JP6343485B2 - ポリスチレン系発泡成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
ポリスチレン発泡成形体は、種々の性質を有しており、例えば、その性質として、優れた断熱性がある。優れた断熱性は、省エネルギー化の観点から、種々の用途で断熱材として利用されている。具体的な用途としては、温水タンク用保温材、配管用保温材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、ソーラーシステム用保温材、給湯器保温材等が挙げられる。これら用途では、発泡成形体が長期間使用されるため、長期加熱時においても、変形と断熱性の低下の少ない発泡成形体が要望されている。
耐熱性を向上させる技術として、特許第5080226号公報(特許文献1)に記載された技術が知られている。この技術では、発泡性粒子の原料として、スチレン以外に、α−メチルスチレンと架橋性単量体を使用することで、得られた発泡成形体の耐熱性が向上するとされている。
(1)GPC測定において、表面のZ平均分子量(Mz)が115万〜250万であり、全体のMzが85万〜110万であり、
(2)平均気泡径が150〜300μmであり、
(3)隣接する発泡粒子同士の複数の最外壁から構成される粒界壁の厚さが2.0〜10.0μmであり、
前記ポリスチレン系発泡成形体が、0.035W/mk以下の熱伝導率を有し、かつ断熱材として用いられることを特徴とするポリスチレン系発泡成形体が提供される。
発泡性粒子と脂肪酸グリセライドとを混合することにより、前記脂肪酸グリセライドで被覆された発泡性粒子を得る工程と、
前記脂肪酸グリセライドで被覆された発泡性粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程と、
前記予備発泡粒子を発泡成形することによりポリスチレン系発泡成形体を得る工程とを備え、
前記発泡性粒子が、GPC測定において、表面のZ平均分子量(Mz)が115万〜250万であり、全体のMzが85万〜110万であり、
前記脂肪酸グリセライドが、炭素数5〜20の脂肪酸のグリセライド(但し、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを除く)であり、かつ前記発泡性粒子100質量部に対して0.05〜0.5質量部混合される
ことを特徴とするポリスチレン系発泡成形体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記ポリスチレン系発泡成形体を、短時間で成形するための製造方法を提供できる。
(1)全体のMzと表面のMzとの比が、1:1.03〜2.90である
(2)粒界壁の厚さと平均気泡径との比が、1:15〜150である
のいずれかの構成を更に備えることで、より耐熱性と断熱性に優れたポリスチレン系発泡成形体を提供できる。
また更に、発泡性粒子が、発泡剤を含浸させた樹脂粒子であり、樹脂粒子が、スチレン、α−メチルスチレン及び架橋剤を含む単量体混合物に由来する場合、より短時間でポリスチレン系発泡成形体を成形するための製造方法を提供できる。
本発明のポリスチレン系発泡成形体(以下、単に発泡成形体とも称する)は、スチレン系樹脂を基材樹脂とする融着した複数の発泡粒子(以下、融着発泡粒子とも称する)から構成される。
融着発泡粒子は、特定の範囲の表面と全体のZ平均分子量(Mz)、平均気泡径及び隣接する融着発泡粒子同士の複数の最外壁から構成される粒界壁の厚さを有する。
融着発泡粒子は、表面のMzが115万〜250万であり、全体のMzが85万〜110万であるスチレン系樹脂から構成される。
表面のMzが115万未満の場合、成形体強度が低下することがある。表面のMzが250万より大きい場合、成形性が低下することがある。表面のMzは120万〜230万が好ましく、150万〜230万がより好ましい。
全体のMzが85万未満の場合、成形体強度が低下することがある。全体のMzが110万より大きい場合、発泡性が低下し、軽量性に劣ることがある。全体のMzは90万〜110万が好ましく、95万〜110万がより好ましい。
全体のMzと表面のMzとの比は、1:1.03〜2.90であることが好ましい。
融着発泡粒子を構成する気泡の平均径(平均気泡径)は、150〜300μmである。平均気泡径が150μm未満の場合、断熱性が低下することがある。平均気泡径が300μmより大きい場合、成形体強度が低下することがある。平均気泡径は180〜280μmが好ましく、200〜280μmがより好ましい。
粒界壁は、隣接する融着発泡粒子同士の粒界を区画する複数の最外壁から構成される。粒界壁の厚さは2.0〜10.0μmである。粒径壁の厚さが2.0μm未満の場合、成形品強度が低下することがある。粒径壁の厚さが10.0μmより大きい場合、成形性が低下することがある。粒径壁の厚さは2.0〜9.0μmが好ましく、3.0〜9.0μmがより好ましい。
粒界壁の厚さは、平均気泡径と特定の関係を有していることが好ましい。具体的には、粒界壁の厚さと平均気泡径との比が、1:15〜150であることが好ましい。平均気泡径の比が15未満の場合、断熱性が低下することがある。平均気泡径の比が150より大きい場合、成形体強度が低下することがある。粒界壁の厚さと平均気泡径との比は1:15〜140がより好ましく、1:20〜140が更に好ましい。
発泡成形体を構成する基材樹脂は、スチレン系樹脂である。スチレン系樹脂は、上記Mz、平均気泡径及び粒界壁の厚さの範囲を達成するために妨げとならない樹脂であれば特に限定されない。スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体、もしくは、これらの単量体の混合物に由来する樹脂が挙げられる。スチレン系樹脂は、耐熱性及び断熱性を更に向上させる観点から、スチレンとα−メチルスチレンとの混合物に由来する樹脂であることが好ましい。
スチレン系樹脂には、架橋剤に由来する成分が含まれていてもよい。架橋剤に由来する成分を融着発泡粒子の表面に存在させれば、表面のMzを大きくすることができる。
基材樹脂には必要に応じて、樹脂以外に他の添加剤が含まれていてもよい。他の添加剤としては、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、充填剤、着色剤、耐候剤、老化防止剤、滑剤、防曇剤、香料等が挙げられる。
可塑剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素等、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソブチル等のフタル酸エステル、流動パラフィン、ホワイトオイル等の高沸点化合物が挙げられる。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの有機過酸化物が挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、グリセリン、シリコンオイル等が挙げられる。
滑剤としてはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド化合物、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアミド化合物、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、ホワイトオイル等が挙げられる。
発泡成形体の密度は、0.01〜0.40g/cm3の範囲であることが好ましい。発泡成形体の密度が0.40cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。一方、密度が0.01g/cm3より小さい場合、発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の耐熱性及び断熱性が低下することがある。
発泡成形体は、耐熱性及び断熱性の要求される各種用途に使用できる。例えば、温水タンク用保温材、配管用保温材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、ソーラーシステム用保温材、給湯器保温材、食品や工業製品等の容器、魚や農産物等の梱包材、床断熱用の断熱材、盛土材、畳の芯材等に使用できる。発泡成形体は、これら使用用途に応じた形状をとり得る。
上記貯湯タンクでは、貯められた高温水の温度の低下を抑制するために、貯湯部の周りを断熱材で覆っている。本発明の発泡成形体は、高い断熱性及び、高温水に長期間接しても寸法が変化しない耐熱性を有しているため、この断熱材に有用に使用できる。
発泡成形体の製造方法は、上記Mz、平均気泡径及び粒界壁の厚さの範囲を達成しうる方法であれば、特に限定されない。その一方法として、
(i)発泡性粒子と脂肪酸グリセライドとを混合することにより、脂肪酸グリセライドで被覆された発泡性粒子を得る工程(発泡性粒子被覆工程)と、
(ii)脂肪酸グリセライドで被覆された発泡性粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程(予備発泡工程)と、
(iii)予備発泡粒子を発泡成形することにより発泡成形体を得る工程(発泡成形工程)と
を備えた発泡成形体の製造方法が挙げられる。この方法では、上記Mz、平均気泡径及び粒界壁の厚さの範囲の発泡成形体を得るために、発泡性粒子は、GPC測定において、表面のMzが115万〜250万であり、全体のMzが85万〜110万である粒子を使用し、脂肪酸グリセライドは、炭素数5〜20の脂肪酸のグリセライドが使用される。
発明者は、脂肪酸グリセライドが、予備発泡時に予備発泡粒子の表面に位置する気泡を破ることで、発泡成形時の予備発泡粒子同士の融着を促進し、その結果として、成形時間を短縮することが可能になったと考えている。脂肪酸グリセライドは、発泡性粒子の一部を被覆していてもよく、全面を被覆していてもよい。
脂肪酸グリセライド中の脂肪酸の炭素数が5未満の場合、断熱性が低下しやすくなることがある。炭素数が20より大きい場合、成形サイクルの短縮効果が低くなることがある。
具体的な脂肪酸トリグリセライドとしては、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のトリグリセライドが挙げられる。この内、ステアリン酸トリグリセライドが好ましい。
脂肪酸グリセライドの混合量は、発泡性粒子100質量部に対して0.05〜0.5質量部である。混合量が0.05質量部より少ない場合、成形サイクル短縮の効果が低くなることがある。混合量が0.5質量部より多い場合、成形体強度が低下することがある。混合量は0.05〜0.40質量部であることが好ましく、0.05〜0.30質量部であることがより好ましい。
脂肪酸グリセライドでの発泡性粒子の被覆方法は、被覆できさえすれば、特に限定されず、例えば、公知の混合機内で、脂肪酸グリセライドと発泡性粒子とを撹拌する方法が挙げられる。この撹拌は、上記展着剤や滑剤の存在下で行ってもよい。
予備発泡粒子は、水蒸気等を用いて所望の嵩密度に発泡性粒子を発泡させることで得られる。
予備発泡粒子の嵩密度は、0.01〜0.40g/cm3の範囲であることが好ましい。予備発泡粒子の嵩密度が0.40g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。一方、嵩密度が0.01g/cm3より小さい場合、次に得られる発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。
予備発泡粒子は、続く発泡成形工程前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。予備発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、予備発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、予備発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
発泡成形体は、例えば、予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で加熱発泡させ、予備発泡粒子間の空隙を埋めると共に、予備発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体を製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への予備発泡粒子の充填量を調整する等して調整できる。
発泡性粒子は、上記表面と全体のMzの粒子を提供できさえすれば、特に限定されない。例えば、以下の方法により得ることができる。
発泡性粒子は、スチレン系樹脂からなる種粒子に、スチレン系単量体と任意に他の単量体とを含む単量体混合物を吸収させ、重合させることで樹脂粒子を得、樹脂粒子に発泡剤を含浸させることで得ることができる。
種粒子は公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(i)スチレン系樹脂を押出機で溶融混練した後にストランド状に押出し、ストランドをカットすることにより種粒子を得る押出方法、(ii)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させて種粒子を製造する懸濁重合法、(iii)水性媒体及びスチレン系樹脂粒子をオートクレーブ内に供給し、スチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的にあるいは断続的に供給して、スチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させて種粒子を製造するシード重合法等が挙げられる。また、種粒子は一部、又は全部に樹脂回収品を用いることができる。回収品を使用する場合は、押出方法による種粒子の製造が向いている。
種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液中に、単量体混合物を供給することで各単量体を種粒子に吸収させ、次いで各単量体を重合させることでスチレン系樹脂粒子を得ることができる。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
上記表面と全体のMzを有する発泡性粒子を得るために、単量体混合物に含まれる単量体種を変えて3段階で重合を行うことが好ましい。3段階の重合とは、例えば、種粒子の製造時の重合、スチレンとα−メチルスチレンとジビニルベンゼンの重合、スチレンとα−メチルスチレンの重合が挙げられる。この重合の例では、2段目の重合で得られたジビニルベンゼン由来の架橋体が、3段目のスチレンとα−メチルスチレンの粒子への吸収時に粒子の外側に移動することにより、発泡性粒子の表面のMzを全体のMzより大きくすることができる。
スチレン系樹脂粒子の製造に使用されるα−メチルスチレン及び架橋剤は、スチレン100質量部に対して、1〜10質量部及び0.03〜0.1質量部であることが好ましい。なお、単量体の使用量とその単量体に由来する粒子中の樹脂の含有量とはほぼ一致している。
発泡性粒子は、上記スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることで得ることができる。
発泡剤としては特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭化水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
<Z平均分子量>
Z平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン(PS)換算平均分子量を意味する。具体的には、試料3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLにて72時間静置して溶解させ(完全溶解)、得られた溶液を倉敷紡績社製の非水系0.45μmのクロマトディスク(13N)で濾過して測定する。予め測定し作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の平均分子量を求める。またクロマトグラフの条件は下記の通りとする。
使用装置:高速GPC装置:東ソー社製 HLC−8320GPC EcoSECシステム(RI検出器内蔵)
ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn SuperHZ−H(4.6mmID×2cmL)×1本
カラム:東ソー社製 TSKgel SuperHZM−H(4.6mmI.D×15cmL)×2本
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:試料側 0.175mL/分、リファレンス側 0.175mL/分
検出器:RI検出器
試料濃度:0.3g/L
注入量:50μL
測定時間:0−25分
ランタイム:25分
サンプリングピッチ:200msec
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製 商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、5,480,000、3,840,000、355,000、102,000、37,900、9,100、2,630、500のものと、昭和電工社製商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1,030,000である標準ポリスチレン試料を用いる。
予備発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。
内寸300mm×400mm×30mmの直方体形状のキャビティを有する成形型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所社製 商品名「ACE−3SP」)のキャビティ内に予備発泡粒子を充填し、ゲージ圧0.10MPaの水蒸気で、金型加熱3秒、一方加熱8秒、逆一方加熱5秒、両面加熱15秒間の加熱成形を行う。次に、前記金型のキャビティ内の発泡成形体を3秒間水冷した後、面圧が0.05MPaに低下した時点で発泡成形体を取り出す。金型加熱開始から発泡成形体の取り出しまでの時間を成形サイクルと称する。
表皮付き表面をもつ発泡成形体を50℃で24時間乾燥後、ハムスライサー(富士島工機社製:FK−18N型)を用い、発泡成形体の表皮付きの表面から0.3mm深さでカットし、融着発泡粒子及び発泡性粒子の表面のZ平均分子量測定用の試料とする。前記0.3mm深さのカット面から更に1mm深さでカットし、融着発泡粒子及び発泡性粒子の全体のZ平均分子量測定用の試料とする。
平均気泡径についてはASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定する。発泡成形体の任意の部分を、剃刀刃を用いて成形体断面を得る。この切断面を走査型電子顕微鏡(日本電気社製JSM−6360LV)を用いて、100倍に拡大した画像を作成する。
次に、切断面の画像上にある発泡粒子界面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における任意の位置で60mmの直線を描く。直線上にある気泡の個数を数え、次式によりこの気泡の平均弦長(t)を算出する。
平均弦長t(μm)=60/(気泡数×画像の拡大倍数)
次の式により、この気泡の平均気泡径(D)を算出する。
平均気泡径D(μm)=t/0.616
以上の作業をN数10で行い、平均値を平均気泡径とする。
発泡成形体の任意の部分を、剃刀刃を用いて成形体断面を得る。この切断面を走査型電子顕微鏡(日本電気社製JSM−6360LV)を用いて観察し、任意の融着発泡粒子を選択する。次いでこの融着発泡粒子断面の略中心部から、融着発泡粒子断面を30度ごとの角度で分割した12本の直線を、隣接する融着発泡粒子の最外壁に向かって引く。この直線が隣接する融着発泡粒子同士の複数の最外壁から構成される粒界壁を通過する部分を300倍に拡大し、画像写真を得て、粒界壁の厚みを測定する。この時、隣接する融着発泡粒子が2つの場合は、粒界壁の厚みは2つの融着発泡粒子の最外壁の厚みの合計となり、隣接する融着発泡粒子が3つ以上の場合は、粒界壁の厚みは3つ以上の融着発泡粒子の最外壁の厚みの合計となる。12本の直線についてそれぞれ粒界壁の厚みを測定し、その平均値を1つの融着発泡粒子の粒界壁の厚みとする。この測定を発泡成形体を構成する任意の融着発泡粒子20個について測定を行ない、その平均値を「粒界壁の厚さ」とする。なお、融着発泡粒子の最外壁とは、隣接する融着発泡粒子同士の粒界を区画する気泡膜である。
発泡体の曲げ強度をJIS K7221−2「硬質発泡プラスチック曲げ試験」に記載の方法に準拠して測定する。具体的には、発泡体から縦75mm×横300mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。しかる後、この試験片を曲げ強度測定器(オリエンテック社製商品名「UCT−10T」)を用いて、試験速度10mm/分、支点間距離200mm、加圧くさび10R及び支持台10Rの条件下にて測定する。試験片を5個用意し、試験片ごとに試験片が破壊する最大荷重を測定し、曲げ強度を算出する。
曲げ強度測定条件:荷重(fs%)開始点=0.0、終了点=20.0、ピッチ=0.2(fs%)
曲げ強度が0.033MPa以上の場合を「良好:○」とし、0.033MPaより小さい場合を「不良:×」とする。
発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切出し試験片とする。この試験片を90℃で168時間保持した前後の加熱寸法変化率をJIS K 6767:1999(高温時の寸法安定性:B法)に準拠して測定する。加熱寸法変化率が±0.5%以内の場合を耐熱性が「良好:○」とし、加熱寸法変化率が−0.5%を下回るか又は0.5%を上回っている場合を耐熱性が「不良:×」とする。
発泡成形体から、縦200mm×横200mm×厚み30mmの直方体形状の試験片を切り出し、JISA1412−2に準拠し、23℃の温度で測定を実施する。なお、熱伝導率は断熱性の指標である。熱伝導率が0.035W/mk以下の場合を断熱性が「良好:○」とし、熱伝導率が0.035W/mkより大きい場合を断熱性が「不良:×」とする。
前記の曲げ強度、耐熱性、熱伝導率の内、全て良好であれば総合評価「良好:○」、一つでも不良があれば総合評価「不良:×」とする。
内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブに第三リン酸カルシウム(大平化学社製)150g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0g、ベンゾイルパーオキサイド160g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートを30g、イオン交換水40kg及びスチレン40kgを供給して攪拌翼にて攪拌して水性懸濁液を形成した。
次に、内容物を攪拌しながら30分かけて90℃まで昇温し、かつ90℃にて6時間に亘って保持し重合を進めた。更にオートクレーブ内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間に亘って保持することによって、スチレンを懸濁重合した。内容物を25℃まで冷却し、オートクレーブ内からポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水、乾燥を行った。得られたポリスチレン粒子を分級して、粒子径が0.4〜0.7mmでかつ重量平均分子量が29万のポリスチレン粒子(種粒子)を得た。
また、イオン交換水5kgにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを溶解させた分散液を作製し、スチレン1990g、α−メチルスチレン500g、ジビニルベンゼン6g、重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン100g及びジクミルパーオキサイド100gを溶解させてスチレン系単量体溶液を作製した。
上記スチレン系単量体溶液を上記分散液に添加後、ホモミキサーを用いて攪拌することで乳濁化させて乳濁液を得た。
5時間保持後、内容物を25℃まで冷却し、オートクレーブ内から粒子を取出して、洗浄、脱水、乾燥を経ることで発泡性粒子を得た。
次に、攪拌機付き予備発泡機に上記発泡性粒子500gを供給して水蒸気を用いて加熱することによって予備発泡させることで嵩密度0.020g/cm3の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を24時間、室温で保管した。保管後、予備発泡粒子を発泡成形機(積水工機社製 商品名「ACE−3SP」)の金型内に充填し、下記条件で水蒸気を用いて二次発泡させることによって、密度0.020g/cm3の縦300mm×横400mm×厚み30mmの直方体形状の発泡成形体を得た。金型加熱開始から発泡成形体取り出しまでの成形サイクルは188秒であった。
図2に発泡成形体の断面の電子顕微鏡写真を示す。
ステアリン酸トリグリセライドを6質量部使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
ステアリン酸トリグリセライドを45質量部使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
乳濁液にスチレンを2240g、α−メチルスチレンを250g、ジビニルベンゼンを6g使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
乳濁液にスチレンを1740g、α−メチルスチレンを750g、ジビニルベンゼンを6g使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
乳濁液にジビニルベンゼンを4g使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
乳濁液にジビニルベンゼンを9g使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
乳濁液にα−メチルスチレンを使用せず、スチレンを2490g、ジビニルベンゼンを6g使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
図3に発泡成形体の断面の電子顕微鏡写真を示す。図3から、実施例1の図2より粒界壁の厚さが薄いことが分かる。
乳濁液にスチレンを1190g、α−メチルスチレンを1300g、ジビニルベンゼンを6g使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
乳濁液にスチレンを1990g、α−メチルスチレンを500g、ジビニルベンゼンを1g使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
乳濁液にジビニルベンゼンを使用しないこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
乳濁液にスチレンを1990g、α−メチルスチレンを500g、ジビニルベンゼンを12g使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
ステアリン酸トリグリセライドを使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
なお、実施例及び比較例の発泡成形体を構成する融着発泡粒子の分子量は、発泡性粒子の分子量とほぼ同一であることを確認した。
表1に、成形サイクル、発泡成形体の表面及び全体の分子量、融着発泡粒子の平均気泡径及び粒径壁厚、発泡成形体の物性(曲げ強度、耐熱性及び熱伝導率)、物性の総合評価を示す。
Claims (5)
- スチレン系樹脂を基材樹脂とする融着した複数の発泡粒子から構成されるポリスチレン系発泡成形体であり、前記発泡粒子は、
(1)GPC測定において、表面のZ平均分子量(Mz)が115万〜250万であり、全体のMzが85万〜110万であり、
(2)平均気泡径が150〜300μmであり、
(3)隣接する発泡粒子同士の複数の最外壁から構成される粒界壁の厚さが2.0〜10.0μmであり、
前記ポリスチレン系発泡成形体が、0.035W/mk以下の熱伝導率を有し、かつ断熱材として用いられることを特徴とするポリスチレン系発泡成形体。 - 前記全体のMzと表面のMzとの比が、1:1.03〜2.90である請求項1に記載のポリスチレン系発泡成形体。
- 前記粒界壁の厚さと平均気泡径との比が、1:15〜150である請求項1又は2に記載のポリスチレン系発泡成形体。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリスチレン系発泡成形体の製造方法であり、
発泡性粒子と脂肪酸グリセライドとを混合することにより、前記脂肪酸グリセライドで被覆された発泡性粒子を得る工程と、
前記脂肪酸グリセライドで被覆された発泡性粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程と、
前記予備発泡粒子を発泡成形することによりポリスチレン系発泡成形体を得る工程とを備え、
前記発泡性粒子が、GPC測定において、表面のZ平均分子量(Mz)が115万〜250万であり、全体のMzが85万〜110万であり、
前記脂肪酸グリセライドが、炭素数5〜20の脂肪酸のグリセライド(但し、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを除く)であり、かつ前記発泡性粒子100質量部に対して0.05〜0.5質量部混合される
ことを特徴とするポリスチレン系発泡成形体の製造方法。 - 前記発泡性粒子が、発泡剤を含浸させた樹脂粒子であり、前記樹脂粒子が、スチレン、α−メチルスチレン及び架橋剤を含む単量体混合物に由来する請求項4に記載のポリスチレン系発泡成形体の製造方法。
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