JP2007230839A - 圧電磁器組成物、積層型圧電素子及びその製造方法 - Google Patents

圧電磁器組成物、積層型圧電素子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温かつ還元性雰囲気下での焼成による酸素空孔に起因する絶縁抵抗の低下を抑制することのできる圧電磁器組成物を提供する。
【解決手段】複合酸化物を主成分とする複数の圧電体層11と、複数の圧電体層11間に形成されCuを含有する内部電極層12とを備える積層型圧電素子1であって、圧電体層11が、(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1、Miは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、主成分に対して、CuをCuO換算で1wt%以下(ただし、0は含まず)、AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有する焼成体からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、アクチュエータや圧電ブザー、発音体、センサ等の各種圧電素子の圧電体層に好適な圧電磁器組成物及び当該組成物を用いた積層型圧電素子に関する。
圧電素子に用いられる圧電磁器組成物としては、圧電特性、特に圧電歪定数が大きいことが要求される。この特性を満たす圧電磁器組成物として、例えばチタン酸鉛(PbTiO)とジルコン酸鉛(PbZrO)、及び亜鉛・ニオブ酸鉛[Pb(Zn1/3Nb2/3)O]により構成される3元系の圧電磁器組成物や、前記3元系の圧電磁器組成物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した圧電磁器組成物等が開発されている。
これら従来の圧電磁器組成物は、比較的高温で焼成する必要があり、また焼成が酸化性雰囲気下で行われるため、例えば内部電極を同時焼成する積層型圧電素子においては、高い融点を持ち、酸化性雰囲気下で焼成しても酸化されない貴金属(例えば、PtやPd等)を内部電極の導電材料として用いる必要があった。その結果、コスト増を招き、製造される積層型圧電素子の低価格化に支障をきたしている。
このような状況に対して本願出願人は、前記3元系の圧電磁器組成物に、Fe、Co、Ni及びCuから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分、及び、Sb、Nb及びTaから選ばれる少なくとも1種を含む第2副成分を加えることにより低温焼成を可能とし、内部電極にAg−Pd合金等の安価な材料を使用可能とすることを特許文献1において提案している。
特開2004−137106号公報
ところで、より安価な金属であるCuを内部電極の電極材料として用いる場合、酸化性雰囲気(例えば、大気中)での焼成では、低温で焼成したとしてもCuが酸化し、導電性が損なわれるという不都合が発生する。
このような不都合を解消するためには、酸素分圧の低い還元性雰囲気(例えば、酸素分圧が1×10−10〜1×10−6気圧程度)において焼成を行う必要がある。還元性雰囲気下での焼成では、雰囲気中の酸素が極めて少ないため、大気中焼成と比較して、圧電磁器組成物の結晶中に酸素空孔が多く生成してしまう。この酸素空孔が高温(例えば150℃)における圧電磁器組成物の絶縁抵抗を低下させる。150℃程度の温度領域は、製品の作動規格温度範囲に含まれることがあり、圧電磁器組成物の絶縁抵抗の低下は製品の信頼性に深刻な影響を及ぼす。
そこで本発明は、低温かつ還元性雰囲気下での焼成による酸素空孔に起因する絶縁抵抗の低下を抑制することのできる圧電磁器組成物及びこの圧電磁器組成物を用いた積層型圧電素子を提供することを課題とする。
本発明者等は、圧電磁器組成物中にCuを含有させると絶縁抵抗の低下抑制に効果があること、また、低温焼成にAgOを含有させることが有効であることを知見した。ここで、AgOを単独で添加した場合には、添加量が増えると絶縁抵抗を低下させるとともに絶縁寿命を低下させる傾向があるが、Cuを共存させることにより、AgOによる絶縁抵抗低下を招くことがなかった。そして、Cu及びAgOを含有する圧電磁器組成物において、低電圧下(1v/mm以下)での圧電特性改善の程度に比べて、高電圧下(1〜3kV/mm)での圧電特性改善の程度が顕著であることが判明した。
ここで、積層型圧電素子は高電圧下(1〜3kV/mm)で駆動されるため、高電圧下で良好な圧電特性を発現することが必要である。この圧電特性を評価する物性値は複数存在するが、積層型圧電素子として用いる場合、電気機械結合係数kr(%)や変位量が重要である。ところが、そのような高電圧下で変位をさせることにより材料を評価することは煩雑なため、通常は変位を測定するのではなく、低電圧下(1V/mm以下)で簡便なインピーダンス測定やd33メータによる測定が行われているのが実情である。そして、低電圧下における圧電特性と高電圧下における圧電特性がリンクするものと仮定して、これまで圧電磁器組成物の評価を行っていたが、本発明は上述のように高電圧下での圧電特性改善が顕著となることを見出した。
以上の知見に基づく本発明の圧電磁器組成物は、(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1、Miは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、主成分に対して、CuをCuO換算で1wt%以下(ただし、0は含まず)、AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有することを特徴とする。
本発明の圧電磁器組成物は、主成分に対して、CuをCuO換算で0.01〜0.8wt%、AgをAgO換算で0.01〜0.4wt%を含有することが好ましい。
また本発明の圧電磁器組成物は、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有することが好ましい。
本発明の圧電磁器組成物は、積層型圧電素子に用いることができる。この積層型圧電素子は、複合酸化物を主成分とする複数の圧電体層と、複数の圧電体層間に形成されCuを含有する内部電極層とを備え、圧電体層が、(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1、Miは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、主成分に対して、CuをCuO換算で1wt%以下(ただし、0は含まず)、AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有する焼成体からなることを特徴とする。
ここで、圧電体層中の一部又は全部のCuは、内部電極層に含有されるCuの一部が焼成中に拡散したものとすることができる。
以上の積層型圧電素子は、複合酸化物を含む圧電体層前駆体と、Cuを含む内部電極前駆体とが積層された積層体を焼成する焼成工程を含み、圧電体層前駆体は、(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1、Miは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、主成分に対して、AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有し、焼成工程において、内部電極前駆体に含まれるCuを圧電体層に拡散させることにより得ることができる。
この積層型圧電素子の製造方法において、焼成は、焼成温度:800〜1200℃、酸素分圧:1×10−10〜1×10−6気圧で行うことができる。
以上説明したように、本発明によれば、低温かつ還元性雰囲気下での焼成による酸素空孔に起因する絶縁抵抗の低下を抑制することのできる圧電磁器組成物を提供できる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本発明により得られる積層型圧電素子1の構成例を示す断面図である。なお、図1はあくまで一例を示すものであって、本発明が図1の積層型圧電素子1に限定されないことはいうまでもない。この積層型圧電素子1は、複数の圧電体層11と複数の内部電極層12とを交互に積層した積層体10を備えている。圧電体層11の一層当たりの厚さは例えば1〜200μm、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmとする。なお、圧電体層11の積層数は目標とする変位量に応じて決定される。
圧電体層11を構成する圧電磁器組成物は、Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とする。この複合酸化物の例としては、例えばチタン酸鉛(PbTiO)とジルコン酸鉛(PbZrO)及び亜鉛・ニオブ酸鉛[Pb(Zn1/3Nb2/3)O]により構成される3元系の複合酸化物や、前記3元系の複合酸化物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した複合酸化物である。
具体的な組成としては、下記(1)式、あるいは(2)式で表される複合酸化物を挙げることができる。なお、これら(1)式、あるいは(2)式において、酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、実際の組成においては、化学量論組成からのずれは許容されるものとする。
Pb[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O ・・・(1)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。)
(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O ・・・(2)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0<b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。また、式中のMiは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)
前記複合酸化物は、いわゆるペロブスカイト構造を有しており、Pb及び(2)式における置換元素Miについては、ペロブスカイト構造のいわゆるAサイトに位置する。ZnやNb、Ti、Zrは、ペロブスカイト構造のいわゆるBサイトに位置する。
前記(1)式や(2)式で表される複合酸化物において、Aサイト元素の割合aは、0.96≦a≦1.03であることが好ましい。Aサイト元素の割合aが0.96未満だと、低温での焼成が困難になるおそれがある。逆に、Aサイト元素の割合aが1.03を超えると、高電圧下における圧電特性が低下する。さらに好ましいAサイト元素の割合aは0.97≦a≦1.02であり、より好ましいAサイト元素の割合aは0.98≦a≦1.01である。
前記(2)式で表される複合酸化物においては、Pbの一部を置換元素Mi(Sr,Ca,Ba)で置換しているが、これにより圧電歪定数を大きくすることができる。ただし、置換元素Miの置換量bが多くなりすぎると、高電圧下における圧電特性が低下する。また、キュリー温度も置換量bの増加に伴って低下する傾向にある。したがって、置換元素Miの置換量bは、0.1以下とすることが好ましい。さらに好ましい置換元素Miの置換量bは0.005≦b≦0.08であり、より好ましい置換元素Miの置換量bは0.007≦b≦0.05である。
一方、Bサイト元素のうち、ZnとNbが占める割合xは、0.05≦x≦0.15とすることが好ましい。前記割合xは焼成温度に影響を与え、この値が0.05未満であると焼成温度を低下させる効果が不足するおそれがある。逆に0.15を超えると、焼結性に影響を及ぼし、その結果、高電圧下における圧電特性が低下する。さらに好ましいZnとNbの割合xは0.07≦x≦0.13であり、より好ましいZnとNbの割合xは0.08≦x≦0.12である。
Bサイト元素のうちTiの割合y及びZrの割合zは、圧電特性の観点から好ましい範囲が設定される。具体的には、Tiの割合yは、0.25≦y≦0.5であることが好ましく、Zrの割合zは、0.35≦z≦0.6であることが好ましい。前記範囲内に設定することで、モルフォトロピック相境界(MPB)付近において、大きな圧電歪定数を得ることができる。さらに好ましいTiの割合yは0.3≦y≦0.48であり、より好ましいTiの割合yは0.4≦y≦0.46である。また、さらに好ましいZrの割合zは0.37≦z≦0.55であり、より好ましいZrの割合zは0.4≦z≦0.5である。
本発明の圧電磁器組成物は、副成分として、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種を添加することができる。この副成分を添加することで、圧電特性及び機械的強度を向上させることができる。ただし、これら副成分の含有量は、酸化物換算で0.5wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。例えばTaの場合、Ta換算で0.5wt%以下、Sbの場合、Sb換算で0.5wt%以下、Nbの場合、Nb換算で0.5wt%以下、Wの場合、WO換算で0.5wt%以下である。この副成分の含有量が、酸化物換算で0.5wt%を超えると、焼結性が低下し、圧電特性が低下するおそれがある。さらに好ましい含有量は0.05〜0.4wt%、より好ましい含有量は0.1〜0.35wt%である。
以上が本発明の積層型圧電素子1の基本的な構成であるが、本発明の積層型圧電素子1において特徴的なのは、圧電体層11がCuをCuO換算で1wt%以下(ただし、0を含まず)含有することである。また、他の特徴として、圧電体層11がAgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0を含まず)含有する。以下、この2つの特徴を順に説明する。
圧電体層11がCuを含有することで、還元焼成及びAg添加による絶縁抵抗の低下を抑制する。ただし、Cuの含有量が多くなりすぎると、圧電特性低下のおそれがあるため、CuO換算で1wt%以下(ただし、0は含まず)とする。より好ましくは、0.01〜0.8wt%、さらに好ましくは0.02〜0.5wt%である。ここで、Cuの存在形態としては、例えばCuO、CuO等、任意の酸化状態のCu酸化物、あるいは金属Cuを挙げることができ、これらの2種類以上が含まれていてもよい。
なお、圧電体層11に含まれるCuは、内部電極層12に含まれるCuが圧電体層11中に拡散することにより生ずるものであってもよいし、圧電体層11の前駆体に例えばCuOとして添加することにより圧電体層11に含まれるものであってもよい。また、両者が複合されたものであってもよい。本発明においては、圧電体層11がCuを含有することが重要なのであって、その添加方法や存在形態は問わない。
ここで、Cuを圧電体層11に拡散することによる効果の確認実験について説明する。
圧電磁器組成物を次のようにして作製した。先ず、主成分の原料として、PbO粉末、SrCO粉末、ZnO粉末、Nb粉末、TiO粉末、ZrO粉末を用意し、下記主成分の組成となるように秤取した。次に、ボールミルを用いてこれら原料を16時間湿式混合し、大気中において700〜900℃で2時間仮焼した。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
得られた仮焼物を微粉砕した後、ボールミルを用いて16時間湿式粉砕した。これを乾燥した後、バインダとしてアクリル系樹脂を加えて造粒し、1軸プレス成形機を用いて約445MPaの圧力で直径17mm、厚さ1mmの円板状に成形した。成形した後、粒径1.0μmのCu粉末を含むCuペーストを両面に印刷した。得られたペレットに熱処理を行ってバインダを揮発させ、還元性雰囲気中(酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧)において950℃で8時間焼成した。得られた焼結体をスライス加工及びラップ加工により厚さ0.6mmの円板状とし、印刷したCuペーストを除去すると同時に特性評価が可能な形状に加工した。得られたサンプルの両面に銀ペーストを印刷して350℃で焼き付け、120℃のシリコーンオイル中で3kVの電界を15分間印加し、分極処理を行った。
以上の方法に従い圧電磁器組成物を作製するとともに、Cuペーストの印刷を行わない圧電磁器組成物を作製した。作製した2種類の圧電磁器組成物について、電気抵抗IRの測定を行った。なお、ここでいう電気抵抗IR(相対値)とは、各圧電磁器組成物の150℃における抵抗値をCuペースト印刷なしの場合の150℃における抵抗値で除した値である。Cuペーストを印刷した圧電磁器組成物では、高温での電気抵抗が大幅に改善されていることがわかる。Cuペーストを印刷した圧電磁器組成物について、組成分析を行ったところ、Cuが検出されたこのCuは、圧電磁器組成物の原料にCuが含まれていないことから、Cuペーストから焼成過程で拡散したものと認められる。
Cuペースト有:電気抵抗IR(相対値)=124
Cuペースト無:電気抵抗IR(相対値)=1
次に、圧電体層11は、AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0を含まず)含有する。
Ag(AgO)は低温焼成に有効であるとともに、Cuとともに含有することにより高電圧下(1〜3kV/mm)での圧電特性改善に効果がある。一方で、本発明はAgOのみを含有する場合の電気抵抗低下を、Cuを共存させることに抑制している。
ただし、その量が多くなりすぎると、高電圧下での圧電特性改善効果が得られなくなるので、AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0を含まず)とする。好ましいAgの量はAgO換算で0.01〜0.4wt%、さらに好ましくは0.02〜0.35wt%である。
内部電極層12は、導電材料を含有している。本発明は、この導電材料としてCuを用いることができる。
複数の内部電極層12は例えば交互に逆方向に延長されており、その延長方向には内部電極層12と電気的に接続された一対の端子電極21、22がそれぞれ設けられている。端子電極21、22は、例えば、図示しないリード線を介して図示しない外部電源に対して電気的に接続される。
また、端子電極21、22は、例えばCuをスパッタリングすることにより形成されていてもよく、また端子電極用ペーストを焼き付けることにより形成されていてもよい。端子電極21、22の厚さは用途等に応じて適宜決定されるが、通常、10〜50μmである。
次に、積層型圧電素子1の好適な製造方法について図2をも参照しつつ説明する。図2は積層型圧電素子1の製造工程を示すフローチャートである。
まず、圧電体層11を得るための主成分の出発原料として、例えば、PbO、TiO、ZrO、ZnO及びNb又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物;SrO、BaO及びCaOから選ばれる少なくとも一つの酸化物又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物等の粉末を用意し、秤量する(ステップS101)。出発原料としては、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。これらの原料粉末は、通常、平均粒子径0.5〜10μm程度のものが用いられる。
圧電体層11の出発原料にCuを含ませる場合には、上記に加えてCuの添加種として、Cu、CuO、CuOの少なくとも1種を用意する。また、Agの添加種としてAgOを出発原料に添加することができる。これら組成物は、主成分に対して副成分ということができる。
必要に応じて他の副成分の原料をそれぞれ用意し、秤量する(ステップS101)。他の副成分の原料としては、Ta、Sb、Nb及びWOから選ばれる少なくとも一つの酸化物を用いることができる。酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよいことは上述の通りである。これら副成分は、焼結性を向上させ、焼成温度をより低くする効果を奏する。
続いて、主成分及び副成分の出発原料を例えばボールミルを用いて湿式粉砕・混合して、原料混合物とする(ステップS102)。
なお、副成分の出発原料は、後述する仮焼成(ステップS103)の前に添加してもよいが、仮焼成後に添加するようにしてもよい。但し、仮焼成前に添加した方がより均質な圧電体層11を作製することができるので好ましい。仮焼成後に添加する場合には、副成分の出発原料には酸化物を用いることが好ましい。
次いで、原料混合物を乾燥し、例えば、750〜950℃の温度で1〜6時間にわたり仮焼成する(ステップS103)。この仮焼成は、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧の高い雰囲気又は純酸素雰囲気で行ってもよい。仮焼成したのち、例えば、この仮焼物をボールミルにて湿式粉砕・混合し、主成分及び必要に応じた副成分を含む仮焼成粉とする(ステップS104)。
次に、この仮焼成粉にバインダを加えて圧電体層用ペーストを作製する(ステップS105)。具体的には以下の通りである。はじめに、例えばボールミル等を用いて、湿式粉砕によりスラリを得る。このとき、スラリの溶媒として、水もしくはエタノールなどのアルコール、又は水とエタノールとの混合溶媒を用いることができる。湿式粉砕は、仮焼成粉の平均粒径が0.5〜2.0μm程度となるまで行うことが好ましい。
次いで、得られたスラリを有機ビヒクル中に分散させる。有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものであり、有機ビヒクルに用いられるバインダは、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、このとき用いられる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート成形法など、利用する方法に応じてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)、ターピネオール等の有機溶剤から適宜選択すればよい。
圧電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、仮焼成粉とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
また、内部電極層用ペーストを作製する(ステップS106)。
内部電極層用ペーストは、上述した各種導電材料あるいは焼成後に上述した導電材料となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上述した有機ビヒクルとを混練して調製される。
後述する焼成工程において、内部電極層用ペーストに含まれるCuが圧電体層用ペーストの焼成によって形成される圧電体層11中に拡散する。なお、この拡散に際しては、内部電極層用ペーストに含まれるCuの粒径が拡散量に影響を及ぼす。内部電極層用ペーストに含まれるCuの粒径が大きいと拡散量が多くなり、Cuの粒径が小さいと拡散量が少なくなる。
端子電極用ペーストも内部電極層用ペーストと同様にして作製する(ステップS107)。
以上では圧電体層用ペースト、内部電極層用ペースト及び端子電極用ペーストを順番に作製しているが、並行して作製してもよいし、逆の順番でもよいことは言うまでもない。
各ペーストの有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、たとえば、バインダは5〜10wt%程度、溶剤は10〜50wt%程度とすればよい。また、各ペースト中には必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されてもよい。
次に、以上のペーストを用いて焼成の対象であるグリーンチップ(積層体)を作製する(ステップS108)。
印刷法を用いグリーンチップを作製する場合は、圧電体層用ペーストを、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の基板上に所定厚さで複数回印刷して、図1に示すように、グリーン状態の外側圧電体層11aを形成する。次に、このグリーン状態の外側圧電体層11aの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層(内部電極層前駆体)12aを形成する。次に、このグリーン状態の内部電極層12aの上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の圧電体層(圧電体層前駆体)11bを形成する。次に、このグリーン状態の圧電体層11bの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層12bを形成する。グリーン状態の内部電極層12a、12b…は、対向して相異なる端部表面に露出するように形成する。以上の作業を所定回数繰り返し、最後に、グリーン状態の内部電極層12の上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで所定回数印刷して、グリーン状態の外側圧電体層11cを形成する。その後、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップ(積層体)とする。
以上では、印刷法によりグリーンチップを作製する例を説明したが、シート成形法を用いてグリーンチップを作製することもできる。
次に、グリーンチップについて脱バインダ処理を行う(ステップS109)。
脱バインダ処理において、内部電極層前駆体中の導電材料によってその雰囲気を決定する必要がある。貴金属を導電材料として用いる場合には、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気又は純酸素雰囲気で行っても良い。しかし、Cuを導電材料として用いる場合には、酸化を考慮する必要があり、還元性雰囲気下での加熱を採用すべきである。一方で、脱バインダ処理において、圧電体層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されることを考慮する必要がある。例えば導電材料としてCuを用いた場合、CuとCuOの平衡酸素分圧及びPbとPbOの平衡酸素分圧に基づいて、いかなる還元性雰囲気を脱バインダ処理に適用するか設定することが好ましい。
脱バインダ処理の温度が300℃未満では脱バインダを円滑に行うことができず、650℃を超えても温度に見合う脱バインダの効果を得ることができずエネルギの浪費になる。また、脱バインダ処理の時間は、温度及び雰囲気によって定める必要があるが、0.5〜50時間の範囲で選定することができる。さらに、脱バインダ処理は、焼成と別個に独立して行うことができるし、焼成と連続的に行うことができる。焼成と連続的に行う場合には、焼成の昇温過程で脱バインダ処理を実行すればよい。
脱バインダ処理の後に、焼成(ステップS110)を行う。
積層型圧電素子1は、還元焼成条件において焼成することが好ましい。還元焼成条件としては、例えば、焼成温度800℃〜1200℃、酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧である。
焼成温度が800℃未満では焼成が十分に進行せず、また1200℃を超えるとCuの溶融が懸念される。好ましい焼成温度は850〜1100℃、さらに好ましい焼成温度は900〜1050℃である。なお、本発明では、低温焼成に有効なAgをAg2Oを添加することによって上記温度範囲における焼成を可能とする。
酸素分圧が1×10−10気圧未満では圧電体層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されて金属Pbとして析出し、最終的に得られる焼成体の圧電特性を低下させる恐れがあり、また1×10−6気圧を超えると電極材料であるCuの酸化が懸念される。好ましい酸素分圧は10−9〜10−7気圧、さらに好ましい酸素分圧は10−8〜10−7気圧である。
以上の工程を経て作製された積層体10は、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、前述した端子電極用ペーストを印刷又は焼き付けることにより端子電極21、22を形成する(ステップS111)。なお、印刷又は焼き付けの他に、スパッタリングすることにより端子電極21、22を形成することもできる。
以上により、図1に示した積層型圧電素子1を得ることができる。
内部電極層12にCuを用いて積層型圧電素子1を作製し、内部電極層12近傍の圧電体層11をTEM−EDS(field-emission type transmission electron microscope with energy dispersive X-ray spectroscopy)により解析を行った。図3にTEM像及びEDSによる点分析結果を示す。圧電体層11の三重点及び粒界にCuが存在しており、焼成過程で内部電極層12から拡散していることが確認された。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
本実施例では、下記の主成分に対して、AgをAgO換算で表1に示す量となるように添加し、その効果を調べた。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
圧電磁器組成物は、次のようにして作製した。先ず、主成分の原料として、PbO粉末、SrCO粉末、ZnO粉末、Nb粉末、TiO粉末、ZrO粉末を用意し、前記主成分の組成となるように秤量した。また、Agの添加種としてAgOを用意し、表1に示す添加量となるように主成分の母組成に添加した。また、Ta粉末を主成分の母組成に対して0.2wt%添加した。次に、ボールミルを用いてこれら原料を16時間湿式混合し、大気中において700〜900℃で2時間仮焼した。
得られた仮焼物を微粉砕した後、ボールミルを用いて16時間湿式粉砕した。これを乾燥した後、バインダとしてアクリル系樹脂を加えて造粒し、1軸プレス成形機を用いて約445MPaの圧力で直径17mm、厚さ1mmの円板状に成形した。
成形した後、粒径1.0μmのCu粉末を含むCuペーストを両面に印刷した。得られた試料に熱処理を施してバインダを揮発させ、還元性雰囲気中(酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧)において950℃で8時間焼成した。
得られた焼結体をスライス加工及びラップ加工により厚さ0.6mmの円板状とし、印刷したCuペーストを除去するとともに特性評価が可能な形状に加工した。得られたサンプルの両面に銀ペーストを印刷して350℃で焼き付け、120℃のシリコーンオイル中で3kVの電界を15分間印加し、分極処理を行った。また、Cuペーストの印刷、バインダ揮発のための熱処理を行わない以外は上記と同様にして分極処理まで行った試料を作製した。
作製した試料について、150℃における電気抵抗(150℃抵抗値)を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1の電気抵抗の欄の「E+0n」は「×10」を意味している。したがって、表1の例えば「2.3E+09」は「2.3×10」を、また「3.5E+12」は「3.5×1012」を意味している。
表1に示すように、Cuペーストを印刷していない試料の測定結果より、AgOを添加することにより電気抵抗が低くなることがわかる。これに対して、Cuペーストを印刷することにより、150℃における電気抵抗が1×1012Ω・cm以上となっており、AgO添加による電気抵抗の低下を抑制できる。
Cuペーストを印刷した試料について、ICP分析を行った。ICP用サンプル作製方法としては、先ず、分析を行う試料0.1gにLiを1g加え、1050℃で15分間溶融させた。得られた融解物に(COOH)を0.2g、HClを10ml加え、加熱溶解させ、100mlに定容した。測定は、ICP−AES(島津社製、商品名ICPS−8000)を用いて行った。その結果、CuがCuO換算で0.1wt%含まれていた。このCuは、圧電磁器組成物の原料にCuが含まれていないことから、Cuペーストから焼成過程で拡散したものと認められる。また、試料中のAgOは、添加した量と一致していた。
Figure 2007230839
本実施例では、下記の主成分に対して、AgをAgO換算で表2に示す量となるように原料を調整した以外は実施例1と同様に分極処理まで行った。なお、Cuペーストを印刷していない試料も作製した。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
作製した試料について、以下の要領で高電圧下における変位量、低電圧下における電気機械結合係数krを測定した。
高電圧下における変位量は、各試料に1.7kV/mmの電圧を印加したときの変位をレーザードップラー変位計により測定した。そして、各試料の1.7kV/mmの電圧印加時に電極面と垂直方向への素子1mm当りの変位量をD[μm/mm]とし、このときの単位電圧当りの変位量dを、d=D×1000/1.7により求めた。
また、電気機械結合係数krはインピーダンスアナライザー(ヒューレット・パッカード社製、HP4194A、0.2V/mm)によって測定した。
そして、AgOを添加しない試料のdをdSTD、krをkrSTDとし、他の試料について、(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。この式で求められる値(表2の変化率)は、AgOを添加しない試料に対する高電圧下の圧電特性向上の程度を示すことになる。
以上の結果を表2に示す。
表2に示すように、AgOを添加することにより低電圧下における電気機械結合係数krが最高で3%程度向上する。また、高電圧下における変位量d及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)は、AgOを添加することにより、15%以上向上できる。このように、AgOを添加することにより、高電圧下における圧電特性の向上が顕著となる。ただし、AgOの量が0.6wt%になると、AgOを添加しない場合よりも低くなる。したがって、本発明においては、AgをAgO換算で0.5wt%以下とする。好ましいAgO換算量は0.01〜0.4wt%、さらに好ましいAgO換算量は0.02〜0.35wt%である。
Figure 2007230839
下記の主成分に対して、a及びAgをAgO換算で表3に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例2と同様にしてd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。その結果を表3に示す。なお、各試料のdSTD/krSTDは、主成分のaがa=0.96、0.98、0.995、1.005、1.03であって、AgOを含まない試料について求めた値である。
主成分:(Pba−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表3に示すように、aが0.96〜1.03の範囲内において、高電圧下における圧電特性を確保できる。aは0.97〜1.02であることが好ましく、0.98〜1.01であることがより好ましい。
Figure 2007230839
下記の主成分に対して、b及びAgをAgO換算で表4に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例2と同様にしてd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。その結果を表4に示す。なお、各試料のdSTD/krSTDは、主成分のbがb=0、0.01、0.03、0.06、0.1であって、AgOを含まない試料について求めた値である。
主成分:(Pb0.995−bSr)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表4に示すように、bが0〜0.1の範囲内において、高電圧下における圧電特性を確保できる。
Figure 2007230839
下記の主成分に対して、Miを表5に示す元素とし、かつAgOを表5に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例2と同様にしてd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。その結果を表5に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Mi0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表5に示すように、Pbの置換元素としてCa又はBaを用いた場合にも、Srと同様に高電圧下における圧電特性向上の効果を享受することができる。なお、各試料のdSTD/krSTDは、主成分のMiがCa又はBaであって、AgOを含まない試料について求めた値である。
Figure 2007230839
下記の主成分に対して、x、y及びzを表6に示す値とし、かつAgをAgO換算で表6に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例2と同様にしてd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。その結果を表6に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O
表6から明らかなように、Bサイト元素のx、y、zが各々0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6の範囲において、高電圧下における圧電特性向上の効果を享受することができる。なお、各試料のdSTD/krSTDは、AgOを含まない試料について求めた値である。
Figure 2007230839
下記の主成分に対して、副成分としてAgをAgO換算で、またTaをTa換算で表7に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例2と同様にしてd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。その結果を表7に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表7に示すように、副成分としてTaを添加することによりd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を向上できる。ただし、Taの含有量が0.5wt%を超えるとd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)は低下してしまう。そこで、Taを含有する場合には、その量を0.5wt%以下とする。好ましいTaの含有量は0.05〜0.4wt%、さらに好ましいTaの含有量は0.15〜0.35wt%である。なお、各試料のdSTD/krSTDは、AgOを含まない試料について求めた値である。また、試料中のTaは、添加した量と一致していた。
Figure 2007230839
下記の主成分に対して、表8に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例2と同様にしてd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。その結果を表8に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表8に示すように、副成分としてSb、Nb、WOを添加することによっても、高電圧下における圧電特性向上効果を享受することができる。なお、各試料のdSTD/krSTDは、表8に記載された添加種を含まない試料について求めた値である。また、試料中の各添加種は、添加した量と一致していた。
Figure 2007230839
仮焼物に対してCuOを表1に示す量を添加した以外は実施例1と同様にして焼成、分極まで行って主成分を下記とする試料を得た。なお、Cuペーストの印刷は行っていない。得られた試料について実施例2と同様にd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。その結果を表9に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表9に示すように、拡散によりCuを焼成体内に拡散する以外に、Cu(CuO)を添加することによっても高電圧下における圧電特性向上の効果を享受できる。ただし、CuOの添加量が1.2wt%になると、(d/kr)/(dSTD/krSTD)が1となり、AgO、CuOを添加しない圧電磁器組成物と差異がなくなる。したがって、本発明ではCuをCuO換算値で1wt%以下とする。なお、試料中のCuのCuO換算値は、添加した量と一致していた。
Figure 2007230839
実施例10は、積層型圧電素子を作製した例を示す。
積層型圧電素子の製造に際しては、先ず、実施例1で得られた仮焼物(AgO添加量:0.05wt%)を粉砕した圧電磁器組成物粉末にビヒクルを加え、混練して圧電体層用ペーストを作製した。それとともに、導電材料であるCu粉末をビヒクルと混練し、内部電極層用ペーストを作製した。続いて、圧電体層用ペースト及び内部電極層用ペーストを用いて、印刷法により積層体の前駆体であるグリーンチップを作製した。圧電体層用ペーストの積層数は300とした。次に、脱バインダ処理を行い、還元焼成条件で焼成し、積層体を得た。還元焼成条件としては、還元性雰囲気(酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧)下、焼成温度800〜1200℃で焼成を行った。なお、比較としてAgOを添加しない以外は上記と同様にして積層体を作製した。
得られた積層体について、実施例2と同様にd及び(d/kr)/(dSTD/krSTD)を求めた。その結果を表10に示す。
Figure 2007230839
本実施の形態における積層型圧電素子の一構成例を示す図である。 本実施の形態における積層型圧電素子の製造手順を示すフローチャートである。 Cuを内部電極層に用いて得られた積層型圧電素子の、内部電極層近傍の圧電体層のTEM像及びEDSによる点分析結果を示す図である。
符号の説明
1…積層型圧電素子、10…積層体、11…圧電体層、12…内部電極層、21、22…端子電極

Claims (7)

  1. (Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O
    (ただし、
    0.96≦a≦1.03、
    0≦b≦0.1、
    0.05≦x≦0.15、
    0.25≦y≦0.5、
    0.35≦z≦0.6、
    x+y+z=1、
    Miは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、
    前記主成分に対して、
    CuをCuO換算で1wt%以下(ただし、0は含まず)、
    AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有することを特徴とする圧電磁器組成物。
  2. CuをCuO換算で0.01〜0.8wt%、
    AgをAgO換算で0.01〜0.4wt%を含有することを特徴とする請求項1に記載の圧電磁器組成物。
  3. Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電磁器組成物。
  4. 複合酸化物を主成分とする複数の圧電体層と、複数の前記圧電体層間に形成されCuを含有する内部電極層とを備える積層型圧電素子であって、
    前記圧電体層が、
    (Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O
    (ただし、
    0.96≦a≦1.03、
    0≦b≦0.1、
    0.05≦x≦0.15、
    0.25≦y≦0.5、
    0.35≦z≦0.6、
    x+y+z=1、
    Miは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、
    前記主成分に対して、
    CuをCuO換算で1wt%以下(ただし、0は含まず)、
    AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有する焼成体からなることを特徴とする積層型圧電素子。
  5. 前記圧電体層中の一部又は全部のCuは、前記内部電極層に含有されるCuの一部が焼成中に拡散したものであることを特徴とする請求項4に記載の積層型圧電素子。
  6. 複合酸化物を主成分とする複数の圧電体層と、
    複数の前記圧電体層間に形成されCuを含有する内部電極層と、を備える積層型圧電素子の製造方法であって、
    前記複合酸化物を含む圧電体層前駆体と、Cuを含む内部電極前駆体とが積層された積層体を焼成する焼成工程を含み、
    前記圧電体層前駆体は、
    (Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O
    (ただし、
    0.96≦a≦1.03、
    0≦b≦0.1、
    0.05≦x≦0.15、
    0.25≦y≦0.5、
    0.35≦z≦0.6、
    x+y+z=1、
    Miは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、
    前記主成分に対して、
    AgをAgO換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)含有し、
    前記焼成工程において、前記内部電極前駆体に含まれるCuを前記圧電体層に拡散させることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  7. 前記焼成工程は、焼成温度:800〜1200℃、酸素分圧:1×10−10〜1×10−6気圧で行われることを特徴とする請求項6に記載の積層型圧電素子の製造方法。
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