JP4895361B2 - 色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極、及びその製造方法並びにこれを備えた色素増感太陽電池 - Google Patents

色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極、及びその製造方法並びにこれを備えた色素増感太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、色素増感太陽電池の触媒電極、及びそれを備えた色素増感太陽電池に関する。
近年、半導体層に可視光域を吸収させる増感色素を担持させた色素増感太陽電池が検討されている。この色素増感太陽電池は、使用する材料が安価であること、比較的シンプルなプロセスで製造できること等の利点からその実用化が期待されている。
上記の色素増感太陽電池は、可視光を吸収して励起した増感色素から半導体電極に電子が注入され、集電体を通して外部に電流が取り出される。一方、増感色素の酸化体は電解質中の酸化還元対により還元されて再生する。酸化された酸化還元対は、半導体電極に対向して設置された触媒電極表面で還元されてサイクルが一周する。
色素増感太陽電池に従来用いられている触媒電極としては、電極基体上に、塩化白金酸を塗布、熱処理したものや、白金を蒸着した白金触媒電極が知られている。この触媒電極においては、電解質中の酸化還元対(例えば、I /I等)の酸化体を還元体に還元する還元反応(I3 -をI-に還元する還元反応)を速やかに進行させることが可能な電極特性を有するものが求められている。
しかしながら、電解質は実用を考慮して高粘度化やゲル化などが検討されているが、上記に示したような白金触媒電極を備えた色素増感太陽電池において、電解質の高粘度化にともない酸化還元対であるヨウ素の拡散が該太陽電池内の電子移動反応の律速過程となっており、太陽電池特性を低下させてしまうという問題があった。このため、触媒電極表面でのヨウ素還元反応を速やかに進行させるためには、白金表面もしくは白金を被覆させた電極基体の表面積を拡大させることや、白金膜厚を厚くする必要があったが、その結果白金使用量の増加に伴う材料費の上昇や、基体表面積の拡大程度では必要とされる電流値を得ることはできていないという問題があった。
特許文献1には、導電性材料の多孔質層で形成された背面電極(触媒電極)を用いた染料増感光起電力セル、すなわち色素増感太陽電池が開示されている。該特許における背面電極は、その多孔性によって拡大された表面積を有し、その結果電解質との電子交換に関して高い触媒効率を達成すると記載されている。
この特許文献2には、前記多孔質層を形成する導電性材料の一種として、導電性セラミック粒子とともに導電性有機ポリマー、すなわち導電性高分子が例示されている。これら導電性粒子には、金属粉末、グラファイト粉末、カーボンブラック、プラチナ族金属の触媒性堆積を選択肢として有しているとされ、その後背面電極に分散すると記載されている。すなわち、導電性高分子粒子、は触媒を施す担体として使用されている。これらの中でもグラファイト粉末とカーボンブラックとの組合せが、腐食抵抗性と酸化還元対に対する電気触媒作用を有しており、優れている旨が記載されている。また、優れた触媒作用を有する理由としては、カーボンブラックの非常に大きな表面積によるものと記載されている。また、これらの紛末を凝集及び固着させるために接着剤が必要とされ、該接着剤としては二酸化チタンを焼結させることで好適に利用できる旨記載されている。
ところが、担体表面の触媒は、電解質に含まれる酸化還元対の伝導経路に接しなければ電極反応に関与することができない。したがって、高粘度状態もしくはゲル化させた電解質を使用すると、特許文献1における触媒電極の作製方法では、多孔質の触媒層の深部まで浸透しないため、深部に位置する担体上の白金触媒の多くは電極反応に寄与することができず、白金の使用率が低下してしまう。その結果求める太陽電池特性を得ることができないという問題も発生してしまう。
さらに、触媒を担持させた担体を、接着剤を用いて固着させた場合、担体表面のうち接着部分の白金触媒が全く電解質と接触しないため、白金使用率のさらなる低下を招いてしまうという問題があった。加えて、白金などの貴金属ではコスト問題はまったく解決できていない。また、金属を触媒として堆積させた場合においても同様の使用率低下の問題を抱えているとともに、現状の酸化還元対として優れた性能が得られているI/I 系では、そもそもヨウ素による腐食は免れ得ない。一方、好適な触媒性堆積として例示されているグラファイトやカーボンブラックでは、ヨウ素のような腐食性酸化還元対に対して高い耐久性を有しているものの、触媒作用自体は白金よりも大きく劣るため、求められる太陽電池特性は得られていない。
また、好適な接着剤として例示されている二酸化チタンを使用した場合、高い導電性を得るためには、接着工程に焼成が必要とされるため、製造プロセス及び製造コストの面で大変不利であるとともに、軽量化・フレキシブル化のため、プラスチックやフィルムなどを電極基体として使用することもできない。
また、一般的に電解質溶液の太陽電池セル内への充填は、セルの組み立て後、毛管現象を利用して行なっているが、耐久性を高めるためにイオン液体電解質やゲル電解質などの高粘度もしくは擬固体化電解質を用いた場合においては、電解質の均一かつ迅速な充填は不可能である。さらに、上述の表面積を拡大させた触媒電極や多孔質の半導体電極を用いた場合においても、毛管現象では電極深部への電解質の充填は困難であり、求められる太陽電池特性を得ることができていないという問題点がある。
種々の技術が提案されているが、依然としてより安価な製造コストとプロセスで作製でき、かつ高粘度の電解質を用いた場合でも優れた電池特性を示す色素増感太陽電池が求められている。
特表平11−514787号公報
本発明は上記した実情に鑑み、色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極であって、安価な材料および簡便な製造方法により作製でき、かつ、高粘度の電解質を用いた場合でも、触媒の利用率が高く、電解質中に含まれる酸化還元対の酸化体を速やかに還元することのできる、優れた電極特性の電解質−触媒複合電極を提供することを目的とする。
本発明の目的はまた、色素増感太陽電池の電解質−触媒複合電極を製造するにあたって、安価な材料により簡便に操作性よく、かつ小エネルギーにて電極特性に優れた該電極を製造する方法を提供することである。
本発明の目的はさらに、上記電解質−触媒複合電極を備え、優れた光電変換効率を有する色素増感太陽電池を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極において、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子と、導電性高分子及び/又は触媒物質とから構成された電極が、高粘度の電解質を用いた場合でも、触媒の利用率が高く、電解質中に含まれる酸化還元対の酸化体を速やかに還元することのできる、優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
本発明者らはまた、前記導電性の繊維もしくは粒子が、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、3次元の網目構造を成すことにより、より電極特性に優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
本発明者らはまた、触媒物質が、導電性の繊維もしくは粒子表面に担持され、電解質に含まれる酸化還元対の伝導経路と接触させることにより、より電極特性に優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
本発明者らはまた、導電性の繊維もしくは粒子表面に触媒物質が担持されてなる3次元の網目構造が、該触媒物質を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通させることにより、より電極特性に優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
本発明者らはさらに、導電性の繊維もしくは粒子表面に導電性高分子が形成されてなる3次元の網目構造が、該導電性高分子を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質が該導電性高分子表面に担持させることにより、電極特性に優れた電解質−触媒複合電極となることを見出した。
従って、本発明は、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極に対向配置される電極であって、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子と、導電性高分子及び/又は触媒物質とから構成されたことを特徴とする色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極である。
本発明はまた、上記導電性の繊維もしくは粒子が、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、3次元の網目構造を成していることを特徴とする色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極である。
本発明はまた、上記触媒物質が、導電性の繊維もしくは粒子表面に担持され、電解質に含まれる酸化還元対の伝導経路と接触していることを特徴とする電解質−触媒複合電極である。
さらに本発明は、上記導電性の繊維もしくは粒子表面に触媒物質が担持されてなる3次元の網目構造が、該触媒物質を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通していることを特徴とする記載の電解質−触媒複合電極である。
上記の触媒物質として、導電性高分子が挙げられる。この導電性高分子を形成するモノマーとして、下記一般式(1)又は(2)で表される芳香族アミン化合物が挙げられる。
Figure 0004895361
Figure 0004895361
(式(1)又は(2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R〜R及びR〜R10はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数6〜12のアラルキル基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、式(1)中、RとR、又はRとRはそれぞれ連結して環を形成していてもよく、式(2)中、RとR、又はRとR10はそれぞれ連結して環を形成していてもよい。)
該芳香族アミン化合物として、アニリン、アニシジンなどが挙げられる。
上記の導電性高分子を形成する別のモノマーとして、下記一般式(3)で表されるチオフェン化合物が挙げられる。
Figure 0004895361
(式(3)中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、R11とR12は連結して環を形成していてもよい。)
該チオフェン化合物として、チオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。
上記の導電性高分子を形成する別のモノマーとして、下記一般式(4)で表されるピロール化合物が挙げられる。
Figure 0004895361
(式(4)中、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、R11とR12は連結して環を形成していてもよい。)
該ピロール化合物として、ピロール、オクチルピロールなどが挙げられる。
さらに本発明はまた、上記導電性の繊維もしくは粒子表面に導電性高分子が形成されてなる3次元の網目構造が、該導電性高分子を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質が該導電性高分子表面に担持されていることを特徴とする電解質−触媒複合電極である。
このときの触媒物質として、貴金属もしくはその合金が挙げられ、より具体的には白金もしくはその合金などがある。
触媒物質を形成させる上記導電性高分子を形成するモノマーとして、上記のモノマーが挙げられる。上記の導電性高分子を形成する別のモノマーとして、フラン、ピリジン、ベンゼンなどが挙げられる。該ピロール誘導体には3-メチルピロールなどがある。
上記の酸化還元対の具体例として、ヨウ素アニオン及び/又はポリヨウ化物アニオンの組み合わせなどが挙げられる。
さらに、本発明では、上記導電性高分子が、上記の導電性高分子層が、ヨウ素アニオン及び/又はポリヨウ化物アニオンをドーパントとして含有していることを特徴とする電解質−触媒複合電極である。
上記の導電性の繊維もしくは粒子として、カーボン、カーボンペーパー、金属酸化物などが挙げられる。
本発明はまた、電解質がゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状であることを特徴とする記載の電解質−触媒複合電極である。
本発明はさらに、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極に対向配置され、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子、および触媒物質とを含んでなる色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極の製造方法であって、少なくとも(a)酸化還元対となる化学種を含む電解質と、触媒物質を含んでなる導電性の繊維もしくは粒子とを混合させてゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状の混合物とする工程と、(b)集電体となる電極基体上に前記混合物を積層する工程、を含む電解質−触媒複合電極の製造方法である。
本発明はさらに、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極に対向配置され、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子、および触媒物質とを含んでなる色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極の製造方法であって、(a)導電性の繊維もしくは粒子が互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質を含んでなる3次元の網目構造を、集電体となる電極基体上に形成する工程と、(b)ゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状である電解質を前記網目構造内に充填させる工程、を含む電解質−触媒複合電極の製造方法である。
本発明はさらに、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解質層と、前記半導体電極に対向配置される電極とを少なくとも有する色素増感太陽電池であって、該電極が、上記の電解質−触媒複合電極である、色素増感太陽電池に向けられている。
本発明によれば、課題を解決すべく鋭意検討した結果、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子と、導電性高分子及び/又は触媒物質とを複合化させることにより、高粘度の電解質を用いた場合でも、触媒の利用率が高く、電解質中に含まれる酸化還元対の酸化体を速やかに還元することができる。
また、該導電性の繊維もしくは粒子が、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、3次元の網目構造を成すことにより、より電極特性を向上することができる。
さらに、該触媒物質が、導電性の繊維もしくは粒子表面に担持され、電解質に含まれる酸化還元対の伝導経路と接触させることにより、より電極特性を向上させることができる。
また、本発明によれば、導電性の繊維もしくは粒子表面に導電性高分子が形成されてなる3次元の網目構造が、該導電性高分子を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質が該導電性高分子表面に担持させることによっても、電極特性を向上させることができる。
さらに、本発明によれば、上記のように電解質と触媒を複合化した電極とすることで簡便に操作性よく、かつ小エネルギーにて電極特性に優れた該電極を製造することができ、最終的には、優れた高性能の色素増感太陽電池を製造することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について適宜、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の色素増感太陽電池の一例を表す断面模式図である。その色素増感太陽電池において、透明基体2とその上に形成された透明導電膜3からなる電極基体1の表面に、多孔質金属酸化物半導体層4が形成され、さらに該多孔質金属酸化物半導体層4の表面には、増感色素層5が吸着されている。そして、本発明の電解質−触媒複合電極6が対向して設置されている。
図2は、本発明の電解質−触媒複合電極6の一例を表す断面模式図であって、支持体兼集電体として機能する電極基体10と、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7、および該導電性の繊維もしくは粒子7の表面上に担持された触媒物質8と、前記導電性の繊維もしくは粒子7による3次元の網目構造間に保持された電解質9とからなる。
図3は、本発明の電解質−触媒複合電極6の一例を表す断面模式図であって、支持体兼集電体として機能する電極基体10と、表面に形成された触媒物質8を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7、および前記導電性の繊維もしくは粒子7による3次元の網目構造間に保持された電解質9とからなる。
図4は、本発明の電解質−触媒複合電極6の一例を表す断面模式図であって、支持体兼集電体として機能する電極基体10と、表面に形成された導電性高分子11を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7、および前記導電性高分子11に担持された触媒物質12と、導電性の繊維もしくは粒子7および前記導電性高分子11による3次元の網目構造間に保持された電解質9とからなる。
図5は、従来の高面積触媒電極の一例を表す断面模式図であって、支持体兼集電体として機能する電極基体13があり、表面は面積の向上を意図して多孔化してある。さらに、前記電極基体13の表面に触媒物質が担持してあるが、電解質14と接している触媒物質15は有効に働く一方、触媒物質16は孔の深部にあるため電解質14と接していないため有効に働いていない。
以下、本発明の色素増感型太陽電池の各構成材料について、好適な形態を説明する。
[透明基体]
電極基体1を構成する透明基体2は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、ガラス表面を加工して入射光を散乱させるようにしたもの、半透明なすりガラス状のものも使用できる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
透明基体2の厚さは、太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、例えばガラスやプラスチックなどを用いた場合では、実使用時の耐久性を考慮して1mm〜1cm程度であり、フレキシブル性が必要とされ、プラスチックフィルムなどを使用した場合は、1μm〜1mm程度である。
[透明導電膜]
透明導電膜3としては、可視光を透過して、かつ導電性を有するものが使用でき、このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化インジウム、酸化スズと酸化インジウムの混合体(以下、「ITO」と略記する。)、酸化亜鉛などが好適に用いることができる。また、分散させるなどの処理により可視光が透過すれば、不透明な導電性材料を用いることもできる。このような材料としては炭素材料や金属が挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブやフラーレンなどが挙げられる。
また、金属としては、特に限定はされないが、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。したがって、透明導電膜3としては、上述の導電性材料のうち少なくとも1種類以上からなる導電材料を、透明基体2の表面に設けて形成することができる。あるいは透明基体2を構成する材料の中へ上記導電性材料を組み込んで、透明基体と透明導電膜を一体化して電極基体1とすることも可能である。
透明基体2上に透明導電膜3を形成する方法として、金属酸化物を形成する場合は、ゾルゲル法や、スパッタやCVDなどの気相法、分散ペーストのコーティングなどがある。また、不透明な導電性材料を使用する場合は、紛体などを、透明なバインダーなどとともに固着させる方法が挙げられる。
透明基体と透明導電膜を一体化させるには、透明基体の成型時に導電性のフィラーとして上記導電膜材料を混合させるなどがある。
透明導電膜3の厚さは、用いる材料により導電性が異なるため特には限定されないが、一般的に使用されるFTO被膜付ガラスでは、0.01μm〜5μmであり、好ましくは0.1μm〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。
透明基体及び透明導電膜から構成される電極基体1、又は透明基体と透明導電膜とを一体化した電極基体1の厚さは、上述のように太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
[多孔質金属酸化物半導体]
多孔質金属酸化物半導体4としては、特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。また、電気抵抗値を下げるため、金属酸化物の粒界は少ないことが望ましい。また、増感色素をより多く吸着させるために、当該半導体層は多孔質になっていることが望ましく、具体的には10〜200m/gが望ましい。また、増感色素の吸光量を増加させるため、使用する酸化物の粒径に幅を持たせて光を散乱させることが望ましい。
このような多孔質金属酸化物半導体は、特に限定されず既知の方法で透明導電膜3上に設けることができる。例えば、ゾルゲル法や、分散体ペーストの塗布、また、電析や電着させる方法がある。
このような半導体層の厚さは、用いる酸化物により最適値が異なるため特には限定されないが、0.1μm〜50μm、好ましくは5〜30μmである。
[増感色素]
増感色素層5としては、太陽光により励起されて前記金属酸化物半導体層4に電子注入できるものであればよく、一般的に色素増感型太陽電池に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。特に限定はされないが、ルテニウム錯体、特にルテニウムポリピリジン系錯体が望ましく、さらに望ましいのは、Ru(L)2(X)2で表されるルテニウム錯体が望ましい。ここでLは4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、もしくはその4級アンモニウム塩、およびカルボキシル基が導入されたポリピリジン系配位子であり、また、XはSCN、Cl、CNである。例えばビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体などが挙げられる。
他の色素としては、ルテニウム以外の金属錯体色素、例えば鉄錯体、銅錯体などが挙げられる。さらに、シアン系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクアリン酸系色素、スチリル系色素、エオシン系色素などの有機色素が挙げられる。これらの色素には、該金属酸化物半導体層への電子注入効率を向上させるため、該金属酸化物半導体層との結合基を有していることが望ましい。該結合基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、スルホン酸基などが望ましい。
多孔質金属酸化物半導体4へ増感色素を吸着させる方法は、特には限定されるものではなく、例としては、室温条件、大気圧下において、色素を溶解させた溶液中に多孔質金属酸化物半導体4を形成させた電極基体1を浸漬する方法が挙げられる。浸漬時間は、使用する半導体、色素、溶媒の種類、色素の濃度により、半導体層に均一に色素の単分子膜が形成されるよう、適宜調整することが望ましい。なお、吸着を効果的に行なうには加熱下での浸漬を行なえばよい。
増感色素を溶解するために用いる溶媒の例としては、エタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどの窒素化合物、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。溶液中の色素濃度は、使用する色素及び溶媒の種類により適宜調整することが望ましい。例えば、5×10−5mol/L以上の濃度が望ましい。
[電解質−触媒複合電極〜電解質]
電解質9は、少なくとも、酸化された増感色素を還元することのできる酸化還元対およびこれらを溶解させる媒体とを含んでなる。本発明においては、実用的な観点から高沸点、さらには不揮発性の溶媒の使用が望ましい。さらには、電解液の漏洩などの問題を回避するため、電解質は粘度が高いことが望ましく、特にゲル状、ペースト状、粘土状、もしくは固体状であることが望ましいが、後述するように電解質−触媒複合電極の製造時および太陽電池使用時に高粘度であればよく、溶媒原料が必ずしも高粘度である必要はない。このようなゲル化、ペースト化、粘土化、固体化の方法としては、特には限定されず、有機高分子などによるゲル化剤を使用する方法や、PVDF等のフッ素系高分子結着剤などを利用する方法、粒子と混和する方法など、公知の方法を利用できる。特に、高粘度溶媒と粒子を混和・遠心分離させてペースト化する方法などが好適に利用でき、この添加粒子に、後述する3次元網目構造を構成する導電性粒子もしくは繊維などを利用することで、本発明の必須構成材料のみを用いて耐久性の向上を図ることができる。また、予め3次元の網目構造を構成したのち、該網目構造内の空間に溶媒を含浸・保持させることもできる。また、支持電解質として、リチウム塩やイミダゾリウム塩、4級アンモニウム塩などを添加することもできる。さらに、添加剤として、t−ブチルピリジン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、水などを添加し、酸化還元対の移動速度の向上や、各種太陽電池特性の調整・向上をおこなうことができる。
上記のような溶媒としては、具体的には特に限定はされないが、非水性有機溶媒、水やプロトン性有機溶媒などから任意に選択でき、例えばアセトニトリルやジメチルホルムアミド、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、炭酸プロピレンなどが挙げられる。さらに上述のように、耐久性の向上の観点から、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドなどの常温溶融塩(イオン液体)であることが望ましい。
[酸化還元対]
酸化還元対としては、一般的に電池や太陽電池などにおいて使用することのできるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン二原子分子とハロゲン化物塩との組み合わせ、チオシアン酸アニオンとチオシアン酸二分子の組み合わせ、ポリピリジルコバルト錯体や、ハイドロキノンなどの有機レドックスなどが挙げられる。この中では、特にヨウ素分子とヨウ化物との組み合わせが好適である。
支持電解質、酸化還元対などは、其々用いる溶媒、半導体電極および色素などにより最適な濃度が異なるため、特には限定されないが、1mmol/L〜5mol/L程度である。また、支持電解質や酸化還元対は、電解質−触媒複合電極6の形成時に電解質に含有されていればよく、必ずしも予め電解質溶媒に溶解させておく必要はない。例えば、3次元の網目構造の構成材料と混和してから、電解質溶媒と接触・溶解させるなどの手法を採ることも可能である。
[電解質−触媒複合電極〜電極基体]
電解質−触媒複合電極6は、図1に例示するように、電極基体10の表面に、酸化還元対となる化学種を含む電解質9と、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7、および触媒物質8とを含んだ形で接した構造をしている。このとき、電極基体10と導電性の繊維もしくは粒子7とは、電気的に導通していればよく、必ずしも結着の有無は問わない。
該電極基体10は、触媒電極の支持体兼集電体として用いられるため、少なくとも表面部分および取り出し電極部分は導電性を有していればならない。
このような材質としては、例えば導電性を有する金属や金属酸化物、炭素材料や導電性高分子などが好適に用いられる。金属としては、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。また、FTO、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛などの金属酸化物を用いた場合、透明または半透明であるため増感色素層への入射光量を増加させることができ、好適に用いることができる。
また、少なくとも該電極基体の表面が導電性を有するように処理すれば、例えばガラスやプラスチックなどの絶縁体を用いても構わない。このような絶縁体に導電性を保持させる処理方法としては、上記の導電性材料にて、該絶縁性材料表面の一部もしくは全面を被覆する方法、例えば金属を用いる場合、メッキや電析などの溶液法、また、スパッタ法や真空蒸着等の気相法が挙げられ、金属酸化物を用いる場合はゾルゲル法などを用いることができる。また、上記導電性材料の粉末などを一種もしくは複数用いて、絶縁性材料と混和させるなどの方法が挙げられる。
また、該電極基体の形状は、電解質−触媒複合電極として用いる色素増感太陽電池の形状に応じて変更することができるため特には限定されず、板状としてもフィルム状で湾曲できるものでも構わない。さらに、該電極基体は透明でも不透明でも構わないが、増感色素層への入射光量を増加させることができるため、また、場合によっては意匠性が向上できるため透明または半透明であることが望ましい。電極基体として一般的には、FTO被膜付ガラスやITO膜付PENフィルムが用いられているが、用いる材料により導電性が異なるため、電極基体の厚さについて特には限定されない。例えば、FTO被膜付ガラスでは、0.01μm〜5μmであり、好ましくは0.1μm〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。
電極基体10の厚さは、上述のように太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
[電解質−触媒複合電極〜導電性の繊維もしくは粒子、および触媒物質]
本発明の電解質−触媒複合電極6における、導電性の繊維もしくは粒子7は、後述する触媒物質8による酸化還元対の酸化体の還元反応(以降、触媒反応とよぶ)を駆動するために、互いにおよび触媒物質8と電気的に導通していることが必要である。また、前記触媒反応をより効率よく行なうため、その表面積が大きくなるよう、3次元的な網目構造をしていることが望ましい。このとき、導電性の繊維もしくは粒子7は必ずしも物理的に結着している必要はない。
触媒物質8は、前記のように該導電性の繊維もしくは粒子7との電気的な導通に加え、電解質中に含まれる酸化還元対と物理的に接触しなければ触媒反応は進行しない。したがって、触媒物質8は導電性の繊維もしくは粒子7の表面に担持もしくは少なくとも部分的に被覆されていることが望ましい。さらに、触媒物質8が、導電性と触媒性能を併有する場合、図3のように導電性の繊維もしくは粒子7を被覆し、かつ互いに接触せることで、電極特性さらに向上することができる。
また、耐久性を向上させるためにゲル状、ペースト状、粘土状や固体状などの高粘度の電解質を利用することが望ましいが、粘度の低い溶液の電解質を使用した場合と異なり、毛管現象によって前記網目構造内部の触媒物質近傍まで電解質を充填するは困難である。そこで、本発明においては、導電性を有する繊維や粒子を電解質と混和させることで、電気的な導通を維持するとともに、電解質9及び電解質中の酸化還元対と触媒物質8との接触面積を大きく向上できる。その結果、毛管現象によらず、前記網目構造の深部においても触媒物質8と電解質9の接触ができるため、図4に例示される従来構造の触媒電極14のように、有効に機能しない触媒物質を大きく低減することができる。
本発明における、電解質−触媒複合電極の製造方法としては、太陽電池素子の耐久性を向上させるとともに、製造工程における作業性を向上させることを目的として、電解質を含んだ形状で一体化できることが望ましい。したがって、電解質と導電性繊維もしくは粒子および触媒物質が複合した状態で、ゲル状、ペースト状、粘土状や固体状などの形状を取っていることが望ましい。
具体的な製造方法については、例えば、(a)導電性の繊維もしくは粒子と触媒物質および電解質を混合させてゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状としたのち、(b)前記(a)工程で調製した混合物を塗布または印刷などの方法で集電体となる電極基体上に組み合わせる製造方法が望ましい。この際、前記導電性の繊維もしくは粒子が互いに電気的な導通を持たせるために、各構成材料の割合および含有量は適宜調整することができる。また、(b)の工程後に電気的な導通が確立されていればよく、(a)の混合状態で必ずしも電気的導通が取れていなくても構わない。このような例としては、(a)の混合時にバインダー溶液などを添加しておき、(b)において電極基体上に塗布後、バインダーの溶媒を乾燥させるなどの方法が挙げられる。さらに、該製造方法においては、集電体兼支持体である電極基体と導電性の繊維もしくは粒子からなる網目構造とは、両者が接触して電気的に導通していればよく、必ずしも結着・固定されていなくても構わない。
また、前記製造方法において、触媒物質は電解質−触媒複合電極形成時に導電性の繊維もしくは粒子と電気的な導通が取れている必要がある。したがって、前記(a)の工程時に単独で他の構成材料と混合するよりも、予め導電性の繊維もしくは粒子に接触した状態、特に担持もしくは少なくとも部分的に被覆した状態としてから、電解質と混合させることが望ましい。
また、前記製造方法において、酸化還元対を添加する工程は、本発明の特性を損なわない限り任意の時点で行なうことができる。すなわち前記(a)の工程時、各構成材料とともに添加・混合する方法や、電解質に予め溶解させておく、もしくはバインダーやゲル化剤など添加剤に混合して添加するなどの方法が挙げられる。また、(a)の工程後の混合物に対して、添加・含浸させて溶解させる方法もある。さらに、(b)の工程時に予め電極基体表面に担持させ、(a)工程における混合物の塗布にともない電解質中に溶解または拡散させるなどの方法も挙げられる。
また、(a)の工程において、混合後にゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状とする方法については、最終的に電解質−触媒複合電極の形成時に必要とされる電極特性が得られれば、特には限定されず公知の技術を利用できる。例えば、高粘度の電解液を使用する方法や、PVDFなどのフッ素系ポリマーやポリアルキレングリコール系材料などのマトリックスポリマーを添加する方法、また、イソシアネート基とヒドロキシル基など化学結合、4級アンモニウム塩と多価金属の組み合わせなどの化学架橋、やポリビニルピリジンなどのゲル化剤を使用し、ゲル化・擬固体化する方法などが挙げられる。また、イオン液体などの高粘度溶媒に微小粒子を添加し、撹拌・遠心分離などにより、ペースト状・粘土状に加工する方法も好適に利用できる。この際に添加する微小粒子には、電解質中安定であり、かつ太陽電池特性に負の影響を与えない限り特には限定されないが、本発明の構成材料である導電性の繊維もしくは粒子を添加粒子として使用することが、製造工程上の操作性向上、太陽電池の耐久性向上、および電解質−触媒複合電極としての電極特性の向上の面から特に好ましい。
前記製造方法においては、(a)の混合物後にゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状となり、かつ電解質−触媒複合電極として太陽電池素子に使用中において電解質の液漏れなどが防止される限り、(a)の混合前の電解質は粘度が低い液体であっても構わない。
また、本発明における他の製造方法としては、(c)導電性の繊維もしくは粒子が互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質を含んでなる3次元の網目構造を、集電体となる電極基体上に形成する工程と、(d)ゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状である電解質を、前記(c)工程にて作製した3次元の網目構造体内に充填させる方法が挙げられる。
前記(c)の工程において、前記導電性の繊維もしくは粒子を用い、互いに電気的な導通を持たせた形で電極基体上に3次元の網目構造を取らせる方法としては、特に限定されず任意の方法を取ることができる。例えば、カーボンペーパーやカーボン布、スチールウールなどのように導電性の繊維が織られたり、束となって任意の形状を保持した導電性材料などを用い、電極基体と重ね合わせるなどの方法がある。
前記(c)の工程の他の方法としては、繊維や粒子など粉体状の導電性材料の場合は、バインダーや接着剤などを用い、3次元網目構造を電極基体表面に形成する方法がある。このような接着剤は、得られる電解質−触媒複合電極の電極特性に負の影響を与えない限り、特には限定されず公知の材料が使用できるが、導電性を有する材料が好適に利用できる。バインダーや接着剤などを用いて形成する場合、3次元網目構造を確保する必要があるが、このような方法としては、使用する導電性の繊維もしくは粒子の形状や粒径などを適宜調整することで該網目構造を構築するなどの方法が挙げられる。
また、バインダーや接着剤の溶剤には不溶の粒子を添加しておき、電極基体表面に前記粉体状の導電性材料層を形成した後、添加した粒子を溶解させるなどの手法で積極的に3次元網目構造を形成することもできる。
ただし、前記バインダーや接着剤が、前記粉体状の導電性材料間を固着しかつ閉塞させてしまうと、後続の(d)工程における電解質の充填が不十分になるという従来の多孔性電極と同様の問題が発生してしまう。したがって、該バインダーや接着剤の固化後、電解質の充填を妨げることのないよう、粉体状の導電性材料にて形成させた層内は少なくとも一方向は流体が貫通できるようにすることが望ましい。また、その他の方法としては、該粉体状の導電性材料にて形成した層を完全に固着させずに、後続の(d)工程において、電解質の充填時に膨潤もしくは流動できるようにする形成する方法などが挙げられる。
すなわち、該製造方法においては、集電体兼支持体である電極基体と導電性の繊維もしくは粒子からなる網目構造とは、両者が接触して電気的に導通し、かつ(d)の工程における電解質の充填が可能である程度の強度を保持していればよく、必ずしも結着・固定されていなくても構わない。また、該製造方法においては、各構成材料の割合および含有量は適宜調整することができる。
また、該製造方法において、触媒物質は電解質−触媒複合電極形成時に導電性の繊維もしくは粒子と電気的な導通が取れているとともに、電解質と接触していることが望ましい。したがって、予め導電性の繊維もしくは粒子に接触した状態、特に担持もしくは少なくとも部分的に被覆した状態を形成してから、電解質と混合させることが望ましい。このような方法としては、前記(c)の工程時に、予め導電性の繊維もしくは粒子表面に触媒物質を形成・担持しておく方法や、前記(c)工程と(d)工程の間に、3次元網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子表面に触媒物質を形成・担持させる方法などが例示できる。
また、前記(d)における電解質のゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状とする方法については、最終的に電解質−触媒複合電極の形成時に必要とされる電極特性が得られれば、特には限定されず公知の技術を利用できる。例えば、高粘度の電解液を使用する方法や、PVDFなどのフッ素系ポリマーやポリアルキレングリコール系材料などのマトリックスポリマーを添加する方法、また、イソシアネート基とヒドロキシル基など化学結合、4級アンモニウム塩と多価金属の組み合わせなどの化学架橋、やポリビニルピリジンなどのゲル化剤を使用し、ゲル化・擬固体化する方法などが挙げられる。また、イオン液体などの高粘度溶媒に微小粒子を添加し、撹拌・遠心分離などにより、ペースト状・粘土状に加工する方法も利用できる。
また、前記製造方法において、酸化還元対を添加する工程は、本発明の特性を損なわない限り任意の時点で行なうことができる。すなわち前記(d)の工程時に充填する電解質に予め混合もしくは溶解させておく方法が簡便であり好適に利用できる。また、電解質と混合もしくは溶解させることで、電解質がゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状に加工できず、製造上操作性の向上に寄与できない場合などは、(c)の工程時使用する導電性の繊維もしくは粒子と混和させたり、担持させておき、(d)の工程にて充填された電解質に溶解または拡散させるなどの方法が挙げられる。
本発明における導電性繊維もしくは粒子7を構成する材料としては、導電性が高く、太陽電池の駆動時に安定であれば特に限定はされない。このような材料としては、例えば、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、フラーレンなどの粒子状炭素材料や、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素材料が挙げられ、さらには、カーボンペーパーやカーボン布などは高電導度かつ高表面積であり、好適に利用できる。また、FTOやITO、酸化アンチモンと酸化スズの混合体、酸化亜鉛などに代表される導電性金属酸化物が好適に用いることができる。また、金属材料は導電性が高く好適に利用できる。例えば白金やルテニウムなどの貴金属類およびその合金は、現状の触媒電極と同様に好適に使用できる。また、ヨウ素などの腐食性酸化還元対により腐食されない場合には、金属の種類は特に限定されず種々の金属が好適に利用できる。特に金、銀、銅などは導電性が高く好適に利用できる。また、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などは汎用性も高く、貴金属類に比べ低コストであり、特に好適に利用できる。
このような導電性の繊維もしくは粒子は、上記の材料は単一の材料でも、一種類以上の材料の混合物であってもよい。また、その形状も繊維状、粒子状など複数の形状の混合物であっても構わない。
本発明における触媒物質8の材料としては、触媒反応を進行することができれば特に限定されず、公知の材料を使用できる。例えば、貴金属およびその合金が利用できる。特に白金およびその合金が好適に利用できる。その他の材料としては、導電性高分子が触媒特性および安定性に優れるとともに、低コストであるため、特に好適に利用できる。
触媒物質8は、電解質層中に含まれる酸化還元対と効率よく反応できるように、本発明では3次元網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7の表面に担持もしくは少なくとも部分的に被覆する状態で使用することが望ましいが、それに加え触媒物質8自体も多孔質状態で使用することが好ましい。そのため、表面積を向上させる加工が容易である点からも、導電性高分子を触媒物質として使用することが望ましい。
このような導電性高分子材料は、1種以上のホモポリマー、1種以上のコポリマー、又は1種以上のホモポリマーと1種以上のコポリマーの混合物であってよい。
本発明における触媒物質8として使用する導電性高分子を形成するモノマーとして、下記一般式(1)又は(2)で表される芳香族アミン化合物、下記一般式(3)で表されるチオフェン化合物、及び下記一般式(4)で表されるピロール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーが挙げられる。
Figure 0004895361
Figure 0004895361
(式(1)又は(2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R〜R及びR〜R10はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数6〜12のアラルキル基(例えばベンジル基)、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、式(1)中、RとR、又はRとRはそれぞれ連結して環を形成していてもよく、式(2)中、RとR、又はRとR10はそれぞれ連結して環を形成していてもよい。)
Figure 0004895361
(式(3)中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、R11とR12は連結して環を形成していてもよい。)
Figure 0004895361
(式(4)中、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、R13とR14は連結して環を形成していてもよい。)
該芳香族アミン化合物を用いるに当たっては、それらが重合した高分子が触媒性能を有していれば特に限定されないが、ある芳香族アミン化合物単独での高分子膜が触媒性能を有さずとも、アニリンもしくは、他の芳香族アミン化合物とのコポリマーとすることで触媒性能を有していればよい。触媒物質8として使用する導電性高分子を構成するポリマーは、ホモポリマーでもコポリマーでもよく、そのモノマー成分として、芳香族アミン化合物を1種又は2種以上用いて導電性高分子を形成することができる。
上記芳香族アミン化合物の例として、アニリン及びアニリン誘導体がある。さらに具体的にアニリン、アニシジン、フェネチジン、トルイジン、フェニレンジアミン、ヒドロキシアニリン、N−メチルアニリン、トリフルオロメタンアニリン、ニトロアニリン、シアノアニリン、及びハロゲン化アニリンなどが挙げられる。中でもアニシジン、トルイジン、フェニレンジアミン、アニリンが好ましく使用される。中でもアニリンが特に好ましく使用され、モノマーとして少なくともアニリンが重合して形成されたポリマーが挙げられ、とりわけモノマーとしてアニリンを単独で用いたポリアニリンがコストも安くかつ触媒能も高いことから好適に利用できる。あるいはアニリンとアニリン以外の芳香族化合物をモノマーとしたコポリマーも好ましく使用され、例えばアニリンとアニリン誘導体とのコポリマー、さらに具体的にはアニリンと、アニシジン、フェネチジン、トルイジン、フェニレンジアミン、ヒドロキシアニリン、N−メチルアニリン、トリフルオロメタンアニリン、ニトロアニリン、シアノアニリン及びハロゲン化アニリンから選ばれるコモノマーとのコポリマーが挙げられる。
複数種の芳香族アミン化合物を用いるとき、それらの比率は特に限定されないが、モル比で芳香族アミン化合物のうち一方を100として、他方を3以上の割合で重合することが適当である。例えばアニリン及びアニリン誘導体を用いるとき、モル比でアニリン及びアニリン誘導体のうち一方を100として他方を3以上の割合で重合することが一般的に適当である。
上記チオフェン化合物の例として、チオフェン及びチオフェン誘導体が挙げられ、さらに具体的にチオフェン、3−メチルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、テトラデシルチオフェン、イソチアナフテン、3−フェニルチオフェン、及び3,4−エチレンジオキシチオフェンなどがある。特に3,4−エチレンジオキシチオフェンを好ましく使用することができる。
チオフェン化合物を1種又は2種以上用いて導電性高分子層を形成してもよい。チオフェン化合物は酸化電位が高いため、電気化学的な酸化重合による形成が好適に利用できる。
上記ピロール化合物として、ピロール及びピロール誘導体が挙げられ、ピロール誘導体としては特に3位に炭素原子数1〜8のアルキル基を有するものが挙げられる。ピロール化合物の具体例として、ピロール、3−メチルピロール、3−ブチルピロール及び3−オクチルピロールなどがある。ピロール化合物を1種又は2種以上用いて導電性高分子層を形成してもよい。
導電性高分子を形成するモノマー成分は、重合した膜としての電導度が10−9S/cm以上を示すものが望ましい。
また、電導度を向上させるために導電性高分子層にドーパントを添加することが望ましい。ドーパントは公知の材料、例えば、ヘキサフロロリン、ヘキサフロロヒ素、ヘキサフロロアンチモン、テトラフロロホウ素、過塩素酸等のハロゲン化物アニオン、ヨウ素、臭素、塩素等のハロゲンアニオン、ヘキサフロロリン、ヘキサフロロヒ素、ヘキサフロロアンチモン、テトラフロロホウ素、過塩素酸等のハロゲン化物アニオン、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等のアルキル基置換有機スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸等の環状スルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸等のアルキル基置換または無置換のベンゼンモノまたはジスルホン酸アニオン、2−ナフタレンスルホン酸、1,7−ナフタレンジスルホン酸等の1〜3個のスルホン酸基を有する、アルキル基置換または無置換ナフタレンスルホン酸アニオン、アントラセンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルビフェニルスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等のアルキル基置換または無置換のビフェニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテル、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリイミド、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等の高分子スルホン酸アニオン、置換または無置換の芳香族スルホン酸アニオン、ビスサルチレートホウ素、ビスカテコレートホウ素等のホウ素化合物アニオン、あるいはモリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸アニオン等が挙げられる。これらのドーパントは単独でも2種以上を併用してもよい。
ドーパントの脱離を抑制する観点から、ドーパントは無機アニオンよりも有機酸アニオンであることが望ましく、熱分解などが起きにくいものであることが望ましい。
また、導電性高分子膜表面を多孔質化することで、酸化還元対の還元反応を効率よく行なうことができるため、上記ドーパントのうち、緻密な表面になりやすい高分子状有機酸アニオンよりも、単分子有機酸アニオンであることが望ましい。
導電性高分子層9は、上記ドーパントのうち、下記一般式(5)〜(8)で表されるベンゼンスルホン酸、およびナフタレンスルホン酸化合物、およびそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種類をドーパントとして含有することが特に望ましい。
Figure 0004895361
(式(5)〜(8)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1から15のアルキル基、アルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基(例えばフェニル、トリル、ナフチルなど)、シアノ基、チオシアノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン基、又はニトロ基を示し、RとRはそれぞれ連結して環を形成していてもよい。)
この式(5)〜(8)で表される化合物が好ましい理由について、詳細は不明であるが、これらのドーパントを用いた場合、多孔質化による物理的強度の低下を防ぎながら高電導度を達成することができるためと考察している。
ドーパントとして、ヨウ素アニオン及び/又はポリヨウ化物アニオンもまた、好ましく使用できる。この理由についての詳細は不明であるが、本発明者らは、触媒物質8として使用する導電性高分子中に含有したこれらアニオンは、導電性高分子の高電導度を発現するドーパントとして機能に加え、下記のような効果が付加されていると考察している。すなわち、本発明においては、耐久性を向上させるために高粘度の電解質を使用することが求められるが、その粘土の高さから酸還元対の拡散速度が遅い。本発明においては、導電性の繊維もしくは粒子7を使用して3次元の網目構造をなすことで太陽電池素子として電流値の低下を抑制および従来よりも向上させているが、酸化還元対として使用されるヨウ素アニオン及び/又はポリヨウ化物アニオンをドーパントとして、導電性高分子内に 電解質中の酸化還元対とGrothus機構(実用化に向けた色素増感太陽電池, pp13, 2003, 株式会社NTS に記載)による電荷移動を行うことができ、より容易に電解質への電荷移動を行うことができるため高い触媒性能が得られ、太陽電池の特性が向上したと考えられる。
ドーパントとして例えばLiI、HIなどを使用することでヨウ素アニオン(I)を提供することができる。また、ポリヨウ化物アニオンは、例えばI やI などの形態であって、ヨウ素(I)とIを溶解して共存させることで提供できる。
導電性高分子層におけるドーパントの使用量は、使用するドーパント種により最適値が異なるため特に限定されないが、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜45質量%である。
このようなドーパントは導電性高分子層を形成させる際に、適宜の段階で使用することができ、例えば導電性高分子の形成に用いるモノマーと共存させておくことができる。また、導電性高分子層の形成後に、該導電性高分子にドーパント溶液に含浸させるなどの方法により、ドープさせることもできる。
触媒物質8として使用する導電性高分子は、触媒反応を進行させるため、3次元網目構造を成した導電性繊維もしくは粒子7と電気的に導通されなければならず、該導電性繊維もしくは粒子7の表面上に形成されることが望ましい。該導電性高分子は、導電性を有しているため、前記導電性繊維もしくは粒子7上に担持もしくは一部を被覆するだけではなく、該導電性繊維もしくは粒子7の表面全面を被覆しても構わない。該導電性高分子の形成方法としては、例えば、導電性高分子を溶解させた溶液から成膜する方法が挙げられる。該溶液に用いる溶媒としては導電性高分子化合物を溶解できるものであれば特に制限はされないが、例えばトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられ、特にN−メチル−2−ピロリドンが好適に利用できる。
また、導電性高分子粉末を、分散液、ペーストもしくはエマルジョン、もしくは高分子溶液、又はバインダーを含む混合物形態に処理した後に、該導電性繊維もしくは粒子7と混和させて表面に担持・被覆する方法も可能である。該方法は簡便な工程であることから、好適に利用できる。また、後述の電解質−触媒複合電極としての製造方法によっては、前記導電性高分子粉末と導電性繊維もしくは粒子7とを混和させた状態で、電極基体10に塗布するなどの方法もある。
また、触媒物質8として使用する導電性高分子は、より大きな表面積を有する多孔質状態であることが望ましいため、導電性高分子モノマーを含む溶液と導電性繊維もしくは粒子7を接触させた状態で該モノマーを酸化重合することにより、該導電性繊維もしくは粒子7の表面に担持・被覆する方法を用いることができる。
導電性高分子モノマーの酸化重合方法としては、一般的な重合方法である電解重合法もしくは化学重合法が利用できる。化学重合法は、酸化剤を用いて、上記に例示したような導電性高分子を形成するモノマー(以下、単に「導電性高分子モノマー」とも称する。)を酸化重合させる方法である。一方、電解重合法は、上記したような導電性高分子モノマーを含む溶液中で電気化学的に酸化を行うことにより金属などの電極上に導電性高分子の膜を形成する方法である。
上記の化学重合法を用いる場合、前記導電性繊維もしくは粒子を導電性高分子モノマーもしくは酸化剤のどちらかを含む溶液に浸漬するか、それらに該溶液を塗布した後、続いてもう一方の成分を溶解させた溶液に浸漬もしくは塗布するなどして、上記導電性繊維もしくは粒子表面で重合が進行するようにし、導電性高分子を形成させることが望ましい。化学重合法による形成方法は、簡便な工程による実施できるため好適に利用することができる。また、酸化剤を含む溶液に浸漬、もしくは該溶液を塗布した後、モノマーの蒸気に曝すことで重合を行う方法も利用できる。
このとき、化学重合時の導電性繊維もしくは粒子の形状は特には限定されない。すなわち、上記の電解質−触媒複合電極の製造方法のように、既に電極基体10上に塗布されて3次元網目構造を成した状態で、触媒物質8として導電性高分子モノマーの化学重合を行なってもよく、また、導電性繊維もしくは粒子に前記導電性高分子を化学重合したのちに電解質−触媒複合電極として形成させても構わない。
化学重合法に用いられる酸化剤としては、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素、二酸化塩素、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、亜塩素酸等のハロゲン化物、五フッ化アンチモン、五塩化リン、五フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデン等の金属ハロゲン化物、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、無水クロム酸、第二鉄塩、第二銅塩等の高原子価金属塩、硫酸、硝酸、トリフルオロメタン硫酸等のプロトン酸、三酸化硫黄、二酸化窒素等の酸素化合物、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過ホウ酸ナトリウム等のペルオキソ酸またはその塩、あるいはモリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸またはその塩などの公知の物質があり、これらの少なくとも1種を用いることができる。
一方、電解重合法は、比較的電導度の高い導電性高分子を得ることができ、かつ、その合成方法も簡便であるため、電極材料の作製方法として好適に利用できる。本発明において電解重合を利用する場合、導電性繊維もしくは粒子が3次元網目構造を成した状態の電極基体10を電極とし、導電性高分子モノマーを溶解させた電解液中で電解酸化する手法により行なうことができる。
電解重合法に用いられる電解重合溶媒としては、導電性高分子モノマーを溶解でき、導電性高分子モノマーの電解重合電位においても、安定していれば特に限定はされないが、例えば、水、アセトニトリルなどのニトリル系、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトンなどのケトン系、プロピレンカルボナートなどのカルボナート系、テトラヒドロフランなどを用いることができる。またこれらは単独、もしくは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。前記のうち、ある程度の極性を有した有機溶媒、例えば、アセトニトリル、メタノール、プロピレンカルボナート、テトラヒドロフランなどが好適に利用できる。さらに、前記ドーパントを添加する場合は、ドーパントも溶解できることが望ましい。
電解重合条件としては、予め上記導電性高分子モノマーを溶解させた電解重合液中に、表面に導電性繊維もしくは粒子からなる3次元網目構造を形成させた電極基体を浸漬させ、同じ電解溶液中に設置した対向電極との間に任意の電圧を印加することで重合を進行させる。このときの導電性高分子モノマー濃度としては、導電性高分子モノマーの種類により最適値が異なるため特には限定されないが、一般的に0.01mol/L〜10mol/Lの範囲が適当であり、0.05〜3mol/Lの範囲がしばしば用いられる。また、ドーパントを共存させる場合は、ドーパントの濃度としては、導電性高分子モノマー濃度に対して1/10〜100倍の範囲が適当であって、1/3〜20倍の範囲がしばしば用いられる。また、重合する際の印加電流密度としては、導電性高分子モノマーの種類や、使用する導電性繊維もしくは粒子7、およびその表面積により最適値が異なるため特には限定されないが、0.01mA/cm2〜1A/cm2の範囲が適当であって、多くの場合1mA/cm2〜100mA/cm2の範囲が用いられる。
[3次元の網目構造が、表面に形成された導電性高分子層を介して互いに接触もしくは固着された電解質−触媒複合電極]
本発明における電解質−触媒複合電極として、図4にその一例を示したように、3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子7が、表面に形成された導電性高分子11を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通しており、かつ触媒物質12が、前記導電性高分子11に担持されている構造が挙げられる。
上述のように、実用的な観点から、高沸点さらには不揮発性の溶媒の使用が望ましい。さらには、電解液の漏洩などの問題を回避するため、電解質は粘度が高いことが望ましく、特にゲル状、ペースト状、粘土状、もしくは固体状であることが望ましい。しかしこのような電解質では、粘度の低い溶液の電解質を使用した場合と異なり、毛管現象によって前記網目構造内部の触媒物質近傍まで電解質を充填するは困難である。
そこで、本発明においては、導電性を有する繊維や粒子を電解質と混和させることで、電気的な導通を維持するとともに、電解質9及び電解質中の酸化還元対と触媒物質との接触面積を大きく向上できる。このとき、該導電性を有する繊維や粒子7の表面を導電性高分子11で被覆すると、通電は維持しながら、直接繊維もしくは粒子に担持するよりもその表面積をさらに拡大することができるので好適に利用できる。このとき、前記導電性高分子11はより多孔質状態で形成することが望ましい。その結果、触媒物質12の一部が該導電性高分子層の内部に形成された場合でも、電解質9は多孔性の前記導電性高分子11内部に容易に充填されるため、電極特性や触媒物質の有効利用率にさらなる向上が現れる。
このときの触媒物質12の材料としては、触媒反応を進行することができれば特に限定されず、公知の材料を使用できる。例えば、貴金属およびその合金が利用できる。特に白金およびその合金が好適に利用できる。また、その他の材料としては、導電性高分子が触媒特性および安定性、さらに担体となる前記導電性高分子11との密着性も優れる低コストで形成できるため、特に好適に利用できる。
前記導電性高分子11については、導電性を有することが必須であるが、直接触媒として機能しなくとも構わない。該導電性高分子11のポリマーを形成するモノマーは、前述した触媒物質8として使用できる導電性高分子のポリマーを形成するモノマーとは同一のものであっても異なるものであってもよい。また、該導電性高分子11のポリマーは、単一のモノマーから形成されたホモポリマー又はそれらの混合物であってもよく、また2種以上のモノマーからなるコポリマー又はその混合物であってもよく、ホモポリマーとコポリマーの混合物であってもよい。
すなわち、該導電性高分子11は1種以上のホモポリマー、1種以上のコポリマー、または1種以上のホモポリマーと1種以上のコポリマーの混合物を含むことができ、また、該導電性高分子11と触媒物質として使用できる導電性高分子のポリマーとは、同一又は異なるポリマーを含むことができる。
該導電性高分子11を形成するにあたって、構成成分や形成方法・条件は、一般的には上述の触媒物質8として用いる導電性高分子で説明した材料や条件に準じたものでよい。
例えば、導電性の繊維もしくは粒子7と、前記導電性高分子のモノマー、および必要に応じて電解質を溶解・分散させた溶液中で、電極基体10を電極として導電性高分子11の電解重合を行ない、電解液中に分散された導電性の繊維もしくは粒子7を導電性高分子11に取り込む、または電着させるなどの方法が利用できる。
本発明においては、触媒反応を駆動させるための主な導通経路は導電性の繊維もしくは粒子7が担うものであり、該導電性高分子11は、それらを接触・結着させて導通させ、かつ触媒物質12の担体として機能させるため多孔質が望ましい。したがって、該導電性高分子11の厚みとしては特に限定はされないが、該導電性高分子11が厚すぎると電気抵抗値も嵩んでくることに加え、電解質の膨潤などのため、導電性の繊維もしくは粒子7および電解質−触媒複合電極の形成条件等に併せて適宜変更することが望ましい。該導電性高分子層11の厚さは一般的に、5nm〜5mm程度が適当であり、好ましくは100μm以下が望ましい。
該導電性高分子11の比表面積は、使用するモノマーにより最適値が異なるため特に限定されないが、通常はN2-BET比表面積で0.1m2/g以上であり、より好ましくは5m/g以上が適当であり、さらに10m2/g以上であることが望ましい。
こうして、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通した3次元の網目構造を成した導電性の繊維もしくは粒子、および触媒物質を含み、集電体兼支持体としての電極基体10と組み合わせた、電解質−触媒複合電極が得られ、または、3次元の網目構造が、表面に形成された導電性高分子層を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質が該導電性高分子層表面に形成され、集電体兼支持体としての電極基体10と組み合わせた、電解質−触媒複合電極が得られる。
以上に説明したような色素増感型太陽電池の各構成要素材料を準備した後、従来公知の方法で金属酸化物半導体電極と電解質−触媒複合電極とを対向させるように組み上げ、色素増感型太陽電池を完成させる。
以下、本発明を実施例に基づいて、より詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
〔実施例1〕
[多孔質金属酸化物半導体]
透明導電膜付きの透明基体としてFTO被膜付ガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、その表面に二酸化チタンペースト(Soralonix社製 Ti−Nanoxide T)をバーコーターで塗布し、乾燥後450℃で30分焼成してそのまま室温となるまで放置し、10μmの厚さの多孔質酸化チタン半導体電極を形成した。
[増感色素の吸着]
増感色素として、一般にN3dyeと呼ばれるビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体を使用した。一旦150℃まで加熱した前記多孔質酸化チタン半導体電極を色素濃度0.5mmol/Lのエタノール溶液中に浸漬し、遮光下1晩静置した。その後エタノールにて余分な色素を洗浄してから風乾することで太陽電池の半導体電極を作製した。さらに、得られた半導体電極の酸化チタン投影面積が25mmになるよう、半導体層を研削した。
[電解質−触媒複合電極の作製]
導電膜層付の電極基体としてFTO被膜付ガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、有機溶媒中で超音波洗浄した。このFTO被膜付ガラスにカーボンペーパー(東レ(株)社製TGP−H−030)を接触させた状態で、アニリン 0.1mol/Lと塩酸 1mol/Lとを含む水溶液中に浸漬し、FTO被膜付ガラスを介したカーボンペーパーを電極としてアニリンを電気化学的に酸化することで、FTO被膜付ガラス表面及びカーボンペーパー表面にポリアニリン膜を形成させた後、純水で洗浄してから空気中100℃で乾燥した。
酸化還元対としてヨウ化エチルメチルイミダゾリウムとヨウ化リチウム、およびヨウ素、添加剤として1−メチルベンズイミダゾールを溶解させた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを電解質として調製し、前記ポリアニリン付カーボンペーパー/FTO被膜付ガラスに充填させることで、電解質−触媒複合電極を得た。
[太陽電池セルの組み立て]
前記のように作製した半導体電極と電解質−触媒複合電極を対向するよう設置した。
[太陽電池セルの光電変換特性の測定]
上記の太陽電池セルについて、光量100mW/cmの擬似太陽光を照射して開放電圧(以下、「Voc」と略記する。)、短絡電流密度(以下、「Jsc」と略記する。)、形状因子(以下、「FF」と略記する。)、および光電変換効率を評価したところ、以下の結果を得た。
「Voc」、「Jsc」、「FF」及び光電変換効率の各測定値については、より大きい値が太陽電池セルの性能として好ましいことを表す。
[実施例1の測定結果]
開放電圧(Voc):0.67V
短絡電流密度(Jsc):14.6mA/cm
形状因子(FF):0.64
光電変換効率:6.2%
〔実施例2〕
モノマーを3,4−エチレンジオキシチオフェン0.05mol/Lとイミダゾール0.02mol/Lおよび、酸化剤であるp−トルエンスルホン酸鉄(III)塩0.1mol/Lを溶解させたn−ブタノール/2−プロパノール混合溶液中に、にライオン(株)社製ケッチェンブラック[商品名ケッチェンブラックEC600JD(以降ケッチェンブラックと省略)]を分散させ、さらに超音波処理を施しながら均一に分散させてから乾燥し、粉体を得た。得られた粉体を、110℃に加熱して該ケッチェンブラック表面に吸着されたエチレンジオキシチオフェンを重合し、ポリエチレンジオキシチオフェン(以降PEDOTと省略)担持させたケッチェンブラックを得た。得られた、PEDOT担持ケッチェンブラックを電解質と混練・遠心分離操作することで、ペースト状とした。得られたペーストをFTO被膜付ガラス上に塗布し、電解質−触媒複合電極を完成させた。なお、電解質の組成、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例1と同様に行なった。
[実施例2の測定結果]
開放電圧(Voc):0.75V
短絡電流密度(Jsc):15.1mA/cm
形状因子(FF):0.60
光電変換効率:6.8%
〔実施例3〕
ケチェンブラックを分散させたピロール 0.1mol/Lとp-トルエンスルホン酸ナトリウム 0.1mol/Lとを含む水溶液中にFTO被膜付ガラスを浸漬させ、ピロールを電気化学的に酸化することで、FTO被膜付ガラス表面にポリピロールとケッチェンブラックを電析させた。得られたポリピロール/ケッチェンブラック混合層付FTO被膜付ガラスを一旦純水で洗浄した後、該FTO被膜付ガラスを電極として、硫酸 0.5mol/LとHPtCl 5mmol/Lとを含む水溶液中にて電解還元を行ない、該電極表面に白金を還元析出させた。その後、純水・洗浄および乾燥工程を経た後に、電解質を充填して電解質−触媒複合電極を得た。なお、電解質は、実施例1の電解質組成に対してポリビニルピロリドンを添加し、ペースト状に増粘させてから使用した。また、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例1と同様に行なった。
[実施例3の測定結果]
開放電圧(Voc):0.72V
短絡電流密度(Jsc):14.9mA/cm
形状因子(FF):0.69
光電変換効率:7.4%
〔実施例4〕
シーアイ化成(株)社製ITOナノ粒子(商品名ナノテック)と、呉羽化学工業(株)社製ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)溶液(商品名クレハKFポリマー)を混練させて粘土状に加工したのち、FTO被膜付ガラス上に塗布・接着させてから空気中120℃で乾燥させた。さらに、モノマーを3,4−エチレンジオキシチオフェン0.05mol/L、ドーパントとしてp−トルエンスルホン酸0.1mol/Lとよう化リチウム0.1mol/Lを溶解させた水溶液中、前記ITO層付FTO被膜付ガラスを電極として、エチレンジオキシチオフェンを電気化学的に酸化することで、ITO層付FTO被膜付ガラス表面にPEDOTにて被覆させた。なお、電解質の組成、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例3と同様に行なった。
[実施例4の測定結果]
開放電圧(Voc):0.62V
短絡電流密度(Jsc):14.2mA/cm
形状因子(FF):0.68
光電変換効率:6.0%
〔実施例5〕
氷浴させたアニリン濃度0.1mol/lの硫酸水溶液に過硫酸アンモニウムを滴下してアニリンを重合させ、ポリアニリン粒子を得た。得られたポリアニリン粒子にアンモニア水を作用させた後、N−メチルピロリドン(以降NMPと省略する。)にポリアニリンが4質量%となるよう溶解させ、エメラルジン塩基状態のポリアニリンNMP溶液を得た。
前記ポリアニリンNMP溶液にケッチェンブラックを添加・超音波分散させた後、加温して濃縮し、さらに2,7−ナフタレンジスルホン酸を添加・撹拌してゲル化させた。得られたゲルを電解質と混和させてから、FTO被膜付ガラスに塗布・乾燥させて電解質−触媒複合電極を得た。なお、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例1と同様に行なった。
[実施例5の測定結果]
開放電圧(Voc):0.64V
短絡電流密度(Jsc):13.9mA/cm
形状因子(FF):0.60
光電変換効率:5.3%
〔実施例6〕
ピロール 0.1mol/Lと2,7−アントラキノンジスルホン酸ナトリウム 0.1mol/Lとを含む氷浴させた水溶液中に、ステンレスウール(日本スチールウール(株)社製)を浸漬させ、該スチールウールを電極としてピロールを電気化学的に酸化することで、その表面をポリピロールで被覆し、純水洗浄後空気中100℃で乾燥させた。得られたポリピロール被覆ステンレスウールを、実施例5にて調製したものと同じポリアニリンNMP溶液に含浸し、引き上げ後空気中120℃で乾燥させた。得られたポリアニリン/ポリピロール被覆スチールウールを塩酸水溶液に含浸させ、ポリアニリンに塩酸をドープしてエメラルジン塩状態とし、導電性を付与した。得られた被覆スチールウールを純水洗浄後、空気中100℃で乾燥させ、電解質を充填して電解質−触媒複合電極を得た。なお、電解質の組成、太陽電池セルの組み立て方法および評価方法については実施例3と同様に行なった。
[実施例6の測定結果]
開放電圧(Voc):0.66V
短絡電流密度(Jsc):13.6mA/cm
形状因子(FF):0.65
光電変換効率:5.8%
〔比較例〕
半導体電極の作製方法は実施例1と同様に作製した。電解質−触媒複合電極の替わり、触媒電極として白金電極を用いた。該触媒電極は、電極基体にFTOガラスを用い、スパッタリング法によりFTOガラス上に白金層を形成した。白金層の厚みは約150nmであった。半導体電極と触媒電極を対向するよう設置し、電解質を毛管現象にて両電極間に含浸させた。電解質は実施例1と同様に調製した。
[比較例1の測定結果]
開放電圧(Voc):0.67V
短絡電流密度(Jsc):10.2mA/cm2
形状因子(FF):0.64
光電変換効率:4.4%
以下の表1に上記各例の3次元の網目構造を成す導電性の材料、触媒物質及び太陽電池特性測定値を示す。なお、材料の欄の括弧内はドーパントを表す。
Figure 0004895361
以上の結果から、本発明の触媒電極を備えた色素増感型太陽電池が優れた光電変換効率を有していることが判る。
本発明によれば、安価な材料および簡便な製造方法により作製でき、かつ、高粘度の電解質を用いた場合でも、触媒の利用率が高く、電解質中に含まれる酸化還元対の酸化体を速やかに還元することのできる、耐久性に優れた電解質−触媒複合電極が提供される。さらに、色素増感太陽電池の電解質−触媒複合電極を製造するにあたって、安価な材料により簡便に操作性よく、かつ小エネルギーにて電極特性に優れた該電極を製造する方法を提供される。
さらに本発明によれば、上記電解質−触媒複合電極を、光増感作用を有する色素を含む半導体電極に対向配置させることで、優れた光電変換効率を有した色素増感太陽電池を提供することができる。
本発明の色素増感太陽電池の構成の一例を示す断面模式図である。 本発明の電解質−触媒複合電極の構成の一例を示す断面模式図である。 本発明の電解質−触媒複合電極の構成の一例を示す断面模式図である。 本発明の電解質−触媒複合電極の構成の一例を示す断面模式図である。 従来の触媒電極の構成の一例を示す断面模式図である。
符号の説明
1 電極基体
2 透明基体
3 透明導電膜
4 多孔質金属酸化物半導体層
5 増感色素層
6 電解質−触媒複合電極
7 導電性の繊維もしくは粒子
8 触媒物質
9 電解質
10 電極基体
11 導電性高分子層
12 触媒物質
13 電極基体
14 電解質
15 有効な触媒物質
16 無効な触媒物質
17 多孔質導電層

Claims (14)

  1. 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極に対向配置される電極であって、酸化還元対となる化学種及びイオン液体を含む電解質と、互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、3次元の網目構造を成している導電性の繊維もしくは粒子と、導電性高分子及び触媒物質とから構成され、触媒物質が、導電性の繊維もしくは粒子表面に担持され、電解質に含まれる酸化還元対の伝導経路と接触していることを特徴とする色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極。
  2. 導電性の繊維もしくは粒子表面に触媒物質が担持されてなる3次元の網目構造が、該触媒物質を介して互いに接触もしくは固着されて電気的に導通していることを特徴とする請求項1に記載の電解質−触媒複合電極。
  3. 触媒物質が、導電性高分子である請求項1又は2に記載の電解質−触媒複合電極。
  4. 導電性高分子が、下記一般式(1)又は(2)で表される芳香族アミン化合物、下記一般式(3)で表されるチオフェン化合物、下記一般式(4)で表されるピロール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーが重合して形成されたポリマーである、請求項に記載の電解質−触媒複合電極。
    Figure 0004895361
    Figure 0004895361
    (式(1)又は(2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R〜R及びR〜R10はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数6〜12のアラルキル基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、式(1)中、RとR、又はRとRはそれぞれ連結して環を形成していてもよく、式(2)中、RとR、又はRとR10はそれぞれ連結して環を形成していてもよい。)
    Figure 0004895361
    (式(3)中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、R11とR12は連結して環を形成していてもよい。)
    Figure 0004895361
    (式(4)中、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、R13とR14は連結して環を形成していてもよい。)
  5. 該導電性高分子が、モノマーとして少なくともアニリンが重合して形成されたポリマーである、請求項に記載の電解質−触媒複合電極。
  6. 該導電性高分子が、モノマーとして少なくとも一般式(3)で表されるチオフェン化合物が重合して形成されたポリマーである、請求項記載の電解質−触媒複合電極。
  7. 該導電性高分子が、モノマーとして少なくとも3,4−エチレンジオキシチオフェンが重合して形成されたポリマーである、請求項記載の電解質−触媒複合電極。
  8. 該導電性高分子が、モノマーとして少なくとも一般式(4)で表されるピロール化合物が重合して形成されたポリマーである、請求項に記載の電解質−触媒複合電極。
  9. 導電性高分子が、ヨウ素アニオン及び/又はポリヨウ化物アニオンをドーパントとして含有していることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項記載の電解質−触媒複合電極。
  10. 導電性の繊維もしくは粒子が、カーボン、カーボンペーパー、金属酸化物、および金属から選ばれる、少なくとも一種の導電性材料から形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極。
  11. 酸化還元対としてヨウ素アニオン及び/又はポリヨウ化物アニオンを含有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極。
  12. 電解質がゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極。
  13. 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極に対向配置され、酸化還元対となる化学種を含む電解質と、導電性の繊維もしくは粒子、および触媒物質とを含んでなる色素増感太陽電池用の電解質−触媒複合電極の製造方法であって、(a)導電性の繊維もしくは粒子が互いに接触もしくは固着されて電気的に導通し、かつ触媒物質を含んでなる3次元の網目構造を、集電体となる電極基体上に形成する工程と、(b)ゲル状、ペースト状、粘土状もしくは固体状である電解質を前記網目構造内に充填させる工程、を含む電解質−触媒複合電極の製造方法。
  14. 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解質層と、前記半導体電極に対向配置される電極とを少なくとも有する色素増感太陽電池であって、該電極が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電解質−触媒複合電極である、色素増感太陽電池。
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