JP2007324080A - 色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極、及びその製造方法並びにこれを備えた色素増感太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化還元対となる化学種を含む電解質と、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子、および触媒物質とを含む電極の構成とする。
【選択図】図1
Description
上記の色素増感太陽電池は、可視光を吸収して励起した増感色素から半導体電極に電子が注入され、集電体を通して外部に電流が取り出される。一方、増感色素の酸化体は電解質中の酸化還元対により還元されて再生する。酸化された酸化還元対は、半導体電極に対向して設置された触媒電極表面で還元されてサイクルが一周する。
色素増感太陽電池に従来用いられている触媒電極としては、電極基体上に、塩化白金酸を塗布、熱処理したものや、白金を蒸着した白金触媒電極が知られている。この触媒電極においては、電解質中の酸化還元対(例えば、I3 ー/I−等)の酸化体を還元体に還元する還元反応(I3 -をI-に還元する還元反応)を速やかに進行させることが可能な電極特性を有するものが求められている。
この特許文献2には、前記多孔質層を形成する導電性材料の一種として、導電性セラミック粒子とともに導電性有機ポリマー、すなわち導電性高分子が例示されている。これら導電性粒子には、金属粉末、グラファイト粉末、カーボンブラック、プラチナ族金属の触媒性堆積を選択肢として有しているとされ、その後背面電極に分散すると記載されている。すなわち、導電性高分子粒子、は触媒を施す担体として使用されている。これらの中でもグラファイト粉末とカーボンブラックとの組合せが、腐食抵抗性と酸化還元対に対する電気触媒作用を有しており、優れている旨が記載されている。また、優れた触媒作用を有する理由としては、カーボンブラックの非常に大きな表面積によるものと記載されている。また、これらの紛末を凝集及び固着させるために接着剤が必要とされ、該接着剤としては二酸化チタンを焼結させることで好適に利用できる旨記載されている。
種々の技術が提案されているが、依然としてより安価な製造コストとプロセスで作製でき、かつ高粘度の電解質を用いた場合でも優れた電池特性を示す色素増感太陽電池が求められている。
本発明の目的はまた、色素増感太陽電池の電解質−触媒複合電極を製造するにあたって、安価な材料により簡便に操作性よく、かつ小エネルギーにて電極特性に優れた該電極を製造する方法を提供することである。
本発明の目的はさらに、上記電解質−触媒複合電極を備え、優れた光電変換効率を有する色素増感太陽電池を提供することである。
本発明者らはまた、前記導電性の繊維もしくは粒子が、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、3次元の網目構造を成すことにより、より電極特性に優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
本発明者らはまた、触媒物質が、導電性の繊維もしくは粒子表面に担持され、電解質に含まれる酸化還元対の伝導経路と接触させることにより、より電極特性に優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
本発明者らはまた、導電性の繊維もしくは粒子表面に触媒物質が担持されてなる3次元の網目構造が、該触媒物質を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通させることにより、より電極特性に優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
本発明者らはさらに、導電性の繊維もしくは粒子表面に導電性高分子が形成されてなる3次元の網目構造が、該導電性高分子を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質が該導電性高分子表面に担持させることにより、電極特性に優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
該芳香族アミン化合物として、アニリン、アニシジンなどが挙げられる。
該チオフェン化合物として、チオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。
該ピロール化合物として、ピロール、オクチルピロールなどが挙げられる。
このときの触媒物質として、貴金属もしくはその合金が挙げられ、より具体的には白金もしくはその合金などがある。
図1は、本発明の色素増感太陽電池の一例を表す断面模式図である。その色素増感太陽電池において、透明基体2とその上に形成された透明導電膜3からなる電極基体1の表面に、多孔質金属酸化物半導体層4が形成され、さらに該多孔質金属酸化物半導体層4の表面には、増感色素層5が吸着されている。そして、本発明の電解質−触媒複合電極6が対向して設置されている。
図2は、本発明の電解質−触媒複合電極6の一例を表す断面模式図であって、支持体兼集電体として機能する電極基体10と、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7、および該導電性の繊維もしくは粒子7の表面上に担持された触媒物質8と、前記導電性の繊維もしくは粒子7による3次元の網目構造間に保持された電解質9とからなる。
図3は、本発明の電解質−触媒複合電極6の一例を表す断面模式図であって、支持体兼集電体として機能する電極基体10と、表面に形成された触媒物質8を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7、および前記導電性の繊維もしくは粒子7による3次元の網目構造間に保持された電解質9とからなる。
図4は、本発明の電解質−触媒複合電極6の一例を表す断面模式図であって、支持体兼集電体として機能する電極基体10と、表面に形成された導電性高分子11を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7、および前記導電性高分子11に担持された触媒物質12と、導電性の繊維もしくは粒子7および前記導電性高分子11による3次元の網目構造間に保持された電解質9とからなる。
図5は、従来の高面積触媒電極の一例を表す断面模式図であって、支持体兼集電体として機能する電極基体13があり、表面は面積の向上を意図して多孔化してある。さらに、前記電極基体13の表面に触媒物質が担持してあるが、電解質14と接している触媒物質15は有効に働く一方、触媒物質16は孔の深部にあるため電解質14と接していないため有効に働いていない。
[透明基体]
電極基体1を構成する透明基体2は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、ガラス表面を加工して入射光を散乱させるようにしたもの、半透明なすりガラス状のものも使用できる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
透明基体2の厚さは、太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、例えばガラスやプラスチックなどを用いた場合では、実使用時の耐久性を考慮して1mm〜1cm程度であり、フレキシブル性が必要とされ、プラスチックフィルムなどを使用した場合は、1μm〜1mm程度である。
透明導電膜3としては、可視光を透過して、かつ導電性を有するものが使用でき、このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化インジウム、酸化スズと酸化インジウムの混合体(以下、「ITO」と略記する。)、酸化亜鉛などが好適に用いることができる。また、分散させるなどの処理により可視光が透過すれば、不透明な導電性材料を用いることもできる。このような材料としては炭素材料や金属が挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブやフラーレンなどが挙げられる。
また、金属としては、特に限定はされないが、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。したがって、透明導電膜3としては、上述の導電性材料のうち少なくとも1種類以上からなる導電材料を、透明基体2の表面に設けて形成することができる。あるいは透明基体2を構成する材料の中へ上記導電性材料を組み込んで、透明基体と透明導電膜を一体化して電極基体1とすることも可能である。
透明基体と透明導電膜を一体化させるには、透明基体の成型時に導電性のフィラーとして上記導電膜材料を混合させるなどがある。
透明導電膜3の厚さは、用いる材料により導電性が異なるため特には限定されないが、一般的に使用されるFTO被膜付ガラスでは、0.01μm〜5μmであり、好ましくは0.1μm〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。
透明基体及び透明導電膜から構成される電極基体1、又は透明基体と透明導電膜とを一体化した電極基体1の厚さは、上述のように太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
多孔質金属酸化物半導体4としては、特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。また、電気抵抗値を下げるため、金属酸化物の粒界は少ないことが望ましい。また、増感色素をより多く吸着させるために、当該半導体層は多孔質になっていることが望ましく、具体的には10〜200m2/gが望ましい。また、増感色素の吸光量を増加させるため、使用する酸化物の粒径に幅を持たせて光を散乱させることが望ましい。
このような多孔質金属酸化物半導体は、特に限定されず既知の方法で透明導電膜3上に設けることができる。例えば、ゾルゲル法や、分散体ペーストの塗布、また、電析や電着させる方法がある。
このような半導体層の厚さは、用いる酸化物により最適値が異なるため特には限定されないが、0.1μm〜50μm、好ましくは5〜30μmである。
増感色素層5としては、太陽光により励起されて前記金属酸化物半導体層4に電子注入できるものであればよく、一般的に色素増感型太陽電池に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。特に限定はされないが、ルテニウム錯体、特にルテニウムポリピリジン系錯体が望ましく、さらに望ましいのは、Ru(L)2(X)2で表されるルテニウム錯体が望ましい。ここでLは4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、もしくはその4級アンモニウム塩、およびカルボキシル基が導入されたポリピリジン系配位子であり、また、XはSCN、Cl、CNである。例えばビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体などが挙げられる。
他の色素としては、ルテニウム以外の金属錯体色素、例えば鉄錯体、銅錯体などが挙げられる。さらに、シアン系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクアリン酸系色素、スチリル系色素、エオシン系色素などの有機色素が挙げられる。これらの色素には、該金属酸化物半導体層への電子注入効率を向上させるため、該金属酸化物半導体層との結合基を有していることが望ましい。該結合基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、スルホン酸基などが望ましい。
増感色素を溶解するために用いる溶媒の例としては、エタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどの窒素化合物、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。溶液中の色素濃度は、使用する色素及び溶媒の種類により適宜調整することが望ましい。例えば、5×10−5mol/L以上の濃度が望ましい。
電解質9は、少なくとも、酸化された増感色素を還元することのできる酸化還元対およびこれらを溶解させる媒体とを含んでなる。本発明においては、実用的な観点から高沸点、さらには不揮発性の溶媒の使用が望ましい。さらには、電解液の漏洩などの問題を回避するため、電解質は粘度が高いことが望ましく、特にゲル状、ペースト状、粘土状、もしくは固体状であることが望ましいが、後述するように電解質−触媒複合電極の製造時および太陽電池使用時に高粘度であればよく、溶媒原料が必ずしも高粘度である必要はない。このようなゲル化、ペースト化、粘土化、固体化の方法としては、特には限定されず、有機高分子などによるゲル化剤を使用する方法や、PVDF等のフッ素系高分子結着剤などを利用する方法、粒子と混和する方法など、公知の方法を利用できる。特に、高粘度溶媒と粒子を混和・遠心分離させてペースト化する方法などが好適に利用でき、この添加粒子に、後述する3次元網目構造を構成する導電性粒子もしくは繊維などを利用することで、本発明の必須構成材料のみを用いて耐久性の向上を図ることができる。また、予め3次元の網目構造を構成したのち、該網目構造内の空間に溶媒を含浸・保持させることもできる。また、支持電解質として、リチウム塩やイミダゾリウム塩、4級アンモニウム塩などを添加することもできる。さらに、添加剤として、t−ブチルピリジン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、水などを添加し、酸化還元対の移動速度の向上や、各種太陽電池特性の調整・向上をおこなうことができる。
上記のような溶媒としては、具体的には特に限定はされないが、非水性有機溶媒、水やプロトン性有機溶媒などから任意に選択でき、例えばアセトニトリルやジメチルホルムアミド、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、炭酸プロピレンなどが挙げられる。さらに上述のように、耐久性の向上の観点から、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルイミドなどの常温溶融塩(イオン液体)であることが望ましい。
酸化還元対としては、一般的に電池や太陽電池などにおいて使用することのできるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン二原子分子とハロゲン化物塩との組み合わせ、チオシアン酸アニオンとチオシアン酸二分子の組み合わせ、ポリピリジルコバルト錯体や、ハイドロキノンなどの有機レドックスなどが挙げられる。この中では、特にヨウ素分子とヨウ化物との組み合わせが好適である。
支持電解質、酸化還元対などは、其々用いる溶媒、半導体電極および色素などにより最適な濃度が異なるため、特には限定されないが、1mmol/L〜5mol/L程度である。また、支持電解質や酸化還元対は、電解質−触媒複合電極6の形成時に電解質に含有されていればよく、必ずしも予め電解質溶媒に溶解させておく必要はない。例えば、3次元の網目構造の構成材料と混和してから、電解質溶媒と接触・溶解させるなどの手法を採ることも可能である。
電解質−触媒複合電極6は、図1に例示するように、電極基体10の表面に、酸化還元対となる化学種を含む電解質9と、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7、および触媒物質8とを含んだ形で接した構造をしている。このとき、電極基体10と導電性の繊維もしくは粒子7とは、電気的に導通していればよく、必ずしも結着の有無は問わない。
該電極基体10は、触媒電極の支持体兼集電体として用いられるため、少なくとも表面部分および取り出し電極部分は導電性を有していればならない。
このような材質としては、例えば導電性を有する金属や金属酸化物、炭素材料や導電性高分子などが好適に用いられる。金属としては、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。また、FTO、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛などの金属酸化物を用いた場合、透明または半透明であるため増感色素層への入射光量を増加させることができ、好適に用いることができる。
電極基体10の厚さは、上述のように太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
本発明の電解質−触媒複合電極6における、導電性の繊維もしくは粒子7は、後述する触媒物質8による酸化還元対の酸化体の還元反応(以降、触媒反応とよぶ)を駆動するために、互いにおよび触媒物質8と電気的に導通していることが必要である。また、前記触媒反応をより効率よく行なうため、その表面積が大きくなるよう、3次元的な網目構造をしていることが望ましい。このとき、導電性の繊維もしくは粒子7は必ずしも物理的に結着している必要はない。
触媒物質8は、前記のように該導電性の繊維もしくは粒子7との電気的な導通に加え、電解質中に含まれる酸化還元対と物理的に接触しなければ触媒反応は進行しない。したがって、触媒物質8は導電性の繊維もしくは粒子7の表面に担持もしくは少なくとも部分的に被覆されていることが望ましい。さらに、触媒物質8が、導電性と触媒性能を併有する場合、図3のように導電性の繊維もしくは粒子7を被覆し、かつ互いに接触せることで、電極特性さらに向上することができる。
前記製造方法においては、(a)の混合物後にゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状となり、かつ電解質−触媒複合電極として太陽電池素子に使用中において電解質の液漏れなどが防止される限り、(a)の混合前の電解質は粘度が低い液体であっても構わない。
また、バインダーや接着剤の溶剤には不溶の粒子を添加しておき、電極基体表面に前記粉体状の導電性材料層を形成した後、添加した粒子を溶解させるなどの手法で積極的に3次元網目構造を形成することもできる。
このような導電性の繊維もしくは粒子は、上記の材料は単一の材料でも、一種類以上の材料の混合物であってもよい。また、その形状も繊維状、粒子状など複数の形状の混合物であっても構わない。
本発明における触媒物質8として使用する導電性高分子を形成するモノマーとして、下記一般式(1)又は(2)で表される芳香族アミン化合物、下記一般式(3)で表されるチオフェン化合物、及び下記一般式(4)で表されるピロール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーが挙げられる。
複数種の芳香族アミン化合物を用いるとき、それらの比率は特に限定されないが、モル比で芳香族アミン化合物のうち一方を100として、他方を3以上の割合で重合することが適当である。例えばアニリン及びアニリン誘導体を用いるとき、モル比でアニリン及びアニリン誘導体のうち一方を100として他方を3以上の割合で重合することが一般的に適当である。
チオフェン化合物を1種又は2種以上用いて導電性高分子層を形成してもよい。チオフェン化合物は酸化電位が高いため、電気化学的な酸化重合による形成が好適に利用できる。
導電性高分子を形成するモノマー成分は、重合した膜としての電導度が10−9S/cm以上を示すものが望ましい。
また、導電性高分子膜表面を多孔質化することで、酸化還元対の還元反応を効率よく行なうことができるため、上記ドーパントのうち、緻密な表面になりやすい高分子状有機酸アニオンよりも、単分子有機酸アニオンであることが望ましい。
この式(5)〜(8)で表される化合物が好ましい理由について、詳細は不明であるが、これらのドーパントを用いた場合、多孔質化による物理的強度の低下を防ぎながら高電導度を達成することができるためと考察している。
ドーパントとして例えばLiI、HIなどを使用することでヨウ素アニオン(I−)を提供することができる。また、ポリヨウ化物アニオンは、例えばI3 −やI5 −などの形態であって、ヨウ素(I2)とI−を溶解して共存させることで提供できる。
このようなドーパントは導電性高分子層を形成させる際に、適宜の段階で使用することができ、例えば導電性高分子の形成に用いるモノマーと共存させておくことができる。また、導電性高分子層の形成後に、該導電性高分子にドーパント溶液に含浸させるなどの方法により、ドープさせることもできる。
導電性高分子モノマーの酸化重合方法としては、一般的な重合方法である電解重合法もしくは化学重合法が利用できる。化学重合法は、酸化剤を用いて、上記に例示したような導電性高分子を形成するモノマー(以下、単に「導電性高分子モノマー」とも称する。)を酸化重合させる方法である。一方、電解重合法は、上記したような導電性高分子モノマーを含む溶液中で電気化学的に酸化を行うことにより金属などの電極上に導電性高分子の膜を形成する方法である。
このとき、化学重合時の導電性繊維もしくは粒子の形状は特には限定されない。すなわち、上記の電解質−触媒複合電極の製造方法のように、既に電極基体10上に塗布されて3次元網目構造を成した状態で、触媒物質8として導電性高分子モノマーの化学重合を行なってもよく、また、導電性繊維もしくは粒子に前記導電性高分子を化学重合したのちに電解質−触媒複合電極として形成させても構わない。
本発明における電解質−触媒複合電極として、図4にその一例を示したように、3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7が、表面に形成された導電性高分子11を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通しており、かつ触媒物質12が、前記導電性高分子11に担持されている構造が挙げられる。
上述のように、実用的な観点から、高沸点さらには不揮発性の溶媒の使用が望ましい。さらには、電解液の漏洩などの問題を回避するため、電解質は粘度が高いことが望ましく、特にゲル状、ペースト状、粘土状、もしくは固体状であることが望ましい。しかしこのような電解質では、粘度の低い溶液の電解質を使用した場合と異なり、毛管現象によって前記網目構造内部の触媒物質近傍まで電解質を充填するは困難である。
すなわち、該導電性高分子11は1種以上のホモポリマー、1種以上のコポリマー、または1種以上のホモポリマーと1種以上のコポリマーの混合物を含むことができ、また、該導電性高分子11と触媒物質として使用できる導電性高分子のポリマーとは、同一又は異なるポリマーを含むことができる。
該導電性高分子11を形成するにあたって、構成成分や形成方法・条件は、一般的には上述の触媒物質8として用いる導電性高分子で説明した材料や条件に準じたものでよい。
例えば、導電性の繊維もしくは粒子7と、前記導電性高分子のモノマー、および必要に応じて電解質を溶解・分散させた溶液中で、電極基体10を電極として導電性高分子11の電解重合を行ない、電解液中に分散された導電性の繊維もしくは粒子7を導電性高分子11に取り込む、または電着させるなどの方法が利用できる。
該導電性高分子11の比表面積は、使用するモノマーにより最適値が異なるため特に限定されないが、通常はN2-BET比表面積で0.1m2/g以上であり、より好ましくは5m2/g以上が適当であり、さらに10m2/g以上であることが望ましい。
〔実施例1〕
[多孔質金属酸化物半導体]
透明導電膜付きの透明基体としてFTO被膜付ガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、その表面に二酸化チタンペースト(Soralonix社製 Ti−Nanoxide T)をバーコーターで塗布し、乾燥後450℃で30分焼成してそのまま室温となるまで放置し、10μmの厚さの多孔質酸化チタン半導体電極を形成した。
増感色素として、一般にN3dyeと呼ばれるビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体を使用した。一旦150℃まで加熱した前記多孔質酸化チタン半導体電極を色素濃度0.5mmol/Lのエタノール溶液中に浸漬し、遮光下1晩静置した。その後エタノールにて余分な色素を洗浄してから風乾することで太陽電池の半導体電極を作製した。さらに、得られた半導体電極の酸化チタン投影面積が25mm2になるよう、半導体層を研削した。
導電膜層付の電極基体としてFTO被膜付ガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、有機溶媒中で超音波洗浄した。このFTO被膜付ガラスにカーボンペーパー(東レ(株)社製TGP−H−030)を接触させた状態で、アニリン 0.1mol/Lと塩酸 1mol/Lとを含む水溶液中に浸漬し、FTO被膜付ガラスを介したカーボンペーパーを電極としてアニリンを電気化学的に酸化することで、FTO被膜付ガラス表面及びカーボンペーパー表面にポリアニリン膜を形成させた後、純水で洗浄してから空気中100℃で乾燥した。
酸化還元対としてヨウ化エチルメチルイミダゾリウムとヨウ化リチウム、およびヨウ素、添加剤として1−メチルベンズイミダゾールを溶解させた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを電解質として調製し、前記ポリアニリン付カーボンペーパー/FTO被膜付ガラスに充填させることで、電解質−触媒複合電極を得た。
前記のように作製した半導体電極と電解質−触媒複合電極を対向するよう設置した。
上記の太陽電池セルについて、光量100mW/cm2の擬似太陽光を照射して開放電圧(以下、「Voc」と略記する。)、短絡電流密度(以下、「Jsc」と略記する。)、形状因子(以下、「FF」と略記する。)、および光電変換効率を評価したところ、以下の結果を得た。
「Voc」、「Jsc」、「FF」及び光電変換効率の各測定値については、より大きい値が太陽電池セルの性能として好ましいことを表す。
開放電圧(Voc):0.67V
短絡電流密度(Jsc):14.6mA/cm2
形状因子(FF):0.64
光電変換効率:6.2%
モノマーを3,4−エチレンジオキシチオフェン0.05mol/Lとイミダゾール0.02mol/Lおよび、酸化剤であるp−トルエンスルホン酸鉄(III)塩0.1mol/Lを溶解させたn−ブタノール/2−プロパノール混合溶液中に、にライオン(株)社製ケッチェンブラック[商品名ケッチェンブラックEC600JD(以降ケッチェンブラックと省略)]を分散させ、さらに超音波処理を施しながら均一に分散させてから乾燥し、粉体を得た。得られた粉体を、110℃に加熱して該ケッチェンブラック表面に吸着されたエチレンジオキシチオフェンを重合し、ポリエチレンジオキシチオフェン(以降PEDOTと省略)担持させたケッチェンブラックを得た。得られた、PEDOT担持ケッチェンブラックを電解質と混練・遠心分離操作することで、ペースト状とした。得られたペーストをFTO被膜付ガラス上に塗布し、電解質−触媒複合電極を完成させた。なお、電解質の組成、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例1と同様に行なった。
[実施例2の測定結果]
開放電圧(Voc):0.75V
短絡電流密度(Jsc):15.1mA/cm2
形状因子(FF):0.60
光電変換効率:6.8%
ケチェンブラックを分散させたピロール 0.1mol/Lとp-トルエンスルホン酸ナトリウム 0.1mol/Lとを含む水溶液中にFTO被膜付ガラスを浸漬させ、ピロールを電気化学的に酸化することで、FTO被膜付ガラス表面にポリピロールとケッチェンブラックを電析させた。得られたポリピロール/ケッチェンブラック混合層付FTO被膜付ガラスを一旦純水で洗浄した後、該FTO被膜付ガラスを電極として、硫酸 0.5mol/LとH2PtCl6 5mmol/Lとを含む水溶液中にて電解還元を行ない、該電極表面に白金を還元析出させた。その後、純水・洗浄および乾燥工程を経た後に、電解質を充填して電解質−触媒複合電極を得た。なお、電解質は、実施例1の電解質組成に対してポリビニルピロリドンを添加し、ペースト状に増粘させてから使用した。また、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例1と同様に行なった。
[実施例3の測定結果]
開放電圧(Voc):0.72V
短絡電流密度(Jsc):14.9mA/cm2
形状因子(FF):0.69
光電変換効率:7.4%
シーアイ化成(株)社製ITOナノ粒子(商品名ナノテック)と、羽化学工業(株)社製ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)溶液(商品名クレハKFポリマー)を混練させて粘土状に加工したのち、FTO被膜付ガラス上に塗布・接着させてから空気中120℃で乾燥させた。さらに、モノマーを3,4−エチレンジオキシチオフェン0.05mol/L、ドーパントとしてp-トルエンスルホン酸0.1mol/Lとよう化リチウム 0.1mol/Lを溶解させた水溶液中、前記ITO層付FTO被膜付ガラスを電極として、エチレンジオキシチオフェンを電気化学的に酸化することで、ITO層付FTO被膜付ガラス表面にPEDOTにて被覆させた。なお、電解質の組成、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例3と同様に行なった。
[実施例4の測定結果]
開放電圧(Voc):0.62V
短絡電流密度(Jsc):14.2mA/cm2
形状因子(FF):0.68
光電変換効率:6.0%
氷浴させたアニリン濃度0.1mol/lの硫酸水溶液に過硫酸アンモニウムを滴下してアニリンを重合させ、ポリアニリン粒子を得た。得られたポリアニリン粒子にアンモニア水を作用させた後、N−メチルピロリドン(以降NMPと省略する。)にポリアニリンが4質量%となるよう溶解させ、エメラルジン塩基状態のポリアニリンNMP溶液を得た。
前記ポリアニリンNMP溶液にケッチェンブラックを添加・超音波分散させた後、加温して濃縮し、さらに2,7−ナフタレンジスルホン酸を添加・撹拌してゲル化させた。得られたゲルを電解質と混和させてから、FTO被膜付ガラスに塗布・乾燥させて電解質−触媒複合電極を得た。なお、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例1と同様に行なった。
[実施例5の測定結果]
開放電圧(Voc):0.64V
短絡電流密度(Jsc):13.9mA/cm2
形状因子(FF):0.60
光電変換効率:5.3%
ピロール 0.1mol/Lと2,7−アントラキノンジスルホン酸ナトリウム 0.1mol/Lとを含む氷浴させた水溶液中に、ステンレスウール(日本スチールウール(株)社製)を浸漬させ、該スチールウールを電極としてピロールを電気化学的に酸化することで、その表面をポリピロールで被覆し、純水洗浄後空気中100℃で乾燥させた。得られたポリピロール被覆ステンレスウールを、実施例5にて調製したものと同じポリアニリンNMP溶液に含浸し、引き上げ後空気中120℃で乾燥させた。得られたポリアニリン/ポリピロール被覆スチールウールを塩酸水溶液に含浸させ、ポリアニリンに塩酸をドープしてエメラルジン塩状態とし、導電性を付与した。得られた被覆スチールウールを純水洗浄後、空気中100℃で乾燥させ、電解質を充填して電解質−触媒複合電極を得た。なお、電解質の組成、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例3と同様に行なった。
[実施例6の測定結果]
開放電圧(Voc):0.66V
短絡電流密度(Jsc):13.6mA/cm2
形状因子(FF):0.65
光電変換効率:5.8%
半導体電極の作製方法は実施例1と同様に作製した。電解質−触媒複合電極の替わり、触媒電極として白金電極を用いた。該触媒電極は、電極基体にFTOガラスを用い、スパッタリング法によりFTOガラス上に白金層を形成した。白金層の厚みは約150nmであった。半導体電極と触媒電極を対向するよう設置し、電解質を毛管現象にて両電極間に含浸させた。電解質は実施例1と同様に調製した。
[比較例1の測定結果]
開放電圧(Voc):0.67V
短絡電流密度(Jsc):10.2mA/cm2
形状因子(FF):0.64
光電変換効率:4.4%
さらに本発明によれば、上記電解質−触媒複合電極を、光増感作用を有する色素を含む半導体電極に対向配置させることで、優れた光電変換効率を有した色素増感太陽電池を提供することができる。
2 透明基体
3 透明導電膜
4 多孔質金属酸化物半導体層
5 増感色素層
6 電解質−触媒複合電極
7 導電性の繊維もしくは粒子
8 触媒物質
9 電解質
10 電極基体
11 導電性高分子層
12 触媒物質
13 電極基体
14 電解質
15 有効な触媒物質
16 無効な触媒物質
17 多孔質導電層
Claims (20)
- 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極に対向配置される電極であって、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子と、導電性高分子及び/又は触媒物質とから構成されたことを特徴とする色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極。
- 導電性の繊維もしくは粒子が、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、3次元の網目構造を成していることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極。
- 触媒物質が、導電性の繊維もしくは粒子表面に担持され、電解質に含まれる酸化還元対の伝導経路と接触していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解質−触媒複合電極。
- 導電性の繊維もしくは粒子表面に触媒物質が担持されてなる3次元の網目構造が、該触媒物質を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極。
- 触媒物質が、導電性高分子である請求項1〜4のいずれか1項記載の電解質−触媒複合電極。
- 導電性の繊維もしくは粒子表面に導電性高分子が形成されてなる3次元の網目構造が、該導電性高分子を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質が該導電性高分子表面に担持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解質−触媒複合電極。
- 触媒物質が、貴金属もしくはその合金、又は導電性高分子からなることを特徴とする請求項6記載の電解質−触媒複合電極。
- 貴金属が、白金もしくはその合金である請求項7記載の電解質−触媒複合電極。
- 導電性高分子が、下記一般式(1)又は(2)で表される芳香族アミン化合物、下記一般式(3)で表されるチオフェン化合物、下記一般式(4)で表されるピロール化合物からなる群から選ばれる少なくとも
1種のモノマーが重合して形成されたポリマーである、請求項5〜7のいずれか一項記載の電解質−触媒複合電極。
- 該導電性高分子が、モノマーとして少なくともアニリンが重合して形成されたポリマーである、請求項5〜7のいずれか一項記載の電解質−触媒複合電極。
- 該導電性高分子が、モノマーとして少なくとも一般式(3)で表されるチオフェン化合物が重合して形成されたポリマーである、請求項5〜7のいずれか一項記載の電解質−触媒複合電極。
- 該導電性高分子が、モノマーとして少なくとも3,4−エチレンジオキシチオフェンが重合して形成されたポリマーである、請求項11記載の電解質−触媒複合電極。
- 該導電性高分子が、モノマーとして少なくとも一般式(4)で表されるピロール化合物が重合して形成されたポリマーである、請求項5〜7のいずれか一項記載の電解質−触媒複合電極。
- 導電性高分子が、ヨウ素アニオン及び/又はポリヨウ化物アニオンをドーパントとして含有していることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項及び9〜12のいずれか1項記載の電解質−触媒複合電極。
- 導電性の繊維もしくは粒子が、カーボン、カーボンペーパー、金属酸化物、および金属から選ばれる、少なくとも一種の導電性材料から形成されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極。
- 酸化還元対としてヨウ素アニオン及び/又はポリヨウ化物アニオンを含有していることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極。
- 電解質がゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極。
- 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極に対向配置され、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子、および触媒物質とを含んでなる色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極の製造方法であって、少なくとも(a)酸化還元対となる化学種を含む電解質と、触媒物質を含んでなる導電性の繊維もしくは粒子とを混合させてゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状の混合物とする工程と、(b)集電体となる電極基体上に前記混合物を積層する工程、を含む電解質−触媒複合電極の製造方法。
- 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極に対向配置され、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子、および触媒物質とを含んでなる色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極の製造方法であって、(a)導電性の繊維もしくは粒子が互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質を含んでなる3次元の網目構造を、集電体となる電極基体上に形成する工程と、(b)ゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状である電解質を前記網目構造内に充填させる工程、を含む電解質−触媒複合電極の製造方法。
- 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解質層と、前記半導体電極に対向配置される電極とを少なくとも有する色素増感太陽電池であって、該電極が、請求項1〜17のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極である、色素増感太陽電池。
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