JP2007276458A - 溶液製膜方法及び溶液製膜設備 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドープの固定化防止溶液の飛散によるフィルムの面状故障を回避し、高速製膜を可能にする溶液製膜方法を提供する。
【解決手段】ノズル61aを流延ダイ30の側端部に備える。減圧チャンバ36内の溶液の飛散方向上に配管72b、仕切り板85及び遮風シール板88を設ける。流延ダイ30が、流延ドラム32上にドープを流出する。ドープは、流延ダイ30と流延ドラム32との間に、流延ビード21aを形成する。ノズル61a、61bは、ドープの固形を防止する溶液を流延ビード21aの側端部21bに供給する。減圧チャンバ36が、流延ビード21aの背面側を減圧する。減圧とともに、溶液が減圧チャンバ36内部に飛散する。配管72bは、飛散する溶液を吸引する。仕切り板85及び遮風シール板88は、飛散した溶液を99a耳部側で受け止める。減圧チャンバ36は、溶液を製品部99bへの飛散を防止することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、溶液製膜方法及び溶液製膜設備に関する。
ポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学機能性フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、強靭性や低複屈折率であることから、写真感光用フィルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置(以下、LCDと称する)などの表示装置の構成部材である偏光板の保護フィルムまたは光学補償フィルムなど光学機能性フィルムとして用いられている。
主なフィルムの製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフィルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、膜厚精度を調整することが難しく、また、フィルム上に細かいスジ(ダイライン)ができるために、光学機能性フィルムへ使用することができるような高品質のフィルムを製造することが困難である。一方、溶液製膜方法は、溶融押出方法と比べて、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフィルムを得ることができるため、表示装置などに用いられる光学機能性フィルムは、主に溶液製膜方法で製造されている。
この溶液製膜方法の概要について説明する。まず、セルローストリアセテートなどのポリマーをメチレンクロライドや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解し、ドープを調製する。次に、このドープに所定の添加剤を混合し、流延ドープを調製する。第3に、流延ドープを流延ダイの流出口からキャスティングドラムやエンドレスバンドなどの走行する支持体上に流延する(以下、流延工程と称する)。このとき、流延ダイの流出口と支持体との間の流延ドープは、流延ビードを形成する。こうして、流延工程において、支持体上に流延膜が形成される。第4に、この支持体が所定の走行速度で流延膜を搬送する。そして、支持体上での冷却、或いは乾燥により自己支持性を有するものとなった流延膜を、支持体から湿潤フィルムとして剥ぎ取り、この湿潤フィルムを乾燥させる(以下、乾燥工程と称する)。最後に、湿潤フィルムを乾燥させたものをフィルムとして巻き取る。なお、この流延工程において、流延ダイの流出口の両端部における流延ドープの固形化を防止するために、固形化防止用溶液(以下、溶液と称する)を流延ビードの両端部に供給し(以下、この方法を液法と称する)、減圧チャンバを用いて流延ビードよりも支持体の走行方向上流側(以下、背面側と称する)を所定圧に減圧することにより、流延ドープと支持体表面と間の密着性を向上させ、支持体と流延膜との間に気泡などが混入することを防ぐことができる。
近年において、LCDや有機ELディスプレイなどの薄型表示装置の需要の急速な伸長に伴い、フィルムの製造方法である溶液製膜方法の製膜速度の高速化が強く望まれている。特許文献1では、液法に用いる溶液として、流延ドープの溶質(ポリマー)に対する良溶媒と流延ドープの溶質(ポリマー)に対する貧溶媒とを混合した混合液を用いることを提案している。そして、この貧溶媒の割合が少ない混合液を用いる場合には、混合液が供給された流延ビードの耳部がフレキシブルになるため、減圧チャンバの吸引風等に起因する流延ビードのバタツキを抑制可能となる。このため、特許文献1では、この液法は製膜速度の高速化に有効であると報じている。
特開2005−104148号公報
溶液製膜方法の製膜に要する時間の短縮化について、流延工程が律速であることが知られている。すなわち、流延工程における支持体の走行の高速化を図ることにより、溶液製膜方法における製膜時間の改善を行うことができる。しかしながら、支持体の走行の高速化(走行速度80m/分以上)に伴って、流延膜と流延ドラムの周面の密着性が低下する。この密着性の低下分を補うために、流延ビードの背面側をより減圧する必要がある。ところが、流延ビードの背面側を−100Pa以下に減圧した状態で溶液製膜方法を行うと、この減圧により溶液が飛散し、減圧チャンバや支持体などを経由して、流延膜に溶液が混入する。この飛散した溶液の流延膜への混入に起因して、流延膜の表面が変形し、結果として、フィルム表面の変形等の面状故障が多発した。
本発明者は、上記フィルムの面状故障の発生要因を鋭意検討した結果、減圧チャンバの減圧度の増加に伴い、溶液が減圧チャンバ内に吸引され、更に、減圧チャンバ内に設けられる遮風シール板や側壁、或いは支持体などを介して、流延ビードの製品部に飛散していたことに原因があることを突き止めた。
本発明は、上記問題を鑑み、フィルムの面状故障を回避しつつ、高速製膜を可能にする溶液製膜方法を提供することを目的とする。
本発明の溶液製膜方法は、走行する支持体上に、ダイを用いて、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延し、前記支持体上の前記ドープから流延膜を形成し、前記ドープの固形化を防止する固形化防止用溶液を、前記ダイから前記支持体にかけて前記ドープが形成する流延ビードの側端部に供給し、前記支持体の前記走行方向からみて、前記流延ビードの上流側を減圧し、前記減圧によって吸引される前記固形化防止用溶液の飛散経路に飛散防止部材を配置することを特徴とする。
前記飛散防止部材は、前記固形化防止用溶液が付着する仕切り板と、この仕切り板に付着した固形化防止用溶液を回収する回収パイプとを有することが好ましい。
前記支持体の走行速度が80m/分以上であり、前記流延ビードの前記上流側を−100Pa以下に減圧することが好ましい。前記支持体は流延ドラムの周面であることが好ましい。
前記溶媒及び固形化防止用溶液の主成分が、前記ポリマーの良溶媒であることが好ましい。前記ポリマーはセルロースアシレートと環状ポリオレフィンとのうちいずれかを含むことが好ましい。前記良溶媒は、メチレンクロライドまたは酢酸メチルを含むことが好ましい。
本発明の溶液製膜設備は、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延するダイと、走行し、前記ダイから流出した前記ドープから流延膜を形成する支持体と、前記ドープの固形化を防止する固形化防止用溶液を、前記ダイから前記支持体にかけて前記ドープが形成する流延ビードの側端部に供給する固形化防止用溶液供給手段と、前記支持体の走行方向からみて、前記流延ビードの上流側を減圧する減圧チャンバと、前記減圧によって吸引される前記固形化防止用溶液の飛散経路に配置され、前記固形化防止用溶液の飛散を防止する飛散防止部材とを備えることを特徴とする。
前記飛散防止部材は、前記固形化防止用溶液が付着する仕切り板と、この仕切り板に付着した前記固形化防止用溶液を回収する回収パイプとを有することが好ましい。
前記支持体の走行速度が80m/分以上であり、前記減圧チャンバが前記流延ビードの前記上流側を−100Pa以下に減圧することが好ましい。前記支持体が流延ドラムの周面であることが好ましい。
前記溶媒及び固形化防止用溶液の主成分が、前記ポリマーの良溶媒であることが好ましい。前記ポリマーはセルロースアシレートと環状ポリオレフィンとのうちいずれかを含むことが好ましい。また、前記良溶媒は、メチレンクロライドまたは酢酸メチルを含むことが好ましい。
本発明の溶液製膜方法によれば、流延ビードの背面側の減圧によって吸引される固形化防止用溶液の飛散経路に飛散防止部材を配置するため、固形化防止用溶液の支持体表面、流延ビードや流延膜への飛散を防止することができる。特に、流延工程での支持体の走行速度が80m/分以上の高速製膜では、減圧チャンバの減圧度を−100Pa以下に減圧する必要があるため、本発明の効果がより顕著に発現する。すなわち、本発明により、歩留まりがよく、生産効率の高い溶液製膜を行うことができる。
前記飛散防止部材は、前記固形化防止用溶液が付着する仕切り板と、この仕切り板に付着した固形化防止用溶液を回収する回収パイプとを有するため、減圧チャンバによって吸引された溶液を仕切り板に付着させて、この付着した溶液を回収することが可能になり、結果として、固形化防止用溶液の飛散を防止することができる。
前記支持体は回転ドラムの周面であり、この周面の走行速度が80m/分以上であり、前記減圧チャンバを用いて、−100Pa以下に減圧するため、製膜速度の高速化及び減圧チャンバの減圧度の増大に伴って発生するフィルムの面状故障を回避することが可能となり、歩留まりがよく、生産効率の高い溶液製膜を行うことができる。
前記溶媒及び固形化防止用溶液の主成分が、前記ポリマーの良溶媒であるため、流延ビードの耳部の固形化を防止し、流延ビードの耳部のバタツキを抑制することができる。
また、本発明の溶液製膜設備によれば、流延ビードの背面側の減圧によって吸引される固形化防止用溶液の飛散経路に配される飛散防止部材を有するため、固形化防止用溶液の支持体表面への飛散を防止し、歩留まりがよく、生産効率の高い溶液製膜を行うことができる。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
[溶液製膜方法]
図1に、本実施形態で用いるフィルム製造ライン10の概略図を示す。フィルム製造ライン10は、ストックタンク11と流延室12とピンテンタ13とクリップテンタ14と乾燥室15と冷却室16と巻取室17とを有する。
ストックタンク11には、モータ11aで回転する攪拌翼11bとジャケット11cとが備えられており、その内部にはフィルム20の原料となるドープ21が貯留されている。ストックタンク11は、常時、その外周面に設けられているジャケット11cにより、ドープ21の温度が略一定となるように調整される。攪拌翼11bの回転により、ポリマーなどの凝集が抑制され、ドープ21の品質が均質に保持されている。また、ストックタンク11の下流には、ポンプ25と濾過装置26とが備えられている。なお、ドープ21の調製方法に関しては、後で詳細に説明する。
流延室12には、ドープ21を流延する流延ダイ30と、支持体であるキャスティングドラム(以下、流延ドラムと称する)32と、流延ドラム32の周面32a近傍に配され、流延ドラム32から流延膜33を剥ぎ取る剥取ローラ34と、流延室12の内部温度を調整する温調設備35とが備えられている。また、減圧チャンバ36は、流延ダイ30と剥取ローラ34との間の流延ドラム32の周面32a近傍に配される。
流延ダイ30の先端には、ドープ21を流出する流出口30a(図2)が設けられる。流出口30aは、その下方に配置される流延ドラム32の周面32a上にドープ21を流延する。
流延ダイ30の材質としては、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものも、この流延ダイ30の材質として用いることができ、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いられる。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ30を作製することが好ましい。これにより流延ダイ30内をドープ21が一様に流れ、後述する流延膜にスジなどが生じることが防止される。流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流出口30a(図2)のスリットのクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされている。流延ダイ30のリップ先端の接液部の角部分について、そのRは全巾にわたり50μm以下とされている。また、流延ダイ30内部における剪断速度が1(1/秒)〜5000(1/秒)となるように調整されていることが好ましい。このような流延ダイ30を用いることにより、スジ及びムラのない流延膜33を流延ドラム32の周面32a上に形成することができる
流延ダイ30の幅は、特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルムの幅の1.1倍〜2.0倍であることが好ましい。また、製膜中の温度が所定温度に保持されるように、この流延ダイ30に温調機(図示しない)を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ30にはコートハンガー型のものを用いることが好ましい。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を流延ダイ30の幅方向において所定の間隔で設け、ヒートボルトによる自動厚み調整機構が流延ダイ30に備えられていることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)25の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フィルム製造ライン10中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて製品フィルムの幅方向の任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、2μm以下に調整することがより好ましい。また、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ30のリップ先端には、硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ30と密着性が良く、ドープ21との密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al23,TiN,Cr23などが挙げられるが、なかでも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
略円筒状または円柱形状に形成される流延ドラム32は、駆動装置によりその軸32bを中心に回転する。この駆動装置によって、流延ドラム32は、その周面32aが所定の走行方向Z1に所定速度(10〜300m/分)で回転する。流延ドラム32の周面32aは、クロムメッキ処理が施され、十分な耐腐食性と強度を有する。また、流延ドラム32の周面32aの温度を所望の温度に保つために、流延ドラム32に伝熱媒体循環装置37が取り付けられている。この伝熱媒体循環装置37にて所望の温度に保持されている伝熱媒体が、流延ドラム32内の伝熱媒体流路を通過することにより、流延ドラム32の周面32aの温度を所望の温度に保持できる。
図2のように、流延工程では、流延ダイ30から流延ドラム32の周面32aへドープ21(図1)を流延する。このとき、この流延ダイ30から流延されたドープ21(図1)は、流延ドラム32の周面32aにかけて、流延ビード21aを形成し、周面32a上のドープ21(図1)は流延膜33となる。この流延膜33は、流延ドラム32の回転によって走行方向Z1に所定の走行速度で搬送される。減圧チャンバ36は、流延ビード21aを安定させるために、この流延ビード21aの背面側を負圧にする。減圧チャンバ36は、−2000Pa〜−10Paの範囲で減圧することができる。図1のように、流延ドラム32上での冷却により自己支持性を備えた流延膜33は、剥取ローラ34によって、流延ドラム32から剥ぎ取られ、湿潤フィルム38となる。
また、流延室12の内部温度は、温調設備35により所定の範囲内で略一定となるように調整される。流延室12の内部温度は、10℃以上30℃以下であることが好ましい。流延室12内には、蒸発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)39と凝縮液化した溶媒を回収する回収装置40とが備えられている。凝縮器39で凝縮液化した有機溶媒は、回収装置40により回収される。その溶媒は再生装置で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。回収装置40は、流延室12内の雰囲気に含まれる溶媒の飽和温度を−10℃以上10℃以下にすることが好ましい。
流延室12の下流には、湿潤フィルム38を乾燥させてフィルム20とするピンテンタ13と、このフィルム20を乾燥させながら延伸するクリップテンタ14とが設けられている。フィルム20は、クリップテンタ14の所定条件下の延伸処理によって、所望の光学特性が付与される。なお、ピンテンタ13は、固定手段として複数のピンを有する乾燥装置であり、クリップテンタ14は、把持手段としてクリップを有する乾燥装置である。なお、クリップテンタ14は省略しても良い。
クリップテンタ14の下流には耳切装置43が設けられている。この耳切装置43には、クラッシャ44が備えられており、ここで、フィルム20の両側端部は切断された後、クラッシャ44に送り込まれて粉砕される。粉砕されたフィルム細片は、原料ドープとして再利用される。
乾燥室15には、多数のローラ47と吸着回収装置48とが備えられている。さらに、乾燥室15に併設された冷却室16の下流には、強制除電装置(除電バー)49が設けられている。また、本実施形態では、強制除電装置49下流側に、ナーリング付与ローラ50を設けている。巻取室17の内部には、巻取ローラ51とプレスローラ52とが備えられている。
図1及び図2に示すように、液法装置60は、ノズル61a及び61bと、タンク62と、配管62a及び62bとから構成される。ノズル61a及び61bは流延ダイ30の流出口30aの両端に配される。タンク62はドープ21の固形化を防止する固形化防止用溶液(以下、溶液と称する)を格納する。タンク62には、溶液の温度を所定の範囲に保持する温調機(図示しない)が備えられる。配管62a及び62bは、このノズル61a及び61bとタンク62を接続する。更に、この配管62a及び62bには、バルブ、ポンプ、流量計などが備えられ、これらの操作によって所望量の溶液をタンク62からノズル61a及び61bへ所定の流量で送り出すことができる。
この溶液を流延ビード21aの両側端部21b、リップ先端部及び外気が形成する三相接触線の周辺部付近に供給することが好ましい。また、この溶液を両側端部21bの片側それぞれに0.1mL/分以上1.0mL/分以下で供給することが、流延膜中への異物混合を防止するために好ましい。なお、この溶液を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
このノズル61a及び61bの供給口61c(図4)は、略円形状に形成される。なお、図2には、流延ダイ30の流出口30aの片端側に備えられるノズル61a及び配管62aを示しているが、これと同様にして、ノズル61b及び配管62bも、流延ダイ30の他端側に備えられる。なお、この溶液の生成方法等の詳細については、後述する。
図3に示すように、減圧チャンバ36は上部70と下部71とから構成される。上部70は、中空部70aを有する略直方体に形成され、この中空部70aに接続する接続孔70b及び70cが上部70の上面に設けられる。また、上部70の底面には、中空部70aと接続する開口部70dが形成される。
上部70の上面に設けられる接続孔70b、70cには配管72b、72cが挿入される。配管72bは吸引装置73b(図1)に接続し、配管72cは吸引装置73c(図1)に接続する。
下部71は、上部シール板75、フロントシール板76、左右で一対のサイドシール板77、エンドシール板78により、中空部71dを有する箱型上に形成されており、上面に開口部71a、1つの側面に開口部71b、底面に開口部71cを有する。また、フロントシール板76と流延ダイ30との間には、両者の隙間を塞ぐパッキン80(図2)が設けられる。
中空部71d内には、サイドシール板77と平行になるように、サイドシール板77側から中央側に向かって、複数の仕切り板85、86a、86bが配置されている。これら仕切り板85、86a、86bは、上部シール板75及びフロントシール板76に固定されて取り付けられている。また、仕切り板86a、86bの後端にはこれら仕切り板86a、86bの間隔を保持する保持板87が固定される。そして、保持板87とエンドシール板78との間には、サイドシール板77と平行になるように、遮風シール板88が設けられる。これら仕切り板85、86a、86bによって、中空部71d内の両端部における気流は、周面32aの走行方向と略逆向きになる。なお、仕切り板86bは、流延ビード21aの幅に応じて、適宜増減し、中空部71d内における気流を周面32aの走行方向Z1と略逆向きにすることが好ましい。
開口部70dと開口部71aとが密閉接続するように上部70と下部71とを嵌合することにより、減圧チャンバ36が形成される。また、図2に示すように、減圧チャンバ36は、このパッキン80が流延ダイ30に当接するように配置され、開口部71b、中空部71d及び70aからなる減圧ゾーンの隙間を無くす構成となっている。
図3のように、また、仕切り板85の下端部には樋85aが設けられる。この樋85aは、仕切り板85の開口部71b側の端面から中空部71d側の端面にかけて形成される。この樋85aの中空部71d側は、樋85aを伝う液体を溜めるための液溜部85bと連結している。また、配管72bにより液溜部85bに溜まった液体を吸引するために、配管72bの先端に設けられる液吸引口が液溜部85b近傍になるように、配管72bが配される。なお、液溜部85は、図3のように仕切り板85の両面側に設けても良いし、いずれか片面のみに設けても良い。したがって、液溜部85を設ける場所は、流延工程での減圧条件、周面32aの走行速度などの各条件や、減圧チャンバ36とノズル61aとの位置などに応じて適宜決定すればよい。
なお、下部71を構成する各シール板75〜78、仕切り板85、86a、86b、保持板87、遮風シール板88の下端側を、流延ドラム32の周面32aに近接可能なように湾曲させても良い(図2)。
吸引装置73b、73c(図1)は、予め設定された減圧値に従って、配管72b、72cを介して中空部70a、71d内の空気を吸引する。吸引装置73b、73cの吸引により、この減圧チャンバ36の中空部70a、71dの内圧が所定圧力まで減圧される。この減圧に伴って、開口部71b近傍も、中空部70a、71dと同様に所定の圧力に減圧される。こうして、減圧チャンバ36は、流延ビード21aの背面側を所望の圧力に減圧することができる。なお、吸引装置73bの減圧値は、吸引装置73cの減圧値よりも小さくなるように設定する。本明細書では、減圧値を負の符号と圧力の差とを用いて表す。
なお、本明細書において、「流延ビード21aの背面側を−X(Pa)以下減圧する」とは、支持体の走行方向下流側(以下、前面側と称する)よりX(Pa)以上低くなるように、背面側を減圧することをいう。
図4に示すように、減圧チャンバ36内に配されるシール板75〜78、仕切り板85、86a、86b、保持板87、遮風シール板88は、整流板の役割を果たす。また、これらのシール板75〜78によって、中空部71dに減圧室95、96が形成される。シール板75、76と保持板87と仕切り板86aによって囲まれる領域を減圧室95とする。また、減圧室96は、領域96aと領域96bとから構成され、サイドシール板77と仕切り板85とで挟まれる領域と、仕切り板85と仕切り板86aとで挟まれる領域とを領域96aとし、領域96aと接続し、サイドシール板77とエンドシール板78と保持板87と遮風シール板88とにより囲まれる領域を領域96bとする。
流延ビード21aは、その両側端部(以下、耳部と称する)99a及び流延ビード21aの中央部(以下、製品部)99bから構成される。耳部99aは、後にフィルム20となったときの、乾燥工程後の耳切装置43によって切り出される部分である。一方、製品部99bは、最終的に巻取ローラ51によって巻取られるフィルム20となる部分である。なお、本明細書では、この耳部99aと製品部99bとの間の境界線及びこの境界線の延長線から、耳部99a側に位置する領域及び製品部99b側に位置する領域を、それぞれ耳部領域、及び製品部領域と称する。
溶液を耳部99aに供給するノズル61a、61bの供給口61cは、流延ビード21aの側端部21b近傍に配置される。また、溶液は、ノズル61a、61bの先端に設けられる供給口61cから溶液を所望の流量で、流延ビード21aの側端部21bに流出する。この供給口61cから流出する溶液は、流延口30aの近傍のリップ部を伝って側端部21bに供給される。側端部21bに供給された溶液の一部は、減圧チャンバ36によって生じる気流により所定の方向に飛散する。供給口61c及び仕切り板85は、溶液が供給口61c近傍の気流に沿って飛散したときに、仕切り板85の開口部71b側の端面85cの略中央部に到達する位置に配置されている。
遮風シール板88は、中空部71dの耳部領域上に設けられ、その端面がエンドシール板78の面と保持板87の面とに垂直に接するように配される。また、配管72bは、中空部71dの耳部領域上に設けられる仕切り板85の中空部71d側の端面85d近傍に配される。
次に、図1を用いて、フィルム製造ライン10によりフィルム20を製造する方法の一例を説明する。ストックタンク11では、ジャケット11cの内部に伝熱媒体を流すことによりドープ21の温度を25〜35℃に調整するとともに、攪拌翼11bの回転により常に均一化している。適宜適量のドープ21を、ポンプ25によりストックタンク11から濾過装置26に送り込み濾過することにより、ドープ21中の不純物を取り除く。
流延ドラム32は、駆動装置により走行方向Z1へ所定の走行速度(80m/分以上300m/分以下)で走行する。また、伝熱媒体循環装置37により、流延ドラム32の周面32aの温度は−10℃以上10℃以下の範囲内で略一定となるように調整されている。また、30℃以上35℃以下の範囲で保持されているドープ21を、流延ダイ30から流延ドラム32の周面32a上に流延する。ドープ21は、流延ドラム32の周面32a上で流延膜33を形成する。こうして、流延ドラム32の周面32a上では、流延膜33が冷却固化(ゲル化)され、流延膜33に自己支持性を持たせることができる。流延膜33の冷却が進行すると、結晶の基となる架橋点が形成されて流延膜33のゲル化が促進される。剥取ローラ34を用いて、ゲル化、及びゲル化の進行により自己支持性を有するものとなった流延膜33を、流延ドラム32から剥ぎ取って湿潤フィルム38を形成する。そして、剥取ローラ34はこの湿潤フィルム38をピンテンタ13に案内する。
ピンテンタ13では、多数のピンを湿潤フィルム38の両側端部に差し込み固定した後、この湿潤フィルム38を搬送する間に乾燥を促進させてフィルム20とする。そして、まだ溶媒を含んでいる状態のフィルム20をクリップテンタ14に送り込む。
クリップテンタ14では、チェーンの動きにより無端で走行する多数のクリップによりフィルム20の両側端部を挟持した後、このフィルム20を搬送する間に、乾燥を促進させる。このとき、対面するクリップの幅を拡げてフィルム20の幅方向に張力を付与することでフィルム20を延伸する。このように、フィルム20の幅方向への延伸処理により、フィルム20中の分子が配向し、フィルム20に所望のレターデーションを付与、或いは、フィルム20のレターデーションを調節することができる。
クリップテンタ14から送り出されたフィルム20は、耳切装置43によりの両側端部が切断される。両側端部が切断されたフィルム20は、乾燥室15と冷却室16とを経由し、巻取室17内の巻取ローラ51で巻き取られる。なお、耳切装置43によって切断された両側端部は、クラッシャ44により粉砕されて、ドープ調製用チップとなり再利用される。
巻取ローラ51に巻き取られるフィルム20は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フィルム20の幅は600mm以上であることが好ましく、1400m以上2500m以下であることがより好ましい。また、本発明は、2500mmより大きい場合にも効果がある。フィルム20の厚みが15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用される。
図2及び図4のように、ドープ21は、流延ダイ30の流出口30aから流延ドラム32上にかけて、流延ビード21aを形成しながら流出する。流出配管72c(図3)からの吸引により、この流延ビード21aの背面側は、流延ビード21aの前面側に対し所定圧(−100Pa以下)まで減圧される。こうして、高速製膜下でも、流延膜33と流延ドラム32の周面32aとの密着性を維持することができる。この減圧によって吸引された空気は、減圧チャンバ36の開口部71bを経由して、減圧室95、或いは減圧室96内に吸引される。
吸引装置73cからの吸引により、流延ビード21aの背面から減圧チャンバ36の中空部71dにかけて、流延ドラム32の走行方向と略逆方向に向かう気流が形成される。一方、領域96bでは、配管72cの配置位置及び外幅シール76により、耳部領域から製品部領域に向かう気流が発生している。
供給口61cから流出した溶液は、流延ビード21aの側端部21bに流下する。このとき、ノズル61aの供給口61c近傍で発生する気流により、供給口61cから流出した溶液の一部が、この気流により減圧チャンバ36へ飛散する。この気流に沿って飛散した溶液は、ノズル61aの近傍に設けられた仕切り板85の端面85cに到達する。こうして、仕切り板85は、溶液が流延ドラム32の周面32aに直接流下することを防止することができる。
また、端面85dの近傍に配される配管72bは、吸引装置73bにて設定された吸引圧値に従って、配管72bの先端部近傍の空気や溶液を吸引する。こうして、端面85cに付着し、樋85aを経由して液溜部85bに溜まっている溶液や、この配管72bの近傍を飛散する溶液は、配管72bを介して吸引される。このようにして、配管72bは、溶液が流延ドラム32の周面32aに直接流下することを防ぐことができる。
更に、減圧チャンバ36内を飛散する溶液のうち、配管72bによって吸引されなかったものは、領域96bに到達する。領域96bにおける気流に従って飛散する溶液は、耳部領域側に設けられる遮風シール板88に到達する。遮風シール板88に到達した溶液は、遮風シール板88の下端等を伝いながら、その直下にある耳部領域上の流延ドラム32に流下する。流延ドラム32に流下した溶液は、流延ドラム32の回転により、流延ビード21aの耳部99aに飛散する。こうして、遮風シール板88は、溶液が流延ビード21aの製品部99bに飛散することを防ぐことができる。
減圧チャンバ36による減圧度が、流延ビード21aの前面側に対し−100Pa以下である場合には、この遮風シール板88の上部70側の端面88a(図2)と流延ドラム32の周面32aとの距離L1(図2)が30mm以上であることが好ましい。また、この減圧度が−300Pa以下であるときは、溶液飛散が著しくなるため本願発明の効果がより顕著なものとなる。なお、減圧度が−300Pa以下の場合、L1は80mm以上であることが好ましい。このような条件を満たす遮風シール板88は、減圧チャンバ36に吸引された溶液の製品部99bへの飛散を防止することができる。
本発明は、供給口61cから流出された溶液が減圧チャンバ36内に吸引され、吸引された溶液が最終的に流延ビード21aや流延膜33に飛散することを回避するものである。溶液の飛散経路とは、この供給口61cから流延ビード21aまでをいい、この飛散経路上に、仕切り板85や遮風シール板88などの飛散防止部材を配することにより、フィルム20の面状故障を回避することができる。
また、前述した飛散防止部材だけでなく、溶液を吸引可能な吸引手段を、飛散経路上に設けることにより、本発明の効果はより顕著に発揮される。例えば、減圧室96bに接するエンドシール板78の内面側に、減圧室96b内を飛散する溶液を吸引可能な配管などの吸引手段を設けても良い。
上記実施形態において、仕切り板85の端面85d近傍に、溶液を吸引可能な配管72bを配したが、これに限らず、遮風シール板88や仕切り板86aに付着した溶液を吸引可能な吸引手段を設けても良い。また、この吸引手段とともに、樋85aや液溜部85bと同様の樋や液溜部を、遮風シール板88や仕切り板86aに設けても良い。
なお、上記実施形態において、減圧チャンバ36が、上部70と下部71とから構成されるとしたが、本発明における減圧チャンバ36はこれに限られず、上部70と下部71とが一体となって形成されていてもよい。つまり、減圧チャンバ36としては、流延ビード21aの背面側を減圧するための開口部71bと、開口部71bから吸引された空気を配管72bや72cへ送る中空部70a、70dを有するものであれば良い。
本発明の溶液製膜方法では、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時に共流延させて積層させる同時積層共流延、または、複数のドープを逐次に共流延して積層させる逐次積層共流延を行うことができる。なお、両共流延を組み合わせてもよい。同時積層共流延を行う場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いてもよいし、マルチマニホールド型の流延ダイを用いてもよい。ただし、共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましく、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
上記実施形態では、ノズル61aの供給口61cの形状は略円形状に形成されると記載したが、これに限らず、長円や楕円形などその他の形でもよい。また、吸引装置72b及び配管72bを設けずに、吸引装置72c及び配管72cを用いて、流延ビード21aの背面側の減圧とともに、減圧チャンバ36内に飛散する溶液を吸引しても良い。
本発明は、流延ドラム32の替わりに、回転ローラに掛け渡されて移動する流延バンドを用いる溶液製膜方法にも適用可能である。
以下、本発明においてドープ21を調製する際に使用する原料について説明する。
本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではなく、セルロースアセテート、プロピオネート又はセルロースアセテートブチレートなどを含むポリマーを用いても、同等の効果を得ることができる。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでもよい。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチレンクロライド,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)およびエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、メチレンクロライドが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度および光学特性などの物性の観点から、メチレンクロライドの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25質量%が好ましく、より好ましくは、5〜20質量%である。アルコールとしては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、メチレンクロライドを使用しない溶媒組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステルおよびアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステルおよびアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
流延ダイ、減圧室、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
(環状ポリオレフィン)
上記実施形態では、ドープ21を調製する際に使用する原料として、セルロースアシレートを用いると記載したが、本発明は、これに限らず、環状ポリオレフィンを用いても良い。以下、本発明のポリマーとして用いることのできる環状ポリオレフィンについて説明する。
本発明における環状ポリオレフィンとは、環状オレフィン構造を有する重合体であり、その例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の各水素化物などがあり、いずれも本発明に用いることができる。
次に、本発明におけるドープ21の固定化防止用溶液の詳細について説明する。ビード21aの側端部21bに供給する溶液としては、ドープの溶質(ポリマー)に対する良溶媒、または良溶媒(ポリマー)に貧溶媒を混合した混合液が用いられる。また、貧溶媒を良溶媒に混合する場合、混合する全貧溶媒合計の割合を全溶液に対して20重量%未満、好ましくは13重量%以下とするとよい。なお、良溶媒及び貧溶媒は、上述した実施の形態に限定するものではない。また、溶液は、用いるドープに含まれる良溶媒や貧溶媒と同一の成分が含まれることが好ましい。
(良溶媒)
ポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合、ポリマーの良溶媒成分としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)を用いること好ましい。これらの中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素を用いることがより好ましく、ジクロロメタンを用いることが最も好ましい。
(貧溶媒)
ポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合、ポリマーの貧溶媒成分としては、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)やケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)を用いることが好ましい。これらの中でも、炭素原子数1〜12のアルコールを用いることがより好ましく、メタノールを用いることが最も好ましい。なお、溶液を構成する良溶媒や貧溶媒としては、複数の化合物を混合した混合物を用いてもよい。
(貧溶媒と良溶媒)
ある液体化合物がポリマーの良溶媒であるか貧溶媒であるかは、ポリマーが全重量の5重量%となるように当該液体化合物とポリマーとを混合し、不溶解物がある場合は、当該液体化合物は貧溶媒であり、不溶解物がない場合は、当該液体化合物は良溶媒であると判断する。
次に、本発明の実施例1について説明する。フイルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
[組成]
ドープ21の調製に用いた化合物の処方を下記に示す。
セルローストリアセテート(置換度2.8) 89.3重量%
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.1重量%
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.6重量%
の組成比からなる固形分(溶質)を
ジクロロメタン 87重量%
メタノール 12重量%
n−ブタノール 1重量%
からなる混合溶媒に適宜添加し、攪拌溶解してドープ21を調製した。なお、ドープ21の固形分濃度は19.3重量%になるように調整した。ドープ21を濾紙(東洋濾紙(株)製,#63LB)にて濾過後さらに焼結金属フィルタ(日本精線(株)製06N,公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフイルタで濾過した後にストックタンク11に入れた。
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8重量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
[ドープの調製]
ドープ製造ライン(図示しない)を用いてドープ21を調製した。攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製溶解タンクで前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒の各原料としては、すべてその含水率が0.5重量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパから徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンクに投入されて、最初は5m/秒の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌機及び中心軸にアンカー翼を有する攪拌機を周速1m/秒で攪拌する条件下で30分間分散した。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンクからバルブで送液量を調整して、全体が2000kgとなるようにした。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、攪拌機のアンカー翼の周速を0.5m/秒としてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより溶解タンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンクの内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液中の水分量は0.3重量%であった。
膨潤液を溶解タンクからポンプを用いてジャケット付配管に送液した。ジャケット付き配管で膨潤液を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に溶解された液を温調機で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置を通過させドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(商品名)合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ後のドープ21の固形分濃度は、21.8重量%となった。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置で回収した。その後に再生装置で再生した後に溶媒タンク11に送液した。回収装置,再生装置では、蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/秒でフラッシュされたドープを攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内におけるドープの平均滞留時間は50分であった。このドープ21を採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(秒−1)で450Pa・sであった。
次に、このドープ21に弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後、ポンプを用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置を通過させた。濾過装置では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製ストックタンク内にドープ21を送液して貯蔵した。ストックタンク11では、周速0.3m/秒の攪拌機11bの回転により、ドープ21の常時攪拌を行った。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
フイルム製造ライン10を用いて、上述したドープ21からフイルム20をつくった。ギアポンプ25は、インバーターモータによりその1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプ25は容積効率99.2%、流出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、流出圧力は1.5MPaであった。図示しない制御部の制御の下、ギアポンプ25は、ストックタンク11のドープ21を、濾過装置26を介して、流延ダイ30へ送った。濾過装置26ではドープ21を濾過した。
流延ダイ30に備えられる温調機により、製膜中における流延ダイ30と配管との温度は略36℃に保温した。流延ダイ30は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ30には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプ25の送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フイルム製造ライン10に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフイルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
流延ダイ30の形成材料として、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。流延ダイ30のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ30内部での流延ドープ51の剪断速度は1(1/秒)〜5000(1/秒)の範囲であった。また、流延ダイ30のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
支持体として円筒状の流延ドラム32として利用した。流延ドラム32の周面32aにはクロムメッキ及び鏡面加工処理が施され、周面32aの表面粗さは0.05μm以下であった。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものを用いた。流延ドラム32は、図示しない制御部の制御の下、軸32bの駆動により回転した。流延速度、すなわち、周面32bの走行方向における速度は、略100m/分とした。このときに、流延ドラム32の速度変動を0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行が、1.5mm以下に制限されるように流延ドラム32の両端位置を検出して制御した。流延ダイ30の直下におけるダイリップ先端と流延ドラム32との上下方向の位置変動は200μm以下にした。流延ドラム32は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室12内に設置した。
流延ドラム32は、周面32aの温度T1の調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。伝熱媒体循環装置37は、流延ドラム32に伝熱媒体を流した。流延直前の周面32a中央部の温度は0℃であり、周面32aの両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延ドラム32には、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であるものを用いた。
流延ドラム32上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、この酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。また、流延室12内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)39を設け、その出口温度を−3℃に設定した。流延ダイ30近傍の静圧変動は、±1Pa以下に抑制した。
また、流延ダイ30の1次側(周面32aの走行方向上流側)に、流延ビード21aの背面側を減圧するための減圧チャンバ36を設置した。また、遮風シール板88と、配管72bとを備える減圧チャンバ36を用いた。ノズル61a及び仕切り板85は、供給口61cからの溶液が、供給口61c近傍の気流により、仕切り板85の端面の略中央部に飛散する位置にそれぞれ配置した。遮風シール板88の端面88aと流延ドラム32の周面との距離L1は、80mmであった。この減圧チャンバ36の減圧度は、流延ビードの前面側と背面側とで1Pa〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この減圧度の調整は周面32aの走行速度に応じてなされる。その際に、流延ビード21aの長さが20mm〜50mmとなるように流延ビード21aの両面側の圧力差を設定した。減圧チャンバ36の内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内には35℃に調整された伝熱媒体を供給した。また、減圧チャンバ36は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものを用いた。流出口30aにおけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。
また、ジクロロメタンが50重量%、n−ブタノールが50重量%の混合溶媒Aをつくり、これを溶液として用いた。この溶液を液法装置60のタンク62に貯留し、溶液の温度を20℃以上30℃以下の範囲に保持した。
ドープ21の固形化を防止する溶液を供給するノズル61a、61bを流延ダイ30の両端に配した。供給口61cと位置90との間隔CL1が2mmに、流延膜33の幅方向における供給口61cと流延ビード21aの側端部21bとの間隔CL2が2mmになるように、ノズル61a、61bをそれぞれ配した。
フィルム製造ライン10において、流延ダイ32から周面32a上に、ドープ21を乾燥厚み80μmで流延し、流延膜33を形成した。流出口30aから周面32aにかけて流延ビード21aが形成された。減圧チャンバ36により、流延ビード21aの背面側を所定の減圧値で減圧した。液法装置61は、流延ビード21aの両側端部21bへ溶液を供給した。
フィルム製造ライン10において、流延ダイ30から流延ドラム32の周面上32aにドープ21を乾燥厚み80μmで流延し、流延膜33を形成した。自己支持性を有する流延膜33を、剥取ローラ34により剥ぎ取り、湿潤フィルム38を得た。ピンテンタ13及びクリップテンタ14にて、この湿潤フィルム38を所定の残留溶媒量まで乾燥し、フィルム20を得た。減圧チャンバ36により、流延ビード21aの前面側に対し、その背面側を−550Paに減圧した。吸引装置73bの減圧値は、−600Paであった。このとき、溶液は流延ビード21aへ飛散せず、この飛散に起因するフィルム20の面状故障は発生しなかった。
実施例1における流延ダイ30から配管72bを取り外して、実施例1と同じ条件で溶液製膜方法を行った。このとき、溶液は流延ビード21aへ飛散せず、この飛散に起因するフィルム20の面状故障は発生しなかった。
実施例2におけるフィルム製造ライン10において、ノズル61a、61bの位置を耳部99aから遠ざかる位置に配した。それ以外は、実施例1と同じ条件で溶液製膜方法を行った。このとき、若干の溶液が流延ビード21a(耳部99aのみ)へ飛散したが、この飛散に起因するフィルム20の面状故障は発生しなかった。
実施例2における減圧チャンバ36から遮風シール板88を取り外し、それ以外は実施例1と同じ条件で溶液製膜方法を行った。このとき、若干の溶液が流延ビード21a(耳部99aのみ)へ飛散したが、この飛散に起因するフィルム20の面状故障は発生しなかった。
<比較例1>
実施例3において、減圧チャンバ36から遮風シール板88を取り外した。流延ドラム32の周面の走行速度は100m/分、吸引装置73bの減圧値は、−550Paであった。減圧チャンバ36により、流延ビード21aの背面側を所定の減圧値で減圧した。この減圧値は、流延ビード21aの前面側に対し−500Paであった。この3種類の減圧値の場合について、それぞれ実施例1と同じ条件で溶液製膜方法を行った。このとき、溶液が製品部99bへ飛散し、この飛散に起因する面状故障が発生した。
本発明の溶液製膜方法または、溶液製膜設備により、フィルムの面状故障を誘発する固形化防止用溶液の支持体表面への飛散を防止することができる。特に、減圧チャンバの減圧度を増大させる必要がある高速製膜下では、その本発明の効果がより顕著に発揮される。すなわち、本発明により、歩留まりが高く、製膜時間の短い溶液製膜を行うことができる。
フィルム製造ラインの概要を示す説明図である。 流延工程における減圧チャンバの側断面図である。 減圧チャンバの概要を示す斜視図である。 図2のIV−IV線断面図である。
符号の説明
10 フィルム製造ライン
21 ドープ
21a 流延ビード
21b 側端部
30 流延ダイ
32 流延ドラム
33 流延膜
34 剥取ローラ
36 減圧チャンバ
60 液法装置
61b、61b ノズル
72c、72c 配管
73b、73c 吸引装置
85 耳サイドシール
85a 樋
85b 液溜部
88 遮風シール板
95、96 減圧室
96a、96b 領域
99a 耳部
99b 製品部

Claims (14)

  1. 走行する支持体上に、ダイを用いて、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延し、
    前記支持体上の前記ドープから流延膜を形成し、
    前記ドープの固形化を防止する固形化防止用溶液を、前記ダイから前記支持体にかけて前記ドープが形成する流延ビードの側端部に供給し、
    前記支持体の前記走行方向からみて、前記流延ビードの上流側を減圧し、
    前記減圧によって吸引される前記固形化防止用溶液の飛散経路に飛散防止部材を配置することを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記飛散防止部材は、前記固形化防止用溶液が付着する仕切り板と、この仕切り板に付着した固形化防止用溶液を回収する回収パイプとを有することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記支持体の走行速度が80m/分以上であり、
    前記流延ビードの前記上流側を−100Pa以下に減圧することを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記支持体は流延ドラムの周面であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の溶液製膜方法。
  5. 前記溶媒及び固形化防止用溶液の主成分が、前記ポリマーの良溶媒であることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の溶液製膜方法。
  6. 前記ポリマーはセルロースアシレートと環状ポリオレフィンとのうちいずれかを含むことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の溶液製膜方法。
  7. 前記良溶媒は、メチレンクロライドまたは酢酸メチルを含むことを特徴とする請求項5または6記載の溶液製膜方法。
  8. ポリマーと溶媒とを含むドープを流延するダイと、
    走行し、前記ダイから流出した前記ドープから流延膜を形成する支持体と、
    前記ドープの固形化を防止する固形化防止用溶液を、前記ダイから前記支持体にかけて前記ドープが形成する流延ビードの側端部に供給する固形化防止用溶液供給手段と、
    前記支持体の走行方向からみて、前記流延ビードの上流側を減圧する減圧チャンバと、
    前記減圧によって吸引される前記固形化防止用溶液の飛散経路に配置され、前記固形化防止用溶液の飛散を防止する飛散防止部材と
    を備えることを特徴とする溶液製膜設備。
  9. 前記飛散防止部材は、前記固形化防止用溶液が付着する仕切り板と、
    この仕切り板に付着した前記固形化防止用溶液を回収する回収パイプとを有することを特徴とする請求項8記載の溶液製膜設備。
  10. 前記支持体の走行速度が80m/分以上であり、
    前記減圧チャンバが前記流延ビードの前記上流側を−100Pa以下に減圧することを特徴とする請求項8または9記載の溶液製膜設備。
  11. 前記支持体が流延ドラムの周面であることを特徴とする請求項8ないし10いずれか1項記載の溶液製膜設備。
  12. 前記溶媒及び固形化防止用溶液の主成分が、前記ポリマーの良溶媒であることを特徴とする請求項8ないし11のうちいずれか1項記載の溶液製膜設備。
  13. 前記ポリマーはセルロースアシレートと環状ポリオレフィンとのうちいずれかを含むことを特徴とする請求項8ないし12のうちいずれか1項記載の溶液製膜設備。
  14. 前記良溶媒は、メチレンクロライドまたは酢酸メチルを含むことを特徴とする請求項12または13記載の溶液製膜設備。
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