JP2007283762A - ポリマーフィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルム表面への揮散性物質の析出が防止されたポリマーフィルムを製造する。
【解決手段】溶媒とポリマーとを混合して調製した原料ドープに添加剤を含有させて、基層用ドープ、支持体面層用ドープ及びエア面層用ドープを流延用ドープとして調製する。このとき、基層用ドープにのみレタデーション制御剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤のうち少なくとも1種類以上の揮散性物質を含有させる。各ドープを流延ダイ89から走行する流延バンド85上に流延して基層120aの両面にエア面層121a及び支持体面層122aを設けた複層構造の流延膜70を形成する。基層120aにのみ揮散性物質が添加されるので、揮散性物質のフィルム表面への析出が防止されたフィルムを得ることができる。
【選択図】図6

Description

本発明は、液晶表示装置等の主要部材である光学フィルムとして好適に用いられるポリマーフィルムの製造方法に関するものである。
ポリマーフィルムは、透明度が高いこと、加工性や取り扱い性に優れること、また、小型・軽量化が可能であること等の利点から、例えば、液晶表示装置の偏光板を保護する偏光板保護フィルムや視野角拡大フィルム等として広く利用されている。中でも、ポリマーとしてセルロースアシレートを使用したセルロースアシレートフィルムは、原料単価が安く、広視野角や高透過率である等の優れた光学特性を有するので高機能・低コスト化を実現させ得る光学フィルムとして注目度が高い。
ポリマーフィルムを製造する際には、主に溶液製膜方法が用いられている。溶液製膜方法とは、走行する支持体上に、フィルムの原料であるセルロースアシレートや有機溶媒等を含むドープを流延して流延膜を形成した後、この流延膜を支持体より剥ぎ取って有機溶媒を含んだフィルム、すなわち湿潤フィルムとしてから、乾燥させてフィルムとする方法である。なお、以下の説明では、ポリマーフィルムを単にフィルムと称する。
一般に、ポリマーフィルムの中には、脆性強度を向上させたり、紫外線吸収機能を持たせたりするために可塑剤や紫外線吸収剤等の添加剤が添加されているが、これらの添加剤の多くは分子量が低いために揮発しやすい。流延膜や湿潤フィルムを乾燥する工程では、流延膜や湿潤フィルムに含まれている有機溶媒と共に上記の様な添加剤が蒸発する。このため、完成したフィルムにおいて添加剤による効果が低減する。なお、以下の説明では、上記の様に揮発し易く空気中に分散する添加剤を揮散性物質と称する。
また、揮散性物質を含有させたフィルムでは、製造後に保存或いは使用されている場合に、フィルムの表面に揮散性物質が析出するブリードアウトが起こり、フィルムの面上が汚れたりする等の問題を引き起こす。例えば、偏光板の保護フィルムとして使用されている場合には、偏光板とフィルムとの接着性が低下してしまうため好ましくない。そこで、ブリードアウトを防止する方法として、例えば、特許文献1では、表層及びこの表層に挟まれる基層を有し、基層より表層の可塑剤や紫外線吸収剤の含有量を少なくしたポリマーフィルム及びその製造方法が提案されている。
ところが、揮散性物質等の添加剤やポリマー及び有機溶媒は、相溶性が互いに異なる等の理由から均一に混ざりにくいので均質なドープを得ることが難しい。ここで、攪拌時間を長くしたり、回転数の多い攪拌機を用いたりすると、製造時間が長引いたり、製造コストが増大するため好ましくない。そこで、効率良くかつ効果的に均質なドープを得る方法として、例えば、特許文献2では、予めポリマーと有機溶媒とを含む原料ドープを調製した後に、原料ドープが流される配管のほぼ中央部に円管状の添加ノズルを備えたインラインミキサーを使用し、添加ノズルから原料ドープ中に添加剤を入れることで流延に供するドープを調製する方法が提案されている。
特開2001−054936号公報 特開2003−053752号公報
しかし、特許文献1では、表層に含まれる可塑剤や紫外線吸収剤がブリードアウトするおそれがある。一方で、特許文献2では、上記配管の中央から内周壁の方向へ添加剤が広がるまでに時間がかかるために生産性が悪い。ここで、生産性の改善を目的としてエレメントの数の多いインラインミキサーを用いると、設備コストの増大や設備の大型化を招いてしまうため好ましくない。また、単に添加口から添加剤を入れる方法では、添加剤を入れる際に偏りが生じてしまい、均一なドープを得ることができない。
本発明は、上記問題を解決することを目的として、フィルム表面への揮散性物質のブリードアウトが防止されるポリマーフィルムを製造する方法を提供することを第1の目的とする。また、ポリマーと有機溶媒と揮散性物質を含む添加剤との攪拌を十分に行なうことにより、均質なドープを得ることができるポリマーフィルムの製造方法を提供することを第2の目的とする。
本発明のポリマーフィルムの製造方法は、ポリマーと有機溶媒との混合物である原料ドープに添加剤を含有させて調製した2種類以上のドープを、走行する支持体上に共に流延して、基層及び基層の両面に接するように配される表層からなる複層構造の流延膜を形成する第1工程と、流延膜を支持体から剥ぎ取って溶媒を含んだ湿潤フィルムとする第2工程と、湿潤フィルムを乾燥してポリマーフィルムとする第3工程とを有し、基層を形成させるための基層用ドープにのみ、添加剤として揮散性物質が用いられることを特徴とする。
揮散性物質は、レタデーション制御剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤のいずれか1つを含むことが好ましい。
添加剤を入れた後の原料ドープをインラインミキサーで攪拌混合することが好ましい。インラインミキサーは、原料ドープが流れる配管に取り付けられており、インラインミキサーの上流側には、インラインミキサーの直径方向に延びたスリット状の添加口を備える添加ノズルが備えられていることが好ましい。
また、添加口は、配管の径方向に平行である長さLが配管の内径の20%以上80%以下であることが好ましい。スリットの隙間Cが、0.1mm以上配管の内径の1/10mm以下であることが好ましい。
添加口からインラインミキサーまでの距離Dが、1mm以上250mm以下であることが好ましい。また、配管内を流れる添加剤の流速V1及び原料ドープの流速V2は、1≦V1/V2≦5を満たすことが好ましい。なお、上記の流延は、2種類以上のドープを支持体上に同時あるいは逐次に流延することが好ましい。
本発明によれば、フィルムの表面への揮散性物質のブリードアウトが防止されたポリマーフィルムを製造することができる。また、ポリマー及び有機溶媒や揮散性物質を代表とする添加剤とを均一に攪拌混合して、均質なドープを得ることが出来るので、このようなドープを用いることで、光学特性が付与され、また優れた透明性を示すポリマーフィルムを製造することが可能となる。
本発明のドープに使われる原料について説明する。本発明では、基層と、この基層の両面に接するように配される表層とからなる複層構造のポリマーフィルムを形成させる。そのため、流延用ドープとして、2種類の表層用ドープと、1種類の基層用ドープとを調製する。本発明における基層とは、表層のうち支持体の上で空気に接触するエア面層と支持体との間に存在する層である。一方で、表層のうち、基層と支持体との間に存在する層を支持体面層と称する。そこで、以下の説明では、基層を形成させるドープを基層用ドープ、支持体面層を形成させるためのドープを支持体面用ドープ、エア面層を形成させるためのドープをエア面用ドープと称する。
本発明では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いることが好ましい。このセルロースアシレートフィルムは透明度が高いので光学フィルムとして有効である。セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートを用いることがより好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
上記式(I)〜(III)において、A及びBはセルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わしている。すなわち、Aはアセチル基の置換度であり、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートが好ましい。このようなセルロースアシレートを用いれば、有機溶媒に対する溶解度が高いドープを得ることができる。特に、非塩素系有機溶媒を用いれば、溶解度が非常に高く、低粘度であり、濾過装置により濾過する場合の濾過効率に優れたドープを得ることができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿、パルプ綿のどちらから得られたものでも良い。ここで、リンター綿から得られたものを使用すると、製造時に光学特性を制御し易く、不純物が少なく透明度が高いフィルムを得ることができる。このようなフィルムは、光学フィルムとして有効である。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
ドープに使用する溶媒としては、セルロースアシレートを溶解することができる化合物を用いることが好ましい。例えば、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)等が挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
溶媒としては疎水性のものが好ましく、この疎水性溶媒としてはジクロロメタンがもっとも好ましい。上記のハロゲン化炭化水素としては、炭素原子数1〜7のものが好ましく用いられる。また、セルロースアシレートの溶解度や、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、さらには、フィルムの機械強度、光学特性等の観点から、ジクロロメタンに炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないしは、数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましい。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを用いない溶媒組成も提案されている。この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いる。なお、これらのエーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよいし、エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も有機溶媒として用いることができる。また、有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。そして、2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合には、その炭素原子数が、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であれば良く、特に限定はされない。
なお、ドープを調製する際のポリマーとしてトリアセチルセルロース(TAC)を使用する場合には、後述する原料ドープ中のTAC濃度(重量濃度)が、5〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、TAC濃度が15〜30重量%であり、特に好ましくは、17〜25重量%である。このようなTACフィルムを製造する溶液製膜法での流延用ドープの製造方法(例えば、素材、原料の溶解方法および添加方法、濾過方法、脱泡等)は、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
次に、上記の各種原料を混合して、流延用のドープを調製する方法について説明する。図1は、本実施形態で用いるドープ製造設備10の概略図である。なお、ここに示す形態は本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。
ドープ製造設備10には、ドープの有機溶媒となる溶剤が入れられている溶媒タンク11と、フィルムの主原料であるポリマーとしてセルロースアシレートが入れられているホッパ13と、セルロースアシレートと溶剤とを混合して混合液17とする混合タンク15と、混合液17を加熱して溶解度を向上させる加熱装置22と、混合液17の温度を調節して原料ドープ20とする温調装置23とが備えられている。また、原料ドープ20を濾過するための第1濾過装置25、第2濾過装置26と、濾過した後の原料ドープ20を貯留するためのストックタンク28と、原料ドープ20の濃度を調整するためのフラッシュ装置31と、フラッシュ装置31内で発生した揮発溶剤を回収する回収装置32と、回収した溶剤を再生する再生装置33とが備えられている。
混合タンク15には、その外面を包み込むようにして設けられたジャケット35と、モータ37により回転する第1攪拌機38と、モータ39により回転する第2攪拌機40とが取り付けられている。第1攪拌機38としては、アンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機40としては、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。ジャケット35は、その内部に伝熱媒体を流し温度を調整することで、混合タンク15の内部を所定の温度範囲に制御するためのものである。
加熱装置22は、温度制御可能なジャケット付き配管が好ましく用いられ、混合液17中の固形分の溶解度を向上させる。加熱装置22は、溶解度を向上させる上で、混合液17を加圧するための加圧手段を備えているものが好ましい。加熱装置22による混合液17の加熱温度は0〜97℃であることが好ましい。これにより、混合液17に対して熱ダメージを与えずに、効果的に溶解度を向上させることができる。本発明において、加熱装置22による加熱とは、室温以上の温度に混合液17を加熱するということではなく、混合液17の温度を上昇させると言う意味である。例えば、混合液17の温度が−7℃のときには、0℃にする場合が挙げられる。
混合液17の溶解度を向上させるには、加熱装置22による加熱溶解に代えて混合液17を冷却する冷却溶解法も好適である。冷却溶解法を用いる場合には、混合液17を−100〜−10℃の範囲で冷却する。各原料の性状等に応じて、加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択しながら実施すれば、混合液17の溶解度を効果的に制御することができるので好ましい。
温調装置23は、混合液17を略室温とするためのものである。本実施形態では、温調装置23を出た後の液を原料ドープ20と称する。原料ドープ20とは、溶剤にセルロースアシレートを含むポリマーを溶解又は分散させた液である。このとき、ポリマーは完全に溶解していることが好ましい。
第1濾過装置25及び第2濾過装置26の内部には、所望の平均孔径のフィルタが備えられており、フィルタに通された原料ドープ20中から不溶解物が取り除かれる。微小な不溶解物を捕捉する上で、フィルタの平均孔径は100μm以下とすることが好ましい。フィルタの平均孔径は特に限定されないが、フィルタの平均孔径が小さすぎると、濾過に要する時間が長くなり、作業性が低下し、フィルタの平均孔径が大きすぎると、原料ドープ中に含まれる微小な不溶解物を捕捉することが難しいので、作業時間等を考慮しながら適宜選択する。また、第1濾過装置25、第2濾過装置26により原料ドープ20を濾過する際の濾過流量は、濾過に時間をかけ過ぎずに作業を進める上で、50L/時以上とすることが好ましい。
ストックタンク28には、その外面を包み込むジャケット43と、モータ45により回転する攪拌機46とが取り付けられている。ストックタンク28は、混合タンク15と同様にジャケット43の内部に所定の温度に調整された伝熱媒体が流され、その内部温度が調整される。ストックタンク28では、モータ45で攪拌機46を常時回転させて、原料ドープ20を攪拌することにより、その中に異物が凝集するのを抑制し、均一な状態を保持する。
ストックタンク28には、原料ドープ20の流路とされ、基層用ドープが調製される第1送液ラインL1と、支持体面層用ドープが調製される第2送液ラインL2と、エア面層用ドープが調製される第3送液ラインL3とがそれぞれ接続されている。なお、各送液ラインL1〜L3の片端は、フィルム製造設備50内に備えられる流延ダイに接続されており、これにより、ドープ製造設備10は各送液ラインL1〜L3を介してフィルム製造設備50と接続される。
第1送液ラインL1には、第1液52aが入れられている第1タンク52と、第1スタティックミキサー53とが取り付けられている。同様に、第2送液ラインL2には、第2液55aが入れられた第2タンク55と第2スタティックミキサー56とが取り付けられており、第3送液ラインL3には、第3液58aが入れられた第3タンク58と第3スタティックミキサー59とが取り付けられている。
各装置や部材は、耐食性や耐熱性に優れる等の利点からステンレス製の配管により接続されている。また、各配管の適当な箇所には、ポンプP1〜P8と、バルブV1、V2とが取り付けられている。ただし、ポンプやバルブは、必要に応じて設置数及び配置箇所等を変更することができるものであり、本実施形態に限定されるものではない。
次に、上記のドープ製造設備10により原料ドープ20を調製する手順について説明する。
バルブV1が開かれて溶媒タンク11から所定量の溶剤が混合タンク15へ送られる。また、ホッパ13からは、所望量のセルロースアシレートが混合タンク15へと送られる。混合タンク15では、第1攪拌機38及び第2攪拌機40が適宜回転されることで各種原料が混合されて混合液17が調製される。このとき、混合タンク15の内部温度は、ジャケット35の内部に温度が調節された伝熱媒体を通過させることにより−10〜55℃の範囲で保温される。なお、混合タンク15に送液するドープ原料の順番を、溶剤、セルロースアシレートの順としたが、この順番に限定されるものではなく、例えば、セルロースアシレート、溶剤の順としても良い。
混合液17は、ポンプP1により流量が調整されながら加熱装置22へと送られる。そして、混合液17は加熱されることで溶剤に対する固形分の溶解が促進される。本実施形態では、温調制御が可能なジャケットと加圧機能とを有する配管を加熱装置22として用いて、所定の温度範囲で原料ドープ20を加熱し、更に加圧することで溶剤に対する固形分の溶解度を高める。
混合液17は、温調装置23に送られて略室温とされる。以上により、溶剤にセルロースアシレートを溶解させた原料ドープ20を得ることができる。そして、原料ドープ20は、平均孔径が100μm以下のフィルタを備える第1濾過装置25により濾過されて含有する異物が除去される。このとき原料ドープ20が所望の濃度を満たす場合には、ストックタンク28へ送られ、流延に供されるまでの間、ここに貯留される。
ただし、上記のように混合液17を作ってから所望の濃度の原料ドープ20を調製する方法では、所望とする原料ドープ20の濃度が高いほど調製に要する時間が長くなるため、製造コストの増大を引き起こす等の問題が生じる。そこで、このような問題を回避するために、目的とする濃度よりも低濃度の原料ドープ20を調製した後、所望の濃度となるように濃縮させることが好ましい。本実施形態でも、この方法を採用し、以下に、濃縮方法の詳細を説明する。
先ず、所望の濃度よりも低濃度の原料ドープ20を調製する。原料ドープ20の調製方法は上述した通りである。次に、原料ドープ20を第1濾過装置25で濾過した後、バルブV2を介してフラッシュ装置31に送り、ここで原料ドープ20に含まれる溶媒の一部を蒸発させる。これにより、原料ドープ20を濃縮して所望の濃度に調整することができる。蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮液化した後、回収装置32で回収し、さらに再生装置33で再生する。この再生した溶媒を、混合液17を調整する際に使用すると、原料コストを削減できる等の効果を得ることが可能となる。
濃縮した原料ドープ20は、ポンプP2によりフラッシュ装置31から抜き出された後、第2濾過装置26に送られて含有する異物が除去される。そして、ストックタンク28に送られ貯留される。なお、第2濾過装置26で濾過する際の原料ドープ20の温度は0〜200℃であることが好ましい。また、原料ドープ20をフラッシュ装置31から抜き出す際には、原料ドープ20の中に発生した気泡を抜くため、泡抜き処理を施すことが好ましい。泡抜き処理の方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば、超音波照射法が挙げられる。
ストックタンク28では、攪拌機46が常時回転されて原料ドープ20が攪拌される。なお、ストックタンク28はジャケット43の内部に温度を調整した伝熱媒体を流すことによりその内部温度が調整される。このため、貯留される原料ドープ20は、その温度が略一定に保持される。
次に、上記の原料ドープをベースとして流延用ドープを調製する手順について説明する。なお、本実施形態では3種類のドープを調製する。具体的には、第1送液ラインL1では基層用ドープ、第2送液ラインL2では支持体面層用ドープ、第3送液ラインL3ではエア面層用ドープがそれぞれ調製される。ここで、3種類のドープは互いに異なる送液ラインで作られるが、各送液ラインでの流延ドープの製造方法は互いに同じである。そこで、以下の説明では、代表して第1送液ラインL1において基層用ドープの調整方法を説明し、エア面層用ドープ及び支持体面層用ドープの調製に関する説明は省略する。
先ず、第1送液ラインL1の中に、ポンプP3によりストックタンク28から適量の原料ドープ20が送られる。次に、第1送液ラインL1の中を流れる原料ドープ20に向かってポンプP4により第1タンク52から第1液52aが送られる。
第1液52aは、添加剤である揮散性物質を溶剤と混合させた混合物である。本発明の揮散性物質とは、乾燥工程で流延膜やフィルムの内部から表面に析出するものと、外部へ蒸発或いは昇華するものとが含まれる。また、本発明で使われる揮散性物質は、レタデーション制御剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤のいずれか1つを含む。このような揮散性物質は、フィルムに対して様々な機能を付与することができるという利点がある反面、分子同士の結合が弱かったり、分子量が低い等の理由から、乾燥時に溶剤と共に蒸発しやすく、また、フィルムの表面へ析出しやすいという問題を抱える。そこで、本発明では、揮散性物質を基層用ドープにのみ含有させるようにしたので、上記の問題が改善される。第1液52aには、揮散性物質以外にも可塑剤や剥離剤や微粒子等を添加させても良い。
また、上記の効果をより高いものとするために、基層用ドープには、原料ドープの固形分全体に対して揮散性物質の含まれる割合(重量%)が1重量%以上50重量%以下とすることが好ましい。上記の割合が50重量%を超えると揮散性物質の含有量が多すぎるために、表層を通過して表面へ析出するおそれが生じる。一方で、1重量%未満では、含有量が少なすぎるために基層に対して揮散性物質による機能性を付与することが難しい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、サリチレート系及びベンゾトリアゾール系の化合物が挙げられる。これらの詳細として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノンが挙げられる。サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、4−t−ブチルフェニルサリチレートが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2′−ヒドロキシ−3,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが挙げられる。
劣化防止剤としては、例えば、エポキシ化合物、弱有機酸、飽和多価アルコール等が挙げられる。また、一般的な有機材料からなる酸化防止剤、例えば、亜リン酸エステル化合物、ヒンダードフェノール、チオエーテル等のイオウ系酸化防止剤、光安定剤、金属不活性化剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、2級アミン、3級アミン等が挙げられる。
図2に示すように、第1スタティックミキサー53は、配管60内に取り付けられている。第1スタティックミキサー53には、配管60の長手方向に対しエレメント62、63が交互に配置されている。エレメント62、63は、長方形の板を180°ねじったものであり、エレメント62及びエレメント63は、ねじられる方向が逆にされている。各エレメント62、63の側端部は直交するようにそれぞれ90°ずらされている。また、第1スタティックミキサー53と、配管60とは固定部材64でしっかりと固定されておいる。
第1スタティックミキサー53の上流側には、第1液52aが流される添加用配管65が配置されている。添加用配管65は、ドープ用配管60を貫通する円管状のパイプ66と、このパイプ66の先端に取り付けられる添加ノズル68からなる。また、この添加ノズル68の先端にはスリット状の添加口69が形成されている。添加用配管65と、この配管65に最も近いエレメント62の側端部62aまでの距離Dは、1mm以上250mm以下であることが好ましく、より好ましくは、距離Dが、2mm以上250mm以下である。距離Dが近すぎると、原料ドープの抵抗で添加ノズル68が詰まってしまう恐れがあり、逆に遠すぎると第1スタティックミキサー53の中心に揮散性物質を投入することができなくなる恐れがある。
図3に示すように、添加ノズル68は先端部にかけて配管60の直径方向に延びた状態で形成されており、添加ノズル68及び添加口69の長手方向と添加ノズル68に最も近いエレメント62の側端部62aとが直交するように配置されている。添加口69から配管60内を流れる原料ドープ20に対して揮散性物質を含む第1液52aが入れられる。第1液52aが入れられた原料ドープ20の流れを受けてエレメント62が回転する。エレメント62の回転数は、原料ドープ20の流速により従い変化する。スタティックミキサーの先頭、すなわち上流側から原料ドープ20中に揮散性物質を入れられるので、原料ドープ20の中に揮散性物質が効率良く分散させることができる。このため、スタティックミキサーのエレメント数を減らして、工程の小型化及びコストを低減することができる。第2送液ラインL2及び第3送液ラインL3では、同様の形態のスタティックミキサーを用いているので、微粒子等の添加剤と原料ドープとを十分に攪拌させた均質なドープが得られる。なお、図3では、図面の煩雑化を避けるために配管の連結部等、一部の描写を省略している。
配管60内の幅方向に対して揮散性物質を均一に入れる上で、図4に示すように、添加口69のスリットの長さL(mm)は、ドープ用配管60の内径W(mm)に対して20%以上80%以下であることが好ましい。ここで、Lが20%未満だと添加口69の幅が短いために攪拌効率が低下するおそれがあり、逆にLが80%を超えると配管60とエレメント62との隙間に揮散性物質が入る恐れがあるので好ましくない。また、添加口69のスリットの隙間Cは、0.1mm以上ドープ用配管60の内径Wの1/10mm以下であることが好ましい。これにより、より確実にかつ効率良く原料ドープに対して揮散性物質を入れることができる。
原料ドープ20中に揮散性物質を均一に分散させるために、第1液52aの流速をV1(m/sec.)と、原料ドープ20の流速V2(m/sec.)とは、1≦V1/V2≦5であることが好ましい。V1は添加用配管65に送られる第1液52aの流速であり、V2は配管60内に送られる原料ドープ20の流速である。V1及びV2は、各配管内に設置した流速計により測定することが可能である。V1/V2の値が1未満であり、より小さくなるほど、送液方向に液切れが発生してしまう恐れがある。逆にV1/V2が5を超えて大きくなるほど、第1液52aがエネルギーを持ち、第1スタティックミキサー53を勢いよく通過してしまう恐れがある。なお、上記の流速は流量計による測定値に応じて適宜調節すれば良い。
また、第1液52aの粘度をN1(Pa・s)、原料ドープの粘度をN2(Pa・s)とするとき、N1は1×10−4Pa・s〜1×10−1Pa・sであり、N2は5Pa・s〜5×10Pa・sであることが好ましい。また、その粘度比であるN2/N1が1000≦N2/N1≦1000000であることが好ましい。上記の粘度はいずれも20℃においてせん断速度を1(sec−1)としたときのせん断粘度の測定値である。粘度は、公知の粘度計で測定すれば良い。上記の粘度N1及びN2は、第1液52aに限らず、第2液、第3液にも共通させる。上記の範囲の中から添加剤溶液の粘度を選択し、原料ドープに加えることで、添加後の原料ドープの粘度を任意に調節することができる。
また、ドープ用配管60を流れる原料ドープのせん断速度V3(sec−1)は、0.1(sec−1)〜30(sec−1)であることが好ましい。せん断速度V3が0.1(sec−1)未満では混合が進まない恐れがあり、逆に30(sec−1)を超えて大きすぎるとドープ用配管60での圧損が高くなり、20×9.8N程度の耐圧に耐えられない恐れがある。同様の理由から、原料ドープに関しては流体の流れの状態を示すレイノズル数ReがRe≦200であることが好ましい。
以上により、原料ドープ中に揮散性物質が均一に分散された基層用ドープを得ることができる。
同様にして第2送液ラインL2では、支持体面層用ドープが調製され、第3送液ラインL3では、エア面層用ドープが調製される。この際、第2液55a及び第3液58aとしては、揮散性物質以外の添加剤が含まれる液が用いられる。この液は、先の添加剤を溶剤に分散又は混合させた液である。上記の添加剤としては、揮散性物質でない添加剤、例えば、可塑剤や、支持体である流延バンドからの剥離を容易とする剥離促進剤(例えば、クエン酸エステルなど)や、微粒子であるマット剤(例えば、二酸化ケイ素など)等が挙げられる。本実施形態では、第2液55a及び第3液58aとして、微粒子を所望の溶剤に分散させた液を用いている。ここで添加剤と混合される溶剤は、ドープの調製用に用いたものと同じにすると、原料ドープに混合させても相反せずに相溶性に優れる流延用ドープを得ることが出来るために好ましい。なお、微粒子はドープ中で凝集したりして、フィルムとした場合に、透明性が低下する等の光学特性の低下を引き起こすおそれがあるが、図2に示すようなスタティックミキサーを用いることで、微粒子を均一に分散させたドープを得ることが可能となるため、微粒子の凝集が抑制されてフィルムをロール状に巻き取った際にフィルム面間での密着が抑制されながらも透明性に優れるフィルムを得ることができる。
上記の微粒子としては、二酸化ケイ素誘導体を用いることが好ましい。この二酸化ケイ素誘導体とは、二酸化ケイ素であり、三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂も含まれる。このように微粒子として二酸化ケイ素誘導体であり、さらにはその表面がアルキル化処理されたものを使用すると、アルキル化処理という疎水化処理が施されているために、溶媒に対しての分散性がよい。したがって、微粒子同士の凝集を抑制してフィルムを製造することができるので、面状欠陥が少なく、かつ透明性に優れるフィルムを製造することが可能となる。
なお、アルキル化処理された微粒子の表面に導入されるアルキル基は、炭素数が1〜20とする。より好ましくは、導入されるアルキル基の炭素数が、1〜12であり、特に好ましくは、炭素数が1〜8である。このようなアルキル基が導入された微粒子では、微粒子同士の凝集をより抑制し、かつ分散性を向上させることができる。上記のように表面に炭素数が1〜20のアルキル基を有する微粒子は、例えば、二酸化ケイ素の微粒子をオクチルシランで処理することにより得ることができる。また、表面にオクチル基を有する二酸化ケイ素誘導体の一例としては、アエロジルR805(日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、本発明では、これも好ましく用いることができる。
原料ドープの固形分に対する微粒子の含有量は0.2%以下となるようにすることが好ましい。微粒子の含有量は、原料ドープを調製に使用する溶剤に対する微粒子の添加量を決定して調整すれば良い。このように含有量を制御しながら微粒子を添加させた原料ドープでは、微粒子の凝集による異物の発生を抑制することができるために優れた透明性を発現する。なお、微粒子は、その平均粒径が1.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3〜1.0μmであり、特に好ましくは、0.4〜0.8μmである。
本発明の揮散性物質として挙げられるレタデーション制御剤、可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、染料、及び、先ほど表層用ドープの調製に用いたマット剤、剥離剤、剥離促進剤に関しては、特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
本発明で用いられる可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤が代表的である。リン酸エステル系可塑剤の例には、トリフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。また、カルボン酸エステル系可塑剤が利用される場合もある。カルボン酸エステル系可塑剤の例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、グリセロールトリアセテート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート及びトリアセチンが含まれる。更には、トリメリット酸やピロメリット酸のエステルをリン酸系可塑剤と併用しても良い。このようなトリメリット酸やピロメリット酸のエステルは、リン酸エステル系可塑剤のブリードアウトを防止する作用がある。
上記実施形態では、インラインミキサーとして、長方形の板をねじって形成されたエレメントを備えたスタティックミキサーを用いる例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のタイプのインラインミキサーを用いてもよい。インラインミキサーとしては、例えば、短冊状の複数の板を格子状に組み合わせることで形成されたエレメントを備えたスルーザーミキサーを用いるといったことが考えられる。
本実施形態では、揮散性物質や微粒子、剥離促進剤等を原料ドープに添加する方法として、予め各種材料を溶剤に混合させた溶液を用いる形態を示したが、これらの材料が固体の場合には、ホッパ等を用いて各送液ラインに送っても良い。さらに、原料ドープに複数種類の上記材料を添加したい場合には、予め、所望の材料を溶剤に溶解させた溶液を調製した後に、タンクを利用して各送液ラインに送っても良い。各材料が常温で液体の場合には、溶剤を使用せずに各送液ラインへそのまま送っても良い。また、揮散性物質以外の上記材料は、原料ドープを調製する時点で添加しても良い。
次に、上記の流延用ドープを用いてフィルムを製造する方法について説明する。図5は、本実施形態に用いるフィルム製造設備50の概略図である。
フィルム製造設備50には、支持体上に流延用ドープを流延して流延膜70を形成させる流延室72と、この流延膜70を支持体から剥ぎ取り形成した溶媒を含んだフィルム、すなわち湿潤フィルム75を搬送させる渡り部77と、湿潤フィルム75の両側端部を保持し搬送する間に乾燥させてフィルム76とするテンタ78と、フィルム76の乾燥をより促進させる乾燥室80と、フィルム76を冷却させる冷却室81と、フィルム76をロール状に巻き取る巻取室82とが備えられている。
流延室72の内部には、回転ローラ86a、86bに巻き掛けられ、支持体として作用する流延バンド85が配されている。また、流延バンド85の直上の所定の位置には、ドープ製造設備10から流延用ドープが供給されるフィードブロック88と、流延用ドープの流延口となるスリットが形成された流延ダイ89とを備える。その他にも、乾燥風を送り出して流延バンド85上に形成された流延膜70を乾燥させる送風装置90と、回転ローラ86a、86bの内部に伝熱媒体を送る伝熱媒体循環装置91と、凝縮器(コンデンサ)92と、回収装置93と、剥取ローラ95とが備えられている。流延室72の外部には、その内部温度を調整する温調設備97が取り付けられている。
流延ダイ89には、流延用ドープを安定して流延させるために用いる減圧チャンバ98が取り付けられている。また、送風装置90の流延ダイ89側には、送風装置90から送り出す乾燥風により流延膜70の平面が波打つのを防止することを目的として遮風板90aが取り付けられている。
流延バンド85は、回転ローラ86bに接続させた駆動装置(図示しない)により回転ローラ86bを回転させて、無端で走行させる。このとき、流延バンド85の移動速度(流延速度)は、10〜200m/分であることが好ましい。また、回転ローラ86a、86bの内部には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されている。この流路内に所定の温度に調整された伝熱媒体が送られた後、伝熱媒体循環装置91により伝熱媒体を循環させることで、各回転ローラ86a、86bの表面温度が所望の値に調整される。これにより、流延バンド85の表面温度が調節され、−20〜40℃の範囲内で略一定に保持される。
流延バンド85の幅は、特に限定されるものではないが、流延するドープの幅に対して、1.1〜2.0倍のものを用いることが好ましい。また、その長さは、20〜200mであり、厚みは0.5〜2.5mmであることが好ましい。その他にも、流延バンド85としては、全体の厚みムラが0.5%以下であり、表面粗さが0.05μm以下となるように研磨されているものを用いることが好ましい。これにより、表面に傷を付けることなく流延膜70を形成することができるので、平面性に優れる流延膜70を得ることが出来る。なお、流延バンド85は、耐久性や耐熱性および、流延膜70の剥ぎ取り易さ等を考慮すると、ステンレス製であることが好ましく、中でも、十分な耐腐食性と強度とを有するSUS316製であることが好ましい。
流延室72の内部温度は流延膜70の乾燥に相応しい温度範囲となるように、常時温調設備97により調整されている。凝縮器(コンデンサ)92は、流延膜70から蒸発した多量の溶媒ガスを凝縮液化させるためのものであり、液化させた溶媒ガスは回収装置93に回収された後に、再生装置(図示しない)で不純物が除去されて再生溶媒とされる。ドープの調製時にこの再生溶媒を再利用すると原料コストが削減できる。
流延ダイ89は、コートハンガー型のものが好適に用いられる。流延ダイ89の幅は、特に限定されるものではないが、流延用ドープの流延幅に対して、1.05〜1.5倍の範囲のものであり、最終製品となるフィルム76の幅に対して1.01〜1.3倍程度が好ましい。また、流延用ドープの流延を円滑に行なうために、その表面粗さは、0.05μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。材質は、耐久性や耐腐食性を考慮して、ジクロロメタンやメタノールと水との混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じないものを用いることが好ましく、ステンレス製であることが好ましい。より好ましい流延ダイ89は、本実施形態のように、十分な耐腐食性と強度とを有するSUS316製である。ただし、電解質水溶液での強制腐食試験により、SUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであれば好ましく用いることが出来るために、特に限定されるものではない。その他にも、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下である素材からなる流延ダイ89を用いると、熱ダメージを考慮する必要が低減されるので好ましい。
流延ダイ89は、鋳造後1ヵ月以上経過したものを研削加工して作製することが好ましい。これにより、流延ダイ89の内部に円滑かつ一様に流延用ドープを流すことが出来るので、スジ等を発生させることなく平面性に優れる流延膜70を形成することが可能となる。ただし、より優れた上記効果を得るために、流延ダイ89の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下であり、真直度が、いずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。また、スリットのクリアランスは、自動調整により0.5〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いることが好ましい。さらに、流延ダイ89のリップ先端の接液部の角部分において、Rがスリット全巾に亘り50μm以下のものを用いることが好ましい。なお、流延ダイ89の内部の剪断速度は、1〜5000(1/秒)となるように調整されているものを用いることが好ましい。
更に、流延ダイ89は、温調機が取り付けられているものを使用し、流延用ドープを流延する間、その内部温度が所定の範囲に保持されることが好ましい。また、流延ダイ89の幅方向に、所定の間隔で厚み調整ボルト(ヒートボルト)と、このヒートボルトによる自動厚み調整機構とを取り付けて、さらに、予め設定されたプログラムでヒートボルトを制御することにより、ドープ製造設備10から流延用ドープを送り出す際に使用するポンプ(図示しない)の送液量を調整することが好ましい。また、フィルム製造設備50の内部の任意の位置に厚み計(例えば、赤外線厚み計)を設けて、プロファイルに基づく調整プログラムによりフィードバック制御を行っても良い。なお、流延エッジ部を除いて任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向での厚みの最小値と最大値との差が3μm以下であり、厚み精度が±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ89のリップ先端には、耐摩耗性の向上等を目的として、硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、セラミックスコーティングやハードクロムめっき、および窒化処理方法等が挙げられる。ただし、硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削加工が可能であり、低気孔率、かつ脆性および耐腐食性に優れるとともに、流延ダイ89に対しては密着性に優れるが、一方でドープに対しては密着性に劣るものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)やAl、TiN、Cr等が挙げられる。中でも、WCを用いることが好ましい。なお、WCのコーティングは、溶射法で行うことが出来る。
また、スリットの両端に溶媒供給装置(図示しない)を取り付けて、ドープを可溶化させる溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5重量部、メタノール13重量部、n−ブタノール0.5重量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部及びスリットと外気との両気液界面に供給することが好ましい。これにより、流延用ドープをスリットから流延している間、流延用ドープが局所的に乾燥固化することがない。可溶化溶媒の供給量は、特に限定されるものではないが、スリット端部の片側ごとに、0.1〜1.0mL/分の範囲で供給すると、流延膜70の内部への異物の混入を防止することが出来るので好ましい。なお、可溶化溶媒を供給する際には、脈動率が5%以下のポンプを用いることが好ましい。
減圧チャンバ98は、スリットから流延バンド85までの間にある流延用ドープの流れ、すなわち流延ビードの背面を減圧させるためのものである。流延ビードの背面の減圧度は、特に限定されるものではないが、(大気圧−2000Pa)以上(大気圧−10Pa)以下とすることが好ましい。これにより、風の影響を受けて流延ビードの表面に波うちが発生するのを抑制し、安定した流延ビードを形成させることができる。このため、形成される流延膜70は、しわやつれ等がなく、平面性に優れる。
渡り部77には、複数のローラと所望の温度に調整された乾燥風を湿潤フィルム75に吹き付けて乾燥を促進させるための乾燥装置100とが備えられている。テンタ78には、レールの配置にしたがって走行し、多数のクリップが取り付けられたチェーンと、乾燥装置(ともに図示しない)とが備えられている。また、テンタ78の下流には、フィルム76の両側端部を切断するための耳切装置102が設けられている。
乾燥室80には、複数のローラ105と吸着回収装置106とが備えられている。乾燥室80は、その内部の温度を調整する温度調整装置(図示しない)が取り付けられており、所定の範囲に調整される。冷却室81は、フィルム76を略室温となるまで冷却させるためのものである。冷却室81の下流に、強制除電装置(除電バー)107とナーリング付与ローラ108とが設けられている。また、巻取室82には、巻取ローラ110とプレスローラ111とが備えられている。
次に、上記のフィルム製造設備50によりフィルム76を製造する手順について説明する。
先ず、ドープ製造設備10で調製されたエア面用ドープ、支持体面用ドープ及び基層用ドープを流延用ドープとして各送液ラインL1〜L3を介してフィードブロック88に適量送る。フィードブロック88の内部には、予め所望の配置となるように設計された流路が形成されており、ここで各ドープは所望の配置となるように調整される。フィードブロック88で合流させた流延用ドープは、流延ダイ89に送られる。
流延ダイ89からは、図6に示すように、基層用ドープ120と2種類の表層用ドープであるエア面用ドープ121及び支持体面用ドープ122とが、走行する流延バンド85上に同時に流延される。これにより、基層120aの両面に表層としてエア面層121aと支持体面層122aとが設けられた流延膜70が形成される。
流延室72では、流延膜の搬送方向に向かって送風口が設けられた送風装置90から流延膜70に対して所望の温度に調整された乾燥風が送り出され、流延膜70の乾燥が促進される。このようにして送風口を設けた送風装置からは、流延膜70の搬送方向に向かって乾燥風が略平行に送り出されるため、乾燥風によって流延膜70の表面に厚みムラやしわ等の発生が抑制される。流延膜70から蒸発した溶媒ガスは凝縮器92により凝縮液化された後、回収装置93で回収される。回収された溶媒は再生装置(図示しない)により再生されてドープ調製用として再利用される。
自己支持性を持つまで乾燥が促進された流延膜70は、剥取ローラ95で支持された状態で流延バンド85から剥ぎ取られ、湿潤フィルム75とされる。形成直後の湿潤フィルム75の残留溶媒量は、10〜200重量%であることが好ましい。そして、この湿潤フィルム75は、渡り部77に送られる。渡り部77では、多数のローラで支持し搬送される間に乾燥装置100から送り出される乾燥風により、湿潤フィルム75の乾燥が促進される。なお、乾燥装置100から送り出される乾燥風の温度は、20〜250℃で略一定とされることが好ましい。この乾燥風の温度は、流延用ドープに使用するポリマーや添加剤等の原料種、または製造速度等を考慮して上記の範囲内で任意に決定すればよい。
なお、本発明における残留溶媒量とは、流延膜、湿潤フィルム、フィルム等に含まれる溶媒の量である。この残留溶媒量は乾量基準でのものであり、サンプリング時におけるサンプルの重量をx、そのサンプルを完全に乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。
渡り部77では、複数のローラのうち下流側すなわち渡り部77の出口付近に配されるローラの回転速度が、上流側すなわち渡り部77の入口側に配されるローラの回転速度よりも速くされることが好ましい。これにより、搬送される湿潤フィルム75には適度の張力が付与されて、しわやつれ等の発生が抑制される。また、高残留溶媒量である湿潤フィルム75に張力が付与されるので、容易に分子配向が調整できる。そのため、フィルムとしてのレタデーション値を制御しやすい。
続いて、湿潤フィルム75はテンタ78に送られる。テンタ78では、湿潤フィルム75の両側端部がクリップ(図示しない)で把持された後、搬送される間に乾燥装置(図示しない)から乾燥風が供給されるため、湿潤フィルム75はよりいっそう乾燥が促進されてフィルム76となる。テンタ78の内部では、搬送する湿潤フィルム75を幅方向に延伸させることで、形成するフィルム76のレタデーション値を所望の値に調整することが好ましい。また、テンタ78の内部は、複数の区画に分けられていることが好ましく、各区画の温度は、上記の乾燥装置により異なる温度に調整されていることが好ましい。これにより、湿潤フィルム75を搬送する間に、異なる温度で段階的に乾燥することができるので、急激な溶剤の蒸発により形状が変化するのを抑制して平面性に優れるフィルム76を得ることができる。なお、本実施形態においてテンタ78としては、湿潤フィルム75の把持手段として複数のクリップを有するクリップ型テンタを示したが、クリップに代えてピンとし、このピンを湿潤フィルム75の両側端部に突き刺して固定した後、搬送する間に幅方向に延伸させることもできる。
湿潤フィルム75を長手方向に延伸または緩和させる処理は、渡り部77でも行なうことができる。このとき、渡り部77及びテンタ78では、湿潤フィルム75の流延方向および幅方向の少なくとも1方向を、延伸前の幅に対して0.5〜300%の割合で延伸させることが好ましい。なお、渡り部77或いはテンタ78において湿潤フィルム75に張力を付与している間は、乾燥温度を略一定に保持することが好ましい。これにより、乾燥温度の違いにより延伸程度に差が生じるのを防止することができる。
フィルム76は耳切装置102に送られ、テンタ78で傷付いた両側端部が切断除去される。このとき、切断されたフィルム76の両側端部はクラッシャ103に送られ、チップとして粉砕される。このようにテンタ78の下流に耳切装置102を設けてフィルム76の両側端部を切断除去すると、先ほどテンタ78で傷付いた両側端部を除去することができるために、平面性に優れるフィルム76を得ることができる。なお、フィルム76の両側端部を切断する本処理は省略することもできるが、流延室72から巻取室82までのいずれかで行うことが好ましい。
この後、フィルム76は乾燥室80に送られる。乾燥室80では、フィルム76は多数のローラ105で支持し搬送される間に乾燥が十分に促進される。乾燥室80の内部温度は、特に限定されるものではないが、フィルム76の膜面付近の温度が60〜145℃となるように調整されることが好ましい。これによりフィルム76を構成するポリマーの熱ダメージを抑制しながらも効果的に溶剤を蒸発させることができる。上記の膜面温度は、フィルム76の搬送路の上方に温度計を設置することで知ることができる。また、本実施形態では、乾燥室80の内部に浮遊するフィルム76から蒸発した揮発溶剤を含むガスを、吸着回収装置106により回収した後、溶剤成分を除去してから、再度、乾燥室80に乾燥空気として送られる。これにより、エネルギーコストを削減することができるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
なお、耳切装置102と乾燥室80との間に予備乾燥室(図示しない)を設けて、フィルム76を予備乾燥すると、乾燥室805においてフィルム76の膜面温度が急激に上昇することによる形状変化を抑制することができる等の効果を得ることができるので好ましい。
十分に乾燥されたフィルム76は冷却室81に送られる。冷却室81においてフィルム76を略室温となるまで徐々に冷却させれば、その表面にしわやつれが発生するのを抑制することができる。なお、乾燥室80と冷却室81との間に調湿室(図示しない)を設けて、フィルム76を調湿した後、冷却室81に送ると、フィルム76の表面に対して優れたしわ伸ばし効果を得ることができるので好ましい。
略室温とされたフィルム76は強制除電装置107に送られ、その帯電圧が所定の範囲(例えば、−3〜+3kV)となるように調整される。なお、図5では、強制除電装置107の設置箇所を、冷却室81の下流側とする形態を示しているが、この位置に限定されるものではない。更に、フィルム76はナーリング付与ローラ108によりその両側端部に対してエンボス加工が施される。このようにナーリングを付与すると、フィルム76の平面性を向上させる効果が得られる。
最後に、巻取室82において、巻取ローラ110にフィルム76が巻き取られロール状のフィルム製品が製造される。巻き取り時のフィルム76には、プレスローラ111で中心方向の押圧が付与される。しわやつれを発生させずに巻取るために、巻取開始時から終了時までの間で、巻き取り時の張力は徐々に変化させることがより好ましい。また、巻き取るフィルム76は、搬送方向に少なくとも100m以上とすることが好ましく、幅方向が1400〜2500mmであることが好ましい。ただし、本発明は、2500mmより大きい場合にも効果を得ることができる。
なお、完成したフィルム76の厚みは、20〜100μmであることが好ましい。より好ましくは、厚みが20〜80μmであり、特に好ましくは、30〜70μmである。ただし、本発明は、完成したフィルム76の膜厚に、特に限定されるものではない。
本発明では、基層と、この基層の両面に配される表層とからなるフィルムを形成するようにし、更に、基層用ドープにのみ可塑剤や紫外線吸収剤等のブリードアウトを引き起こす恐れのある揮散性物質を含有させるようにしたので、製造後から時間が経っても揮散性物質のフィルム表面への析出が防止される。また、フィルム製膜時において、流延膜や湿潤フィルム及びフィルムを乾燥させる場合に、溶剤の蒸発と共に揮散性物質が蒸発するのを防止することができるので、揮散性物質が有する機能性を十分に発揮させたフィルムを製造することができる。
流延用ドープを流延する方法は特に限定されず、複数のドープを共に流延することができる公知の方法を用いれば良い。本実施形態のように2種類以上のドープを同時に流延させても良いし、複数のドープを逐次に流延させても良い。更には、同時或いは逐次に流延させる方法を組み合わせても良い。複数のドープを逐次に流延させる際には、図7に示すように、流延バンド85の上方にドープの数に応じた複数の流延ダイ150〜153を設置する。各流延ダイ150〜153にはドープ製造設備から支持体面層用ドープ、基層用ドープ、エア面層用ドープが適宜送られ、流延バンド85の上に支持体面層用ドープから逐次流延される。これにより、支持体面層の上に基層、エア面層が順重ねられ、3層構造の流延膜160が形成される。また、流延ダイは、フィードブロックを取り付けたものでも良いし、マルチマニホールド型でも良い。共流延により複層構造のフィルムを形成させる場合には、エア面側の層の厚さ及び支持体側の層の厚さがそれぞれフィルム全体の厚みに対して0.5〜30%であることが好ましい。なお、図7において、フィルム製造設備50と同じ部材には同符号を付すると共に、説明は省略する。
流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフィルムの性能およびそれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[1073]段落から[1087]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
[表面処理]
このセルロースアシレートフィルムにおいては、少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。そして、この表面処理は、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていてもよい。
さらに、セルロースアシレートフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。機能性層としては、帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層、および光学補償層のうち、少なくとも1層を設けることが好ましい。そして、この機能性層は、少なくとも一種の界面活性剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましく、少なくとも一種の滑り剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましい。また、機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましく、少なくとも一種の帯電防止剤を1〜1000mg/m含有することが好ましい。なお、セルロースアシレートフィルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1072]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
本発明により得られるフィルムの用途について説明する。本発明により得られるフィルムは、高レタデーション値を有し、かつ透明度が高い。そのため、特に、偏光板保護フィルムとして有用である。なお、このフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を液晶層に2枚貼ることにより作製した液晶表示装置は、液晶表示能力に優れる等の特長を示す。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号公報(例えば、[1088]段落から[1265]段落)には、液晶表示装置として、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型、その他の例が詳しく記載されており、この方法も本発明に適用させることができる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルムについての記載や、適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもできる。これらの記載も、本発明に適用させることができる。
以下、本発明に係る実施例について説明する。ただし、ここに示す実施例が本発明を限定するものではない。
下記の材料を混合して、ドープ製造設備10により原料ドープ20を調製した。また、本実施例では、第1溶媒が入れられた溶媒タンク11以外に、下記の第2溶媒が入れられた第2の溶媒タンクを用意した。
・セルローストリアセテート(置換度2.94、粘度平均重合度305、ジクロロメタン溶液6重量%の粘度 350mPa・s) 100重量部
・ジクロロメタン(第1溶媒) 390重量部
・メタノール(第2溶媒) 60重量部
先ず、溶媒タンク11から適量のジクロロメタンを混合タンク15に送り、更に、第2の溶媒タンクから、適量のメタノールを混合タンク15へ送った。また、ホッパ13からはセルローストリアセテートを送った。この後、混合タンク15では、各種材料を攪拌混合させて混合液17を得た。次に、混合液17を加熱装置22に送り、セルロースアシレートを溶媒に溶解させた後、温調装置23により略室温として濃縮前の原料ドープを得た。そして、この原料ドープをフラッシュ装置31に送り、ここで溶媒を蒸発させることにより所望の濃度の原料ドープ20を得た。
濃縮した原料ドープ20は、ポンプP2によりフラッシュ装置31から抜き出した後、超音波照射法により泡抜き処理を施した。そして、第2濾過装置26により濾過して不純物を除去した後に、ストックタンク28へと送り、ここで貯留した。
次に、原料ドープ20の一部を第1送液ラインL1に送った。続けて、この原料ドープ20に向かって第1タンク52からポンプP4により第1液52aを送り出し、図2に示すようにスリット状の添加口69からドープ用配管60内を流れる原料ドープ20に第1液52aを投入した。そして、これを第1スタティックミキサー53により攪拌混合して均質な基層用ドープを調製した。第1液52aとしては、下記に示す材料を、予め原料ドープ及び混合溶媒の一部と混合させた混合液を用いた。また、実施例1では、基層用ドープ中に含まれる揮散性物質の割合を2.5重量%とした。なお、下記のレタデーション低下剤とは、レタデーションを低下させるレタデーション制御剤であり、波長分散調整剤と共に本発明の揮散性物質に該当する物質である。
・化1に示すレタデーション低下剤 12重量部
・化2に示す波長分散調整剤 1.8重量部
・微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05重量部
Figure 2007283762
Figure 2007283762
上記の原料ドープ20を用いて、支持体面層用ドープ及びエア面層用ドープを調製した。ここで、第2液55a及び第3液58aとしては、予めドープ調製用の溶剤に微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7)を0.05重量部含有させた分散液を用いた。
そして、図6に示すように、上記により調製した基層用ドープ120、エア面層用ドープ121、支持体面層用ドープ122を、図2に示すフィルム製造設備50により製膜化してフィルム76を製造した。先ず、走行する流延バンド85上に流延ダイ89から上記3種類のドープを共に流延して、基層120aの各表面にエア面層121a及び支持体面層122aを有する3層構造の流延膜70を形成した。次に、この流延膜70を流延バンド85から剥ぎ取り湿潤フィルム75とした後、渡り部77及びテンタ78で乾燥させてフィルム76とした。この後、続けて、フィルム76を乾燥室80に送り、多数のローラ105に巻き掛けながら搬送する間に乾燥を十分に促進させた。最後に、巻取室82の巻取ローラ110で巻取りフィルム76製品とした。完成したフィルム76の残留溶媒量は0.4重量%であり、膜厚は80μmであった。また、完成したフィルム76の表面を目視により観察したところ、揮散性物質の析出は確認されなかった。
実施例2では、実施例1と同様の材料及び製造方法によりフィルム76を製造した。ただし、実施例2では、基層にのみ揮散性物質を含有させたが、図2に示す添加ノズル68の添加口69をスリット状ではなく円形とした。また、完成したフィルム76の表面を目視により観察したところ、実施例1と比べて若干の揮散性物質の析出と考えられるブリードアウトを確認したが製造上問題のないレベルであった。
〔比較例1〕
比較例1では、第3液58aの代わりに実施例1で用いた揮散性物質を含む第1液52aを原料ドープ20中に入れてエア面層用ドープを調製した。このとき、エア面層用ドープ中に揮散性物質の含まれる割合は2.5重量%とし、更に、図2に示す添加ノズル68の添加口69をスリット状ではなく円形とした。なお、基層用ドープは、原料ドープ20をそのままの状態で使用した。そして、完成したフィルム76の表面を目視により観察したところ、揮散性物質の析出が多量に確認され、フィルム製品として使用することができなかった。
〔比較例2〕
比較例2では、第2液55aの代わりに実施例1で用いた揮散性物質を含む第1液52aを原料ドープ20中に入れて支持体面層用ドープを調製した。また、図2に示す添加ノズル68の添加口69をスリット状とした。なお、基層用ドープは、原料ドープ20をそのままの状態で使用した。そして、完成したフィルム76の表面を目視により観察したところ、比較例1に比べて少ないものであったが、フィルム製品としては使用できないほどの揮散性物質の析出が確認された。
以上の結果から、本発明のように表面へ析出する恐れのある添加剤、すなわち揮散性物質を基層用ドープにのみ含有させて、基層とその基層用の表面に接するようにして配される表層とからなる複層構造のポリマーフィルムを製造すると、表面への添加剤の析出が抑制されるフィルムを得ることができることを確認した。
本実施形態で用いるドープ製造設備の一例の概略図である。 スタティックミキサーを用いて原料ドープに添加剤を添加させる際の一例の説明図である。 本発明に係る配管及び添加剤ノズル近傍の一例の概略図である。 配管の径方向から見た配管及び添加剤ノズル近傍の断面図である。 本実施形態で用いるフィルム製造設備の一例の概略図である。 流延ダイ近傍の一例の概略図である。 本発明に関わるドープの流延方法の一例を示す概略図である。
符号の説明
10 ドープ製造設備
20 原料ドープ
50 フィルム製造設備
52 第1タンク
52a 第1液
53 第1スタティックミキサー
70 流延膜
85 流延バンド
120a 基層
121a エア面層
122a 支持体面層

Claims (9)

  1. ポリマーと有機溶媒との混合物である原料ドープに添加剤を含有させて調製した2種類以上のドープを、走行する支持体上に共に流延して、基層及び前記基層の両面に接するように配される表層からなる複層構造の流延膜を形成する第1工程と、
    前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取って溶媒を含んだ湿潤フィルムとする第2工程と、
    前記湿潤フィルムを乾燥してポリマーフィルムとする第3工程とを有し、
    前記基層を形成させるための基層用ドープにのみ、前記添加剤として揮散性物質が用いられることを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
  2. 前記揮散性物質は、レタデーション制御剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤のいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの製造方法。
  3. 前記添加剤を入れた後の前記原料ドープをインラインミキサーで攪拌混合することを特徴とする請求項1又は2記載のポリマーフィルムの製造方法。
  4. 前記インラインミキサーは、前記原料ドープが流れる配管に取り付けられており、
    前記インラインミキサーの上流側には、前記インラインミキサーの直径方向に延びたスリット状の添加口を備える添加ノズルが備えられていることを特徴とする請求項3記載のポリマーフィルムの製造方法。
  5. 前記添加口は、前記配管の径方向に平行である長さLが前記配管の内径の20%以上80%以下であることを特徴とする請求項4記載のポリマーフィルムの製造方法。
  6. 前記スリットの隙間Cが、0.1mm以上前記配管の内径の1/10mm以下であることを特徴とする請求項4又は5記載のポリマーフィルムの製造方法。
  7. 前記添加口から前記インラインミキサーまでの距離Dが、1mm以上250mm以下であることを特徴とする請求項4ないし6いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
  8. 前記配管内を流れる前記添加剤の流速V1及び前記原料ドープの流速V2は、1≦V1/V2≦5を満たすことを特徴とする請求項4ないし7いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
  9. 前記流延は、前記2種類以上のドープを前記支持体上に同時あるいは逐次に流延することを特徴とする請求項1ないし8いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010149362A (ja) * 2008-12-25 2010-07-08 Fujifilm Corp 溶液製膜方法及び設備
JPWO2013038597A1 (ja) * 2011-09-12 2015-03-23 コニカミノルタ株式会社 光学フィルムの製造方法

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