以下、実施の形態に係る化合物半導体基板、製造方法及び半導体デバイスについて添付の図面に基づいて説明する。なお、説明において、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、六方晶の結晶構造の斜視図である。
六方晶の結晶構造を有するものにサファイア(Al2O3)、GaN、InGaN、AlGaNなどが知られている。六方晶の窒化化合物半導体はサファイア基板との格子不整合が比較的大きいにも拘らず、サファイア基板への成長が可能であることが知られている。
なお、六方晶における六角形の中心から頂点に向かう軸をA軸<11−20>、これに垂直な軸をM軸<1−100>とし、A面(11−20)及びM面(1−100)は、それぞれA軸及びM軸に垂直であり、A軸及びM軸の双方に垂直な軸をC軸、C軸<0001>に垂直な面をC面(0001)とする。なお、六方晶のM軸(A軸)は120度ごとに3方向に存在する。
図2は、サファイアからなるウェハの平面図である。
ウェハWFの一端はオリエンテーションフラットOFを構成しており、オリエンテーションフラットOFに平行な直線はサファイアのM軸に垂直である。ウェハWFはオフ角を有しており、その露出表面は複数のテラスTRを有する階段表面を構成している。これらのテラスTRの法線はC軸に平行であるが、基板表面の法線C’は、C軸に対してM軸方向にθだけずれている。本例のオフ角θは0.15度とする。各テラスTRの長手方向はサファイア基板のA軸に一致する。第1のGaN系半導体層はサファイア基板上に成長し、所定の方向に延びるエッチング溝を有するが、このエッチング溝はテラスTRの長手方向に対して交差する。
図3は、第1のGaN系半導体層のエッチング溝の底面Sを説明するための図である。
バルクの結晶BLKをC軸からM軸方向へ角度θだけ傾斜した軸C’に垂直な平面Pで切断すると、この平面Pは基板表面を規定するが、エッチング溝の底面Sは基板表面よりも僅かに内側に存在するため、この平面Pに平行な平面が底面Sとなる。
図4は、図3に示したエッチング溝の底面Sを含む領域Qの拡大図である。
底面Sの法線はC’軸に一致しており、C’軸とM軸とを含む平面内において、基板の露出表面は階段を構成している。階段のテラスの法線はC軸に一致する。
図5は、下地基板110上にエッチング溝を有する第1のGaN系半導体層1を備えたウェハWFの斜視図である。なお、溝やテラスの寸法は実際よりも誇張して記載してある。
この化合物半導体基板は、六方晶のC軸に対して傾斜した基準軸C’に垂直な平面で切断されてなる階段状の露出表面を有する下地基板110と、下地基板110の露出表面上に成長し複数の溝GRを有する六方晶の第1のGaN系半導体層1とを備えている。第1のGaN系半導体層1の露出表面は、下地基板110の表面形状を複製したものであり、複数のテラスTRが段差STPを介して連続してなる。すなわち、下地基板110の露出表面も、第1のGaN系半導体層1の露出表面も、共に、複数のテラスTRが段差STPを介して連続してなる。
テラスTRの長手方向(下地基板110のA軸)と、第1のGaN系半導体層1の溝GRの長手方向Gとは、角度γ(≠0)で交差している。
図6及び図7は、第1のGaN系半導体層1の表面の拡大図である。
サファイアからなる下地基板110の結晶軸は大文字(M軸、A軸)で示し、GaNからなる第1のGaN系半導体層1の結晶軸は小文字(m軸、a軸)で示す。サファイア及びGaNは、共に六方晶であるが、GaNの結晶軸(m軸、a軸)は、サファイアのC軸を中心に対応する結晶軸(M軸、A軸)を90度回転させたものと等価である。すなわち、M軸方向とA軸方向は、それぞれ、a軸方向とm軸方向に一致する。
第1のGaN系半導体層1の一方の結晶軸(m軸)は、テラスTRの長手方向に一致している。換言すれば、m軸と溝GRの長手方向Gとの成す角度はγ(≠0)である。第1のGaN系半導体層1の他方の結晶軸(a軸)は、下地基板110のM軸に一致している。また、テラスTRの表面はM軸に沿った方向、すなわち矢印SLの方向に傾斜している。
なお、下地基板110は六方晶のサファイアからなり、その上に六方晶のGaN系半導体層を成長させることができるため、サファイアは下地基板の材料として好適である。
GaN系の結晶は、結晶のm軸(サファイアA軸)に垂直な面で劈開が生じやすい。また、GaN系結晶の横方向成長は、a軸方向(サファイアM軸方向)に進みやすい。そのため、横方向成長の基点となる溝加工は、その長手方向Gを結晶のm軸に垂直(サファイアA軸に垂直)に作製することが好ましい。この場合、溝側面から横方向に成長した低欠陥な結晶部分が溝ストライプ上に作製される。これによれば、m軸に垂直に劈開することで良好な反射面を形成することができ、また、m軸に沿って溝GR内に結晶成長するため結晶が欠陥密度が低くなる。また、この低欠陥領域上に作製された発光領域を併せ持つ半導体レーザの作成が可能となる。
但し、レーザの反射面はドライエッチングにより作製することも可能であり、この場合、長手方向GをGaN系結晶のm軸に対して垂直とすることに、必ずしもこだわる必要はない。よって、GaN系結晶のm軸方向に傾いたGaN系結晶上にm軸方向の溝加工ストライプを作製して埋め込み成長を行っても構わない。
また、テラス長手方向と溝GRの長手方向Gのなす角度γは、必要とする平坦な領域の幅wにより異なる。幅wを必要とする場合、基板の端からtanγ≧w/Lとなる長さLの領域にマクロステップが発生することになる。幅Wが100μmであっても、5度の場合で、成長される基板の端から長さ1200μmの部分にマクロステップが発生することとなるが、これは、たとえばウエハサイズ2インチに対して、大きな問題となる数字ではない。実際の実験では、溝ストライプ方向と原子層テラス長手方向とのなす角が15度からマクロステップ抑制の効果を確認している。0度と15度の間に試した角度はない。平行でなければよいと考えられる。幅が広くなった場合でも45度以上あればよいと考えられる。
図8は、図7に示した化合物半導体基板の縦断面図である。
下地基板110の表面S1の形状は、この上に成長したGaN系半導体層1の結晶成長面に複製される。すなわち、GaN系半導体層1の内部の結晶面S2及びGaN系半導体層1の露出表面S3は、共に表面S1を複製したものである。下地基板110上に第1のGaN系半導体層1を成長させた後に、第2のGaN系半導体層の成長を行う。
図9は、第2のGaN系半導体層2を備えた化合物半導体基板の縦断面図である。
下地基板110の表面S1の形状は、この上に成長した第1のGaN系半導体層1の結晶成長面S3に複製され、更に、第2のGaN系半導体層2の結晶成長面S4に複製される。第1のGaN系半導体層1内に形成された溝GR内には、第2のGaN半導体層2が横方向成長し、溝GRの幅方向中央部周辺で溝GRの両側面から成長した結晶が突き当たる。このとき、突き当たった左右の結晶の高さは大きくは違わないため、ステップバンチングは抑制される。
詳説すれば、薄膜結晶成長が進行する場合、供給された薄膜結晶材料原子は原子層のテラス上にトラップされやすい。そのため、この原子層ステップは見かけ上移動していくこととなる。原子層ステップにおけるテラスの長手方向が、溝ストライプ方向に一致する場合、移動した原子層ステップが溝側面に達した時点で溝側面に吸収される。もともとあった原子層ステップが全て溝側面に吸収された場合、新たな原子層ステップは生成されないため、オフ角に依存して、溝側面の高さは左右において異なることとなる。
これに対し、原子層テラス長手方向と溝ストライプ方向が平行でない場合、溝の両側に位置する凸部の頂面における原子層テラスは、溝の底面の向きに対しては傾斜しているが、薄膜結晶成長とともに移動するが溝側面に集約されることなく複製されて成長する。このため、オフ角に依存した溝側面の高さの違いが発生しにくくなり、ステップバンチングの発生が抑制される。
以上のように、この化合物半導体基板によれば、下地基板110は六方晶であり、この上に成長する第1のGaN系半導体層1も六方晶なので、これらの結晶相互の不整合は緩和されている。また、第1のGaN系半導体層1は、複数の溝GRを備えているので、この上に第2のGaN系半導体層2を成長させる場合、溝GR上で第2のGaN半導体層2は、横方向へ成長するが、この横方向の埋め込み成長の過程においては、転位等の欠陥が横方向に曲げられるため、第2のGaN半導体層2内の欠陥密度を低減している。
ここで、オフ角θを有する下地基板の原子レベルの階段、すなわち、複数のテラスTRそれぞれの長手方向が問題となるが、テラスの長手方向は、オフ角θを与える基準軸C’がC軸に対して傾斜する方向(本例ではM軸)に直交している。ここで、溝GRの長手方向とテラスTRの長手方向とは交差しており、溝GRの長手方向に直交する下地基板110のオフ角θの成分は小さくなる。これにより、第2のGaN系半導体層2の表面モホロジーは改善される。すなわち、大きな段差を生じることなく平坦な結晶表面を実現することができる。
また、この製造方法によれば、第2のGaN系半導体層2を、第1のGaN系半導体層1の溝GR内に成長させる場合、上述のように横方向成長となるため、欠陥密度を低減させることができる。また、第2のGaN系半導体2が成長する際に、溝GRの長手方向とテラスTRの長手方向は交差しているので、下地基板110のオフ角θの溝GRの長手方向に直交する成分は小さくなり、溝GRの両側面から成長した結晶が互いに突き当たった場合に発生するステップバンチングが抑制される。これにより、第2のGaN系半導体層2の表面モホロジーは改善されることとなる。
図10は、溝GRの長手方向とテラスTRの長手方向との関係を示す図である。なお、サファイアの結晶軸(M軸、A軸)及びGaNの結晶軸(a軸、m軸)を同図の左下に示す。本例のオフ角θは0.15度とする。
図10(a)に示すように、基板の基準軸C’はC軸からサファイアのM軸方向にθ度傾斜しており、サファイアA軸方向に沿ってテラスTRが延びている。溝GRはテラスTRの長手方向(A軸)と角度γで交差するが、本例ではγ=15度である。なお、サファイアのM軸及びA軸は、GaN結晶のa軸及びm軸にそれぞれ読み替えることができる。
図10(b)に示すように、基板の基準軸C’はC軸からサファイアのM軸方向にθ度傾斜しており、サファイアA軸方向に沿ってテラスTRが延びている。溝GRはテラスTRの長手方向(A軸)と角度γで交差するが、本例ではγ=30度である。なお、サファイアのM軸及びA軸は、GaNのa軸及びm軸にそれぞれ読み替えることができる。
図10(c)に示すように、基板の基準軸C’はC軸からサファイアのM軸方向にθ度傾斜しており、サファイアA軸方向に沿ってテラスTRが延びている。溝GRはテラスTRの長手方向(A軸)と角度γで交差するが、本例ではγ=60度である。
図10(d)に示すように、基板の基準軸C’はC軸からサファイアのM軸方向にθ度傾斜しており、サファイアA軸方向に沿ってテラスTRが延びている。溝GRはテラスTRの長手方向(A軸)と角度γで交差するが、本例ではγ=90度である。
図10(e)に示すように、基板の基準軸C’はC軸からサファイアのA軸方向にθ度傾斜しており、サファイアM軸方向に沿ってテラスTRが延びている。溝GRはテラスTRの長手方向(M軸)と角度γで交差するが、本例ではγ=75度である。
図10(f)に示すように、基板の基準軸C’はC軸からサファイアのA軸方向にθ度傾斜しており、サファイアM軸方向に沿ってテラスTRが延びている。溝GRはテラスTRの長手方向(M軸)と角度γで交差するが、本例ではγ=30度である。
図10(g)に示すように、基板の基準軸C’はC軸からサファイアのA軸方向にθ度傾斜しており、サファイアM軸方向に沿ってテラスTRが延びている。溝GRはテラスTRの長手方向(M軸)と角度γで交差するが、本例ではγ=90度である。
図11は、様々な角度γ及び基板オフ方向毎のマクロステップ抑制効果とPL(フォトルミネッセンス)強度増加効果の関係を示す表である。サンプル番号1は従来例を示し、サンプル番号2,3,4,5,6は、図10の(a)、(b)、(c)、(d)、(g)に対応する。
従来例(サンプル番号1)のように、角度γ=0とし、M軸方向に基準軸C’を傾斜した場合、マクロステップ(ステップバンチング)が発生し、PL強度は劣化したままである。一方、サンプル番号1〜5のように、角度γを15度以上90度以下に設定し、M軸方向に基準軸C’を傾斜した場合、マクロステップ(ステップバンチング)は抑制され、PL強度増加することが判明した。なお、γは5度以上あれば効果を奏する。また、角度γを90度に設定し、A軸方向に基準軸C’を傾斜した場合においても、マクロステップ(ステップバンチング)は抑制され、PL強度増加することが判明した。なお、90度±3度は効果を奏する誤差である。
上述の基準軸C’(図5参照)が、C軸に対してM軸方向に傾斜している場合、テラス長手方向はM軸に直交する方向、すなわちA軸方向を向くため、A軸方向に沿って段差が整列し易くなり、第2のGaN系半導体層2の結晶性が改善する。このときの交差の角度γは、5度以上93度以下であることが好ましい。上述の例では、γは15度以上を示したが5度から効果が現れた。この範囲の場合、第2のGaN系半導体層2の表面におけるマクロステップの発生、すなわち、ステップバンチングが抑制された。角度γは90度以下であればよいが、3度は誤差として93度以下とした。
また、基準軸C’は、C軸に対してA軸方向に傾斜させることもできる。この場合、テラス長手方向はA軸に直交する方向、すなわちM軸方向を向くため、M軸方向に沿って段差が整列し易くなり、第2のGaN系半導体層2の結晶性が改善する。
図12は、溝GRの幅方向の位置(μm)と、第2のGaN系半導体2の高さ偏差(nm)との関係を示すグラフである。このデータはAFM(原子間力顕微鏡)を用いて測定した。γ=0度の場合を従来例とする。本実施例は、サンプル番号4(図11参照)の試料を用いた。実施例に係る化合物半導体基板の表面粗さは、従来例に比べて著しく低減されていることが判明する。
図13は、波長(nm)とPL強度(a.u.)の関係を示すグラフである。このデータはPL装置を用いて測定した。γ=0度の場合を従来例とする。本実施例は、サンプル番号6(図11参照)の試料を用いた。
交差の角度γは90度±3度である。この場合、第2のGaN系半導体層2の表面におけるマクロステップの発生、すなわち、ステップバンチングが抑制されるばかりでなく、PL強度も極めて高くなり、結晶性が著しく改善された。なお、角度γにおける±3度は誤差を示す。
ここで、従来例として説明されるステップバンチングの発生について説明しておく。
図14は、γ=0度の場合の第1のGaN系半導体層1の平面図である。
第1のGaN系半導体層1の一方の結晶軸(m軸)、すなわち、サファイアの下地基板110のA軸は、テラスTRの長手方向に一致している。m軸又はA軸と溝GRの長手方向Gとの成す角度は0度、すなわち平行である。第1のGaN系半導体層1の他方の結晶軸(a軸)、下地基板110のM軸に一致している。また、テラスTRの表面はM軸に沿った方向、すなわち矢印SLの方向に傾斜している。
図15は、図14に示した化合物半導体基板の縦断面図である。
下地基板110の表面S1の形状は、この上に成長したGaN系半導体層1の結晶成長面に複製される。すなわち、GaN系半導体層1の露出表面S3は、表面S1を複製したものである。下地基板110上に第1のGaN系半導体層1を成長させた後に、第2のGaN系半導体層の成長を行う。
図16は、第2のGaN系半導体層2を備えた化合物半導体基板の縦断面図である。
下地基板110の表面S1の形状は、この上に成長した第1のGaN系半導体層1の結晶成長面S3に複製され、更に、第2のGaN系半導体層2の結晶成長面S4に複製される。第1のGaN系半導体層1内に形成された溝GR内には、第2のGaN半導体層2が横方向成長し、溝GRの幅方向中央部周辺で溝GRの両側面から成長した結晶が突き当たる。このとき、突き当たった左右の結晶の高さは異なり、ステップバンチングが発生する。
なお、溝GRの幅をW、頂面TSの幅をS、溝GRの繰り返し周期をT(=W+S)、第2のGaN系半導体層2の露出表面のステップの高さをdとする。
本例は従来例の説明であるが、各寸法の設定法については実施形態のものにも適用する。実施形態の化合物半導体基板においては、第2のGaN系半導体層2のステップの高さd、以下の条件を満たすことが好ましい。
すなわち、第1のGaN系半導体層1の溝GRの繰り返し周期T、基準軸C’のC軸からの傾斜角(オフ角)θの溝GRの長手方向Gに垂直な成分θP(角度θを長手方向Gに垂直な平面に投影した場合の角度)は、不等式:6×10−8/T≧tanθPを満たす。すなわち、溝GRの両側面から成長した結晶は、溝GRの上方位置において突き当たる。この突き当たり時に形成されるステップの高さdは、T×tanθPで与えられるが、これが6×10−8m以下である場合には、成長によりステップの平坦化が進み、量子井戸の成長時に影響を与えない程度に段差が小さくなるという効果がある。このときの溝GRの幅Wは周期Tの1/2である。
溝GRが繰り返し構造を持たない場合、溝GRの幅W、基準軸C’のC軸からの傾斜角θの溝GRの長手方向Gに垂直な成分θPは、不等式:3×10−8/W≧tanθPを満たすことが好ましい。ステップの高さdは、2W×tanθP=6×10−8mで与えられるからである。すなわち、上述のように、ステップの高さdが6×10−8m以下である場合には、成長によりステップの平坦化が進み、量子井戸の成長時に影響を与えない程度に段差が小さくなるという効果があるからである。
なお、θ=0.15度を基準軸周りに60度回転すると、θPは約0.075度となる。本例では周期28μmの溝GRを作製しており、高さd=28×10−6×tan(0.075)=3.6×10−8(m)となる。ちなみに、θPの代わりにθを代入した場合、28×10−6×tan(0.15)=7.5×10−8(m)である。この構成において、溝構造が周期構造でない場合、溝幅W(m)のとき、3×10−8/W≧tanθPとなるようにすることが好ましい。
θ=0.15度を60度回転すると、ストライプに直交する傾きは約0.075度となる。本例では幅Wを14μmとしており、14×10−6×tan(0.075)=1.8×10−8(m)となる。ちなみに、θPの代わりにθを代入した場合、14×10−6×tan(0.15)=3.7×10−8(m)である。
次に、半導体デバイスについて説明する。
図17は、上記実施に形態に係る化合物半導体基板を用いた半導体デバイス(半導体発光デバイス)の縦断面図である。
化合物半導体基板100は、下地基板110、第1のGaN系半導体層1、第2のGaN系半導体層2を備えている。なお、下地基板110と第1のGaN系半導体層1との間にはGaNからなるバッファ層111が介在しており、第2のGaN系半導体層2は、第1のGaN系半導体層1の凹凸表面上に順次積層された中間層2a、クラック防止層2b及び結晶層2cからなる。なお、各層の材料と厚みは以下の通りである。
・下地基板110:サファイア/ 50〜1000μm
・バッファ層111:GaN/ 5〜100nm
・第1のGaN系半導体層1:GaN/0.1〜20μm
・第2のGaN系半導体層2:
・・中間層2a:AlN/ 5〜100nm
・・クラック防止層2b:AlGaN/5〜1000nm
・・結晶層2c:AlGaN/ 0.1〜20μm
なお、GaN系半導体層は、一部にGaNを含んでいればよい。
化合物半導体基板100上に、下部コンタクト層4、下部クラッド層5、下部ガイド層6、活性層7、キャリアブロック層8、上部ガイド層9、上部クラッド層10が順次積層されている。上部クラッド層10は、Y方向に沿って延びた凸部を有しており、この凸部上に上部コンタクト層11が形成されている。上部クラッド層10上は、凸部の頂面上に位置する上部コンタクト層11を除いて絶縁層12で被覆されており、上部コンタクト層11の上部表面にはY方向に延びた上部電極13が接触している。上部電極13はY方向に沿って上部コンタクト層11に接触しつつ絶縁層12上に位置する。下部コンタクト層4は、Z方向に垂直な露出面を有しており、この露出面上に下部電極14が接触している。
各要素の材料/厚みの好適範囲/導電型/キャリア濃度の好適範囲は以下の通りである。
下部コンタクト層4:AlGaN/1〜5μm/N型/3×1017〜3×1019cm-3
下部クラッド層5:AlGaN/ 0.2〜1.5μm/N型/3×1017〜3×1019cm-3
下部ガイド層6:AlGaN/ 0.05〜0.2μm/I型
活性層7:GaN井戸層/1〜5nm/I型
活性層7:AlGaN障壁層/1〜15nm/N型/3×1017〜3×1019cm-3
キャリアブロック層8:AlGaN/5〜300nm/P(I)型/3×1016〜6×1017cm-3
上部ガイド層9:AlGaN/ 0.05〜0.2μm/I型
上部クラッド層10:AlGaN/0.2〜1.5μm/P型/3×1016〜3×1018cm-3
上部コンタクト層11:AlGaN/5〜50nm/P型/5×1016〜5×1018cm-3
この半導体発光デバイスは、凹凸表面を有する第1のGaN系導体層1と、この凹凸表面上に形成された第2のGaN系半導体層2と、凹部上に成長した電流通過領域ACTを有する第3化合物半導体層(活性層7)とを備えている。なお、半導体デバイスが、他の化合物半導体デバイス、例えば、MESFETの場合には、ゲート電極直下のチャネル領域が電流通過領域となり、電流通過領域ACT(半導体機能素子の部分)の電気伝導特性に優れる。また、素子によっては高欠陥領域を電流が通過する場合もある。
この発光素子は、電流通過領域ACTの厚み方向(Z方向;基準軸C’方向)の上下に設けられた2つのクラッド層5,10と、凹部Dの長手方向(Y方向)に沿って延びており電流通過領域ACTに電流を注入するための上部電極13とを備えている。上部電極13と下部電極14との間に駆動電圧を印加すると、上部電極13直下のコンタクト層11、上部クラッド層10、上部ガイド層9、キャリアブロック層8、活性層7、下部ガイド層6、下部クラッド層5を介してコンタクト層4に電流が流れ、コンタクト層4を介して下部電極14に流れる。
上部電極13と下部電極14とはX方向に沿って離隔している。また、凹部D上の低欠陥領域LR凹部の中心線CLを含む領域には欠陥が集まるため、電流通過領域とならないように、活性層7内の電流通過領域ACTは中心線CLのX方向位置よりも上部電極13側にシフトさせる。活性層7内の電流通過領域ACTは、活性領域を構成しており、凹部D上の低欠陥領域LR内に位置する。上部電極13から電流通過領域ACTに注入された電流に応じて、電流通過領域ACTは発光し、上下方向の発光と注入されたキャリアは上下の2つのクラッド層5,10間に閉じ込められる。この化合物半導体デバイスは発光素子として機能する。電流通過領域ACTは凹部D上の低欠陥領域LR内に位置するため、結晶性が高く、したがって、発光素子の発光効率は改善する。
上述のように、化合物半導体デバイスは、電流通過領域ACTを含んでおり、この領域の結晶性が改善されることで、当該領域内を効率的に電流が通過することとなる。化合物半導体デバイスの種類は様々であるが、発光素子の場合には、電流通過領域ACTは、電流注入用の上部電極13から導入される活性領域(発光領域)となる。受光素子の場合には、光電変換領域が電流通過領域となる。他の化合物半導体デバイス、例えば、MESFETの場合には、ゲート電極直下のチャネル領域が電流通過領域となる。また、素子によっては高欠陥領域を電流が通過する場合もある。
この半導体発光デバイスは、化合物半導体基板上に形成され、活性層7を有する。化合物半導体基板100上に成長する半導体層は、化合物半導体基板100の表面を複製しながら成長するが、ステップバンチングが抑制され、表面モホロジーの優れた化合物半導体基板100を用いた場合、この上に形成された半導体発光デバイスは、活性層7における発光効率が向上し、発光波長のばらつきが低減する。
従来の化合物半導体には大きなステップバンチングが存在しており、これにより発光スペクトルおよび発光強度のばらつきが観測された。一方、本実施例の化合物半導体基板によれば、ステップバンチングの発生が抑制されており、その結果、化合物半導体基板上に成長した量子井戸構造の活性層からのフォトルミネッセンス発光スペクトルの半地幅は狭窄化し、発光強度が向上し、出力が安定化した。そして、化合物半導体基板上に成長した半導体レーザにおいては、発振波長のばらつきが減少し、発振閾値の低下と発振強度の向上が観察された。
また、サファイア上にGaN結晶を成長するとき、サファイアC面からわずかにずれた面を使用しているが、先のステップの高さの違いは、このズレを元にしていると考えられる。従来例では、オフ角の傾く方向に対して垂直に溝ストライプ方向を設定していたものを、本実施形態では60度方向および平行な方向に変更することにより、ステップバンチングの大幅な抑制、さらに発光効率および発光波長のばらつきの低減を確認した。なお、基板オフ角θのストライプ方向に垂直な成分は、0.15度から0.075度および約0度に変更したことになり、オフ角θの最適値は0.15度〜0.075度の間にあるものと思われる。
次に、化合物半導体基板の製造方法について説明する。この化合物半導体基板は、(1)1回目成長、(2)凹凸加工、(3)2回目成長を順次実行して製造する。
(実施例1)
(1)1回目成長
結晶成長には、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いた。ガリウム(Ga)原料にはトリメチルガリウム(TMGa)、窒素(N)原料にはアンモニア(NH3)、アルミニウム(Al)原料にはトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。キャリアガスとして、水素(H2)および窒素(N2)を用いた。
下地基板110にはサファイアC面(0001)、0.15度M軸[1−100]方向オフ基板を用いた。基板をMOCVD成長装置に導入後、水素雰囲気中で、1050℃で5分間熱処理を行い、基板表面の清浄化を行う。
その後、基板温度を475℃に降温し、GaNバッファ層111を25nm堆積する。なお、成長圧力は常圧(1.013×105Pa)であり、TMGa供給量は46μmol/min、NH3供給量は5SLMとした。GaNバッファ層111を堆積後、1075℃まで昇温し、第1のGaN系半導体(GaN)1を約4μm成長する。なお、成長圧力は常圧(1.013×105Pa)で、TMGa供給量は92μmol/min、NH3供給量は8SLMとした。
なお、本例では、結晶成長に有機金属気相成長法(MOCVD)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、分子線成長法(MBE)やハイドライド気相成長法(HVPE)などを用いることもできる。
(2)凹凸加工
(2−1)SiO2膜堆積
下地基板110のサファイアC面(0001)上に第1のGaN系半導体層1を成長した基板を成長装置から取り出し、プラズマCVD装置に導入して、その表面上にSiO2膜を300nm堆積する。成膜条件は、温度400℃、圧力93Pa、シラン(SiH4)流量10SCCM、亜酸化窒素(N2O)供給量350SCCM、アルゴン(Ar)流量180SCCMとした。
本例では、SiO2膜の堆積にプラズマCVDを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子線(EB)蒸着法やスパッタ法などを用いることもできる。
(2−2)フォトリソグラフィー
SiO2膜堆積後、フォトリソグラフィーにより周期ストライプにパターニングしたフォトレジストマスクを形成する。ストライプ方向は基板のオフ方向であるサファイア基板のM軸[1−100]方向(GaN結晶のa軸[11−20]方向)から75度をなす方向である(図10(a)参照)。言い換えると、ストライプ方向は、結晶表面の原子層テラス長手方向と15度をなす(γ=15度)。ストライプの幅(=溝幅)Wは14μm、周期Tは28μmである。
(2−3)SiO2パターニング
周期ストライプにパターニングしたフォトレジストをマスクとして、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて、SiO2膜をエッチングする。エッチング条件としては、RFパワー150W、圧力5.3Pa、CF4流量45SCCM、酸素(O2)流量5SCCMとして、第1のGaN系半導体層1の表面まで到達するまでエッチングする。その後、マスクとして用いたレジストを有機溶剤および酸素プラズマ処理をすることで除去して、SiO2の周期ストライプパターンを形成した。
本例では、SiO2のエッチングに反応性イオンエッチングを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、バッファード弗酸(BHF)などの弗酸系溶液などを用いることもできる。
(2−4)GaN平滑エッチング
形成したSiO2の周期ストライプパターンをマスクとして、反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて第1のGaN系半導体層1をエッチングする。エッチング条件としては、RFパワー280W、圧力4.0Pa、塩素(Cl2)流量2.5SCCM、四塩化ケイ素(SiCl4)流量20SCCMとして、第1のGaN系半導体層1を表面から約2μm、平滑エッチングする。エッチング後、バッファード弗酸(BHF)溶液中で、マスクとして用いたSiO2をエッチングする。
本例では、GaNのエッチングに反応性イオンエッチング(RIE)法を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、反応性イオンビームエッチング(RIBE)やICPドライエッチングなどを用いることもできる。
(3)2回目成長
凹凸加工を施した基板をMOCVD成長装置に再び導入し、水素およびアンモニア雰囲気中で1075℃で5分間熱処理を行い、基板表面の清浄化を行う。基板表面の清浄化を行った後、基板温度を550℃に降温し、低温AlN中間層2aを10nm成長する。成長圧力は常圧(1.013×105Pa)で、TMAl供給量は46μmol/min、NH3供給量は5SLMとした。
低温AlN中間層2aの成長後、基板温度を1125℃に昇温し、AlGaNクラック防止層(Al組成比約60%)2bを120nm成長した。成長圧力は1.0×104Paで、TMAl+TMGa供給量は46μmol/min、NH3供給量は5SLMとした。その後、基板温度1125℃でAlGaN(Al組成比12%)層2cを8.4μm(平坦基板上の成長膜厚に換算)成長して、表面の平坦化を行った。成長圧力は1.0×104Paで、TMAl+TMGa供給量は92μmol/min、NH3供給量は3SLMとした。
本方法による成長では、ステップバンチングが抑制され、その上に成長した量子井戸構造からのフォトルミネッセンス発光は、従来例に比べ高強度であった。
(実施例2)
実施例1とフォトリソグラフィーの工程のみが異なり、他は同一である。
(2−2)フォトリソグラフィー
SiO2膜堆積後、フォトリソグラフィーにより周期ストライプにパターニングしたフォトレジストマスクを形成する。ストライプ方向はサファイア基板のM軸[1−100]方向(GaN結晶のA軸[11−20]方向)のうち、基板のオフ方向である[1−100]と60度をなす[1−100]方向(GaN結晶の[11−20]方向)である(図10(b)参照)。言い換えると、ストライプ方向は、結晶表面の原子層テラスTRの長手方向と30度をなす(γ=30度)。ストライプの幅(=溝幅)Wは14μm、周期Tは28μmである。
本方法による成長でも、ステップバンチングが抑制され、その上に成長した量子井戸構造からのフォトルミネッセンス発光は、従来例に比べ高強度であった。
(実施例3)
実施例1とフォトリソグラフィーの工程のみが異なり、他は同一である。
(2−2)フォトリソグラフィー
SiO2膜堆積後、フォトリソグラフィーにより周期ストライプにパターニングしたフォトレジストマスクをSiO2膜に形成する。ストライプ方向はサファイア基板のA軸[11−20]方向(GaN結晶のm軸[1−100]方向)のうち、基板のオフ方向である[1−100]と直交する[11−20]ではない別の[11−20]方向(GaN結晶の[1−100]方向)のA軸方向に沿った方向である(図10(c)参照)。これは基板のオフ方向である[1−100]と30度をなす方向となり、言い換えると、ストライプ方向は、結晶表面の原子層テラスTRの長手方向と60度をなす(γ=60度)。このストライプ(=溝幅)の幅Wは14μm、周期Tは28μmである。
本方法による成長でも、ステップバンチングが抑制され、その上に成長した量子井戸構造からのフォトルミネッセンス発光は、従来例に比べ高強度であった。
(実施例4)
実施例1とフォトリソグラフィーの工程のみが異なり、他は同一である。
(2−2)フォトリソグラフィー
SiO2膜堆積後、フォトリソグラフィーにより周期ストライプにパターニングしたフォトレジストマスクを形成する。ストライプ方向は、基板のオフ方向であるサファイア基板のM軸[1−100]方向(GaN結晶のa軸[11−20]方向)である(図10(d)参照)。言い換えると、ストライプ方向が、結晶表面の原子層テラスTRの長手方向と垂直となる(γ=90度)。ストライプの幅W(=溝幅)は14μm、周期Tは28μmである。
本方法による成長でも、ステップバンチングが抑制され、その上に成長した量子井戸構造からのフォトルミネッセンス発光は、従来例に比べ高強度であった。
(実施例5)
実施例1と比較して、1回目成長における下地基板及びフォトリソグラフィーの工程のみが異なり、他は同一である。
(1)1回目成長
結晶成長には、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いた。ガリウム(Ga)原料にはトリメチルガリウム(TMGa)、窒素(N)原料にはアンモニア(NH3)、アルミニウム(Al)原料にはトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。キャリアガスとして、水素(H2)および窒素(N2)を用いた。
下地基板110にはサファイアC面(0001)、0.15度A軸[11−20]方向オフ基板を用いた。基板をMOCVD成長装置に導入後、水素雰囲気中で、1050℃で5分間熱処理を行い、基板表面の清浄化を行う。その後、基板温度を475℃に降温し、GaNバッファ層111を25nm堆積する。なお、成長圧力は常圧(1.013×105Pa)であり、TMGa供給量は46μmol/min、NH3供給量は5SLMとした。GaNバッファ層111を堆積後、1075℃まで昇温し、第1のGaN系半導体(GaN)1を約4μm成長する。なお、成長圧力は常圧(1.013×105Pa)で、TMGa供給量は92μmol/min、NH3供給量は8SLMとした。
なお、本例では、結晶成長に有機金属気相成長法(MOCVD)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、分子線成長法(MBE)やハイドライド気相成長法(HVPE)などを用いることもできる。
(2−2)フォトリソグラフィー
SiO2膜堆積後、フォトリソグラフィーにより周期ストライプにパターニングしたフォトレジストマスクを形成する。ストライプ方向は、サファイア基板のA軸[11−20]方向(GaN結晶のm軸[1−100]方向)のうち、基板のオフ方向と60度をなす[11−20]方向(GaN結晶のm軸[1−100]方向)である(図10(e)参照)。言い換えると、ストライプ方向と結晶表面の原子層テラス長手方向とは30度をなす(γ=30度)。である。ストライプの幅(=溝幅)Wは14μm、周期Tは28μmである。
本方法による成長でも、ステップバンチングが抑制され、その上に成長した量子井戸構造からのフォトルミネッセンス発光は、実施例1と同様に、高強度であった。
(実施例6)
実施例5とフォトリソグラフィーの工程のみが異なり、他は同一である。
(2−2)フォトリソグラフィー
SiO2膜堆積後、フォトリソグラフィーにより周期ストライプにパターニングしたフォトレジストマスクを形成する。ストライプ方向はサファイア基板のM軸[1−100]方向(GaN結晶のA軸[11−20]方向)のうち、基板のオフ方向である[11−20]と30度をなす[1−100]方向(GaN結晶の[11−20]方向)である(図10(f)参照)。言い換えると、ストライプ方向と結晶表面の原子層テラス長手方向とが60度をなす(γ=60度)。ストライプの幅(=溝幅)Wは14μm、周期Tは28μmである。
本方法による成長でも、ステップバンチングが抑制され、その上に成長した量子井戸構造からのフォトルミネッセンス発光は、実施例1と同様に、高強度であった。
(実施例7)
実施例5とフォトリソグラフィーの工程のみが異なり、他は同一である。
(2−2)フォトリソグラフィー
SiO2膜堆積後、フォトリソグラフィーにより周期ストライプにパターニングしたフォトレジストマスクを形成する。ストライプ方向は、基板のオフ方向であるサファイア基板のA軸[11−20]方向(GaN結晶のm軸[1−100]方向)に沿った方向である(図10(g)参照)。言い換えると、ストライプの方向は、結晶表面の原子層のテラスTRの長手方向と垂直となる方向である(γ=90度)。ストライプの幅(=溝幅)Wは14μm、周期Tは28μmである。
本方法による成長でも、ステップバンチングが抑制され、その上に成長した量子井戸構造からのフォトルミネッセンス発光は、実施例1と同様に、高強度であった。
なお、いずれの実施例もオフ角θが0.15度の基板を用いたが、本発明は、この角度に限定されるものではない。オフ角θは、0.01度から15度まで、マクロステップの抑制が見出せるものと考えられる。また、実施例ではオフ方向としてサファイアA軸方向オフとM軸方向オフを示したが、オフ方向のとり方はこれに限るものでなく任意である。ストライプ方向についても同様にA軸方向、M軸方向に限られるものではない。また、溝の形状としては、有限長のストライプ構造、矩形溝も可能であり、格子状の溝なども可能である。格子状の穴も個々の小さいストライプの集まりであり、ストライプの溝は、この形状を含むものである。
なお、本発明とは異なる製造方法として、溝GRの長手方向とテラスTRの長手方向Gとを平行にして、且つ、第2のGaN系半導体層2の表面に形成されるステップの高さdが6×10−8m(60nm)以下とする製造方法も考えられる。本方法による成長では、ステップバンチングの高さが60nm以下に抑制され、その上に成長した量子井戸構造からはフォトルミネッセンス発光特性は従来例に比べ高強度となる結果を得た。ステップバンチングの発生を抑制するストライプ幅を、基板オフ角から求められることがわかる。この製造方法では、例えば、溝GRの幅Wは10μm、周期Tは20μmとすればよく、いずれも上述の例よりも小さい値のため、ステップの高さdは小さくなる。
また、本発明とは異なる製造方法として、下地基板110としてサファイアC面(0001)ジャスト基板を用いる製造方法も考えられるが、これらの製造方法は上述の方法において下地基板を変更すればよい。本方法による成長では、ステップバンチングの発生が抑制され、その上に成長した量子井戸構造からはフォトルミネッセンス発光特性は従来例よりも高い強度となった。
なお、上記では下地基板としてサファイアを用いたが、これは自立したGaN系基板とすることも考えられる。従来から、AlGaNと(In)GaNのダブルへテロ構造のInGaN系のレーザダイオードが期待されているが、GaN上のAlGaN系薄膜の成長においては格子定数差によりクラックが発生する傾向にある。また、サファイア基板などの異種基板上に高品質なAlGaNエピタキシャル層を成長させる技術は改良の余地がある。上述の方法は、GaN基板上にAlGaNエピ層を成長させることにも有用であり、GaN基板を元にAl(Ga)N基板を作製する上でも重要な方法となりうる。
1,2・・・GaN系半導体層、2a・・・・・中間層、2b・・・クラック防止層、2c・・・・結晶層、4・・・コンタクト層、5・・・下部クラッド層、6・・・下部ガイド層、7・・・活性層、8・・・キャリアブロック層、9・・・上部ガイド層、10・・・上部クラッド層、11・・・上部コンタクト層、12・・・絶縁層、13・・・上部電極、14・・・下部電極、100・・・化合物半導体基板、110・・・・下地基板、111・・・・バッファ層、G・・・長手方向、GR・・・溝、LR・・・低欠陥領域、OF・・・オリエンテーションフラット、TR・・・テラス、TTS・・・頂面、W・・・溝幅、WF・・・ウェハ。