JP4915785B2 - 色素増感太陽電池用の対極、及びそれを備えた色素増感太陽電池 - Google Patents
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Description
上記の色素増感太陽電池は、可視光を吸収して励起した増感色素から半導体電極に電子が注入され、集電体を通して外部に電流が取り出される。一方、増感色素の酸化体は電解質中の酸化還元対により還元されて再生する。酸化された酸化還元対は、半導体電極に対向して設置された対極表面で還元されてサイクルが一周する。
該特許文献1で例示されているホール集電体作製方法は、導電性高分子のモノマーおよび重合触媒を含む溶液を塗布した後、加熱処理することで重合を進行させ、最終的に溶媒を除去する方法である。
電極支持体と導電性材料からなる電極基体を有し、該電極基体上に、導電性高分子にて一部もしくは全体を被覆された微細な線状又は筒状炭素材料を含有する電極が酸化還元対の酸化体を速やかに還元することができる対極となることを見出した。
本発明者らはまた、前記導電性高分子と微細な線状又は筒状炭素材料が、相互作用していること、特に前記線状又は筒状炭素材料と前記導電性高分子がπ−πスタッキングにより相互作用することにより、電極特性と耐久性に優れた対極が得られることを見出した。
本発明者らはさらに、前記線状又は筒状炭素材料の表面に導入した官能基と前記導電性高分子との相互作用により複合化していること、特に、前記線状又は筒状炭素材料の表面に導入した官能基が、前記導電性高分子にドーピングされること、もしくは、前記導電性高分子と化学結合すること、により生ずる相互作用により複合化した対極が、電極特性と耐久性に優れることを見出した。
電極支持体と導電性材料からなる電極基体を有し、該基体上に、酸化還元対となる化学種の酸化体を還元する触媒物質として、少なくともその一部が導電性高分子にて被覆されてなる微細な線状又は筒状炭素材料を含有することを特徴とする対極である。
図2は、本発明の対極の一例を表す断面模式図であって、対極7において、電極支持体と導電性材料からなる電極基体8と、電極の作用部分として、導電性高分子にて一部もしくは全体を被覆された微細な線状又は筒状炭素材料を含有する触媒層9が該電極基体8の表面上に備えられている。
[透明基体]
電極基体1を構成する透明基体2は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、ガラス表面を加工して入射光を散乱させるようにしたもの、半透明なすりガラス状のものも使用できる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
透明基体2の厚さは、太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、例えばガラスやプラスチックなどを用いた場合では、実使用時の耐久性を考慮して1mm〜1cm程度であり、フレキシブル性が必要とされ、プラスチックフィルムなどを使用した場合は、1μm〜1mm程度である。
透明導電膜3としては、可視光を透過して、かつ導電性を有するものが使用でき、このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化インジウム、酸化スズと酸化インジウムの混合体(以下、「ITO」と略記する。)、酸化亜鉛などが好適に用いることができる。また、分散させるなどの処理により可視光が透過すれば、不透明な導電性材料を用いることもできる。このような材料としては炭素材料や金属が挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブやフラーレンなどが挙げられる。また、金属としては、特に限定はされないが、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。したがって、透明導電膜3としては、上述の導電性材料のうち少なくとも1種類以上からなる導電材料を、透明基体2の表面に設けて形成することができる。あるいは透明基体2を構成する材料の中へ上記導電性材料を組み込んで、透明基体と透明導電膜を一体化して電極基体1とすることも可能である。
透明基体と透明導電膜を一体化させるには、透明基体の成型時に導電性のフィラーとして上記導電膜材料を混合させるなどの方法をとることができる。
透明導電膜3の厚さは、用いる材料により導電性が異なるため特には限定されないが、一般的に使用されるFTO被膜付ガラスでは、0.01μm〜5μmであり、好ましくは0.1μm〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。100Ω/□を超えると太陽電池の内部抵抗が上がり、十分に電流が流れないため好ましくない。
透明基体及び透明導電膜から構成される電極基体1、又は透明基体と透明導電膜とを一体化した電極基体1の厚さは、上述のように太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1000μm程度である。
多孔質金属酸化物半導体4としては、特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。また、電気抵抗値を下げるため、金属酸化物の粒界は少ないことが望ましい。また、増感色素をより多く吸着させるために、当該半導体層は多孔質になっていることが望ましく、その比表面積が、具体的には10〜200m2/gの範囲であるものが望ましい。また、増感色素の吸光量を増加させるため、使用する酸化物の粒径に幅を持たせて光を散乱させることが望ましい。
このような多孔質金属酸化物半導体は、特に限定されず既知の方法で透明導電膜3上に設けることができる。例えば、ゾルゲル法や、分散体ペーストの塗布、また、電析や電着させる方法がある。さらに、多孔質金属酸化物半導体に対し、半導体粒子同士の電子的接触の強化と、支持体との密着性の向上のために、さらに高温処理をしてもよい。
このような半導体層の厚さは、用いる酸化物およびその性状により最適値が異なるため特には限定されないが、0.1μm〜50μm、好ましくは5〜30μmである。
増感色素層5としては、太陽光により励起されて前記金属酸化物半導体層4に電子注入できるものであればよく、一般的に色素増感太陽電池に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。特に限定はされないが、ルテニウム錯体、特にルテニウムポリピリジン系錯体が望ましく、さらに望ましいのは、Ru(L)2(X)2で表されるルテニウム錯体が望ましい。ここでLは4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、もしくはその4級アンモニウム塩、およびカルボキシル基が導入されたポリピリジン系配位子であり、また、XはSCN、Cl、CNである。例えばビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体などが挙げられる。
他の色素としては、ルテニウム以外の金属錯体色素、例えば鉄錯体、銅錯体などが挙げられる。さらに、シアン系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクアリン酸系色素、スチリル系色素、エオシン系色素などの有機色素や導電性高分子などが挙げられる。これらの色素には、該金属酸化物半導体層への電子注入効率を向上させるため、該金属酸化物半導体層との結合基を有していることが望ましい。該結合基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、スルホン酸基などが望ましい。
増感色素を溶解するために用いる溶媒の例としては、エタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどの窒素化合物、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。溶液中の色素濃度は、使用する色素及び溶媒の種類により適宜調整することが望ましい。例えば、5×10-5mol/L以上の濃度が望ましい。
電解質層6は、支持電解質と、酸化された増感色素を還元することのできる酸化還元対、およびそれらを溶解させた溶媒からなる。この溶媒としては、特に限定はされないが、非水性有機溶媒、常温溶融塩、水やプロトン性有機溶媒などから任意に選択でき、例えばアセトニトリルやジメチルホルムアミド、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、炭酸プロピレンなどが挙げられ、中でもメトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、炭酸プロピレンなどを好適に用いることができる。また、溶媒をゲル化して用いることもできる。
支持電解質として、リチウム塩やイミダゾリウム塩、4級アンモニウム塩などが挙げられる。
支持電解質、酸化還元対などは、其々用いる溶媒、半導体電極および色素などにより最適な濃度が異なるため、特には限定されないが、1mmol/L〜5mol/L程度である。
電解質層にはさらに添加剤として、t−ブチルピリジン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、水などを添加することができる。
対極7は、電極基体8の表面に、導電性高分子にて一部もしくは全体を被覆された微細な線状又は筒状炭素材料を含有する触媒層9が形成された構造を有している。
線状又は筒状炭素材料は導電性高分子によって少なくともその一部が被覆されていることが好ましいが、より好ましくは、被覆率が50%以上であることが好ましい。
該電極基体8は、対極の支持体兼集電体として用いられるため、少なくとも触媒層9を形成させる表面部分は導電性を有していなければならない。
このような材質としては、例えば導電性を有する金属や金属酸化物、炭素材料や導電性高分子などが好適に用いられる。金属としては、例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。また、FTO、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛などの金属酸化物を用いた場合、透明または半透明であるため増感色素層への入射光量を増加させることができ、好適に用いることができる。
電極基体8の厚さは、上述のように太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
本発明の対極における導電性高分子にて一部もしくは全体を被覆された微細な線状又は筒状炭素材料を含有する触媒層9は、電解質層中に含まれる酸化還元対の酸化体を還元する触媒の作用部分として機能する。触媒層9は電子移動反応を効率良く行なえるように多孔質の状態で存在することが好ましい。
また、上記官能基が導電性高分子へドープした場合の確認手法も同様に、吸収スペクトルの変化から判別することができる。
また、上記官能基と導電性高分子間で共有結合を形成した場合も、同様に赤外分光法などを用いて、共有結合を形成する官能基のスペクトルの消失や変化により判別することができる。
本発明の対極における触媒層9に含まれる導電性高分子を形成するモノマーとして、下記一般式(1)又は(2)で表される芳香族アミン化合物、下記一般式(3)で表されるチオフェン化合物、及び下記一般式(4)で表されるピロール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーが挙げられる。
チオフェン化合物を1種又は2種以上用いて導電性高分子を形成してもよい。
導電性高分子を形成するモノマー成分は、重合した膜としての電導度が10-9S/cm以上を示すものが望ましい。
前記導電性高分子は、用いる導電性高分子の種類によりその最適値が異なるため特には限定されないが、その理論ドープ量全てが、線状又は筒状炭素材料表面に導入した官能基によりドーピングされていることが特に望ましい。ただし、前記線状又は筒状炭素材料表面に導入された官能基の数が導電性高分子の理論ドープ量に対して不足しているなどの場合には、該官能基を導電性高分子と作用させた後、他のドーパントを追加して補っても構わない。
一方、上記の化学結合を形成する導電性高分子の官能基としては、特には限定されない。導電性高分子を形成するモノマーの官能基を利用すると簡便であるため、予め線状又は筒状炭素材料表面の官能基と反応できるような官能基を有するモノマーを用いて重合させることが望ましい。
このようなドーパントとしては、用いる導電性高分子の種類により、その種類および最適量が異なるため特には限定されないが、上項記載のドーパントに準じて使用することができる。
いずれの方法においても酸化剤およびモノマーの残渣や未反応物、また、重合度の低いオリゴマーなどを除去するため、適宜の段階で洗浄することが望ましい。
また、導電性高分子にて被覆した線状又は筒状炭素材料粉末を、ペーストもしくはエマルジョンなどの形態に処理した後に、該電極基体上へ成膜するが挙げられる。成膜方法としては、特には限定されず、例えば、スピンコート、キャスト法、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ダイコート、ビードコート、ブレードコート、バーコート等といった公知の塗布方法により行なうことができる。また、塗布後必要に応じて加熱および減圧することで溶媒を除去することで触媒層9を形成することができる。
以上に説明したような色素増感太陽電池の各構成要素材料を準備した後、従来公知の方法で金属酸化物半導体電極と対極とを電解質を介して対向させるように組み上げ、色素増感太陽電池を完成させる。
〔実施例1〕
[多孔質金属酸化物半導体]
透明導電膜付きの透明基体としてFTOガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、その表面に二酸化チタンペースト(Soralonix社製)をバーコーターで塗布し、乾燥後450℃で30分焼成してそのまま室温となるまで放置し、10μmの厚さの多孔質酸化チタン半導体電極を形成した。
増感色素として、一般にN3dyeと呼ばれるビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体を使用した。一旦150℃まで加熱した前記多孔質酸化チタン半導体電極を色素濃度0.5mmol/Lのエタノール溶液中に浸漬し、遮光下1晩静置した。その後エタノールにて余分な色素を洗浄してから風乾することで太陽電池の半導体電極を作製した。さらに、得られた半導体電極の酸化チタン投影面積が25mm2になるよう、半導体層を研削した。
濃硫酸:濃硝酸を3:1とした混酸溶液40ml中に1gの多層カーボンナノチューブを添加し、70分間加熱還流した。室温まで冷却後、大量の純水で洗浄してから200nm径のフィルターでろ別した。さらに、得られた多層カーボンナノチューブを100mlの純水中に分散/溶解させてから、石英繊維を用いてろ過を行なった。得られたろ液の多層カーボンナノチューブ濃度はおよそ0.4mg/mlであった。このろ液を凍結乾燥させて、表面にアニオン性置換基を導入した多層カーボンナノチューブを得た。なお、原料の多層カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブは、CVD法を用い、700℃で、Ni−フタロシアニンを原料として調製した。調製時の多層カーボンナノチューブは平均長6〜8μm、平均径25〜40nmであり、一連の操作により得られたアニオン性置換基を導入した多層カーボンナノチューブは、平均長1〜2μm、平均径25〜40nmであった。また、得られた多層カーボンナノチューブをFT-IRにて分析し、カルボニル基、ヒドロキシル基、およびスルホ基が導入されていることを確認した。
氷浴させたアニリン濃度0.1mol/Lの硫酸水溶液に過硫酸アンモニウムを滴下してアニリンを重合させ、ポリアニリン粒子を得た。得られたポリアニリン粒子にアンモニア水を作用させた後、N−メチルピロリドン(以降、「NMP」と省略する。)にポリアニリンが1g/70mlとなるよう溶解させ、ポリアニリンNMP溶液を得た。
前記ポリアニリンNMP溶液に、上記アニオン性置換基を導入した多層カーボンナノチューブを0.4g/mlとなるよう添加して分散・撹拌し、多層カーボンナノチューブドープポリアニリン(以降、「MWCNドープ−PAN」と略記。)溶液を得た。
導電膜層付の電極基体としてFTOガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用いた。有機溶媒中で超音波洗浄した該電極基体を、上記で得られたMWCNドープ−PAN分散溶液に浸漬してから引き上げ、空気中150℃で1時間加熱乾燥させてMWCNドープ−PAN対極を得た。平均膜厚は0.5μmであった。
前記のように作製した半導体電極と対極を対向するよう設置し、電解質を毛管現象にて両電極間に含浸させた。電解質としては、溶媒をメトキシアセトニル、還元剤としてヨウ化リチウム、酸化剤としてヨウ素、添加剤としてt−ブチルピリジン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドを含む溶液を用いた。
上記の太陽電池セルについて、光量100mW/cm2の擬似太陽光を照射して開放電圧(以下、「Voc」と略記する。)、短絡電流密度(以下、「Jsc」と略記する。)、形状因子(以下、「FF」と略記する。)、および光電変換効率を評価したところ、以下の結果を得た。
「Voc」、「Jsc」、「FF」及び光電変換効率の各測定値については、より大きい値が太陽電池セルの性能として好ましいことを表す。
開放電圧(Voc):0.75V
短絡電流密度(Jsc):10.2mA/cm2
形状因子(FF):0.75
光電変換効率:5.7%
導電性高分子および対極の作製以外は実施例1と同様に行なった。対極は以下のように行なった。すなわち、導電性高分子モノマーである3‐ヘキシルチオフェンを、氷浴0℃冷却下3−ヘキシルチオフェンに対して約3等量の塩化第二鉄を溶解させたクロロホルム溶液にゆっくりと滴下した。その後0℃に保持したまま一昼夜撹拌した後、反応溶液をメタノール溶液に注ぎ込み、黒色の沈殿物を得た。該沈殿物を吸引ろ過後、メタノールで未反応のモノマー及びオリゴマーを洗浄して除去した。得られた沈殿物をアンモニア水溶液中に分散・撹拌することで、ドーパントの脱離処理を行なった。純水で洗浄後、減圧乾燥してポリ(3−ヘキシルチオフェン)(以降、「PHT」と略記する)を得た。得られたPHTをトルエンに溶解させて赤色のPHTトルエン溶液を得た。
実施例1のポリアニリンNMP溶液を得られたPHTトルエン溶液に代え、同様の手法を用いることにより多層カーボンナノチューブドープポリ(3−ヘキシルチオフェン)(以降、MWCNドープ−PHTと略記)分散溶液を得た。得られたMWCNドープ−PHT分散溶液を用い、実施例1と同様の手法で作製した対極を用いて太陽電池セルを作製、評価した。
[実施例2の測定結果]
開放電圧(Voc):0.73V
短絡電流密度(Jsc):9.2mA/cm2
形状因子(FF):0.72
光電変換効率:4.8%
導電性高分子および対極の作製以外は実施例1と同様に行なった。対極は以下のように行なった。すなわち、アニリン塩酸塩水溶液中に多層カーボンナノチューブを超音波分散させ、氷浴0℃下で12時間撹拌させ、該多層カーボンナノチューブ表面にアニリンを吸着させた。その後ろ別して分取してから、得られた多層カーボンナノチューブを、氷浴0℃の純水中に分散・撹拌させ、過硫酸アンモニウム水溶液を滴下して該多層カーボンナノチューブ表面に吸着させたアニリンを重合させた。吸引ろ過および純水洗浄、減圧乾燥して得られたポリアニリン被覆多層カーボンナノチューブ(以降、「PAN被覆−MWCN」)を、クロロホルム中に超音波分散させた。調製した溶液を、実施例1と同様に洗浄したFTOガラス上にスピンコート法にて塗布・乾燥し、目的とするPAN被覆−MWCN対極を得た。形成した膜厚は約0.2μmであった。作製した対極を用いて実施例1と同様にして太陽電池セルを作製し、評価した。
[実施例3の測定結果]
開放電圧(Voc):0.75V
短絡電流密度(Jsc):8.9mA/cm2
形状因子(FF):0.73
光電変換効率:4.9%
導電性高分子および対極の作製以外は実施例1と同様に行なった。対極は以下のように行なった。実施例1の線状又は筒状炭素材料へのアニオン性置換基の導入工程において、混酸を2.6mol/Lの硝酸とした他は同様の操作を行なうことで、多層カーボンナノチューブ表面にカルボキシル基を導入した。さらに、ジメチルホルムアミドを添加した塩化チオニル中に、得られたカルボキシル基導入多層カーボンナノチューブを分散させ、70℃で撹拌しながら24時間加熱処理することにより、カルボキシル基をアシルクロライド(酢酸塩化物)とした。得られた生成物は遠心分離後に減圧乾燥した。
フェニレンジアミンを溶解させたジメチルスルホキシド(以降、「DMSO」と略記する。)溶液に、上記酢酸クロライド基を導入した多層カーボンナノチューブを分散させた後100℃で4日間撹拌し、フェニレンジアミンと多層カーボンナノチューブ間にアミド結合を形成させた。得られた混合液を過剰のメタノールに添加・撹拌してからろ過を行ない、次いでメタノールにて洗浄した。さらに、2時間超音波分散処理を施し、次いでメンブランフィルターを用いてろ過を行なってから乾燥することで、フェニレンジアミンが結合した多層カーボンナノチューブの粉体を得た。アミド結合生成の確認は、赤外分光測定法により同定した。
導電性高分子のモノマーとしてアニリン、およびドーパントとしてパラトルエンスルホン酸を溶解させた水溶液中に、上記で得られたフェニレンジアミンとアミド結合を形成させた多層カーボンナノチューブを超音波分散させた。氷浴0℃下で12時間撹拌させ、該多層カーボンナノチューブ表面にアニリンを吸着させた。その後氷浴・撹拌条件下、過硫酸アンモニウム水溶液を滴下して該多層カーボンナノチューブ表面に吸着させたアニリンおよび、該多層カーボンナノチューブ表面にアミド結合させたフェニレンジアミンとアニリンを重合させた。吸引ろ過および純水洗浄、減圧乾燥して得られたポリアニリン被覆多層カーボンナノチューブ(以降、「PAN被覆−MWCN」)を、クロロホルム中に超音波分散させた。調製した溶液を、実施例1と同様に洗浄したFTOガラス上にスピンコート法にて塗布・乾燥し、目的とするPAN結合−MWCN対極を得た。作製した対極を用いて実施例1と同様にして太陽電池セルを作製し、評価した。
[実施例4の測定結果]
開放電圧(Voc):0.76V
短絡電流密度(Jsc):8.4mA/cm2
形状因子(FF):0.68
光電変換効率:4.3%
対極の作製方法以外は実施例1と同様に太陽電池セルを作製し、評価した。
対極は電極基体にFTOガラスを用い、実施例1と同様に洗浄した後、スパッタリング法によりFTOガラス上に白金層を形成した。白金層の厚みは約150nmであった。
[比較例1の測定結果]
開放電圧(Voc):0.72V
短絡電流密度(Jsc):8.9mA/cm2
形状因子(FF):0.66
光電変換効率:4.2%
実施例1の対極の作製方法において、実施例1と同様に作製したアニオン性置換基を導入した多層カーボンナノチューブを超音波分散させた。得られた分散液を、1000rpm×30秒間の条件にてFTOガラス上にスピンコートし、風乾したのちに90℃にて15分加熱乾燥することを5回行なって多層カーボンナノチューブ層を形成させた。
[比較例2の測定結果]
開放電圧(Voc):0.68V
短絡電流密度(Jsc):5.6mA/cm2
形状因子(FF):0.49
光電変換効率:1.9%
比較例2において用いた多層カーボンナノチューブを超音波分散させた水溶液に代え、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸水分散液(以降、「PEDOT/PSS」と略記)(Aldrich社製)に、多層カーボンナノチューブを添加して超音波分散させた溶液を用いることで、PEDOT/PSS分散−MWCN対極を作製し、それ以外は比較例2と同様に太陽電池セルを作製し、評価した。
[比較例3の測定結果]
開放電圧(Voc):0.66V
短絡電流密度(Jsc):8.0mA/cm2
形状因子(FF):0.63
光電変換効率:3.3%
2 透明基体
3 透明導電膜
4 多孔質金属酸化物半導体層
5 増感色素層
6 電解質層
7 対極
8 電極基体
9 触媒層
Claims (11)
- 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を含む電解質層とを少なくとも有する色素増感太陽電池において、
前記電解質層を介して前記半導体電極に対向配置される対極であり、
電極支持体と導電性材料からなる電極基体を有し、該電極基体上に、酸化還元対となる化学種の酸化体を還元する触媒物質として、少なくともその一部が導電性高分子にて被覆されてなる微細な線状又は筒状炭素材料を含有する対極であって、
前記線状又は筒状炭素材料の表面に官能基が導入されてなり、該官能基と前記導電性高分子との相互作用により、導電性高分子と線状又は筒状炭素材料とが複合化されていることを特徴とする対極。 - 前記線状又は筒状炭素材料の表面の官能基が、前記導電性高分子にドーピングされていることを特徴とする請求項1に記載の対極。
- 前記線状又は筒状炭素材料の表面の官能基と前記導電性高分子とが化学結合を有していることを特徴とする請求項1に記載の対極。
- 前記官能基が、カルボキシル基、スルホ基、ホスホニウム基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の対極。
- 前記線状又は筒状炭素材料が、単層および多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の対極。
- 前記導電性高分子が、下記一般式(1)又は(2)で表される芳香族アミン化合物、下記一般式(3)で表されるチオフェン化合物、及び下記一般式(4)で表されるピロール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーが重合して形成されたポリマーである、請求項1〜3のいずれかに記載の対極。
- 前記導電性高分子が、モノマーとして少なくともアニリンが重合して形成されたポリマーである、請求項6に記載の対極。
- 該導電性高分子が、アニリンと一般式(1)又は(2)で表される芳香族アミン化合物から選ばれる少なくとも1種とがモノマーとして重合して形成されたコポリマーである、請求項6記載の対極。
- 該導電性高分子が、モノマーとして少なくとも3,4−エチレンジオキシチオフェンが重合して形成されたポリマーである、請求項6記載の対極。
- 該導電性高分子が、モノマーとしてピロール、3−メチルピロール、3−ブチルピロール及び3−オクチルピロールからなる群から選ばれる少なくとも1種が重合して形成されたポリマーである、請求項6に記載の対極。
- 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を含む電解質層と、前記電解質層を介して前記半導体電極に対向配置される対極とを少なくとも有する色素増感型太陽電池であって、該対極が請求項1〜10のいずれかに記載の対極である、色素増感太陽電池。
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