JP2007278006A - 浴室用防水パン及びそれを用いた浴室 - Google Patents

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Abstract

【課題】汎用の発泡成形機や成形金型を用いて発泡成形することができる保温機能を有する浴室用防水パンを提供する。
【解決手段】浴槽2を載置する底板部73の周縁部に立ち上がり部74a,74dを周設した底部材7と、立ち上がり部74aの上端に連設された側壁部材8からなり、底部材7は、熱可塑性樹脂発泡体層71とその内面に積層された熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層72から構成され、側壁部材8は、熱可塑性樹脂発泡体から構成され、底板部73に載置した浴槽2のリム21aに達する高さを有し、浴室の壁パネル9を載置する壁パネル載置部83が形成され、壁パネル載置部83は、熱可塑性樹脂発泡体層81の表面に荷重分散層としてフィルム表面層82が積層されている。
【選択図】 図4

Description

本発明は、浴室用防水パン及びそれを用いた浴室に関し、更に詳しくは、保温機能を有する浴室用防水パン及びそれを用いた浴室に関する。
従来、浴室における浴槽の防水パンで保温機能を有するものとしては、ガラス繊維強化プラスチック等の熱硬化性繊維強化樹脂製表面材の裏面に合成樹脂発泡体を接着剤により一体化させて断熱層を設けることにより、防水と断熱、保温機能を兼ね備えさせたものが一般的であった。しかし、この防水パンは、熱硬化性繊維強化樹脂等の高価な樹脂が用いられているので、コスト的にも負担が大きくなる。また、近年、あらゆる材料にリサイクル性が求められているが、熱硬化性繊維強化樹脂はリサイクルが困難である。そのため、熱硬化性繊維強化樹脂を使用しない防水パンが望まれていた。
また、発泡塩化ビニル(PVC)、発泡スチロール(PS)、発泡ポリプロピレン(PP)、発泡ポリエチレン(PE)、発泡ポリウレタン、フェノールフォーム等の断熱材が一体成型された浴室用防水パンが提案されている。例えば、前記のような断熱材が一体成型された浴槽が載置される浴槽側防水パンを有し、前記浴槽側防水パンに形成された壁載置部に浴室の壁部が載置され、浴槽が前記浴槽側防水パン上に載置されたときに前記浴槽の裏面側と前記浴室の前記壁部又は前記浴槽側防水パンとで形成される内部空間から浴室外部に熱が逃げることを阻止するように前記壁部に前記と同様の断熱材を接着剤で貼り付けるか又は壁部に前記断熱材を一体成型した浴槽内温水の保温構造が提案されている(特許文献1参照。)。更に、浴槽が載置される底部と、前記底部から上方に延在した側壁とを有し、前記側壁には浴室の壁部が載置される壁載置部が形成されている防水パンであって、前記底部及び前記側壁には前記と同様の断熱材が一体成型されており、前記浴槽が前記底部に載置されたときに前記側壁が前記浴槽のリムまで延在している防水パンが提案されている(特許文献2参照。)。
しかし、浴室の壁部に断熱材を接着剤で貼り付けたり、壁部に断熱材を一体成型した保温構造では、壁部と断熱材との分離が困難で、リサイクル性に問題がある。また、前記断熱材が一体成型された防水パンの成型方法としては、(1)汎用樹脂をブロー成型して防水パンの外郭を形成し、その中空部の内部で断熱材を同時に発泡させる同時発泡・ブロー成型(スーパーブロー:登録商標)や、(2)同じくブロー成型や回転成型で形成した防水パンの中空部に、断熱材を充填した構成の成型体、あるいは(3)防水パンを真空成型で形成し、その外側あるいは内側に断熱材を裏打ち成型したハイブリッド構造の真空成型等が開示されている。しかしながら、これらスーパーブロー(登録商標)、回転成型といった成型方法には高価な特別の設備を必要とする。特に、浴槽が前記底部に載置されたときに前記側壁が前記浴槽のリムまで延在している防水パンでは、その高さは必然的に高くならざるを得ないが、このような高い背丈(深い)の形状の防水パンを製造するには、前記のようなスーパーブロー(登録商標)、回転成型といった高価な特別の設備を必要とする。従って、このような防水パンは、必然的に高価なものとならざるを得ない。
また、前記のような非汎用の高価な設備を使用せずに、製品として良好な性能を有する高い背丈の防水パンを製造するには、特別な工夫を施して製造しなければならず、成形サイクルが長くなったり、不良率が高くなったりして、工業的に有利な製品を得るのには困難が伴う。特許文献1、2には、前記のような断熱材が一体成型された防水パンを、比較的強度が高い発泡材(PS、PP、PEなど)を単独モールド成型により製造することも可能であると記載されている。しかし、浴室工事においては、必ずといってよいほど防水パン上で脚立や梯子等が使用されるが、その際の局部荷重により、前記のような比較的強度が高い発泡材(PS、PP、PEなど)を単独モールド成型した発泡体では、局部的な窪みが形成される。多くの場合には、一旦形成されたこれら窪みは、回復することがなく、防水パンの商品価値を低減したり、更には商品価値を滅失してしまう恐れがある。このため、汎用の発泡成形機や成形金型等を用い、熱硬化性繊維強化樹脂等の高価な樹脂を用いずに製造する防水パンでは、熱可塑性樹脂発泡体を構成する素材の選定に充分注意しないと実用性はない。
特開2005−2738号公報 特開2005−2739号公報
本発明は、上記のような従来の浴室用防水パンにおける問題点に鑑み、熱硬化性繊維強化樹脂等の高価な樹脂を用いず、またスーパーブロー(登録商標)、回転成型といった成型方法のような高価な特別の設備を必要とせず、汎用の発泡成形機や成形金型を用いて発泡成形することができ、優れた保温機能を有する浴室用防水パンを提供せんとするものである。
本発明に係る浴室用防水パンは、浴槽を載置する底板部の周縁部に立ち上がり部を周設した底部材と、前記底部材の立ち上がり部の上端に連設された側壁部材とからなり、前記底部材は、熱可塑性樹脂発泡体層とその少なくとも内面に積層された熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層から構成されており、前記底部材の立ち上がり部の上端に連設された側壁部材は、熱可塑性樹脂発泡体から構成されており、かつ前記パン底部の底板部に浴槽を載置したときに浴槽のリムに達する高さを有するとともに、浴室の壁パネルを載置する壁パネル載置部が形成されていることを特徴とする。
好ましい実施態様は、前記壁パネル載置部が、熱可塑性樹脂発泡体層の表面に荷重分散層が積層されて構成されている浴室用防水パンである。
前記熱可塑性樹脂発泡体の表面にフィルム層を積層したものは、総揮発性成分含有量が20000ppm以下の熱可塑性樹脂発泡体層に厚みが50〜3000μmである熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層が積層されたものが、より好ましい。
好ましい実施態様は、前記側壁部材の上端部に壁パネル載置部が形成されており、前記底部材の底板上に浴槽を載置したときに浴槽のリムが浴室の壁パネルとともに前記壁パネル載置部に載置される浴室用防水パンである。
また、好ましい実施態様は、底部材の底板上に浴槽を載置したときに、防水パンと浴槽との間に空間が形成される浴室用防水パンである。
代表的な実施態様では、前記底部材が平面視略矩形状であり、前記側壁部材が前記底部材の4辺の立ち上がり部のうちの3辺の上端に連設される平面視略コ字形であり、底部材の残りの1辺の立ち上がり部に洗い場用防水パンが連設されている。
前記の場合、より好ましい実施態様では、前記平面視略コ字形の側壁部材の3辺が互いに分割して成形された熱可塑性樹脂発泡体からなる。更に好ましい実施態様では、前記底部材の立ち上がり部の高さが、該立ち上がり部と側壁部材との合計高さの1/2以下である。
また、本発明に係る浴室は、いわゆるユニットバスと呼ばれる洗い場付き浴槽を備えるものであり、前記のような本発明の浴室用防水パンを浴槽側防水パンとして住宅のベタ基礎部又は床スラブ上に設置され、この浴槽側防水パンと、下端部が前記浴槽側防水パンの壁パネル載置部に載置された状態で取り付けられた浴室壁パネルと、前記浴槽側防水パンの底部材の立ち上がり部に連設された洗い場側防水パンと、前記浴槽側防水パンの底板部上に、リムが該浴槽側防水パンの側壁部材に当接した状態で載置された浴槽と、前記浴槽のリムと洗い場用防水パンとの間に取り付けられたエプロンと、を備える。
好ましい実施態様としては、前記エプロンに断熱材が一体に取り付けられている浴室であり、更に好ましい実施態様では、前記断熱材が熱可塑性樹脂発泡体からなる浴室。
本発明に係る浴室用防水パンは、熱可塑性樹脂発泡体からなり、浴槽が載置される底部材に浴槽のリムに達する高さの側壁部材により浴槽全体を包み込むので、浴槽内に溜めた風呂水(温水)の保温性に優れる。また、この浴室用防水パンは、浴槽が載置される底部材と、該底部材に連設される側壁部材とからなるので、前記のように浴槽全体を包み込むことができる背丈(高さ、深さ)であっても、底部材と側壁部材とのそれぞれの背丈(高さ、深さ)はそれほど大きくならない。従って、通常の熱可塑性樹脂フィルムと通常の発泡性熱可塑性樹脂を使用し、これらを汎用の発泡成形機や成形金型を用いて発泡成形することにより製造でき、極めて能率よく安価に大量生産可能である。また、底部材と側壁部材に分かれていることで、製造時のみでなく、保管、輸送及び施工時の取り扱いが容易であり、また保管のための空間も狭くて済むという利点もある。更に、浴槽が載置される底部材の表面には、フィルム表面層が形成されているので、浴室工事の際に、防水パン上で脚立や梯子等が使用されても、脚部、脚立等の脚等に集中的に負荷される局部荷重を、良好に分散し変形を防止させ得るので、前記局部荷重により、防水パンの発泡体に局部的な窪みが形成されて商品価値が低減したり滅失したりするといったことがなく、発泡体層の強度を必要以上の強度に設計する必要がなくなる。このため、軽量なフィルム表面層に加え、発泡体層の発泡倍率を大きくして軽量化することも可能となる。これにより、従来の防水パンに比し、より軽量で、安価である、性能のよい優れた防水パンを製造できる。また、前記底部材表面のフィルム表面層により熱可塑性樹脂発泡体の防水性が高められ、防水機能に優れるうえに、浴室用洗剤などに含まれる溶剤に対する耐性にも優れる。
前記壁パネル載置部を、熱可塑性樹脂発泡体層の表面に荷重分散層を積層して構成することで、該載置部の強度が大きいだけでなく、防水機能や溶剤耐性に優れる。
総揮発性成分含有量が20000ppm以下の熱可塑性樹脂発泡体層に厚みが50〜3000μmである熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層が積層されていると、浴室用洗剤によるソルベントクラックに対する耐性(溶剤耐性)が生じるので、より好ましい。
前記側壁部材の上端部に壁パネル載置部が形成され、かつ前記底部材の底板上に浴槽を載置したときに浴槽のリムが浴室の壁パネルとともに前記壁パネル載置部に載置されるように構成すると、浴室の壁パネルと浴槽のリムとの間を密封しやすくなり、浴槽と壁パンとの隙間からの漏水が抑制される。
底部材の底板上に浴槽を載置したときに、防水パンと浴槽との間に空間が形成されるように構成すると、前記空間が断熱層となり、浴槽内の風呂水(温水)の保温効果が更に向上する。
底部材が平面視略矩形状であり、前記側壁部材が前記底部材の4辺の立ち上がり部のうちの3辺の上端に連設される平面視略コ字形であり、底部材の残りの1辺の立ち上がり部に洗い場用防水パンが連設されているものでは、浴槽側防水パンと洗い場用防水パンが一体に連設されているので、浴槽のみでなく、浴室全体の保温機能も向上する。
前記平面視略コ字形の側壁部材を、3辺に分割して成形することで、側壁部材の成形がより容易になり、製造コストを低減することができるとともに、防水パンの取り扱いが更に容易となり、かつ嵩張ることなく保管のための空間も更に狭くて済む。
また、底部材の立ち上がり部の高さを、該立ち上がり部と側壁部材との合計高さの1/2以下とすることで、型内発泡成形等による底部材の成形が容易であり、特に前記のように側壁部材を分割成形するときには、側壁部材の背丈を比較的大きくして、底部材の立ち上がり部の高さをなるべく低くすることが好ましい。
また、本発明に係る浴室は、前記のような熱可塑性樹脂発泡体からなる浴槽側防水パンにより浴槽全体が覆われているので、浴槽内の風呂水(温水)の保温性能に優れ、更に前記浴槽側防止パンに洗い場側防水パンが連設されているので、浴室全体の保温性能にも優れる。また、前記浴槽側防水パンが、浴槽が載置される底部材と、浴槽のリムに達する高さの側壁部材とが熱可塑性樹脂発泡体で分割成形されているので、部材を取り扱い易く、施工性にも優れる。
更に、エプロンに断熱材を一体に取り付けることで、浴槽及び浴室全体の保温機能がより向上する。この断熱材として、熱可塑性樹脂発泡体を用いることで、軽量で優れた保温機能が発揮される。
図1〜図5は、本発明の一実施形態を示すものであり、図1は浴室用防水パン1、浴槽2、風呂蓋3、エプロン4からなるユニットバスの分解斜視図、図2は浴室用防水パン1を構成する浴槽側防水パン5の分解斜視図、図3は戸建て住宅に設けられた浴室100の部分斜視図、図4は同じく浴室の部分断面図、図5は同じく異なる方向から見た浴室の部分断面図である。
図1に示すように、浴室用防水パン1は、浴槽2が載置される浴槽側防水パン5と、浴槽2の側部に設けられる洗い場用防水パン6から構成される。更に、浴槽用防水パン5は、浴槽2が載置される底部材7と、底部材7上に連設された側壁部材8とから構成され、いずれも熱可塑性樹脂発泡体を主体として構成されている。
底部材7は、図4、図5に示すように、熱可塑性樹脂発泡体71の少なくとも表面側、即ち、浴槽2が設置される内面側に、熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層72が積層された積層体からなる。図例の底部材7は、平面視略矩形状で、浴槽2が載置される底板部73の周縁部に立ち上がり部74を周設してある。
側壁部材8は、その上端に、外周側に突出した状態でフランジ部を周設して壁パネル載置部83とし、壁パネル載置部83の上面には、図4、図5に示すように、側壁部材8を構成する熱可塑性樹脂発泡体層81の表面に、荷重分散層として、前記底部材7のフィルム表面層72と同様の熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層82が積層されている。また、側壁部材8は、図3〜図5に示すように、底部材7の立ち上がり部74の上端に一体に連設され、底板部73上に浴槽2が載置されたときに、壁パネル載置部83の上面に、浴槽2のリム21が載置される高さを有する。壁パネル載置部83の外周縁には、浴室壁パネル9の下端外縁が係止する突縁85が形成されている。図例の実施の形態では、側壁部材8は、図1、図2に示すように、平面視略コ字形で、長手方向の壁部材8Aと、その両側に連設される短手方向の1対の壁部材8B、8Cとの3部材に分割形成されている。このように、側壁部材8を分割形成すると、例えば型内発泡成形法による成形が容易になるうえに、部材の保管、輸送及び施工時の取り扱い性もよい。更に、図例の実施の形態では、長手方向の壁部材8Aは、その両端部を短手方向の壁部材8B、8C側へ屈曲延設し、該延設部8aの各端面のそれぞれに、短手方向の壁部材8B、8Cの端面を接着剤により一体に接着している。このように長手方向の壁部材8Aと短手方向の壁部材8B、8Cとの接合部を角部から外して構成することで、壁部材8Aと8B、8Cとの接合部に作用する力を軽減することができる。
壁部材8A、8B及び8Cからなる側壁部材8は、底部材7の立ち上がり部74の3辺74a、74b及び74cにまたがって、立ち上がり部74の上端部に接着剤により一体に接着される。図例の実施の形態では、底部材7と側壁部材8とは、底部材7の立ち上がり部74の上端面に設けた係合突条75と、側壁部材8の下端面に設けた係合突条86とを係合させた状態で両者を接着することで、より強固に連結している。更に、3分割された側壁部材8についても、例えば図6に示すように、長手方向の壁部材8Aの延設部8aの側端面に係合突条87を設け、短手方向の壁部材8B、8Cの側端面に係合突条88を設け、両者を係合させた状態で接着剤にて一体に接着することで、より強固に連結することができる。なお、図1〜図6に示す実施の形態では、側壁部材8の上端部にフランジ部を設けて壁パネル載置部83としているが、図7に示すように、フランジ部を設けることなく、側壁部材8の上端部を壁パネル載置部83としてもよい。
次に、上記のような浴室用防水パン1を用いた浴室100の施工の要領を説明する。先ず、浴槽2が載置される浴槽側防水パン5には、その下面に、高さ調整可能な複数の架台10が取り付けられ、架台10を介して戸建て住宅(木造住宅)のベタ基礎部やマンションの床スラブなどの床11の上に水平に設置される。通常、浴室100は、図3、図4に示すように、建物の外壁Wに近接して設けられる。床11上に設置された浴槽側防水パン5には、浴室100の壁パネル9が、その下端を浴槽側防水パン5の壁パネル載置部83上に載置した状態で取り付けられる。図示した例では、浴槽側防水パン5の周囲の3面に壁パネル9が取り付けられる。次いで、浴槽側防水パン5の底板部73上に、浴槽側防水パン5の内面との間に空間Sが形成された状態で浴槽2が設置される。浴槽2は、その上部開口縁の周囲3辺のリム21a、21b、21cが、浴槽側防水パン5の壁パネル載置部83上に、壁パネル9と密着した状態に設置される。また、浴槽側防水パン5における壁パネル9に囲まれていない解放された側には、底部材7の立ち上がり部74dの上端に洗い場側防水パン6の側端部が密着して設置され、洗い場側防水パン6と浴槽2のリム21dの間にはエプロン4が装着される。洗い場側防水パン6には、エプロン4との接続を良好にして防水機能を発揮させるためのエプロン嵌合部が形成されているが、図示を省略している。また、エプロン4の内面には、熱可塑性樹脂発泡体などの断熱材41が一体に設けられている。なお、図示していないが、前記浴槽側防水パン5と壁パネル9の間には壁パネル9と浴槽2のリム21との接合部にそって、漏水を防止するための防水コーキングが形成され、また浴槽側防水パン5と洗い場側防水パン6の接合部にも、洗い場側防水パン5に沿って、流水を防止するための防水コーキングが形成される。また、浴槽側防水パン5上に設置された浴槽2の下面には、排水管12が取り付けられ、浴槽側防水パン5の底板部73を貫通して底板部73の下面に設けた排水トラップ13を介して、浴槽2内の水を排水可能としてある。なお、浴槽2の開口部に風呂蓋3を載置すれば、浴槽内の温水の保温効果が高まる。
以下、浴室用防水パン1について、更に詳細に説明する。浴室用防水パン1は、浴槽側防水パン5と洗い場側防水パン6とからなる。浴槽側防水パン5は、底部材7と側壁部材8とからなり、底部材7は、熱可塑性樹脂発泡体71の表面に熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層72を積層した複合体からなる。また、側壁部材8の壁パネル載置部83も同様の複合体から構成することができる。更に、洗い場側防水パン6及びエプロン4を、前記と同様の熱可塑性樹脂発泡体71の表面に熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層72を積層した複合体から構成してもよい。
本発明の防水パンを構成する前記熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層は、厚みが50〜3000μm、好ましくは、75〜2000μmであり、後述する熱可塑性樹脂発泡体層の少なくとも片側の表面に積層される。フィルムの厚さが50μm以上であれば、強度、剛性、耐熱性などが十分に得られ、3000μm以下であれば、良好な成形性が得られる。
フィルム表面層を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定はないが、具体的には、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が好ましい。
スチレン系樹脂とは、単量体成分として、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどのスチレン誘導体を60重量%以上、好ましくは70重量%以上含む樹脂である。ポリスチレン系樹脂は、スチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず、他の単量体と共重合した共重合体でもよい。例えば、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたはゴムラテックスを添加して重合させた、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)もポリスチレン系樹脂に包含される。このハイインパクトポリスチレンとしては公知のものが使用でき、ゴム成分の含有量は1〜15重量%が好ましい。
ポリスチレン系樹脂の製造に使用できるスチレンまたはその誘導体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル化合物、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレートなどのアルキルメタアクリレート、無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその酸無水物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
上記単量体を使用したポリスチレン系樹脂の具体例としては、たとえばポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)で代表されるスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS)、などが挙げられる。このうちでは、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS)などがその汎用性、コストあるいは耐衝撃性の面から好ましい。耐熱のより高いポリスチレン系樹脂としては、スチレンとカルボキシル基含有モノマーとの共重合体が挙げられ、たとえばスチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体が挙げられる。また、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、あるいはスチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(例えば、(株)カネカ製、カネパールのHMグレード)等も挙げられる。こうしたα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体については、例えば特開昭59−62604号公報等に開示されている。
アクリル系樹脂としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸等を単量体成分とする樹脂である。
また、防水パンの熱可塑性樹脂発泡体層の厚みは、浴槽の大きさ、重量等により異なるので、一概に限定できないが、例えば、5〜200mmが好ましく、10〜100mmがより好ましく、30〜80mmが最も好ましい。5mm以上であれば、断熱性能が得られる傾向にあり、200mm以下であれば嵩張ることなく十分な断熱性能が得られ、また発泡成形時の成形サイクルが長くなりすぎるといったこともない。
前記熱可塑性樹脂発泡体層に用いられる合成樹脂発泡体としては、特に限定はなく、スチレン系樹脂発泡体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂発泡体、アクリル系樹脂発泡体、マクロモノマーを含有する単量体組成物を重合させてなる熱可塑性樹脂発泡体等が挙げられる。
また、浴室用防水パンにおいては、その清掃のため日常的に、浴室用洗剤等の専用洗剤が使用される。しかも、これらは原液のまま使用されることも多い。浴室用防水パンでは、浴室用洗剤の原液を用いたソルベントクラックに対する耐性を見るための過酷なテストに合格した防水パンのみが採用される。従って、このソルベントクラックに耐えることも極めて重要である。このため、熱可塑性樹脂発泡体層としては、総揮発性成分含有量が20000ppm以下の熱可塑性樹脂発泡体層を用いることが好ましい。これにより、浴室用防水パンにおいて、洗剤によるソルベントクラックに対する耐性が生じ、工業的に実用性のある防水パンが製造できる。
本発明で熱可塑性樹脂発泡体中に含有する総揮発性成分量は、20000ppm以下であることがソルベントクラックを発生させないために好ましい。総揮発性成分量は、10000ppm以下がより好ましく、5000ppm以下が更に好ましく、2500ppm以下が特に好ましい。熱可塑性樹脂発泡体中に含有する総揮発性成分とは、主として残存単量体、溶剤等の揮発性成分を言う。ポリスチレン系樹脂発泡体を例として説明すれば、ポリスチレン系樹脂発泡体中に含有される揮発性成分としては、残存スチレン単量体、溶剤等の揮発性成分が存在する。残存スチレン単量体とは、文字通り、樹脂中に残存するスチレン単量体をいう。また溶剤とは、シクロヘキサンや、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素であって、これらは単独又は2種以上組み合わせて使用される。これら溶剤は、発泡助剤や可塑剤として、あるいは発泡剤の樹脂への浸透を促進するために、発泡性ポリスチレン系樹脂中に含有させたものである。これらの、総揮発性成分量の具体的測定方法としては、熱可塑性樹脂発泡体を塩化メチレンに溶解し、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−14B(カラム充填剤:PEG20M Chromosorb WAW、カラム温度:110℃、キャリアガス:ヘリウム)を用いて、内部標準法(内部標準:シクロペンタノール)にて熱可塑性樹脂発泡体中に含まれる前記揮発性成分量を定量する。
好ましい熱可塑性樹脂発泡体としては、スチレン系樹脂発泡体、アクリル系樹脂発泡体、マクロモノマーを含有する単量体組成物を重合させてなる熱可塑性樹脂発泡体等が挙げられる。特に、マクロモノマーを含有した単量体組成物を重合させ、発泡剤を含浸して得られる発泡性熱可塑性樹脂を発泡させて得られた、ゲル分率が、1重量%以上40重量%以下での発泡体は、上述した局部荷重に対する抵抗力が著しく大きい。さらに、このマクロモノマーを含有させた熱可塑性樹脂発泡体は、ソルベントクラックに対する耐性が極めて良好であることから、本発明の浴室用防水パンに用いる熱可塑性樹脂発泡体層として最適の素材である。
スチレン系樹脂発泡体とは、前記フィルム表面層と同様のスチレン系樹脂を発泡させて得られたものである。ポリスチレン系樹脂の分子量は限定されるものではないが、好ましくは10〜50万、更に好ましくは25〜35万程度である。
スチレン系単量体(及び必要に応じてその他の単量体)を重合する方法は特に限定されず、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などを採用することができる。
前記ポリスチレン系樹脂に発泡剤を含ませて発泡性ポリスチレン系樹脂とする。発泡剤を含ませる方法としては、ポリスチレン系樹脂を水性媒体中に懸濁させ、発泡剤を圧入含浸させる方法が挙げられる。または、押し出し機を用いてポリスチレン系樹脂と発泡剤を溶融混合してもよい。また、ポリスチレン系樹脂を懸濁重合により製造する場合は、発泡剤を重合工程中、または重合工程終了後に添加して、ポリスチレン系樹脂中に発泡剤を含ませることもできる。
前記発泡性ポリスチレン系樹脂は粒子状であることが好ましい。粒子状の発泡性ポリスチレン系樹脂は、例えば、懸沸重合によりポリスチレン系樹脂を製造する場合に、該重合の途中、あるいは重合後に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。しかし、その他の重合法(例えば塊状重合法)で得られるポリスチレン系樹脂を、ベレット化等して粒状として、これに発泡剤を含浸等することで粒子状の発泡性ポリスチレン系樹脂を得ることもできる。粒子状の発泡性ポリスチレン系樹脂の粒径は、好ましくは0.2〜4mm程度、より好ましくは0.5〜2mm程度である。
前記粒子状の発泡性ポリスチレン系樹脂は、予備発泡させずに発泡成形してもよいが、蒸気等により加熱して予備発泡させてから発泡成形すると、良好なスチレン系樹脂発泡体を得ることができる。
次に、本発明で使用できるアクリル系樹脂発泡体について簡単に説明する。アクリル系樹脂発泡体は、一般的には、前記フィルム表面層と同様のアクリル系樹脂に発泡剤を含有させたもの(以下、「発泡性アクリル系樹脂」とも称する)を発泡成形して製造することができる。発泡性アクリル系樹脂を発泡成形する方法としては、水蒸気等の熱媒体を用いて型内発泡させる方法、または押出発泡させる方法など、任意の方法を採用できる。
また、本発明で特に良好に使用される樹脂は、マクロモノマーを含有した単量体組成物を重合させてなる熱可塑性樹脂に発泡剤を含浸して得られる発泡性熱可塑性樹脂を発泡させて得られた発泡体のゲル分率が1重量%〜40重量%である熱可塑性樹脂発泡体である。これらについては以下に詳しく説明する。
本発明で用いるマクロモノマーとは、重合体の末端に重合性の反応基を有する高分子量のモノマーであり、数平均分子量に特に制約はないが、1000〜200000の範囲が好ましい。更に好ましくは、100000以下であり、最も好ましくは40000以下である。分子量が200000より大きいと、マクロモノマーの粘度が高くなり、ハンドリングが困難になる傾向がある。
本発明において用いられるマクロモノマーは、得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡させて得られる発泡体のゲル分率が1重量%〜40重量%が好ましく、具体的には、マクロモノマーの少なくとも2つの分子末端に重合性の反応基を各々1個以上有しているものを使用することが好ましい。ゲル分率が1重量%〜40重量%となるのであれば、重合性の反応基を有する分子末端を1個有するマクロモノマーが混在していてもよい。例えば、重合性の反応基を2つの分子末端にそれぞれ1個有するマクロモノマーの製造過程で重合性の反応基を有する分子末端を1個有するマクロモノマーが混在する場合があるが、混在したまま使用してもよい。
マクロモノマーの分子末端に存在する重合性の反応基は、特に限定されず、例えば、アリル基、ビニルシリル基、ビニルエーテル基、ジシクロペンタジエニル基等が挙げられるが、他の単量体との共重合反応性から、少なくとも一つが炭素−炭素二重結合であることが好ましく、更には下記一般式(1)
−OC(O)C(R)=CH2・・・・・・・・・・・・・(1)
で表される基が好ましい。
式中、Rは水素または炭素数1以上20以下の有機基であればとくに限定はなく、中でも、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2以上19以下の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CNの中から選ばれる基が好ましく、更に好ましくは−H、−CH3である。
本発明で使われるマクロモノマーの主鎖である重合体の製造方法は、ラジカル重合によって製造されることが好ましい。ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
「制御ラジカル重合法」は、更に、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合を行うことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
「リビングラジカル重合法」は、WO99/65963号パンフレットに記載されるように、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(例えば、Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、本発明において、上記の如き特定の官能基を有するマクロモノマーの製造方法としてはより好ましい重合法である。
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、「リビングラジカル重合法」の本来の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するマクロモノマーの製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては、例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁、サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号パンフレット、WO97/18247号パンフレット、WO98/01480号パンフレット,WO98/40415号パンフレット、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報などに記載の方法が挙げられる。
本発明におけるマクロモノマーの製法として、どの方法を使用するかは特に制約はないが、通常、制御ラジカル重合法によって、発泡体のゲル分率が1重量%〜40重量%となる、少なくとも2つの分子末端に重合性の反応基を各々1個以上有しているマクロモノマーを製造することが好ましく、更に制御の容易さなどからリビングラジカル重合法が好ましく用いられ、原子移動ラジカル重合法が最も好ましい。
マクロモノマーの重合体主鎖を構成するモノマーとしては、特に制約はなく、各種のものを用いることができる。例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸−n−ヘキシル等のアクリル酸系単量体;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル等のメタクリル酸系単量体;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系単量体;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数を用いて共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、マクロモノマーを構成する単量体成分としては、スチレン系単量体、アクリル酸系単量体、メタクリル酸系単量体が好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体であり、更に好ましくは、アクリル酸エステル単量体であり、特に好ましくはアクリル酸エチル、アクリル酸ブチルであり、最も好ましくはアクリル酸ブチルである。本発明においては、上記のモノマーを上記記載外のモノマーと共重合させても構わなく、その際は、上記のモノマーが40重量%以上含まれていることが好ましい。
マクロモノマーのガラス転移温度は、−20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が−20℃より高いと、得られた熱可塑性樹脂の柔軟性が低下するため、発泡に時間がかかったり、発泡粒子を融着させるために成形時の蒸気圧が高くなる傾向がある。
本発明でマクロモノマーは、分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと称す場合がある)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、好ましくは1.8未満であることが好ましく、さらに好ましくは1.6以下であり、特に好ましくは1.4以下である。本発明におけるGPC測定の際には、通常は、クロロホルム又はテトラヒドロフラン等を移動相として、ポリスチレンゲルカラム等を使用し、分子量の値はポリスチレン換算値等で求めている。分子量分布が広いマクロモノマーは、共重合反応の進行が不均一になるおそれがあり、未反応のマクロモノマーが残存する可能性がある。
本発明における熱可塑性樹脂を構成する、単量体組成物中のマクロモノマー量は1重量〜20重量%であることが好ましい。さらに好ましくは2重量%〜15重量%であり、特に好ましくは4重量%〜10重量%である。1重量%未満では耐割れ性向上効果が小さい傾向があり、20重量%を超えると発泡に時間がかかる傾向がある。
本発明の熱可塑性樹脂を構成する単量体組成物において、マクロモノマー以外の単量体成分としては特に限定はないが、ビニル系単量体を用いることが好ましい。ビニル系単量体としては、スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル酸系単量体、メタクリル酸系単量体等が挙げられる。また、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、マレイミド系モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマーなどの各種単量体を本発明の趣旨を外さない範囲で共重合させてもよい。これらビニル系単量体の中では、スチレン系単量体、或いは、スチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体の混合物を用いることが好ましい。シアン化ビニル系単量体を使用する場合、その量は、単量体組成物中10重量%〜30重量%であることが好ましく、更に好ましくは12重量%〜25重量%である。10重量%未満だとシアン化ビニル系単量体を使用する効果がでにくい傾向がある。30重量%を超えると発泡に時間がかかりすぎる傾向がある。
本発明においては、単量体組成物を重合させ熱可塑性樹脂を得る。その重合方法は特に限定はないが、単量体組成物を水性重合することが好ましく、更には、乳化重合、懸濁重合、微細懸濁重合から選ばれる少なくとも一つの重合方法で重合させることが好ましい。
本発明に使用される懸濁安定剤としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、ピロリン酸マグネシウム、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト等の難溶性無機塩等を用いることができ、また界面活性剤を併用してもよい。なお,難溶性無機塩を用いる場合は、アルキルスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン性界面活性剤を併用するのが好ましい。
本発明において単量体組成物を熱可塑性樹脂に重合する場合に使用する重合開始剤としては、一般に熱可塑性重合体の製造に用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。
本発明における前記単量体組成物の重合においては、更に、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等メルカプタン系の連鎖移動剤やアクリロニトリル−スチレン系樹脂の重合に一般的に用いられるα−メチルスチレンダイマー等を重合調整剤として使用してもよい。α−メチルスチレンダイマーを用いると発泡体の臭気が低減されるため好ましい。
また、本発明の発泡性熱可塑性樹脂には、発泡性等を調整するために可塑剤を添加してもよい。慣用の可塑剤が使用できるが、発泡体からの揮発性有機成分の放散を少なくする必要がある場合には沸点の高い可塑剤もしくは常温で沸点の存在しない可塑剤を使用した方がよい。具体的にはジオクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル、ジブチルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソブチルアジペート等の脂肪酸エステル、やし油、パーム核油、パーム油、菜種油、菜種硬化分別油、硬化大豆油等のグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらは単独もしくは2種以上混合して用いられる。
さらに、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、導電化剤、粒度分布調整剤等の一般的に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造に使用されている添加剤を適宜添加することができる。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る一つの具体的な方法としては、マクロモノマーとスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体を重合開始剤及びその他の添加剤の存在下で水性媒体中に分散させた後に重合反応を開始し、重合中に発泡剤を添加するか、又は重合後に発泡剤を含浸させる方法等が挙げられる。
以上の熱可塑性樹脂を発泡させて熱可塑性樹脂発泡体層を得るが、発泡させるために使用する発泡剤としては、一般によく知られているプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類およびシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロブタン等の脂環族炭化水素さらにはトリフロロモノクロロエタン、ジフロロジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等の沸点が80℃以下の揮発性発泡剤が使用できる。また、これらは、単独もしくは2種以上を併せて用いることができる。成形時の収縮・変形を少なくするには発泡剤としてブタン及び/又はペンタンを用いるのが好ましく、ブタンが特に好ましい。
発泡剤は、通常、発泡性熱可塑性樹脂粒子の発泡剤含有量が、好ましくは3重量%〜15重量%になる程度の量が供給される。更に好ましくは4重量%〜10重量%である。3重量%未満では、十分な発泡性が得られず、15重量%を越えると発泡成形時の収縮、変形が大きくなる。
以上のようにして得られた、熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率は、特に限定されないが、3〜200倍程度が好ましく、更に好ましくは10〜60倍程度、最も好ましくは20〜40倍程度である。発泡倍率が3倍程度未満であると重量が重くなると共に、断熱性能に欠ける傾向となり、200倍程度を越えると、重量は軽くなるが、強度的に劣る傾向となる。
本発明の防水パンは、フィルム表面層と熱可塑性樹脂発泡体層を積層してなる。フィルム表面層と熱可塑性樹脂発泡体層を接着する方法は、接着剤を用いててもよいが、熱融着によって一体成形することが好ましい。さらに好ましくは、フィルム表面層を真空成形した後、成形金型内に装填し、成形金型内に発泡性合成樹脂粒子を充填し、加熱、冷却することによりフィルム表面層と熱可塑性樹脂発泡体層とを一体成形する。具体的には、フィルム表面層を、真空成形等の手段により所定の形状に成形し、成形したフィルム表面層を金型内に設置し、フィルム表面層の裏面側に発泡性合成樹脂粒子を導入した後、例えば蒸気等の加熱手段で加熱して、発泡性合成樹脂粒子相互を発泡・融着させると共に、発泡性合成樹脂粒子とフィルム表面層の裏面とを熱融着させて一体化させた後、冷却して金型より取り出す。なお、壁パネル載置部83の表面に積層する荷重分散層としては、上記のようなフィルムの他に、金属板や異形押出品などを使用することもできる。
前記フィルム表面層と熱可塑性樹脂発泡体層との積層体は、そのまま防水パンとして用いることもできる。しかし、熱可塑性樹脂発泡体層は、防水パンのフィルム表面層の裏面に設けられるので、使用者の目に触れにくいとはいえ、熱可塑性樹脂発泡体層の表面(すなわち、フィルム表面層とは逆の面)にカビが発生することが考えられる。カビ等が発生すると、美観上及び衛生上好ましくないことから、抗菌剤及び/又は防カビ剤を、熱可塑性樹脂発泡体層の表面または内部に存在させることも考慮される。
抗菌剤及び/又は防カビ剤を、熱可塑性樹脂発泡体層の内部或いは表面に存在させるには、発泡性合成樹脂の粒子にあらかじめ添加ないしは塗布してもよいし、例えば型内発泡成形により該防水パンを成形した後、熱可塑性樹脂発泡体層の表面に塗布ないしは噴霧塗布等してもよく、その添加、塗布方法は問わない。
これら抗菌剤及び/又は防カビ剤は、熱可塑性樹脂発泡体層及びフィルム表面層などを侵すものでないかぎり制限なく用いることができる。抗菌剤としては、例えば、セラミック系抗菌剤、銀系抗菌剤、カルシウム系セラミックス、非晶質リン酸カルシウム等が挙げられる。また、一方、防カビ剤としては、例えば、イミダゾール系防カビ剤、ヨード系防カビ剤、トリアゾール系防カビ剤、チアベンダゾール系防カビ剤が一般的であるが、抗菌性能及び防カビ性能を発揮する薬剤であれば特に制限されず使用できる。
本発明にかかる防水パンを使用した浴室100では、前記熱可塑性樹脂発泡体とフィルム表面層からなる積層体により、浴槽側防水パン5の底部材7だけでなく、側壁部材8、更には洗い場側防水パン6、エプロン4も、この積層体にて構成することができる。この浴室100は、浴槽2内の温水の熱が浴室1の外側に放熱されることを防ぐことで保温性に優れるだけでなく、浴槽2内の温水の熱によって浴室100を効率的に暖め、浴室暖房等の付帯設備が不要又は使用頻度の軽減につながる。また、浴室用防水パン1の浴槽側防水パン5、洗い場側防水パン6、更にはエプロン4を構成する熱可塑性樹脂発泡体の発泡倍率及び厚みを調整することにより、浴槽2内に保水した温水の熱が浴槽2付近に滞留し、浴槽2自体の保温を向上させることもできる。
また、浴槽側防水パン5を、底部材7と側壁部材8とに分割成形することで、浴槽2全体を包み込むことができる高さの防水パンであっても、通常の熱可塑性樹脂フィルムと通常の発泡性熱可塑性樹脂を使用し、これらを汎用の発泡成形機や成形金型を用いて発泡成形することにより製造でき、極めて能率よく安価に大量生産可能である。また、浴槽側防水パン5を、底部材7と側壁部材8に分割したので、製造時のみでなく、保管、輸送及び施工時の取り扱いが容易であり、また保管のための空間も狭くて済む。更に、浴槽2が載置される底部材7の熱可塑性樹脂発泡体71の表面にフィルム表面層72が存在するので、浴室工事の際に脚部、脚立等の脚等に集中的に負荷される局部荷重を良好に分散し変形を防止でき、前記局部荷重により、防水パンの発泡体に局部的な窪みが形成されて商品価値が低減したり滅失したりするといったことがない。しかも、前記フィルム表面層71により防水パンの防水性が高められ、防水機能に優れる。更に、総揮発性成分含有量が20000ppm以下の熱可塑性樹脂発泡体層に厚みが50〜3000μmである熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層を積層積層したものでは、浴室用洗剤などに含まれる溶剤(ソルベントクラック)に対する耐性にも極めて優れる。また、異なる高さの底部材7及び側壁部材8を適宜組み合わせることで、様々な高さの防水パンを構成することができる。
ユニットバスの分解斜視図。 浴槽側防水パンの分解斜視図。 戸建て住宅(木造住宅)に設けられた浴室の部分斜視図。 浴室の部分断面図。 異なる方向から見た浴室の部分断面図。 浴槽側防水パンの他の実施形態を示す部分斜視図。 浴槽側防水パンの他の実施形態を示す浴室の部分断面図。
符号の説明
1 浴室用防水パン
2 浴槽
3 風呂蓋
4 エプロン
5 浴槽側防水パン
6 洗い場側防水パン
7 浴槽側防水パンの底部材
8 浴槽側防水パンの側壁部材
9 浴室壁パネル
10 架台
11 床
12 排水管
13 排水トラップ
21 浴槽のリム
41 エプロンの断熱材
71 熱可塑性樹脂発泡体層
72 フィルム表面層
73 底板部
74 立ち上がり部
75 係合突条
81 熱可塑性樹脂発泡体層
82 フィルム表面層
83 壁パネル載置部
85 突縁
86〜88 係合突条

Claims (11)

  1. 浴槽を載置する底板部の周縁部に立ち上がり部を周設した底部材と、前記底部材の立ち上がり部の上端に連設された側壁部材とからなり、前記底部材は、熱可塑性樹脂発泡体層とその少なくとも内面に積層された熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層から構成されており、前記底部材の立ち上がり部の上端に連設された側壁部材は、熱可塑性樹脂発泡体から構成されており、かつ前記パン底部の底板部に浴槽を載置したときに浴槽のリムに達する高さを有するとともに、浴室の壁パネルを載置する壁パネル載置部が形成されていることを特徴とする浴室用防水パン。
  2. 前記壁パネル載置部が、熱可塑性樹脂発泡体層の表面に荷重分散層が積層されて構成されている請求項1に記載の浴室用防水パン。
  3. 総揮発性成分含有量が20000ppm以下の熱可塑性樹脂発泡体層に、厚みが50〜3000μmである熱可塑性樹脂からなるフィルム表面層が積層されてなる請求項1又は2に記載の浴室用防水パン。
  4. 前記側壁部材の上端部に壁パネル載置部が形成されており、前記底部材の底板上に浴槽を載置したときに浴槽のリムが浴室の壁パネルとともに前記壁パネル載置部に載置される請求項1〜3のいずれかに記載の浴室用防水パン。
  5. 底部材の底板上に浴槽を載置したときに、防水パンと浴槽との間に空間が形成される請求項1〜4のいずれかに記載の浴室用防水パン。
  6. 前記底部材が平面視略矩形状であり、前記側壁部材が前記底部材の4辺の立ち上がり部のうちの3辺の上端に連設される平面視略コ字形であり、底部材の残りの1辺の立ち上がり部に洗い場用防水パンが連設されている請求項1〜5のいずれかに記載の浴室用防水パン。
  7. 前記平面視略コ字形の側壁部材の3辺が互いに分割して成形された熱可塑性樹脂発泡体からなる請求項6記載の浴室用防水パン。
  8. 前記底部材の立ち上がり部の高さが、該立ち上がり部と側壁部材との合計高さの1/2以下である請求項1〜7のいずれかに記載の浴室用防水パン。
  9. 浴槽側防水パンとして住宅のベタ基礎部又は床スラブ上に設置された請求項1〜8のいずれかに記載の防水パンと、下端部が前記浴槽側防水パンの壁パネル載置部に載置された状態で取り付けられた浴室壁パネルと、前記浴槽側防水パンの底部材の立ち上がり部に連設された洗い場側防水パンと、前記浴槽側防水パンの底板部上に、リムが該浴槽側防水パンの側壁部材に当接した状態で載置された浴槽と、前記浴槽のリムと洗い場用防水パンとの間に取り付けられたエプロンと、を備える浴室。
  10. 前記エプロンに断熱材が一体に取り付けられている請求項9記載の浴室。
  11. 前記断熱材が熱可塑性樹脂発泡体からなる請求項10記載の浴室。
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