JP2007536345A - O結合型糖鎖形成のポリペプチドおよび該ペプチドの製造方法 - Google Patents

O結合型糖鎖形成のポリペプチドおよび該ペプチドの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、変更されたパターンのO結合型糖鎖形成を有する糖タンパク質(特に、因子VII、因子IX)を含む組成物および該組成物を作製する方法に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、変更されたパターンのO結合型糖鎖形成を有する糖タンパク質(特に、因子VII、因子IXおよび他の血液凝固因子)を含む組成物に関する。
多くの糖タンパク質の生物学的活性は、糖タンパク質と結合した特定のオリゴ糖類の構造の有無に、大きく依存している。治療学的糖タンパク質の糖鎖形成パターンは、治療学的効力の多数の側面(例えば、溶解性、タンパク分解作用に対する耐性、熱失活、免疫原性、半減期、生理活性、生物学的利用能および安定性)に影響を及ぼすことができる。
糖鎖形成は、細胞依存的な複雑な移行後修飾である。翻訳後、タンパク質は小胞体(ER)に輸送され、グリコシル化されて、さらなるプロセッシングおよびその後のターゲッティングおよび/または分泌のためにゴルジ体に送られる。糖鎖形成中、N結合型またはO結合型の糖タンパク質が形成される。
例えば、因子VIIおよび因子IXを含む血液凝固または線維素溶解に関与する血清タンパク質は、種々の病的状態を治療する有用な治療薬になることが明らかになっている。従って、薬学的に許容可能でかつ均一かつ予定された臨床的効力を示すこれらのタンパク質を含む処方についての必要性が増加する。
医薬品の供給源としてヒト血漿を使用する多くの不利益のため、組換え系においてこれらのタンパク質を生成するのが好ましい。しかしながら、凝固タンパク質は、アスパラギン結合型(N結合型)糖鎖形成; セリンまたはスレオニン結合型(O結合型)糖鎖形成; およびglu残基のカルボキシル化を含む、種々の翻訳同時修飾および翻訳後修飾を受ける。これらの修飾は、異種細胞がタンパク質の大規模生産のために宿主として使用されるとき、質的または量的に異なっていてもよい。特に、異種細胞の生産は、しばしば異なる多数の糖鎖形成をもたらし、同一ポリペプチドにおいて異なる共有結合性オリゴ糖類構造が発生する。
異なる系において、治療学的タンパク質のオリゴ糖類構造における変化は、免疫原性およびインビボでのクリアランスの変化に関係している。従って、所定の糖形成パターンを含む糖タンパク質製剤、特に、組換え型因子IXまたは組換え型ヒト因子VIIまたは修飾された因子VIIまたは因子VII関連ポリペプチドを含む製剤を提供する組成物および方法が当該技術において必要である。
発明の概要
本発明は、所定のセリンまたはスレオニン結合型の糖形成パターンを示すポリペプチドを含む製剤に関する。本製剤は、結合したグリカンまたはオリゴ糖鎖に関して、少なくとも約80%の相同性を有し、好ましくは、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%の相同性を有する。
本明細書中に使用されるとき、糖形成パターンは、ポリペプチドのアミノ酸バックボーンにおけるEGF様ドメイン内に位置するセリンまたはスレオニン残基に共有結合的に結合する様々な構造を有するオリゴ糖鎖の製剤の範囲内の分布を意味する。
一つの側面において、本発明はCys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysのモチーフを含む糖タンパク質の製剤を提供する。前記セリン/スレオニンはGlc-O-Ser/Thr共有結合の部分を形成し、前記製剤は実質的に均一なセリン/スレオニン結合型の糖鎖形成パターンを含む。
本発明の一つの実施態様において、糖鎖形成パターンは、少なくとも80%の均一性、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の均一性を有する。
一実施態様において、セリン/スレオニン結合型のグリカンは、Xyl-Xyl-Glc-であり; 他の態様として、グリカンはXyl-Glc-であり; さらに他の態様として、グリカンはGlc-である。
好ましい実施態様において、糖タンパク質は、ヒト因子VII、因子VII配列変異体、ヒト因子IX、および因子IX配列変異体からなる群から選択される。1つの実施態様において、糖タンパク質は、因子VII変異体の活性と天然のヒト因子VIIa(野生型FVIIa)の活性との間の比が、本明細書中に記載された「インビトロ加水分解試験」において試験されたとき、少なくとも約1.25、好ましくは少なくとも約2.0、または少なくとも約4.0である、因子VII変異体である。
他の側面において、本発明は、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysのモチーフを含む糖タンパク質の製剤を調製する方法を提供する。前記セリン/スレオニンはGlc-O-Ser/Thr共有結合の部分を形成し、前記製剤は実質的に均一なセリン/スレオニン結合型の糖鎖形成パターンを含む。前記方法は、その最初の発現上で糖タンパク質上に存在する糖鎖形成パターンを再構築または変更するのに有用である。
より具体的には、本発明は、その薬学的な性質を改善または増強させるために、糖タンパク質のグリカン(特にO結合型のグリカン)の修飾のための一般的な酵素的方法論を提供する。一つの方法には、全ての終端のキシロース残基を除去するために、キシロシダーゼでの糖タンパク質の処理が含まれ; 他の方法には、キシロシル転移酵素による処理によって、糖タンパク質上の露出したグルコースまたはキシロース残基に対するキシロース残基の結合が含まれ; 第3の方法には、ポリペプチドバックボーン中のセリンおよび/またはスレオニン・アミノ酸残基に対するグルコース残基の結合によって、グリコシル化されたポリペプチドを作り出すことが含まれる。
詳細な説明
以下の略記法が、本明細書中において使用される:
Glc =グルコシル
Xyl =キシロシル
Ser =セリン(一文字表記: S)
Thr =スレオニン(一文字表記: T)
Pro =プロリン(一文字表記: P)
Cys =システイン(一文字表記: C)
FVII =因子VII
FVIIa =活性化された(二本鎖)因子VII
FIX =因子IX
FIXa =活性化された(二本鎖)因子IX
「糖形成パターン」(または「グリコシル化パターン」)は、本明細書中に使用されたとき、ポリペプチドのアミノ酸の背骨に位置するセリンまたはスレオニン残基に共有結合している様々な構造を有するオリゴ糖鎖の調製の範囲内の分布を意味する。
「均質性」は、グリカンが結合したポリペプチドの集団全体を通した構造上の整合性を意味する。このように、全ての糖タンパク質分子が糖鎖形成部位に同一のグリカンを含む場合、糖タンパク質製剤は約100%の相同性があるという。例えば、少なくとも90%の因子VIIポリペプチド分子がセリン52に結合したグリカン(例えば、Xyl-Xyl-Glc-O-Ser52)を含む場合、因子VIIポリペプチドの製剤は少なくとも90%の相同性があるという。
「実質的に均一な糖形成」または「実質的に均一な糖鎖形成(グリコシル化)」または「実質的に均一な糖鎖形成(グリコシル化)パターン」は、糖ペプチド化学種についていうとき、対象のグリカンによってグリコシル化されるセリンまたはスレオニン残基(受容体基)のパーセンテージを意味する。例えば、因子VIIの場合において、位置52における実質的に全て(以下に定義)のセリン残基が、対象のグリカンでグリコシル化されている場合、実質的に均一な糖鎖形成パターンが存在する。開始物質が、対象のグリカンと同一構造を有する化学種でグリコシル化されたセリンおよび/またはスレオニン残基を含み得ることは、当業者によって理解される。このように、算出された割合の糖鎖形成には、本発明による対象のグリカンでグリコシル化されるセリン/スレオニン残基の割合と、開始物質中における対象のグリカンで既にグリコシル化されたセリン/スレオニン残基の割合とを含む。
用語「実質的に」は、糖タンパク質中の少なくとも約80%、例えば少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%のセリン/スレオニン残基が、所定の特定のグリカンまたは対象のグリカンでグリコシル化されることを意味する。糖鎖形成パターンは、典型的には当業者に既知の一以上の方法、例えば、トリプシン消化の後、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、マトリックス補助レーザー脱離質量飛行時間スペクトロメトリー(MALDITOF)、キャピラリー電気泳動法、等によって決定される。
用語「受容体基」は、所望のオリゴ糖類またはモノ糖類の基が、これらに限定されないが、例えばCys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフ内に位置するセリン/スレオニン残基、セリン/スレオニン残基に共有結合したGlc-残基、またはGlc-O-Ser/ThrもしくはXyl-Glc-O-Ser/Thr基中のGlc-残基またはXyl-残基に共有結合したXyl-残基に移される基 (group or moiety)を包含することを意味する。
用語「糖類供与基」は、適切な触媒作用を及ぼす酵素(例えば、糖転移酵素、キシロシダーゼまたはキシロシル転移酵素)についての基質として作用する供与基に適した脱離基(例えばキシロース-UDPまたはグルコース-UDP)を有する活性化された糖類供与分子(例えば、所望のオリゴまたはモノ糖類構造、例えば、キシロシル-キシロシル-供与体、キシロシル供与体、またはグリコシル供与体)を含むことを意味する。
還元末端の糖類が実際に還元糖であってもなくても、オリゴ糖類は還元末端および非還元末端を有するものと考えられる。許容された命名法に従って、オリゴ糖類は、明細書中において、左側に非還元末端および右側に還元末端(例えばXyl-Xyl-Glc-O-セリン)の形で表される。
EGFドメインを含むポリペプチド
用語「EGFドメイン含有ポリペプチド」は、一以上の上皮成長因子(EGF)様ドメインを含むペプチド、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含むことを意味する。EGFドメインまたはリピートは、3つのジスルフィド結合を形成する6つの保存されたシステインによって定義された約40のアミノ酸を含む小さいモチーフである。EGFドメイン含有ポリペプチドは全て、O-グルコース修飾のための以下の共通配列を含む:Cys1-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cys2(すなわち、Cys1-X1-Ser-X2-Pro-Cys2またはCys1-X1-Thr-X2-Pro-Cys2共通配列)(ここで、Cys1およびCys2はEGFリピートの第1および第2の保存されたシステインであり、X1およびX2はそれぞれ独立した任意のアミノ酸である)。
用語「糖タンパク質」は、ポリペプチドの背骨にあたるアミノ酸配列内に位置するEGFドメインの一以上のセリン/スレオニンアミノ酸残基に結合した一以上のグリカンを含む、EGFドメイン含有ポリペプチドを含むことを意味する。
本明細書中に使用されるとき、用語「グリカン」または、置き替え可能な、「糖鎖」、「オリゴ糖類鎖」または「オリゴ糖類基」は、単一のセリン/スレオニン残基に共有結合している全てのオリゴ糖類構造を意味する。グリカンは、一以上の糖類単位を含む。グリカンの例には、例えば、Glc-、Xyl-Glc-、およびXyl-Xyl-Glc-が含まれる。
用語「O-糖鎖形成部位」は、Cys1-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cys2モチーフ(Cys1およびCys2はEGFリピートの第1および第2の保存されたシステインであり、X1およびX2はそれぞれ独立した任意のアミノ酸である)に位置するセリン/スレオニン(すなわち、SerまたはThr)の糖鎖形成部位を指すことを意味する。O-糖鎖形成部位には、ヒトwt-FVIIの、および相同性ポリペプチド(例えば、限定はされないものの、FVII配列変異体およびFIXポリペプチド)中の対応する残基の、セリン-52(S52)位置の糖鎖形成部位が含まれる。用語「対応する残基」は、配列を整列させたときに、野生型因子VII(図1を参照)のSer52残基に対応するSerまたはThrアミノ酸残基を指すことを意味する。アミノ酸配列のホモロジー/同定は、配列の整列のためにコンピュータープログラム(例えば、ClustalWプログラム、バージョン1.8, 1999)を使用して、整列された配列から効率よく決定される(Thompson et al., 1994, Nucleic Acid Research, 22: 4673-4680)。例えば、wt-因子VII Ser52-残基は、wt-因子IXのSer53残基と一致する。非天然的に生じるCys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフを含むポリペプチド変異体が作製されてもよく、その結果、本発明に従ってグリコシル化され得る非天然的に生じるO-グリコシル化部位を含むポリペプチド変異体が作製されてもよい。本発明の一つの実施態様において、O-グリコシル化部位はセリン糖鎖形成部位であり、かつそのモチーフはCys1-X1-Ser-X2-Pro-Cys2である。他の実施態様において、O-グリコシル化部位はスレオニン糖鎖形成部位であり、かつそのモチーフはCys1-X1-Thr-X2-Pro-Cys2である。
用語「末端グルコース」には、グリカンまたはオリゴ糖類鎖の末端糖残基として結合したグルコース残基が含まれることを意味する。すなわち、各アンテナの末端の糖はグルコースである。用語「末端キシロース」には、グリカンまたはオリゴ糖類鎖の末端糖残基として結合したキシロース残基が含まれることを意味する。
酵素
例えば、Shao et al. (Glycobiology 12(11): 763-770 (2002))に記載されたように、タンパク質O-糖転移酵素が調製されてもよい。
例えば、Monroe et al. (Plant Physiology and Biochemistry 41:877-885 (2003))に記載されたように、α-キシロシダーゼ酵素が調製されてもよい。
UDP-D-キシロース酵素: Omichi et al. (Eur. J. Biochem. 245:143-146 (1997)) によって記載されたように、β-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素が、HepG2細胞から調製され得る。
UDP-D-キシロース酵素: Minamida et al. ((J.Biochem. (Tokyo) 120: 1002-1006 (1996)) によって記載されたように、 α-D-キシロシド α1,3-キシロシル転移酵素が、HepG2細胞から調製され得る。
UDP-β-D-グルコースは、商業的には、例えばSigma (Sigma U4625)から利用可能である。
UDP-D-キシロースは、商業的には、例えばSigma (Sigma U5875)から利用可能である。
糖タンパク質
モチーフ:Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysは、主にマルチモジュラーなタンパク質(例えば血液凝固および線維素溶解性の因子)の上皮成長因子(EGF)ドメインにおいて主として見出されるであろう。該モチーフは、セリン-グルコース(Glc-O-Ser)またはスレオニン-グルコース(Glc-O-Thr)の結合が形成される、O-グルコース修飾のための共通配列である。凝固因子VII、IX、XおよびXII、ならびに血漿タンパク質Z、フィブリンおよびトロンボスポンジンは全て、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cys共通配列を含む。これらのうち、因子VIIおよびIXおよびタンパク質Zは、共通配列Cys-X1-Ser-X2-Pro-Cysを含む。
トロンボスポンジンは、細胞間および細胞-マトリックス間の連絡に関与する細胞外タンパク質のファミリーである。該タンパク質は、血小板から分泌される。これらは、組織形成および修復中の細胞表現型を制御する。
タンパク質Zは、その構造が因子VII、IXおよびXの構造と類似するビタミンK依存型血漿タンパク質である。しかしながらこれらのタンパク質とは対照的に、タンパク質Zは、触媒の三徴候のHisおよびSer残基がないので、セリンプロテアーゼの酵素前駆体ではない。タンパク質CおよびSの様に、タンパク質Zは、活性化された因子X(FXa)の阻害に加わることによって、血液凝固反応を制限することに関与する。
因子X(Stuart Prower Factor)は、プロトロンビンのトロンビンへの活性化に関与することによって、血液凝固過程に関与するビタミンK依存型セリンプロテアーゼである。
因子XII(Hageman因子)は、傷ついた血管の内皮下表面との接触によって活性化される血液凝固因子である。カリクレイン前駆体に加えて、これは血液凝固の固有の経路を開始する接触因子として役立つ。カリクレインは、因子XII〜XIIaを活性化する。
第IX因子(Christmas因子)は、FXのFXaへの活性化に関与することによって、血液凝固過程に関与するビタミンK依存型セリンプロテアーゼである。
因子VII(プロコンバーチン)は、プロトロンビンのトロンビンへの活性化に関与することによって、血液凝固過程に関与するビタミンK依存型セリンプロテアーゼである。FVIIは、血管壁の損傷部位の露出した組織因子(TF)との接触によってFVIIaに活性化される。
因子VIIポリペプチドおよび因子VII関連ポリペプチド
明細書中に使用されたとき、用語「因子VIIポリペプチド」または「FVIIポリペプチド」は、野生型ヒト因子VIIa(すなわち、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列を有するポリペプチド)のアミノ酸配列1〜406を含む任意のタンパク質およびその変異体、ならびに因子VII関連ポリペプチド、因子VII誘導体および因子VII接合体を意味する。この中には、野生型ヒト因子VIIaと比較して実質的に同一または向上した生物学的活性を示す、FVII変異体、因子VII関連ポリペプチド、因子VII誘導体および因子VII接合体が含まれる。
用語「因子VII」には、未開裂の状態(酵素前駆体)の因子VIIポリペプチドと、各々の生物学的活性形態を得るためにタンパク質分解処理を施された形態(因子VIIaと称される)が含まれる。典型的には、因子VIIは残基152と153との間で切断され、因子VIIaを産生する。因子VIIの変異体は、安定性、リン脂質結合性、変化した比活性(specific activity)などを含む、ヒト因子VIIと比較して異なる性質を示してもよい。
明細書中に使用されたとき、「野生型ヒトFVIIa」は、米国特許第4,784,950号において開示されたアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
明細書中に使用されたとき、「因子VII関連のポリペプチド」には、因子VIIaの生物学的活性が実質的に修飾された(例えば、野生型因子VIIaの活性と比較して減少)変異体を含む、ポリペプチドが含まれる。これらのポリペプチドには、ポリペプチドの生物学的活性を修飾または乱す、特異的なアミノ酸配列の変更が導入された因子VIIまたは因子VIIaが含まれる。
本明細書中で使用される、用語「因子VII誘導体」には、親ペプチドの一以上のアミノ酸が遺伝的および/または化学的および/または酵素的に修飾された(例えば、アルキル化、グリコシル化、PEG化、アシル化、エステル形成またはアミド形成など)、野生型因子VIIと比較して実質的に同一または向上した生物学的活性を示すFVIIポリペプチドが含まれる。この中には、PEG化されたヒト因子VIIa、システイン-PEG化されたヒト因子VIIaおよびその変異体が含まれるがこれらに限定されない。因子VII誘導体の制限のない例には、WO 03/31464および米国特許出願 US 20040043446、US 20040063911、US 20040142856、US 20040137557、およびUS 20040132640(Neose Technologies社)に開示されたようなGlycoPegylated FVII誘導剤;ならびに、WO 01/04287、米国特許出願20030165996、WO 01/58935、WO 03/93465(Maxygen ApS)およびWO 02/02764、米国特許出願20030211094(ミネソタ大学)に開示されたようなFVII接合体;が含まれる。
用語「向上した生物学的活性」は、i) 組み換え野生型ヒト因子VIIaと比較して実質的に同一または増加したタンパク分解活性を有する FVIIポリペプチド、ii) 組み換え野生型ヒト因子VIIaと比較して実質的に同一または増加したTF結合活性を有するFVIIポリペプチド 、iii) 組み換え野生型ヒト因子VIIaと比較して実質的に同一または増加した血漿の半減期を有するFVIIポリペプチドを意味する。用語「PEG化されたヒト因子VIIa」は、PEG分子がヒト因子VIIaポリペプチドに接合したヒト因子VIIaを意味する。理解すべき点は、PEG分子は、任意のアミノ酸残基または因子VIIaポリペプチドの糖質成分を含む、因子VIIaポリペプチドの任意の部分に結合してもよい点である。用語「システイン-PEG化されたヒト因子VIIa」は、PEG分子がヒト因子VIIa内に導入されたスルフヒドリル基のシステインに接合していることを意味する。
組み換え野生型ヒト因子VIIaと比較して実質的に同一または増加したタンパク分解活性を有する因子VII変異体の制限のない例には、S52A-FVIIa、S60A-FVIIa ( Lino et al., Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998); 米国特許第5,580,560号に開示されたようなタンパク質分解安定性が増加したFVIIa変異体; 残基290と291の間または残基315と316の間でタンパク分解的切断が行われる因子VIIa (Mollerup et al., Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995); 因子VIIaの酸化形態 (Kornfelt et al., Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999); PCT/DK02/00189 (WO 02/077218に対応)に開示されたFVII変異体; および WO 02/38162に開示されたタンパク質分解安定性が増加したFVII変異体 (Scripps Research Institute); 修飾されたGla-ドメインを有し、かつWO 99/20767, 米国特許 US 6017882 および US 6747003, US特許出願 20030100506 (ミネソタ大学) および WO 00/66753, US特許出願 US 20010018414, US 2004220106, および US 200131005, US特許 US 6762286 および US 6693075 (ミネソタ大学)に開示されたような増強された膜結合性を示すFVII変異体; ならびにWO 01/58935, 米国特許 US 6806063, 米国特許出願 20030096338 (Maxygen ApS), WO 03/93465 (Maxygen ApS), WO 04/029091 (Maxygen ApS), WO 04/083361 (Maxygen ApS), および WO 04/111242 (Maxygen ApS), ならびに WO 04/108763 (Canadian Blood Services)に開示されたようなFVII変異体が含まれる。
野生型FVIIaと比較して増加した生物学的活性を有するFVII変異体の制限のない例には、WO 01/83725, WO 02/22776, WO 02/077218, PCT/DK02/00635 (WO 03/027147に対応), デンマーク特許出願PA 2002 01423 (WO 04/029090に対応), デンマーク特許出願PA 2001 01627 (WO 03/027147に対応); WO 02/38162 (Scripps Research Institute)に開示されたようなFVII変異体; およびJP 2001061479 (Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示されたような増強した活性を有するFVIIa変異体が含まれる。
因子VIIの変異体の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる。
L305V-FVII, L305V/M306D/D309S-FVII, L305I-FVII, L305T-FVII, F374P-FVII, V158T/M298Q-FVII, V158D/E296V/M298Q-FVII, K337A-FVII, M298Q-FVII, V158D/M298Q-FVII, L305V/K337A-FVII, V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII, V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII, K157A-FVII, E296V-FVII, E296V/M298Q-FVII, V158D/E296V-FVII, V158D/M298K-FVII, および S336G-FVII, L305V/K337A-FVII, L305V/V158D-FVII, L305V/E296V-FVII, L305V/M298Q-FVII, L305V/V158T-FVII, L305V/K337A/V158T-FVII, L305V/K337A/M298Q-FVII, L305V/K337A/E296V-FVII, L305V/K337A/V158D-FVII, L305V/V158D/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V-FVII, L305V/V158T/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V-FVII, L305V/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, S314E/K316H-FVII, S314E/K316Q-FVII, S314E/L305V-FVII, S314E/K337A-FVII, S314E/V158D-FVII, S314E/E296V-FVII, S314E/M298Q-FVII, S314E/V158T-FVII, K316H/L305V-FVII, K316H/K337A-FVII, K316H/V158D-FVII, K316H/E296V-FVII, K316H/M298Q-FVII, K316H/V158T-FVII, K316Q/L305V-FVII, K316Q/K337A-FVII, K316Q/V158D-FVII, K316Q/E296V-FVII, K316Q/M298Q-FVII, K316Q/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D-FVII, S314E/L305V/E296V-FVII, S314E/L305V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/K337A/E296V-FVII, S314E/L305V/K337A/V158D-FVII, S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V-FVII, S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V-FVII, S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316H/L305V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D-FVII, K316H/L305V/E296V-FVII, K316H/L305V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T-FVII, K316H/L305V/K337A/V158T-FVII, K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/K337A/E296V-FVII, K316H/L305V/K337A/V158D-FVII, K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V-FVII, K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V-FVII, K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316Q/L305V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D-FVII, K316Q/L305V/E296V-FVII, K316Q/L305V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T-FVII, K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII, K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII, K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII, K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII, K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII, K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/K337A-FVII, F374Y/V158D-FVII, F374Y/E296V-FVII, F374Y/M298Q-FVII, F374Y/V158T-FVII, F374Y/S314E-FVII, F374Y/L305V-FVII, F374Y/L305V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D-FVII, F374Y/L305V/E296V-FVII, F374Y/L305V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158T-FVII, F374Y/L305V/S314E-FVII, F374Y/K337A/S314E-FVII, F374Y/K337A/V158T-FVII, F374Y/K337A/M298Q-FVII, F374Y/K337A/E296V-FVII, F374Y/K337A/V158D-FVII, F374Y/V158D/S314E-FVII, F374Y/V158D/M298Q-FVII, F374Y/V158D/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E-FVII, F374Y/V158T/M298Q-FVII, F374Y/V158T/E296V-FVII, F374Y/E296V/S314E-FVII, F374Y/S314E/M298Q-FVII, F374Y/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/K337A/V158D-FVII, F374Y/L305V/K337A/E296V-FVII, F374Y/L305V/K337A/M298Q-FVII, F374Y/L305V/K337A/V158T-FVII, F374Y/L305V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158D/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/E296V/V158T-FVII, F374Y/L305V/E296V/S314E-FVII, F374Y/L305V/M298Q/V158T-FVII, F374Y/L305V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/S314E-FVII, F374Y/K337A/S314E/V158T-FVII, F374Y/K337A/S314E/M298Q-FVII, F374Y/K337A/S314E/E296V-FVII, F374Y/K337A/S314E/V158D-FVII, F374Y/K337A/V158T/M298Q-FVII, F374Y/K337A/V158T/E296V-FVII, F374Y/K337A/M298Q/E296V-FVII, F374Y/K337A/M298Q/V158D-FVII, F374Y/K337A/E296V/V158D-FVII, F374Y/V158D/S314E/M298Q-FVII, F374Y/V158D/S314E/E296V-FVII, F374Y/V158D/M298Q/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E/M298Q-FVII, F374Y/V158T/M298Q/E296V-FVII, F374Y/E296V/S314E/M298Q-FVII, F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E-FVII, F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E-FVII, F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVII, F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, S52A-Factor VII, S60A-Factor VII; R152E-Factor VII, S344A-Factor VII, T106N-FVII, K143N/N145T-FVII, V253N-FVII, R290N/A292T-FVII, G291N-FVII, R315N/V317T-FVII, K143N/N145T/R315N/V317T-FVII; および 233Thr〜240Asnのアミノ酸配列において置換、付加または欠失のあるFVII; 304Arg〜329Cysのアミノ酸配列において置換、付加または欠失のあるFVII; および 153Ile〜223Argのアミノ酸配列において置換、付加または欠失のあるFVII。
野生型因子VIIaと比較して実質的に同一または向上した生物学的活性を有する因子VII変異体には、上述したような凝固分析、蛋白質分解分析またはTF結合試験のうちの一以上において試験されたときに、同一細胞種において生成される野生型因子VIIaの比活性の、少なくとも約25%、例えば、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、または少なくとも約150%を示すものが含まれる。野生型因子VIIaと比較して実質的に減少した生物学的活性を有する因子VII変異体は、後述するような凝固分析、蛋白質分解分析またはTF結合試験のうちの一以上において試験されたときに、同一細胞種において生成される野生型因子VIIaの比活性の、約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、最も好ましくは約1%未満を示すものである。野生型因子VIIと比較して実質的に修飾された生物学的活性を有する因子VII変異体には、これらに限定されないが、TF独立型因子Xタンパク質分解活性を示し、TFには結合するが因子Xを切断しない因子VII変異体が含まれる。
血液凝固中の因子VIIaの生物学的活性は、(i) 組織因子(TF)に結合する能力、および(ii) 因子IXまたは因子Xのタンパク質分解性開裂を触媒し、活性化された因子IXまたは因子X(因子IXaまたは因子Xa)を生成する能力から導かれる。本発明の目的のために、例えば、米国特許第5,997,864号に記載されたように、因子VIIaの生物学的活性は、因子VII欠乏性血漿およびトロンボプラスチンを使用して、血液凝固を促進する製剤の能力を測定することによって定量化されてもよい。この分析法では、生物学的活性は、対照サンプルと比較した血液凝固時間の短縮として表され、これが1単位/ml 因子VII活性を含む貯留されたヒト標準血清と比較した「因子VII単位」に変換される。代わりに、因子VIIaの生物学的活性は、(i) 脂質膜内に埋め込まれたTFを含む系において因子Xaを生成する因子VIIaの能力を測定することによって定量化されてもよく(Persson et al., J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997); (ii) 水系における因子Xの加水分解を測定することによって定量化されてもよく(「以下のGeneral Methods」を参照 ); (iii) 表面プラスモン共鳴に基づいた装置を使用してTFに対するその物理的結合を測定することによって定量化されてもよく(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997); (iv) 合成基質の加水分解を測定することによって定量化されてもよく(以下の「General Methods」を参照 ); および (v) TF独立型インビトロ系におけるトロンビンの生成を測定することによって定量化されてもよい(以下の 「General Methods」を参照 )。
因子IXポリペプチドおよび因子IX関連ポリペプチド
本発明には、因子IXポリペプチド、例えばJaye et al., Nucleic Acids Res. 11: 2325-2335, 1983.において開示されたアミノ酸配列を有するもの(野生型ヒト因子IX)が含まれる。
本発明を実行するにあたり、出血を予防または治療するのに有効である任意の因子IXポリペプチドが使用されてもよい。この中には、血液または血漿から誘導されるかまたは組み換え手段によって生成された因子IXポリペプチドが含まれる。
明細書中に使用されたとき、「因子IXポリペプチド」には、これらに限定されないが、因子IXおよび因子IX関連ポリペプチドが含まれる。用語「因子IX」には、これらに限定されないが、Jaye et al., Nucleic Acids Res. 1983 (上記を参照)に開示されたようなアミノ酸配列を有するポリペプチド(野生型ヒト因子IX)、および他の生物種から誘導された野生型因子IX(例えばウシ、ブタ、イヌ、マウス、およびサケの因子IX)が含まれる。さらに、これには、一個体から他個体までに存在および発生し得る因子IXの天然の対立形質のバリエーションが含まれる。また、糖鎖形成または他の翻訳後修飾の程度および位置は、選択された宿主細胞および宿主細胞環境の性質に基づいて変化してもよい。用語「因子IX」にはまた、未開裂の形態(酵素前駆体)の因子IXポリペプチドと、各々の生物学的活性形態を得るためにタンパク質分解処理を施された形態(因子IXaと称される)が含まれる。
「因子IX関連ポリペプチド」には、これらに限定されないが、ヒト因子IXと比較して化学的に修飾された、および/またはヒト因子IXと比較して一以上のアミノ酸配列の変化を含む因子IXポリペプチド(すなわち、因子IX変異体)、および/またはヒト因子IXと比較して切断されたアミノ酸配列を含む因子IXポリペプチド(すなわち、因子IX断片)が含まれる。このような因子IX関連のポリペプチドは、安定性、リン脂質結合性、変化した比活性などを含む、ヒト因子IXと比較した異なる性質を示してもよい。
用語「因子IX関連ポリペプチド」には、未開裂の形態(酵素前駆体)のポリペプチドと、各々の生物学的活性形態を得るためにタンパク質分解処理を施された形態(「因子IXa関連ポリペプチド」または「活性化因子IX関連ポリペプチド」と称される)が含まれる。
明細書中に使用されたとき、「因子IX関連ポリペプチド」には、これらに限定されないが、野生型ヒト因子IXと比較して実質的に同一または向上した生物学的活性を示すポリペプチド、および、因子IX生物学的活性が、野生型ヒト因子IXの活性と比較して実質的に修飾または減少したポリペプチドが含まれる。これらのポリペプチドには、これらに限定されないが、化学的に修飾された因子IXまたは因子IXa、およびポリペプチドの生理活性を修飾または乱す特定のアミノ酸配列の変化が導入された因子IX変異体が含まれる。
さらに、これには、わずかに修飾されたアミノ酸配列を含むポリペプチド、例えば、N末端のアミノ酸の欠失または付加を含む修飾されたN末端を有するポリペプチド、および/またはヒト因子IXと比較して化学的に修飾されたポリペプチドが含まれる。
野生型因子IXと比較して実質的に同一またはより良好な生理活性を示すか、代わりに、野生型因子IXと比較して実質的に修飾または減少した生理活性を示す、因子IXの変異体を含む因子IX関連のポリペプチドには、これらに限定されないが、一以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換によって野生型因子IXの配列とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。
変異を含む因子IX関連ポリペプチドには、本明細書中に記載されたような因子IX活性試験法において試験されたときに、同一細胞種において生成される野生型因子IXの比活性の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、および少なくとも約130%を示すものが含まれる。
野生型因子IXと比較して実質的に同一または向上した生物学的活性を有する因子IX関連ポリペプチド(変異体を含む)には、上述したような一以上の特異的因子IX活性試験法において試験されたときに、同一細胞種において生成される野生型ヒト因子IXの生物学的比活性の、少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%、より好ましくは少なくとも約120%、および最も好ましくは少なくとも約130%を示すものが含まれる。本発明の目的のために、因子IX生物学的活性は、後述されるように定量化されてもよい(「General Methods」を参照)。
野生型因子IXと比較して実質的に減少した生物学的活性を有する因子IX関連のポリペプチド(変異体を含む)には、上述したような一以上の特異的因子IX 活性試験法において試験されたときに、同一細胞種において生成された野生型因子IXの比活性の、約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1%未満を示すものが含まれる。
因子IXポリペプチドの制限のない例には、例えば、Chandra et al., Biochem. Biophys. Acta 1973, 328:456; Andersson et al., Thromb.Res. 1975, 7:451; Suomela et al., Eur. J. Biochem. 1976, 71:145.に記載されたような血漿誘導型ヒト因子IXが含まれる。
因子IX活性について試験し、それによって本発明において使用するための適切な因子IX変異体を選択するための手段を提供する適切な試験法は、例えば、Wagenvoord et al., Haemostasis 1990;20(5): 276-88.に記載されたようなインビトロ試験において簡単に行われ得る。因子IX生物学的活性はまた、例えばNilsson et al., 1959.(Nilsson IM, Blombaeck M, Thilen A, von Francken I., Carriers of haemophilia A - A laboratory study, Acta Med Scan 1959; 165:357)に記載されたように、因子IX欠乏性血漿の血液凝固時間を調整する製剤の能力を測定することによって定量化され得る。この試験法において、生物学的活性は単位/ml血漿として表される(1単位は、正常な貯留された血漿中において存在するFIXの量に相当する)。
本発明のいくつかの実施態様において、因子IXは、「色素産生試験」(下記参照)で試験されたとき、前記因子IXポリペプチドの活性と天然のヒト因子IX(野生型因子IX)の活性との間の比が少なくとも約1.25である因子IX関連のポリペプチドである; 他の実施態様において、前記比は少なくとも約2.0である; さらなる実施態様において、前記比は少なくとも約4.0である。
O-結合型糖鎖形成
本発明を行うにあたり、オリゴ糖のパターンは、当業者に知られた任意の方法を使用して決定され得る。当業者に知られた任意の方法には、これらに制限されないが、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC); キャピラリー電気泳動(CE); 核磁気共鳴(NMR); イオン化技術、例えば第一原子照射、エレクトロスプレー、またはマトリックス補助レーザー脱離(MALDI)を使用する質量分析(MS); ガスクロマトグラフィー(GC); 陰イオン交換(AIE)-HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、またはMSと組み合わせたエキソグリコシダーゼでの治療が含まれる。例えば、Weber et al., Anal. Biochem. 225:135 (1995); Klausen et al., J. Chromatog. 718:195 (1995); Morris et al., in Mass Spectrometry of Biological Materials, McEwen et al., eds., Marcel Dekker, (1990), pp 137-167; Conboy et al., Biol. Mass Spectrom. 21:397, 1992; Hellerqvist, Meth. Enzymol. 193:554 (1990); Sutton et al., Anal. Biohcem. 318:34 (1994); Harvey et al., Organic Mass Spectrometry 29:752 (1994)を参照されたい。
O-糖鎖形成の相対的含有量は、例えばトリプシン処理を施されたペプチドマッピングによって決定され得る。要するに、糖タンパク質はトリプシンで消化され、かつO-糖鎖形成部位を含むポリペプチドは、RP-HPLCクロマトグラフィー、質量分析または他の適切な分析分離技術によってグリカン構造に基づいて分離される。必要に応じて適切な分離を行うために、糖タンパク質は、トリプシンでの消化の前に還元およびアルキル化され得、O-グリコシル化部位を含むポリペプチド鎖が、例えばRP-HPLCクロマトグラフィーによって精製される。その後、精製されたポリペプチドは、トリプシン消化に供され、その後に上述したような分析を行う。
所定のパターンのO結合型オリゴ糖類を有する糖タンパク質製剤を生成する方法
受容体糖タンパク質の起源は、本発明の重要な側面ではない。典型的には、糖タンパク質を、培養された原核生物細胞または真核生物細胞(例えば哺乳類、酵母、昆虫、菌類または植物細胞)において発現させることができる。しかしながら、該タンパク質はまた、天然源、例えば血漿、血清または血液から単離されてもよい。糖タンパク質は、全長タンパク質またはその断片であってもよい。
本発明は、実質的に均一な糖鎖形成パターンを有する糖タンパク質化学種を含む組成物を提供する。該方法は、その初期発現において糖タンパク質上に存在する糖鎖形成パターンを再構築または変更するために有用である。このように、本発明の方法は、実用的な手段を事前選択または事前決定された均一な誘導体化パターンを有する糖鎖形成の大規模調製についての実用的な手段を提供する。該方法は、特に、培養細胞またはトランスジェニック動物での生産の間に不完全にグリコシル化される糖タンパク質を含む、治療学的ペプチドの修飾について最適である。しかしながら、本発明の製剤および組成物はまた、天然源、例えば血漿、血清または血液、または細胞培養液を精製し、そこから所望の糖鎖形成を単離することによって調製され得る。
本発明に基づいて再構築されるポリペプチドは、細胞培養プロセスによって典型的には調製される。適切な宿主細胞には、これらに限定されないが、内因性遺伝子、例えば因子VII、IX、XまたはXII遺伝子またはタンパク質Z遺伝子を発現するヒト細胞が含まれる。これらの細胞において、内因性遺伝子は、未処理であってもin situで修飾されてもよく、または内因性遺伝子の外側の配列がin situで修飾され、内因性糖タンパク質遺伝子の発現を変化させてもよい。内因性糖タンパク質遺伝子を発現し得る任意のヒト細胞が使用されてもよい。その他、宿主細胞には、組換え型遺伝子から糖タンパク質(例えば、ヒト因子VIIまたはIXまたはXまたはXII)を発現するようにプログラムされた異種の宿主細胞が含まれる。宿主細胞は、脊椎動物、昆虫または菌類の細胞であってもよい。好ましくは、前記細胞は、哺乳動物のN結合型糖鎖形成; O結合型糖鎖形成; およびγ-カルボキシル化の全スペクトルの可能な哺乳動物細胞である。例えば、米国特許番号4,784,950を参照されたい。好ましい哺乳動物細胞系には、CHO (ATCC CCL 61), COS-1 (ATCC CRL 1650), 新生児ハムスターの腎臓(BHK) およびHEK293 (ATCC CRL 1573; Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977)細胞系統が含まれる。好ましいBHK細胞系統は、tk-ts13 BHK細胞系統(Waechter and Baserga, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:1106-1110, 1982)であり、以後BHK 570 細胞として参照される。BHK 570 細胞系統は、ATCC受託番号CRL 10314のもと、アメリカンタイプカルチャーコレクション(12301 Parklawn Dr., Rockville, MD 20852)から入手可能である。tk-ts13 BHK細胞系統はまた、受託番号CRL 1632のもと、ATCCから入手可能である。さらに、多数の他の細胞系統が使用され得る。例えば、以下のものが含まれる:Rat Hep I (Rat hepatoma; ATCC CRL 1600)、Rat Hep II (Rat hepatoma; ATCC CRL 1548)、TCMK (ATCC CCL 139)、ヒト肺(ATCC HB 8065)、NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1) および DUKX細胞(CHO細胞系統) (Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)(DUKX細胞はまたCXB11細胞として参照される)、および DG44 (CHO細胞系統)(Cell, 33:405, 1983, and Somatic Cell and Molecular Genetics 12:555, 1986)。また、3T3細胞、Namalwa細胞、ミエローマ細胞およびミエローマ細胞と他の細胞との融合細胞が使用される。適切な宿主細胞には、血清の欠失中において増殖するように適合され、かつ因子VII を発現するようにプログラムされたBHK 21細胞が含まれる。細胞は、該細胞が由来する細胞種とは質的または量的に異なるスペクトルの糖鎖形成酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼおよび/またはグリコシダーゼ)を発現する変異型または組み換え型細胞であってもよい。細胞はまた、例えば、因子VIIの切断された形態を含む、他の異種ペプチドまたはタンパク質を発現するようにプログラムされてもよい。宿主細胞はまた、対象の因子VIIポリペプチド(すなわち、因子VIIまたは因子VII関連ポリペプチド)および他の異種ペプチドまたはポリペプチド(例えば、因子VII断片の修飾酵素)の両方を同時発現するようプログラムされたCHO細胞であってもよい。
方法: 本発明には、上述したような所定のセリン/スレオニン結合型の糖鎖形成パターンを含む製剤を生成するための方法が含まれ、かつ、さらなる実施態様において、糖タンパク質の糖鎖形成の分布を最適化するための方法が含まれる(図3を参照)。記載された個々のプロセス工程は、所望の糖形成パターンを得るために、異なる組合せにおいて適用され得る。制限のない例は、以下に与えられる。
一つの側面において、これらの方法は、以下の工程によって行われる:
(a) 調製された細胞、例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
(b) 供与基から受容基に所望の単糖またはオリゴ糖基を移行させるのに適した条件下で、前記糖タンパク質製剤を、「前記所望の単糖またはオリゴ糖基の活性化された供与体」および「前記所望の単糖またはオリゴ糖基を移行させるために適した酵素」と接触させ、その結果、変化した糖鎖形成パターンを有する糖ペプチドを生成する工程。
他の側面において、これらの方法は、以下の工程によって行われる:
(aa) 調製された細胞、例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
(bb) 単糖またはオリゴ糖基を除去するために適した条件下で、前記糖タンパク質製剤を、末端の単糖またはオリゴ糖基を除去するために適した酵素と接触させ、その結果、変化した糖鎖形成パターンを有する糖ペプチドを生成する工程。
一つの実施態様において、前記方法には、工程(b)および(bb)の組み合わせが含まれる。一つの実施態様において、前記方法には、さらに変化した糖鎖形成パターンを有する糖タンパク質を単離する工程が含まれる。
一つの実施態様において、前記方法には、さらに以下の工程が含まれる。
ポリペプチドに結合したオリゴ糖類の構造を分析し、オリゴ糖類のパターンを決定し、かつ任意的には、所望の糖形成パターンが達成されるまで工程(b)および/または(bb)を繰り返す工程。
これらの方法にはさらに、予め決定された糖形成パターンを生物活性(例えば、凝固、因子Xタンパク質分解性、またはTF結合性を含む)の少なくとも一つの試験に供する工程と、所望の糖形成パターンを同定するために特定の糖形成パターンを特定の生物活性または機能性プロファイルと相関させる工程とが含まれる。
一つの実施態様において、所望の糖形成パターンは、実質的に均一なグルコース-O-セリン/スレオニン糖鎖形成である。この実施形態において、最初に得られた糖タンパク質には末端キシロースが含まれ、該方法(「方法B」)は以下の工程を含む:
(a) 調製された細胞、例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
(b) キシロース残基を糖タンパク質から除去するために適した条件下で、工程(a)において得られた製剤を、キシロシダーゼと接触させる工程。
一つの実施態様において、前記方法にはさらに、Glc-O-Ser/Thr糖鎖形成を有する、工程(b)において調製された糖タンパク質を単離する工程が含まれる。
一つの実施態様において、前記方法にはさらに、ポリペプチドに結合したオリゴ糖類の構造を分析し、糖形成パターンを決定し、かつ任意的には、所望の糖形成パターンが達成されるまで工程(b)を繰り返す工程が含まれる。
実質的に均一なグルコース-O-セリン/スレオニン糖鎖形成の形態において所望の糖鎖形成パターンを作製するための他の実施態様において、該方法(「方法C」)は、以下の工程を含む。
(a) 例えば加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフを含むポリペプチドの製剤を得る工程と、
(b) グルコース供与基からセリン/スレオニン受容基にグルコース残基を移行させるために適した条件のもと、工程(a)において得られた製剤を、O-グルコシルトランスフェラーゼおよび活性化されたグルコース供与体と接触させる工程。
一つの実施態様において、該方法には、Glc-O-Ser/Thr糖鎖形成を行う工程bにおいて調製された糖タンパク質を単離する工程がさらに含まれる。
一つの実施態様において、該方法にはさらに、ポリペプチドに結合したオリゴ糖の構造を分析し、糖鎖形成パターンを決定する工程と、任意的には、所望の糖鎖形成パターンが達成されるまで工程(b)を繰り返す工程とが含まれる。
一つの実施態様において、所望の糖鎖形成パターンは、実質的に均一なキシロース-グルコース-O-セリン/スレオニン糖鎖形成である。この実施態様において、該方法(「方法A1」)は以下の工程を含む。
(a) 調製された細胞、例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
(b) キシロース供与基から受容基にキシロース残基を移行させるために適した条件下で、工程(a)において得られた製剤を、UDP-D-キシロース: β-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素および活性化されたキシロシル供与体と接触させ、その結果、変更された糖鎖形成パターンを有する糖ペプチドを生成する工程。
一つの実施態様において、該方法には、Xyl-Glc-O-Ser/Thr糖鎖形成を行う工程bにおいて調製された糖タンパク質を単離する工程が含まれる。
一つの実施態様において、該方法には、ポリペプチドに結合したオリゴ糖の構造を分析し、糖鎖形成パターンを決定する工程と、任意的には、所望の糖鎖形成パターンが達成されるまで工程(b)を繰り返す工程とが含まれる。
一つの実施態様において、該方法にはさらに、工程(a)において得られた製剤を、工程(b)の前に「方法B」に供することによって、末端キシロース残基を除去する工程が含まれる。
一つの実施態様において、所望の糖形成パターンは、実質的には均一なキシロース-キシロース-グルコース-O-セリン/スレオニン糖鎖形成である。この実施態様において、該方法(方法A2)は以下の工程を含む:
(a) 例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
(b) キシロース供与基から受容基にキシロース残基を移行させるのに適した条件下で、工程(a)において得られた製剤を、UDP-D-キシロース: β-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素および活性化されたキシロシル供与基と接触させる工程と、
(c) キシロース残基をキシロース供与基から受容基に移行させるのに適切な条件のもと、工程(b)において得られた製剤を、UDP-D-キシロース: α-D-キシロシド α-1,3-キシロシル転移酵素および活性化されたキシロシル供与基と接触させる工程。
一つの実施態様において、該方法にはさらに、製剤を工程(c)に供する前に、工程(b)において得られた製剤を単離する工程が含まれる。
一つの実施態様において、該方法にはさらに、Xyl-Xyl-Glc-O-Ser/Thr糖鎖形成を行う工程(c)において調製された糖タンパク質を単離する工程が含まれる。
一つの実施態様において、該方法にはさらに、ポリペプチドに結合したオリゴ糖の構造を分析し、糖鎖形成パターンを決定する工程と、任意的には、所望の糖鎖形成パターンが達成されるまで工程(b)および/または工程(c)を繰り返す工程とが含まれる。
一つの実施態様において、該方法にはさらに、工程(a)において得られた製剤を、工程(b)の前に「方法B」に供することによって末端キシロース残基を除去する工程が含まれる。
異なる実施態様において、糖タンパク質は、実質的に均一なXyl-Xyl-Glc-O-Ser糖鎖形成、Xyl-Glc-O-Ser糖鎖形成、およびGlc-O-Ser糖鎖形成{該Serは、Cys-X1-Ser-X2-Pro-Cysモチーフ(X1およびX2は、それぞれ独立した任意のアミノ酸残基である)に包含されるセリン}である。他の異なる実施態様において、該糖タンパク質は、実質的には均一なXyl-Xyl-Glc-O-Thr糖鎖形成, Xyl-Glc-O-Thr糖鎖形成, およびGlc-O-Thr糖鎖形成{該Thrは、Cys-X1-Thr-X2-Pro-Cysモチーフ(X1およびX2は、それぞれ独立した任意のアミノ酸残基である)に包含されるスレオニン}である。
異なる実施態様において、ポリペプチドは、因子VIIポリペプチド、因子VII関連ポリペプチド、因子IXポリペプチド、因子IX関連ポリペプチド、因子Xポリペプチド、および因子X関連ポリペプチドからなる群から選択される。
好ましい実施態様において、糖タンパク質製剤は、以下の群から選択される。
実質的に均一なXyl-Xyl-Glc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VIIポリペプチド
実質的に均一なXyl-Glc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VIIポリペプチド
実質的に均一なGlc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VIIポリペプチド
実質的に均一なXyl-Xyl-Glc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VII-関連ポリペプチド
実質的に均一なXyl-Glc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VII-関連ポリペプチド
実質的に均一なGlc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VII-関連ポリペプチド
実質的に均一なXyl-Xyl-Glc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VII-関連ポリペプチド
実質的に均一なXyl-Glc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VII変異体
実質的に均一なGlc-O-Ser52糖鎖形成を示す因子VII変異体
実質的に均一なXyl-Xyl-Glc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IXポリペプチド
実質的に均一なXyl-Glc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IXポリペプチド
実質的に均一なGlc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IXポリペプチド
実質的に均一なXyl-Xyl-Glc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IX-関連ポリペプチド
実質的に均一なXyl-Glc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IX-関連ポリペプチド
実質的に均一なGlc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IX-関連ポリペプチド
実質的に均一なXyl-Xyl-Glc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IX変異体
実質的に均一なXyl-Glc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IX変異体
実質的に均一なGlc-O-Ser53糖鎖形成を示す因子IX変異体
オリゴ糖、例えばXyl-Xyl-はまた、適切な転移酵素および活性化されたXyl-Xyl-供与体を使用することによって、Glc-O-Ser/Thr受容基に移行してもよいことを理解すべきである。
クロマトグラフ法: 本発明はまた、上述したような予め決定されたセリン/スレオニン−結合型糖鎖形成パターンを含む製剤を調製するための疎水性相互作用クロマトグラフ方法を含む。さらに本発明は、前記ポリペプチドおよび望まれない糖鎖形成パターンを有するポリペプチドを含む組成物から所望の糖鎖形成パターンを有するO-グリコシル化ポリペプチドを精製するための疎水性相互作用クロマトグラフ方法を含む。
一つの態様において、前記方法には以下の工程が含まれる。
(a) 調製された細胞、例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、前記セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程、
(b) 水、任意的には塩成分、および任意的にはバッファーを含む溶液を使用して、糖タンパク質を親水性相互作用物質に結合させる工程、
(c) 水、任意的には塩成分、および任意的にはバッファーを含む溶液を使用して、疎水性相互作用物質を洗浄し、該疎水性相互作用物質から汚染物質を除去する工程、
(d) 直線的または段階的勾配または定組成的塩成分において、有機修飾体、水、任意的には塩成分、および任意的にはバッファーを含む溶液を使用して、疎水性相互作用物質を洗浄し、所望の糖鎖形成パターンを有する糖タンパク質を、所望の糖鎖形成を持たない糖タンパク質および疎水性相互作用物質から分離する工程、および
(e) 所望の糖鎖形成パターンを有する糖タンパク質を含む画分を収集する工程。
一つの実施態様において、上述した方法はさらに、工程(e)において得られた製剤を工程(a)〜(e)に供することによって、工程(a)〜(e)を繰り返す工程が含まれる。この更なる工程は、必要であれば複数回にわたって繰り返してもよい。
本発明による製剤はまた、精製工程の組み合わせを含むプロセスによって調製され得、その結果、所望の糖鎖形成を有する糖タンパク質「化学種」が、細胞培養液または起源動物の天然源から、および上述した酵素的方法から獲得されることを理解すべきである。
上述した方法は、さらに、予め決定された糖鎖形成を有する製剤を、生物活性(例えば、凝固性、因子Xタンパク質分解性またはTF結合性)または他の官能性(例えば、薬物動態学的側面または安定性)の少なくとも一つの試験に供する工程と、特定の糖鎖形成パターンを特定の生物活性または官能性側面と関連づけ、所望の糖鎖形成パターンを同定する工程とが含まれる。
さらなる酵素学的処理は、製剤のN-またはO-連結型グリカンのオリゴ糖パターンを修飾する上述した方法と関連付けて使用され得る。このような処理には、これらに限定されないが、シークエンス中において、および特定の末端構造を有するオリゴ糖鎖の分布において所望の修飾を達成する条件のもと、一以上のシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)、ガラクトシダーゼ、フコシダーゼ; ガラクトシル転移酵素、フコシル転移酵素、および/またはシアリル転移酵素での処理が含まれる。グリコシル転移酵素は、商業的にはCalbiochem (La Jolla, CA)から入手可能であり、グリコシダーゼは商業的にはGlyko, Inc., (Novato, CA)から入手可能である。
糖タンパク質製剤
本明細書で使用されるとき、「糖タンパク質製剤」は、それらが合成される細胞から分離された多数の糖鎖形成を意味する。糖タンパク質製剤には、それらが合成される細胞から分離された不活性化された形態、活性化された形態、機能的に関連したポリペプチド、例えば、変異体および化学的に修飾された形態が含まれる。
例えば、本明細書中に使用されるとき、「因子VII製剤」は、それらが合成された細胞から分離された、あるいは天然源から単離された、変異体および化学的修飾形態を含む、多数の因子VIIポリペプチド、因子VIIaポリペプチド、または因子VII関連ポリペプチドを意味する。同様に、「因子IX製剤」は、変異体または化学的に修飾された形態を含む、それらが合成された細胞から分離された、あるいは天然源(例えば、血漿、血清、血液)から単離された多数の因子IXポリペプチド、因子IXaポリペプチド、または因子IX-関連ポリペプチドを意味する。
それらの起源細胞からのポリペプチドの分離は、当該技術において周知の任意の方法によって達成され得る。例えば、これらに限定されないが、付着性細胞からの所望の産物を含む細胞培養液の除去;非付着性細胞の遠心分離またはろ過法による除去などが含まれる。
任意的には、該ポリペプチドはさらに精製されてもよい。精製は、当該技術において周知の任意の方法を使用して達成され得る。例えば、これらに限定されないが、抗因子VIIまたは抗因子IX抗体などのカラムで構成されたアフィニティークロマトグラフィー(例えば Wakabayashi et al., J. Biol. Chem. 261:11097, 1986; およびThim et al., Biochem. 27:7785, 1988を参照); 疎水性相互作用クロマトグラフィー; イオン交換クロマトグラフィー; サイズ排除クロマトグラフィー; 電気泳動的な手順(例えば、調製用の等電点電気泳動(IEF))、溶解度差に基づく分離(例えば硫安塩析)、または抽出などが含まれる。一般的には、Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, New York, 1982; and Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照されたい。精製後、該製剤は、宿主細胞に由来した関連性の無いタンパク質を、好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5%、および最も好ましくは約1%未満含む。
因子VIIおよび因子VII関連ポリペプチド、因子IXおよび因子IX関連のポリペプチド、または因子Xおよび因子X関連のポリペプチドは、トリプシン様特異性を有する因子XIIaまたは他のタンパク質分解酵素(例えば、因子IXa、カリクレイン、因子Xa、およびトロンビン)を使用して、それぞれタンパク分解的切断によって活性化され得る。例えば、Osterud et al., Biochem. 11:2853 (1972); Thomas, 米国特許番号4,456,591号; および Hedner et al., J. Clin. Invest. 71:1836 (1983)を参照されたい。代わりに、因子VII、IXまたはXは、それぞれ、それをイオン交換クロマトグラフィーカラム(例えば、Mono Q(登録商標)(Pharmacia)など)に通すことによって活性化され得る。得られた活性化されたポリペプチド、例えば因子VIIは、その後に以下に記載されたように処方され、かつ投与され得る。
糖タンパク質製剤の機能的性質
本発明による所定のオリゴ糖類パターンを有する糖タンパク質の製剤は、(因子VIIポリペプチド、因子VII関連ポリペプチド、因子IXポリペプチドおよび因子IX関連ポリペプチドを含む)参照的製剤と比較して向上した機能的性質を示す。向上した機能的性質には、これらに限定されないが、a) 物理的性質(例えば貯蔵安定性); b) 薬物動態学的性質(例えば生物学的利用能および半減期); c) ヒトにおける免疫原性、およびd) 生物学的活性(例えば凝固活性)が含まれ得る。
リファレンス製剤は、異なるパターンのセリン/スレオニン結合型糖鎖形成を示すことを除いて、比較対象の本発明の製剤に含まれるものと同一であるポリペプチド(例えば、野生型因子VIIまたは野生型因子IXまたは特定の変異体または化学的修飾形態)を含む製剤を意味する。
糖タンパク質(例えば因子VII)製剤の貯蔵安定性は、(a)25℃で乾燥粉末として貯蔵されたときに、製剤の生理活性の20%が壊変するのに要する時間、および/または(b)製剤中の前記糖タンパク質の凝集塊(例えば因子VIIa)の割合が2倍になるのに要する時間、を測定することによって評価され得る。
いくつかの実施態様において、本発明の製剤は、両製剤が25℃で乾燥粉末として貯蔵されたとき、リファレンス製剤において同一の現象について必要とされる時間と比較した、20%の生理活性が喪失するのに必要とされる時間において、、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも60%、およびより好ましくは少なくとも約100%の増加を示す。
いくつかの実施態様において、本発明の製剤は、両製剤が25℃で乾燥粉末として貯蔵されるとき、リファレンス製剤と比較した凝集塊の倍加に必要とされる時間において、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも60%、およびより好ましくは少なくとも約100%の増加を示す。凝集塊の含有量は、当業者に周知の方法によって決定され得る(例えばゲル浸透HPLC法)。例えば、因子VII凝集塊の含有量は、以下のようなProtein Pak 300 SW カラム(7.5×300mm)(Waters, 80013)上のゲル浸透HPLCによって決定される。該カラムが、溶離液A(0.2Mの硫酸アンモニウム、5%イソプロパノール。pHはリン酸で2.5に調節され、その後にpHはトリエチルアミンで7.0に調節される)で平衡化され、その後に25gのサンプルが該カラムに適用される。溶出は、30分間にわたって0.5ml/分の流速で溶離液Aで行われ、その検出は215nmでの吸光度を測定することによって達成される。凝集塊の含量は、因子VII凝集塊のピーク面積/因子VIIピーク(モノマーおよび凝集塊)の総面積として計算される。
「生物学的利用能」は、投与後所定の時間で血漿中に検出され得る糖タンパク質製剤(例えば、因子VIIまたは因子VII関連ポリペプチド)の投与された量に対する割合を意味する。典型的には、生物学的利用能は、約25〜250g/kgの製剤の投与量を投与し; 投与後の所定の時間で血漿サンプルを得; 一以上の凝固試験法(または任意の生物試験法)、免疫学的測定法などを使用して、サンプル中の糖鎖形成ポリペプチドの含量を決定することによって、試験動物において測定される。得られたデータは、典型的には、ポリペプチド [例えば因子VII ] 対 時間として視覚的に表示され、生物学的利用能は、曲線下面積(AUC)として表わされる。試験製剤の相対的な生物学的利用能は、試験製剤のAUCとリファレンス製剤のAUCの比を意味する。
いくつかの実施態様において、本発明の製剤は、リファレンス製剤の生物学的利用能の、少なくとも約110%、好ましくは少なくとも約120%、より好ましくは少なくとも約130%、および最も好ましくは少なくとも約140%の相対的生物学的利用能を示す。生物学的利用能は、任意の哺乳類生物種(好ましくはイヌ)において測定され得、算出対象のAUCについて使用される所定の時間は、10分間〜8時間の異なる増分を包含してもよい。
「半減期」は、糖タンパク質(例えば、因子VII関連ポリペプチドの因子VIIポリペプチド)の血漿濃度が特定の数値からその数値の半分まで減少するのに必要とされる時間を意味する。半減期は、生物学的利用能についての手順と同じ手順を使用して決定されてもよい。
いくつかの実施態様において、本発明の製剤は、リファレンス製剤の半減期と比較して、半減期において少なくとも約0.25時間、好ましくは少なくとも約0.5時間、より好ましくは少なくとも約1時間、および最も好ましくは少なくとも約2時間の増加を示す。
製剤の「免疫原性」は、有害な免疫応答(体液性、細胞性またはその両方)を誘発する、ヒトに投与されたときの製剤の能力を意味する。因子VIIaポリペプチドおよび因子VIIa関連ポリペプチドは、ヒトにおいて検出可能な免疫応答を誘発することは知られていない。しかしながら、任意のヒト亜集団において、特定の投与されたタンパク質に対する感受性を示す個体が存在してもよい。免疫原性は、当業者に知られた従来的方法を使用して、感受性の個体における抗因子VII抗体および/または因子VII応答性T細胞の存在を定量化することによって測定され得る。いくつかの実施態様において、本発明の製剤は、リファレンス製剤の個体に対する免疫原性と比較して、感受性個体において少なくとも約10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも約40%、および最も好ましくは少なくとも約50%の免疫原性の低下を示す。
薬学的組成物およびその使用方法
本発明の製剤は、関連した糖タンパク質に反応するあらゆる病的症状を治療するのに使用され得る。例えば、因子VII、FIXおよびFX反応性症候群は、例えば出血障害のような症候群を含む。該出血障害には、これらに限定されないが、凝固因子欠乏(例えば、血友病AおよびB、または凝固因子XIまたはVIIの欠乏)によって引き起こされるもの、血小板減少またはフォン−ウィルブランド病によって引き起こされるもの、または凝固因子阻害物質によって引き起こされるもの、または原因を問わず過剰な出血によって引き起こされるものが含まれる。本発明の製剤はまた、手術または他の外傷に付随して患者に投与され得、または抗凝固療法を受けている患者に投与され得る。
野生型因子VIIと比較して実質的に減少した生理活性を有する、本発明による因子VII関連ポリペプチドを含む製剤は、例えば再狭窄において、血栓症または血管の閉鎖の危険性を増加させる、血管形成または他の外科的処置を受けている患者における抗凝固剤として使用され得る。抗凝固剤が処方される他の医学的症例には、これらに限定されないが、深在静脈血栓症、肺動脈塞栓症、脳卒中、播種性血管内凝固(DIC)、グラム陰性内毒血症と関連する肺および腎臓における線維素沈着、心筋梗塞; 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、MOF、およびTTPが含まれる。
本発明による因子VIIおよび因子VII関連製剤を含む薬学的組成物は、主に予防および/または治療学的処置のための非経口的投与を主な目的とする。好ましくは、薬学的組成物は、非経口的、すなわち、静脈内に、皮下内、または筋肉内に投与される。これらは、連続的または拍動的注入によって投与され得る。
薬学的組成物または処方には、薬学的に許容可能なキャリア、好ましくは水性キャリアまたは希釈液と組み合わされた本発明による製剤が含まれる。水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシン等の種々の水性キャリアが使用され得る。本発明の製剤はまた、傷害部位への送達またはターゲッティングのためにリポソーム製剤に処方され得る。リポソーム製剤については、一般的には米国特許第4,837,028号、4,501,728号、および4,975,282号に記載されている。組成物は、従来から周知の滅菌法技術によって殺菌され得る。得られた水溶液は、使用のためにパッケージされてもよく、無菌状態下でろ過され、かつ凍結乾燥され得る(凍結乾燥された製剤は、投与前に無菌水溶液と組み合わされる)。
組成物は、薬学的に許容可能な補助物質またはアジュバントを含んでもよい。これらの物質の例には、これらに限定されないが、pH調整剤および緩衝剤および/または等張化剤(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど)が含まれる。
これらの処方における因子VIIまたは因子VII関連ポリペプチドの濃度は、幅広く変動する{すなわち、約0.5重量%未満から15〜20重量%(通常または少なくとも約1重量%)}。そして、該濃度は、選択された投与の特定のモデルに合わせて、主に液体容積、粘度などによって選択されるであろう。
従って、静脈注入のための典型的な薬学的組成物は、250mlの無菌リンガー溶液および10mgの製剤を含むように調製され得る。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に周知または自明であり、より詳細には、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA (1990) に記載されている。
本発明の製剤を含む組成物は、予防学的処置および/または治療学的処置のために投与され得る。治療学的適用において、該組成物は、疾患およびその合併症を完治、軽減または部分的に抑制させるのに十分な量において、上述したように、疾患を患う患者に投与される。これを達成させる十分な量は、「治療的有効量」として定義される。各目的についての効果的量は、疾患または損傷の重症度と、患者の体重および全身状態に依存するであろう。しかしながら、一般的には、効果的量は、70kgの患者について1日当り約0.05mg〜約500mgの製剤の範囲に及び、一日当り約1.0mg〜約200mgの製剤の投与量がより一般的に採用される。適切な投与量の決定は、マトリックスの値を構築し、マトリックス中の異なる点を試験することによる、日常的な実験手法を行うことによって達成され得る。
本発明の製剤の局所的送達(例えば局所的適用)は、例えばスプレー、灌流、二重バルーンカテーテル、ステント(移植血管またはステントに組み込まれる)、被覆バルーンカテーテルに使用されるヒドロゲル、または他の十分に確立された方法によって行われ得る。
いずれにしても、薬学的組成物は、患者を効果的に治療するのに十分な製剤の量を提供しなければならない。
本発明の薬学的組成物は、他の生理活性薬剤(例えば、非因子VII-関連凝固剤または抗凝固剤)をさらに含み得る。
実験
一般的方法
α-キシロシダーゼ試験
α-キシロシダーゼ分析は、適切な基質{例えば、関連した糖タンパク質(例えばrFVIIa)のO-糖ペプチド地図から得られ得るO-糖ペプチド}を含む、適切なバッファ(例えば50mMの酢酸ソーダ、pH 4.5)中において行われる。例えば、トリフルオロ酢酸の追加によって実験的に決定され得る適切な時間後に反応を停止し、試験混合物をHPLCによって分析した。
α-キシロシル転移酵素試験
α-キシロシル転移酵素試験は、適切な基質{例えば、関連した糖タンパク質(例えばrFVIIa)のO-糖ペプチド地図から得られ得るO-糖ペプチド、または、Minamida et al. (Minamida et.al., Detection of UDP-D-xylose: α-D-xyloside α1-3xylosyltransferase activity in human hepatoma cell line HepG2. J. Biochem. 120 1002-1006, 1996) に記載されたように調製されたピリジル-アミン化オリゴ糖}を含む、適切なバッファー(例えば10mMのHepes、pH 7.2、0.1%のTriton X-100、0.5mMのUDP-キシロース(Sigma U5875)中において行われる。該反応は、適切な時間が経過した後停止させ、実験的に決定することができる(例えば、トリフルオロ酢酸の追加によって)。そして、試験混合物をHPLCによって分析した。
α-キシロシダーゼおよびα-キシロシル転移酵素試験は、時間および任意的には温度およびpHについて最適化される。
O-グルコシル転移酵素試験
O-グルコシル転移酵素試験は、例えばShao et al. (Glycobiology 12(11) 763-770 2002) によって記載されたように行われる。
因子VII試験
因子VIIa活性化についての試験に適した試験法、および適切な因子VIIa変異体を選択するのに適した試験法は、単純な予備的インビトロ試験として行われ得る。試験法はまた、適切な因子VIIa変異体を選択するために適している。
インビトロ加水分解試験法
天然(野生型)因子VIIaおよび因子VIIa変異体(以下、ともに「因子VIIa」として表記)は、比活性について試験され得る。これらはまた、その比活性を直接比較するために、並行して試験され得る。分析は、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)で行われる。色素産生基質 D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix, Sweden)(最終濃度1mM)が、0.1M NaCl、5mM CaCl2および1mg/ml ウシ血清アルブミンを含む50mM Hepes(pH7.4)中の因子VIIa(最終濃度100nM)に加えられる。405ナノメートルの吸光度は、SpectraMax 340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)において連続的に測定される。酵素を十分に含まないブランク中の吸光度の減算の後、20分間のインキュベーションにわたって呈される吸光度は、変異体の活性と野生型因子VIIaの活性との間の比を算出するために使用される:
比=(A405 nm 因子VIIa変異体)/(A405 nm 因子VIIa野生型)。
上記式に基づけば、天然の因子VIIaと同等またはより高い活性を有する因子VIIa変異体は、例えば、該変異体の活性と天然の因子VII(野生型FVII)の活性との間の比が1.0を超える変異体として識別され得る。
因子VIIaまたは因子VIIa変異体の活性はまた、100〜1000nMの濃度で、因子Xのような生理学的基質を使用して測定されてもよく、生成された因子Xaが、適切な色素産生基質(例えばS-2765)の追加後に測定される。さらに、活性試験は、生理学的温度で行われ得る。
インビトロタンパク質分解試験法
天然(野生型)因子VIIaおよび因子VIIa変異体(以下、ともに「因子VIIa」として表記)は、それらの比活性を直接比較するために並行して試験に供される。該分析は、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において行われる。0.1M NaCl、5mM CaCl2および1mg/ml ウシ血清アルブミンを含む100microL 50mM Hepes(pH7.4)中の因子VIIa(10nM)および因子X(0.8のmicroM)が、15分間にわたってインキュベートされる。その後、因子Xの切断が、0.1M NaCl、20mM EDTAおよび1mg/ml ウシ血清アルブミンを含む50microL 50mM Hepes(pH7.4)の追加によって停止される。精製された因子Xaの量は、色素産生基質Z-D-Arg-Gly-Arg-p-ニトロアニリド(S-2765、Chromogenix、Sweden)(終濃度0.5mM)の追加によって測定される。405ナノメートルの吸光度は、SpectraMax340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)において連続的に測定される。10分間にわたって呈される吸光度は、FVIIaを含まないブランクウェル中の吸光度の減算の後、変異体のタンパク質分解活性と野生型因子VIIaのタンパク分解活性との比を算出するために使用される:
比=(A405 nm 因子VIIa変異体)/(A405 nm 因子VIIa野生型)。
上記式に基づけば、天然の因子VIIaと同等またはより高い活性を有する因子VIIa変異体は、例えば、該変異体の活性と天然の因子VII(野生型FVII)の活性との間の比が1.0を超える変異体として識別され得る。
トロンビン生成試験:
トロンビンを生成する因子VIIまたは因子VII関連のポリペプチド(例えば変異体)の能力は、生理学的濃度での全ての関連する凝固因子および阻害物質ならびに活性化血小板を含んでなる試験において測定され得る(p.543 in Monroe et al. (1997) Brit. J. Haematol. 99, 542-547上に記載 参照によって本明細書中に組み込まれる)。
Clot試験
第一生成試験
因子VIIポリペプチドの活性はまた、WO 92/15686またはUS 5,997,864に記載されたように、一段階凝固試験を使用して測定され得る。簡単に言うと、試験対象のサンプルが、50mM Tris (pH7.5)、0.1% BSA中に希釈され、100μLが、100μLの因子VII欠乏性血漿および10mM Ca2+を含む200μLのトロンボプラスチンCでインキュベートされる。血液凝固時間が測定され、段階的に希釈されたリファレンス基準またはクエン酸正常ヒト血奨の貯留液を使用して標準曲線と比較される。
第二生成試験:
トロンボプラスチンCの代わりに組み換え体人組織因子が使用されることを除いて、ほぼ同じある。
因子IX試験
因子IX活性についての試験:
因子IX活性についての適切な試験法(その結果、本発明において使用に適した因子IX変異体を選択するための手段を提供する)は、例えば、Wagenvoord et al., Haemostasis 1990;20(5):276-88に記載されたような単純なインビトロ試験として行われうる。
因子IX生物学的活性はまた、因子IX欠乏性血漿の血液凝固時間を調整する製剤の能力を測定することによって定量化され得る。Nilsson et al., 1959.(Nilsson IM, Blombaeck M, Thilen A, von Francken I., Carriers of haemophilia A - A laboratory study, Acta Med Scan 1959; 165:357)を参照されたい。この試験法において、生物学的活性は「単位/mL血漿」として表わされる(1単位は、正常な貯留血漿中に存在するFIXの量に相当する)。

以下の例は、本発明の非限定的な具体例として表わされる。
例1
抽出および精製によるα-キシロシダーゼの調製
酵素α-キシロシダーゼは、多様供給源(例えば植物材料)から調製され得る。Monroe et al. (Plant Physiology and Biochemistry 41:877-885 (2003))を参照されたい。例えば、シロイヌナズナ由来の植物組織が、2容積のバッファーA(40mMのHepes、pH 7.0、1M NaCl)中において珪砂とともに乳鉢および乳棒ですりつぶされ、濾過された抽出物は、硫酸塩が加えられる15分間にわたって15000×gで遠心処理される。硫酸アンモニウムが、例えば80%飽和まで加えられる。沈殿したタンパク質は15分間にわたる15000×gの遠心処理によって集められ、バッファーAで再溶解される。キシロシダーゼは、例えばコンカナバリンA-セファロースカラム、陰イオン交換カラムおよび/または当業者に知られた他のクロマトグラフィーのカラム上で、クロマトグラフィーによって精製される。画分は溶出中に集められ、α-キシロシダーゼ酵素を含む画分が、α-キシロシダーゼ試験の使用によって同定される。
例2
クローニングによるα-キシロシダーゼの調製および大腸菌における発現およびその精製
α-キシロシダーゼ(αキシロシド結合を加水分解し得る)をコードする遺伝子が、事前にクローン化されて特徴づけられ、特徴づけられたα-キシロシダーゼに強い相同性を示す遺伝子に、幾つかの原核生物および真核生物由来のゲノムにおいて注釈をつけた。遺伝子配列は、SWISS-PROTまたはNCBIのようなデータベースが利用可能であり、かつそれぞれの生物由来のゲノムDNAからPCRによって増幅され得る。α-キシロシダーゼのタンパク質の存在についてタンパク質データベースを検索した後、幾つかの候補遺伝子を、クローニングのために選択し、大腸菌内で発現させた。以下の候補遺伝子は、データベースにおいて既に存在する注釈(A)、事前に公開された特性(P)または既知のα-キシロシダーゼに対するホモロジー分析(H)に基づいて選択された: 遺伝子tm0308 (Thermotoga maritima: A); 遺伝子bt3085 (2139 bp) および 遺伝子bt3659(2475 bp) (Bacteroides thetaiotaomicron: A); 遺伝子bf0551 (2238 bp) および 遺伝子bf1247 (2538 bp) (Bacteroides fragilis: A); 遺伝子bl02681(2310 bp)(Bacillus licheniformis: H); 遺伝子bh1905 (2328 bp)(Bacillus halodurans: H), 遺伝子xylS (2196 bp)(Sulfolobus solfataricus: P); 遺伝子yicI (2319 bp) (Escherichia coli: P)。
大腸菌内におけるα-キシロシダーゼのクローニングおよびその発現についての戦略
SignalPソフトウェア(Bendtsen,J.D.et al. .J. Mol. Biol., 340:783-795, 2004)は、シグナルペプチドが候補となる酵素のN-末端中に存在する可能性があるか否かを評価するために使用される。BF0551, BF1247, BT3085, BT3659 は、シグナルペプチダーゼI切断部位の強力な予測によって示されるように分泌される可能性がある。開始メチオニンをコードするメチオニンコドンは、予測された切断部位の後ろの第一のアミノ酸の前に含まれる。
Bacteroides thetaiotaomicron (ATCC 29148D), Bacteroides fragilis (ATCC 25285D), Bacillus haludurans(ATCC 21591D&BAA-125D), Sulfolobus solfataricus (ATCC 35092D), Thermotoga maritima (ATCC 43589D)から精製されたゲノムDNAは、アメリカンタイプカルチャーコレクションから得られる。大腸菌(K-12株誘導体)およびBacillus licheniformis(ATCC 28450)の場合において、ゲノムDNAは、製造指示書に基づいたDNeasy組織キット(Qiagen)を使用してLB培地中において終夜培養された細菌から調製される。
PCR増幅のためのフォワードプライマーおよびリバースプライマーは、制限酵素切断部位NdeI(またはXbaI)およびXmaIを含む5´末端における伸長で設計される。PCRは以下の条件を使用して行われる: 1) 95℃で3分間: 変性, 2) 94oCで30秒: 変性, 3) 55℃または60℃で30秒: アニーリング, 4) 72℃で2分間: 伸長。工程2〜4は、15サイクルにわたって繰り返される。PCR産物は、1%エチジウムブロマイドアガロースゲル上で分離され、予測された正しいサイズを示すバンドがゲルから切除され、GFX DNA精製キット(Amersham Pharmacia)を使用して精製された。精製されたPCR産物は、製造業者(Invitrogen)の指示書に基づいてpCR2.1TOPOベクターにクローン化される。正しい制限酵素切断プロフィールを示すクローンをシークエンスしてDNA配列を評価する。α-キシロシダーゼ遺伝子を発現する挿入部分は、関連制限酵素を使用してpCR2.1 TOPOベクターから放出される。NdeI(およびXbaI)およびXmaI部位を含むpET11a 大腸菌発現ベクター(Novagen) が関連制限酵素で切断され、ベクター部位がPCR産物について記載されたように精製される。ベクターおよび挿入部分が、製造業者の指示に従ってRapid Ligation Kit(Roche)を使用して一緒に結合する。
ライゲーション産物は、当業者に知られた化学変換または熱ショック方法によって大腸菌TOP10(Invitrogen)細胞に形質転換される。細胞は、LB/アンペシリン(Amp)培養プレート上で終夜静置される。単一コロニーがプレートから選択され、LB/Amp培地中で終夜増殖する。各コロニーから精製されたpETプラスミドについて、制限開裂酵素を使用して正しい挿入物の有無のスクリーニングを行い、放出された挿入物のサイズの評価を行う。
大腸菌Rosetta DE3(Novagen)は、α-キシロシダーゼ遺伝子を含むpETプラスミドで形質転換され、クロラムフェニコール(Cam)/Amp LBプレート上に静置される。終夜静置された細胞は、液体Cam/Amp LB培地中で再懸濁され、OD600 = 0.1まで希釈される。液体培地中の細胞は、OD600 = 0.4-0.8まで増殖される。細胞はそれから30分間にわたって18℃で平衡化される。そして、タンパク質誘導体が18℃で0.5mM IPTG o/nで誘導される。細胞が回収され、ペレットがOD600=〜10に相当する細胞密度でバッファー(例えば、25mM Tris HCl pH 7または10mMのリン酸カリウム緩衝液 pH7)中で再懸濁される。細胞は、氷上で30秒間の中断を含みながら、3〜7回、15〜30秒間にわたって氷上で超音波処理される。細胞片が遠心分離によって取り出され、上澄みが活性について検定される。
α-キシロシダーゼ活性についての試験
超音波処理で得られた上澄みは、α-キシロシダーゼ活性の存在についてp-ニトロフェニル α-D キシロピラノシド(Sigma)上で評価される。粗製の酵素は、バッファー(例えば、10mM カリウムバッファーpH 7または25mM トリスHCl pH 7バッファー)中で37℃で1〜2時間にわたって5mM p-ニトロフェニル α-D キシロピラノシドとともにインキュベートされる。粗製の酵素はまた、酵素がα-1,3キシロシド結合を切断し得るかどうかを評価するために、Xyl-Xyl-Glc-O-Ser52糖鎖形成(FVIIのアミノ酸残基39〜62からなるペプチド断片)を含むヒトFVIIの断片上で試験される。ペプチドとのインキュベーションは、37℃で3時間または終夜にわたって行われる。キシロシダーゼとともに、またはキシロシダーゼなしでインキュベートされたペプチドのサンプルは、インキュベーション後にMALDI MSによって、酵素が0個、一つまたは二つのキシロース糖を糖ペプチドから除去し得るか否かについて直接的に評価される。
α-キシロシダーゼの精製
発現したα-キシロシダーゼの部分的精製は、rFVIIでインキュベーションする前に行われる。上清(約20〜50ml 細胞培養液由来)が、適切なバッファー(例えば、10mMのリン酸塩バッファー pH7)において細胞分裂後に得られた。好熱菌(例えば、tm0308、BH1905、XylS)由来の酵素の場合において、上清はまた、30分間にわたって50〜70℃で加熱され、10分間にわたって氷上で冷却され、および沈殿物が15分間にわたって15.000Gで遠心分離によって除去され、不耐熱性の大腸菌汚染を取り除く。
上清は、無菌濾過され、1mlのDEAE FFカラム(Amersham Pharmacia)に適用される。精製は、以下のバッファー(バッファーA:25mM リン酸ナトリウム pH 7; バッファーB:25mM リン酸ナトリウム pH 7)および1M NaClを使用して、AKTAエクスプローラ(Amersham Pharmacia) FPLCで行われる。溶液を搭載した後、未結合のサンプルをバッファーAで5CVにわたって洗浄する。0〜100%バッファーBの勾配が20CVにわたって使用され、標的タンパク質が画分中に溶出される。精製後、得られたクロマトグラムにおいてメインピークを含む画分は、p-ニトロフェニル-D キシロピラノシド上でのインキュベーションによってまたはSDS PAGEによって試験される。α-キシロシダーゼ活性を含む画分は、20mM Tris HCl pH7, 2mMCaCl2バッファー中に希釈され、かつ、2900rpmでの遠心分離によってVivaspin 20 50.000 MWCOカラム(Vivascience)上で濃縮される。
セリン52での排他的グルコースでのrFVIIaのO-糖鎖形成
セリン52での排他的グルコースでのrFVIIaのO-糖形成は、適切なバッファー、例えばグリシルグリシンまたは20mM Tris HCl pH7.0、2mM CaCl2中におけるrFVIIaの、適切な時間(実験的に決定され得る)にわたる精製されたα-キシロシダーゼとのインキュベーションによって得られる。脱糖鎖形成を視覚化する質量スペクトルは、rFVII α-キシロシダーゼ・インキュベーションESI-MS(Q-STAR)を分析することによって得られる。
得られたグリカン再構築型rFVIIaは、例えば陰イオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過または適切な組み合わせによって、α-キシロシダーゼ酵素から精製される。rFVIIaの調製されたO-糖鎖形成の純度は、rFVIIaのO-糖鎖ペプチド地図によって検証される。
例3
T. maritimaの推定上のα-キシロシダーゼ遺伝子(tm0308)の大腸菌内におけるクローニングおよびその発現、ならびにその精製による、α-キシロシダーゼの調製
上述した戦略(例2を参照)は、tm0308についての結論に完全に従う。T. maritimaの推定上のα-キシロシダーゼ遺伝子(tm0308)は、PCRによって増幅され、大腸菌pET11aベクターにクローン化された。可溶性tm0308は、大腸菌Rosetta(DE3)発現株における発現、およびp-ニトロフェニル α-D キシロピラノシド、明示的に示されたα-キシロシダーゼ活性についての粗TM0308製剤の評価の後に得られ得る。α-キシロシダーゼは、DEAE FFクロマトグラフィーを使用して部分的に精製され、その後に限外濾過によって上限濃度まで精製された。部分的に精製された酵素は、異なる酵素/FVII比で3時間50℃または終夜37℃で、25mM Tris pH7, 2mM CaCl2バッファーでインキュベートされた。α-キシロシダーゼおよびrFVIIの同一の組成物を含む対照群に合成基質が加えられると、酵素はこれらの条件のもとで活性を示し、SDS-ゲル上およびESI-MSによるキシロシダーゼ処理の有無でFVIIを視覚化することを可能にした。しかしながら、Glc-O-Ser52に結合したキシロース糖類の顕著な除去は、この第一の実験において検出され得なかった。対照的に、Xyl-Xyl-Glc-O-Ser52を含む還元およびアルキル化された精製FVIIaペプチドからのキシロースの除去は、観察された。
例4
クローニングによるα-キシロシダーゼの調製および大腸菌内における発現
以下の構成物が、例2に記載された戦略に基づいてpET発現ベクター内にクローン化された:遺伝子bl02681(2310 bp)(Bacillus licheniformis: H); 遺伝子bl1905 (2328 bp)(Bacillus halodurans: H), 遺伝子xylS (2196 bp)(Sulfolobus solfataricus: P); 遺伝子yicI (2319 bp) (Escherichia coli: P)。
該構成物は、Rosetta内で発現、単離、精製され、上述した戦略に従ってα-キシロシダーゼ活性について評価された。
各α-キシロシダーゼは、実験的に決定し得る適切な時間の中で、適切なバッファー、例えばグリシルグリシンまたは20 mM Tris HCl pH 7.0, 2 mM CaCl2中において、rFVIIaでインキュベートされる。そして、脱糖鎖形成を可視化するMS Spectraが、rFVIIα-キシロシダーゼ・インキュベーションESI-LC-MS(Q-STAR)を分析することによって得られる。
得られたグリカン再構築型rFVIIaは、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過またはその適切な組み合わせによってα-キシロシダーゼ酵素から精製されるであろう。rFVIIaの調製されたO-糖鎖形成の純度は、rFVIIaのO-糖鎖ペプチド地図によって検証される。
例5
クローニングによる切断されたα-キシロシダーゼの調製および大腸菌内における発現
YicIの結晶構造は、最近解明された。YicIタンパク質(または他の類似のα-キシロシダーゼ)の活性な触媒性ドメインを表す切断されたα-キシロシダーゼ酵素のクローニングは可能である。より小さい酵素は、活性であるならば、天然rFVIIa中に存在するXyl-Xyl-Glc-O-Ser52によりよくアクセスし得る。酵素中の活性部位を含むドメインは構造から予測される。この部分のYicI配列をコードする遺伝子情報は、YicI遺伝子の関連した領域のPCR増幅による例についての既存のYicI pET11aプラスミドから調製される。PCRについて使用されたプライマーは、切断されたYicI遺伝子のpET11aベクターへのライゲーションのために使用され得る制限酵素部位で伸長する。切断された酵素は、発現および精製後に、上述したようなrFVIIaの脱グリコシル化についての潜在力について評価される。
例6
キシロシル転移酵素処理による、セリン52での排他的キシロース-グルコースでのrFVIIaの調製またはセリン52での排他的キシロース-キシロース-グルコースでのrFVIIaの調製
α-キシロシル転移酵素の調製
酵素、UDP-D-キシロース: β-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素は、Omichi et al. (1997)によって記載されたようなHepG2細胞から調製され得る。簡単に言えば、HepG2細胞を、10%ウシ胎児血清が補充された培地中で増殖させる。ミクロソーム画分は、細胞の均質化後の遠心分離によって調製される。α-キシロシル転移酵素は、クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換カラムおよび/または当業者に知られた他のクロマトグラフィーカラム)上で、クロマトグラフィーによって精製される。画分は溶出中に集められ、α-キシロシル転移酵素を含む画分は、α-キシロシル転移酵素の使用によって同定される。
酵素、UDP-D-キシロース: α-D-キシロシド α1,3-キシロシル転移酵素は、Minamida et al. (1996) によって記載されたようなHepG2細胞から調製され得る。簡単に言えば、HepG2細胞を、10%ウシ胎児血清が補充された培地中において増殖させる。ミクロソームの画分は、細胞の均質化後の遠心分離によって調製される。α-キシロシル転移酵素は、クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換カラムおよび/または当業者に知られた他のクロマトグラフィーカラム)上で、クロマトグラフィーによって精製される。画分は溶出中に集められ、α-キシロシル転移酵素を含む画分は、α-キシロシル転移酵素の使用によって同定される。
α-キシロシル転移酵素分析
α-キシロシル転移酵素試験は、適切な基質、例えば、Minamidaらに記載されたように調製されたrFVIIaまたはピリジルアミン化されたオリゴ糖類のO−糖鎖ペプチド地図から得られうるO-糖鎖ペプチドを含む、適切なバッファ(例えば、10mM Hepes、pH 7.2、0.1% Triton X-100、0.5mM UDP-キシロース(Sigma U5875))において行われる( Minamida et.al., UDP-D-キシロースの検出: ヒト肝腫細胞系統 HepG2におけるα-D-キシロシド α1-3キシロシル転移酵素活性 J. Biochem. 120 1002-1006, 1996)。該反応は、例えばトリフルオロ酢酸の追加によって実験的に決定されうる適切な時間後に停止され、該試験混合物がHPLCによって分析される。
セリン52での排他的キシロース-グルコースでのrFVIIaのO-糖鎖形成
セリン52での排他的キシロース-グルコースでのrFVIIaのO-糖鎖形成は、(1)上述したようなキシロシダーゼでのrFVIIaの処理、(2)例えば陰イオン交換クロマトグラフィーによるキシロシダーゼからのキシロシダーゼ処理されたrFVIIaの精製、(3)実験的に決定され得る適切な時間中、精製されたUDP-D-キシロース:β-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素およびUDP-D-キシロースを含む適切なバッファ(例えばグリシルグリシン、pH7.0, 10mM塩化カルシウム)中におけるキシロシダーゼで処理されたrFVIIaのインキュベーションによって得られる。得られた糖鎖再構成型rFVIIaは、例えば陰イオン交換クロマトグラフィーによって、UDP-D-キシロース:β-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素から精製される。rFVIIaの調製されたO-糖鎖形成の純度は、rFVIIaのO-糖鎖ペプチド地図によって検証される。
セリン52での排他的キシロース-キシロース-グルコース-でのrFVIIaのO-糖鎖形成
セリン52でのキシロース-キシロース-グルコースでのrFVIIaのO-糖鎖形成は、(1)上述したようなキシロシダーゼでのrFVIIaの処理、(2)例えば陰イオン交換クロマトグラフィーによるキシロシダーゼからのキシロシダーゼ処理されたrFVIIaの精製、(3)UDP-D-キシロースでのさらなる処理:上述したようなβ-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素およびUDP-D-キシロース、および(4) 実験的に決定しうる適切な時間中、精製されたUDP-D-キシロース:α-D-キシロシド α1,3-キシロシル転移酵素およびUDP-D-キシロースを含む適切なバッファー(例えばグリシルグリシン、pH7.0, 10mM塩化カルシウム)中における生成物のインキュベーション、によって得られる。得られた糖鎖再構成型rFVIIaは、例えば陰イオン交換クロマトグラフィーによって、UDP-D-キシロース:α-D-キシロシド α1,3-キシロシル転移酵素から精製される。rFVIIaの調製されたO-糖鎖形成の純度は、rFVIIaのO-糖鎖ペプチド地図によって検証される。
例7
rFVIIaのO-糖鎖形成パターンの分析
rFVIIa軽鎖のトリプシン処理ペプチドマッピング
rFVIIaのO-糖鎖形成の相対的含量は、rFVIIa軽鎖のトリプシン処理ペプチドマッピングによって決定される。rFVIIaは還元およびアルキル化され、rFVIIa軽鎖は水:トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル勾配で溶出されたRP-HPLCカラム上で精製される。精製されたrFVIIa軽鎖は、Trisバッファー、pH7.5にバッファー交換され、トリプシンで消化された。rFVIIa軽鎖のトリプシン消化は、水:トリフルオロ酢酸におけるアセトニトリル勾配(0%〜45%アセトニトリル 100min中)で溶出されたRP-HPLCカラム(例えば、Nucleosil C18, 5μ, 300Å, 4.0×250 mm, Macherey-Nagel 720065)上で分析される(図2を参照)。流速は1.0ml/分であり、検出は215nmのUVである。
rFVIIaのO-糖鎖ペプチドを含むピークは約60〜65分後に溶出され、第1および第3のピークが、セリン52に結合したキシロース-キシロース-グルコース-を含むO-糖鎖ペプチドを含み、第2および第4のピークが、セリン52に結合したグルコースを含むO-糖鎖ペプチドを含む。
同様に、第1および第2のピークが、セリン60に連結した四糖類を含むO-糖鎖ペプチドを含み、第3および第4のピークが、セリン60に結合したフコースを含むO-糖鎖ペプチドを含む。
rFVIIaのトリプシン処理ペプチドマッピング
O-糖鎖形成パターンは、rFVIIaのトリプシン処理ペプチドマッピングによって分析され得る。rFVIIaは、TrisバッファーpH7.5にバッファー交換され、トリプシンで消化される。rFVIIaのトリプシン消化は、水:トリフルオロ酢酸中のアセトリトリル勾配(0%〜45%アセトリトリル 100min中)で溶出されたRP-HPLCカラム上(例えば、Nucleosil C18, 5μ, 300Å, 4.0×250 mm, Macherey-Nagel 720065)で分析される。流速は1.0 ml/分であり、検出は215nmのUVである。
rFVIIaのO-糖鎖ペプチドを含むピークは約67〜70分後に溶出される。第1のピークはセリン52と結合したキシロース-キシロース-グルコースを含むO-糖鎖ペプチドを含み、第2のピークはセリン52と結合したグルコースを含むO-糖鎖ペプチドを含む。
rFVIIaの総質量分析
O-糖鎖形成パターンは、rFVIIaの総質量分析によって分析され得る。rFVIIaは、1%ギ酸で平衡化されたMillipore ZipTip C4カラム上で脱塩化され、90%メタノール中の3%ギ酸で溶出される。溶出されたサンプルは、Qstar XL質量分光計でのナノスプレー技術によって分析される。
約50500 Daでの主要なピークは、セリン52と結合したグルコースを含むrFVIIa O-糖鎖形成を表し、約50800 Da での主要なピークは、セリンと結合したキシロース-キシロース-グルコースを含むrFVIIa O-糖鎖形成を表す。
例8
Glc-O-Ser52-FVIIおよびXyl-Xyl-Glc-O-Ser52-FVIIの精製
Glc-O-ser52-FVIIおよびXyl-Xyl-Glc-O-Ser52-FVIIは、2サイクルの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して精製された。Toso Haas TSK-Gelフェニル5 PWで充填されたカラム(内計1.0 cm×7.0 cm長 = 5.5 mlカラム容積 (CV))は、5 CV 10 mM ヒスチジン、10 mM CaCl2、2.0 M NH4-酢酸塩、pH 6.0で平衡化された。カラムには、約2.5 mgのFVII pr. Ml樹脂が搭載された。搭載する前に、搭載溶液に2.0 M NH4-酢酸塩および10 mM CaCl2が添加された。カラムを5 CV 10 mMヒスチジン、10 mM CaCl2、2.0M NH4-酢酸塩(pH 6.0)で洗浄した。溶出を行う際、10 mM ヒスチジン、10 mM CaCl2、2.0M NH4-酢酸塩(pH 6.0)から、10 mM ヒスチジン、10 mM CaCl2(pH 6.0)までの20CV直線的勾配を使用した。6CV/hの流速および5℃の温度で精製を行った。画分を溶出の間に集めた。
FVIIは、二つのオーバーラップする主要ピーク中に溶出した(図4を参照:第一のHICサイクルからのクロマトグラム)。第一のピークを含む画分が貯留され(画分「A」、図4)、さらに、第一のHICサイクル(図5を参照:HICカラム上で画分「A」を再搭載することによって得られたクロマトグラム)についてのものと同じクロマトグラフィー手順を使用する、HICの第二のサイクルによって精製された。第二の主要ピークを含む画分(画分「B」、図4)が同様に貯留され、さらに、第一のHICサイクル(図6を参照:画分「B」をHICカラム上に再搭載することによって得られたクロマトグラム)についてのものと同じクロマトグラフィー手順を使用する、HICの第二サイクルによって精製された。
精製されたGlc-O-Ser52-FVIIは、第二のHIC工程上に画分「A」を再搭載することによって得られた、ピーク画分、画分10(図5)において同定された。精製されたXyl-Xyl-Glc-O-Ser52-FVIIは、第二のHIC工程上で画分「B」を再搭載することによって得られた、ピーク画分、画分15(図6)において同定された。同定は、例7(図7Aおよび7B)において記載されたようなrFVIIaのトリプシン処理ペプチドマッピングによって得られ、例7(図8Aおよび8B)において記載されたようなrFVIIaの総質量分析によって得られた。
両分析は、ピーク画分(画分10)において高含量のGlc-O-Ser52-rFVIIaおよび低含量のXyl-Xyl-Glc-O-Ser52-rFVIIaを示し、ピーク画分(画分15)において低含量のGlc-O-Ser52-rFVIIa および高含量のXyl-Xyl-Glc-O-Ser52-rFVIIaを示した。二つのピーク画分におけるO-糖鎖形成の含量の定量化は、画分中においてかなり低いrFVIIa含量のために得ることができなかった(図7Aおよび7B:トリプシン処理ペプチドマッピング:O-グリコペプチドと同時溶出された、またはO-グリコペプチドに近接して溶出されたrFVIIaの他のペプチド断片、および低量のO-糖鎖ペプチドの含量が決定され得なかった)(図8Aおよび8B:総質量分析:質量スペクトル中に現れたrFVIIaの他のO-および/またはN-糖鎖形成、例えば、一つのN-アセチルノイラミン酸を欠くrFVIIaのN-糖鎖形成、および低量中におけるrFVIIaのO-糖鎖形成の含量が決定され得なかった)。
HICから得られたピーク画分の特異的活性(表1)は、第一生成凝固試験によって決定された。Glc-O-Ser52-rFVIIa O-糖鎖形成は低い特異的活性を有するが、Xyl-Xyl-Glc-O-Ser52-rFVIIa O-糖鎖形成は高い特異的活性を有することを見出した。
表1.HICから得られたピーク画分についての第一生成凝固試験を使用して決定された特異的活性。rFVIIaの含量はHPLCによって決定された。
Figure 2007536345
例9
疎水性相互作用クロマトグラフィーによる精製
高度に精製されたGlc-O-Ser52-rFVIIa製剤および高度に精製されたXyl-Xyl-Glc-O-Ser52-rFVIIa製剤は、上述したような疎水性相互作用クロマトグラフィー上で精製を繰り返すことによって得られうる。より高いrFVIIa含量を含む高度に精製されたGlc-O-Ser52-rFVIIaおよびXyl-Xyl-Glc-O-Ser52-rFVIIaが、上述したように行われた疎水性相互作用クロマトグラフィーについての開始物質の量を増加させることによって得られうる。より高いrFVIIa含量を含む高度に精製された製剤中におけるrFVIIaの各O-糖鎖形成の含量は、例7に記載されたようなrFVIIa軽鎖のトリプシン処理ペプチドマッピングによって定量化され得る。高度に精製された製剤の特異的活性は、上述したような第一生成凝固試験によって決定され得る。
図1は、wt-因子VIIのセリン52糖鎖形成を示す。 図2は、因子VIIのO-糖鎖形成のマッピングを示す。 図3は、所定のセリン/スレオニン結合型の糖鎖形成を示す糖タンパク質製剤の製造についての反応スキームを示す。 図4は、画分「A」および「B」を示す第一のHICサイクルからのクロマトグラムを表す。 図5は、画分「A」をHICカラム上に再搭載することによって得られるクロマトグラムを示す;Glc-O-Ser52-FVIIは、ピーク画分(画分10)において識別された。 図6は、画分「B」をHICカラム上に再搭載することによって得られるクロマトグラムを示す;Xyl-Xyl-Glc-O-Ser52-FVIIは、ピーク画分(画分15)において識別された。 図7aは、ピーク画分(画分10)のトリプシンによって生じたペプチドの地図を示す。矢印は、Glc-O-Ser52 O-糖ペプチドを示す。 図7bは、ピークの画分(画分15)のトリプシンによって生じたペプチドの地図を示す。矢印は、Xyl-Xyl-Glc-O-Ser52 O-糖ペプチドを示す。 図8aは、ピークの画分(画分10)の全質量分析を示す。矢印は、Glc-O-Ser52-rFVIIa O-糖形成を示す。 図8bは、ピークの画分(画分15)の全質量分析を示す。矢印は、Xyl-Xyl-Glc-O-rFVIIa O-糖形成を示す。

Claims (28)

  1. Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフを含む糖タンパク質の製剤であって、前記セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成し、かつ前記製剤が実質的に均一なセリン/スレオニン結合型糖鎖形成パターンを含む製剤。
  2. 前記糖鎖形成パターンが、少なくとも80%均一、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%均一である請求項1に記載の製剤。
  3. 前記セリン/スレオニン結合型グリカンが、Xyl-Xyl-Glc-である請求項1または2に記載の製剤。
  4. 前記セリン/スレオニン結合型グリカンが、Xyl-Glc-である請求項1または2に記載の製剤。
  5. 前記セリン/スレオニン結合型グリカンが、Glc-である請求項1または2に記載の製剤。
  6. 前記糖タンパク質が、因子VIIポリペプチド、因子VII関連ポリペプチド、因子IXポリペプチド、因子Xポリペプチド、因子XIIポリペプチド、およびタンパク質Zポリペプチドからなる群から選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤。
  7. 前記糖タンパク質が、ヒト因子VIIである請求項6に記載の製剤。
  8. 前記糖タンパク質が、因子VIIの変異体であり、因子VII変異体の活性と天然のヒト因子VIIa(野生型FVIIa)の活性との間の比が、「インビトロ加水分解試験」または「インビトロタンパク質分解試験」(ともに本明細書中に記載)において試験されたとき、少なくとも約1.25、好ましくは少なくとも約2.0、または少なくとも約4.0である請求項6に記載の製剤。
  9. 前記糖タンパク質が、ヒト因子IX、因子IX配列変異体の群から選択される請求項6に記載の製剤。
  10. 前記セリン/スレオニン結合型グリカンが-Glcである請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤を作製する方法であって、前記方法が、
    (a) 調製された細胞、例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、前記セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
    (b) 糖タンパク質からキシロース残基を除去するのに適切な条件下で、工程(a)において得られた製剤をα-キシロシダーゼと接触させ、その結果、変更された糖鎖形成パターンを有する糖タンパク質を生成する工程と
    を含む方法。
  11. グルコース-O-セリン/スレオニン糖鎖形成を有する、工程bにおいて調製された糖タンパク質を単離する工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
  12. 前記糖鎖形成が、セリンのグリコシル化である請求項10または11に記載の方法。
  13. 糖鎖形成パターンを決定するためにポリペプチドに結合したオリゴ糖類の構造を分析する工程と、任意的には、所望の糖鎖形成パターンが達成されるまで工程(b)を繰り返す工程とをさらに含む請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記セリン/スレオニン結合型グリカンがGlcである請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤を作製する方法であって、前記方法が、
    (a) 例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
    (b) グルコース供与基からセリン/スレオニン受容基にグルコース残基を移行するのに適した条件下で、工程(a)において得られた製剤を、O-グルコシル転移酵素および活性化されたグルコース供与体に接触させ、その結果、変更された糖鎖形成パターンを有するポリペプチドを生成する工程と
    を含む方法。
  15. グルコース-O-セリン/スレオニン糖鎖形成を有する工程bにおいて調製された糖タンパク質を単離する工程をさらに含む請求項14に記載の方法。
  16. 前記糖鎖形成が、セリンのグリコシル化である請求項14または15に記載の方法。
  17. 糖鎖形成パターンを決定するためにポリペプチドに結合したオリゴ糖類の構造を分析する工程と、任意的には、所望の糖鎖形成パターンが達成されるまで工程(b)を繰り返す工程とをさらに含む請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記セリン/スレオニン結合型グリカンがXyl-Glc-である請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤を作製する方法であって、前記方法が、
    (a) 例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、前記セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
    (b) キシロース供与基から受容基へキシロース残基を移行するのに適切な条件下で、工程(a)において得られた製剤を、UDP-D-キシロース:β-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素および活性化されたキシロシル供与体と接触させ、その結果、変更された糖鎖形成パターンを有するポリペプチドを生成する工程と
    を含む方法。
  19. キシロース-グルコース-O-セリン/スレオニン糖鎖形成を有する工程bにおいて調製された糖タンパク質を単離する工程をさらに含む請求項18に記載の方法。
  20. 前記糖鎖形成が、セリンのグリコシル化である請求項18または19に記載の方法。
  21. 糖鎖形成パターンを決定するためにポリペプチドに結合したオリゴ糖類の構造を分析する工程と、任意的には、所望の糖鎖形成パターンが達成されるまで工程(b)を繰り返す工程とをさらに含む請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記工程(a)において得られた製剤を、工程(b)の前に請求項10〜13に記載された方法に供することによって末端キシロース残基を再移動させる工程をさらに含む請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
  23. セリン/スレオニン結合型グリカンがXyl-Xyl-Glc-である請求項1〜9のいずれか一項に記載された製剤を作製する方法であって、前記方法が、
    (a) 例えば、加工された細胞(細胞培養)から、または天然源から糖タンパク質を単離することによって、Cys-X1-Ser/Thr-X2-Pro-Cysモチーフであって、前記セリン/スレオニンがGlc-O-Ser/Thr共有結合の部位を形成するモチーフを含む糖タンパク質の製剤を得る工程と、
    (b) キシロース供与基から受容基へキシロース残基を移行するのに適切な条件下で、工程(a)において得られた製剤を、UDP-D-キシロース:β-D-グルコシド α-1,3-D-キシロシル転移酵素および活性化されたキシロシル供与体と接触させ、その結果、変更された糖鎖形成パターンを有する糖ペプチドを生成する工程と、
    (c) キシロース供与基から受容基へキシロース残基を移行するのに適切な条件下で、工程(b)において得られた製剤を、UDP-D-キシロース:α-D-キシロシド α-1,3-キシロシル転移酵素および活性化されたキシロシル供与体と接触させ、その結果、変更された糖鎖形成パターンを有する糖ペプチドを生成する工程と
    を含む方法。
  24. 前記工程(c)に製剤を供する前に、前記工程(b)において得られた製剤を単離する工程をさらに含む請求項23に記載の方法。
  25. キシロース-キシロース-グルコース-O-セリン/スレオニン糖鎖形成を有する工程(c)において調製された糖タンパク質を単離する工程をさらに含む請求項23または24に記載の方法。
  26. 前記糖鎖形成が、セリンのグリコシル化である請求項23〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 糖鎖形成パターンを決定するためにポリペプチドに結合したオリゴ糖類の構造を分析する工程と、任意的には、所望の糖鎖形成パターンが得られるまで工程(b)および/または工程(c)を繰り返す工程とをさらに含む請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 工程(a)において得られた製剤を、工程(b)の前に請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法に供することによって末端キシロース残基を再移動させる工程をさらに含む請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法。
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