JP3971779B1 - 圧電磁器組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】Cuを内部電極の導電材料として用いた場合にも高い圧電歪特性を有する圧電磁器組成物を提供する。
【解決手段】(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1、MiはSr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、主成分に対して、第1副成分として、Co、Mg、Ni、Cr及びGaから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)、第2副成分として、希土類金属元素を酸化物換算で0.15wt%以下(ただし、0は含まず)、第3副成分とて、AgをAgO換算で0.35wt%以下(ただし、0は含まず)を含有する圧電磁器組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、アクチュエータや圧電ブザー、発音体、センサ等の各種圧電素子の圧電体層に好適な圧電磁器組成物に関するものであり、特にCuを内部電極に用いた積層型圧電素子の圧電体層に好適な圧電磁器組成物、当該組成物を用いた積層型圧電素子に関する。
圧電素子に用いられる圧電磁器組成物としては、圧電特性、特に圧電歪定数が大きいことが要求される。この特性を満たす圧電磁器組成物として、例えばチタン酸鉛(PbTiO)とジルコン酸鉛(PbZrO)、及び亜鉛・ニオブ酸鉛[Pb(Zn1/3Nb2/3)O]により構成される3元系の圧電磁器組成物や、前記3元系の圧電磁器組成物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した圧電磁器組成物等が開発されている。
ただし、これら従来の圧電磁器組成物は、比較的高温で焼成する必要があり、また焼成が酸化性雰囲気下で行われるため、例えば内部電極を同時焼成する積層型圧電素子においては、高い融点を持ち、酸化性雰囲気下で焼成しても酸化されない貴金属(例えば、PtやPd等)を用いる必要があった。その結果、コスト増を招き、製造される積層型圧電素子の低価格化に支障をきたしている。
このような状況に対して本願出願人は、前記3元系の圧電磁器組成物に、Fe、Co、Ni及びCuから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分、及び、Sb、Nb及びTaから選ばれる少なくとも1種を含む第2副成分を加えることにより低温焼成を可能とし、内部電極にAg−Pd合金等の安価な材料を使用可能とすることを提案している(特許文献1を参照)。
特開2004−137106号公報
ところで、より安価な金属(例えばCu)で内部電極を構成する場合、酸化性雰囲気(例えば、空気中)での焼成では、低温で焼成したとしても内部電極が酸化し、導電性が損なわれるという不都合が発生する。
このような不都合を解消するためには、酸素分圧の低い還元性雰囲気(例えば、酸素分圧が1×10−10〜1×10−6気圧程度)において焼成を行う必要がある。しかし、このような還元性雰囲気において焼成を行った場合、内部電極自体の酸化は防げるが、圧電歪定数が損なわれるという問題が生じた。
一方で、近年、各製品への小型化・高性能化の要求から、その部品なるアクチュエータに対しても小型化・高性能化が求められている。アクチュエータ素子の変位量を維持して小型化を図るには、さらに高い圧電歪定数を有する圧電磁器組成物が必要不可欠である。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、Cuを内部電極の導電材料として用いた場合にも高い圧電歪定数を有する圧電磁器組成物を提供することを目的とする。また本発明は、そのような圧電磁器組成物を用いた積層型圧電素子を提供することを目的とする。
本発明者等は、内部電極の導電材料としてCuを用いて還元性雰囲気で焼成した場合の圧電歪定数の低下原因について調査した。その結果、内部電極から圧電体層へのCuの拡散が生じ、かつ圧電体層の結晶粒の成長が抑制されていることを確認した。したがって本発明者等は、この圧電体層へのCuの拡散、結晶粒の不十分な成長が圧電歪定数低下の原因と理解している。そこで、本発明者は圧電磁器組成物に添加する副成分について検討を行ったところ、Co、Mg、Ni、Cr及びGaから選ばれる少なくとも1種を含む成分を所定量添加することにより、Cuの拡散による結晶粒の不十分な成長の問題を解消できることを知見した。しかるに、Co、Mg、Ni、Cr及びGaから選ばれる少なくとも1種を添加するだけでは、圧電歪定数の積極的な向上を達成するには不十分である。そこで、さらに、希土類金属元素の酸化物及び/又はAgO以下を添加することにより、高い圧電歪定数が発現することを本発明者等は見出した。
本発明は以上の本発明者等の検討に基づいて完成されたものであり、(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1、MiはSr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)で表される複合酸化物を主成分とし、主成分に対して、第1副成分として、Co、Mg及びNiから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.3wt%以下(ただし、0は含まず)、第2副成分として、希土類金属元素を酸化物換算で0.1wt%以下(ただし、0は含まず)、第3副成分として、AgをAgO換算で0.3wt%以下(ただし、0は含まず)、第4副成分として、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で1wt%以下(ただし、0は含まず。)を含む。
本発明の圧電磁器組成物において、第1副成分としてはCoを選択し酸化物換算で0.3wt%以下含むことが、第2副成分としてはDyを選択し酸化物換算で0.1wt%以下含むことが好ましい。
また第1副成分はCo選ばれ、かつ酸化物換算で0.03〜0.3wt%含むことが好ましく、第2副成分はDyが選ばれ、かつ酸化物換算で0.02〜0.1wt%含むことが好ましく、第3副成分はAgをAgO換算で0.02〜0.25wt%含むことが好ましい。
以上の圧電磁器組成物を用いた積層型圧電素子を本発明は提供する。この積層型圧電素子は、複合酸化物を主成分とする複数の圧電体層と、複数の圧電体層間に形成される内部電極層とを備える積層型圧電素子であって、圧電体層が、(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1、MiはSr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)で表される複合酸化物を主成分とし、主成分に対して、第1副成分として、Co、Mg、Ni、Cr及びGaから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず)、第2副成分として、希土類金属元素を酸化物換算で0.15wt%以下(ただし、0は含まず)、第3副成分とて、AgをAgO換算で0.35wt%以下(ただし、0は含まず)を含有する焼結体からなることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、Cuを内部電極の導電材料として用いた場合にも高い圧電歪定数を有する圧電磁器組成物及び当該圧電磁器組成物を用いた積層型圧電素子を得ることができる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本発明により得られる積層型圧電素子1の構成例を示す断面図である。なお、図1はあくまで一例を示すものであって、本発明が図1の積層型圧電素子1に限定されないことはいうまでもない。この積層型圧電素子1は、複数の圧電体層11と複数の内部電極層12とを交互に積層した積層体10を備えている。圧電体層11の一層当たりの厚さは例えば1〜200μm、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmとする。なお、圧電体層11の積層数は目標とする変位量に応じて決定される。
圧電体層11を構成する圧電磁器組成物は、Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とする。この複合酸化物の例としては、例えばチタン酸鉛(PbTiO)とジルコン酸鉛(PbZrO)及び亜鉛・ニオブ酸鉛[Pb(Zn1/3Nb2/3)O]により構成される3元系の複合酸化物や、前記3元系の複合酸化物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した複合酸化物である。
具体的な組成としては、下記(1)式、あるいは(2)式で表される複合酸化物を挙げることができる。なお、これら(1)式、あるいは(2)式において、酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、実際の組成においては、化学量論組成からのずれは許容されるものとする。
Pb[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O ・・・(1)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。)
(Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O ・・・(2)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0<b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。また、式中のMiはSr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)
前記複合酸化物は、いわゆるペロブスカイト構造を有しており、Pb及び(2)式における置換元素Miについては、ペロブスカイト構造のいわゆるAサイトに位置する。ZnやNb、Ti、Zrは、ペロブスカイト構造のいわゆるBサイトに位置する。
前記(1)式や(2)式で表される複合酸化物において、Aサイト元素の割合aは、0.96≦a≦1.03であることが好ましい。Aサイト元素の割合aが0.96未満又は1.03を超えると、圧電歪定数が低下する。さらに好ましいAサイト元素の割合aは0.97≦a≦1.02であり、より好ましいAサイト元素の割合aは0.98≦a≦1.01である。
前記(2)式で表される複合酸化物においては、Pbの一部を置換元素Mi(Sr,Ca,Ba)で置換しているが、これにより圧電歪定数を大きくすることができる。ただし、置換元素Miの置換量bが多くなりすぎると、圧電歪定数が低下する。また、キュリー温度も置換量bの増加に伴って低下する傾向にある。したがって、置換元素Miの置換量bは、0.1以下とすることが好ましい。さらに好ましい置換元素Miの置換量bは0.005≦b≦0.08であり、より好ましい置換元素Miの置換量bは0.007≦b≦0.05である。
一方、Bサイト元素のうち、ZnとNbの割合xは、0.05≦x≦0.15とすることが好ましい。前記割合xは焼成温度に影響を与え、この値が0.05未満であると焼成温度を低下させる効果が不足するおそれがある。逆に0.15を超えると、焼結性に影響を及ぼし、その結果、圧電歪定数が低下する。さらに好ましいZnとNbの割合xは0.07≦x≦0.13であり、より好ましいZnとNbの割合xは0.08≦x≦0.12である。
Bサイト元素のうちTiの割合y及びZrの割合zは、圧電歪定数の観点から好ましい範囲が設定される。具体的には、Tiの割合yは、0.25≦y≦0.5であることが好ましく、Zrの割合zは、0.35≦z≦0.6であることが好ましい。前記範囲内に設定することで、モルフォトロピック相境界(MPB)付近において、大きな圧電歪定数を得ることができる。さらに好ましいTiの割合yは0.3≦y≦0.48であり、より好ましいTiの割合yは0.4≦y≦0.46である。また、さらに好ましいZrの割合zは0.37≦z≦0.55であり、より好ましいZrの割合zは0.4≦z≦0.5である。
以上が本発明の積層型圧電素子1の基本的な構成であるが、本発明の積層型圧電素子1において特徴的なことは、圧電体層11が以下の第1副成分として、Co、Mg、Ni、Cr及びGaから選ばれる少なくとも1種を酸化物(CoO、MgO、NiO、CrO、Ga)換算で0.5wt%以下(ただし、0は含まず。)含むことである。この第1副成分は、圧電体層11の結晶粒の成長を促進することにより、内部電極層12を構成するCuの圧電体層11への拡散による圧電歪定数の滅失を回復する効果を有する。
本発明は、以下の第2副成分、第3副成分の少なくとも一方を含むことにより、さらなる圧電歪定数向上を達成することができる。好ましくは、第2副成分及び第3副成分の両者を含む。ただし、ここで重要なのは、第1副成分を含むことなしに、第2副成分、第3副成分によるさらなる圧電歪定数の向上は達成されないということである。この点については、後述する実施例にてより明確にしたい。
第2副成分:希土類金属元素を酸化物換算で0.15wt%以下
第3副成分:AgをAgO換算で0.08wt%以下
ただし、第2副成分とともに含まれる場合は0.35wt%以下
第1副成分は、酸化物換算で0.5wt%を超えると圧電歪定数向上効果を十分に享受することができない。第1副成分の量は、好ましくは酸化物換算で0.03〜0.4wt%、より好ましくは0.05〜0.3wt%である。
第1副成分の元素は、圧電歪定数の観点からはCo、Mg及びNiを選択するのが好ましく、さらに絶縁抵抗の観点をも考慮するとCoを選択するのが好ましい。
第2副成分を含むことにより、圧電歪定数を向上することができるが、その量が希土類金属元素を酸化物換算で0.15wt%を超えると、その効果が不十分となる。希土類金属元素は酸化物換算で0.02〜0.1wt%であることが好ましく、0.03〜0.07wt%であることがより好ましい。
希土類金属元素は、圧電歪定数の観点からはDy、Nd、Gd及びTbを選択するのが好ましく、
さらに絶縁抵抗の観点をも考慮するとDyを選択するのが好ましい。
次に、第3副成分(AgO)は低温焼成化に有効な物質であり、低温焼成においても主成分が本来有する圧電歪定数を発揮させる。しかし、その量が多くなりすぎると、逆に圧電歪定数を阻害する。第3副成分の量は、第2副成分が含まれない場合と、第2副成分が含まれる場合とで適切な範囲が上記の通り相違する。第2副成分が含まれない場合は0.08wt%以下とし、好ましくは0.02〜0.08wt%、0.03〜0.07wt%である。第2副成分が含まれる場合は0.35wt%以下とし、好ましくは0.02〜0.25wt%、より好ましくは0.05〜0.15wt%である。
第2副成分及び第3副成分はともに含まれることが最も好ましい。希土類金属元素の酸化物は焼成温度を高くしなければ緻密な焼結体を得ることができなくなる性質を有するために、希土類金属元素の酸化物を含む場合、圧電歪定数向上の効果を十二分に得るためには焼成温度を高く設定する必要がある。ところが、低温焼成に有効なAgOを添加することにより、希土類金属元素の酸化物を含有していても焼結を十分に進行させることが可能となり、そのために低温焼成であっても希土類金属元素の酸化物による圧電歪定数向上の効果を享受できるものと解される。このことからすると、第3副成分を含むが第2副成分を含まない場合には、必要以上に焼結が進行してしまい、第2副成分を含む場合よりも少ない量で第3副成分の圧電歪定数向上の効果が飽和するものと推察される。
本発明の圧電磁器組成物は、さらに他の副成分(第4副成分)を含んでいてもよい。ここで第4副成分としては、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種である。副成分を添加することで、圧電歪定数及び機械的強度を向上させることができる。ただし、これら副成分の含有量は、酸化物換算で1wt%以下とすることが好ましい。例えばTaの場合、Ta換算で1wt%以下、Sbの場合、Sb換算で1wt%以下、Nbの場合、Nb換算で1wt%以下、Wの場合、WO換算で1wt%以下である。この副成分の含有量が、酸化物換算で1wt%を超えると、焼結性が低下し、圧電歪定数が低下するおそれがある。さらに好ましい含有量は0.05〜0.8wt%、より好ましい含有量は0.1〜0.5wt%である。
内部電極層12は、導電材料を含有している。本発明は、この導電材料としてCuを用いる。導電材料としてCuを用いると、例えば1050℃以下の低温焼成に有益である。
複数の内部電極層12は例えば交互に逆方向に延長されており、その延長方向には内部電極層12と電気的に接続された一対の端子電極21、22がそれぞれ設けられている。端子電極21、22は、例えば、図示しないリード線を介して図示しない外部電源に対して電気的に接続される。
また、端子電極21、22は、例えばCuをスパッタリングすることにより形成されていてもよく、また端子電極用ペーストを焼き付けることにより形成されていてもよい。端子電極21、22の厚さは用途等に応じて適宜決定されるが、通常、10〜50μmである。
次に、積層型圧電素子1の好適な製造方法について図2をも参照しつつ説明する。図2は積層型圧電素子1の製造工程を示すフローチャートである。
まず、圧電体層11を得るための主成分の出発原料として、例えば、PbO、TiO、ZrO、ZnO及びNb又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物;SrO、BaO及びCaOから選ばれる少なくとも一つの酸化物又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物等の粉末を用意し、秤量する(ステップS101)。出発原料としては、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。これらの原料粉末は、通常、平均粒子径0.5〜10μm程度のものが用いられる。
必要に応じて副成分の出発原料をそれぞれ用意し、秤量する(ステップS101)。第1副成分の出発原料としては、CoO、MgO、NiO、CrO、Gaから選ばれる少なくとも一つの酸化物を用いることができる。第2副成分の出発原料としては、希土類金属元素の酸化物、具体的には
Dy、Nd、Gd、Tb、Ho、Er及びY等を用いることができる。第3副成分の出発原料としては、AgOを用いる。さらに第4副成分の出発原料としては、Ta、Sb、Nb及びWOから選ばれる少なくとも一つの酸化物を用いることができる。副成分の出発原料も、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよいことは上述の通りである。
続いて、主成分及び副成分の出発原料を例えばボールミルを用いて湿式粉砕・混合して、原料混合物とする(ステップS102)。
なお、副成分の出発原料は、後述する仮焼成(ステップS103)の前に添加してもよいが、仮焼成後に添加するようにしてもよい。但し、仮焼成前に添加した方がより均質な圧電体層11を作製することができるので好ましい。仮焼成後に添加する場合には、副成分の出発原料には酸化物を用いることが好ましい。
次いで、原料混合物を乾燥し、例えば、750〜950℃の温度で1〜6時間にわたり仮焼成する(ステップS103)。この仮焼成は、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧の高い雰囲気又は純酸素雰囲気で行ってもよい。仮焼成したのち、例えば、この仮焼成物をボールミルにて湿式粉砕・混合し、主成分及び必要に応じて副成分を含む仮焼成粉とする(ステップS104)。
次に、この仮焼成粉にバインダを加えて圧電体層用ペーストを作製する(ステップS105)。具体的には以下の通りである。はじめに、例えばボールミル等を用いて、湿式粉砕によりスラリを得る。このとき、スラリの溶媒として、水もしくはエタノールなどのアルコール、または水とエタノールとの混合溶媒を用いることができる。湿式粉砕は、仮焼成粉の平均粒径が0.5〜2.0μm程度となるまで行うことが好ましい。
次いで、得られたスラリを有機ビヒクル中に分散させる。有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものであり、有機ビヒクルに用いられるバインダは、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、このとき用いられる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート成形法など、利用する方法に応じてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)、ターピネオール等の有機溶剤から適宜選択すればよい。
圧電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、仮焼成粉とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
また、内部電極層用ペーストを作製する(ステップS106)。
内部電極層用ペーストは、上述した各種導電材料あるいは焼成後に上述した導電材料となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上述した有機ビヒクルとを混練して調製される。
後述する焼成工程において、内部電極層用ペーストに含まれるCuが圧電体層用ペーストの焼成によって形成される圧電体層11中に拡散する。なお、この拡散に際しては、内部電極層用ペーストに含まれるCuの粒径が拡散量に影響を及ぼす。内部電極層用ペーストに含まれるCuの粒径が大きいと拡散量が多くなり、Cuの粒径が小さいと拡散量が少なくなる。圧電歪定数を低下させないためにはCuの拡散量は少ない方が望ましく、したがって内部電極層用ペーストに含まれるCuの粒径はできるだけ小さい方が望ましいことになる。
端子電極用ペーストも内部電極層用ペーストと同様にして作製する(ステップS107)。
以上では圧電体層用ペースト、内部電極層用ペースト及び端子電極用ペーストを順番に作製しているが、並行して作製してもよいし、逆の順番でもよいことは言うまでもない。
各ペーストの有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、例えば、バインダは5〜10wt%程度、溶剤は10〜50wt%程度とすればよい。また、各ペースト中には必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されてもよい。
次に、以上のペーストを用いて焼成の対象であるグリーンチップ(積層体)を作製する(ステップS108)。
印刷法を用いグリーンチップを作製する場合は、圧電体層用ペーストを、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の基板上に所定厚さで複数回印刷して、図1に示すように、グリーン状態の外側圧電体層11aを形成する。次に、このグリーン状態の外側圧電体層11aの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層(内部電極層前駆体)12aを形成する。次に、このグリーン状態の内部電極層12aの上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の圧電体層(圧電体層前駆体)11bを形成する。次に、このグリーン状態の圧電体層11bの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層12bを形成する。グリーン状態の内部電極層12a、12b…は、対向して相異なる端部表面に露出するように形成する。以上の作業を所定回数繰り返し、最後に、グリーン状態の内部電極層12の上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで所定回数印刷して、グリーン状態の外側圧電体層11cを形成する。その後、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップ(積層体)とする。
以上では、印刷法によりグリーンチップを作製する例を説明したが、シート成形法を用いてグリーンチップを作製することもできる。
次に、グリーンチップについて脱バインダ処理を行う(ステップS109)。
脱バインダ処理において、内部電極層前駆体中の導電材料によってその雰囲気を決定する必要がある。貴金属を導電材料として用いる場合には、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気又は純酸素雰囲気で行っても良い。Cuを導電材料として用いる場合には、酸化を考慮する必要があり、還元性雰囲気下での加熱を採用すべきである。一方で、脱バインダ処理において、圧電体層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されることを考慮する必要がある。例えば導電材料としてCuを用いた場合、CuとCuOの平衡酸素分圧(以下、単にCuの平衡酸素分圧)及びPbとPbOの平衡酸素分圧(以下、単にPbの平衡酸素分圧)に基づいて、いかなる還元性雰囲気を脱バインダ処理に適用するか設定することが好ましい。
脱バインダ処理の温度が300℃未満では脱バインダを円滑に行うことができず、650℃を超えても温度に見合う脱バインダの効果を得ることができずエネルギの浪費になる。また、脱バインダ処理の時間は、温度及び雰囲気によって定める必要があるが、0.5〜50時間の範囲で選定することができる。さらに、脱バインダ処理は、焼成と別個に独立して行うことができるし、焼成と連続的に行うことができる。焼成と連続的に行う場合には、焼成の昇温過程で脱バインダ処理を実行すればよい。
脱バインダ処理の後に、焼成(ステップS110)を行う。
積層型圧電素子1は、還元焼成条件において焼成することが好ましい。積層型圧電素子1の作製に際し、酸化性雰囲気中で焼成すると、例えば内部電極層12の電極材料として貴金属を用いる必要がある。これに対して、積層型圧電素子1は、還元焼成条件において焼成されたものであるので、本発明では安価なCuを内部電極層12に用いることができる。ここで、還元焼成条件としては、例えば、焼成温度800〜1200℃、酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧である。
焼成温度が800℃未満では焼成が十分に進行せず、また1200℃を超えるとCuの溶融が懸念される。好ましい焼成温度は850〜1100℃、さらに好ましい焼成温度は900〜1050℃である。
酸素分圧が1×10−10気圧未満では圧電体層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されて金属Pbとして析出し、最終的に得られる焼結体の圧電歪定数を低下させる恐れがあり、また1×10−6気圧を超えると電極材料であるCuの酸化が懸念される。好ましい酸素分圧は10−9〜10−7気圧、さらに好ましい酸素分圧は10−8〜10−7気圧である。
以上の工程を経て作製された積層体10は、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、前述した端子電極用ペーストを印刷又は焼き付けることにより端子電極21、22を形成する(ステップS111)。なお、印刷又は焼き付けの他に、スパッタリングすることにより端子電極21、22を形成することもできる。
以上により、図1に示した積層型圧電素子1を得ることができる。
内部電極層12にCuを用いて積層型圧電素子1を作製し、内部電極層12近傍の圧電体層11をTEM−EDS(field-emission type transmission electron microscope with energy dispersive X-ray spectroscopy)により解析を行った。図3にTEM像及びEDSによる点分析結果を示す。圧電体層11の三重点及び粒界にCuが存在しており、焼成過程で内部電極層12から圧電体層11へCuが拡散していることが確認された。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
下記の主成分に対して、CoO、Dy及びAgOを表1に示す量となるように添加し、その効果を調べた。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
圧電磁器組成物は、次のようにして作製した。先ず、主成分の原料として、PbO粉末、SrCO粉末、ZnO粉末、Nb粉末、TiO粉末、ZrO粉末を用意し、前記主成分の組成となるように秤量した。また、CoO粉末、Dy粉末、AgO粉末及びTa粉末を用意し、表1に示す添加量となるように主成分の母組成に添加した。次に、ボールミルを用いてこれら原料を16時間湿式混合し、大気中において700〜900℃で2時間仮焼した。
得られた仮焼物を微粉砕した後、ボールミルを用いて16時間湿式粉砕した。これを乾燥した後、バインダとしてアクリル系樹脂を加えて造粒し、1軸プレス成形機を用いて約445MPaの圧力で直径17mm、厚さ1mmの円板状に成形した。成形した後、粒径1.0μmのCu粉末を含むCuペーストを両面に印刷した。得られたペレットに熱処理を施してバインダを揮発させ、低酸素還元性雰囲気中(酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧)において950℃で8時間焼成した。得られた焼結体をスライス加工及びラップ加工により厚さ0.6mmの円板状とし、印刷したCuペーストを除去するとともに特性評価が可能な形状に加工した。得られたサンプルの両面に銀ペーストを印刷して350℃で焼き付け、120℃のシリコーンオイル中で3kVの電界を15分間印加し、分極処理を行った。また、Cuペーストの印刷、バインダ揮発のための熱処理を行わない以外は上記と同様にして分極処理まで行った試料も作製した。
作製した試料について圧電定数d33を測定した。圧電定数d33は、インピーダンスアナライザ(ヒューレット・パッカード社製、HP4194A)を用いて共振−反共振法により測定した。その結果を表1に併せて示す。
Figure 0003971779
圧電歪定数の測定結果より以下のことがわかった。
第1副成分(CoO)を含まない場合には、第2副成分(Dy)及び第3副成分(AgO)を含んでも、圧電歪定数は向上しない。
第1副成分(CoO)を含むことにより、第2副成分(Dy)及び第3副成分(AgO)を含まない場合でも、圧電歪定数が向上する。
第1副成分(CoO)を含み、さらに第2副成分(Dy)又は第3副成分(AgO)を含むことにより圧電歪定数が向上し、第2副成分(Dy)及び第3副成分(AgO)を含むことによりさらに圧電歪定数が向上する。
以上より、第1副成分(CoO)は単独添加でも圧電歪定数を向上できるが、第2副成分(Dy)及び/又は第3副成分(AgO)をさらに含むことにより圧電歪定数向上効果が顕著となる。一方で、第2副成分(Dy)及び/又は第3副成分(AgO)による圧電歪定数向上の効果は、第1副成分(CoO)を含むことが前提となる。
図4は第4副成分を含むが第1副成分〜第3副成分のいずれも含まず、かつ成形体にCuペーストの塗布を行わないで焼成した焼結体(d33=502pm/V)のミクロ組織写真、図5は第4副成分を含むが第1副成分〜第3副成分のいずれも含まず、かつ成形体にCuペーストの塗布を行って焼成した焼結体のミクロ組織写真、図6は第1副成分及び第4副成分を含む(CoO:0.1wt%)が第2副成分及び第3副成分を含まず、かつ成形体にCuペーストの塗布を行って焼成した焼結体のミクロ組織写真、図7は第1副成分〜第4副成分を含み(CoO:0.1wt%、Dy:0.05wt%、AgO:0.1wt%、Ta:0.2wt%)、かつCuペーストの塗布を行って焼成した焼結体のミクロ組織写真である。
図4に対して図5の結晶粒径が小さい。図5に示す焼結体は、Cuペースト塗布に伴って焼結体内にCuが拡散しており、焼結体内にCuが存在することにより結晶粒径の好ましい成長が阻害されている。これが、圧電歪定数低下の要因となっているものと推察される。また、図6に示すように、CoOを添加した焼結体は図5よりも結晶粒径が大きくなっており、CoOが結晶粒の成長を促す効果があることがわかる。さらに、図7に示される焼結体の結晶粒径は、図4の焼結体と同程度の粒度を示しており、第1副成分〜第4副成分を複合で含む場合であってもCoOの効果が発揮されることがわかる。そして、このように結晶粒径の好ましい成長により、圧電歪定数向上の効果を享受することができる。
焼結体に含まれる第1副成分(CoO)の量が多くなり、1wt%に達すると圧電歪定数向上の効果が滅失される。したがって、本発明では第1副成分(CoO)を0.5wt%以下とする。表1の結果より、第1副成分の量は、好ましくは0.03〜0.4wt%、より好ましくは0.05〜0.3wt%である。
下記の主成分に対して、第1副成分(CoO)、第2副成分(Dy)及び第3副成分(AgO)を表2に示す量となるように原料を調整した以外は実施例1と同様に分極処理まで行い、実施例1と同様に圧電定数d33を測定した。その結果を表2に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表2に示すように、第2副成分(Dy)が0.15wt%を超えると圧電歪定数が低くなる。圧電歪定数の観点から好ましい第2副成分(Dy)の量は0.02〜0.1wt%であり、より好ましくは0.03〜0.07wt%である。
また、第3副成分(AgO)は、第2副成分(Dy)を含まない場合には、0.1wt%を超えると圧電歪定数が低くなる。圧電歪定数の観点から好ましい第3副成分(AgO)の量は0.02〜0.08wt%、より好ましくは0.03〜0.07wt%である。
第3副成分(AgO)は、第2副成分(Dy)を含む場合には、さらなる圧電歪定数の向上に寄与する。しかし、0.35wt%を超えると、低い圧電歪定数しか得ることができない。圧電歪定数の観点から好ましい第3副成分の量は0.02〜0.25wt%、より好ましくは0.05〜0.15wt%である。
Figure 0003971779
下記の主成分に対して、第1副成分(CoO、MgO、NiO、Cr、Ga、Fe)、第2副成分(Dy)及び第3副成分(AgO)を表3に示す量となるように原料を調整した以外は実施例1と同様に分極処理まで行い、実施例1と同様に圧電定数d33を測定した。また、150℃における比抵抗も測定した。その結果を表3に示す。なお、第1副成分の中で、Cr 、Ga 、Fe は、参考例である。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
CoOと同様に、MgO、NiO、Cr及びGaが圧電歪定数向上に寄与することが明らかとなった。圧電歪定数向上の効果の観点からCoO、MgO及びNiOが好ましい。積層型圧電素子の圧電体層として要求される絶縁抵抗をも加味すると、第2副成分としてCoOが好ましい。
Figure 0003971779
下記の主成分に対して、第1副成分(CoO)、第2副成分(Dy、Nd、Gd、Tb、Ho、Er、Y)及び第3副成分(AgO)を表4に示す量となるように原料を調整した以外は実施例1と同様に分極処理まで行い、実施例1と同様に圧電定数d33及び150℃における比抵抗を測定した。その結果を表4に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
Dyと同様にNd、Gd、Tb、Ho、Er及びYも圧電得性向上に寄与することがわかった。その中で、Dyと同様にNd、Gd、Tbが圧電歪定数向上の効果が顕著であるが、絶縁抵抗をも考慮すると第2副成分としてはDyが最も好ましい。
Figure 0003971779
下記の主成分に対して、a、第1副成分(CoO)、第2副成分(Dy)及び第3副成分(AgO)を表5に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例1と同様に圧電定数d33を測定した。その結果を表5に示す。
主成分:(Pba−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表5に示すように、aが0.96〜1.03の範囲内において、圧電歪定数を確保できる。aは0.97〜1.02であることが好ましく、0.98〜1.01であることがより好ましい。
Figure 0003971779
下記の主成分に対して、Mi、b、第1副成分(CoO)、第2副成分(Dy)及び第3副成分(AgO)を表6に示すように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例1と同様に圧電定数d33を測定した。その結果を表6に示す。
主成分:(Pb0.995−bMi)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表6に示すように、bが0〜0.1の範囲内において、圧電歪定数を確保できる。bは0.005〜0.08であることが好ましく、0.007〜0.05であることがより好ましい。
Figure 0003971779
下記の主成分に対して、x、y及びzを表7に示す値とし、かつ第1副成分(CoO)、第2副成分(Dy)及び第3副成分(AgO)を表7に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例1と同様にして圧電定数d33を測定した。その結果を表7に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O
表7から明らかなように、Bサイト元素のx、y、zが各々0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6の範囲において、圧電歪定数向上の効果を享受することができる。
Figure 0003971779
下記の主成分に対して、第1副成分(CoO)、第2副成分(Dy)、第3副成分(AgO)及び第4副成分(Ta、Sb、Nb、WO)を表8に示す量となるように原料を調整した以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。得られた試料について、実施例1と同様にして圧電定数d33を測定した。その結果を表8に示す。
主成分:(Pb0.995−0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
表8に示すように、第4副成分であるTaを添加することにより圧電定数d33を向上できる。ただし、Taの含有量が0.5wt%を超えると、Taを添加しないときよりも圧電定数d33が低下してしまう。そこで、Taを含有する場合には、その量を0.5wt%以下とすることが好ましい。より好ましいTaの含有量は0.05〜0.4wt%、さらに好ましいTaの含有量は0.15〜0.35wt%である。また、第4副成分としてSb、Nb、WOもTaと同様に圧電歪定数向上に効果がある。
Figure 0003971779
実施例9は、積層型圧電素子を作製した例を示す。
積層型圧電素子の製造に際しては、先ず、実施例1と同様にして得られた仮焼物(CoO:0.1wt%、Dy:0.05wt%、AgO添加量:0.1wt%、Ta:0.1wt%)を粉砕した圧電磁器組成物粉末にビヒクルを加え、混練して圧電体層用ペーストを作製した。それとともに、導電材料であるCu粉末をビヒクルと混練し、内部電極層用ペーストを作製した。続いて、圧電体層用ペースト及び内部電極層用ペーストを用いて、印刷法により積層体の前駆体であるグリーンチップを作製した。圧電体層用ペーストの積層数は300とした。次に、脱バインダ処理を行い、還元焼成条件で焼成し、積層体を得た。還元焼成条件としては、還元性雰囲気(酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧)下、焼成温度800〜1200℃で焼成を行った。なお、比較としてCoO、Dy及びAgOを添加しない以外は上記と同様にして積層体を作製した。得られた積層体について、実施例1と同様に圧電定数d33を測定した。その結果を表9に示す。
Figure 0003971779
本実施の形態における積層型圧電素子の一構成例を示す図である。 本実施の形態における積層型圧電素子の製造手順を示すフローチャートである。 Cuを内部電極層に用いて得られた積層型圧電素子の、内部電極層近傍の圧電体層のTEM像及びEDSによる点分析結果を示す図である。 第4副成分を含むが第1副成分〜第3副成分のいずれも含まず、かつ成形体にCuペーストの塗布を行わないで焼成した焼結体のミクロ組織写真である。 第4副成分を含むが第1副成分〜第3副成分のいずれも含まず、かつ成形体にCuペーストの塗布を行った焼結体のミクロ組織写真である。 第1副成分及び第4副成分を含むが、第2副成分及び第3副成分を含まず、かつ成形体にCuペーストの塗布を行って焼成した焼結体のミクロ組織写真である。 第1副成分〜第4副成分を含む焼結体のミクロ組織写真である。
符号の説明
1…積層型圧電素子、10…積層体、11…圧電体層、12…内部電極層、21、22…端子電極

Claims (6)

  1. (Pba−bMi)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O
    (ただし、
    0.96≦a≦1.03、
    0≦b≦0.1、
    0.05≦x≦0.15、
    0.25≦y≦0.5、
    0.35≦z≦0.6、
    x+y+z=1、
    Miは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物を主成分とし、
    前記主成分に対して、
    第1副成分として、Co、Mg及びNiから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.3wt%以下(ただし、0は含まず)、
    第2副成分として、希土類金属元素を酸化物換算で0.1wt%以下(ただし、0は含まず)、
    第3副成分とて、AgをAg O換算で0.3wt%以下(ただし、0は含まず)、
    第4副成分として、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で1wt%以下(ただし、0は含まず。)を含有することを特徴とする圧電磁器組成物。
  2. 前記第1副成分として、Coが選ばれることを特徴とする請求項1に記載の圧電磁器組成物。
  3. 前記第2副成分として、Dyが選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電磁器組成物。
  4. 前記第1副成分として、Coが選ばれ、かつ酸化物換算で0.03〜0.3wt%含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の圧電磁器組成物。
  5. 前記第2副成分として、Dyが選ばれ、かつ酸化物換算で0.02〜0.1wt%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電磁器組成物。
  6. 前記第3副成分として、AgをAgO換算で0.02〜0.25wt%含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧電磁器組成物。
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