JP2007277144A - 表面処理粉体及びこれを含有する化粧料 - Google Patents

表面処理粉体及びこれを含有する化粧料 Download PDF

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Abstract

【課題】 疎水性に優れるとともに、洗い流し性の改善された表面処理粉体、及びこれを含有する化粧料を提供する。
【解決手段】 基粉体の表面上に、特定構造のアクリル系モノマー(例えば、12−メタクリルアミドドデカン酸)を構成モノマーとして含有するポリマーが被覆され、前記ポリマーの被覆量C(質量%)が、下記数式(1)に示す範囲内であることを特徴とする表面処理粉体。
C≧S/2 (1)
(式中、Cは表面処理粉体全量に対するポリマーの被覆量(質量%)、Sは基粉体の比表面積(m/g)を意味する。)
【選択図】 なし

Description

本発明は表面処理粉体及びこれを含有する化粧料に関し、特に化粧料用の粉体に対する疎水性の付与及び洗い流し性の改善に関する。
化粧料、特にメーキャップ化粧料においては、人を美しく見せる美的効果は当然のことながら、その効果の持続性、すなわち化粧持ちも極めて重要な性能の一つとして要求される。このため、化粧料基剤の開発にあたって、化粧持ちの向上は重要な課題の一つとなっている。メーキャップ化粧料の分野においては、汗や涙、あるいは唾液等の水分によって化粧崩れが起こることのないように油性の基剤が用いられることが多いが、このような油性基剤中に親水性の粉体を配合した場合には、基剤との分離が生じやすく、また水分によって親水性粉体が流れ出してしまうため、化粧崩れの大きな原因となる。このような問題点から、従来、化粧料中に粉体を配合する場合には、粉体に予め疎水化処理を施した疎水化粉体を配合することが広く行なわれてきた。
化粧料用粉体の疎水化に関しては、多くの方法が知られており、例えば、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、トリグリセライド、エステル、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等のシリコーン類、あるいはフッ素化合物等を用いて、親水性粉体の表面を被覆して、粉体に疎水性を付与する方法が行なわれている。中でも、シリコーン類を表面処理剤として用いた粉体の疎水化処理は、特に優れた疎水性を付与することができることから、現在までに多くの方法が確立されている(例えば、特許文献1,2参照)。また、近年では、アクリル酸やアクリル酸エステルのコポリマーを粉体の表面処理剤として用いる方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
一方、化粧料においてはその洗い流し性も重要な性能の一つとして要求される。しかしながら、前述した従来の疎水化処理粉体を配合した場合には、化粧持ちを向上することはできても、その優れた疎水性のため石鹸等を用いたとしても水では容易に洗い流すことができない。このため、油性の洗い落とし用製剤が広く用いられているが、この油性製剤はさらに石鹸等で洗い流す必要があり、使用者に対する負担が大きい。また、洗い流しを容易にする目的で親水性粉体を配合した場合には、前述したように化粧崩れが生じやすく、化粧持ちに劣る結果となる。このため、化粧をしている間にはその効果を長時間持続することができ、一方で化粧を落とす際には容易に洗い流すことができるという両者の性能を同時に満たすことは非常に困難な課題であった。
特開昭60−163973号公報 特開昭62−177070号公報 特開平8−337514号公報
本発明は、前述の課題に鑑みて行なわれたものであり、その目的は、疎水性に優れるとともに、洗い流し性の改善された表面処理粉体、及びこれを含有する化粧料を提供することにある。
本発明者らが前述の課題に鑑み鋭意研究を行なった結果、特定構造のアクリル系誘導体を構成モノマーとして含有するポリマーを、その被覆量が基粉体の比表面積に対して特定の範囲内となるように表面処理を行なうことにより、適当なpH条件での疎水性−親水性変化に優れた表面処理粉体が得られることを見出した。そして、この結果、当該表面処理粉体を化粧料中に配合した場合、化粧持ちに優れているにもかかわらず、石鹸等を用いて水で容易に洗い流すことが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる表面処理粉体は、基粉体の表面上に下記一般式(1)で示されるモノマー(A)を構成モノマーとして含有するポリマーが被覆され、前記ポリマーの被覆量C(質量%)が、下記数式(1)に示す範囲内であることを特徴とするものである。
Figure 2007277144
(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数4〜22のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)
C≧S/2 (1)
(式中、Cは表面処理粉体全量に対するポリマーの被覆量(質量%)、Sは基粉体の比表面積(m/g)を意味する。)
また、前記表面処理粉体において、前記基粉体が酸化鉄であることが好適である。また、前記表面処理粉体において、前記ポリマーがモノマー(A)を構成モノマー全量中70モル%以上含有することが好適である。
また、前記表面処理粉体において、前記ポリマーがさらに下記一般式(2)〜(7)のいずれかに示されるモノマー(B)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることが好適である。
Figure 2007277144
(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)
Figure 2007277144
(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、アミノアルキル基、又はヒドロキシアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子を表す。)
Figure 2007277144
(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、Yは1価の有機又は無機アニオンを表す。)
Figure 2007277144
(式中、R10は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R11は炭素数1〜4のアルキレン基、R12は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、lは1〜100の整数を表す。)
Figure 2007277144
(式中、R13は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R14は同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基、R15は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、mは1〜100の整数を表す。)
Figure 2007277144
(式中、R16は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R17は炭素数1〜4のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオン、nは1〜100の整数を表す。)
また、前記表面処理粉体において、前記ポリマーが上記一般式(2)に示されるモノマー(B)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることが好適である。
また、本発明にかかる化粧料は、前記表面処理粉体を含有することを特徴とするものである。
本発明にかかる表面処理粉体は、疎水性に優れているとともに、その洗い流し性が著しく改善されているものである。このため、本発明の表面処理粉体を化粧料に配合した場合、化粧持ちに優れているにもかかわらず、石鹸等を用いて水で容易に洗い流すことが可能となる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳述する。
なお、本発明にかかる表面処理粉体は、基粉体の表面上に上記一般式(1)で示されるモノマー(A)を構成モノマーとして含有するポリマーが被覆され、前記ポリマーの被覆量C(質量%)が、上記数式(1)に示す範囲内であることを特徴とするものである。
ポリマー
本発明にかかる表面処理粉体において、表面処理剤として用いられるポリマーは、前記一般式(1)で示されるモノマー(A)を構成モノマーとして含有するポリマーである。
一般式(1)に示されるモノマー(A)は、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドにおいて脂肪酸が付加された化合物である。一般式(1)において、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基である。Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは、水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(1)において、Rは炭素数4〜22のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。Rとしては、例えば、炭素数8のオクチレン基、11のウンデシレン基、12のドデシレン基が挙げられる。また、Rとしては、構造中に芳香族環や炭素−炭素二重結合を含んでいてもよく、例えば、ビニレン基、メチルフェニレン基、ビニルフェニレン基等であっても構わない。また、一般式(1)において、Xは−NH−基又は酸素原子であり、特に−NH−基であることが好ましい。また、一般式(1)において、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンである。1価の無機又は有機カチオンはカルボン酸の塩を形成し得るものであればよく、1価の無機カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられ、また、1価の有機カチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。なお、Mに関しては、ポリマー製造後、希塩酸あるいは希水酸化ナトリウム溶液等を適当量用いて、カルボン酸(M=水素)あるいはナトリウム塩(M=ナトリウム)の形に可逆的に変換することも可能である。
本発明に用いられるモノマー(A)としては、例えば、11−メタクリルアミドウンデカン酸、8−アクリルアミドオクタン酸、12−アクリルアミドドデカン酸、12−メタクリルアミドドデカン酸、3−{4−[(メタクリロキシ)メチル]フェニル}アクリル酸等が挙げられる。なお、本発明のポリマーにおいては、前記モノマー(A)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
本発明に用いられるポリマーにおいては、前記モノマー(A)を構成モノマー全量中70モル%以上含有していることが好適である。モノマー(A)が70モル%未満であると、疎水性−親水性の調整効果が小さく、粉体に対して所望の性能を付与することができない場合がある。また、モノマー(A)が90モル%以上であることが特に好適である。なお、本発明に用いられるポリマーにおいては、前記モノマー(A)が構成モノマーの全量を占めていても構わない。
また、本発明のポリマーとしては、前記モノマー(A)以外の構成モノマーとして、さらに前記一般式(2)〜(7)のいずれかに示されるモノマー(B)を好適に用いることができる。
一般式(2)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドにおいてアルキルスルホン酸が付加された化合物である。一般式(2)において、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基である。Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは、水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(2)において、Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。Rとしては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、一般式(2)において、Xは−NH−基又は酸素原子であり、特に−NH−基であることが好ましい。また、一般式(2)において、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンである。1価の無機又は有機カチオンはスルホン酸の塩を形成し得るものであればよく、1価の無機カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられ、また、1価の有機カチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。なお、Mに関しては、ポリマー製造後、希塩酸あるいは希水酸化ナトリウム溶液等を適当量用いて、スルホン酸(M=水素)あるいはナトリウム塩(M=ナトリウム)の形に可逆的に変換することも可能である。
一般式(2)に示されるモノマーとしては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−メタクリロキシプロパンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
また、一般式(3)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドのアルキル付加物である。一般式(3)において、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(3)において、Rは炭素数1〜10のアルキル基、1以上のフッ素原子を含むフッ化アルキル基、1以上のアミノ基を含むアミノアルキル基、又は1以上の水酸基を含むヒドロキシアルキル基である。これらのアルキル基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。Rがアルキル基の場合、例えば、メチル基、エチル基、ペンチル基、オクチル基、デシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、特に2−エチルヘキシル基であることが好ましい。Rがフッ化アルキル基の場合、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基等が挙げられ、特にトリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基であることが好ましい。Rがアミノアルキル基の場合、例えば、アミノエチル基、アミノプロピル基、N,N−ジメチルアミノエチル基等が挙げられ、特にN,N−ジメチルアミノエチル基であることが好ましい。Rがヒドロキシアルキル基の場合、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基等が挙げられ、特にヒドロキシエチル基であることが好ましい。また、一般式(3)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。
一般式(3)に示されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロプロピル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、N−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。
また、一般式(4)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドのアルキルアンモニウム塩付加物である。一般式(4)において、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(4)において、Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。Rとしては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、Rは、同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基である。Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(4)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。また、Yは1価の有機又は無機アニオンであり、4級アンモニウムの塩を形成し得るものであればどのようなものでも構わない。Yとしては、例えば、としては、例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン等の1価の無機アニオン、あるいは硫酸イオン、酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、リン酸イオン等の1価の有機アニオンが挙げられる。
一般式(4)に示されるモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド、N,N−ジメチルアミノアクリルアミドメチルクロライド等が挙げられる。
また、一般式(5)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドの(ポリ)アルキレンオキシド付加物である。一般式(5)において、R10は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R10がアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。R10は水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(5)において、R11は炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。R11としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、R12は水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、水素、メチル基、エチル基等が挙げられる。R12は、メチル基であることが好ましい。また、一般式(5)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。また、lはアルキレンオキシドの付加モル数であり、1〜100の整数である。
一般式(5)に示されるモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
また、一般式(6)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドの(ポリ)シロキサン付加物である。一般式(6)において、R13は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R13がアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。R13は水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(6)において、R14は、同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基である。R14がアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。R14は水素又はメチル基であることが好ましい。また、R15は水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、水素、メチル基、エチル基等が挙げられる。R15は、水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(6)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。また、mはシロキサンの付加モル数であり、1〜100の整数である。
一般式(6)に示されるモノマーとしては、例えば、メタクリロキシ基変性シリコーン等が挙げられる。
また、一般式(7)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドのアルキルリン酸(塩)付加物である。一般式(7)において、R16は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R16がアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。R16は水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(7)において、R17は炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。R17としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、一般式(7)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。また、nはアルキレンオキシドの付加モル数であり、1〜100の整数である。また、一般式(7)において、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンである。1価の無機又は有機カチオンはリン酸の塩を形成し得るものであればよく、1価の無機カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられ、また、1価の有機カチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。なお、Mに関しては、ポリマー製造後、希塩酸あるいは希水酸化ナトリウム溶液等を適当量用いて、リン酸(M=水素)あるいはナトリウム塩(M=ナトリウム)の形に可逆的に変換することも可能である。
一般式(7)に示されるモノマーとしては、例えば、2−メタクリロキシエチルリン酸等が挙げられる。
なお、本発明のポリマーにおいては、上記一般式(2)〜(7)のいずれかに示されるモノマー(B)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
また、本発明にかかるポリマーにおいては、前記モノマー(B)を構成モノマー全量中1〜30モル%含有していることが好適である。モノマー(B)が1モル%未満であると配合による効果が得られず、30モル%を超えると相対的にモノマー(A)の含有量が減少してしまい、粉体に対して所望の性能を付与することができない場合がある。
また、本発明に用いられるポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記モノマー(A),(B)以外のモノマーを構成モノマーとして含有することもできる。含有量は、構成モノマー全量の30モル%以下の範囲であればよく、例えば、1〜20モル%程度含有することができる。このようなモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルアクリルアミド、メチルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、エチルアクリルアミド、エチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ε―カプロラクタム、ビニルアルコール、無水マレイン酸、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリル酸、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、N,N’−ジメチルアクリルアミド、スチレン等が挙げられる。
本発明に用いられるポリマーは、上記モノマーを含有する各種モノマーを公知の重合方法を用いて重合することにより得ることができる。例えば、均一溶液重合法、不均一溶液重合法、乳化重合法、逆相乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法、沈殿重合法等を用いることができる。例えば、均一溶液重合法の場合には、各種モノマーを溶媒中に溶解し、窒素雰囲気下、ラジカル重合開始剤を添加して加熱撹拌することにより本発明のポリマーを得ることができる。なお、ポリアクリル酸あるいはポリアクリルアミドに官能基を付加させるポストモディフィケーションによって、本発明に用いられるポリマーを得ることも可能である。
重合の際に用いられる溶媒としては、各種モノマーを溶解又は懸濁し得るものであって、水を含まない有機溶媒であればいかなる溶媒でも用いることが可能であり、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩化物系溶媒などの他、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上混合して用いてもよい。通常、用いる重合開始剤の開始温度よりも沸点が高い溶媒を選択することが好適である。
重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物の他、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系重合開始剤が挙げられる。なお、これらの重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常50〜70℃程度とすればよい。
重合時間は特に制限されないが、通常30分〜24時間程度である。比較的高分子量のポリマーを得たい場合には、24時間程度反応させることが望ましい。反応時間が短すぎると未反応のモノマーが残存し、分子量も比較的小さくなることがある。本発明のポリマーの平均分子量は特に制限されず、オリゴマー以上の重合度を有していれば目的とする効果を発揮し得るが、特に平均分子量3000〜10万程度であることが好ましい。なお、2種以上のモノマーを混合して重合を行なうことにより、通常は各種モノマーがランダム状に付加されたコポリマーが得られる。
本発明に用いられるポリマーは、ポリマー側鎖に前記モノマー(A)に由来するカルボキシル基を有しており、このカルボキシル基は、酸性〜中性の条件下では疎水性のカルボン酸(−COOH)、塩基性条件下では親水性のカルボキシレートイオン(−COO)に変化する。このため、このポリマーによって粉体の表面を処理した処理粉体は、例えば、酸性〜中性環境において疎水性、塩基性環境において親水性といったように、pH応答性の疎水性−親水性変化を示すようになると考えられる。
そして、このようにして得られた表面処理粉体を化粧料中に配合した場合、化粧料が通常用いられる酸性〜中性領域においては疎水性を示すために化粧持ちに優れているにもかかわらず、石鹸等を用いて適度な塩基性環境とした場合には処理粉体の表面が親水性へと変化するため、水によって容易に洗い流すことが可能となる。
また、前記モノマー(B)は、pHに対する影響を受けにくく、幅広いpH範囲において安定した親水性あるいは疎水性の性質を示す。このため、構成モノマー中の前記モノマー(A)とモノマー(B)のモノマー比率を適宜調整してポリマーを製造することにより、粉体に付与する疎水性−親水性のバランスを好適に調整することが可能となる。例えば、前記モノマー(A)に対して、モノマー(B)として一般式(2)のモノマーを組み合わせることにより親水性を高めることができ、反対にモノマー(B)として一般式(6)のモノマーを組み合わせることにより疎水性を高めることができる。また、前記モノマー(B)を適当量用いることによって、粉体へのポリマーの吸着性を高めることもできる。
本発明に用いられるポリマーは、モノマー(A)とモノマー(B)との割合がモル比で(A):(B)=70:30〜99.9:0.1となるように調整することが好適である。モノマー(A)の割合が70:30より少ないと、処理粉体が親水性に偏ってしまうため、十分な疎水性を付与することができない場合があり、一方でモノマー(A)の割合が99.9:0.1より多いと、粉体の表面にポリマーが吸着しにくくなり、粉体の安定性に悪影響を与える場合がある。
本発明にかかる表面処理粉体において、粉体に対するポリマーの被覆量は、質量比で、ポリマー:粉体=3:97〜40:60、より好ましくは5:95〜30:70である。3:97よりポリマーの被覆量が少ないと、粉体に対して所望の性能を付与することができない場合があり、40:60より被覆量が多いと、化粧料として用いた場合の使用感等について悪影響を与える場合がある。
基粉体
本発明に用いる基粉体は、特に限定されるものではないが、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、雲母、ベントナイト、チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック及びこれらの複合体等の無機粉体、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、上記化合物の単量体の2種以上からなる共重合体、セルロイド、アセチルセルロース、セルロース、多糖類、タンパク質、CIピグメントイエロー、CIピグメントオレンジ、CIピグメントグリーン等の有機粉体が挙げられる。また、粉体の形状についても、例えば、板状、塊状、鱗片状、球状、多孔性球状等、どのような形状のものでも用いることができ、粒径についても特に制限されない。なお、本発明の表面処理粉体においては、基粉体として酸化鉄を用いることが特に好ましい。
本発明の表面処理粉体において、ポリマーによる基粉体の表面処理は、通常の処理方法により行なえばよく、その方法は特に限定されるものではない。例えば、上記ポリマーによって基粉体を処理する場合には、ポリマーをエチルアルコール等の適当な溶媒中に溶解し、この溶液中に粉体を混合、攪拌した後、溶媒を留去する方法、あるいはポリマーを高級アルコール等の不揮発性油分に溶解したものを直接混合攪拌する方法が挙げられる。また、本発明にかかる表面処理粉体を化粧料中に配合する場合には、化粧料の製造過程において、ポリマーを基粉体を含む基剤中に直接混合攪拌してもよい。
なお、本発明において、上記ポリマーにより基粉体を処理する場合には、基粉体のゼータ電位に注意する必要がある。ここで、粉体のゼータ電位とは、固相と液相とが相対運動をする場合に固相に密着して動く層の最外面(すべり面)における電位と溶液内部の電位との差を示すものである。溶液が中性付近の場合、酸化チタンやシリカ等のゼータ電位はマイナスとなり、反対に酸化亜鉛やアルミナ等のゼータ電位はプラスとなる。酸化亜鉛やアルミナ等のゼータ電位がプラスの基粉体を処理する場合には、通常の方法で処理すると、pH応答性に重要なカルボン酸部位が粉体表面のプラス電荷により相殺されてしまい、得られた表面処理粉体がpH応答性を示さなくなる場合がある。このような粉体に対してpH応答性を付与するためには、予めシリカやポリスチレンスルホン酸等のマイナス電荷を帯びた無機物あるいは有機物を粉体表面に処理して、基粉体表面のゼータ電位をマイナスに転じさせる必要がある。このような処理方法としては、例えば、基粉体を水ガラス溶液中に分散させ、酸を滴下して表面上にシリカを析出させる方法、あるいは基粉体をポリスチレンスルホン酸水溶液中に分散させた後、水を揮発させる等の方法が挙げられる。
ポリマーの被覆量
本発明にかかる表面処理粉体は、前記ポリマーの被覆量C(質量%)が、下記数式(1)に示す範囲内であることを特徴とするものである。
C≧S/2 (1)
ここで、上記Cは表面処理粉体全量に対するポリマーの被覆量(質量%)である。すなわち、例えば、表面処理粉体の全量がX(g)、被覆されたポリマーの質量がY(g)であった場合、当該ポリマーの被覆量C(質量%)は、C=(Y/X)・100として算出される。また、上記Sは基粉体の比表面積(m/g)である。なお、本発明に用いる基粉体の比表面積Sが未知である場合には、市販の比表面積測定装置(例えば、Macsorb:Mountech社製)を用いて測定することが可能である。なお、比表面積測定装置は、JIS R1626に準拠していることが好ましい。また、本発明において、比表面積の異なる基粉体の2種以上を用いる場合には、各種基粉体の比表面積の加重平均値とすればよい。
任意の表面処理粉体について、ポリマーの被覆量C(質量%)が上記数式(1)に示す範囲内であるかどうかを確認するためには、まず、当該表面処理粉体全量に対するポリマーの被覆量C(質量%)を算出し、次いで当該基粉体の比表面積(m/g)をSとして、S/2を算出し、双方の比較を行なえばよい。任意の表面処理粉体におけるポリマーの被覆量C(質量%)が、前記S/2以上である場合には、ポリマーの被覆量C(質量%)が前記数式(1)に示す範囲内のものであると認められる。
化粧料
また、本発明にかかる化粧料は、以上のようにして得られる表面処理粉体を含有することを特徴とするものである。表面処理粉体の配合量は、化粧料全量中3質量%以上であることが好ましく、特に5〜95質量%であることが好ましい。配合量が3質量%未満では本発明の効果が得られない場合がある。
本発明にかかる化粧料においては、上記表面処理粉体の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に用いられる水、油分、粉体(未処理)、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤等の成分を配合することができる。
本発明にかかる化粧料の形態は、特に限定されるものではないが、例えば、ファンデーション、白粉、口紅、アイシャドウ、チーク、マスカラ、アイライナー等のメイクアップ化粧料や、サンスクリーン剤、下地クリーム、ヘアクリーム等が挙げられる。
以下に本発明の実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず最初に、本発明に用いるポリマーの合成方法について説明する。
合成例1:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)ホモポリマー
Figure 2007277144
12−メタクリルアミドドデカン酸ナトリウム(NaMAD)5.49g(18mmol)、アゾビスイソブチロニトリル7.4mg(0.045mmol)を、メタノール32.4mLと水3.6mLの混合溶媒(メタノール/水=9/1)に溶解した。30分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で12時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。この沈殿物を水に溶解して1週間純水に対して透析を行ない、凍結乾燥を行なうことにより、NaMADホモポリマー2.80gを得た(収率:51.0%)。
回収したNaMADホモポリマー1.10gを水に溶解し、塩酸を用いてpHを4に調整した。この溶液について1週間pH5の水に対して透析を行ない、凍結乾燥を行なうことにより、12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)ホモポリマー1.1gを得た。
合成例2:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(90/10)
Figure 2007277144
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.42g(68.41mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)1.58g(7.60mmol)、水酸化ナトリウム0.31g(7.60mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール59.4gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/AMPSコポリマー(90/10)17.8gを得た(収率:87.9%)。重量平均分子量は92000だった。
本発明者らは、まず最初に、市販の黄色酸化鉄粉体に対して上記合成例1のポリマーによる表面処理を行ない、酸性(pH5)及び塩基性(pH10)の各条件における当該処理粉体の水溶性の評価を行った。評価結果を表1及び図1に示す。なお、表面処理粉体の製造条件及び評価方法は以下の通りである。
試験例1−1 MADホモポリマー5%/黄色酸化鉄粉体
エタノール20g中に、上記合成例1により製造したMADホモポリマー0.05gを溶解し、さらに市販の黄酸化鉄粉体(TAROX LL−XLO:チタン工業社製,比表面積約14m/g)0.95gを混合、分散し、エタノールを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、MADホモポリマー5%/黄色酸化鉄粉体0.96gを得た。
試験例1−2 MADホモポリマー10%/黄色酸化鉄粉体
エタノール20g中に、上記合成例1により製造したMADホモポリマー0.1gを溶解し、さらに市販の黄酸化鉄粉体(TAROX LL−XLO:チタン工業社製,比表面積約14m/g)0.9gを混合、分散し、エタノールを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、MADホモポリマー10%/黄色酸化鉄粉体0.96gを得た。
試験例1−3 MADホモポリマー15%/黄色酸化鉄粉体
エタノール20g中に、上記合成例1により製造したMADホモポリマー0.15gを溶解し、さらに市販の黄酸化鉄粉体(TAROX LL−XLO:チタン工業社製,比表面積約14m/g)0.85gを混合、分散し、エタノールを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、MADホモポリマー15%/黄色酸化鉄粉体0.95gを得た。
試験例1−4 MADホモポリマー20%/黄色酸化鉄粉体
エタノール20g中に、上記合成例1により製造したMADホモポリマー0.2gを溶解し、さらに市販の黄酸化鉄粉体(TAROX LL−XLO:チタン工業社製,比表面積約14m/g)0.8gを混合、分散し、エタノールを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、MADホモポリマー20%/黄色酸化鉄粉体0.95gを得た。
処理粉体の水分散性
表面処理粉体0.1gを、pH5及びpH10の各種pH緩衝水溶液30mLとともにバイアル中に入れ、マグネチックスターラーにより1分間混合攪拌した後静値し、溶液の状態を確認した。
○:粉体が水中に均一に分散し、濁った色の溶液となった。
△:粉体の一部が水中に分散していた。
×:粉体が水中に分散せず、水面上に分離した。
Figure 2007277144
表1及び図1に示すように、MADホモポリマー被覆量10〜20質量%で表面処理された試験例1−2〜1−4の表面処理粉体は、pH5の酸性条件下においては水中に全く分散しておらず、粉体が優れた疎水性を示す一方で、pH10の塩基性条件とした場合には、処理粉体が水中に均一に分散しており、粉体が親水性に変化することが明らかとなった。しかしながら、MADホモポリマーの被覆量が5質量%である試験例1−1の表面処理粉体においては、pH5の酸性条件下で水中にわずかに分散してしまっており、酸性〜中性領域での疎水性が十分なものであるとは言い難かった。
以上の結果に対し、本発明者らは、基粉体の比表面積とポリマーの被覆量との関係に着目した。このため、比表面積の異なる各種基粉体を用意し、それぞれの基粉体に対して被覆量を各種変化させてポリマーを被覆し、得られた表面処理粉体について前記試験と同様に粉体の水分散性の評価を行なった。評価結果を表2に示す。なお、表2の評価結果欄においては、左側にpH5条件下の水分散性、右側にpH10条件下での水分散性の評価結果を示す。
Figure 2007277144
上記表2に示すように、比表面積14m/gの黄色酸化鉄粉体を用いた場合、ポリマー被覆量8質量%以上では良好なpH応答性を示しているものの、5質量%以下ではpH5の条件下で水中へ分散してしまうため、酸性条件下における疎水性が十分でないことがわかる。他方、比表面積がそれぞれ4.7m/g、4.8m/gである赤色酸化鉄粉体及び黒色酸化鉄粉体を用いた場合には、ポリマー被覆量が3質量%以上ではpH応答性が良好であるものの、2質量%ではpH5の条件下で若干の分散が生じてしまい、酸性条件下での十分な疎水性が得られていない。
以上の結果を踏まえて、本発明者らがさらに詳細に検討を行なった結果、ポリマーの被覆量(質量%)が、基粉体の比表面積(m/g)の値に対して1/2倍以上となるように調整することによって、優れたpH応答性を有する表面処理粉体が得られることが明らかとなった。すなわち、本発明にかかる表面処理粉体においては、表面処理粉体全量に対する前記ポリマーの被覆量Cが、下記数式(1)に示す範囲内である必要がある。
C≧S/2 (1)
(式中、Cは表面処理粉体全量に対するポリマーの被覆量(質量%)、Sは基粉体の比表面積(m/g)を意味する。)
以下に本発明の他の実施例を挙げることにより、本発明についてさらに詳しく説明を行なうが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例2−1
エタノール1000mL中に、上記合成例2に準じて製造したMAU/AMPSコポリマー(MAU/AMPS=90/10)8.6gを溶解した。この溶液中にタルク(比表面積3m/g)50g、マイカ(比表面積3m/g)85g、酸化チタン(比表面積10m/g)20g、黒酸化鉄(比表面積4.8m/g)0.4g、黄酸化鉄(比表面積14m/g)5.8g、ベンガラ(比表面積4.7m/g)2gを混合、分散し、エバポレータによりエタノールを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、実施例2−1の表面処理粉体140gを得た。なお、上記各種基粉体の比表面積の加重平均値は約4.3m/gであった。
実施例2−2
エタノール500mL中に、上記合成例1に準じて製造したMADホモポリマー6gを溶解した。この溶液中にタルク(比表面積3m/g)5g、マイカ(比表面積3m/g)20g、酸化チタン(比表面積10m/g)40g、黒酸化鉄(比表面積4.8m/g)0.4g、黄酸化鉄(比表面積14m/g)6g、ベンガラ(比表面積4.7m/g)2gを混合、分散し、エバポレータによりエタノールを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、実施例2−1の表面処理粉体70gを得た。なお、上記各種基粉体の比表面積の加重平均値は約7.8m/gであった。
実施例2−3
パウダー型ファンデーション 配合量(質量%)
(1)実施例2−1の表面処理粉体 83.6
(2)ナイロン粉末 3.0
(3)流動パラフィン 4.0
(4)ミリスチン酸オクチルドデシル 3.0
(5)イソステアリン酸ソルビタン 3.0
(6)オクチルドデカノール 3.0
(7)防腐剤 0.1
(8)殺菌剤 0.1
(9)酸化防止剤 0.1
(10)香料 0.1
(製法) (3)〜(9)を加熱溶解し、(1)及び(2)とヘンシェルミキサーにて分散混合後、(10)を添加して再混合した。得られた粉末混合物を、プレス成型機で中皿に充填し、パウダー型ファンデーションを得た。
以上のようにして得られたパウダー型ファンデーションは、化粧持ちに優れており、さらに石鹸を用いて容易に水で洗い流すことが可能であった。 以上のようにして得られたパウダー型ファンデーションは、化粧持ちに優れており、さらに石鹸を用いて容易に水で洗い流すことが可能であった。
実施例2−4
W/O型ファンデーション 配合量(質量%)
(1)実施例2−2の表面処理粉体 20.32
(2)アクリル樹脂粉末 3.0
(3)流動パラフィン 5.0
(4)デカメチルシクロペンタシロキサン 29.0
(5)POE変性ジメチルポリシロキサン 4.5
(6)イオン交換水 33.0
(7)1,3−ブチレングリコール 5.0
(8)防腐剤 0.1
(9)香料 0.08
(製法) (3)〜(5)を室温で溶解した(これを油相とした)。また、(5)に(6)および(7)を溶解した(これを水相とした)。油相に(1)及び(2)を加え、ホモミキサーで分散混合した後に、さらに(8)を加え混合した後、水相を加え乳化し、容器に充填した。
以上のようにして得られたW/O型ファンデーションは、化粧持ちに優れており、さらに石鹸を用いて容易に水で洗い流すことが可能であった。
本発明にかかる試験例1−1(MADホモポリマー5%/黄色酸化鉄粉体)、試験例1−2(MADホモポリマー10%/黄色酸化鉄粉体)、試験例1−3(MADホモポリマー15%/黄色酸化鉄粉体)、および試験例1−4(MADホモポリマー20%/黄色酸化鉄粉体)のpH5緩衝溶液、及びpH10緩衝溶液の写真図である。

Claims (6)

  1. 基粉体の表面上に下記一般式(1)で示されるモノマー(A)を構成モノマーとして含有するポリマーが被覆され、
    前記ポリマーの被覆量C(質量%)が、下記数式(1)に示す範囲内であることを特徴とする表面処理粉体。
    Figure 2007277144
    (式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数4〜22のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)
    C≧S/2 (1)
    (式中、Cは表面処理粉体全量に対するポリマーの被覆量(質量%)、Sは基粉体の比表面積(m/g)を意味する。)
  2. 請求項1に記載の表面処理粉体において、前記基粉体が酸化鉄であることを特徴とする表面処理粉体。
  3. 請求項1又は2に記載の表面処理粉体において、前記ポリマーがモノマー(A)を構成モノマー全量中70モル%以上含有することを特徴とする表面処理粉体。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の表面処理粉体において、前記ポリマーがさらに下記一般式(2)〜(7)のいずれかに示されるモノマー(B)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることを特徴とする表面処理粉体。
    Figure 2007277144
    (式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)
    Figure 2007277144
    (式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、アミノアルキル基、又はヒドロキシアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子を表す。)
    Figure 2007277144
    (式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、Yは1価の有機又は無機アニオンを表す。)
    Figure 2007277144
    (式中、R10は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R11は炭素数1〜4のアルキレン基、R12は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、lは1〜100の整数を表す。)
    Figure 2007277144
    (式中、R13は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R14は同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基、R15は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、mは1〜100の整数を表す。)
    Figure 2007277144
    (式中、R16は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R17は炭素数1〜4のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオン、nは1〜100の整数を表す。)
  5. 請求4に記載の表面処理粉体において、前記ポリマーが上記一般式(2)に示されるモノマー(B)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることを特徴とする表面処理粉体。
  6. 請求項1から5に記載のいずれかの表面処理粉体を含有することを特徴とする化粧料。
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