実施例1〜3は、摩擦材の摩耗量と相手材の摩耗量とが少なく、かつ摩擦係数が十分に高いことがわかった。
実施例1,2と比較例1の測定結果から、SiC繊維の配合量が多いほど摩擦係数が高く、3vol%以下では、十分な摩擦係数が得られないことがわかった。またSiC繊維の配合量は、5vol%以上、10vol%以上、15vol%以上含まれていることが好ましいこともわかった。
すなわち実施例1〜3の測定結果から、実施例1〜3は、摩擦材の摩耗量と相手材の摩耗量とが少なく、かつ摩擦係数が十分に高いことがわかった。
実施例1,2と比較例1の測定結果から、SiC繊維の配合量が多いほど摩擦係数が高く、3vol%以下では、十分な摩擦係数が得られないことがわかった。またSiC繊維の配合量は、5vol%以上、10vol%以上、15vol%以上含まれていることが好ましいこともわかった。
実施例1,3と比較例2の測定結果から、SiC繊維の繊維長さが長いほど摩擦材の摩耗量が小さく、0.2mm以下では、十分な耐磨耗性が得られないことがわかった。そして繊維長さが0.5mm以上、2mm以上、4mm以上であることが好ましいこともわかった。
実施例1,3と比較例5の測定結果から、粒状のSiCよりも繊維状のSiCを含んでいる方が摩擦材の摩耗量が小さくなることがわかった。
また比較例3〜5の測定結果から、SiC粒子の配合量が小さいほど摩擦係数が小さくなることもわかった。
実施例1,3と比較例5の測定結果から、粒状のSiCよりも繊維状のSiCを含んでいる方が摩擦材の摩耗量が小さくなることがわかった。
また比較例3〜5の測定結果から、SiC粒子の配合量が小さいほど摩擦係数が小さくなることもわかった。
したがって摩擦材セットは、本発明のように構成されるものが好ましいことがわかった。
すなわち摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤とを主成分に有しており、かつ摩擦調整剤としてSiC繊維を有するものが好ましい。そしてその相手材には、表面にサーメット層を有しているものが好ましい。
すなわち摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤とを主成分に有しており、かつ摩擦調整剤としてSiC繊維を有するものが好ましい。そしてその相手材には、表面にサーメット層を有しているものが好ましい。
その理由は、摩擦材に非常に硬いSiC繊維が含まれているために、摩擦材と相手材との間に高い摩擦係数が生じるからである。しかもSiC繊維は、繊維状であるために粒状の場合に比べてマトリックスに接する表面積が広い。そのためSiC繊維は、マトリックによって強く保持され、マトリックスから離脱しにくい(抜けにくい)。とりわけ高温時(高負荷時)あるいは高温履歴後においては、マトリックスが有機物の結合材を含んでいるためにぼろぼろになってしまうが、その状況下においてもSiC繊維は、マトリックスから離脱しにくい。したがって摩擦材は、SiC繊維によって耐摩耗性が高くなり、とりわけ高温時での耐磨耗性が高くなる、と思慮される。
一方、相手材は、サーメット層を有している。そして実験結果からサーメット層を設けることによって相手材は、SiC繊維を含む摩擦材によって削れにくく、しかも摩擦係数を十分に得ることができることがわかった。
かくして本摩擦材と本相手材との組み合わせによって、摩擦係数の向上と耐摩耗性の向上とを図ることができる。
一方、相手材は、サーメット層を有している。そして実験結果からサーメット層を設けることによって相手材は、SiC繊維を含む摩擦材によって削れにくく、しかも摩擦係数を十分に得ることができることがわかった。
かくして本摩擦材と本相手材との組み合わせによって、摩擦係数の向上と耐摩耗性の向上とを図ることができる。
またSiC繊維は、繊維長さが0.5mm〜20mmであることが好ましい。
SiC繊維は、繊維長さを0.5mm以上にすることによって、マトリックスに対して十分に抜けにくくなる。そのため摩擦材の耐摩耗性を十分に高くすることができる、と思慮されるからである。またSiC繊維は、繊維長さを20mm以下にすることによって製造過程の一つである原料混合工程において混合機に絡みつくことが抑制され得る。かくして摩擦材の成形の容易化と、摩擦材の耐摩耗性の向上とを図ることができる。
SiC繊維は、繊維長さを0.5mm以上にすることによって、マトリックスに対して十分に抜けにくくなる。そのため摩擦材の耐摩耗性を十分に高くすることができる、と思慮されるからである。またSiC繊維は、繊維長さを20mm以下にすることによって製造過程の一つである原料混合工程において混合機に絡みつくことが抑制され得る。かくして摩擦材の成形の容易化と、摩擦材の耐摩耗性の向上とを図ることができる。
また相手材のサーメット層は、タングステンカーバイトを含んでいることが好ましい。
表2に示す実験結果から、サーメット層にタングステンカーバイトが含まれることによって、本相手材と本形態に係る摩擦材との間に高い摩擦係数が発生し、かつ両部材の耐磨耗性が高くなることがわかったからである。
表2に示す実験結果から、サーメット層にタングステンカーバイトが含まれることによって、本相手材と本形態に係る摩擦材との間に高い摩擦係数が発生し、かつ両部材の耐磨耗性が高くなることがわかったからである。
なお本発明は、上記の実施の形態に限らず、例えば以下の実施の形態などであっても良い。
(1)すなわち実施例は、摩擦材と相手材をそれぞれディスクブレーキ用のパッドとロータに利用する摩擦材セットであった。しかし摩擦材をロータに利用し、相手材をパッドに利用する摩擦材セットであっても良い。
(2)あるいは摩擦材と相手材を他のブレーキ装置に利用する摩擦材セットであっても良い。
(1)すなわち実施例は、摩擦材と相手材をそれぞれディスクブレーキ用のパッドとロータに利用する摩擦材セットであった。しかし摩擦材をロータに利用し、相手材をパッドに利用する摩擦材セットであっても良い。
(2)あるいは摩擦材と相手材を他のブレーキ装置に利用する摩擦材セットであっても良い。
Claims (4)
- 摩擦材と相手材とを有し、これら摩擦材と相手材との間に生じる摩擦力によって制動力を発生する摩擦材セットであって、
前記摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤と有機物の結合剤とを主成分に有しており、かつ前記摩擦調整剤としてSiC繊維を有しており、
前記相手材は、表面にサーメット層を有しており、
これら摩擦材と相手材との組み合わせからなることを特徴とする摩擦材セット。 - 請求項1に記載の摩擦材セットであって、
SiC繊維の繊維長さが、0.5mm〜20mmであることを特徴とする摩擦材セット。 - 請求項1または2に記載の摩擦材セットであって、
摩擦材は、SiC繊維を5〜50体積%有していることを特徴とする摩擦材セット。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材セットであって、
相手材のサーメット層は、タングステンカーバイトを含んでいることを特徴とする摩擦材セット。
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